説明

電気活性材料

少なくとも2つのジアリールアミノ部分を有し、少なくとも10%が重水素化されている化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、米国特許法第119(e)条に基づき、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2009年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/166,400号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、新規な電気活性化合物に関する。本発明はさらに、そのような電気活性化合物を含む少なくとも1つの活性層を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
OLEDディスプレイを構成する有機発光ダイオード(「OLED」)などの有機電気活性電子デバイスにおいて、OLEDディスプレイ中では2つの電気接触層の間に有機活性層が挟まれている。OLEDにおいて、これらの電気接触層の間に電圧を印加すると、有機光活性層は、光透過性電気接触層を透過する光を発する。
【0004】
発光ダイオード中の活性成分として有機エレクトロルミネッセンス化合物が使用されることは周知である。単純な有機分子、共役ポリマー、および有機金属錯体が使用されている。場合により、エレクトロルミネッセンス化合物は、電気活性ホスト材料中のドーパントとして存在する。エレクトロルミネッセンス材料を使用するデバイスは、多くの場合、電気活活性(たとえば、発光)層と接触層(正孔注入接触層)との間に配置される1つ以上の電荷輸送層を含む。1つのデバイスは2つ以上の接触層を含むことができる。エレクトロルミネッセンス層と正孔注入接触層との間には正孔輸送層を配置することができる。正孔注入接触層はアノードと呼ばれる場合もある。エレクトロルミネッセンス層と電子注入接触層との間には電子輸送層を配置することができる。電子注入接触層はカソードと呼ばれる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子デバイス中に使用される電気活性材料が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも2つのジアリールアミノ部分を有し、少なくとも10%が重水素化された化合物を提供する。
【0007】
式I、式II、または式III:
【0008】
【化1】

【0009】
(式中:
Ar1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、および置換ナフチレンからなる群から選択され;
Ar2は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
Mは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
1およびT2は、独立して、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
aは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
b、c、およびdは、b+c+d=1.0となるようなモル分率であり、但し、cは0ではなく、bおよびdの少なくとも1つは0ではなく、bが0である場合は、Mが少なくとも2つのトリアリールアミン単位を含み;
eは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
nは1を超える整数である)
で表され、化合物の少なくとも10%が重水素化されている化合物も提供する。
【0010】
少なくとも1つのフルオレン部分と少なくとも2つのトリアリールアミン部分とを含み、少なくとも10%が重水素化されている化合物も提供する。
【0011】
上記化合物の少なくとも1種類を含む少なくとも1つの層を有する電子デバイスも提供する。
【0012】
以上の一般的説明および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲において規定される本発明を限定するものではない。
【0013】
本明細書において提示される概念をより理解しやすくするために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】有機電子デバイスの一例の図である。
【図2】重水素化中間化合物の1H NMRスペクトルである。
【0015】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
少なくとも2つのジアリールアミノ部分を有し、少なくとも10%が重水素化された化合物を提供する。
【0017】
式I、式II、または式III:
【0018】
【化2】

【0019】
(式中:
Ar1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、および置換ナフチレンからなる群から選択され;
Ar2は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
Mは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
1およびT2は、独立して、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
aは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
b、c、およびdは、b+c+d=1.0となるようなモル分率であり、但し、cは0ではなく、bおよびdの少なくとも1つは0ではなく、bが0である場合は、Mが少なくとも2つのトリアリールアミン単位を含み;
eは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
nは1を超える整数である)
で表され;少なくとも10%が重水素化されている化合物も提供する。
【0020】
少なくとも1つのフルオレン部分と少なくとも2つのトリアリールアミン部分とを含み、少なくとも10%が重水素化されている化合物も提供する。
【0021】
上記化合物を含む少なくとも1つの層を有する電子デバイスも提供する。
【0022】
多数の態様および実施形態を以上に説明してきているが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0023】
いずれか1つ以上の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、電気活性化合物、電子デバイス、ならびに最後に実施例を扱う。
【0024】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0025】
本発明において使用される場合、用語「脂肪族環」は、非局在化π電子を有さない環状基を意味することを意図している。ある実施形態においては、脂肪族環は不飽和を有さない。ある実施形態においては、この環は、1つの二重結合または三重結合を有する。
【0026】
用語「アルコキシ」は、基RO−(式中、Rはアルキルである)を意味することを意図している。
【0027】
用語「アルキル」は、1つの結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味することを意図しており、線状、分岐、または環状の基が含まれる。この用語は、ヘテロアルキル類を含むことを意図している。用語「炭化水素アルキル」は、ヘテロ原子を全く有さないアルキル基を意味する。用語「重水素化アルキル」は、少なくとも1つの利用可能なHがDによって置換されている炭化水素アルキルである。ある実施形態においては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有し;ある実施形態においては、1〜10個の炭素原子を有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、secブチル、tertブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソヘキシル、エチルヘキシル、tert−オクチルなどが挙げられる。
【0028】
用語「アリール」は、1つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。用語「芳香族化合物」は、非局在化π電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を意味すること意図している。この用語は、ヘテロアリール類を含むことを意図している。用語「炭化水素アリール」は、環中にヘテロ原子を全く有さない芳香族化合物を意味することを意図している。アリールという用語は、1つの環を有する基、および1つの単結合によって結合したり、互いに縮合したりする場合がある複数の環を有する基を含む。用語「重水素化アリール」は、アリールに直接結合する少なくとも1つの利用可能なHがDによって置換されているアリール基を意味する。用語「アリーレン」は、2つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。ある実施形態においては、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。アリール部分のあらゆる好適な環位置が、画定された化学構造に共有結合することができる。アリール部分の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、インダニル、ビフェニレニル、アセナフテニル、アセナフチレニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態においては、アリール基は6〜60個の炭素原子を有し;ある実施形態においては、6〜30個の炭素原子を有する。この用語はヘテロアリール基を含むことを意図している。ヘテロアリール基は4〜50個の炭素原子を有することができ;ある実施形態においては、4〜30個の炭素原子を有することができる。
【0029】
用語「アリールオキシ」は、基−OR(式中、Rはアリールである)を意味することを意図している。
【0030】
特に明記しない限り、すべての基は置換されていても非置換であってもよい。限定するものではないがアルキルまたはアリールなどの場合により置換されていてもよい基は、同じ場合も異なる場合もある1つ以上の置換基で置換されていてよい。好適な置換基としては、D、アルキル、アリール、ニトロ、シアノ、−N(R7)(R8)、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシカルボニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、アリールアルキル、シリル、シロキサン、チオアルコキシ、−S(O)2−N(R’)(R”)、−C(=O)−N(R’)(R”)、(R’)(R”)N−アルキル、(R’)(R”)N−アルコキシアルキル、(R’)(R”)N−アルキルアリールオキシアルキル、−S(O)s−アリール(式中、s=0〜2)、または−S(O)s−ヘテロアリール(式中、s=0〜2)が挙げられる。それぞれのR’およびR”は、独立して、場合により置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。ある実施形態においては、R’およびR”とそれらが結合する窒素原子とが一緒になって環系を形成することができる。置換基は架橋基であってもよい。
【0031】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、用語「電荷輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過するそのような電荷の移動を促進することを意味することを意図している。正孔輸送材料は正電荷を促進し;電子輸送材料は負電荷を促進する。発光材料も、ある程度の電荷輸送特性を有する場合があるが、用語「電荷輸送層、材料、部材、または構造」は、主要な機能が発光である層、材料、部材、または構造を含むことを意図していない。
【0032】
用語「化合物」は、分子から構成される非帯電物質であって、これらの分子は原子をさらに含み、これらの原子は、化学結合を破壊することなしには物理的手段によって、それらの対応する分子から分離することができない物質を意味することを意図している。この用語は、オリゴマー類およびポリマー類を含むことを意図している。
【0033】
用語「共役部分」は、非局在化電子を有する部分を意味することを意図している。非局在化電子は、1つおよび複数の炭素原子結合および/または孤立電子対を有する原子に由来するものであってよい。
【0034】
用語「架橋性基」または「架橋基」は、熱処理または放射線への曝露によって架橋を引き起こすことができる基を意味することを意図している。ある実施形態においては、放射線はUVまたは可視光であってよい。
【0035】
用語「重水素化された」は、少なくとも1つの利用可能なHがDで置換されていることを意味することを意図している。X%が重水素化された化合物は、利用可能なHのX%がDで置換されている。化合物または基の「重水素化類似体」は、少なくとも1つの利用可能なHがDで置換されている同じ化合物または基である。重水素化化合物は、天然存在量の少なくとも100倍で存在する重水素を有する。
【0036】
層または材料に言及する場合の用語「電気活性」は、デバイスの動作を電子的に促進する層または材料を意味することを意図している。活性材料の例としては、電子または正孔のいずれであってもよい電荷を伝導、注入、輸送、または遮断する材料、あるいは、放射線を受けた場合に、放射線を放出したり電子−正孔対の濃度変化を示したりする材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
接頭語「フルオロ」は、基の中の1つ以上の水素がフッ素で置換されていることを示すことを意図している。
【0038】
接頭語「ヘテロ」は、1つ以上の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示している。ある実施形態においては、ヘテロ原子はO、N、S、またはそれらの組み合わせである。
【0039】
用語「層」は、用語「膜」と同義的に使用され、所望の領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されることはない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊機能領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層および膜は、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本明細書の式I〜III中の[T1−T2]に言及する場合の用語「非平面配置」は、T1およびT2中の直接隣接する基が同一平面内で配向していないことを意味することを意図している。
【0041】
用語「有機電子デバイス」または場合により単に「電子デバイス」は、1つ以上の有機半導体層または材料を含むデバイスを意味することを意図している。
【0042】
用語「オキシアルキル」は、1つ以上の炭素が酸素で置換されたヘテロアルキル基を意味することを意図している。この用語は、酸素を介して結合する基を含んでいる。
【0043】
用語「シリル」は、基R3Si−(式中、Rは、H、D、C1〜20アルキル、フルオロアルキル、またはアリールである)を意味する。ある実施形態においては、Rアルキル基中の1つ以上の炭素がSiで置換されている。ある実施形態においては、シリル基は(ヘキシル)2Si(Me)CH2CH2Si(Me)2−および[CF3(CF26CH2CH22SiMe−である。
【0044】
用語「シロキサン」は、基(RO)3Si−(式中、Rは、H、D、C1〜20アルキル、またはフルオロアルキルである)。
【0045】
デバイス中の層に言及するために使用される場合、語句「隣接する」は、ある層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味するものではない。他方で、語句「隣接するR基」は、化学式中で互いに隣同士であるR基(すなわち、1つの結合によって連結した複数の原子上に存在する複数のR基)を意味するために使用される。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的な「または」を意味するのであって、排他的な「または」を意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0047】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0048】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0049】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特定の部分に言及される場合を除けば、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0050】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0051】
2.電気活性化合物
本明細書に記載の化合物は、少なくとも2つのジアリールアミノ部分を有し、少なくとも10%が重水素化されている。ある実施形態においては、本発明の化合物は、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。
【0052】
ある実施形態においては、本発明の重水素化化合物は、式I、式II、または式III:
【0053】
【化3】

【0054】
(式中:
Ar1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、および置換ナフチレンからなる群から選択され;
Ar2は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
Mは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
1およびT2は、独立して、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
aは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
b、c、およびdは、b+c+d=1.0となるようなモル分率であり、但し、cは0ではなく、bおよびdの少なくとも1つは0ではなく、bが0である場合は、Mが少なくとも2つのトリアリールアミン単位を含み;
eは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
nは1を超える整数である);
で表され、これらの化合物の少なくとも10%が重水素化されている。
【0055】
式I〜IIIのある実施形態においては、重水素化は、アリール環上の置換基上で行われている。ある実施形態においては、この置換基は、アルキル、アリール、アルコキシ、およびアリールオキシから選択される。ある実施形態においては、置換基は少なくとも10%が重水素化されている。これは、すべての置換基中のCに結合するすべての利用可能なHの少なくとも10%がDで置換されていることを意味する。ある実施形態においては、各置換基がある程度のDを有する。ある実施形態においては、置換基のすべてではなく一部がDを有する。ある実施形態においては、置換基は、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。
【0056】
式I〜IIIのある実施形態においては、重水素化は、アリール基Ar1およびAr2のいずれか1つ以上の上で行われている。この場合、Ar1およびAr2の少なくとも1つが重水素化アリール基である。ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、少なくとも10%が重水素化されている。これは、Ar1およびAr2の中のアリールCに結合するすべての利用可能なHの少なくとも10%がDで置換されていることを意味する。ある実施形態においては、それぞれのアリール環がある程度のDを有する。ある実施形態においては、すべてではなく一部のアリール環がDを有する。ある実施形態においては、Ar1およびAr2は少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。
【0057】
式I〜IIIのある実施形態においては、重水素化は[T1−T2]基の上で行われている。ある実施形態においては、T1およびT2の両方が重水素化されている。ある実施形態においては、[T1−T2]基は少なくとも10%が重水素化されている。これは、[T1−T2]基中のアリールに結合するすべての利用可能なHの少なくとも10%がDで置換されていることを意味する。ある実施形態においては、[T1−T2]基は少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。
【0058】
式I〜IIIのある実施形態においては、重水素化は、置換基とAr1基およびAr2基との両方の上で行われている。式I〜IIIのある実施形態においては、重水素化は、[T1−T2]基と、Ar1基およびAr2基との両方の上で行われている。式I〜IIIのある実施形態においては、重水素化は、置換基と、[T1−T2]基と、Ar1基およびAr2基との上で行われている。
【0059】
ある実施形態においては、式I〜IIIの化合物は、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。
【0060】
ある実施形態においては、少なくとも1つのAr1は、アルキル、アルコキシ、シリル、架橋基を有する置換基、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される置換基を有する置換フェニルである。ある実施形態においては、置換基が重水素化されている。ある実施形態においては、aは1〜3である。ある実施形態においては、aは1〜2である。ある実施形態においては、aは1である。ある実施形態においては、eは1〜4である。ある実施形態においては、eは1〜3である。ある実施形態においては、e=1である。ある実施形態においては、少なくとも1つのAr1が、架橋基を有する置換基を有する。
【0061】
ある実施形態においては、少なくとも1つのAr2は、式a
【0062】
【化4】

【0063】
(式中:
1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択されるか;または隣接するR1基が結合して芳香環を形成できるかであり;
fは、出現するごとに同じまたは異なるものであって0〜4の整数であり;
gは0〜5の整数であり;
mは1〜5の整数である)
で表される。
【0064】
ある実施形態においては、少なくとも1つのAr2は、式b:
【0065】
【化5】

【0066】
(式中:
1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択されるか;または隣接するR1基が結合して芳香環を形成できるかであり;
fは、出現するごとに同じまたは異なるものであって0〜4の整数であり;
gは0〜5の整数であり;
mは1〜5の整数である)
で表される。式aまたはbのある実施形態においては、fおよびgの少なくとも1つは0ではない。ある実施形態においては、m=1〜3である。
【0067】
ある実施形態においては、Ar2は、式aで表される基、ナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。ある実施形態においては、Ar2は、フェニル、p−ビフェニル、p−ターフェニル、ナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。ある実施形態においては、Ar2は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。
【0068】
式I〜IIIの芳香環はいずれも、任意の位置で置換されていてよい。置換基は、溶解性などの化合物の1つ以上の物理的性質を改善するために存在することができる。ある実施形態においては、置換基は、C1-12アルキル基、C1-12アルコキシ基、シリル基、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。ある実施形態においては、アルキル基はヘテロアルキル基である。ある実施形態においては、アルキル基はフルオロアルキル基である。ある実施形態においては、少なくとも1つのAr2が、アルキル、アルコキシ、シリル置換基、またはそれらの重水素化類似体を有する。置換基は、架橋性を付与するために存在することができる。ある実施形態においては、架橋置換基が、少なくとも1つのAr2の上に存在する。ある実施形態においては、架橋置換基が、少なくとも1つのM部分の上に存在する。ある実施形態においては、架橋性基を含む少なくとも1つの置換基が存在する。架橋性基の例としては、ビニル、アクリレート、パーフルオロビニルエーテル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン、シロキサン、シアネート基、環状エーテル類(エポキシド類)、シクロアルケン類、アセチレン系基、およびそれらの重水素化類似体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
一実施形態においては、架橋性基はビニルである。ある実施形態においては、架橋性基は重水素化ビニル基である。
【0070】
1およびT2は共役部分である。ある実施形態においては、T1およびT2は芳香族部分である。ある実施形態においては、T1およびT2は重水素化芳香族部分である。ある実施形態においては、T1およびT2は、フェニレン基、ナプチレン(napthylene)基、アントラセニル基、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。
【0071】
ある実施形態においては、T1−T2基によって、化合物の主鎖中に非平面性が導入される。T2中の部分に直接結合するT1中の部分は、T1部分が、それが結合するT2中の部分とは異なる面内に配向するように結合している。T1単位の他の部分、たとえば置換基は1つ以上の異なる面内にあることができるが、非平面性が得られるのは、化合物主鎖中のT1中の結合部分とT2中の結合部分の面とによる。非平面T1−T2結合のために、本発明の化合物はキラルとなる。一般に、本発明の化合物はラセミ混合物として形成される。本発明の化合物は鏡像異性的に純粋な形態であってもよい。非平面性は、T1−T2結合のまわりの自由回転を制限するものとして見ることができる。この結合のまわりの回転によって、ラセミ化が起こる。T1−T2のラセミ化の半減期は、非置換ビフェニルの半減期よりも長い。ある実施形態においては、ある実施形態では、半減期またはラセミ化は、20℃において12時間以上である。
【0072】
ある実施形態においては、[T1−T2]は置換ビフェニレン基、またはその重水素化類似体である。用語「ビフェニレン」は、化合物の主鎖に結合する点を2つ有するビフェニル基を意味することを意図している。用語「ビフェニル」は、単結合によって連結した2つのフェニル単位を有する基を意味することを意図している。ビフェニレン基は、2位、3位、4位、または5位の中の1つと、2’位、3’位、4’位、または5’位の中の1つとにおいて結合することができる。置換ビフェニレン基は、2位において少なくとも1つの置換基を有する。ある実施形態では、ビフェニレン基は、少なくとも2位および2’位において置換基を有する。
【0073】
ある実施形態においては、[T1−T2]はビナフチレン基、またはその重水素化類似体である。用語「ビナフチレン」は、化合物の主鎖に結合する点を2つ有するビナプチル(binapthyl)基を意味することを意図している。用語「ビナフチル」は、単結合によって連結した2つのナフタレン単位を有する基を意味することを意図している。ある実施形態においてはは、ビナフチレン基は1,1’−ビナフチレンであり、これは、3位、4位、5位、6位、または7位の中の1つと、3’位、4’位、5’位6’位、または7’位の中の1つとにおいて化合物の主鎖に結合する。これは以下に示されており、式中の破線は、可能性のある結合点を表している。
【0074】
【化6】

【0075】
ある実施形態においては、ビナフチレン基は、8位または9’位において少なくとも1つの置換基を有し、3位、4位、5位、6位、または7位の中の1つと、4’位、5’位、6’位、7’位、または8’位の中の1つにおいて化合物の主鎖に結合している1,2’−ビナフチレンである。これは以下に示されており、式中の破線は、可能性のある結合点を表しており、少なくとも1つのRは置換基を表している。
【0076】
【化7】

【0077】
ある実施形態においてはは、ビナフチレン基は、8位または9’位において少なくとも1つの置換基を有し、4位、5位、6位、7位、または8位の中の1つと、4’位、5’位、6’位、7’位、または8’位の中の1つにおいて化合物の主鎖に結合している2,2’−ビナフチレンである。これは以下に示されており、式中の破線は、可能性のある結合点を表しており、少なくとも1つのRは置換基を表している。
【0078】
【化8】

【0079】
ある実施形態においては、[T1−T2]はフェニレン−ナフチレン基、またはその重水素化類似体である。ある実施形態においては、[T1−T2]は、フェニレン中の3位、4位、または5位の中の1つと、ナフチレンの3位、4位、または5位の中の1つとにおいて化合物の主鎖に結合しているフェニレン−1−ナフチレン基である。ある実施形態においては、[T1−T2]は、フェニレン中の3位、4位、または5位の中の1つと、ナフチレンの4位、5位、6位、7位、または8位の中の1つとにおいて化合物の主鎖に結合しているフェニレン−2−ナフチレン基である。
【0080】
ある実施形態においては、ビフェニレン基、ビナフチレン基、およびフェニレン−ナフチレン基は、1つ以上の位置において置換されている。
【0081】
ある実施形態においては、[T1−T2]は以下の1つ:
【0082】
【化9】

【0083】
【化10】

【0084】
およびそれらの重水素化類似体から選択され、式中、Rは、同種または異種であり、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、フルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロアリールオキシ、フルオロアルキルオキシ、オキシアルキル、アルケニル基、シリル、シロキサン、および架橋基からなる群から選択される。破線は、化合物の主鎖への可能性のある結合点を表している。ある実施形態においては、Rは、C1-10アルキルまたはアルコキシであり;ある実施形態においては、C3-8分岐アルキルまたはアルコキシである。ある実施形態においては、2つのR基が一緒に結合して非芳香環を形成する。
【0085】
ある実施形態においては、[T1−T2]は、4位および4’位において化合物の主鎖に結合している1,1−ビナフチレン基、またはその重水素化類似体であり、4,4’−(1,1−ビナフチレン)と呼ばれる。ある実施形態においては、4,4’−(1,1−ビナフチレン)が、存在する唯一の異性体となる。ある実施形態においては、2つ以上の異性体が存在する。ある実施形態においては、4,4’−(1,1−ビナフチレン)は、最大50重量%の第2の異性体とともに存在する。ある実施形態においては、第2の異性体は、4,5’−(1,1−ビナフチレン)、4,6’−(1,1−ビナフチレン)、および4,7’−(1,1−ビナフチレン)からなる群から選択される。
【0086】
式IIIは、少なくとも1つの[T1−T2]部分と、少なくとも1つの別の共役部分とが存在するコポリマーを表しており、このポリマー全体の少なくとも10%が重水素化されている。ある実施形態においては、重水素化は、下付き文字「b」が付けられる第1のモノマー単位中で行われる。ある実施形態においては、重水素化は、下付き文字「c」が付けられる第2のモノマー単位中で行われる。ある実施形態においては、重水素化は、下付き文字「d」が付けられる第3のモノマー単位中で行われる。ある実施形態においては、重水素化は、2つのモノマー単位中で行われる。ある実施形態においては、その2つのモノマー単位の1つが第1のモノマー単位である。ある実施形態においては、重水素化は、3つすべてのモノマー単位中で行われる。
【0087】
ある実施形態においては、cは少なくとも0.4である。ある実施形態においては、cは0.4〜0.6の範囲内である。このコポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー、またはブロックコポリマーであってよい。ある実施形態においては、Mはトリアリールアミン単位を含む。ある実施形態においては、ある実施形態では、Mは芳香族基である。ある実施形態においては、Mは、架橋性置換基を有する芳香族単位である。架橋性置換基を有するMの量は、一般に4〜20モルパーセントの間である。
【0088】
式Iで表される化合物の非限定的な一部の例としては、以下の化合物AおよびBが挙げられる。
化合物A:
【0089】
【化11】

【0090】
化合物B:
【0091】
【化12】

【0092】
式中、x+y+z+p+q+r=20〜28
【0093】
式IIで表される化合物の一部の非限定的な例としては以下の化合物CからH4が挙げられる。
化合物C:
【0094】
【化13】

【0095】
式中、xは0〜5およびΣ(x)=10〜44
化合物D:
【0096】
【化14】

【0097】
式中、xは0〜6およびΣ(x)=8〜36
化合物E:
【0098】
【化15】

【0099】
式中、xは0〜5およびΣ(x)=10〜50
化合物F:
【0100】
【化16】

【0101】
式中、xは0〜6およびΣ(x)=8〜36
化合物G:
【0102】
【化17】

【0103】
式中、xは0〜6およびΣ(x)=8〜36
化合物H1〜H4:
【0104】
【化18】

【0105】
式中、xは0〜5およびΣ(x)=10〜50
yは0〜17およびΣ(y)=0〜32
【0106】
式IIIで表される化合物の一部の非限定的な例としては以下の化合物IからNが挙げられる。
化合物I:
【0107】
【化19】

【0108】
式中、a=0.4〜0.8
b=0.2〜0.6
xは0〜5およびΣ(x)=10〜36
化合物J:
【0109】
【化20】

【0110】
式中、a=0.3〜0.7
b=0.3〜0.7
xは0〜5およびΣ(x)=20〜80
化合物K:
【0111】
【化21】

【0112】
式中、a=0.8〜0.95
b=0.05〜0.2
xは0〜5およびΣ(x)=10〜44
化合物L:
【0113】
【化22】

【0114】
式中、a=0.3〜0.7
b=0.3〜0.5
c=0.1〜0.2
xは0〜5およびΣ(x)=10〜36
化合物M:
【0115】
【化23】

【0116】
式中、a=0.9〜0.95
b=0.05〜0.10
xは0〜5およびΣ(x)=20〜62
化合物N:
【0117】
【化24】

【0118】
式中、a=0.7〜0.99
b=0.01〜0.30
xは0〜5およびΣ(x)=20〜62
【0119】
ある実施形態においては、本発明の重水素化化合物は、少なくとも1つのフルオレン部分および少なくとも2つのトリアリールアミン部分を有する。ある実施形態においては、重水素化はフルオレン部分の上で行われている。ある実施形態においては、重水素化は、少なくとも1つのトリアリールアミン部分の上で行われている。ある実施形態においては、重水素化は、フルオレン部分およびトリアリールアミン部分の両方の上で行われている。
【0120】
フルオレン部分またはトリアリールアミン部分の中の芳香環はいずれも、任意の位置で置換されていてよい。置換基は、溶解性などの化合物の1つ以上の物理的性質を改善するために存在することができる。ある実施形態においては、置換基は、C1-12アルキル基、C1-12アルコキシ基、シリル基、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。ある実施形態においては、アルキル基はヘテロアルキル基である。ある実施形態においては、アルキル基はフルオロアルキル基である。ある実施形態においては、少なくとも1つのアリール環は、アルキル、アルコキシ、シリル、架橋置換基、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される置換基を有する。
【0121】
ある実施形態においては、本発明の化合物はポリマーである。本発明のポリマーは、フルオレン基を有する少なくとも1種類のモノマーと、トリアリールアミン基を有する少なくとも1種類のモノマーとを共重合させることによって形成することができる。あるいは、本発明のポリマーは、フルオレン基およびトリアリールアミン基の両方を有する1種類のモノマーから形成することができる。Mの場合で前述したように、他の芳香族モノマー単位もポリマー中に存在することができる。前述したように、重水素化は、フルオレンモノマー単位および/またはトリアリールアミンモノマー単位の上で行うことができる。前述したように、フルオレン部分またはトリアリールアミン部分の中の芳香環はいずれも、任意の位置で置換されていてよい。
【0122】
フルオレン部分およびトリアリールアミン部分を有する化合物の一部の非限定的な例としては、以下の化合物OおよびPが挙げられる。
化合物O:
【0123】
【化25】

【0124】
式中、xは0〜5およびΣ(x)=15〜42
化合物P:
【0125】
【化26】

【0126】
式中、nは1より大きい整数;
xは0〜5およびΣ(x)=10〜32
【0127】
非重水素化類似体化合物は、C−C結合またはC−N結合を形成するあらゆる技術を使用して作製することができる。種々のそのような技術が周知であり、たとえば、Suzukiカップリング、Yamamotoカップリング、Stilleカップリング、Pd−またはNi触媒C−Nカップリングなどが周知である。非重水素化類似体化合物の合成は、たとえば、国際公開第2008/024378号パンフレット、国際公開第2008/024379号パンフレット、および国際公開第2009/067419号パンフレットに記載されている。次に、本発明の新規な重水素化化合物は、重水素化前駆体材料を使用した類似の方法によって、またはより一般的には、三塩化アルミニウムまたは二塩化エチルアルミニウムなどのルイス酸H/D交換触媒の存在下で非重水素化化合物をd6−ベンゼンなどの重水素化溶媒で処理することによって調製することができる。代表的な調製を実施例に示している。重水素化の程度は、NMR分析、および大気圧固体分析プローブ質量分析(ASAP−MS)などの質量分析によって求めることができる。
【0128】
本明細書に記載の化合物は、液相堆積技術を使用して膜に成形することができる。驚くべきことであり予期せぬことに、これらの化合物は、類似の非重水素化化合物よりも大きく改善された性質を有する。本明細書に記載の化合物を有する活性層を含む電子デバイスは、大きく改善された寿命を有する。さらに、この寿命の増加は、高い量子効率および良好な彩度とともに達成される。さらに、本明細書に記載の重水素化化合物は、非重水素化類似体よりも高い空気耐性を有する。これによって、材料の調製および精製と、その材料を使用した電子デバイスの形成との両方において、より優れた加工許容性を得ることができる。
【0129】
本明細書に記載の新規な重水素化化合物は、正孔輸送材料として、エレクトロルミネッセンス材料として、およびエレクトロルミネッセンス材料のホストとして有用である。ある実施形態においては、本発明の新規な重水素化化合物は、第1の正孔輸送層として、第2の正孔輸送層とともに使用される。本発明の新規な化合物は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、およびN,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB)などの効率的な小分子正孔輸送化合物と同様の正孔移動度およびHOMO/LUMOエネルギーを有する。TPDおよびNPDなどの化合物は、一般に気相堆積技術を使用して塗布する必要がある。
【0130】
3.電子デバイス
本明細書に記載の少なくとも1種類の化合物を含む1つ以上の層を有することが有益となりうる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、またはダイオードレーザー)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明による組成物の他の使用としては、コーティング材料が挙げられ、このコーティング材料は、記憶デバイス、帯電防止膜、バイオセンサー、エレクトロクロミックデバイス、固体電解コンデンサ、充電式電池などのエネルギー蓄積デバイス、および電磁遮蔽用途に使用される。
【0131】
有機電子デバイス構造の一例を図1に示す。デバイス100は、第1の電気接触層、アノード層110、および第2の電気接触層、カソード層160、およびそれらの間の電気活性層140を有する。アノードに隣接して、正孔注入層120が存在する。正孔注入層に隣接して、正孔輸送材料を含む正孔輸送層130が存在する。カソードに隣接して、電子輸送材料を含む電子輸送層150が存在することができる。選択肢の1つとして、デバイスは、アノード110の隣に1つ以上の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)、および/またはカソード160の隣に1つ以上の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用することができる。2つ以上の正孔輸送層が存在する場合、それらは組成が同じ場合も異なる場合もあるし、厚さが同じ場合も異なる場合もある。2つ以上の電子輸送層が存在する場合、それらは組成が同じ場合も異なる場合もあるし、厚さが同じ場合も異なる場合もある。
【0132】
層120から150は、個別におよび集合的に活性層と呼ばれる。
【0133】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;正孔注入層120、50〜3000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層130、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;電気活性層140、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;層150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0134】
デバイス100の用途に依存するが、電気活性層140は、印加電圧によって活性化する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中など)であってよい。光検出器の例としては、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、および光電管、ならびに光起電力セルが挙げられ、これらの用語はMarkus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,470 and 476(McGraw−Hill,Inc.1966)に記載されている。
【0135】
ある実施形態においては、本発明の新規な重水素化化合物は、層130中の正孔輸送材料として有用である。ある実施形態においては、少なくとも1つの追加層は重水素化材料を含む。ある実施形態においては、追加層は正孔注入層120である。ある実施形態においては、追加層は電気活性層140である。ある実施形態においては、追加層は電子輸送層150である。
【0136】
ある実施形態においては、本発明の新規な重水素化化合物は、電気活性層140中のエレクトロルミネッセンスの材料のホスト材料として有用である。ある実施形態においては、発光材料も重水素化されている」。ある実施形態においては、少なくとも1つ追加層は重水素化材料を含む。ある実施形態においては、追加層は正孔注入層120である。ある実施形態においては、追加層は正孔輸送層130である。ある実施形態においては、追加層は電子輸送層150である。
【0137】
ある実施形態においては、本発明の新規な重水素化化合物は、層150中の電子輸送材料として有用である。ある実施形態においては、少なくとも1つの追加層は重水素化材料を含む。ある実施形態においては、追加層は正孔注入層120である。ある実施形態においては、追加層は正孔輸送層130である。ある実施形態においては、追加層は電気活性層140である。
【0138】
ある実施形態においては、電子デバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、電気活性層、および電子輸送層からなる群から選択される層のあらゆる組み合わせの中に重水素化材料を有する。
【0139】
ある実施形態においては、本発明のデバイスは、加工しやすくするため、または機能性を改善するために追加層を有する。これらの層のいずれかまたはすべてが重水素化材料を含むことができる。ある実施形態においては、すべての有機デバイス層が重水素化材料を含む。ある実施形態においては、すべての有機デバイス層が重水素化材料から実質的になる。
【0140】
デバイス中の他の層は、そのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。アノード110は、正電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。アノードは、たとえば金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する材料でできていてもよいし、導電性ポリマー、およびそれらの混合物であってもよい。好適な金属としては、11族金属、4族、5族、および6族の金属、ならびに8〜10族の遷移金属が挙げられる。アノードが光透過性となるべき場合には、インジウムスズ酸化物などの12族、13族、および14族の金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノード110は、“Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer”,Nature vol.357,pp 477 479(11 June 1992)に記載されるようなポリアニリンなどの有機材料を含むこともできる。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明となるべきである。
【0141】
ある実施形態においては、本発明のデバイスは、アノードと、本発明の新規なポリマーを含む層との間に正孔注入層をさらに含む。用語「正孔注入層」は、導電性材料または半導体材料を含む層を意味することを意図しており、この層は、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つ以上の機能を有機電子デバイス中で有することができる。正孔注入材料は、ポリマー、オリゴマー、または小分子であってよく、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物、またはその他の組成物の形態であってよい。正孔注入層は、プロトン酸がドープされることが多いポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料を使用して形成することができる。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。正孔注入層は、銅フタロシアニンやテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。一実施形態においては、正孔注入層は、導電性ポリマーとコロイド形成性ポリマー酸との分散体から作製される。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005−205860号明細書に記載されている。
【0142】
ある実施形態においては、正孔輸送層120は、本明細書に記載の新規な重水素化電気活性化合物を含む。ある実施形態においては、正孔輸送層120は、本明細書に記載の新規な重水素化電気活性化合物から実質的になる。ある実施形態においては、層120は、別の正孔輸送材料を含む。層120の別の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.WangによりKirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837 860,1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB)、および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、およびポリアニリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。場合によっては、トリアリールアミンポリマー類、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマー類が使用される。場合によっては、これらのポリマー類およびコポリマー類は架橋性である。架橋性正孔輸送ポリマー類の例は、たとえば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および国際公開第2005/052027号パンフレットに見ることができる。ある実施形態においては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントでドープされる。
【0143】
デバイスの用途に依存するが、電気活性層140は、印加電圧によって活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。一実施形態においては、電気活性材料は、有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料である。限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物などのあらゆるEL材料をデバイス中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、クリセン類、ピレン類、ペリレン類、ルブレン類、クマリン類、アントラセン類、チアジアゾール類、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;Petrovらの米国特許第6,670,645号明細書ならびに国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに記載されるような、フェニルピリジン、フェニルキノリン、またはフェニルピリミジンの配位子を有するイリジウム錯体などの、シクロメタレート化されたイリジウムおよび白金のエレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載される有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合によっては、加工特性および/または電子特性を改善するために小分子蛍光材料または有機金属材料がドーパントとしてホスト材料とともに堆積される。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン)類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンス材料は、イリジウムのシクロメタレート化錯体である。ある実施形態においては、この錯体は、フェニルピリジン類、フェニルキノリン類、およびフェニルイソキノリン類から選択される2つの配位子と、β−ジエノレートである第3の配位子とを有する。これらの配位子は、非置換であってもよいし、F、D、アルキル基、CN基、またはアリール基で置換されていてもよい。
【0145】
ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンス材料は、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、およびポリスピロビフルオレン類からなる群から選択されるポリマーである。
【0146】
ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンス材料は、非ポリマーのスピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物からなる群から選択される。
【0147】
ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンス材料は、アリールアミン基を有する化合物である。
【0148】
ある実施形態においては、ホスト材料は、正孔輸送材料、電子輸送材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0149】
式I〜IIIの新規な重水素化化合物は、層140中のエレクトロルミネッセンス材料のホストとして有用である。これらの化合物は単独で使用することもできるし、第2のホスト材料と組み合わせて使用することもできる。本発明の新規な重水素化化合物は、任意の発光色を有する材料のホストとして使用することができる。
【0150】
ある実施形態においては、電気活性層は、式I〜IIIの中の1つで表されるホスト材料と、1種類以上のエレクトロルミネッセンス化合物とから実質的になる。ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンス材料は、アミノ置換クリセン類およびアミノ置換アントラセン類からなる群から選択される。
【0151】
電子輸送層150は、電子輸送を促進するため、層界面における励起子の消光を防止する正孔注入層または閉じ込め層としての機能との両方で機能することができる。好ましくは、この層は、電子移動を促進し、励起子の消光を減少させる。任意選択の電子輸送層150中に使用することができる電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)、およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート誘導体などの金属キレート化オキシノイド化合物;ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン類;ならびにそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、電子輸送層はn−ドーパントをさらに含む。n−ドーパントの例としては、Csまたはその他のアルカリ金属類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
カソード160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に効率的な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソードの材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Cs)、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、たとえば希土類元素およびランタニド、ならびにアクチニドから選択することができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウム、ならびにそれらの組み合わせなどの材料を使用することができる。動作電圧を低下させるために、Li含有有機金属化合物、LiF、Li2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs2O、およびCs2CO3を有機層とカソード層との間に堆積することもできる。この層は電子注入層と呼ばれる場合もある。
【0153】
各構成層の材料の選択は、好ましくは、デバイスの可動寿命で高いデバイス効率を有するデバイスを得ることの目標の釣り合いを取ることによって決定される。デバイス中に他の層が存在することもできる。緩衝層と有機活性層との間に1つ以上の正孔注入層および/または正孔輸送層が存在することができる。有機活性層とカソードとの間に1つ以上の電子輸送層および/または電子注入層が存在することができる。
【0154】
本発明のデバイスは、好適な基体上に個別の層を順次堆積するなどの種々の技術によって作製することができる。ガラスおよびポリマーフィルムなどの基体を使用することができる。熱蒸着、化学蒸着などの従来の気相堆積技術を使用することができる。あるいは、有機層は、好適な溶媒を使用した液相堆積によって塗布することができる。この液相は、溶液、分散液、またはエマルジョンの形態であってよい。典型的な液相堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングなどの連続堆積技術;ならびにインクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷、あらゆる従来のコーティング技術または印刷技術、たとえば、限定するものではないがスピンコーティング、浸漬コーティング、ロール・トゥ・ロール技術、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
本明細書に記載の新規な重水素化電気活性化合物は、液体組成物から液相堆積によって塗布することができる。用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液を形成する液体媒体、材料が分散して分散液を形成する液体媒体、あるいは材料が懸濁して懸濁液またはエマルジョンを形成する液体媒体を意味することを意図している。
【0156】
一実施形態においては、本発明のデバイスは:アノード、正孔注入層、正孔輸送層、電気活性層、電子輸送層、電子注入層、カソードの構造をこの順序で有する。一実施形態においては、アノードは、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物でできている。
【0157】
一実施形態においては、正孔注入層は、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリピロール類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性ポリマーを含む。一実施形態においては、正孔注入層は、導電性ポリマーとコロイド形成性ポリマー酸との複合体を含む。
【0158】
一実施形態においては、正孔輸送層は、本明細書に記載の新規な重水素化化合物を含む。一実施形態においては、正孔輸送層は、トリアリールアミン基またはトリアリールメタン基を有する化合物を含む。一実施形態においては、正孔輸送層は、前述の定義のTPD、MPMP、NPB、CBP、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。
【0159】
一実施形態においては、電気活性層は、エレクトロルミネッセンス材料およびホスト材料を含む。ホストは電荷輸送材料であってよい。一実施形態においては、ホストは、本明細書に記載の新規な重水素化電気活性化合物である。一実施形態においては、電気活性層は第2のホスト材料をさらに含む。
【0160】
一実施形態においては、電子輸送層は、ヒドロキシアリール−N−複素環の金属錯体を含む。一実施形態においては、ヒドロキシアリール−N−複素環は、非置換または置換8−ヒドロキシキノリンである。一実施形態においては、金属はアルミニウムである。一実施形態においては、電子輸送層は、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム、テトラキス(8−ヒドロキシキノリナト)ジルコニウム、テトラキス(8−ヒドロキシキノリナト)ハフニウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される材料を含む。一実施形態においては、電子注入層はLiFまたはLi2Oである。一実施形態においては、カソードはAlまたはBa/Alである。一実施形態においては、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム、テトラキス(8−ヒドロキシキノリナト)ジルコニウム、テトラキス(8−ヒドロキシキノリナト)ハフニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む電子輸送層と、LiFまたはLi2Oを含む電子注入層とが存在する。
【0161】
一実施形態においては、本発明のデバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、および電気活性層の液層堆積と、電子輸送層、電子注入層、およびカソードの気相堆積とによって製造される。
【0162】
一実施形態においては、本発明のデバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、および電気活性層、電子輸送層、電子注入層、およびカソードの気相堆積によって製造される。
【0163】
一実施形態においては、本発明のデバイスは、一部の有機層の気相堆積と、一部の有機層の液相堆積とによって製造される。一実施形態においては、本発明のデバイスは、正孔注入層の液相堆積と、その他のすべての層の気相堆積とによって製造される。
【0164】
本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料について以下に説明する。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それらの記載内容全体が参照により援用される。
【実施例】
【0165】
本明細書に記載の概念を以下の実施例においてさらに説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0166】
比較例A
この実施例では、以下のスキームによる、比較例Aの非重水素化化合物の調製を示す。
【0167】
【化27】

【0168】
比較例Aの合成
パート1−中間化合物C1:
【0169】
【化28】

【0170】
隔膜で閉じられた200mLの2口丸底フラスコ中で、化合物1(4.0g、6.3mmol)を60mLのトルエン中に溶解させた。4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ベンゼンボロン酸(3.72g、15.7mmol)、Aliquat(登録商標)336(0.5g)、および炭酸ナトリウム(3.33g、31.4mmol)を加えた。得られた混合物に窒素をスパージし、反応フラスコに、還流冷却器および窒素入口−出口を取り付けた。窒素パージしたグローブボックス中で、テトラキストリフェニルホスフィン(363mg、5.00mol%)および無水トルエン(10mL)を丸底フラスコ中で混合した。このフラスコを隔壁で封止し、グローブボックスから取り出した。触媒懸濁液を、カニューレによって反応混合物に加えた。シリンジによって水(30mL)を反応容器に加えた。窒素スパージを取り外し、窒素ブランケットと交換した。反応混合物を90℃で3時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、分液漏斗に移し、酢酸エチルで希釈した。水層を除去し、有機層を水で洗浄し、次にブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。得られた粗生成物をシリカゲルパッドで濾過し、酢酸エチルで洗浄した。溶媒を除去し、生成物を高真空下で乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレンが3:2)によって精製すると、2.2gの薄オレンジ色泡状固体が得られた。純度(HPLC):98.5%、4,4’−および4,5’−位置異性体の混合物。NMR分析により、中間化合物C1の構造を確認した。
【0171】
パート2−中間化合物C2:
【0172】
【化29】

【0173】
マグネチックスターラーおよび窒素入口−出口を取り付けた250mLの丸底フラスコ中で、中間化合物C1(2.2g、2.5mmol)を40mLの塩化メチレン中に溶解させた。トリフルオロ酢酸(2.9g、25mmol)を加え、反応物を16時間撹拌した。溶媒およびトリフルオロ酢酸を回転蒸発によって除去し、得られた生成物をジエチルエーテル中に溶解させた。得られたジエチルエーテル溶液を、飽和重炭酸ナトリウム(2回)、水、およびブラインで洗浄した。そのエーテルをMgSO4上で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーター上で濃縮した。得られた生成物を高真空下で乾燥させて、1.7g(100%)の薄オレンジ色泡状固体を得た。純度(HPLC):94.7%。NMR分析により、中間化合物C2の構造を確認した。
【0174】
パート3−中間化合物C3の合成:
【0175】
【化30】

【0176】
窒素雰囲気下、化合物C2(2.0g、3.03mmol)、4−ブロモ−4’−プロピルビフェニル(1.67g、6.05mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(139mg、5mol%)、トリ−t−ブチルホスフィン(61mg、10mol%)、およびトルエン(27mL)を混合した。ナトリウムt−ブトキシド(0.872g、9.08mmol)を加え、反応物を室温で40時間撹拌した。次に、4−ブロモ−4’−プロピルビフェニル(250mg、0.91mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(55mg、2mol%)、トリ−t−ブチルホスフィン(25mg、4mol%)、およびナトリウムt−ブトキシド(291mg、3.03mmol)を加えた。さらに23時間後、反応混合物をCeliteパッドで濾過し、トルエンで洗浄した。得られた溶液を、ロータリーエバポレーター上で濃縮し、減圧下で乾燥させた。得られた生成物を、シリカゲル上の中圧液体クロマトグラフィー(ヘキサン中0〜40%塩化メチレンのグラジエント)で精製して、1.70g(収率53%)の白色固体を得た。NMR分析により、4,4’−および4,5’−位置異性体の混合物としての中間化合物C3の構造を確認した。純度(UPLC):97.8%。
【0177】
パート4−中間体4−ブロモ−4’−ヨードビフェニルの合成:
【0178】
【化31】

【0179】
機械的撹拌機、温度計、および窒素バブラー入口を上部に有する還流冷却器を取り付けた1リットルの4口丸底フラスコに、酢酸(400mL)、硫酸(10mL)、および水(20mL)の中の4−ブロモビフェニル(23.31g、100mmol)を投入した。撹拌しながらこの混合物に、ヨウ素酸(4.84g、27.5mmol)を加え、その直後にヨウ素片(11.17g、44.0mmol)を加えた。反応フラスコを、あらかじめ加熱したトリ(エチレングリコール)加熱浴中に浸漬し、65℃の内部温度に加熱した。30分後、内部温度が20分後に85℃まで上昇するように浴温度を上昇させた。この温度での加熱を4.5時間続け、その時点で、UPLC分析を行うと、反応の終了が示された。室温で終夜撹拌した後、反応混合物を粗いフリットの漏斗で減圧濾過し、得られた固形分を水で洗浄した。得られた白色固体(32.1g、収率89%)はmpが177〜179℃であり、さらに精製することなく次のステップで使用した。NMR分析により、4−ブロモ−4’−ヨードビフェニルの構造を確認した。純度(UPLC):>99%。
【0180】
パート5−中間化合物C4の合成:
【0181】
【化32】

【0182】
窒素パージしたグローブボックス中で、マグネチックスターラー、温度計、および上部に閉鎖位置のガス入口アダプターを有する還流冷却器を取り付けた3口丸底フラスコの開いている口から、C3(1.70g、1.62mmol)、4−ブロモ−4’−ヨードビフェニル(2.62g、7.29mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(178mg、12mol%)、ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)(215mg、24mol%)、およびトルエン(30mL)を投入した。ナトリウムt−ブトキシド(0.342g、3.56mmol)を加え、開いた口に蓋をして、反応容器をグローブボックスから取り出した。窒素バブラーのホースをガス入口アダプターに取り付け、窒素のわずかな陽圧下でコックを開放位置に動かした。トリ(エチレングリコール)浴中で反応物を加熱還流した。反応物を加熱還流した。16時間後、反応物を室温まで冷却し、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(178mg、12mol%)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(215mg、24mol%)、およびナトリウムt−ブトキシド(342mg、3.56mmol)を反応混合物に加えた。さらに2時間還流した後、反応混合物を室温まで冷却した。室温において72時間後、反応混合物をCeliteパッドで濾過し、トルエンで洗浄した。その濾液を回転蒸発によって濃縮した。得られた粗生成物を高真空下で乾燥させ、シリカゲル上の中圧液体クロマトグラフィー(ヘキサン中0〜35%塩化メチレンのグラジエント)によって精製して、1.42g(収率58%)の白色固体を得た。NMR分析により、4,4’−および4,5’−位置異性体の混合物としての中間化合物C4の構造を確認した。純度(UPLC):98.7%。
【0183】
パート6−比較例Aの合成
特に明記しないかぎり、すべての作業を窒素パージしたグローブボックス中で行った。モノマーC4(0.756g、0.50mmol)をシンチレーションバイアルに加え、20mLのトルエン中に溶解させた。清浄にして乾燥させた50mLのSchlenk管にビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(0.278g、1.01mmol)を投入した。2,2’−ジピリジル(0.58g、1.01mmol)、および1,5−シクロオクタジエン(0.109g、1.01mmol)をシンチレーションバイアル中に量り取り、5mLのN,N’−ジメチルホルムアミド中に溶解させた。この溶液を上記Schlenk管に加えた。このSchlenk管をアルミニウムブロック中に挿入し、60℃の内部温度が得られる設定のホットプレート/スターラー上でブロックを加熱し撹拌した。この触媒系を60℃で30分間維持した。前述のトルエン中のモノマー溶液をこのSchlenk管に加え、管を封止した。重合混合物を60℃で4時間撹拌した。次にSchlenk管をブロックから取り出し、室温まで冷却した。管をグローブボックスから取り出し、内容物を濃HCl/MeOH(1.5%v/v濃HCl)の溶液中に注いだ。45分間撹拌した後、ポリマーを減圧濾過によって回収し、高真空下で乾燥させた。得られたポリマーは、トルエンから、HCl/MeOH(1%v/v濃HCl)、MeOH、トルエン(CMOSグレード)、および3−ペンタノンの中で連続して沈殿させることによって精製した。白色繊維状ポリマー(0.53g、収率78.4%)が得られた。ポリマーの分子量をGPCにより求めた(THF移動相、ポリスチレン標準物質):Mw=512,983;Mn=136,936;PDI=3.75。NMR分析により、比較例Aの構造を確認した。
【0184】
実施例1
この実施例では、重水素化電気活性化合物の化合物H3(式中、R1=n−プロピル、R2=n−オクチル、y=0およびΣ(x)=42である):
【0185】
【化33】

【0186】
の調製を示す。この化合物は、以下のスキームにより作製される。
【0187】
【化34】

【0188】
中間化合物Y1の合成:
窒素雰囲気下、AlCl3(0.17g、1.29mmol)を、2,2’−ジオクチル−4,4’−ジブロモ−1,1’−ビナフチレン(2.328g、3.66mmol)のC66(100mL)溶液に加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌した後、D2O(50mL)を加えた。層分離させた後、その水層をCH2Cl2(2×30mL)で洗浄した。1つにまとめた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、揮発分を回転蒸発によって除去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。化合物Y1(1.96g)が白色粉末として得られた。
【0189】
中間化合物Y2の合成:
【0190】
【化35】

【0191】
前述の中間化合物C1の調製と類似の手順を使用して、化合物Y1から化合物Y2を作製することができる。化合物Y2はクロマトグラフィーを使用して精製される。
【0192】
中間化合物Y3の合成:
【0193】
【化36】

【0194】
窒素下、100mLの丸底フラスコに、化合物Y2(2.100g、2.410mmol)およびジクロロメタン(30mL)を投入した。これを5分間撹拌し、次にトリフルオロ酢酸(1.793mL)を加え、反応物を終夜撹拌した。反応終了後、飽和炭酸ナトリウム溶液を使用して反応をクエンチした。水を除去し、CH2Cl2で洗浄し、1つにまとめた有機層を蒸発乾固させた。得られた残留物をジエチルエーテル中に溶解させ、生成物を炭酸ナトリウム、ブライン、および水で洗浄し、硫酸マグネシウムを使用して乾燥させた。化合物Y3はクロマトグラフィーを使用して精製し、1.037gを得た。
【0195】
図2に示されるように、この化合物の構造を1H NMRによって確認した。
【0196】
中間化合物Y4の合成:
【0197】
【化37】

【0198】
4−ブロモ−4’−プロピルビフェニル(5.10g、18.53mmol)のC6D6(20mL)中の溶液に窒素を30分間パージした。1.0M溶液のヘキサン中の二塩化エチルアルミニウム溶液(4.0mL、4.0mmol)をシリンジによって滴下し、反応混合物を窒素雰囲気下で1.75時間加熱還流した。窒素雰囲気下で室温まで冷却した後、酸化ジュウテリウム(20mL)を加え、混合物を振盪し、層分離させる。その水層をベンゼン(3×10mL)で抽出し、1つにまとめた有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。こうして得られた生成物について、上記反応条件をさらに2回実施した。3回目の処理の後、粗生成物をエタノール(20mL)から再結晶させて、化合物Y4(1.01g)を白色固体として得た。Mp110.1〜111.6℃。純度(UPLC):100%。Y4の1H NMRスペクトルは、8つの芳香族プロトンの平均7.64個が重水素で置換されている場合と一致した。
【0199】
中間化合物Y5の合成:
【0200】
【化38】

【0201】
窒素雰囲気下、化合物Y3(1.04g、1.55mmol)、Y4(0.80g、2.82mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(81mg、0.09mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン(42mg、0.21mol%)、およびトルエン(25mL)を混合した。ナトリウムt−ブトキシド(0.52g、5.41mmol)を加え、反応物を室温において40時間撹拌した。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(50mg、0,05mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン(30mg、0.15mmol)、およびY4(196mg、0.69mmol)を加え、反応混合物を50℃まで温めた。さらに72時間後、反応混合物をCeliteパッドで濾過し、CH2Cl2(50mL)で洗浄した。その濾液をロータリーエバポレーター上で濃縮し、減圧乾燥した。得られた生成物を、シリカゲル上の中圧液体クロマトグラフィー(ヘキサン中0〜40%塩化メチレンのグラジエント)で精製して、0.99g(収率59%)の白色固体を得た。NMR分析により、4,4’−および4,5’−位置異性体の混合物として中間化合物Y5の構造を確認した。純度(UPLC):99.3%。
【0202】
中間化合物Y6の合成:
【0203】
【化39】

【0204】
ステップ1:重水素化4−ブロモビフェニルの調製
4−ブロモビフェニル(4.66g、20.0mmol)のC6D6(20mL)中の溶液に窒素を30分間パージした。1.0M溶液のヘキサン中の二塩化エチルアルミニウム溶液(4.0mL、4.0mmol)をシリンジによって滴下し、反応混合物を窒素雰囲気下で50分間加熱還流した。窒素雰囲気下で室温まで冷却した後、酸化ジュウテリウム(20mL)を加え、混合物を振盪し、層分離させる。その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮する。こうして得られた生成物について、上記反応条件をさらに4回実施した。5回目の処理の後、粗生成物をエタノール(20mL)から再結晶させて、ステップ1の表題化合物(2.26g)を白色固体として得た。Mp92.8〜94.1℃。純度(UPLC):98.14%。質量スペクトルによって、6〜9個の重水素原子が組み込まれたことが示された。
【0205】
ステップ2:Y6の調製:
ステップ1の生成物(2.26g、9.36mmol)およびヨウ素酸(687mg)を酢酸(40mL)中に溶解させた。ヨウ素片(1.56g)を加え、続いて濃硫酸(1.0mL)および水(2.0mL)を加え、反応混合物を210分間加熱還流した。室温まで冷却した後、沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄し、次にメタノールで洗浄した(それぞれ20mL)。得られた粗生成物をEtOH/EtOAc(1/1)から結晶化させて、Y6(1.31g)を白色固体として得た。Mp179.0〜181.3℃。純度(UPLC):100%。質量スペクトルによって、平均6〜7個の重水素原子が組み込まれたことが示された。
【0206】
中間化合物Y7の合成:
【0207】
【化40】

【0208】
窒素したグローブボックス中で、マグネチックスターラー、温度計、および上部に閉鎖位置のガス入口アダプターを有する還流冷却器を取り付けた3口丸底フラスコの開いている口から、Y5(986mg、0.92mmol)、Y6(1.30g、3.55mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(124mg、14.8mol%)、ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)(151mg、29.6mol%)、およびトルエン(20mL)を投入した。ナトリウムt−ブトキシド(0.30g、3.12mmol)を加え、開いている口に蓋をして、反応容器をグローブボックスから取り出した。窒素バブラーのホースをガス入口アダプターに取り付け、窒素のわずかな陽圧下でコックを開放位置に動かした。反応物を加熱還流した。21時間後、アリコートのUPLC分析より反応が終了したと判断し、反応物を室温まで冷却した。反応混合物をCeliteパッドで濾過し、CH2Cl2で洗浄した。濾液を回転蒸発によって濃縮した。得られた粗生成物を高真空下で乾燥させ、シリカゲル上の中圧液体クロマトグラフィー(ヘキサン中0〜40%塩化メチレンのグラジエント)によって精製すると、1.21gの白色固体が得られ、沸騰メタノールを使用してこれを2時間粉砕して、0.975gのY7を得た。1H NMR分析によって、4,4’−および4,5’−位置異性体の混合物としての中間化合物Y7の構造が確認され、平均14個の芳香族プロトンが残存することが示された。このことは、質量スペクトルにおける親イオン(m/z1550.3)によって裏付けられ、50個の芳香族水素の中の36個が重水素で置換されていることが確認された。純度(UPLC):>99%。
【0209】
化合物H3の合成:
比較例Aに記載されるようにして、中間化合物Y7の重合を行った。ポリマーは白色固体として68%の収率(0.285g)で得られた。ポリマーの分子量をGPCによって測定した(THF移動相、ポリスチレン標準物質):Mw=325,740;Mn=139,748;Mw/Mn=2.33。
【0210】
実施例2
この実施例では、重水素化の電気活性化合物、化合物P(式中、Σ(x)=18)の調製を示す。
【0211】
化合物2の合成
【0212】
【化41】

【0213】
窒素雰囲気下、250mLの丸底に、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(25.0g、45.58mmol)、フェニルボロン酸(12.23g、100.28mmol)、Pd2(dba)3(0.42g、0.46mmol)、PtBu3(0.22g、1.09mmol)、および100mLのトルエンを投入した。反応混合物を5分間撹拌した後、KF(8.74g、150.43mmol)を2回に分けて加え、得られた溶液を室温で終夜撹拌した。得られた混合物を500mLのTHFで希釈し、シリカおよびセライトのプラグで濾過し、濾液から揮発分を減圧下で除去した。得られた黄色油を、ヘキサンを溶離液として使用するシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物は白色固体として80.0%(19.8g)で得られた。NMRによる分析から、この材料が上記構造で表される化合物2であることが示された。
【0214】
化合物3の合成
【0215】
【化42】

【0216】
冷却器および滴下漏斗を取り付けた250mLの3口丸底フラスコにN2を30分間フラッシングした。9,9−ジオクチル−2,7−ジフェニルフルオレン(19.8g、36.48mmol)を加え、100mLのジクロロメタン中に溶解させた。得られた透明溶液を−10℃まで冷却し、20mLのジクロロメタン中の臭素(12.24g、76.60mmol)溶液を滴下した。得られた混合物を0℃で1時間撹拌し、次に室温まで温め、終夜撹拌した。100mLの10%Na223水溶液を加え、反応混合物を1時間撹拌した。その有機層を抽出し、水層を100mLのジクロロメタンで3回洗浄した。1つにまとめた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。得られた油にアセトンを加えると、白色沈殿が得られた。濾過し乾燥させることによって、白色粉末が得られた(13.3g、52.2%)。NMRによる分析から、この材料が上記構造で表される化合物3であることが示された。
【0217】
化合物4の合成
【0218】
【化43】

【0219】
窒素雰囲気下、250mLの丸底に、3(13.1g、18.70mmol)、アニリン(3.66g、39.27mmol)、Pd2(dba)3(0.34g、0.37mmol)、PtBu3(0.15g、0.75mmol)および100mLのトルエンを投入した。反応混合物を10分間撹拌した後、NaOtBu(3.68g、38.33mmol)を加え、反応混合物を室温で1日間撹拌した。得られた反応混合物を3Lのトルエンで希釈し、シリカおよびセライトのプラグで濾過した。揮発分を蒸発させ、得られた暗褐色油を、酢酸エチル:ヘキサンの1:10混合物を溶離液として使用するシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物は、淡黄色粉末として50.2%(6.8g)で得られた。NMRによる分析から、この材料が上記構造で表される化合物4であることが示された。
【0220】
化合物5の合成
【0221】
【化44】

【0222】
冷却器を取り付けた250mLの3口丸底フラスコ中で、4(4.00g、5.52mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(4.68g、16.55mmol)、Pd2(dba)3(0.30g、0.33mmol)、およびDPPF(0.37g、0.66mmol)を80mLのトルエンと混合した。得られた混合物を10分間撹拌した。NaOtBu(1.17g、12.14mmol)を加え、得られた混合物を80℃で4日間加熱した。得られた反応混合物を1Lのトルエンおよび1LのTHFで希釈し、シリカおよびセライトのプラグで濾過して、不溶性の塩を除去した。揮発分を蒸発させ、得られた褐色油を、ジクロロメタン:ヘキサンの1:10混合物を溶離液として使用するシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。乾燥後に黄色粉末が得られた(4.8g、84.8%)。NMRによる分析から、この材料が上記構造で表される化合物5であることが示された。
【0223】
化合物6の合成
【0224】
【化45】

【0225】
窒素雰囲気下で、1gの化合物5をC66(20mL)中に溶解させ、これにCF3OSO2D(1.4mL)を滴下した。得られた反応混合物を室温で終夜撹拌し、次に飽和Na2CO3/D2Oを加えてクエンチした。その有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させた。得られた生成物を、シリカクロマトグラフィー(20%CH2Cl2:ヘキサン)を使用して精製して、0.688gの材料を得た。単離した材料のMSスペクトルから、18個の芳香族Dを有する構造が確認された。
【0226】
化合物6の重合:
特に明記しないかぎり、すべての作業を窒素パージしたグローブボックス中で行った。化合物6(0.652g、0.50mmol)をシンチレーションバイアルに加え、16mLのトルエン中に溶解させた。清浄にして乾燥させた50mLのSchlenk管に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(0.344g、1.252mmol)を投入した。2,2’−ジピリジル(0.195g、1.252mmol)、および1,5−シクロオクタジエン(0.135g、1.252mmol)をシンチレーションバイアル中に量り取り、3.79gのN,N’−ジメチルホルムアミド中に溶解させた。この溶液を上記Schlenk管に加えた。このSchlenk管をアルミニウムブロック中に挿入し、60℃の内部温度が得られる設定のホットプレート/スターラー上でブロックを加熱し撹拌した。この触媒系を60℃で45分間維持し、次に65℃まで上昇させた。前述のトルエン中のモノマー溶液をこのSchlenk管に加え、管を封止した。重合混合物を65℃で1の間撹拌しながら、トルエン(8mL)を加えることによって粘度を調節した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、20mLの濃HClを加えた。得られた混合物を45分間撹拌した。得られたポリマーを減圧濾過によって回収し、さらにメタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させた。ポリマーをトルエンから、アセトンおよびMeOHの中で連続して沈殿させることによって精製すると、白色繊維状ポリマー(0.437g、収率79%)が得られた。ポリマーの分子量をGPCによって測定した(THF移動相、ポリスチレン標準物質):Mw=1,696,019;Mn=873,259。NMR分析によって、ポリマーの構造が化合物Pであることが確認された。
【0227】
デバイス例
以下の材料を使用した:
HIJ−1:導電性ポリマーおよびポリマーフッ素化スルホン酸の水性分散体から製造される。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/0205860号明細書に記載されている。
ホスト1:
【0228】
【化46】

【0229】
発光体1:
【0230】
【化47】

【0231】
デバイス例1
この実施例では、正孔輸送層中に本発明の重水素化材料を使用したデバイスの製造および性能を示す。
【0232】
デバイスは、ガラス基体上に以下の構造を有した:
アノード=インジウムスズ酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ−1(50nm)
正孔輸送層=化合物H3(20nm)
電気活性層=6:1のホスト1:発光体1(40nm)
電子輸送層=金属キノレート誘導体(10nm)
カソード=CsF/Al(1.0/100nm)
【0233】
以下に示すように、実施例1−1から1−4の名称の4つのデバイスを作製し試験を行った。
【0234】
溶液処理および熱蒸着技術の組み合わせによってOLEDデバイスを製造した。Thin Film Devices,Incの、パターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITO基体は、50Ω/□のシート抵抗および80%の光透過率を有するITOがコーティングされたコーニングCorning 1737ガラスを主とするものである。これらのパターン化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。次に、このパターン化されたITOを、アセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、窒素気流中で乾燥させた。
【0235】
デバイス製造の直前に、このパターン化されたITO基体を洗浄したものをUVオゾンで10分間処理した。冷却した直後に、HIJ−1の水性分散体をITO表面上にスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次に基体に正孔輸送材料の溶液をスピンコーティングし、次に加熱して溶媒を除去した。冷却後、基体に発光層溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基体をマスクし、真空チャンバーに入れた。熱蒸着によって電子輸送層を堆積し、続いてCsF層を堆積した。次に減圧下でマスクを交換し、熱蒸着によってAl層を堆積した。チャンバーに通気し、ガラス蓋、乾燥剤、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。
【0236】
OLED試料の特性決定は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス放射輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネッセンススペクトル対電圧を測定することによって行った。3つすべての測定を同時に行い、コンピュータで制御を行った。LEDのエレクトロルミネッセンス放射輝度を、デバイスを動作させるために必要な電流密度で割ることによって、ある電圧におけるデバイスの電流効率が求められる。この単位はcd/Aである。この単位はcd/Aである。出力効率は、電流効率を動作電圧で割った値である。この単位はlm/Wである。結果を以下の表1に示す。
【0237】
比較デバイス例
正孔輸送層が比較例A出会ったことを除けば、デバイス例1において前述したように比較デバイスを作製した。前述のようにして、比較例A−1および比較例A−2の名称の2つのデバイスを作製し、試験を行った。結果を以下の表1に示す。
【0238】
【表1】

【0239】
一般的説明または実施例において前述した全ての行為が必要であるとは限らず、特定の行為の一部は不要である場合があり、記載の行為に加えて1つ以上のさらなる行為を行うことができることを留意されたい。さらに、行為が記載される順序は、必ずしもそれらが行われる順序ではない。
【0240】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0241】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0242】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。本明細書において規定される種々の範囲内の数値が使用される場合、記載の範囲内の最小値および最大値の両方の前に単語「約」が付けられているかのように近似値として記載されている。この方法では、記載の範囲よりもわずかに上およびわずかに下のばらつきを使用して、その範囲内の値の場合と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、ある値の一部の成分を異なる値の一部の成分と混合した場合に生じうる分数値を含めて、最小平均値と最大平均値との間のすべての値を含む連続した範囲であることを意図している。さらに、より広い範囲およびより狭い範囲が開示される場合、ある範囲の最小値を別の範囲の最大値と一致させること、およびその逆のことが本発明の意図の範囲内となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのジアリールアミノ部分を有し、少なくとも10%が重水素化されている、化合物。
【請求項2】
少なくとも50%が重水素化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式I、式II、または式III:
【化1】

(式中:
Ar1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、および置換ナフチレンからなる群から選択され;
Ar2は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、アリール基であり;
Mは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
1およびT2は、独立して、出現するごとに同じまたは異なるものであって、共役部分であり;
aは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
b、c、およびdは、b+c+d=1.0となるようなモル分率であり、但し、cは0ではなく、bおよびdの少なくとも1つは0ではなく、bが0である場合は、Mが少なくとも2つのトリアリールアミン単位を含み;
eは、出現するごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数であり;
nは1を超える整数である)
で表される化合物であって、少なくとも10%が重水素化されている、化合物。
【請求項4】
アリール環上に少なくとも1つの置換基を有し、重水素化が、アリール環上の前記置換基上で行われている、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Ar1およびAr2の少なくとも1つが重水素化アリール基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
Ar1およびAr2は、少なくとも20%が重水素化されている、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
アリール環上に少なくとも1つの置換基を有し、重水素化が、少なくとも1つの置換基と少なくとも1つのアリール環との両方の上で行われている、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
重水素化が[T1−T2]の上で行われている、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
[T1−T2]は、少なくとも20%が重水素化されている、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Ar1およびAr2の少なくとも1つが重水素化アリール基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
Ar1およびAr2は少なくとも20%が重水素化されている、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
[T1−T2]が:
【化2】

【化3】

(式中:
Rは、同じまたは異なるものであって、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、フルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロアリールオキシ フルオロアルキルオキシ、オキシアルキル、およびアルケニル基からなる群から選択される)
およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項13】
RがC1〜10アルキルおよびC1〜10アルコキシからなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
aが1〜3である、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
Ar2が式a
【化4】

(式中:
1は、出現するごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択されるか;または隣接するR1基が結合して芳香環を形成できるかであり;
fは、出現するごとに同じまたは異なるものであって0〜4の整数であり;
gは0〜5の整数であり;
mは1〜5の整数である)
で表される、請求項3に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522781(P2012−522781A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503409(P2012−503409)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068921
【国際公開番号】WO2010/114583
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】