説明

電気機械を配電網と同期させる方法及び電気機械と配電網の構成

【課題】 電気機械1を配電網と同期させる方法及び電気機械1と配電網2の構成を提供する。
【解決手段】 本方法は、発電機1の周波数を配電網2の周波数と同期させる工程と、発電機1の電圧を配電網2の電圧に合わせて調整する工程と、発電機1の電圧が配電網の電圧Vg よりも低い第1の電圧値V1 に達した時に、発電機1を配電網2と接続する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械を配電網と同期させる方法及び電気機械と配電網の構成に関する。以下において、発電機と関連させて説明するが、本発明の方法及び構成は、特に、電気モータなどの別の電気機械にも適用することができることは明らかである。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、発電機1などの同期機械を配電網2と正しく接続するために、同期装置3が配備されており、この同期装置3は、発電機1と配電網2の電圧、周波数及び位相を(測定用変圧器4,5を介して)測定して、それらのパラメータが互いに可能な限り近接した場合にのみ、遮断器6によって、両者を互いに接続させるものである。
【0003】
換言すれば、時間tに関して発電機(実線10)と配電網(破線11)の電圧Vを示す図4に図示されている通り、曲線10と11が互いに重なり合った時に、遮断器が閉じられる。
【0004】
しかし、システムの据付又は保守の間に、発電機1を遮断器6と接続する導線7や測定用変圧器4,5の導線が互いに入れ換わってしまうリスクが存在する。
【0005】
そのような事態が生じると、発電機1と配電網2が相互接続された場合、同期装置3が、発電機1と配電網2の間に同じ電圧、同じ周波数及び同じ位相を測定したとしても、その位相は、実際には同じではなく、最悪の場合、(3相電圧では)120°切り換わっている。
【0006】
言い換えると、時間tに関して発電機1(実線10)と配電網2(破線11)の電圧Vを示す図3に図示されている通り、導線7又は測定用変圧器4,5の導線が互いに入れ換わっている場合に、遮断器6が閉じられると、電圧と周波数は同じであるが、位相は120°ずれている(「誤同期」)。
【0007】
そのような位相差は、遮断器6が閉じられた時に、発電機のシャフトを配電網の位相に合わせようとする大きなトルクの衝撃を発電機1のシャフトに与えることとなる。
【0008】
従って、発電機などの同期機械のシャフトは、そのような大きなトルクの衝撃に耐えるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開第2005/112248号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、本発明の課題は、前記の従来技術の問題を大幅に軽減する方法及び構成を提供することである。
【0011】
そのような課題の範囲内において、本発明の対象は、誤同期時における(発電機などの)同期機械のシャフトに対するトルクの衝撃を小さくする、特に、従来の同期方式よりも小さくする方法及び構成を提供することである。
【0012】
本発明の別の対象は、同期機械のシャフトを小さくするとともに、全体的に従来技術よりも低いトルクに耐えるように設計すればよい方法及び構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題は、上記の対象と共に、本発明による特許請求の範囲に基づく方法及び構成によって達成される。
【0014】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明による方法の有利ではあるが、それに限定されない、添付図面に図示された実施形態の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】発電機と配電網の接続構成の模式図
【図2】相互接続する前後の発電機と配電網の電圧の時間的変化を示すグラフ
【図3】誤同期している場合の相互接続前の発電機と配電網の電圧、周波数及び位相の時間的変化を示すグラフ
【図4】同期している場合の相互接続前の発電機と配電網の電圧、周波数及び位相の時間的変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
(ガスタービンや蒸気タービンなどの、それらに限定されない)動力装置によって駆動される発電機1は、回転しているが、配電網2と接続されていない、即ち、(例えば、三極式)遮断器6は開いている。
【0017】
発電機1の電圧は、配電網の電圧と異なっており、周波数と位相も配電網2と異なっている。
【0018】
遮断器6を閉じて、発電機1を配電網2と接続する前に、発電機1を配電網2と同期させなければならない。
【0019】
発電機1を配電網2と同期させる方法は、発電機1の周波数を配電網2の周波数と同期させる工程で構成される。
【0020】
そのような観点から、同期装置3は、測定用変圧器4,5を介して、発電機1と配電網2の周波数を測定して、発電機1の周波数が配電網2の周波数と等しくなるように、(制御ライン13を介して)発電機1を駆動する。
【0021】
図面では、変圧器4,5が、一本の導線7又は配電網2の一つの相にのみ接続しているように図示されているが、それは模式図であり、別の実施形態では、必要に応じて、そのような接続を一つ以上の導線又は相に対して行うことができることは、明らかである。
【0022】
そのような工程の間、その前、或いはその後に、発電機1の電圧を配電網2の電圧の方に増大させる。
【0023】
そのような観点からも、同期装置3は、(測定用変圧器4,5を介して)発電機1と配電網2の電圧を測定して、発電機1の電圧を増大させるように、制御ライン14を介して、AVR(自動電圧調整器)20を駆動する。
【0024】
図2に図示されている通り、そのような工程の終了時点において、発電機1の電圧と配電網2の電圧の間に差異Δvが存在するように、発電機1の電圧は、配電網2の電圧値Vg よりも低い第一の電圧値V1 にまで高められる。
【0025】
発電機1の電圧が第一の電圧値V1 に達し、(変圧器4,5を介して同期装置によって測定した)発電機の位相と配電網の位相が同じである場合に、遮断器6が閉じられて、発電機1が配電網2と接続される。
【0026】
接続線7又は測定用変圧器4,5の導線が互いに入れ換わっていた場合、遮断器6が閉じられると、発電機の位相と配電網の位相の間に差異が存在し(この差異は120°である)、それによって、発電機のシャフトがトルクの衝撃を受けることになる。
【0027】
しかし、驚くべきことに、本発明による方法では、誤同期している場合のシャフトに対するトルクの衝撃は、従来の方法よりも遥かに小さい。
【0028】
有利には、発電機1の電圧が第一の電圧値V1 に達した後で、かつ、発電機1が配電網2と接続される前に、発電機1の位相を配電網2の位相と同期させる。
【0029】
発電機1が配電網2と接続された後に、発電機1の電圧を配電網2の本来の電圧にまで高めることができる(図2参照)。
【0030】
第一の電圧値V1 は、配電網の電圧値Vg よりも、その電圧値の5〜20%、有利には、10〜15%低い。
【0031】
シミュレーションによって、そのような範囲では、(位相シフトが120°で)誤同期している場合に、発電機1と配電網2の安全な運転を確保しながら、シャフトに対するトルクの衝撃が大幅に低減されることが分かっている。
【0032】
本発明の方法は、二つの異なる測定用変圧器4,5を用いて実施することができる。
【0033】
特に、変圧器4,5は、(例えば、配電網の電圧が15000Vの場合、測定用変圧器4の一次電圧は14000Vとなり、測定用変圧器5の一次電圧は15000Vとなる)異なる一次電圧に対して同じ二次電圧(例えば、100V)を供給する。
【0034】
従って、発電機1と接続された測定用変圧器4の一次電圧が、配電網2と接続された測定用変圧器5の一次電圧よりも低い場合に、測定用変圧器4,5は、そのような異なる一次電圧に対して同じ二次電圧を供給する。
【0035】
別の実施例では、本発明の方法は、電圧値V1 を保存している記憶装置を備えた、或いはそのような記憶装置と接続されたAVR(自動電圧調整器)20を用いて実施することができる。
【0036】
その場合、AVRは、発電機の出力電圧が配電網の電圧値Vg に可能な限り近接するように発電機を駆動するのではなく、発電機の出力電圧が電圧値V1 に可能な限り近接するように発電機を駆動する。
【0037】
更に別の実施例では、本発明の方法は、制御ユニット17と、第一の電圧値V1 を保存している(制御ユニット17と接続された、或いはそれに組み込まれた)記憶装置18とを備えた同期装置3を用いて実施することができる。
【0038】
その場合、同期装置3は、(測定用変圧器4によって測定した)発電機の電圧を(測定用変圧器5によって測定した)配電網の電圧と比較して、発電機1の周波数が配電網2の周波数と同期するとともに、発電機1の電圧が調整されて配電網2の電圧の方に増大するように、発電機1を駆動することが可能である。
【0039】
更に、同期装置は、発電機1の電圧が配電網2の電圧よりも低い第一の電圧値V1 に達した時に、(制御ユニット17を介して)遮断器6を作動して、発電機1と配電網2を接続させる。
【0040】
本発明の方法及びその方法を実施するための同期装置には、多くの修正及び変更を加えることが可能であるが、それらは、全て本発明の範囲内に有り、更に、全ての細部は、技術的に等価な構成要素と置き換えることができる。
【0041】
実際には、使用する材料及び寸法は、要求条件と技術水準に応じて任意に選択することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 発電機
2 配電網
3 同期装置
4,5 測定用変圧器
6 遮断器
7 導線
10 発電機の電圧
11 配電網の電圧
13 周波数用制御ライン
14 (AVRに対する)電圧用制御ライン
17 制御ユニット
18 記憶装置
20 AVR(自動電圧調整器)
1 第一の電圧値
g 配電網の電圧値
Δv 電圧差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(1)を配電網(2)と同期させる方法であって、発電機(1)の周波数を配電網(2)の周波数と同期させる工程と、発電機(1)の電圧を配電網(2)の電圧に合わせて調整する工程とを有する方法において、
発電機(1)の電圧が、配電網の電圧値(Vg )よりも低い第一の電圧値(V1 )に達した時に、発電機(1)を配電網(2)と接続することを特徴とする方法。
【請求項2】
発電機(1)の位相を配電網(2)の位相と同期させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発電機(1)の電圧が第一の電圧値(V1 )に達した後で、かつ、発電機(1)を配電網(2)と接続する前に、発電機(1)の位相を配電網(2)の位相と同期させることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
発電機(1)が配電網(2)と接続された後、発電機(1)の電圧を配電網(2)の電圧にまで高めることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第一の電圧値(V1 )が、配電網の電圧値(Vg )よりも、その電圧値の5〜20%、有利には、10〜15%低いことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電気機械(1)が発電機であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電気機械(1)と配電網(2)の構成であって、両者の間に介設された遮断器(6)と、測定用変圧器(4,5)を介して、遮断器(6)の上流側で発電機(1)と接続され、遮断器(6)の下流側で配電網(2)と接続されるとともに、発電機(1)を駆動するために発電機(1)と接続された同期装置(3)とを備えた構成において、
測定用変圧器(4,5)が、二つの異なる測定用変圧器(4,5)であることを特徴とする構成。
【請求項8】
発電機(1)と接続された測定用変圧器(4)の一次電圧が、配電網(2)と接続された測定用変圧器(5)の一次電圧よりも低く、測定用変圧器(4,5)が、そのような異なる一次電圧に対して、同じ二次電圧を供給することを特徴とする請求項7に記載の構成。
【請求項9】
電気機械(1)と配電網(2)の構成であって、両者の間に介設された遮断器(6)と、測定用変圧器(4,5)を介して、遮断器(6)の上流側で発電機(1)と接続され、遮断器(6)の下流側で配電網(2)と接続されるとともに、発電機(1)を駆動するために発電機(1)と接続された同期装置(3)とを備えた構成において、
自動電圧調整器(20)が、電圧値V1 を保存している記憶装置を備えているか、或いはその記憶装置と接続されており、自動電圧調整器(20)は、発電機の電圧が電圧値V1 に可能な限り近接するように、発電機(1)を駆動することを特徴とする構成。
【請求項10】
電気機械(1)と配電網(2)の構成であって、両者の間に介設された遮断器(6)と、測定用変圧器(4,5)を介して、遮断器(6)の上流側で発電機(1)と接続され、遮断器(6)の下流側で配電網(2)と接続されるとともに、発電機(1)を駆動するために発電機(1)と接続された同期装置(3)とを備えた構成において、
同期装置(3)が、制御ユニット(17)と、制御ユニット(17)と接続された、或いはそれに組み込まれた、第一の電圧値(V1 )を保存している記憶装置(18)とを備えており、同期装置は、制御ユニット(17)を介して、発電機(1)の電圧が配電網(2)の電圧よりも低い第一の電圧値(V1 )に達した時に、遮断器(6)を作動して、発電機(1)を配電網(2)と接続させることを特徴とする構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−19392(P2011−19392A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−156367(P2010−156367)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】