電気機械素子とその製造方法、並びに共振器とその製造方法
【課題】カプセル封止の電気機械素子の高信頼性化を図る。
【解決手段】下部電極62、63と可動子35を有する電気機械素子本体64と、電気機械素子本体64を空間37を保持して封止したオーバーコート膜38とを備え、オーバーコート膜38と可動子35との間に支柱52が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】下部電極62、63と可動子35を有する電気機械素子本体64と、電気機械素子本体64を空間37を保持して封止したオーバーコート膜38とを備え、オーバーコート膜38と可動子35との間に支柱52が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械素子とその製造方法、並びに共振器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上の微細化製造技術の進展に伴い、電気機械素子、いわゆるマイクロマシン(超小型電気的・機械的複合体:Micro Electro Mechanical Systems,以下、MEMSという)や、そのMEMS素子を組み込んだ小型機器等が注目されている。MEMS素子は、可動構造体である振動子と、その振動子の駆動を制御する半導体集積回路等とを、電気的・機械的に結合させた素子である。そして振動子が素子の一部に組み込まれており、その振動子の駆動を電極間のクーロン引力等を応用して電気的に行うようにしている。
【0003】
このようなMEMS素子のうち、特に半導体プロセスを用いて形成されたものは、デバイスの占有面積が小さいこと、高いQ値(振動系の共振の鋭さを表す量)を実現できること、他の半導体デバイスとのインテグレーション(統合)が可能であること等の特徴を有することから、無線通信用の高周波フィルタとしての利用が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、MEMS素子を他の半導体デバイスとインテグレーションする場合には、そのMEMS素子における振動子の部分をカプセル封止して、これによりさらに上層に配線等の配置を可能とすることが提案されている(例えば、特許文献1の第7頁、第10頁参照)。ただし、振動子のカプセル封止にあたっては、その振動子の可動部周囲に空間を確保して、振動子を可動し得る状態にすることが必要である。この可動部周囲の空間確保は、通常、いわゆる犠牲層エッチングによって行われる(特許文献1参照)。
【0005】
犠牲層エッチングとは、振動子の可動部周囲に予め薄膜を形成しておき、その後、この薄膜をエッチングにより取り除いて、当該可動部周囲に空間(隙間)を形成することをいう。また、犠牲層エッチングを行うために、可動部周囲に形成した薄膜を犠牲層という。
【0006】
MEMS素子の研究開発は、高周波フィルタ以外にも、各種センサ、アクチュエータ、光学素子、その他のMEMS素子など様々な分野に展開されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−94328号公報
【非特許文献1】C.T.-C.Nguyen,“ Micromechanical components for miniaturized low-power communications(invited plenary),“proceedings,1999 IEEE MTT-S International Microwave Symposium RFMEMS Workshop,june,18,1999,pp.48-77.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MEMS素子と他の半導体デバイスとのインテグレーションは、幾つかの課題を抱えている。一般に、当該インテグレーションは、他の半導体デバイスについての製造プロセス(例えば、CMOSプロセス)の最終工程に、MEMS素子(特に、その振動子)の製造プロセスを付加する形で行われる。従って、MEMS素子の製造プロセスにおいては、既に形成されている半導体デバイスへの悪影響を回避するために、高温での加工を行うことができない。つまり、低温で振動子を形成する必要があり、その加工が容易でないものとなってしまう虞れがある。
【0009】
これに対して、MEMS素子における振動子の部分をカプセル封止した場合には、これによりさらに上層に配線層等の配置が可能となるので、高温で振動子を形成しても、その高温加工の悪影響が配線層等に及ぶのを回避することができる。ところが、その場合には、犠牲層エッチングにより形成した振動子の可動部周囲の空間を真空封止するために、絶縁材料等による特殊なパッケージング技術が必要となる(例えば、特許文献1参照)。つまり、真空封止のためのパッケージング工程が必要となるため、既存の半導体プロセス(例えば、CMOSプロセス)の過程において行うことが困難である。結果としてMEMS素子を含むデバイスの生産効率低下を招いてしまうことが考えられる。
【0010】
図13に、カプセル封止した電気機械素子の比較例を示す。図13は無線通信用の高周波フィルタとして利用される共振器に適用した例である。この共振器1は、例えばシリコン基板2表面にシリコン酸化膜3とシリコン窒化膜4の積層膜からなる絶縁膜5を形成して成る基板上6に、下部電極7となる出力電極7と、この出力電極7に空間8を介して対向する振動子となる帯状のビーム9とを有して構成される。ビーム9は導電材料からなり、入力側の電極となる。ビーム9は、基板6上に形成した下部配線11A,11Bに支持部12A,12Bを介して支持され両持ち梁構造に形成される。下部配線11A,11Bの外側上には絶縁膜の例えばシリコン酸化膜13が形成され、その開口部14を通じてスパッタ膜による外部配線層15が形成される。
【0011】
一方、出力電極7及びビーム9からなる共振器本体16は、全体が空間17を保持して例えばシリコン窒化膜によるオーバーコート膜18によって被覆され気密封止される。このオーバーコート膜18は、製造上、空間8及び17に犠牲層が形成されている状態で全体にわたって成膜される。オーバーコート膜18の成膜後に貫通口19を形成し、貫通口19を通じて犠牲層を選択的にエッチング除去し、空間8及び17が形成される。貫通口19はスパッタ膜による封止膜20にて封止される。
【0012】
この共振器1では、振動子となるビームに直流バイアス電圧が印加されると共に、特定の周波数電圧が印加されると、ビーム9が固有振動周波数で振動し、出力電極7とビーム9との間の空間8で構成されるキャパシタの容量が変化し、出力電極7から特定の周波数信号が出力されるようになる。
【0013】
一方、図13に示したカプセル封止された共振器1においては、カプセル封止するための屋根となるオーバーコート膜18の剛性が弱いと振動子となるビーム9の上部にオーバーコート膜18が接触してしまい、共振周波数が変化したり、最悪の場合は、共振しないことも考えられる。
【0014】
このカプセル封止に関するオーバーコート膜18の問題は、前述した高周波フィルタ以外のMEMSデバイスにおいても、可動子となるビームにオーバーコート膜が接触することによって動作不良などの不具合を生じることが考えられる。
【0015】
本発明は、上述の点に鑑み、カプセル封止における不具合を回避して信頼性の向上を図った電気機械素子とその製造方法、さらに電気機械素子による共振器とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る電気機械素子は、下部電極と可動子を有する電気機械素子本体を封止するオーバーコート膜と前記可動子との間に支柱を設けて構成することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る共振器は、下部電極と可動子を有する共振器本体を封止するオーバーコート膜と前記可動子との間に支柱を設けて構成することを特徴とする。
【0018】
本発明では、オーバーコート膜と可動子との間に支柱が設けられるので、オーバーコート膜が撓み可動子に接触するのを防止することができる。
【0019】
本発明に係る電気機械素子の製造方法は、電気機械素子本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、犠牲層に可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、開口部を含んで犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、オーバーコート膜に形成した貫通口を介して犠牲層を除去し、支柱に支持されたオーバーコート膜を形成する工程と、オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る共振器の製造方法は、共振器本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、犠牲層に可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、開口部を含んで犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、オーバーコート膜に形成した貫通口を介して犠牲層を除去し、支柱に支持されたオーバーコート膜を形成する工程と、オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法では、可動子を覆う犠牲層に可動子に達する支柱形成用の開口部を形成し、開口部を含んで犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成した後、犠牲層を除去するので、オーバーコート膜の形成と同時に、可動子に接する支柱を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電気機械素子あるいは共振器によれば、オーバーコート膜が支柱によって可動子に接触することがないので、カプセル封止における不具合が回避され、信頼性の向上を図ることができる。
【0023】
本発明に係る電気機械素子あるいは共振器の製造方法によれば、オーバーコート膜の形成と同時に可動子に接する支柱が同時に形成されるので、カプセル封止における不具合が回避され信頼性を向上した電気機械素子あるいは共振器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明で対象とする電気機械素子は、マイクロスケール、ナノスケールの素子である。
【0025】
図1に、本発明に係る電気機械素子の第1実施の形態を示す。本実施の形態は、無線通信用の高周波フィルタとして利用される共振器に適用した場合である。本実施の形態に係る電気機械素子31は、基板32上に下部電極となる出力電極33と、この出力電極33に空間34を介して対向する可動子、本例では振動子となる帯状のビーム35とからなる電気機械素子本体(本例では共振器本体)36を有し、さらに、この電気機械素子本体35を被覆するように空間37を介してオーバーコート膜38を形成して構成される。
【0026】
基板32は、例えば半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板を用いることができるが、本例では、他の半導体デバイスとのインテグレーションを可能にするために、単結晶シリコンからなる半導体基板41上にシリコン酸化(SiO2)膜42及びシリコン窒化(SiN)膜43の積層膜による絶縁膜44を形成した基板32を用いる。
【0027】
ビーム35は、入力側の電極となるもので、導電材として例えば多結晶シリコン膜で形
成される。ビーム35は、基板32上に形成した下部配線39A,39Bに支持部40A,40Bを介して支持され、いわゆる両持ち梁構造に形成される。出力電極33、下部配線39A,39B及び支持部40A,40Bも、例えば多結晶シリコン膜で形成される。下部配線39A,39Bの外側上には絶縁膜の例えばシリコン酸化膜46が形成され、そのシリコン酸化膜46上に開口部47を介して下部配線39Aに接続された例えばスパッタ膜による外部配線48が形成される。
【0028】
オーバーコート膜38は、前述と同様に、製造上、空間34、37に犠牲層が形成されている状態で全体にわたって成膜される。オーバーコート膜38の成膜後に貫通口49が形成され、貫通口49を通じて犠牲層が選択エッチングで除去され、空間34、37が形成される。その後、貫通口49が例えばスパッタ膜による封止膜50により気密封止される。スパッタ膜としては、例えばAl−Cu(アルミニウム−銅)膜またはAl−Si(アルミニウム−シリコン)膜などによるスパッタ膜を用いることができる。
【0029】
そして、本実施の形態においては、特に、オーバーコート膜38と振動子であるビーム35との間にオーバーコート膜38の撓みを防ぐための支柱52が設けられる。この支柱52は、ビーム35の1箇所以上の位置に対応して設けられる。支柱52としては、オーバーコート膜38と一体に形成し、1箇所以上の位置でビーム35に接触するように、あるいは接触しないように、あるいはビームと一体化するようにして形成することができる。本例では、支柱52がビーム35の両端部分、すなわちビーム35の共振周波数に寄与する可動部の長さで規定される部分よりも外側のいわゆる支持部40A,40Bに対応する部分の2箇所で接触するように形成される。
【0030】
オーバーコート膜38は電気機械素子本体36を外部から保護するために気密封止されるが、オーバーコート膜38とビーム35との間にはビーム35の振動に支障を来さない空間37が必要である。支柱52は、この空間37を確保するためのものである。支柱52の好ましい設置位置については、後述する。
【0031】
第1実施の形態に係る電気機械素子31では、前述と同様に、振動子となるビーム35に直流バイアス電圧が印加されると共に、特定の周波数電圧が印加されると、ビーム35が固有振動周波数で振動し、出力電極33とビーム35との間の空間34で構成されるキャパシタの容量が変化し、この特定の周波数信号が出力電極33から出力される。この電気機械素子31のビーム35は、一次振動モードで振動する。
【0032】
この第1実施の形態の電気機械素子31は、高周波フィルタとして利用した場合、表面弾性波(SAW)や薄膜弾性波(FBAR)を利用した高周波フィルタと比較して、高いQ値を実現することができる。
【0033】
図2に、本発明に係る電気機械素子の第2実施の形態を示す。本実施の形態は、上述と同様に、無線通信用の高周波フィルタとして利用される共振器に適用した場合である。本実施の形態に係る電気機械素子61は、基板32上に下部電極となる入力電極62及び出力電極63と、この入出力電極62、63に空間34を介して対向する可動子、本例では振動子となる帯状のビーム35とからなる電気機械素子本体(本例では共振器本体)64を有し、さらにこの電気機械素子本体64を被覆するように空間37を介してオーバーコート膜38を形成して構成される。
【0034】
基板32は、本例では単結晶シリコンからなる半導体基板41上にシリコン酸化(SiO2 )膜42及びシリコン窒化(SiN)膜43の積層膜による絶縁膜44を形成した基板が用いられる。ビーム35は、両端部分を支持部39A,39Bで支持した両持ち梁構造に形成される。入出力電極62、63は、例えば多結晶シリコン膜で形成される。
【0035】
そして、本実施の形態においては、第1実施の形態と同様に、オーバーコート膜38と振動子であるビーム35との間にオーバーコート膜38の撓みを防ぐための支柱52が設けられる。支柱52は、オーバーコート膜38と一体に形成し、ビーム35に1箇所以上、本例では図1と同様にビーム35の両端部分の2箇所で接触するように形成される。支柱52の好ましい設置位置については、後述する。
【0036】
その他の構成は、図1の第1実施の形態で説明したと同様であるので、対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0037】
第2実施の形態に係る電気機械素子61では、振動子となるビーム35に直流バイアス電圧が印加される。そして、入力電極62に特定の周波数電圧が印加されると、ビーム35の可動部分(いわゆる支持部に支持された両端部を除くビーム部分)が固有振動周波数で振動し、出力電極63とビーム35との間に空間34で構成されるキャパシタの容量が変化し、出力電極63からビーム35の固有振動周波数に対応した特定周波数の信号(高周波信号)が出力される。この電気機械素子61のビーム35は、2次振動モードで振動する。
【0038】
この第2実施の形態の電気機械素子61においても、高周波フィルタとして利用した場合、表面弾性波(SAW)や薄膜弾性波(FBAR)を利用した高周波フィルタと比較して、高いQ値を実現することができる。
【0039】
次に、支柱52の大きさ及び設置位置について説明する。支柱52は、ビーム35の振動を損なうことなく、オーバーコート膜38がビーム35に接触しないようにビーム35間との空間37を維持できるように形成する必要がある。図3は支柱52のサイズとビーム35の共振周波数の関係を示すグラフである。曲線Iは、支柱52をビーム35の支持部40〔40A,40B〕に対応する位置に設けた場合、図4に示すように、支持部40内端位置X01より支持部40外端側へ向って支柱52のサイズ(すなわち幅)を広げて行ったときの特性である。曲線IIは、図5に示すように、同じように支柱52をビーム35の支持部40に対応する位置に設けた場合に、支持部40外端位置X02から支持部40内端側へ向って支柱52のサイズ(すなわち幅)を広げて行ったときの特性である。ここで、支持部40の幅Dは3.0μmとした。また、オーバーコート膜38とビーム35間の空間37間隔t2は0.1μmとした。
【0040】
図4の場合に対応する曲線Iでは、支柱52が無い支柱サイズがX=0の点ではビーム35の共振周波数(70MHz近傍)が得られるが、支柱52を設けた瞬間から78MHzに変動している。これに対して、図5の場合に対応する曲線IIでは、支持部40外端位置X02から内側に向って支柱サイズ(幅)を広げて行った場合に、支柱サイズ(幅)Xを支持部外端位置X02から2.5μmまで広げてもビームの共振周波数(70MHz近傍)が得られるも、2.5μmを越えると共振周波数は大きく変動する。
【0041】
この図3のグラフから、支柱52をビーム35の支持部外端位置X02から内端に向って連続的に形成する場合には、支持部外端位置X02から2.5μmまでの間であれば、ビーム35の振動を損なうことがない。また、図6に示すように、支柱52が支持部外端位置X02を越えて連続して形成された場合も、ビーム35の振動を損なうことがない。従って、支柱52としては、ビーム35の支持部内端位置X01から0.5μm離れた位置と支持部外端との間の位置から支持部外端を含んで連続した幅を有して設けることが好ましい。
【0042】
図7は、支柱52の幅Wを一定にしたときの、支柱52の位置とビーム35の共振周波数の関係を示すグラフである。支持部40の幅D及び空間37の間隔t2は図4及び図5と同じである。本例では、支柱52の幅Wを0.5μm(空間間隔t2の5倍)とした。図8に示すように、支柱52をビーム35の支持部内端位置X01に合わせた状態から支持部外端側へ移動した。図7の曲線IIIに示すように、支持部内端位置X01から0.5μm(つまり幅0.5μmの支柱52を内端位置X01に合わせて形成した場合)では、ビーム35の共振周波数が78MHzに変動されており、これより支柱52を外端側に移動するにつれて共振周波数の変動が低減するも、少なくとも内端位置X01から1.0μmより内側では共振周波数が急激に上昇する。支柱52の位置が内端位置X01から1.0μm以上、好ましくは1.5μm離れれば、本来のビーム35の共振周波数(70MHz近傍)が得られる。
【0043】
この図7のグラフから、一定の幅Wで支柱52を設けるときは、支柱52をビーム35の支持部内端位置X01から1.0μm以上離れた位置に設けることが好ましい。
【0044】
上述の第1実施の形態及び第2実施の形態に係る電気機械素子31及び61によれば、オーバーコート膜38とビーム35との間に支柱52を形成することにより、オーバーコート膜38の強度を確保しオーバーコート膜38が撓んでビーム35に接触することがない。このため、電気機械素子本体36、64を所要の空間37を介してオーバーコート膜38による気密封止を確実に行うことができる。支柱52を図3及び図7で説明した条件で形成することにより、ビーム35の振動を損なうことなく、すなわち本来のビーム35の共振周波数を維持して気密封止ざれたオーバーコート膜38内で電気機械素子本体36、64の駆動を行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態の電気機械素子31、61は、他の半導体デバイスとのインテグレーションを可能にする。
【0046】
次に、図9〜図11を参照して本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を説明する。本実施の形態の製造方法は、図2に示す電気機械素子61の製造に適用した場合である。
【0047】
先ず、図9Aに示すように、基板、本例では単結晶シリコンによる半導体基板41上に、絶縁膜44としてシリコン酸化膜42及びシリコン窒化膜43を減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法により積層形成してなる基板32を用意する。
【0048】
次に、図9Bに示すように、基板32上に選択エッチング可能な導電性膜、本例では不純物、例えば燐(P)を含有した多結晶シリコン膜66を形成する。この多結晶シリコン膜66を周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターニングし、下部電極となる入力電極62及び出力電極63と、下部配線39〔39A,39B〕を形成する。
【0049】
次に、図9Cに示すように、入出力電極62、63及び下部配線39〔39A,39B〕を埋めるように、且つ少なくとも入出力電極62、63上に所要の膜厚t1が形成されるように、全面に例えばシリコン酸化膜67を形成する。このシリコン酸化膜67の一部は、後述する犠牲層となるものである。
【0050】
次に、図9Dに示すように、下部配線39上の犠牲層となるシリコン酸化膜67の一部を周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して選択的にエッチング除去して開口部68〔68A,68B〕を形成する。この開口部68は後の振動子となるビームの支持部(いわゆるアンカー部)を形成するためのものである。
【0051】
次に、図9Eに示すように、開口部68〔68A,68〕を含んでシリコン酸化膜67上に、例えば減圧CVD法により不純物、例えば燐(P)を含有した多結晶シリコン膜を形成し、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターン加工し、多結晶シリコン膜からなる帯状のビーム35と、このビーム35の両端を支持する支持部40〔40A,40B〕とを形成する。支持部40〔40A,40B〕はそれぞれ下部配線39〔39A,39B〕に接続される。
【0052】
次に、図10Fに示すように、ビーム35上を被覆するように例えば減圧CVD法によりシリコン酸化膜69を全面に形成する。このシリコン酸化膜69も一部が犠牲層として機能し、少なくともビーム35上に所要の膜厚t2で形成される。
【0053】
次に、図10Gに示すように、シリコン酸化膜69を周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターン加工し、支持部40A,40Bに対応する部分に開口部71〔71A,71B〕を形成すると共に、下部配線39A,39Bみに対応する部分に開口72〔72A,72B〕を形成する。開口部71〔71A,71B〕は、後の支柱形成用の開口部となるもので、前述の図3及び図7で説明したビームの共振周波数を変動しない位置に形成する。
【0054】
ビーム35は、その周囲、すなわち側壁部を含めた断面の上下左右面の全てが犠牲層として機能するシリコン酸化膜67及び69によって覆われることになる。つまり、ビーム35の断面下方向にはシリコン酸化膜67が存在し、断面左右及び上方向にはシリコン酸化膜69が存在する。
【0055】
次に、図10Hに示すように、開口部71〔71A,71B〕及び開口部72〔72A,72B〕を含んで、犠牲層として機能するシリコン酸化膜69上の全面に例えば減圧CVD法によりシリコン窒化膜38を形成する。このシリコン窒化膜38は、オーバーコート膜として機能するものである。開口部71A,71Bを通じてビーム35の支持部40A,40Bに対応する部分に接続されるように形成されたシリコン窒化膜は、支柱52として機能する。
【0056】
次に、図10Iに示すように、開口部72A,72B内に対応するオーバーコート膜として機能するシリコン窒化膜38の一部を、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して、選択的にエッチング除去し、犠牲層(シリコン酸化膜67またはシリコン酸化膜69のいずれか、もしくは両方、本例では両シリコン酸化膜67及び69)へ通じる貫通口49を形成する。その後、貫通口49を用いて犠牲層67及び69を選択的にエッチング除去し、ビーム35の上下部に空間37及び34を形成する。
【0057】
すなわち、例えばフッ酸水溶液(DHF溶液)といったシリコン酸化膜を選択的に除去するエッチング溶液を用いて、ビーム35を囲む上下左右の周囲領域に形成されている犠牲層(シリコン酸化膜)67及び69を選択的に除去する。これにより、ビーム35と下部電極である入出力電極62、63との間に空間34が形成される共に、ビーム35とオーバーコート膜38との間に空間37が形成される。この空間34、37により、ビーム35の支持部40A,40Bで支持されている両端部分を除く、実質的な可動部分がビーム35の固有振動周波数で振動し得るようになる。ここに、オーバーコート膜38で覆われるように、下部電極の入出力電極62、63とビーム35とからなる電気機械素子本体(本例では共振器本体)64が形成される。
【0058】
次に、図11Jに示すように、減圧下における成膜処理で貫通口49に封止膜50を形成して電気機械素子本体64を気密封止する。すなわち、例えば真空中にてスパッタリングにより成膜処理を行い貫通口49を封止するスパッタ膜による封止膜50を形成する。このとき用いる反応ガスとしてはスパッタリングによる成膜処理であることから、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスが挙げられる。また、スパッタ膜50としては、AlーCu膜、Al−Si膜等といった、金属または金属化合物による薄膜が挙げられる。スパッタ膜を形成したら、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して、封止膜50を残すパターニング処理を行う。なお、このスパッタ膜のパターニング工程で、封止膜と同時に他の配線層等を形成することもできる。
【0059】
他の配線等を同時に形成しない場合は図11Kに示すように、更に絶縁膜(シリコン酸化膜)38Bで表面を保護する。
【0060】
次に、図11Lに示すように、下部配線39Aに達するように絶縁膜(シリコン酸化膜)38B、シリコン窒化膜38及びその下のシリコン酸化膜69、67を、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して開口47を形成し、その後、例えば上記と同様のスパッタ膜を形成し、これを周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターニングし、下部配線39Aに接続した外部配線48を形成する。なお、電気機械素子本体64の周囲に形成されたシリコン酸化膜69,67は、図2で説明した絶縁膜46に相当する。このようにして、電気機械素子本体64がオーバーコート膜38で気密封止される共に、オーバーコート膜38とビーム35との間に支柱52が形成された目的の電気機械素子61を得る。
【0061】
本実施の形態に係る電気機械素子の製造方法によれば、電気機械素子本体64を気密封止するオーバーコート膜38の形成と同時にオーバーコート膜38からビーム35に接続された支柱52を形成することにより、オーバーコート膜38の強度を確保してオーバーコート膜38の撓みを防止し、ビーム35の可動範囲を確保した信頼性の高いカプセル封止構造の電気機械素子61を製造することができる。
【0062】
ビーム35の周囲に犠牲層として機能するシリコン酸化膜67及びシリコン酸化膜69を形成する工程、その犠牲層69上をオーバーコート膜であるシリコン窒化膜38で覆う工程および犠牲層エッチングを行う工程を有するので、そのオーバーコート膜38のさらに上層に配線層等の配置が可能となる。すなわち、これらの工程の後に、配線層等の形成工程を行い得る。したがって、その前工程にてビーム35を形成することで、そのビーム35をメタル配線等よりも下層に形成できるため、このビーム35を高温で形成しても、その高温加工の悪影響が配線層等に及ぶことがなく、結果としてビーム35の形成の容易化を図ることができる。
【0063】
しかも、犠牲層エッチングの後にスパッタリングによる成膜処理を行って貫通口49を封止する工程を有するので、その工程にてビーム35の実質的な可動部分周囲、いわゆる可動部周囲の空間34、37が封止される。したがって、絶縁材料等による特殊なパッケージ技術を必要とすることがない。すなわち、真空封止のためのパッケージング工程を要せずに、犠牲層エッチングにより形成したビーム35の可動部周囲の空間34、37を封止することができる。
【0064】
また、封止のためのスパッタ膜は、配線等としても用いることが考えられる。つまり、配線等のためのスパッタ膜を利用して貫通口49を封止することも考えられる。その場合には、封止と配線等の形成が同一の工程で実現され、製造工程の効率化を図る上で非常に有効である。
【0065】
さらには、スパッタリングによる成膜処理で貫通口49を封止するので、半導体プロセス、例えばCMOSプロセス、における成膜技術をそのまま利用して実現することが可能となり、この半導体プロセスにおける他の工程と連続的に行えるようになる。すなわち、いわゆるインライン中での封止が可能となる。したがって、CMOSプロセス等へのインテグレーションが非常に容易であると共に、ウェハ状態での電気機械素子評価を行うことも可能となる。
【0066】
これらのことから、本実施の形態で説明した製造方法を用いて電気機械素子を構成すれば、電気機械素子を他の半導体デバイスとインテグレーションする場合であっても、その電気機械素子の製造を既存の半導体プロセス、例えばCMOSプロセス、の過程において行うことができ、結果として電気機械素子を含むデバイスの生産効率を向上することができる。
【0067】
特に、本実施の形態で説明したように、スパッタリングによる成膜処理で封止を行う場合には、不活性ガスであるArガス中での封止となり、安全性、信頼性の点で非常に好適であると言える。
【0068】
図9〜図11で説明した手順による製造方法は、図2の構成の電気機械素子61のみに限定されるものではなく、オーバーコート膜に設けた貫通口を用いて犠牲層エッチングを行うものであれば、他の電気機械素子にも適用可能である。
【0069】
本実施の形態の電気機械素子及びその製造方法は、図1の電気機械素子31にも適用できる。また、複数の電気機械素子本体(共振器本体)を並列化した電気機械素子、例えば入出力電極を共通として複数のビームを配列して構成するような電気機械素子にも適用できる。
【0070】
本実施の形態の電気機械素子及びその製造方法は、高周波フィルタ等の共振器以外の、各種センサ、アクチュエータ、光学素子(光変調素子となるGLV素子を含む)、その他等の様々な分野に用いられる電気機械素子に適用できる。ビームを所要共振周波数の振動子として用いる以外の電気機械素子として適用する場合、支柱は、ビームの可動に変動を来さないようにビーム端部の支持部に対応した位置に設置するのがよい。
【0071】
上述した実施の形態の電気機械素子、例えば共振器は、高周波(RF)フィルタ、中間周波数(IF)フィルタなどの帯域信号フィルタとして用いることができる。
また、本発明の他の実施の形態として、このような電気機械素子によるフィルタを用いた通信装置を提供できる。すなわち、上述の実施の形態に係る電気機械素子によるフィルタを用いて構成される携帯電話、無線LAN機器、無線トランシーバ、テレビチューナ、ラジオチューナ等の電磁波を利用して通信する通信装置を提供することもできる。
【0072】
次に、本例のフィルタを適用した通信装置の構成例を、図12を参照して説明する。
まず送信系の構成について説明すると、Iチャンネルの送信データとQチャンネルの送信データを、それぞれデジタル/アナログ変換器(DAC)201I及び201Qに供給してアナログ信号に変換する。変換された各チャンネルの信号は、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qに供給して、送信信号の帯域以外の信号成分を除去し、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qの出力を、変調器210に供給する。
【0073】
変調器210では、各チャンネルごとにバッファアンプ211I及び211Qを介してミキサ212I及び212Qに供給して、送信用のPLL(phase-locked loop)回路203から供給される送信周波数に対応した周波数信号を混合して変調し、両混合信号を加算器214で加算して1系統の送信信号とする。この場合、ミキサ212Iに供給する周波数信号は、移相器213で信号位相を90°シフトさせてあり、Iチャンネルの信号とQチャンネルの信号とが直交変調されるようにしてある。
【0074】
加算器214の出力は、バッファアンプ215を介して電力増幅器204に供給し、所定の送信電力となるように増幅する。電力増幅器204で増幅された信号は、送受信切換器205と高周波フィルタ206を介してアンテナ207に供給し、アンテナ207から無線送信させる。高周波フィルタ206は、この通信装置で送信及び受信する周波数帯域以外の信号成分を除去するバンド・パス・フィルタである。
【0075】
受信系の構成としては、アンテナ207で受信した信号を、高周波フィルタ206及び送受信切換器205を介して高周波部220に供給する。高周波部220では、受信信号を低ノイズアンプ(LNA)221で増幅した後、バンド・パス・フィルタ222に供給して、受信周波数帯域以外の信号成分を除去し、除去された信号をバッファアンプ223を介してミキサ224に供給する。そして、チャンネル選択用PLL回路251から供給される周波数信号を混合して、所定の送信チャンネルの信号を中間周波信号とし、その中間周波信号をバッファアンプ225を介して中間周波回路230に供給する。
【0076】
中間周波回路230では、供給される中間周波信号をバッファアンプ225を介してバンド・パス・フィルタ232に供給して、中間周波信号の帯域以外の信号成分を除去し、除去された信号を自動ゲイン調整回路(AGC回路)233に供給して、ほぼ一定のゲインの信号とする。自動ゲイン調整回路233でゲイン調整された中間周波信号は、バッファアンプ234を介して復調器240に供給する。
【0077】
復調器240では、供給される中間周波信号をバッファアンプ241を介してミキサ242I及び242Qに供給して、中間周波用PLL回路252から供給される周波数信号を混合して、受信したIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。この場合、I信号用のミキサ242Iには、移相器243で信号位相を90°シフトさせた周波数信号を供給するようにしてあり、直交変調されたIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。
【0078】
復調されたIチャンネルとQチャンネルの信号は、それぞれバッファアンプ244I及び244Qを介してバンド・パス・フィルタ253I及び253Qに供給して、Iチャンネル及びQチャンネルの信号以外の信号成分を除去し、除去された信号をアナログ/デジタル変換器(ADC)254I及び254Qに供給してサンプリングしてデジタルデータ化し、Iチャンネルの受信データ及びQチャンネルの受信データを得る。
【0079】
ここまで説明した構成において、各バンド・パス・フィルタ202I,202Q,206,222,232,253I,253Qの一部又は全てとして、本例の構成のフィルタを適用して帯域制限することが可能である。図12の例では、各フィルタをバンド・パス・フィルタとして構成したが、所定の周波数よりも下の周波数帯域だけを通過させるロー・パス・フィルタや、所定の周波数よりも上の周波数帯域だけを通過させるハイ・パス・フィルタとして構成して、それらのフィルタに本例の構成のフィルタを適用してもよい。また、図12の例では、無線送信及び無線受信を行う通信装置としたが、有線の伝送路を介して送信及び受信を行う通信装置が備えるフィルタに適用してもよく、さらに送信処理だけを行う通信装置や受信処理だけを行う通信装置が備えるフィルタに、本例の構成のフィルタを適用してもよい。
【0080】
上述の実施の形態による通信装置によれば、帯域フィルタに本発明のカプセル封止した電気機械素子によるフィルタを用いることにより、信頼性の高い通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る電気機械素子の第1実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る電気機械素子の第2実施の形態を示す構成図である。
【図3】本発明の支柱の説明に供する第1のグラフである。
【図4】図3の曲線Iに係る第1の試料の要部の断面図である。
【図5】図3の曲線IIに係る第2の試料の要部の断面図である。
【図6】図3の曲線IIに係る第3の試料の要部の断面図である。
【図7】本発明の支柱の説明に供する第2のグラフである。
【図8】図7の曲線IIIに係る第4の試料の要部の断面図である。
【図9】A〜E 本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図10】F〜I 本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その2)である。
【図11】J〜L 本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その3)である。
【図12】本発明に係る電気機械素子を帯域フィルタとして備えた通信装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図13】比較例に係る電気機械素子の構成図である。
【符号の説明】
【0082】
31、61・・電気機械素子、32・・基板、33・・下部電極(出力電極)、34・・空間、35・・ビーム(可動子)、36・・電気機械素子本体、37・・空間、38・・オーバーコート膜、39〔39A,39B〕・・下部配線、40〔40A,40B〕・・支持部、49・・貫通口、50・・封止膜、52・・支柱、62・・入力電極(下部電極)、63・・出力電極(下部電極)、64・・電気機械素子本体、67・・犠牲層、68A,68B・・開口部、69・・犠牲層、71A,71B・・開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械素子とその製造方法、並びに共振器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上の微細化製造技術の進展に伴い、電気機械素子、いわゆるマイクロマシン(超小型電気的・機械的複合体:Micro Electro Mechanical Systems,以下、MEMSという)や、そのMEMS素子を組み込んだ小型機器等が注目されている。MEMS素子は、可動構造体である振動子と、その振動子の駆動を制御する半導体集積回路等とを、電気的・機械的に結合させた素子である。そして振動子が素子の一部に組み込まれており、その振動子の駆動を電極間のクーロン引力等を応用して電気的に行うようにしている。
【0003】
このようなMEMS素子のうち、特に半導体プロセスを用いて形成されたものは、デバイスの占有面積が小さいこと、高いQ値(振動系の共振の鋭さを表す量)を実現できること、他の半導体デバイスとのインテグレーション(統合)が可能であること等の特徴を有することから、無線通信用の高周波フィルタとしての利用が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、MEMS素子を他の半導体デバイスとインテグレーションする場合には、そのMEMS素子における振動子の部分をカプセル封止して、これによりさらに上層に配線等の配置を可能とすることが提案されている(例えば、特許文献1の第7頁、第10頁参照)。ただし、振動子のカプセル封止にあたっては、その振動子の可動部周囲に空間を確保して、振動子を可動し得る状態にすることが必要である。この可動部周囲の空間確保は、通常、いわゆる犠牲層エッチングによって行われる(特許文献1参照)。
【0005】
犠牲層エッチングとは、振動子の可動部周囲に予め薄膜を形成しておき、その後、この薄膜をエッチングにより取り除いて、当該可動部周囲に空間(隙間)を形成することをいう。また、犠牲層エッチングを行うために、可動部周囲に形成した薄膜を犠牲層という。
【0006】
MEMS素子の研究開発は、高周波フィルタ以外にも、各種センサ、アクチュエータ、光学素子、その他のMEMS素子など様々な分野に展開されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−94328号公報
【非特許文献1】C.T.-C.Nguyen,“ Micromechanical components for miniaturized low-power communications(invited plenary),“proceedings,1999 IEEE MTT-S International Microwave Symposium RFMEMS Workshop,june,18,1999,pp.48-77.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MEMS素子と他の半導体デバイスとのインテグレーションは、幾つかの課題を抱えている。一般に、当該インテグレーションは、他の半導体デバイスについての製造プロセス(例えば、CMOSプロセス)の最終工程に、MEMS素子(特に、その振動子)の製造プロセスを付加する形で行われる。従って、MEMS素子の製造プロセスにおいては、既に形成されている半導体デバイスへの悪影響を回避するために、高温での加工を行うことができない。つまり、低温で振動子を形成する必要があり、その加工が容易でないものとなってしまう虞れがある。
【0009】
これに対して、MEMS素子における振動子の部分をカプセル封止した場合には、これによりさらに上層に配線層等の配置が可能となるので、高温で振動子を形成しても、その高温加工の悪影響が配線層等に及ぶのを回避することができる。ところが、その場合には、犠牲層エッチングにより形成した振動子の可動部周囲の空間を真空封止するために、絶縁材料等による特殊なパッケージング技術が必要となる(例えば、特許文献1参照)。つまり、真空封止のためのパッケージング工程が必要となるため、既存の半導体プロセス(例えば、CMOSプロセス)の過程において行うことが困難である。結果としてMEMS素子を含むデバイスの生産効率低下を招いてしまうことが考えられる。
【0010】
図13に、カプセル封止した電気機械素子の比較例を示す。図13は無線通信用の高周波フィルタとして利用される共振器に適用した例である。この共振器1は、例えばシリコン基板2表面にシリコン酸化膜3とシリコン窒化膜4の積層膜からなる絶縁膜5を形成して成る基板上6に、下部電極7となる出力電極7と、この出力電極7に空間8を介して対向する振動子となる帯状のビーム9とを有して構成される。ビーム9は導電材料からなり、入力側の電極となる。ビーム9は、基板6上に形成した下部配線11A,11Bに支持部12A,12Bを介して支持され両持ち梁構造に形成される。下部配線11A,11Bの外側上には絶縁膜の例えばシリコン酸化膜13が形成され、その開口部14を通じてスパッタ膜による外部配線層15が形成される。
【0011】
一方、出力電極7及びビーム9からなる共振器本体16は、全体が空間17を保持して例えばシリコン窒化膜によるオーバーコート膜18によって被覆され気密封止される。このオーバーコート膜18は、製造上、空間8及び17に犠牲層が形成されている状態で全体にわたって成膜される。オーバーコート膜18の成膜後に貫通口19を形成し、貫通口19を通じて犠牲層を選択的にエッチング除去し、空間8及び17が形成される。貫通口19はスパッタ膜による封止膜20にて封止される。
【0012】
この共振器1では、振動子となるビームに直流バイアス電圧が印加されると共に、特定の周波数電圧が印加されると、ビーム9が固有振動周波数で振動し、出力電極7とビーム9との間の空間8で構成されるキャパシタの容量が変化し、出力電極7から特定の周波数信号が出力されるようになる。
【0013】
一方、図13に示したカプセル封止された共振器1においては、カプセル封止するための屋根となるオーバーコート膜18の剛性が弱いと振動子となるビーム9の上部にオーバーコート膜18が接触してしまい、共振周波数が変化したり、最悪の場合は、共振しないことも考えられる。
【0014】
このカプセル封止に関するオーバーコート膜18の問題は、前述した高周波フィルタ以外のMEMSデバイスにおいても、可動子となるビームにオーバーコート膜が接触することによって動作不良などの不具合を生じることが考えられる。
【0015】
本発明は、上述の点に鑑み、カプセル封止における不具合を回避して信頼性の向上を図った電気機械素子とその製造方法、さらに電気機械素子による共振器とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る電気機械素子は、下部電極と可動子を有する電気機械素子本体を封止するオーバーコート膜と前記可動子との間に支柱を設けて構成することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る共振器は、下部電極と可動子を有する共振器本体を封止するオーバーコート膜と前記可動子との間に支柱を設けて構成することを特徴とする。
【0018】
本発明では、オーバーコート膜と可動子との間に支柱が設けられるので、オーバーコート膜が撓み可動子に接触するのを防止することができる。
【0019】
本発明に係る電気機械素子の製造方法は、電気機械素子本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、犠牲層に可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、開口部を含んで犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、オーバーコート膜に形成した貫通口を介して犠牲層を除去し、支柱に支持されたオーバーコート膜を形成する工程と、オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る共振器の製造方法は、共振器本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、犠牲層に可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、開口部を含んで犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、オーバーコート膜に形成した貫通口を介して犠牲層を除去し、支柱に支持されたオーバーコート膜を形成する工程と、オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法では、可動子を覆う犠牲層に可動子に達する支柱形成用の開口部を形成し、開口部を含んで犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成した後、犠牲層を除去するので、オーバーコート膜の形成と同時に、可動子に接する支柱を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電気機械素子あるいは共振器によれば、オーバーコート膜が支柱によって可動子に接触することがないので、カプセル封止における不具合が回避され、信頼性の向上を図ることができる。
【0023】
本発明に係る電気機械素子あるいは共振器の製造方法によれば、オーバーコート膜の形成と同時に可動子に接する支柱が同時に形成されるので、カプセル封止における不具合が回避され信頼性を向上した電気機械素子あるいは共振器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明で対象とする電気機械素子は、マイクロスケール、ナノスケールの素子である。
【0025】
図1に、本発明に係る電気機械素子の第1実施の形態を示す。本実施の形態は、無線通信用の高周波フィルタとして利用される共振器に適用した場合である。本実施の形態に係る電気機械素子31は、基板32上に下部電極となる出力電極33と、この出力電極33に空間34を介して対向する可動子、本例では振動子となる帯状のビーム35とからなる電気機械素子本体(本例では共振器本体)36を有し、さらに、この電気機械素子本体35を被覆するように空間37を介してオーバーコート膜38を形成して構成される。
【0026】
基板32は、例えば半導体基板上に絶縁膜を形成した基板、石英基板やガラス基板のような絶縁性基板を用いることができるが、本例では、他の半導体デバイスとのインテグレーションを可能にするために、単結晶シリコンからなる半導体基板41上にシリコン酸化(SiO2)膜42及びシリコン窒化(SiN)膜43の積層膜による絶縁膜44を形成した基板32を用いる。
【0027】
ビーム35は、入力側の電極となるもので、導電材として例えば多結晶シリコン膜で形
成される。ビーム35は、基板32上に形成した下部配線39A,39Bに支持部40A,40Bを介して支持され、いわゆる両持ち梁構造に形成される。出力電極33、下部配線39A,39B及び支持部40A,40Bも、例えば多結晶シリコン膜で形成される。下部配線39A,39Bの外側上には絶縁膜の例えばシリコン酸化膜46が形成され、そのシリコン酸化膜46上に開口部47を介して下部配線39Aに接続された例えばスパッタ膜による外部配線48が形成される。
【0028】
オーバーコート膜38は、前述と同様に、製造上、空間34、37に犠牲層が形成されている状態で全体にわたって成膜される。オーバーコート膜38の成膜後に貫通口49が形成され、貫通口49を通じて犠牲層が選択エッチングで除去され、空間34、37が形成される。その後、貫通口49が例えばスパッタ膜による封止膜50により気密封止される。スパッタ膜としては、例えばAl−Cu(アルミニウム−銅)膜またはAl−Si(アルミニウム−シリコン)膜などによるスパッタ膜を用いることができる。
【0029】
そして、本実施の形態においては、特に、オーバーコート膜38と振動子であるビーム35との間にオーバーコート膜38の撓みを防ぐための支柱52が設けられる。この支柱52は、ビーム35の1箇所以上の位置に対応して設けられる。支柱52としては、オーバーコート膜38と一体に形成し、1箇所以上の位置でビーム35に接触するように、あるいは接触しないように、あるいはビームと一体化するようにして形成することができる。本例では、支柱52がビーム35の両端部分、すなわちビーム35の共振周波数に寄与する可動部の長さで規定される部分よりも外側のいわゆる支持部40A,40Bに対応する部分の2箇所で接触するように形成される。
【0030】
オーバーコート膜38は電気機械素子本体36を外部から保護するために気密封止されるが、オーバーコート膜38とビーム35との間にはビーム35の振動に支障を来さない空間37が必要である。支柱52は、この空間37を確保するためのものである。支柱52の好ましい設置位置については、後述する。
【0031】
第1実施の形態に係る電気機械素子31では、前述と同様に、振動子となるビーム35に直流バイアス電圧が印加されると共に、特定の周波数電圧が印加されると、ビーム35が固有振動周波数で振動し、出力電極33とビーム35との間の空間34で構成されるキャパシタの容量が変化し、この特定の周波数信号が出力電極33から出力される。この電気機械素子31のビーム35は、一次振動モードで振動する。
【0032】
この第1実施の形態の電気機械素子31は、高周波フィルタとして利用した場合、表面弾性波(SAW)や薄膜弾性波(FBAR)を利用した高周波フィルタと比較して、高いQ値を実現することができる。
【0033】
図2に、本発明に係る電気機械素子の第2実施の形態を示す。本実施の形態は、上述と同様に、無線通信用の高周波フィルタとして利用される共振器に適用した場合である。本実施の形態に係る電気機械素子61は、基板32上に下部電極となる入力電極62及び出力電極63と、この入出力電極62、63に空間34を介して対向する可動子、本例では振動子となる帯状のビーム35とからなる電気機械素子本体(本例では共振器本体)64を有し、さらにこの電気機械素子本体64を被覆するように空間37を介してオーバーコート膜38を形成して構成される。
【0034】
基板32は、本例では単結晶シリコンからなる半導体基板41上にシリコン酸化(SiO2 )膜42及びシリコン窒化(SiN)膜43の積層膜による絶縁膜44を形成した基板が用いられる。ビーム35は、両端部分を支持部39A,39Bで支持した両持ち梁構造に形成される。入出力電極62、63は、例えば多結晶シリコン膜で形成される。
【0035】
そして、本実施の形態においては、第1実施の形態と同様に、オーバーコート膜38と振動子であるビーム35との間にオーバーコート膜38の撓みを防ぐための支柱52が設けられる。支柱52は、オーバーコート膜38と一体に形成し、ビーム35に1箇所以上、本例では図1と同様にビーム35の両端部分の2箇所で接触するように形成される。支柱52の好ましい設置位置については、後述する。
【0036】
その他の構成は、図1の第1実施の形態で説明したと同様であるので、対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0037】
第2実施の形態に係る電気機械素子61では、振動子となるビーム35に直流バイアス電圧が印加される。そして、入力電極62に特定の周波数電圧が印加されると、ビーム35の可動部分(いわゆる支持部に支持された両端部を除くビーム部分)が固有振動周波数で振動し、出力電極63とビーム35との間に空間34で構成されるキャパシタの容量が変化し、出力電極63からビーム35の固有振動周波数に対応した特定周波数の信号(高周波信号)が出力される。この電気機械素子61のビーム35は、2次振動モードで振動する。
【0038】
この第2実施の形態の電気機械素子61においても、高周波フィルタとして利用した場合、表面弾性波(SAW)や薄膜弾性波(FBAR)を利用した高周波フィルタと比較して、高いQ値を実現することができる。
【0039】
次に、支柱52の大きさ及び設置位置について説明する。支柱52は、ビーム35の振動を損なうことなく、オーバーコート膜38がビーム35に接触しないようにビーム35間との空間37を維持できるように形成する必要がある。図3は支柱52のサイズとビーム35の共振周波数の関係を示すグラフである。曲線Iは、支柱52をビーム35の支持部40〔40A,40B〕に対応する位置に設けた場合、図4に示すように、支持部40内端位置X01より支持部40外端側へ向って支柱52のサイズ(すなわち幅)を広げて行ったときの特性である。曲線IIは、図5に示すように、同じように支柱52をビーム35の支持部40に対応する位置に設けた場合に、支持部40外端位置X02から支持部40内端側へ向って支柱52のサイズ(すなわち幅)を広げて行ったときの特性である。ここで、支持部40の幅Dは3.0μmとした。また、オーバーコート膜38とビーム35間の空間37間隔t2は0.1μmとした。
【0040】
図4の場合に対応する曲線Iでは、支柱52が無い支柱サイズがX=0の点ではビーム35の共振周波数(70MHz近傍)が得られるが、支柱52を設けた瞬間から78MHzに変動している。これに対して、図5の場合に対応する曲線IIでは、支持部40外端位置X02から内側に向って支柱サイズ(幅)を広げて行った場合に、支柱サイズ(幅)Xを支持部外端位置X02から2.5μmまで広げてもビームの共振周波数(70MHz近傍)が得られるも、2.5μmを越えると共振周波数は大きく変動する。
【0041】
この図3のグラフから、支柱52をビーム35の支持部外端位置X02から内端に向って連続的に形成する場合には、支持部外端位置X02から2.5μmまでの間であれば、ビーム35の振動を損なうことがない。また、図6に示すように、支柱52が支持部外端位置X02を越えて連続して形成された場合も、ビーム35の振動を損なうことがない。従って、支柱52としては、ビーム35の支持部内端位置X01から0.5μm離れた位置と支持部外端との間の位置から支持部外端を含んで連続した幅を有して設けることが好ましい。
【0042】
図7は、支柱52の幅Wを一定にしたときの、支柱52の位置とビーム35の共振周波数の関係を示すグラフである。支持部40の幅D及び空間37の間隔t2は図4及び図5と同じである。本例では、支柱52の幅Wを0.5μm(空間間隔t2の5倍)とした。図8に示すように、支柱52をビーム35の支持部内端位置X01に合わせた状態から支持部外端側へ移動した。図7の曲線IIIに示すように、支持部内端位置X01から0.5μm(つまり幅0.5μmの支柱52を内端位置X01に合わせて形成した場合)では、ビーム35の共振周波数が78MHzに変動されており、これより支柱52を外端側に移動するにつれて共振周波数の変動が低減するも、少なくとも内端位置X01から1.0μmより内側では共振周波数が急激に上昇する。支柱52の位置が内端位置X01から1.0μm以上、好ましくは1.5μm離れれば、本来のビーム35の共振周波数(70MHz近傍)が得られる。
【0043】
この図7のグラフから、一定の幅Wで支柱52を設けるときは、支柱52をビーム35の支持部内端位置X01から1.0μm以上離れた位置に設けることが好ましい。
【0044】
上述の第1実施の形態及び第2実施の形態に係る電気機械素子31及び61によれば、オーバーコート膜38とビーム35との間に支柱52を形成することにより、オーバーコート膜38の強度を確保しオーバーコート膜38が撓んでビーム35に接触することがない。このため、電気機械素子本体36、64を所要の空間37を介してオーバーコート膜38による気密封止を確実に行うことができる。支柱52を図3及び図7で説明した条件で形成することにより、ビーム35の振動を損なうことなく、すなわち本来のビーム35の共振周波数を維持して気密封止ざれたオーバーコート膜38内で電気機械素子本体36、64の駆動を行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態の電気機械素子31、61は、他の半導体デバイスとのインテグレーションを可能にする。
【0046】
次に、図9〜図11を参照して本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を説明する。本実施の形態の製造方法は、図2に示す電気機械素子61の製造に適用した場合である。
【0047】
先ず、図9Aに示すように、基板、本例では単結晶シリコンによる半導体基板41上に、絶縁膜44としてシリコン酸化膜42及びシリコン窒化膜43を減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法により積層形成してなる基板32を用意する。
【0048】
次に、図9Bに示すように、基板32上に選択エッチング可能な導電性膜、本例では不純物、例えば燐(P)を含有した多結晶シリコン膜66を形成する。この多結晶シリコン膜66を周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターニングし、下部電極となる入力電極62及び出力電極63と、下部配線39〔39A,39B〕を形成する。
【0049】
次に、図9Cに示すように、入出力電極62、63及び下部配線39〔39A,39B〕を埋めるように、且つ少なくとも入出力電極62、63上に所要の膜厚t1が形成されるように、全面に例えばシリコン酸化膜67を形成する。このシリコン酸化膜67の一部は、後述する犠牲層となるものである。
【0050】
次に、図9Dに示すように、下部配線39上の犠牲層となるシリコン酸化膜67の一部を周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して選択的にエッチング除去して開口部68〔68A,68B〕を形成する。この開口部68は後の振動子となるビームの支持部(いわゆるアンカー部)を形成するためのものである。
【0051】
次に、図9Eに示すように、開口部68〔68A,68〕を含んでシリコン酸化膜67上に、例えば減圧CVD法により不純物、例えば燐(P)を含有した多結晶シリコン膜を形成し、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターン加工し、多結晶シリコン膜からなる帯状のビーム35と、このビーム35の両端を支持する支持部40〔40A,40B〕とを形成する。支持部40〔40A,40B〕はそれぞれ下部配線39〔39A,39B〕に接続される。
【0052】
次に、図10Fに示すように、ビーム35上を被覆するように例えば減圧CVD法によりシリコン酸化膜69を全面に形成する。このシリコン酸化膜69も一部が犠牲層として機能し、少なくともビーム35上に所要の膜厚t2で形成される。
【0053】
次に、図10Gに示すように、シリコン酸化膜69を周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターン加工し、支持部40A,40Bに対応する部分に開口部71〔71A,71B〕を形成すると共に、下部配線39A,39Bみに対応する部分に開口72〔72A,72B〕を形成する。開口部71〔71A,71B〕は、後の支柱形成用の開口部となるもので、前述の図3及び図7で説明したビームの共振周波数を変動しない位置に形成する。
【0054】
ビーム35は、その周囲、すなわち側壁部を含めた断面の上下左右面の全てが犠牲層として機能するシリコン酸化膜67及び69によって覆われることになる。つまり、ビーム35の断面下方向にはシリコン酸化膜67が存在し、断面左右及び上方向にはシリコン酸化膜69が存在する。
【0055】
次に、図10Hに示すように、開口部71〔71A,71B〕及び開口部72〔72A,72B〕を含んで、犠牲層として機能するシリコン酸化膜69上の全面に例えば減圧CVD法によりシリコン窒化膜38を形成する。このシリコン窒化膜38は、オーバーコート膜として機能するものである。開口部71A,71Bを通じてビーム35の支持部40A,40Bに対応する部分に接続されるように形成されたシリコン窒化膜は、支柱52として機能する。
【0056】
次に、図10Iに示すように、開口部72A,72B内に対応するオーバーコート膜として機能するシリコン窒化膜38の一部を、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して、選択的にエッチング除去し、犠牲層(シリコン酸化膜67またはシリコン酸化膜69のいずれか、もしくは両方、本例では両シリコン酸化膜67及び69)へ通じる貫通口49を形成する。その後、貫通口49を用いて犠牲層67及び69を選択的にエッチング除去し、ビーム35の上下部に空間37及び34を形成する。
【0057】
すなわち、例えばフッ酸水溶液(DHF溶液)といったシリコン酸化膜を選択的に除去するエッチング溶液を用いて、ビーム35を囲む上下左右の周囲領域に形成されている犠牲層(シリコン酸化膜)67及び69を選択的に除去する。これにより、ビーム35と下部電極である入出力電極62、63との間に空間34が形成される共に、ビーム35とオーバーコート膜38との間に空間37が形成される。この空間34、37により、ビーム35の支持部40A,40Bで支持されている両端部分を除く、実質的な可動部分がビーム35の固有振動周波数で振動し得るようになる。ここに、オーバーコート膜38で覆われるように、下部電極の入出力電極62、63とビーム35とからなる電気機械素子本体(本例では共振器本体)64が形成される。
【0058】
次に、図11Jに示すように、減圧下における成膜処理で貫通口49に封止膜50を形成して電気機械素子本体64を気密封止する。すなわち、例えば真空中にてスパッタリングにより成膜処理を行い貫通口49を封止するスパッタ膜による封止膜50を形成する。このとき用いる反応ガスとしてはスパッタリングによる成膜処理であることから、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスが挙げられる。また、スパッタ膜50としては、AlーCu膜、Al−Si膜等といった、金属または金属化合物による薄膜が挙げられる。スパッタ膜を形成したら、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して、封止膜50を残すパターニング処理を行う。なお、このスパッタ膜のパターニング工程で、封止膜と同時に他の配線層等を形成することもできる。
【0059】
他の配線等を同時に形成しない場合は図11Kに示すように、更に絶縁膜(シリコン酸化膜)38Bで表面を保護する。
【0060】
次に、図11Lに示すように、下部配線39Aに達するように絶縁膜(シリコン酸化膜)38B、シリコン窒化膜38及びその下のシリコン酸化膜69、67を、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用して開口47を形成し、その後、例えば上記と同様のスパッタ膜を形成し、これを周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を利用してパターニングし、下部配線39Aに接続した外部配線48を形成する。なお、電気機械素子本体64の周囲に形成されたシリコン酸化膜69,67は、図2で説明した絶縁膜46に相当する。このようにして、電気機械素子本体64がオーバーコート膜38で気密封止される共に、オーバーコート膜38とビーム35との間に支柱52が形成された目的の電気機械素子61を得る。
【0061】
本実施の形態に係る電気機械素子の製造方法によれば、電気機械素子本体64を気密封止するオーバーコート膜38の形成と同時にオーバーコート膜38からビーム35に接続された支柱52を形成することにより、オーバーコート膜38の強度を確保してオーバーコート膜38の撓みを防止し、ビーム35の可動範囲を確保した信頼性の高いカプセル封止構造の電気機械素子61を製造することができる。
【0062】
ビーム35の周囲に犠牲層として機能するシリコン酸化膜67及びシリコン酸化膜69を形成する工程、その犠牲層69上をオーバーコート膜であるシリコン窒化膜38で覆う工程および犠牲層エッチングを行う工程を有するので、そのオーバーコート膜38のさらに上層に配線層等の配置が可能となる。すなわち、これらの工程の後に、配線層等の形成工程を行い得る。したがって、その前工程にてビーム35を形成することで、そのビーム35をメタル配線等よりも下層に形成できるため、このビーム35を高温で形成しても、その高温加工の悪影響が配線層等に及ぶことがなく、結果としてビーム35の形成の容易化を図ることができる。
【0063】
しかも、犠牲層エッチングの後にスパッタリングによる成膜処理を行って貫通口49を封止する工程を有するので、その工程にてビーム35の実質的な可動部分周囲、いわゆる可動部周囲の空間34、37が封止される。したがって、絶縁材料等による特殊なパッケージ技術を必要とすることがない。すなわち、真空封止のためのパッケージング工程を要せずに、犠牲層エッチングにより形成したビーム35の可動部周囲の空間34、37を封止することができる。
【0064】
また、封止のためのスパッタ膜は、配線等としても用いることが考えられる。つまり、配線等のためのスパッタ膜を利用して貫通口49を封止することも考えられる。その場合には、封止と配線等の形成が同一の工程で実現され、製造工程の効率化を図る上で非常に有効である。
【0065】
さらには、スパッタリングによる成膜処理で貫通口49を封止するので、半導体プロセス、例えばCMOSプロセス、における成膜技術をそのまま利用して実現することが可能となり、この半導体プロセスにおける他の工程と連続的に行えるようになる。すなわち、いわゆるインライン中での封止が可能となる。したがって、CMOSプロセス等へのインテグレーションが非常に容易であると共に、ウェハ状態での電気機械素子評価を行うことも可能となる。
【0066】
これらのことから、本実施の形態で説明した製造方法を用いて電気機械素子を構成すれば、電気機械素子を他の半導体デバイスとインテグレーションする場合であっても、その電気機械素子の製造を既存の半導体プロセス、例えばCMOSプロセス、の過程において行うことができ、結果として電気機械素子を含むデバイスの生産効率を向上することができる。
【0067】
特に、本実施の形態で説明したように、スパッタリングによる成膜処理で封止を行う場合には、不活性ガスであるArガス中での封止となり、安全性、信頼性の点で非常に好適であると言える。
【0068】
図9〜図11で説明した手順による製造方法は、図2の構成の電気機械素子61のみに限定されるものではなく、オーバーコート膜に設けた貫通口を用いて犠牲層エッチングを行うものであれば、他の電気機械素子にも適用可能である。
【0069】
本実施の形態の電気機械素子及びその製造方法は、図1の電気機械素子31にも適用できる。また、複数の電気機械素子本体(共振器本体)を並列化した電気機械素子、例えば入出力電極を共通として複数のビームを配列して構成するような電気機械素子にも適用できる。
【0070】
本実施の形態の電気機械素子及びその製造方法は、高周波フィルタ等の共振器以外の、各種センサ、アクチュエータ、光学素子(光変調素子となるGLV素子を含む)、その他等の様々な分野に用いられる電気機械素子に適用できる。ビームを所要共振周波数の振動子として用いる以外の電気機械素子として適用する場合、支柱は、ビームの可動に変動を来さないようにビーム端部の支持部に対応した位置に設置するのがよい。
【0071】
上述した実施の形態の電気機械素子、例えば共振器は、高周波(RF)フィルタ、中間周波数(IF)フィルタなどの帯域信号フィルタとして用いることができる。
また、本発明の他の実施の形態として、このような電気機械素子によるフィルタを用いた通信装置を提供できる。すなわち、上述の実施の形態に係る電気機械素子によるフィルタを用いて構成される携帯電話、無線LAN機器、無線トランシーバ、テレビチューナ、ラジオチューナ等の電磁波を利用して通信する通信装置を提供することもできる。
【0072】
次に、本例のフィルタを適用した通信装置の構成例を、図12を参照して説明する。
まず送信系の構成について説明すると、Iチャンネルの送信データとQチャンネルの送信データを、それぞれデジタル/アナログ変換器(DAC)201I及び201Qに供給してアナログ信号に変換する。変換された各チャンネルの信号は、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qに供給して、送信信号の帯域以外の信号成分を除去し、バンド・パス・フィルタ202I及び202Qの出力を、変調器210に供給する。
【0073】
変調器210では、各チャンネルごとにバッファアンプ211I及び211Qを介してミキサ212I及び212Qに供給して、送信用のPLL(phase-locked loop)回路203から供給される送信周波数に対応した周波数信号を混合して変調し、両混合信号を加算器214で加算して1系統の送信信号とする。この場合、ミキサ212Iに供給する周波数信号は、移相器213で信号位相を90°シフトさせてあり、Iチャンネルの信号とQチャンネルの信号とが直交変調されるようにしてある。
【0074】
加算器214の出力は、バッファアンプ215を介して電力増幅器204に供給し、所定の送信電力となるように増幅する。電力増幅器204で増幅された信号は、送受信切換器205と高周波フィルタ206を介してアンテナ207に供給し、アンテナ207から無線送信させる。高周波フィルタ206は、この通信装置で送信及び受信する周波数帯域以外の信号成分を除去するバンド・パス・フィルタである。
【0075】
受信系の構成としては、アンテナ207で受信した信号を、高周波フィルタ206及び送受信切換器205を介して高周波部220に供給する。高周波部220では、受信信号を低ノイズアンプ(LNA)221で増幅した後、バンド・パス・フィルタ222に供給して、受信周波数帯域以外の信号成分を除去し、除去された信号をバッファアンプ223を介してミキサ224に供給する。そして、チャンネル選択用PLL回路251から供給される周波数信号を混合して、所定の送信チャンネルの信号を中間周波信号とし、その中間周波信号をバッファアンプ225を介して中間周波回路230に供給する。
【0076】
中間周波回路230では、供給される中間周波信号をバッファアンプ225を介してバンド・パス・フィルタ232に供給して、中間周波信号の帯域以外の信号成分を除去し、除去された信号を自動ゲイン調整回路(AGC回路)233に供給して、ほぼ一定のゲインの信号とする。自動ゲイン調整回路233でゲイン調整された中間周波信号は、バッファアンプ234を介して復調器240に供給する。
【0077】
復調器240では、供給される中間周波信号をバッファアンプ241を介してミキサ242I及び242Qに供給して、中間周波用PLL回路252から供給される周波数信号を混合して、受信したIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。この場合、I信号用のミキサ242Iには、移相器243で信号位相を90°シフトさせた周波数信号を供給するようにしてあり、直交変調されたIチャンネルの信号成分とQチャンネルの信号成分を復調する。
【0078】
復調されたIチャンネルとQチャンネルの信号は、それぞれバッファアンプ244I及び244Qを介してバンド・パス・フィルタ253I及び253Qに供給して、Iチャンネル及びQチャンネルの信号以外の信号成分を除去し、除去された信号をアナログ/デジタル変換器(ADC)254I及び254Qに供給してサンプリングしてデジタルデータ化し、Iチャンネルの受信データ及びQチャンネルの受信データを得る。
【0079】
ここまで説明した構成において、各バンド・パス・フィルタ202I,202Q,206,222,232,253I,253Qの一部又は全てとして、本例の構成のフィルタを適用して帯域制限することが可能である。図12の例では、各フィルタをバンド・パス・フィルタとして構成したが、所定の周波数よりも下の周波数帯域だけを通過させるロー・パス・フィルタや、所定の周波数よりも上の周波数帯域だけを通過させるハイ・パス・フィルタとして構成して、それらのフィルタに本例の構成のフィルタを適用してもよい。また、図12の例では、無線送信及び無線受信を行う通信装置としたが、有線の伝送路を介して送信及び受信を行う通信装置が備えるフィルタに適用してもよく、さらに送信処理だけを行う通信装置や受信処理だけを行う通信装置が備えるフィルタに、本例の構成のフィルタを適用してもよい。
【0080】
上述の実施の形態による通信装置によれば、帯域フィルタに本発明のカプセル封止した電気機械素子によるフィルタを用いることにより、信頼性の高い通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る電気機械素子の第1実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る電気機械素子の第2実施の形態を示す構成図である。
【図3】本発明の支柱の説明に供する第1のグラフである。
【図4】図3の曲線Iに係る第1の試料の要部の断面図である。
【図5】図3の曲線IIに係る第2の試料の要部の断面図である。
【図6】図3の曲線IIに係る第3の試料の要部の断面図である。
【図7】本発明の支柱の説明に供する第2のグラフである。
【図8】図7の曲線IIIに係る第4の試料の要部の断面図である。
【図9】A〜E 本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)である。
【図10】F〜I 本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その2)である。
【図11】J〜L 本発明に係る電気機械素子の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その3)である。
【図12】本発明に係る電気機械素子を帯域フィルタとして備えた通信装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図13】比較例に係る電気機械素子の構成図である。
【符号の説明】
【0082】
31、61・・電気機械素子、32・・基板、33・・下部電極(出力電極)、34・・空間、35・・ビーム(可動子)、36・・電気機械素子本体、37・・空間、38・・オーバーコート膜、39〔39A,39B〕・・下部配線、40〔40A,40B〕・・支持部、49・・貫通口、50・・封止膜、52・・支柱、62・・入力電極(下部電極)、63・・出力電極(下部電極)、64・・電気機械素子本体、67・・犠牲層、68A,68B・・開口部、69・・犠牲層、71A,71B・・開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と可動子を有する電気機械素子本体と、
前記電気機械素子本体を、空間を保持して封止したオーバーコート膜とを備え、
前記オーバーコート膜と前記可動子との間に支柱が設けられている
ことを特徴とする電気機械素子。
【請求項2】
前記支柱は、前記可動子の1箇所以上の位置に対応して設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電気機械素子。
【請求項3】
前記支柱は、前記可動子の支持部に対応する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電気機械素子。
【請求項4】
下部電極と可動子を有する共振器本体と、
前記共振器本体を、空間を保持して封止したオーバーコート膜とを備え、
前記オーバーコート膜と前記可動子との間に支柱が設けられている
ことを特徴とする共振器。
【請求項5】
前記支柱は、前記可動子の1箇所以上の位置に対応して設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項6】
前記支柱は、前記可動子の支持部内側端から0.5μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置から前記外側端を含んで連続した幅を有している
ことを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項7】
前記支柱は、一定の幅を有し、前記可動子の支持部内側端から1.0μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置に設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項8】
電気機械素子本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、前記犠牲層に前記可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、
前記開口部を含んで前記犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、
前記オーバーコート膜に形成した貫通口を介して前記犠牲層を除去し、前記支柱に支持された前記オーバーコート膜を形成する工程と、
前記オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有する
ことを特徴とする電気機械素子の製造方法。
【請求項9】
前記支柱を前記可動子の1箇所上の位置に対応するように形成する
ことを特徴とする請求項8記載の電気機械素子の製造方法。
【請求項10】
前記支柱を、前記可動子の支持部に対応した位置に設ける
ことを特徴とする請求項8記載の電気機械素子の製造方法。
【請求項11】
共振器本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、前記犠牲層に前記可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、
前記開口部を含んで前記犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、
前記オーバーコート膜に形成した貫通口を介して前記犠牲層を除去し、前記支柱に支持された前記オーバーコート膜を形成する工程と、
前記オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有する
ことを特徴とする共振器の製造方法。
【請求項12】
前記支柱を前記可動子の1箇所上の位置に対応するように形成する
ことを特徴とする請求項11記載の共振器の製造方法。
【請求項13】
前記支柱を、前記可動子支持部内側端から0.5μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置から前記外側端を含んで連続した幅を有するように形成する
ことを特徴とする請求項11記載の共振器の製造方法。
【請求項14】
前記支柱を、一定の幅で前記可動子の支持部内側端から1.0μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置に存するように形成する。
ことを特徴とする請求項11記載の共振器の製造方法。
【請求項1】
下部電極と可動子を有する電気機械素子本体と、
前記電気機械素子本体を、空間を保持して封止したオーバーコート膜とを備え、
前記オーバーコート膜と前記可動子との間に支柱が設けられている
ことを特徴とする電気機械素子。
【請求項2】
前記支柱は、前記可動子の1箇所以上の位置に対応して設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電気機械素子。
【請求項3】
前記支柱は、前記可動子の支持部に対応する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電気機械素子。
【請求項4】
下部電極と可動子を有する共振器本体と、
前記共振器本体を、空間を保持して封止したオーバーコート膜とを備え、
前記オーバーコート膜と前記可動子との間に支柱が設けられている
ことを特徴とする共振器。
【請求項5】
前記支柱は、前記可動子の1箇所以上の位置に対応して設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項6】
前記支柱は、前記可動子の支持部内側端から0.5μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置から前記外側端を含んで連続した幅を有している
ことを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項7】
前記支柱は、一定の幅を有し、前記可動子の支持部内側端から1.0μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置に設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の共振器。
【請求項8】
電気機械素子本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、前記犠牲層に前記可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、
前記開口部を含んで前記犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、
前記オーバーコート膜に形成した貫通口を介して前記犠牲層を除去し、前記支柱に支持された前記オーバーコート膜を形成する工程と、
前記オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有する
ことを特徴とする電気機械素子の製造方法。
【請求項9】
前記支柱を前記可動子の1箇所上の位置に対応するように形成する
ことを特徴とする請求項8記載の電気機械素子の製造方法。
【請求項10】
前記支柱を、前記可動子の支持部に対応した位置に設ける
ことを特徴とする請求項8記載の電気機械素子の製造方法。
【請求項11】
共振器本体の可動子を覆う犠牲層を形成し、前記犠牲層に前記可動子に達する支柱形成用の開口部を形成する工程と、
前記開口部を含んで前記犠牲層上にオーバーコート膜と支柱を形成する工程と、
前記オーバーコート膜に形成した貫通口を介して前記犠牲層を除去し、前記支柱に支持された前記オーバーコート膜を形成する工程と、
前記オーバーコート膜の貫通口を封止する工程とを有する
ことを特徴とする共振器の製造方法。
【請求項12】
前記支柱を前記可動子の1箇所上の位置に対応するように形成する
ことを特徴とする請求項11記載の共振器の製造方法。
【請求項13】
前記支柱を、前記可動子支持部内側端から0.5μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置から前記外側端を含んで連続した幅を有するように形成する
ことを特徴とする請求項11記載の共振器の製造方法。
【請求項14】
前記支柱を、一定の幅で前記可動子の支持部内側端から1.0μm離れた位置と支持部外側端との間の任意の位置に存するように形成する。
ことを特徴とする請求項11記載の共振器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−276089(P2007−276089A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109097(P2006−109097)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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