説明

電気機器及びその駆動方法

【課題】高電圧が用いられる電気機器において、吸湿に起因する絶縁不良を抑制する。
【解決手段】このインバータ基板10上には湿度センサ12と温度センサ13が搭載されており、これらの出力は同様にインバータ基板10上に搭載されたコントローラ(制御部)14に接続される。ヒータ15は、コネクタ11等が配された面と反対側の面に、例えば複数のチップ抵抗を直列に接続することによって構成される。コントローラ14は、例えばマイクロコンピュータであり、湿度センサ12からの出力を見て、湿度が高い場合にはドライバ回路16を制御してヒータ15に通電を行う。また、温度センサ13からの出力を見て、温度がある設定値以上であると判定した場合には、この通電をオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧の電源を利用する電気機器に関する。また、この電気機器において湿度の影響による絶縁不良を抑制する駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶テレビジョン等の電気機器においては、液晶パネル等は低電圧で動作させることが可能であるが、バックライト等の動作には高電圧を要する。この高電圧を生成するためにはインバータ回路が用いられ、インバータ回路周辺では、この高電圧においても絶縁不良が発生しないような構造が採用されている。
【0003】
ところが、例えばこうした電気機器は高湿度の環境で使用されることもあり、例えば、東南アジアにおいては、湿度が90%程度となる場合もある。この場合、高い電位差の生ずる箇所、例えばコネクタの端子間で発生した水滴によってこれらの間の絶縁不良が発生し、正常な動作に支障をきたすことがあるばかりか、発火することもある。
【0004】
この問題を解決するため、例えば特許文献1には、水滴が付着した場合にも絶縁不良を生じにくい構造のコネクタが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−294424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の構成の技術においては、コネクタにおける絶縁不良は生じにくくなっているものの、絶縁不良が問題になるのはコネクタだけではない。例えばコネクタに接続された配線の間にも同様の電位差が生じており、あるいはトランスにおける端子間においても同様に大きな電位差が生じている。従って、コネクタ以外の箇所においても、絶縁不良を抑制することが必要であることは明らかである。特に、湿度が高い場合には、絶縁性であるべき基板自身の絶縁性が吸湿のために劣化することもあり、例えば基板上のこうした配線間での絶縁不良も同様に発生する。
【0007】
すなわち、従来の技術においては、高電圧が用いられる電気機器における、吸湿に起因する絶縁不良は充分に抑制されていなかった。
【0008】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の電気機器は、電子部品が搭載された基板を具備する電気機器であって、前記基板には、通電されることによって前記基板の温度を上昇させるヒータと、前記基板の温度を検知する温度センサとが搭載されたことを特徴とする。
本発明の電気機器において、前記基板の温度が予め設定された温度以上となった場合に前記ヒータへの通電が中止されることを特徴とする。
本発明の電気機器は、前記基板において、前記ヒータと前記電子部品とは相異なる面上に搭載されたことを特徴とする。
本発明の電気機器において、前記ヒータは環状に構成され、前記電子部品は前記環状のヒータの内側に搭載されたことを特徴とする。
本発明の電気機器は、前記基板付近の湿度を検知する湿度センサと、前記湿度センサによって検知された湿度が予め設定された湿度以上となった場合に前記ヒータに通電させる制御部と、を具備することを特徴とする。
本発明の電気機器において、前記ヒータは、チップ抵抗が直列に接続されて構成されたことを特徴とする。
本発明の電気機器において、前記基板はインバータ基板であり、前記電子部品には、コネクタ及び/又はトランスが含まれることを特徴とする。
本発明の電気機器はテレビジョン受像機であることを特徴とする。
本発明の電気機器の駆動方法は、電子部品が搭載された基板を具備する電気機器の駆動方法であって、前記基板にヒータ及び温度センサを搭載し、前記ヒータに通電することによって前記基板の温度を上昇させ、前記温度センサによって検出された前記基板の温度が予め設定された温度以上となった場合に前記ヒータへの通電を中止することを特徴とする。
本発明の電気機器の駆動方法は、前記基板周辺の湿度を検知する湿度センサを設置し、前記湿度センサによって検出された湿度が予め設定された湿度以上となった場合に前記ヒータに通電することを特徴とする。
本発明の電気機器の駆動方法は、前記ヒータと前記電子部品とを前記基板における相異なる面上に搭載することを特徴とする。
本発明の電気機器の駆動方法は、前記ヒータを環状に構成し、前記電子部品を前記環状のヒータの内側に搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成されているので、高電圧が用いられる電気機器において、吸湿に起因する絶縁不良を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態となる電気機器の一例として液晶テレビジョン受像機(以下、液晶テレビ)について説明する。この液晶テレビにおいては、バックライトが高電圧で駆動され、その電圧はインバータ基板10で生成され、バックライト21に供給される。
【0012】
この液晶テレビにおけるインバータ基板10付近の構成を一方の面側から見た図が図1(a)である。このインバータ基板10には複数の電子部品が搭載され、バックライト21の駆動用に数百Vの電圧を発生させる。なお、実際に高電圧を発生させる回路構成は従来より知られる回路構成と同様であるため、その構成は省略し、本願発明に特有の箇所及びこれに直接関連する箇所のみについて以下に説明する。
【0013】
このインバータ基板10においては、数百Vの電圧がインバータトランス等(図示せず)を用いて生成され、配線(図示せず)を介して複数のコネクタ11に供給される。コネクタ11はこのインバータ基板10の一方の面上に固定されて搭載されており、これに複数のバックライト21が接続されることにより、バックライト21に電力が供給される。なお、この電力はインバータ基板10上の電力調整回路(図示せず)によって調整される。
【0014】
このインバータ基板10上には湿度センサ12と温度センサ13が搭載されており、これらの出力は同様にインバータ基板10上に搭載されたコントローラ(制御部)14に接続される。
【0015】
このインバータ基板10のコネクタ11付近を図1(a)と反対側の面から見た構成図が図1(b)である。複数のコネクタ11付近の裏側にはこれらを取り囲んだ形態で環状のヒータ15が設置されている。また、ヒータ15にはコントローラ14に接続されたドライバ回路16によって電力が供給される。なお、実際にはコネクタ11、コントローラ14、ドライバ回路16以外にも多くの電子部品がこのインバータ基板10に搭載されているが、図示を省略している。
【0016】
インバータ基板10は、高耐圧、耐腐食性のPCB基板上に上記の構成要素が搭載されて構成される。各コネクタ11は、絶縁性の高耐圧樹脂製の本体中に2本ずつのピンが埋め込まれて構成されており、各バックライト21に電力を供給するコネクタ(図示せず)と嵌合させることによって、これらのピンから各バックライト21に電力を供給する。従って、この液晶テレビ使用時にはこれらのピン間には常時高電圧が印加されている。これらのピンに接続され、インバータ基板10上に形成された配線(図示せず)についても同様である。
【0017】
以上の湿度センサ12、温度センサ13、コントローラ14、ヒータ15及びドライバ回路16の具体的な回路構成を図2に示す。
【0018】
湿度センサ12はこのインバータ基板10付近の湿度を検知する。湿度センサ12は、例えば湿度に応じてその抵抗が変化する抵抗型のセンサであり、湿度を電気信号に変換してコントローラ14に出力する。図3に、この湿度センサにおける抵抗と湿度との関係の一例を示す。同様に、温度センサ13はこのインバータ基板10の表面の温度を検知する例えばサーミスタであり、温度を電気信号に変換してコントローラ14に出力する。
【0019】
ヒータ15は、コネクタ11等が配された面と反対側の面に、例えば複数のチップ抵抗を図2に示すように直列に接続することによって構成される。従って、これに通電することによって、その温度を上昇させ、インバータ基板10におけるヒータ15付近の温度を上昇させることができる。また、チップ抵抗を直列に接続することにより、インバータ基板上にヒータ15を特に容易に形成することができる。また、ヒータ15をコネクタ11等と相異なる面上に搭載することによって、インバータ基板10における実装効率を高めることができる。
【0020】
コントローラ14は、例えばマイクロコンピュータであり、湿度センサ12からの出力を見て、湿度が高い場合にはドライバ回路16を制御してヒータ15に通電を行う。また、温度センサ13からの出力を見て、温度がある設定値以上であると判定した場合には、この通電をオフする。
【0021】
ドライバ回路16は、ヒータ15に印加する電圧を発生させ、かつこれを制御する機能を有する。
【0022】
すなわち、以上の構成においては、インバータ基板10付近の湿度が高い場合にはインバータ基板10における吸湿が発生していると判定し、インバータ基板10の温度を上昇させ、水分を蒸発させる。ただし、インバータ基板10の温度が高くなりすぎた場合には、インバータ基板10の過度の加熱を抑制するために、ヒータ15への通電を中止する。
【0023】
図4は、この動作を示すフローチャートである。この液晶テレビの電源がオンとされると、コントローラ14は、湿度センサ12からの出力によって、現在の湿度を検出する(S1)。コントローラ14は、予め設定された湿度Voとこの検出された湿度Vとの比較を行い、V≧Vである場合(S2のYes)には、ヒータ15に通電を行う(S3)。V<Vの場合(S2のNo)の場合には、再び湿度の検出を行う(S1)。この際の湿度の検出はある設定された間隔をおいて行うことができる。Vとしては、吸湿が発生するあるいは発生する確率が高くなる湿度として例えば90%程度の値を設定することができる。
【0024】
ヒータ15の通電(S3)後には、温度センサ13の出力より、現在の温度を検出する(S4)。コントローラ14は、予め設定された温度Tとこの検出された温度Tとの比較を行い、T≧Tである場合(S5のYes)には、ヒータ15をオフする(S6)。T<Tの場合(S5のNo)の場合には、再び温度の検出を行う(S4)。この際の温度の検出はある設定された間隔をおいて行うことができる。Tとしては、室温よりは充分高く、水分を蒸発させることができ、かつ過熱による障害が発生しない温度として、例えば50℃程度の値を設定することができる。
【0025】
ヒータ15がオフされた(S6)後は、再び湿度が検出され(S1)、以降の動作が繰り返される。
【0026】
以上の動作により、このインバータ基板10が搭載された液晶テレビにおいては、吸湿が発生しにくく、かつ吸湿した箇所が発生した場合にはその水分を即時に蒸発させることが自動的に行われる。従って、吸湿が発生することによる絶縁不良を抑制することができる。
【0027】
なお、インバータ基板10における高い電位差が近距離で発生している箇所は、環状のヒータ15の内側に対応する箇所に配置する設定とすることが好ましい。図5はこの形態を示す一例である。図5は図1(a)と同様にヒータ15が設置された側と反対側の面(コネクタ11が搭載された側の面)における構成図である。ここでは、インバータ基板10において用いられる複数のインバータトランス(トランス)17を環状のヒータ15の内側に配置している。インバータトランス17では高電圧が発生しているため、その端子間では大きな電位差が生じているが、上記の構成により、この端子間の絶縁不良も抑制される。このように、ヒータ15を環状の形態として、インバータ基板10において特に高電圧が印加される電子部品をヒータ15の内側に配置することにより、これらにおける吸湿による絶縁不良を抑制することができる。特に、これらの電子部品をヒータ15の内側に集中して配置することにより、ヒータ15の全長(周囲長)を短くすることができ、加熱効率が高まるため、ヒータ15の通電時間を短くすることができる。これにより、このインバータ基板10における消費電力も低減することができる。
【0028】
一方、コントローラ14、ドライバ回路16は特に高電圧を用いないため、ヒータ15の内側に配置せず、図1(a)、図5のようにその外側に配置することが好ましい。同様に、高電圧を用いず、かつ過熱によって悪影響を受けやすい素子については、その外側に配置することが好ましい。
【0029】
なお、図4のフローチャートにおいては、電源オン時に湿度を検出し、以降の動作を行っていたが、これに限られるものではない。例えば、このインバータ基板10が搭載された液晶テレビにおいて、コントローラ14、ドライバ回路16の電源をその他の構成要素の電源と別系統として、この液晶テレビが使用されていない状態においてもコントローラ14、ドライバ回路16を通電状態として動作させることもできる。この場合には、液晶テレビが使用されていない間の吸湿の影響を除去することができる。すなわち、液晶テレビの使用状況に関わりなく常時水分が除去された状態となり、液晶テレビの電源投入時には吸湿した箇所はなくなっているため、より好ましい。
【0030】
また、例えば、湿度センサ12を特に設けず、温度センサ13、ヒータ15、及びドライバ回路16を設け、利用者が液晶テレビの電源オンした際に自動的にヒータ15が通電される構成とすることもできる。この場合においても、温度センサ13によって検出された温度TがT≧Tとなった場合に自動的に通電がオフされる構成とすることができる。あるいは、通電時間を予め設定された時間とすることもできる。また、ヒータ15の通電を利用者が操作ボタンを押すことによって開始される設定としてもよい。
【0031】
また、前記の例では湿度センサ12、コントローラ14、ドライバ回路16をインバータ基板10に搭載した構成としたが、これに限られるものではない。湿度センサ12は、このインバータ基板10付近の湿度を検知できる箇所、例えばインバータ基板10に近傍に設置すればよく、コントローラ14、ドライバ回路16も同様の動作を行う限り、インバータ基板10と別の箇所に設置してもよい。
【0032】
また、ヒータ15の形状は、絶縁性を確保する必要のある電子部品の形態に応じて適宜設定される。また、前記の例ではヒータ15への通電制御はオンオフのみの制御であったが、例えば湿度や温度に応じてヒータ15への印加電圧を適宜制御する設定としてもよい。
【0033】
また、水分の除去をより効率的にするために、例えば冷却ファンを設け、ヒータ15の通電に同期させて冷却ファンを動作させてインバータ基板周辺の通気を行う設定とすることもできる。
【0034】
なお、上記の例では液晶テレビにおけるインバータ基板につき記載したが、これに限られるものではなく、同様に高電圧が用いらる電子部品が配された基板が用いられる電気機器であれば、同様に本願発明を適用することができる。例えば、他の方式のテレビジョン受像機や、オーディオ機器、あるいは屋外で用いられる各種の電気機器についても同様である。特にこれらの電気機器が高湿度下で用いられる場合には、同様の構成により、高湿度に起因する絶縁不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態となる液晶テレビに用いられるインバータ基板の構成を両面側から見た図である。
【図2】本発明の実施の形態で用いられるインバータ基板のヒータ周辺の回路図の一例である。
【図3】本発明の実施の形態で用いられるインバータ基板に用いられる湿度センサの特性を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態で用いられるインバータ基板におけるヒータ制御動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態となる液晶テレビに用いられるインバータ基板の他の一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 インバータ基板
11 コネクタ
12 湿度センサ
13 温度センサ
14 コントローラ(制御部)
15 ヒータ
16 ドライバ回路
17 インバータトランス(トランス)
21 バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載された基板を具備する電気機器であって、
前記基板には、
通電されることによって前記基板の温度を上昇させるヒータと、
前記基板の温度を検知する温度センサとが搭載されたことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記基板の温度が予め設定された温度以上となった場合に前記ヒータへの通電が中止されることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記基板において、
前記ヒータと前記電子部品とは相異なる面上に搭載されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記ヒータは環状に構成され、前記電子部品は前記環状のヒータの内側に搭載されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項5】
前記基板付近の湿度を検知する湿度センサと、
前記湿度センサによって検知された湿度が予め設定された湿度以上となった場合に前記ヒータに通電させる制御部と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項6】
前記ヒータは、チップ抵抗が直列に接続されて構成されたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項7】
前記基板はインバータ基板であり、前記電子部品には、コネクタ及び/又はトランスが含まれることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項8】
前記電気機器はテレビジョン受像機であることを特徴とする請求項7に記載の電気機器。
【請求項9】
電子部品が搭載された基板を具備する電気機器の駆動方法であって、
前記基板にヒータ及び温度センサを搭載し、
前記ヒータに通電することによって前記基板の温度を上昇させ、
前記温度センサによって検出された前記基板の温度が予め設定された温度以上となった場合に前記ヒータへの通電を中止することを特徴とする電気機器の駆動方法。
【請求項10】
前記基板周辺の湿度を検知する湿度センサを設置し、
前記湿度センサによって検出された湿度が予め設定された湿度以上となった場合に前記ヒータに通電することを特徴とする請求項9に記載の電気機器の駆動方法。
【請求項11】
前記ヒータと前記電子部品とを前記基板における相異なる面上に搭載することを特徴とする請求項9又は10に記載の電気機器の駆動方法。
【請求項12】
前記ヒータを環状に構成し、前記電子部品を前記環状のヒータの内側に搭載することを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の電気機器の駆動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−284195(P2009−284195A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133932(P2008−133932)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】