説明

電気活性層の形成方法

実質的に平坦なプロファイルを有する電気活性材料の層を形成する方法が提供されている。この方法は:少なくとも1つの活性領域を有するワークピースを提供するステップ;電気活性材料を含む液体組成物をワークピースにおける活性領域上に堆積させて、湿潤層を形成するステップ;ワークピース上の湿潤層を、−25〜80℃の範囲内の制御温度、および、10-6〜1,000Torrの範囲内の減圧下で、1〜100分間の第1の期間の間処理して部分乾燥層を形成するステップ;部分乾燥層を、1〜50分間の第2の期間の間100℃を超える温度に加熱して乾燥層を形成するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その全体が参照により援用されている、2009年3月6日に出願の米国仮特許出願第61/158,094号明細書に基づく、米国特許法第119条(e)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、全体として電気活性層の形成方法に関する。本開示はさらに、この方法により形成された少なくとも1つの電気活性層を有する電子素子に関する。
【背景技術】
【0003】
電子素子としては、液晶ディスプレイ(「LCD」)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、太陽電池等を挙げることが可能である。電子素子の製造は、溶液堆積技術を用いて行われ得る。電子素子を形成する1つの方法は、印刷(例えば、インクジェット印刷、連続印刷等)により基材上に有機層を堆積させる方法である。印刷プロセスにおいては、印刷される液体組成物は、有機溶剤、水性溶剤または溶剤の組み合わせと共に、溶液、分散体、エマルジョンまたは懸濁液中に有機材料を含む。印刷の後、溶剤は蒸発され、有機材料が残留して電子素子の有機層が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
向上した性能を有する素子がもたらされる堆積プロセスに対する要求が継続的に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電気活性材料の層を形成する方法が提供されている。この方法は:
少なくとも1つの活性領域を有するワークピースを提供するステップ、
電気活性材料を含む液体組成物を活性領域におけるワークピース上に堆積させて、湿潤層を形成するステップ、
ワークピース上の湿潤層を、−25℃〜80℃の範囲内の制御温度、および、10-6Torr〜1,000Torrの範囲内の減圧下で、1〜100分間の第1の期間の間処理して、部分乾燥層を形成するステップ、
部分乾燥層を、1〜50分間の第2の期間の間100℃を超える温度に加熱して乾燥層を形成するステップ、
を含み、ここで、乾燥層は、活性領域において実質的に平坦なプロファイルを有する。
【0006】
陽極、陰極、および、これらの間に少なくとも1つの電気活性層を備える、少なくとも1つの活性領域を有する電子素子が提供されており、ここで、電気活性層は、液相堆積により形成され、活性領域において実質的に平坦なプロファイルを有している。
【0007】
前述の概要および以下の詳細な説明は単なる例示および説明であり、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明を制限しない。
【0008】
実施形態は、本明細書に提示されているコンセプトの理解を向上させるために添付の図に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】不均一な膜厚を有する乾燥電気活性膜の例示を含む。
【図2】実質的に平坦なプロファイルを有する乾燥電気活性膜の例示を含む。
【図3】例示的な電子素子の例示を含む。
【図4】実施例1からの層厚のグラフを含む。
【図5】実施例2からの層厚のグラフを含む。
【図6】比較例Aからの層厚のグラフを含む。
【0010】
当業者は、図中の物体が単純さおよび明確さのために示されており、必ずしも縮尺どおりには描画されていないことを認識する。例えば、図中の物体のいくつかの寸法は、実施形態の理解の向上を助けるために、他の物体に比して強調されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
多くの態様および実施形態が上記に記載されているが、これらは単に例示的であり、限定的ではない。この明細書を読了した後には、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく他の態様および実施形態が可能であることを認識するであろう。
【0012】
任意の1つまたは複数の実施形態の他の特性および有益性は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。詳細な説明には、先ず定義および用語の明確化、続いて、プロセス、電子素子、ならびに、実施例が記載されている。
【0013】
1.定義および用語の明確化
以下に記載されている実施形態の詳細に入る前に、いくつかの用語が定義または明確化されている。
【0014】
「アパーチャ比」という用語は、放射線の照射に利用されるか、または、放射線に反応応するピクセル面積対ピクセルの総面積の比を意味することが意図されている。
【0015】
層、材料、構成要素または構造に関する場合、「電荷輸送」という用語は、このような層、材料、構成要素または構造が、比較的効率が良く、および、電荷の損失が少ない層、材料、構成要素または構造の厚さを貫通する電荷の移動を促進させることを意味することが意図されている。「正孔輸送」とは、正電荷に関する電荷輸送を指す。「電子輸送」は、陰電荷に関する電荷輸送を指す。発光材料がいくらかの電荷輸送特性を有していてもよいが、「電荷輸送層、材料、構成要素または構造」という用語に、発光が主な機能である層、材料、構成要素または構造が含まれることは意図されていない。
【0016】
「電気活性」という用語は、層または材料を称して、素子の動作を電子的に促進させる層または材料を示すことが意図される。活性材料の例としては、これらに限定されないが、電荷を伝導し、注入し、輸送し、または、遮断する材料が挙げられ、ここで、電荷は電子または正孔のいずれかであることが可能であり、または、材料は、放射線を放射するか、あるいは、放射線が照射されると電子−正孔対の濃度変化を示す。不活性材料の例としては、これらに限定されないが、平坦化材料、絶縁材料および環境バリア材料が挙げられる。
【0017】
「電子素子」という用語は、総称して、適当に電気的に接続されて適切な電位が供給された場合に機能を発揮する、一連の回路、電子部品、または、任意のこれらの組み合わせを意味することが意図されている。電子素子は、システムに含まれているか、または、その一部であればよい。電子素子の例としては、これらに限定されないが、ディスプレイ、センサアレイ、コンピュータシステム、アビオニクスシステム、自動車、携帯電話、他の民生電子製品あるいは工業電子製品、または、任意のこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
「ゲスト材料」という用語は、ホスト材料を含む層において、このような材料の不在下での層の電子的特徴、または、放射線の照射、受光またはフィルタリングの標的波長と比して、層の電子的特徴、または、放射線の照射、受光またはフィルタリングの標的波長を変化させる材料を意味することが意図されている。
【0019】
「正孔注入」という用語は、層、材料、構成要素または構造に関する場合、陽極に隣接して、電極機能を促進させる、導電材料または半導体材料、層、構成要素または構造を意味することが意図されている。
【0020】
「ホスト材料」という用語は、通常は、層の形態であり、ゲスト材料が添加されていてもいなくてもよい材料を意味することが意図されている。ホスト材料は、電子的特徴または放射線を、放射、受光あるいはフィルタリングする能力を有していてもいなくてもよい。
【0021】
「層」という用語は用語「フィルム」と同義的に用いられ、所望の領域を被覆するコーティングを指す。この用語は大きさによっては限定されない。この領域は、素子全体もの大きさであるか、または、実際の表示装置などの特定の機能領域ほどの小ささであるか、または、単一のサブピクセルほどの小ささであることが可能である。
【0022】
「液体組成物」という用語は、液体媒体中に溶解されて溶液を形成し、液体媒体中に分散されて分散体を形成し、または、液体媒体中に懸濁されて懸濁液もしくはエマルジョンを形成する材料を意味することが意図されている。
【0023】
「液体媒体」という用語は、溶液、分散体、懸濁液、または、エマルジョン中の液体を意図する。「液体媒体」という用語は、1種または複数種の溶剤が存在するか否かに関わらず用いられ、従って、液体媒体は、用語の単数形または複数形(すなわち、液体媒体)で用いられる。
【0024】
「ピクセル」という用語は、アレイの最小の完結している繰返し単位を意味することが意図されている。「サブピクセル」という用語は、ピクセルの全部ではなく一部のみを形成するピクセルの一部分を意味することが意図されている。フルカラーディスプレイにおいては、フルカラーピクセルは、赤、緑および青のスペクトル領域中の原色の3つのサブピクセルを備えていることが可能である。モノクロディスプレイは、サブピクセルではなくピクセルを備えていればよい。センサアレイは、サブピクセルを備えていてもいなくてもよいピクセルを備えていることが可能である。
【0025】
「ワークピース」という用語は、プロセスシーケンスの任意の特定の点における基材を意味することが意図されている。基材は、プロセスシーケンスの最中に顕著に変化し得ないが、ワークピースは、プロセスシーケンスの最中に顕著に変化することに注意すべきである。例えば、プロセスシーケンスの開始時では、基材およびワークピースは同一である。基材上に層が形成された後、この基材は変化していないが、この時点でワークピースは基材および層を備えている。
【0026】
本明細書において用いられるところ、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、または、これらのいずれかの他の変形は、非排他的な包含をカバーしていることが意図されている。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品、または、装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されることはなく、明示的に列挙されていないか、または、このようなプロセス、方法、物品、または、装置に固有である他の要素が包含されていてもよい。さらに、そうでないと明記されていない限りにおいて、「または」は、包括的なまたはを指し、排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか一つにより満たされる:Aが真であり(または存在し)およびBが偽である(または不在である)、Aが偽であり(または不在であり)およびBが真である(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0027】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載の要素および構成成分の記載に採用されている。これは、単なる簡便性のために、および、本発明の範囲の一般的な意味を付与するために行われる。この記載は、そうでないことを意味することが明らかでなければ、1つまたは少なくとも1つを含み、および、単数形はまた複数形をも含むと読解されるべきである。
【0028】
元素周期律表中の列に関連する族数は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,第81版(2000〜2001年)に見られる「新表記」技法を用いている。
【0029】
そうでないと定義されていない限りにおいて、本明細書において用いられている技術用語および科学用語のすべては、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施または試験において本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることが可能であるが、好適な方法および材料は以下に記載されている。特定の経路が言及されていない限りにおいては、本明細書に記載されているあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。加えて、材料、方法および例は、単なる例示であり、限定的であることは意図されていない。
【0030】
本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料、加工行為および回路に関する多くの詳細は従来のものであり、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光起電力および半導電部材の技術分野における教科書および他の資料に見出され得る。
【0031】
2.プロセス
層が液相堆積法によって形成される場合、乾燥フィルムは、フィルム領域にわたって均一な厚さを有していないことが多い。これは、基材における表面不均一性、エッジ効果、未乾燥塗膜にわたる蒸発速度の差異等によって生じる可能性がある。いくつかの実施形態において、電気活性材料は、しばしばウェル構造と称される物理的閉じ込め構造を有する、ワークピース上に液相堆積法によって適用される。乾燥フィルムは、図1に示されているものなど、不均一な厚さを有している可能性がある。追加の層を有していてもよい基材10は、開口部30を画定する20で示されている閉じ込め構造を有する。乾燥電気活性膜が40で示されている。フィルムの厚さは、基材の面に垂直な方向で計測される。Eでの厚さは、Cでの厚さよりかなり厚いことが分かる。電気活性層におけるこのような厚さの不均一性は、素子性能に悪影響を有する可能性がある。OLEDにおいては、発光層における不均一性は、色の変動、低効率および短い耐用年数などの望ましくない影響を生じさせる可能性がある。
【0032】
本明細書においては、電気活性層を形成する方法が記載されている。この方法は、以下の:
少なくとも1つの活性領域を有するワークピースを提供するステップ、
電気活性材料を含む液体組成物を活性領域におけるワークピース上に堆積させて湿潤層を形成するステップ、
ワークピース上の湿潤層を、−25℃〜80℃の範囲内の制御温度、および、10-6Torr〜1,000Torrの範囲内の減圧下で、1〜100分間の第1の期間の間処理して、部分乾燥層を形成するステップ、
部分乾燥層を、1〜50分間の第2の期間の間100℃を超える温度に加熱して乾燥層を形成するステップ、
を順番に含み、乾燥層は、活性領域において実質的に平坦なプロファイルを有する。
【0033】
「実質的に平坦な」という用語は、層が、層領域の90%にわたって+/−15%以下の厚さ偏差を有していることを意味することが意図されている。いくつかの実施形態において、厚さ偏差は、層領域の90%にわたり+/−10%以下である。実質的に平坦なプロファイルを有する電気活性層が図2に示されている。図1に示されているとおり、基材10は、開口部30を画定する20で示されている閉じ込め構造を有する。乾燥後に堆積された電気活性膜が40で示されている。このフィルムは、E’での厚さがC’での厚さよりわずかに大きい、実質的に平坦なプロファイルを有している。
【0034】
ワークピースは、基材および任意の所望の介在層を備えている。いくつかの実施形態において、ワークピースは、その上にパターン化陽極層を有するTFT基材である。いくつかの実施形態において、ワークピースは、液体閉じ込め構造をさらに有する。いくつかの実施形態において、ワークピースは第1の電気活性層をさらに有し、および、第2の電気活性層が、第1の電気活性層の上に本明細書に記載の方法によって堆積されている。
【0035】
このワークピースは、少なくとも1つの活性領域を有する。活性領域は素子の機能領域である。いくつかの実施形態において、ワークピースは複数の活性領域を有する。いくつかの実施形態において、活性領域は、ピクセルまたはサブピクセルユニットに対応している。
【0036】
電気活性材料がワークピース上に液体組成物から堆積されて湿潤層を形成している。電気活性材料をその中に分散させて、実質的に均質な溶液、分散体、エマルジョンまたは懸濁液を形成することが可能である限りは、任意の液体媒体を用いることが可能である。水性、半水性および非水性液体媒体を用いることが可能である。用いられる実際の液体媒体は用いられる電気活性材料に応じることとなる。
【0037】
いくつかの実施形態において、電気活性材料は正孔注入材料である。いくつかの実施形態において、電気活性材料は正孔輸送材料である。いくつかの実施形態において、電気活性材料はホスト材料と光活性ゲスト材料との組み合わせである。
【0038】
連続および非連続技術を含む任意の液相堆積技術を用いることが可能である。連続堆積技術としては、これらに限定されないが、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロット−ダイコーティング、スプレーコーティングおよび連続ノズルコーティングが挙げられる。非連続堆積技術としては、これらに限定されないが、インクジェット印刷、グラビア印刷およびスクリーン印刷が挙げられる。いくつかの実施形態において、堆積技術は、インクジェット印刷および連続ノズルコーティングからなる群から選択される。
【0039】
液体組成物は、ワークピースの活性領域の少なくとも第1の部分に堆積される。いくつかの実施形態において、電気活性材料は、正孔注入材料または正孔輸送材料であり、ワークピースのすべての活性領域に堆積される。いくつかの実施形態において、液体組成物は、第1の色に関連する光活性材料を含み、活性領域の第1の組に堆積される。第2の色に関連する第2の光活性材料を含む第2の液体組成物は、次いで、活性領域の第2の組に堆積される。第3の色に関連する第3の光活性材料を含む第3の液体組成物は、次いで、活性領域の第3の組に堆積される。
【0040】
次いで、湿潤層は、部分的に乾燥される。これは、液体媒体のすべてではないが相当の部分が除去されることを意味する。いくつかの実施形態においては、液体媒体の75重量%超が除去され;いくつかの実施形態においては、85重量%超が除去される。いくつかの実施形態においては、液体媒体の99重量%未満が除去され;いくつかの実施形態においては、95重量%未満が除去される。この部分乾燥ステップは、制御された温度、減圧および時間の条件下で行われる。
【0041】
温度、圧力および時間の実際の条件は、液体媒体の組成、ならびに、基材およびウェル材料との液体相互作用に応じることとなる。適切な温度および圧力条件は、基材/液体相互作用と乾燥速度(蒸気圧および除去速度を介した)のバランスを取るよう選択される。液体媒体の表面張力および粘度が基材の濡れ性を制御し、乾燥ステップのための適切な温度および圧力の選択においては考慮に入れなければならない。
【0042】
いくつかの実施形態において、液体媒体は少なくとも2種の液体成分を含み、および、少なくとも1種の成分は100℃超の沸点を有する。いくつかの実施形態において、部分乾燥ステップは、30℃〜60℃の範囲内の温度、10-2〜1Torrの範囲内の圧力で、5〜15分間の時間の間行われる。
【0043】
いくつかの実施形態において、液体媒体は、1種または複数種の液体成分を含み、その各々は80℃未満の沸点を有する。いくつかの実施形態において、部分乾燥ステップは、−25℃〜10℃の範囲内の温度、1Torr〜1000Torrの範囲内の圧力で、5〜25分間の時間の間行われる。いくつかの実施形態において、部分乾燥ステップは、−10℃〜0℃の範囲内の温度、10Torr〜100Torrの範囲内の圧力、5〜15分間の時間で行われる。
【0044】
いくつかの実施形態において、特に少なくとも1種の高沸点溶剤が液体媒体中に存在している場合、減圧を維持し、溶剤蒸気での飽和を防止するために高真空ポンプが用いられる。高真空ポンプの例としては、乾燥真空ポンプ、ターボポンプ、回転真空ポンプ、油拡散ポンプ、低温ポンプ、および吸着ポンプが挙げられる。いくつかの実施形態において、圧力は、これらのポンプで10-4Torr未満に維持されている。いくつかの実施形態において、圧力は、10-5Torr〜10-6Torrの範囲内である。いくつかの実施形態において、ターボ分子ポンプが用いられる。これらのポンプは、一般に、直列に設けられたロータ/ステータ対から構成される複数の状態を採用する。いくつかの場合において、これらのポンプは、バッキングポンプと組み合わされて作動される。このようなポンプは、例えば、「Vacuum Techniques」(第3版),Robert M. Besancon編,第1278〜1284ページ,Van Nostrand Reinhold,New York(1990年)において概説されている。
【0045】
次いで、ワークピースは、100℃を超える温度に1〜50分間の第2の期間の間加熱される。いくつかの実施形態において、この温度は、110℃〜150°の範囲内であり、および、加熱時間は10〜30分間の範囲内である。
【0046】
いくつかの実施形態において、液体組成物は光活性材料を含み、第1の色、第2の色および第3の色に関連する3種の組成物が活性領域の第1の組、第2の組および第3の組に堆積される。この場合、部分乾燥ステップおよび加熱ステップは、各色の堆積の後に実施されることが可能である。あるいは、3色の異なる色を堆積することが可能であり、次いで、部分乾燥ステップおよび加熱ステップが実施される。
【0047】
3.電子素子
陽極、陰極およびこれらの間に少なくとも1つの電気活性層を備える、少なくとも1つの活性領域を有する電子素子が提供されており、ここで、電気活性層は液相堆積によって形成されており、および、活性領域において実質的に平坦なプロファイルを有する。
【0048】
本明細書に記載の方法を用いることが可能である素子としては有機電子素子が挙げられる。「有機電子素子」、または、時々、単に「電子素子」という用語は、1つまたは複数の有機半導体層または材料を備える素子を意味することが意図されている。有機電子素子としては、これらに限定されないが:(1)電気エネルギーを放射線に変換する素子(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザまたはライティングパネル)、(2)電子的プロセスを用いてシグナルを検出する素子(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサ)、(3)放射線を電気エネルギーに変換する素子(例えば、光起電力素子または太陽電池)、(4)1つまたは複数の有機半導体層を備える1つまたは複数の電子部品を含む素子(例えば、トランジスタまたはダイオード)、または、項目(1)〜(4)の素子の任意の組み合わせが挙げられる。
【0049】
図3に示されているとおり、素子100の一実施形態は、陽極層110、光活性層140および陰極層160を有する。「光活性」という用語は、エレクトロルミネセンスまたは感光性を示す任意の材料を意味することが意図されている。また、任意の3つの層:正孔注入層120;正孔輸送層130;および電子注入/輸送層150も示されている。陽極および陰極の少なくとも一方は透光性であり、光が電極を透過可能である。
【0050】
この素子は、陽極層110または陰極層160に隣接していることが可能である支持体または基材(図示せず)を備えていてもよい。最も頻繁には、この支持体は、陽極層110に隣接することが非常に多い。支持体は、可撓性または剛性であり、有機または無機であることが可能である。支持材料の例としては、これらに限定されないが、ガラス、セラミック、金属、およびプラスチックフィルムが挙げられる。
【0051】
陽極層110は、陰極層160と比して正孔の注入がより効率的である電極である。それ故、陽極は、陰極より高い仕事関数を有する。この陽極は、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合酸化物を含有する材料を含んでいることが可能である。好適な材料としては、第2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の混合酸化物、第11族元素、第4、5および6族中の元素、ならびに、第8〜10族遷移元素が挙げられる。陽極層110が透光性であるべき場合、インジウム−錫−酸化物などの第12、13および14族元素の混合酸化物が用いられ得る。本明細書において用いられるところ、「混合酸化物」という表現は、第2族元素または第12、13または14族元素から選択される2個以上の異なるカチオンを有する酸化物を指す。陽極層110用の材料のいくつかの非限定的な特定の例としては、これらに限定されないが、インジウム−錫−酸化物(「ITO」)、インジウム−亜鉛−酸化物(「IZO」)、アルミニウム−錫−酸化物(「ATO」)、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、図示されていない液体閉じ込めパターンが陽極上に存在している。「液体閉じ込めパターン」という用語は、領域または区画内の液体がワークピース上に流れる場合にこれを束縛または導くことを主な機能とするパターンを意味することが意図されている。液体閉じ込めパターンは、物理的な閉じ込め構造または化学的な閉じ込め層であることが可能である。物理的閉じ込め構造は、陰極セパレータまたはウェル構造を含むことが可能である。「化学閉じ込め層」という用語は、物理的なバリア構造ではなく表面エネルギー効果で液体材料の広がりを拘束するか制限するパターン化層を意味することが意図されている。「拘束された」という用語は、層を指す場合、層は堆積された領域を超えて顕著に広がらないことを意味することが意図されている。「表面エネルギー」という用語は、材料から表面の単位面積を形成するために必要とされるエネルギーである。表面エネルギーの特徴は、所与の表面エネルギーを有する液体材料が、より低い表面エネルギーを有する表面を濡らすことはないことである。
【0053】
正孔注入層120は、プロトン酸でドープされていることが多い、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの高分子材料で形成されていることが可能である。プロトン酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)等であることが可能である。正孔注入層120は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物等を含んでいることが可能である。一実施形態においては、正孔注入層120は、導電性ポリマーおよびコロイド形成性ポリマー酸の分散体から形成されている。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開2004−0127637号明細書および米国特許出願公開2005−0205860号明細書に説明されている。
【0054】
いくつかの実施形態において、場合によっては正孔輸送層130が、陽極層110と光活性層140との間に存在している。いくつかの実施形態において、場合によっては正孔輸送層は、緩衝層120と光活性層140との間に存在している。正孔輸送材料の例が、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版,第18巻,第837〜860ページ,1996年,Y.Wang著にまとめられている。正孔輸送分子およびポリマーの両方を用いることが可能である。通例用いられる正孔輸送分子としては、これらに限定されないが:4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチル−フェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および、銅フタロシアニンなどのポリフィリン化合物が挙げられる。通常用いられる正孔輸送ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリンおよびポリピロールが挙げられる。上記に記載されているものなどの正孔輸送分子をポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマーにドープすることにより正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。
【0055】
素子の用途に応じて、光活性層140は、印加された電圧(発光ダイオードまたは発光電気化学電池におけるものなど)により活性化される発光層、放射エネルギーに応答し、および、印加バイアス電圧(光検出器におけるものなど)が伴うか伴わないシグナルを生成する材料の層であることが可能である。一実施形態において、光活性材料は有機エレクトロルミネセント(「EL」)材料である。素子においては、特にこれらに限定されないが、低分子有機蛍光性化合物、蛍光および燐光金属錯体、共役ポリマー、ならびに、これらの混合物を含む、任意のEL材料が用いられることが可能である。蛍光性化合物の例としては、これらに限定されないが、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、これらの誘導体、および、これらの混合物が挙げられる。金属錯体の例としては、これらに限定されないが、トリス(8−ヒドロキシキノレート)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;Petrovら、米国特許第6,670,645号明細書および国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されているイリジウムとフェニルピリジン、フェニルキノリンまたはフェニルピリミジンリガンドとの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネセント化合物、および、例えば、国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレットおよび国際公開第03/040257号パンフレットに記載されている有機金属錯体、ならびに、これらの混合物が挙げられる。電荷輸送ホスト材料および金属錯体を含むエレクトロルミネセント発光層は、Thompsonらによって、米国特許第6,303,238号明細書において、ならびに、BurrowsおよびThompsonによって国際公開第00/70655号パンフレットおよび国際公開第01/41512号パンフレットに記載されている。共役ポリマーの例としては、これらに限定されないが、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、そのコポリマー、および、その混合物が挙げられる。
【0056】
任意の層150は、電子注入/輸送を共に促進させるよう機能することが可能であると共に、層境界面での消光反応を防止する閉じ込め層として作用することも可能である。より具体的には、層150は、電子移動度を促進させ得ると共に、層140および160が直接接触してしまう場合の消光反応の可能性を低減させ得る。任意の層150のための材料の例としては、これらに限定されないが、トリス(8−ヒドロキシキノレート)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノレート)ハフニウム(HfQ)およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノレート)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート誘導体を含む金属キレート化オキシノイド化合物;テトラキス(8−ヒドロキシキノリナート)ジルコニウム(ZrQ);2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびに、任意のこれらの1つまたは複数の組み合わせが挙げられる。あるいは、任意の層150は、無機であってもよく、BaO、LiF、Li2O、CsF等を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、2つの電子輸送/注入層が存在している。第1の有機電子輸送層は光活性層に隣接して存在しており、第2の無機電子注入層は陰極に隣接して存在している。
【0057】
陰極層160は、電子の注入または陰電荷キャリアに特に効率的である電極である。陰極層160は、陽極層110よりも低い仕事関数を有する任意の金属または非金属であることが可能である。
【0058】
陰極層用の材料は、第1族(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)のアルカリ金属、第2族金属(例えば、Mg、Ca、Ba等)、第12族金属、ランタノイド(例えば、Ce、Sm、Eu等)、および、アクチニド(例えば、Th、U等)から選択されることが可能である。アルミニウム、インジウム、イットリウムおよびこれらの組み合わせなどの材料もまた用いられ得る。陰極層160用の材料の特定の非限定的な例としては、これらに限定されないが、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユーロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびに、合金およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
素子中の他の層は、このような層によって発揮されるべき機能を考慮してそのような層において有用であると公知である任意の材料で形成されていることが可能である。
【0060】
いくつかの実施形態においては、封止層(図示せず)が接触層160の上に堆積されて、水および酸素などの望ましくない成分の素子100への侵入が防止される。このような成分は、有機層140に悪影響を有する可能性がある。一実施形態において、封止層はバリア層またはフィルムである。一実施形態においては、封止層はガラス蓋である。
【0061】
図示はされていないが、素子100は追加の層を備えていてもよいことが理解される。技術分野において公知であるかそうではない他の層が用いられ得る。加えて、上記層のいずれかも2つ以上のサブ層を備えていてもよく、または、積層構造を形成していてもよい。あるいは、陽極層110、緩衝層120、正孔輸送層130、電子輸送層150、陰極層160および他の層のいくつかまたはすべてが、電荷キャリア輸送効率または素子の他の物理特性を高めるために、処理(特に表面処理)されてもよい。構成層の各々の材料の選択は、高い素子効率を有する素子を提供するという目的と、素子作動耐用年数問題、作成時間および複雑さの要因および当業者によって認識される他の問題との均衡をとることにより決定されることが好ましい。最適な構成品、構成品の構成、および、組成的同一性の決定は、当業者にとっては日常的であろうことが認識されるであろう。
【0062】
ほとんどの事例において、陽極110および陰極160は、化学蒸着または物理蒸着法により形成される。いくつかの実施形態において、陽極層はパターン化されることとなり、および、陰極は全体が連続した層とされることとなる。
【0063】
いくつかの実施形態においては、電子輸送層/注入層の一方または両方もまた化学蒸着または物理蒸着法によって形成される
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも光活性層は本明細書に記載の方法による液相堆積により形成される。
【0065】
いくつかの実施形態において、正孔注入層および正孔輸送層は、本明細書に記載の方法による液相堆積により形成される。
【0066】
一実施形態においては、異なる層は、以下の範囲の厚さを有する:陽極110、500Å〜5000Å、一実施形態においては1000Å〜2000Å;任意の緩衝層120、50Å〜2000Å、一実施形態においては200Å〜1000Å;任意の正孔輸送層130、50Å〜2000Å、一実施形態においては100Å〜1000Å;光活性層140、10Å〜2000Å、一実施形態においては100Å〜1000Å;任意の電子輸送層150、50Å〜2000Å、一実施形態においては100Å〜1000Å;陰極160、200Å〜10000Å、一実施形態においては300Å〜5000Å。素子における電子−正孔再結合ゾーンの位置、それ故、素子の発光スペクトルは、各層の相対的な厚さによって影響される可能性がある。それ故、電子輸送層の厚さは、電子−正孔再結合ゾーンが発光層中にあるよう選択されるべきである。層厚の所望の比は、用いられる材料の実際の性質に応じることとなる。
【0067】
作動中には、適切な電源(図示せず)からの電圧が素子100に印加される。従って、電流は素子100の層を通過する。電子は光活性層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれるいくつかのOLEDにおいては、個別のピクセルが、独立して、電流の通過により励起され得る。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれるいくつかのOLEDにおいては、個別のピクセルが、電気接触層の行および列の交差部で励起され得る。
【0068】
本明細書に記載のものと同様であるか等しい方法および材料を本発明の実施またはテストにおいて用いることが可能であるが、好適な方法および材料が以下に記載されている。本明細書に記載されているすべての公報、特許出願、特許および他の文献は、参照によりそれらの全体が援用される。抵触する場合には、定義を含む本明細書が支配的となる。加えて、材料、方法および例は単なる例示であり、限定的であることは意図されていない。
【0069】
明確さのために、個別の実施形態の文脈で上記および下記に記載されている本発明の一定の特性はまた、単一の実施形態の組み合わせで提供されていてもよいことが認識されるべきである。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の種々の特性はまた、個別にまたは任意のサブコンビネーションで提供されていてもよい。さらに、範囲で記載されている値に対する言及は、その範囲内の値の各々および全てを含む。
【実施例】
【0070】
本明細書に記載のコンセプトを、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載する。
【0071】
実施例1
この実施例は、実質的に平坦なプロファイルを有する、OLED用途のための電気活性膜の構成を示す。以下の材料を用いた。
【0072】
陽極=インジウム錫酸化物(ITO):180nm
緩衝層=緩衝剤1(20nm)、これは、導電性ポリマーおよび高分子フッ素化スルホン酸の水性分散体である。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、および、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書に記載されている。
【0073】
正孔輸送層=HT−1、これはアリールアミン含有コポリマーである。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2008/0071049号明細書に記載されている。
【0074】
光活性層=13:1ホストH1:ドーパントE1。ホストH1はアントラセン誘導体である。このような材料は、例えば、米国特許第7,023,013号明細書に記載されている。E1はアリールアミン化合物である。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2006/0033421号明細書に記載されている。
【0075】
電子輸送層=MQ、これは金属キノレート誘導体である
陰極=LiF/Al(0.5/100nm)
【0076】
OLED素子を、溶液加工および熱蒸発技術の組み合わせにより構成した。Thin Film Devices,Inc製のパターン化インジウム錫酸化物(ITO)で被覆されたガラス基材を用いた。これらのITO基材は、50ohms/squareのシート抵抗および80%光透過率を有するITOで被覆されたCorning 1737ガラスに基づいている。標準的なフォトリソグラフィープロセスを用いて、ウェルパターンをITO基材上に形成した。ウェルは32ミクロンの幅により画定した。
【0077】
素子を形成する直前に、清浄化し、パターン化した基材をUVオゾンで10分間処理した。冷却した直後に、緩衝剤1の水性分散体をITO表面全体にスピンコートし、加熱して溶剤を除去した。冷却した後、次いで、基材に正孔輸送材料の溶液をスピンコートし、次いで、加熱して溶剤を除去した。化学閉じ込め層を、米国特許出願公開第2007/0205409号明細書に記載の通り形成した。このパターンは、ノズル印刷された光活性インクを含むよう表面エネルギーウェルを画定していた。表面エネルギーウェルは幅40ミクロンであった。
【0078】
国際公開第2007/145979号パンフレットに記載されているとおり、上述のホストおよびドーパントを有機溶剤媒体に溶解することにより発光層溶液を形成した。
【0079】
基材に発光層溶液をノズル印刷し、減圧乾燥させて溶剤を除去した。印刷の直後、このプレートを、窒素でベントするまで、20℃に保持し、500mTorrに減圧した減圧チャンバに14分間入れた。次いで、このプレートを、30分間、140℃でホットプレートで焼成した。
【0080】
膜厚およびプロファイル計測を、同等の方策で、OLED素子に形成しなかったが発光層まで構成したプレートで行った。低針圧ヘッドを備えるKLA−Tencor P−15スタイラスプロフィルメータを厚さ/プロファイル計測に用いた。印刷された光活性層厚およびプロファイルを、きわめて近接している印刷ラインから非印刷ラインを差し引くことにより測定した。この技術は、発光層から脱結合されるべき下位層における差異のプロファイルを可能とする。図4は、アパーチャ比=0.92である印刷された光活性層のプロファイルを示す。
【0081】
実施例2
この実施例は、乾燥ステップにおいてターボ分子ポンプを用いる、実質的に平坦なプロファイルを有する、OLED用途のための電気活性膜の構成を示す。以下の材料を用いた。
【0082】
陽極=ITO(180nm)
緩衝層=緩衝剤1(20nm)
正孔輸送層=HT−2(20nm)、これはアリールアミン含有ポリマーである
光活性層=13:1ホストH1:ドーパントE2(40nm)。E2は、例えば、米国特許出願公開第2006/0033421号明細書に記載のアリールアミン化合物である。
【0083】
電子輸送層=MQ(10nm)
陰極=LiF/Al(0.5/100nm)
【0084】
OLED素子を、表面エネルギーウェルの幅(52nm)および印刷後の乾燥ステップを除いて実施例1に記載のとおり、溶液加工および熱蒸発技術の組み合わせにより構成した。
【0085】
基材に発光層溶液をノズル印刷し、ターボ分子ポンプを用いて乾燥させた。印刷の直後、基材上のプレートを20℃に維持した減圧チャンバに入れ、1×10-6Torrに減圧した。高真空乾燥ステップの後、このプレートを140℃のホットプレートに30分間載せた。
【0086】
膜厚およびプロファイル計測を、低針圧ヘッドを備えるKLA−Tencor P−15スタイラスプロフィルメータを用いて行った。印刷された光活性層厚およびプロファイルを、きわめて近接している印刷ラインから非印刷ラインを差し引くことにより測定した。この技術は、発光層から脱結合されるべき下位層における差異のプロファイルを可能とする。図5は、アパーチャ比=0.82である印刷された光活性層のプロファイルを示す。
【0087】
比較例A
OLED素子を実施例2と同一の材料を用いて構成した。素子を、印刷後の乾燥ステップ以外は、実施例2と同一の手法を用いて構成した。基材に発光層溶液をノズル印刷した直後、プレートを140℃のホットプレート上に30分間置いた。
【0088】
膜厚およびプロファイル計測を実施例1のように行った。図6は、アパーチャ比=0.41の印刷された光活性層のプロファイルを示す。
【0089】
概要または実施例において上記されている作業のすべてが必要とされているわけではなく、特定の作業の一部分が必要でない場合があり、および、1つまたは複数のさらなる作業が記載されたものに追加して実施されてもよいことに注目すべきである。さらに、作業が列挙されている順番は、必ずしもこれらが実施される順番ではない。
【0090】
前述の明細書において、特定の実施形態を参照してコンセプトを記載してきた。しかしながら、技術分野における当業者は、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および変形をなすことが可能であることを理解している。従って、明細書および図面は、限定的ではなく、例示的であるとみなされるべきであり、すべてのこのような変更は発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0091】
有益性、他の利点および問題に対する解法が、特定の実施形態に関して上述されている。しかしながら、有益性、利点、問題に対する解法、および、利益、利点あるいは解法のいずれかを生じさせ得るか、もしくは、より顕著とさせ得るいずれかの特性は、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての決定的な、必要な、または、必須の特性としては解釈されるべきではない。
【0092】
明確さのために、本明細書において個別の実施形態の文脈で記載されている一定の特性はまた、単一の実施形態の組み合わせで提供されていてもよいことが認識されるべきである。反対に、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈で記載されている種々の特性はまた、個別にまたは任意のサブコンビネーションで提供されていてもよい。さらに、範囲で記載されている値に対する言及は、その範囲内の値の各々および全てを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの活性領域を有するワークピースを提供するステップ、
電気活性材料を含む液体組成物を前記ワークピースにおける前記活性領域上に堆積させて湿潤層を形成するステップ、
前記ワークピース上の前記湿潤層を、−25〜80℃の範囲内の制御温度、および、10-6〜1,000Torrの範囲内の減圧下で、1〜100分間の第1の期間の間処理して、部分乾燥層を形成するステップ、
前記部分乾燥層を、1〜50分間の第2の期間の間100℃を超える温度に加熱して乾燥層を形成するステップ、
を含み、前記乾燥層は、前記活性領域において実質的に平坦なプロファイルを有する、電気活性材料の層を形成する方法。
【請求項2】
前記乾燥層が、前記活性領域の90%にわたって+/−10%未満の厚さ変動を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体組成物が、インクジェット印刷および連続ノズルコーティングからなる群から選択される技術により堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ワークピースが複数の活性領域を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電気活性材料が、ホスト材料および第1の色に対応する光活性ゲスト材料を含んでおり、および、前記液体組成物が、前記活性領域の第1の部分に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2のホスト材料および第2の色に対応する第2の光活性ゲスト材料を含む第2の液体組成物が、前記活性領域の第2の部分に堆積される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第3のホスト材料および第3の色に対応する第3の光活性ゲスト材料を含む第3の液体組成物が、前記活性領域の第3の部分に堆積される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電気活性材料が正孔注入材料から本質的に構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電気活性材料が正孔輸送材料から本質的に構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピース上の前記湿潤層が、20〜80℃の範囲内の温度、10-2〜10Torrの範囲内の圧力で、5〜25分間の時間の間処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ワークピース上の前記湿潤層が、30〜60℃の範囲内の温度、10-2〜1Torrの範囲内の圧力で、5〜15分間の時間の間処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ワークピース上の前記湿潤層が、−25〜10℃の範囲内の温度、1〜1000Torrの範囲内の圧力で、5〜25分間の時間の間処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ワークピース上の前記湿潤層が、−10〜0℃の範囲内の温度、10〜100Torrの範囲内の圧力で、5〜15分間の時間の間処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記減圧が、10-4〜10-6Torrの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記減圧が、乾燥真空ポンプ、ターボポンプ、回転真空ポンプ、油拡散ポンプ、低温ポンプおよび吸着ポンプからなる群から選択されるポンプにより減圧される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポンプがターボ分子ポンプである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
陽極、陰極、および、これらの間の電気活性層を備え、前記電気活性層は、液相堆積により形成され、実質的に平坦なプロファイルを有する、少なくとも1つの活性領域を有する電子素子。
【請求項18】
前記電気活性層が光活性層である、請求項17に記載の素子。
【請求項19】
前記電気活性層が発光層である、請求項18に記載の素子。
【請求項20】
前記電気活性層が正孔輸送層である、請求項17に記載の素子。
【請求項21】
前記電気活性層が正孔注入層である、請求項17に記載の素子。
【請求項22】
前記活性領域が、物理的閉じ込め構造によってサブピクセル領域に分けられており、前記電気活性層が前記サブピクセル領域中にある、請求項17に記載の素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−519941(P2012−519941A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553161(P2011−553161)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/026467
【国際公開番号】WO2010/102272
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】