説明

電気泳動表示装置、電子機器

【課題】電気光学装置における表示品質の向上を図ること。
【解決手段】第一基板と第二基板の間に設けられ、画素電極及び共通電極を介して与えられる電気的刺激に応じて光学特性が変化する表示材料と、表示材料の光学特性の制御に用いるデータ信号を供給するデータ信号処理回路(103)と、表示材料の光学特性の制御に用いる走査信号を供給する走査信号処理回路(104)と、少なくとも走査信号処理回路及びデータ信号処理回路の形成領域を平面的に覆うように重畳して配置されるダミー電極(115)と、を備える電気光学装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素電極を配置した基板と対向電極を有する対向基板との間に液相分散媒と電気泳動粒子とを含む電気泳動分散液を封入して構成される電気泳動表示装置、又はこれに類する構造を採用した電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置は、マトリクス状に画素電極を配置した基板と対向電極を有する対向基板との間に液相分散媒と電気泳動粒子とを含む電気泳動分散液を表示材料として封入することで構成されており、画素電極と対向電極との間の電位差に応じて電気泳動粒子の分布状態が変化し電気泳動分散液の光学特性変化を利用して画像が形成される。このような電気泳動表示装置の従来例は、例えば、特開2001−125149号公報(特許文献1)に開示されている。電気泳動表示装置の駆動方法は、単純マトリクス駆動とアクティブマトリクス駆動とに大きく分けられる。一般に、電気泳動表示材料は明確な閾値特性を示さないため、各画素電極に個別に設けたスイッチング素子をそれぞれ接続し、このスイッチング素子によって各画素が制御できるアクティブマトリクス駆動を採用するのが好ましい。
【0003】
図9は、従来のアクティブマトリクス駆動型の電気泳動表示装置の構成例を説明するブロック図である。図9に示す電気泳動表示装置600は、複数のデータ信号線601と、これらのデータ信号線601に交差する複数の走査信号線602と、データ信号線601に接続されたデータ信号処理回路603と、走査信号線602に接続された走査信号処理回路604と、データ信号線601と走査信号線602との各交点に設けられたスイッチング素子605及び画素部606と、を含んで構成されている。データ信号処理回路603及び走査信号処理回路604は、それぞれシリアル入力/パラレル出力のシフトレジスタを含み、それにより入力線の本数を低減するように構成されている。すなわち、シフトレジスタの一端から入力されるパルス入力はクロックに同期して順々に送られることによりパラレル・データに変換され、シフトレジスタ以外の回路により適当な変換(ラッチ、レベルシフタ等)が施された後に、データ信号及び走査信号として出力される。
【0004】
ここで、データ信号処理回路603及び走査信号処理回路604からデータ信号線601及び走査信号線602へ適宜信号を供給し、スイッチング素子605のオン/オフ状態を制御することにより、画素部606に対して電気的作用を及ぼすことが出来る。例えば、データ信号線601に対して何らかのデータ信号を供給した状態で、複数の走査信号線602のうちのいずれか一本だけを選択するような走査信号を供給すると、選択された走査信号線602に接続されたスイッチング素子605がオンとなり、データ信号線601と画素部606とが実質的に導通する。このとき、データ信号線601に供給されている信号(電圧)は、オンとなったスイッチング素子605を介して画素部606に供給されることになる。一方、選択されていない走査信号線に接続されたスイッチング素子605はオフのままであり、データ信号線601と画素部606とは実質的に非導通である。このようなアクティブマトリクス駆動型の電気泳動表示装置600においては、所望の走査信号線602に接続されたスイッチング素子605だけを選択的にオン/オフすることができるので、クロストークの問題が生じにくく、また、回路動作の高速化が可能である。
【0005】
図10は、従来の構成例の電気泳動表示装置の構成を説明する断面図である。図10に示すように、各画素部606においては、第一基板612上に形成された画素電極607と、第二基板613上に形成された共通電極608とが所定の間隔(通常は数μmから数十μm程度)を持って対向して配置され、これらの電極で形成された空間に、液相分散媒609と電気泳動粒子610とを含む電気泳動分散液611が封入されている。第一基板612と画素電極607との間には半導体層614が介在しており、当該半導体層614には、スイッチング素子605や前述のデータ信号処理回路603及び走査信号処理回路604などが含まれる。ここで、図10では説明の便宜上、データ信号線601と走査信号線602とは省略されている。かかる構造において、共通電極608を所定の電圧に保持した状態で前述のような操作を行い画素電極607に所望のデータ信号(電圧)を供給すると、共通電極608と画素電極607との間に発生する電圧差(電界)に応じて電気泳動粒子610が泳動し、その空間分布状態が変化する。このような原理から、各画素部606に供給するデータ信号(電圧)を適当に制御することにより、所望の画像を得ることが出来る。
【0006】
ところで、上述したような電気泳動表示装置では、その材料特性上、直流電圧の印加や電界の形成によって電気泳動粒子610が泳動してしまう。つまり、電気泳動粒子610を制御するために印加する電圧によって表示部以外の個所で、電気泳動粒子610に影響を与えるような一定方向の電界が形成されてしまう状態では、上記電気泳動粒子610の泳動が確認される。その結果、表示画面上に斑や輝線等が発生し、表示品質が悪化するという不都合が生じる場合がある。同様な不都合は、電気泳動現象に類する物理現象を利用した電気光学装置一般に言えることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−125149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、電気光学装置における表示品質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様の本発明は、複数の画素を含んでなる表示部を備える電気光学装置であって、複数の画素電極が形成された第一基板と、共通電極が形成された第二基板と、上記第一基板と上記第二基板の間に設けられ、上記画素電極及び上記共通電極を介して与えられる電気的刺激に応じて光学特性が変化する表示材料と、上記画素電極と上記第一基板との間に設けられる複数のデータ信号線と、上記画素電極と上記第一基板との間であって上記データ信号線の上側又は下側に設けられ、上記データ信号線に対して交差する複数の走査信号線と、上記第一基板の上側であって上記共通電極及び上記第二基板の端部よりも平面的に内側に設けられ、上記複数のデータ信号線に対して上記表示材料の光学特性の制御に用いるデータ信号を供給するデータ信号処理回路と、上記第一基板の上側であって上記共通電極及び上記第二基板の端部よりも平面的に内側に設けられ、上記複数の走査信号線に対して上記表示材料の光学特性の制御に用いる走査信号を供給する走査信号処理回路と、上記第一基板の上側で絶縁膜を介して設けられており、少なくとも上記走査信号処理回路及び上記データ信号処理回路の形成領域を平面的に覆うように重畳して配置されるダミー電極と、を備えることを特徴とする電気光学装置である。そして、例えば、外部駆動装置から上記ダミー電極に対する所定のダミー電極制御信号を供給可能に電気光学装置を構成することによって、ダミー電極に対する電圧印加がなされる。
【0010】
かかる構成によれば、ダミー電極に電圧を印加することにより、ダミー電極と共通電極との間の表示材料の光学特性を制御可能となる。よって、データ信号処理回路や走査信号処理回路による影響をトレードオフできるような光学特性を実現する電圧を印加することにより輝線や斑の発生を抑制して、電気光学装置の表示品質を向上させることが可能となる。
【0011】
上記ダミー電極制御信号は、上記ダミー電極と上記共通電極とが常に同電位となるように変化する信号であることが好ましい。
【0012】
これにより、ダミー電極に供給された電位と共通電極に供給された電位とで形成される電位差がなくなるため、データ信号処理回路等の影響を抑制し、ダミー電極近傍における表示材料の光学特性を一定に保つことができる。
【0013】
また、上記ダミー電極制御信号は、低電圧側の定電圧電源Vssに供給される信号と同一の信号であることも好ましい。
【0014】
これにより、共通電極の入力信号で発生する容量やノイズ等に影響されて、走査信号処理回路及びデータ信号処理回路の特性変動や誤動作等を防止することができる。
【0015】
好ましくは、上記ダミー電極は、上記表示部の周辺に額縁状に設けられる。
【0016】
これにより、表示部の周辺エリアの表示材料を全て同じ光学特性に制御することが可能となる。したがって、ダミー電極制御信号の内容を変えることにより表示部の周辺エリアを任意の表示色に制御し、例えば、黒い額縁、白い額縁等の状態を実現することができる。
【0017】
好ましくは、上記表示材料は、液相分散媒と電気泳動粒子とを含む電気泳動分散液である。
【0018】
これにより、表示品質に優れた電気泳動表示装置が得られる。
【0019】
また、上記電気泳動分散液は、マイクロカプセルに封入されていることが好ましい。
【0020】
これにより、電気泳動粒子の沈降や凝集を減少させ、表示品質を更に向上することができる。
【0021】
第二の態様の本発明は、上記の電気光学装置を備えて構成される電子機器である。ここで「電子機器」とは、電気回路や表示部などを備えた機器一般をいい、その構成に特に限定はない。かかる電子機器としては、例えば、いわゆる電子ペーパ、ICカード、携帯電話、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、リア型またはフロント型のプロジェクター、テレビジョン(TV)、ロールアップ式TV、ファクシミリ、デジタルカメラ、PDA、電子手帳等が含まれる。
【0022】
これにより、表示品質の優れた表示部を備える電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態の電気泳動表示装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】図1に示す電気泳動表示装置の回路構成を説明する図である。
【図3】図1に示す電気泳動表示装置のIII−III線における断面構造を模式的に示す図である。
【図4】電気泳動表示装置の他の構成を説明するブロック図である。
【図5】ダミー電極制御信号の一例を説明する波形図である。
【図6】ダミー電極制御信号の他の例を説明する波形図である。
【図7】ダミー電極制御信号の他の例を説明する波形図である。
【図8】電子機器の例について説明する斜視図である。
【図9】従来のアクティブマトリクス駆動型の電気泳動表示装置の構成例を説明するブロック図である。
【図10】従来の構成例の電気泳動表示装置の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、一実施形態の電気泳動表示装置の構成を説明するブロック図である。図2は、図1に示す電気泳動表示装置の回路構成を説明する図である。図3は、図1に示す電気泳動表示装置のIII−III線における断面構造を模式的に示す図である。
【0026】
図1〜図3に示す本実施形態の電気泳動表示装置100は、複数の画素を含んでなる表示部120を備え、当該表示部120を制御することによって画像表示を行うものであり、複数のデータ信号線101、複数の走査信号線102、データ信号処理回路103、走査信号処理回路104、スイッチング素子105、画素部106、画素電極107、共通電極108、電気泳動分散液111、第一基板112、第二基板113、半導体層114、ダミー電極115、共通電極接続用電極116、外部接続端子117、導電材118、を含んで構成されている。
【0027】
第一基板112は、画素電極107等を支持するものであり、ガラス、プラスチック等からなる。第一基板112の上面には半導体層114が設けられている。
【0028】
半導体層114は、上述したデータ信号処理回路103、走査信号処理回路104、スイッチング素子105などが含まれており、最表面は酸化硅素膜などの絶縁膜によって覆われている。より詳細には、半導体層114には多数の薄膜トランジスタ(TFT)が含まれており、これらを適宜組み合わせることによってデータ信号処理回路103や走査信号処理回路104がそれぞれ構成されている。同様に、半導体層114に含まれる一又は複数の薄膜トランジスタを用いて各スイッチング素子105が構成されている。本実施形態の半導体層114は、公知の薄膜転写技術を用いて、石英基板等の素子形成に適した高品質な基板上で形成した半導体層114を第一基板112へ転写することによって形成されている。
【0029】
画素電極107は、第一基板112の上側(本例では半導体層114の上面)に設けられている。これらの画素電極107は、例えばITO膜などの導電膜を所定形状にパターニングすることによって形成されている。
【0030】
ダミー電極115は、第一基板112の上側(本例では半導体層114の上側)に設けられており、表示部120の周辺に額縁状に設けられる(図1参照)。このダミー電極115は、例えばITO膜などの導電膜を所定形状にパターニングすることによって形成されている。本例では、画素電極107の形成時に併せてダミー電極115を形成している。
【0031】
なお、このダミー電極115は、少なくともデータ信号処理回路103及び走査信号処理回路104の形成領域を平面的に覆うように重畳して配置されていればよい。この場合の構成例を図4に示す。図4に示す電気泳動表示装置100aでは、各ダミー電極115aは、データ信号処理回路103及び走査信号処理回路104の形成領域のほぼ直上に当該形成領域を覆うように設けられている。
【0032】
共通電極接続用電極116は、導電材118と協働して、第二基板113側に設けられる共通電極108を第一基板112側の回路と電気的に接続する機能を担う。この共通電極接続用電極116は、例えばITO膜などの導電膜を所定形状にパターニングすることによって形成されている。本例では、画素電極107の形成時に併せて共通電極接続用電極116を形成している。
【0033】
外部接続端子117は、本実施形態の電気泳動表示装置100を上位装置と接続するためのインタフェースであり、電気泳動表示装置100の外縁近傍の所定位置(本例では図中左下側)に設けられている。
【0034】
第二基板113は、共通電極108等を支持するものであり、ガラス、プラスチック等からなる。
【0035】
共通電極108は、第二基板113の上側の略全面に設けられている。この共通電極107は、例えばITO膜などの導電膜によって形成されている。
【0036】
電気泳動分散液111は、第一基板112と第二基板113の間に設けられ、画素電極107及び共通電極108を介して与えられる電気的刺激(本例では電位差)に応じて光学特性が変化する。本実施形態の電気泳動分散液111は、液相分散媒と電気泳動粒子とを含んでおり、マイクロカプセルに封入されている。各画素電極107と共通電極108との間に電気泳動分散液111を封入したマイクロカプセルが配置されることにより、各画素電極107によって画定される領域ごとに電気泳動素子が構成される。この電気泳動素子とこれに並列に接続されるキャパシタ(図示しないが半導体層114に含まれる)とを含んで画素部106が構成されており、当該画素部106に対する電圧の印加状態がスイッチング素子105によって制御される。
【0037】
複数のデータ信号線101は、画素電極107と第一基板112との間(本例では半導体層114内)に設けられており、データ信号処理回路103により生成されるデータ信号を各スイッチング素子105に伝達する機能を担う。
【0038】
複数の走査信号線102は、画素電極107と第一基板112との間(本例では半導体層114内)であってデータ信号線101の上側又は下側に、データ信号線101に対して交差して設けられており、走査信号処理回路104により生成される走査信号を各スイッチング素子105に伝達する機能を担う。
【0039】
データ信号処理回路103は、複数のデータ信号線101に対して電気泳動分散液111の光学特性の制御に用いるデータ信号を供給する。本実施形態のデータ信号処理回路103は、図2に示すように、第一基板112の上側(本例では半導体層114内)であって、共通電極108及び第二基板113の端部よりも平面的に内側に位置するように設けられている。
【0040】
走査信号処理回路104は、複数の走査信号線102に対して電気泳動分散液111の光学特性の制御に用いる走査信号を供給する。本実施形態の走査信号処理回路104についてもデータ信号処理回路103と同様に、第一基板112の上側(本例では半導体層114内)であって、共通電極108及び第二基板113の端部よりも平面的に内側に位置するように設けられている(図示を省略)。
【0041】
本実施形態の電気泳動表示装置100(又は100a)はこのような構成を有しており、次にダミー電極115(又は115a)に対して供給される制御信号の内容について詳細に説明する。なお、以下の説明ではダミー電極115を例にして説明するが、図4に示す構成例の電気泳動表示装置100aにおけるダミー電極115aに対しても同様の制御信号を供給することができる。また以下では、ダミー電極115に対して供給される制御信号を「ダミー電極制御信号」と称して説明を行う。このダミー電極制御信号は、例えば、電気泳動表示装置100とは別の外部駆動装置(上位装置)から供給される。
【0042】
図5は、ダミー電極制御信号の一例を説明する波形図である。図5に示す例では、ダミー電極115には、リフレッシュ期間(リセット期間)においてHレベル、その後の書き込み期間においてLレベルとなるダミー電極制御信号が供給される(図5(A))。このダミー電極制御信号は、共通電極108に供給される共通電極信号と同じ波形の信号である(図5(B))。すなわち、本実施形態ではダミー電極制御信号として、ダミー電極と共通電極とが常に同電位となるように変化する信号が与えられる。また、図5に示す例では、リフレッシュ期間においては全走査線102に対してHレベルの走査信号が与えられる(図5(C)〜図5(E))。このとき、全データ信号線101にはLレベルのデータ信号が与えられていることから、各画素電極107と共通電極108との間には所定の電位差(例えば10V程度)が生じることになり、全ての画素部106が所定色(例えば、白色)に対応した光学特性に制御される。その後、各走査線102に対して順次、走査信号が与えられ(図5(C)〜図5(E))、表示すべき内容に応じたデータ信号の書き込みがなされ(図5(F)〜図5(H))、各画素部106の光学特性が制御される。
【0043】
図5に例示するような駆動波形を採用することにより、ダミー電極115に供給された電位と共通電極108に供給された電位とで形成される電位差がなくなるため、データ信号処理回路103等の影響を抑制し、ダミー電極115の近傍における電気泳動分散液111の光学特性を一定に保つことができる。
【0044】
図6は、ダミー電極制御信号の他の例を説明する波形図である。図6に示す例では、ダミー電極115には、リフレッシュ期間においてLレベル、その後の書き込み期間においてもLレベルであるダミー電極制御信号が供給される(図6(A))。本例のダミー電極制御信号は、低電圧側の定電圧電源Vssに供給される信号と同一の信号とされている。共通電極108には、リフレッシュ期間においてHレベル、その後の書き込み期間においてLレベルとなる共通電極信号が供給される(図6(B))。また、図6に示す例では、リフレッシュ期間においては全走査線102に対してHレベルの走査信号が与えられる(図6(C)〜図6(E))。このとき、全データ信号線101にはLレベルのデータ信号が与えられていることから、各画素電極107と共通電極108との間には所定の電位差(例えば10V程度)が生じることになり、全ての画素部106が所定色(例えば、白色)に対応した光学特性に制御される。その後、各走査線102に対して順次、走査信号が与えられ(図6(C)〜図6(E))、表示すべき内容に応じたデータ信号の書き込みがなされ(図6(F)〜図6(H))、各画素部106の光学特性が制御される。
【0045】
図6に例示するような駆動波形を採用することにより、共通電極108の入力信号で発生する容量やノイズ等に影響されて、走査信号処理回路104及びデータ信号処理回路103の特性変動や誤動作等を防止することができる。すなわち、従来の構成では、書き込み時と消去時とで共通電極108の電位を可変(所謂コモン振り)にしていることから共通電極608の電位が変動するため、共通電極608とデータ信号処理回路601及び走査線信号処理回路602との相互間で容量成分が生じたり、ノイズが発生したりする場合がある。そして、これらの容量成分やノイズに影響されて、走査線制御回路104及びデータ信号制御回路103が動作不安定となったり、誤動作したりする場合があったが、図6に例示するようなダミー電極制御信号を採用することにより、当該不都合を回避できるようになる。
【0046】
図7は、ダミー電極制御信号の他の例を説明する波形図である。図7では、ダミー電極115に対応する領域を黒色表示に制御するための駆動波形の例が説明されている。図7に示す例では、ダミー電極115には、リフレッシュ期間においてLレベル、その後の書き込み期間の初めにおいてHレベル(例えば10V)であるダミー電極制御信号が供給される(図7(A))。共通電極108には、リフレッシュ期間においてHレベル、その後の書き込み期間においてLレベルとなる共通電極信号が供給される(図7(B))。これにより、ダミー電極に対して黒色書き込みがなされることになり、表示部120の周辺(額縁部分)の表示色を黒色にすることができる。なお、このときのダミー電極制御信号を中間的なレベル(例えば5V程度)とすることによって、中間色の書き込みを行うこともできる。書き込み期間においてダミー電極制御信号に任意の電位を与えることによって、表示部120の周辺の表示色を任意に制御できる。また、図7に示す例においても、リフレッシュ期間においては全走査線102に対してHレベルの走査信号が与えられる(図7(C)〜図7(E))。このとき、全データ信号線101にはLレベルのデータ信号が与えられていることから、各画素電極107と共通電極108との間には所定の電位差(例えば10V程度)が生じることになり、全ての画素部106が所定色(例えば、白色)に対応した光学特性に制御される。その後、各走査線102に対して順次、走査信号が与えられ(図7(C)〜図7(E))、表示すべき内容に応じたデータ信号の書き込みがなされ(図7(F)〜図7(H))、各画素部106の光学特性が制御される。
【0047】
次に、本実施形態にかかる電気泳動表示装置100(又は100a)を備える電子機器の例について説明する。
【0048】
図8は、電子機器の例について説明する斜視図であり、電子機器の一例としていわゆる電子ペーパが例示されている。図8(A)に示すように、本実施形態の電子ペーパは、上述した実施形態の電気泳動表示装置100(又は100a)を用いて表示部が構成されている。また、図8(B)は、電子ペーパを2つ折りに構成した場合の例であり、電気泳動表示装置100(又は100a)を用いて各表示部が構成されている。なお、例示の電子ペーパの他にも、表示部を備える各種の電子機器(例えば、ICカード、PDA、電子手帳等)について上述した実施形態にかかる電気泳動表示装置を適用し得る。
【0049】
このように本実施形態によれば、ダミー電極に電圧を印加することにより、ダミー電極と共通電極との間の電気泳動分散液の光学特性を任意に制御可能となる。よって、データ信号処理回路や走査信号処理回路による影響をトレードオフできるような光学特性を実現する電圧を印加することにより輝線や斑の発生を抑制して、電気光学装置の表示品質を向上させることが可能となる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、電気光学装置の一例として表示材料に電気泳動分散液を用いる電気泳動表示装置を挙げたが、これに類する原理を採用する他の電気光学装置に対しても同様にして本発明を適用し、表示品質の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
100…電気泳動表示装置、101…データ信号線、102…走査信号線、103…データ信号処理回路、104…走査信号処理回路、105…スイッチング素子、106…画素部、107…画素電極、108…共通電極、111…電気泳動分散液、112…第一基板、113…第二基板、114…半導体層、115…ダミー電極、116…共通電極接続用電極、117…外部接続端子、118…導電材、120…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を含んでなる表示部を備える電気光学装置であって、
複数の画素電極が形成された第一基板と、
共通電極が形成された第二基板と、
前記第一基板と前記第二基板の間に設けられ、前記画素電極及び前記共通電極を介して与えられる電気的刺激に応じて光学特性が変化する表示材料と、
前記画素電極と前記第一基板との間に設けられる複数のデータ信号線と、
前記画素電極と前記第一基板との間であって前記データ信号線の上側又は下側に設けられ、前記データ信号線に対して交差する複数の走査信号線と、
前記第一基板の上側であって前記共通電極及び前記第二基板の端部よりも平面的に内側に設けられ、前記複数のデータ信号線に対して前記表示材料の光学特性の制御に用いるデータ信号を供給するデータ信号処理回路と、
前記第一基板の上側であって前記共通電極及び前記第二基板の端部よりも平面的に内側に設けられ、前記複数の走査信号線に対して前記表示材料の光学特性の制御に用いる走査信号を供給する走査信号処理回路と、
前記第一基板の上側で絶縁膜を介して設けられており、少なくとも前記走査信号処理回路及び前記データ信号処理回路の形成領域を平面的に覆うように重畳して配置されるダミー電極と、
を備える、電気光学装置。
【請求項2】
外部駆動装置から前記ダミー電極に対して所定のダミー電極制御信号を供給可能に構成されている、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記ダミー電極制御信号は、前記ダミー電極と前記共通電極とが常に同電位となるように変化する信号である、請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記ダミー電極制御信号は、低電圧側の定電圧電源Vssに供給される信号と同一の信号である、請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記ダミー電極は、前記表示部の周辺に額縁状に設けられる、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記表示材料は、液相分散媒と電気泳動粒子とを含む電気泳動分散液である、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記電気泳動分散液は、マイクロカプセルに封入されている、請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電気光学装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−100148(P2011−100148A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290351(P2010−290351)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【分割の表示】特願2005−37334(P2005−37334)の分割
【原出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】