説明

電気浸透式脱水機の運転方法

【課題】含水率が70%を超えている汚泥を、従来と比べて簡単な工程を追加するだけで含水率70%以下になるまで脱水できる電気浸透式脱水機の運転方法を得る。
【解決手段】含水率が70%を超える汚泥を脱水する電気浸透式脱水機30の運転方法において、電気浸透式脱水機30に供給する前の汚泥にpH調整剤を添加して該汚泥を、電気浸透式脱水機30により含水率70%以下まで脱水可能となるpH域に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し尿処理場や下水処理場、民間の工場の排水処理施設などから発生する汚泥を脱水処理する脱水機の運転方法に関し、特に、いわゆる二次脱水機として用いられることが多い電気浸透式脱水機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
し尿処理場や下水処理場、民間の工場の排水処理施設など(以下、これらをまとめて指す場合は「下水処理場等」という)から発生する余剰汚泥や嫌気性汚泥などを脱水処理するために、従来、遠心分離式脱水機、ベルトプレス式脱水機、多重円板式脱水機などの汚泥脱水装置が使用されている。それらの汚泥脱水装置により汚泥は、通常、含水率が概ね80〜90%程度になるまで脱水される。
【0003】
この種の汚泥は焼却処理されることも多いが、そうする場合は一般に、焼却前に汚泥を含水率70%以下になるまで脱水しておくことが望まれている。つまり、含水率が通常70%以下のいわゆる汚泥ケーキ状態になった汚泥は自燃可能域に近づけられることから、重油などの補助燃料を減らすことができ、その焼却処理に要するランニングコストが著しく低減されるのである。
【0004】
また最近では、汚泥を助燃剤として資源化することもなされているが、その場合も当然、汚泥は上述の自燃可能域に近づく状態まで脱水処理することが望まれる。特にこのように汚泥を助燃剤化するに当たっては、平成12年10月6日付けで厚生省生活衛生局水道環境部長から各都道府県知事宛に通達された「廃棄物処理施設整備補助事業に係る汚泥再生処理センター等の性能に関する指針」により、汚泥を含水率70%以下まで脱水処理できる処理施設は補助金交付の対象になることから、この値まで汚泥を脱水処理することが広く求められている。
【0005】
しかし、従来使用されている遠心分離式脱水機、多重円板式脱水機などによって汚泥を含水率70%以下まで脱水しようとすると、装置の過大化、薬品使用量の増加、副資材の添加などのために設備コストおよびランニングコストが高くなり、また脱水汚泥量が増大してしまうという問題が生じる。
【0006】
そこで含水率70%以下を達成するために、上述の脱水処理装置以外の電気浸透式脱水機を使用することが提案されている。この電気浸透式脱水機は、汚泥通路を隔てて対向配置した陽極および陰極の間にろ布を配し、それら両電極間に直流電圧を印加する構造を有し、電圧印加で生じる電気浸透作用により汚泥の含有水をろ布を通して陰極側から系外に分離、排水させるようにしたものである。
【0007】
この電気浸透式脱水機は特に、従来広く使用されている遠心分離式脱水機、多重円板式脱水機などを一次脱水機として用い、その脱水処理後の汚泥をさらに二次脱水する際の、二次脱水機として適用されることが多い(特許文献1、非特許文献1)。すなわちその場合は、一次脱水機により含水率80〜90%程度まで脱水した一次脱水汚泥を、電気浸透式脱水機に供給して脱水することにより、脱水効率を高めて、汚泥の含水率をさらに低減することが可能である。
【0008】
しかし上述のような脱水処理方法を採用しても、下水処理場等で発生する汚泥には電気浸透作用が起こり難い性状のものも有ることから、汚泥を含水率75〜80%程度までしか脱水できない場合がある。そこで従来、電気浸透式脱水機を二次脱水機として用いる際に、一次脱水機へ供給される前の固形物濃度数%の汚泥を調質して脱水効率を上げる方法が考えられている。より具体的には、汚泥に導電活性剤を添加して汚泥の導電性を高める方法(特許文献2)や、鉄系またはアルミ系の無機凝集剤を汚泥へ添加することで含水率を低下させる方法(特許文献3、非特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-45587号公報
【特許文献2】特許第3196369号公報
【特許文献3】特開2009-28663号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】用水と廃水 Vol.50 No.8、p.9-14(2008)
【非特許文献2】分離技術 第28巻2号、p.37-43(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、一次脱水機へ供給される前の汚泥を調質するには、特に稼働中の下水処理場等へ二次脱水機として電気浸透式脱水機を導入する場合、二次脱水機の導入作業以外に一次脱水機および周辺設備の改造、さらには一次脱水機の運転条件の選定し直しなどの面倒な作業が必要になる。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みて、含水率が70%を超えている汚泥を、複雑な工程を必要とせずに含水率70%以下になるまで脱水することができる電気浸透式脱水機の運転方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は特に、上述したように例えば一次脱水および二次脱水を行っても含水率を75〜80%程度までしか脱水できない汚泥をまず電気浸透式脱水機以外の脱水機によって一次脱水処理し、その一次脱水汚泥をさらに電気浸透式脱水機で脱水する場合に、一次脱水機および周辺設備の改造や、一次脱水機の運転条件の選定し直しなどの面倒な作業を必要とせずに、含水率70%以下になるまで汚泥を脱水することができる電気浸透式脱水機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による電気浸透式脱水機の運転方法は、含水率が70%を超える汚泥を脱水する運転方法において、電気浸透式脱水機に供給する前の汚泥にpH調整剤を添加して、該汚泥を、電気浸透式脱水機により含水率70%以下まで脱水可能となるpH域に調整することを特徴とするものである。
【0015】
なお、この本発明による電気浸透式脱水機の運転方法は、上記電気浸透式脱水機を、電気浸透式脱水機以外からなる一次脱水機によって脱水された汚泥をさらに脱水する二次脱水機として用いる場合に適用するのが好ましい。
【0016】
そしてそのように電気浸透式脱水機を二次脱水機として用いる場合は、一次脱水機によって汚泥を、含水率が80〜90%になるまで脱水しておくことが望ましい。
【0017】
また前記pH調整剤としては、硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水、塩酸、燐酸および硝酸などのpH調整可能な薬品を用いることが望ましい。
【0018】
なお、上述のように含水率70%以下まで汚泥を脱水可能となるpH域は、後述の実施例に示すように汚泥によって異なる。その具体的な値については、後述する実施例に即して詳しく説明する。
【発明の効果】
【0019】
図2は、下水処理場から発生した消化汚泥を遠心分離式脱水機により脱水した一次脱水汚泥(一番右側の○:pH8.2、含水率82%)を、そのまま電気浸透式脱水機により二次脱水した場合(一番右側の△)と、pH を8.0、7.4、6.8、6.1、5.6と5通りに調整してから電気浸透式脱水機により二次脱水を行った場合(その他の△)の最終的な汚泥含水率を示している。ここに示されている通り、一次脱水汚泥のpH を概ね5.9〜8.0に調整してから二次脱水を行えば、汚泥を含水率70%以下まで、特に良好な場合は含水率52%程度まで脱水可能となる。
【0020】
なお図2に示す一番右側の○以外の○は、上記一次脱水汚泥の含水率がpH調整によって変化しないかどうか確認するために、それぞれのpH調整後に含水率を測定した結果を示している。ここに示される通り一次脱水汚泥の含水率は、pH調整の前と後で特に変わることはない。
【0021】
また図3は、下水処理場のオキシデーションディッチ(以下、「OD」という)から発生した余剰汚泥をベルトプレス式脱水機により脱水した一次脱水汚泥(右から3番目の○:pH7.9、含水率84%)を、そのまま電気浸透式脱水機により二次脱水した場合(右から3番目の△)と、pH を8.8、8.6、7.0、6.2、5.7、4.7、4.1と7通りに調整してから電気浸透式脱水機により二次脱水を行った場合(その他の△)の最終的な汚泥含水率を示している。この場合も、一次脱水汚泥のpH を図示範囲内で概ね8.4以下に調整してから二次脱水を行えば、汚泥を含水率70%以下まで、特に良好な場合は含水率51%程度まで脱水可能となる。このODから発生した余剰汚泥に関しては一次脱水汚泥のpH調整を行わなくても二次脱水汚泥の含水率を70%以下とすることができるが、一次脱水汚泥のpH を概ね5.8〜7.8に調整してから二次脱水を行えば、pH調整していない一次脱水汚泥を二次脱水するよりもさらに含水率を低下させることができる。
【0022】
なお図3に示す右から3番目の○以外の○は、上記一次脱水汚泥の含水率がpH調整によって変化しないかどうか確認するために、それぞれのpH調整後に含水率を測定した結果を示している。この場合も一次脱水汚泥の含水率は、pH調整の前と後で特に変わることはない。
【0023】
以上のように含水率70%以下まで脱水した汚泥は自燃可能域に近づくため、それを処分する後段の焼却施設において、重油などの補助燃料を減らすことができることから、燃却に関わるランニングコストが低減される。それに加えて、二次脱水後の汚泥の体積が大幅に減少することから、後段の焼却施設あるいは埋立処分場までの汚泥運搬に必要なコストも削減することができ、さらに埋立処分場への埋立量を減らせることから埋立処分場の長寿命化にもつながる。こうして本発明によれば、汚泥処理全体に要するエネルギー消費を著しく低減可能になる。
【0024】
また、本発明による電気浸透式脱水機の運転方法が特に、電気浸透式脱水機以外からなる一次脱水機によって脱水された汚泥をさらに二次脱水する電気浸透式脱水機に適用される場合、一次脱水用設備に加えて本質的に必要となるのは二次脱水機の導入作業および一次脱水汚泥のpH調整だけであるので、一次脱水機および周辺設備の改造や、一次脱水機の運転条件の選定し直しなどの作業は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による電気浸透式脱水機の運転方法を実施する装置を示す概略構成図
【図2】図1の装置により下水消化汚泥を一次および二次脱水した際の、一次脱水汚泥pHと二次脱水汚泥含水率との関係の一例を表すグラフ
【図3】図1の装置により下水OD余剰汚泥を一次および二次脱水した際の、一次脱水汚泥pHと二次脱水汚泥含水率との関係の一例を表すグラフ 1 水処理施設 10 一次脱水機 20 pH調整装置 30 電気浸透式脱水機 31 充填槽 32 ろ布 33 陽極 34 陰極 35 直流電源
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電気浸透式脱水機の運転方法を実施する装置を概略的に示すものである。図示の通りこの装置は、例えば下水処理場等の水処理施設1から配管2および汚泥供給ポンプ3を介して汚泥が供給される一次脱水機10と、この一次脱水機10が脱水した汚泥(一次脱水汚泥)が供給されるpH調整装置20と、このpH調整装置20において後述するようにしてpH調整がなされた一次脱水汚泥が供給される二次脱水機としての電気浸透式脱水機30とから構成されている。
【0027】
上記の一次脱水機10としては、遠心分離式脱水機、ベルトプレス式脱水機あるいは多重円板式脱水機、スクリュープレス式脱水機等、従来この分野で広範に利用されている脱水機がそのまま適用可能である。そこに供給される汚泥には、脱水効率を高めるために、一般になされているように適宜凝集剤が添加される。
【0028】
pH調整装置20は、一次脱水機10が脱水処理した後の一次脱水汚泥にpH調整剤を添加、混合して、この一次脱水汚泥を、後段の電気浸透式脱水機30により含水率70%以下まで脱水可能となるpH値に調整するものである。なお上記pH調整剤としては、例えば硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水、塩酸、燐酸および硝酸などのpH調整可能な薬品が用いられる。
【0029】
一方電気浸透式脱水機30は基本的に、1つの充填槽31と、この充填槽31を2つに画成するろ布32と、このろ布32の一方側(図中では上側)、他方側(図中では下側)においてそれぞれ充填槽31内に配設された陽極33および陰極34と、これらの陽極33および陰極34の間に電圧を印加する直流電源35と、後述のように陽極33の近辺部分に集中して濃縮した汚泥(二次脱水汚泥)を槽外に排出する汚泥排出手段(図示せず)とを備えている。
【0030】
この電気浸透式脱水機30において一次脱水汚泥は、充填槽31の、ろ布32よりも図中上側および陽極33よりも図中下側の部分内に供給される。そして直流電源35により陽極33と陰極34との間に直流電圧が印加されると、負の電荷を持っている汚泥粒子は陽極33の付近に集中し、正の電荷を帯びた水分子はろ布32を通して陰極34側に移動する。こうして移動した水は、充填槽31の下部に設けられた排水口31aから槽外に流出するので、陽極33とろ布32との間に供給された一次汚泥がさらに脱水、濃縮される。この脱水後の汚泥すなわち二次脱水汚泥は、上記汚泥排出手段によって槽外に排出され、例えばトラック等の輸送手段によって焼却施設に送られ、焼却処分される。
【0031】
なお電気浸透式脱水機としては、上述した構造のものに限らず、その他例えば特開2009-45587号公報に示されているように、陽極をドラムから、また陰極をそのドラムの周面に沿って移動するベルトから構成し、それら両者の間にろ布を配置した構造を有する電気浸透式脱水機等も適用可能である。
【0032】
上述のように電気浸透作用によって一次脱水汚泥をさらに脱水する際、一次脱水汚泥を予めpH調整装置20において所定のpH値に調整しておけば、最終的な汚泥含水率が70%以下になるまで二次脱水することができる。以下、そのようにして一次脱水および二次脱水を行った2つの実施例について詳しく説明する。
【0033】
《第1実施例》
本例では、下水処理場から発生した消化汚泥を脱水した。この消化汚泥をまず一次脱水機10によって一次脱水し、pH8.2、含水率82%の一次脱水汚泥を得る。なおここでは、一次脱水機10として遠心分離式脱水機を用いた。次にこの一次脱水汚泥をpH調整装置20に供給し、そこで該汚泥にpH調整剤としての5N硫酸を添加、混合して、所定値にpH調整する。そしてこのpH調整済みの一次脱水汚泥を電気浸透式脱水機30に供給し、そこで該汚泥を、印加電圧60V、印加時間500秒の条件でさらに二次脱水する。このとき、電気浸透式脱水機30に供給する一次脱水汚泥の厚みは1cm程度とする。
【0034】
図2の△は、以上の通りにして一次脱水および二次脱水を行った場合の、一次脱水汚泥pH値と二次脱水汚泥含水率との関係を示している。なお本例では、pH値を8.0、7.4、6.8、6.1、5.6と5通りに調整しており、図2ではそれらの場合に加えて、pH無調整(=8.2)の場合についても併せて示してある。ここに示されている通り、一次脱水汚泥のpH を概ね5.9〜8.0に調整してから二次脱水を行えば、汚泥を含水率70%以下まで、特に良好な場合は含水率52%程度まで脱水可能となる。
【0035】
焼却処理される二次脱水汚泥が含水率70%以下になっていれば、先に述べたように自燃可能域に近づけることができるので、重油などの補助燃料を減らすことができ、焼却処理のランニングコストを著しく低減可能となる。
【0036】
また、pH8.2、含水率82%である一次脱水汚泥のpHを7.4付近に調整してから電気浸透脱水(二次脱水)すれば、二次脱水汚泥の含水率は53%まで低下し、その容積は一次脱水汚泥と比較して38%にまで低減される。それに対して、同じ一次脱水汚泥をpH8.2のまま電気浸透脱水する場合、二次脱水汚泥の含水率は75%であって、その容積は一次脱水汚泥と比較して72%に低減されるに留まる。
【0037】
なお図2には、上記遠心分離式脱水機による一次脱水汚泥の含水率を○で示してある。それらのうち、一番右側の○はpH調整前の含水率(=82%)を、そしてそれら以外の○はpH調整後の含水率を示している。ここに示される通り一次脱水汚泥の含水率は、pH調整の前と後で特に変わることはない。
【0038】
《第2実施例》
本例では、下水処理場のODから発生した余剰汚泥を脱水した。この余剰汚泥をまず一次脱水機10によって一次脱水し、pH7.9、含水率84%の一次脱水汚泥を得る。なおここでは、一次脱水機10としてベルトプレス式脱水機を用いた。次にこの一次脱水汚泥をpH調整装置20に供給し、そこで該汚泥にpH調整剤としての5N硫酸あるいは5N水酸化ナトリウムを添加、混合して、所定値にpH調整する。そしてこのpH調整済みの一次脱水汚泥を電気浸透式脱水機30に供給し、そこで該汚泥を、印加電圧60V、印加時間500秒の条件でさらに二次脱水する。このときも電気浸透式脱水機30に供給する一次脱水汚泥の厚みは1cm程度とする。
【0039】
図3の△は、以上の通りにして一次脱水および二次脱水を行った場合の、一次脱水汚泥pH値と二次脱水汚泥含水率との関係を示している。なお本例では、pH値を8.8、8.6、7.0、6.2、5.7、4.7、4.1と7通りに調整しており、図3ではそれらの場合に加えて、pH無調整(=7.9)の場合についても併せて示してある。ここに示されている通り、一次脱水汚泥のpH を図示範囲内で概ね8.4以下に調整してから二次脱水を行えば、汚泥を含水率70%以下まで、特に良好な場合は含水率51%程度まで脱水可能となる。
【0040】
また、pH7.9、含水率84%である一次脱水汚泥のpHを7.0付近に調整してから電気浸透脱水(二次脱水)すれば、二次脱水汚泥の含水率は51%まで低下し、その容積は一次脱水汚泥と比較して33%にまで低減される。それに対して、同じ一次脱水汚泥をpH7.9のまま電気浸透脱水する場合、二次脱水汚泥の含水率は58%であって、その容積は一次脱水汚泥と比較して38%に低減されるに留まる。
【0041】
なお図3には、上記ベルトプレス式脱水機による一次脱水汚泥の含水率を○で示してある。それらのうち、右から3番目の○はpH調整前の含水率(=84%)を、そしてそれら以外の○はpH調整後の含水率を示している。ここに示される通り本例においても、一次脱水汚泥の含水率は、pH調整の前と後で特に変わることはない。
【0042】
以上、一次脱水機として、遠心分離式脱水機およびベルトプレス式脱水機を用いた場合の実施形態について説明したが、本発明においては、この遠心分離式脱水機およびベルトプレス式脱水機以外の多重円盤式脱水機、スクリュープレス式脱水機などを一次脱水機として用いる場合も、さらには、一次脱水は行わないで電気浸透式脱水機だけで汚泥を脱水する場合にも同様に適用可能である。
【0043】
またpH調整剤としては、先に述べた硫酸や水酸化ナトリウムに限らず、その他のものが用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、し尿処理場、下水処理場その他の排水処理施設で生じた汚泥、あるいは民間の工場排水から生じた汚泥を脱水処理する電気浸透式脱水機に適用可能であり、特にそれが二次脱水機として適用される場合に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が70%を超える汚泥を脱水する電気浸透式脱水機の運転方法であって、電気浸透式脱水機に供給する前の汚泥にpH調整剤を添加して該汚泥を、電気浸透式脱水機により含水率70%以下まで脱水可能となるpH域に調整することを特徴とする電気浸透式脱水機の運転方法。
【請求項2】
前記電気浸透式脱水機を、電気浸透式脱水機以外からなる一次脱水機によって脱水された汚泥をさらに脱水する二次脱水機として用いることを特徴とする請求項1記載の電気浸透式脱水機の運転方法。
【請求項3】
前記一次脱水機によって汚泥を、含水率が80〜90%になるまで脱水することを特徴とする請求項2記載の電気浸透式脱水機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−5413(P2011−5413A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150927(P2009−150927)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000101374)アタカ大機株式会社 (55)
【Fターム(参考)】