説明

電気炊飯器

【課題】ご飯が硬くなったり米に含まれる澱粉のα化が阻害されたりすることなく、ミネラル成分が豊富なおいしいご飯を炊き上げることができる電気炊飯器を提供する。
【解決手段】被加熱物を収容する内鍋10と、内鍋10が収納される炊飯器本体1と,炊飯器本体1の上部に開閉自在に取り付けられ、内鍋10を覆うように閉じる蓋体2と、炊飯器本体1内に設けられ、内鍋10を加熱する加熱部(31,32)、蓋体2内に設けられ、内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加する添加部8と、添加部8と加熱部(31,32)を制御する制御装置30とを備える。上記制御装置30のミネラル添加制御部30bは、加熱部(31,32)および添加部8を制御して、加熱部(31,32,39)により内鍋10を加熱することにより予熱運転モードの終了した時点で添加部8から内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気炊飯器としては、鍋内に水を供給する水供給装置を備え、水供給装置から供給する水にCaイオンやMgイオンを添加するものがある(例えば、特開2004−89418号公報(特許文献1)参照)。上記電気炊飯器では、CaイオンやMgイオンの作用によりおいしいご飯を炊き上げる。
【0003】
しかしながら、上記電気炊飯器では、鍋内の水に浸された米の吸水が行われる予熱運転時にCaイオンやMgイオンにより米の吸水が阻害され、ご飯が硬くなったり、米に含まれるβ澱粉がα澱粉になるα化が阻害されたりして、おいしいご飯を炊き上げることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−89418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、ご飯が硬くなったり米に含まれる澱粉のα化が阻害されたりすることなく、ミネラル成分が豊富なおいしいご飯を炊き上げることができる電気炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の電気炊飯器は、
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される本体と、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じる蓋体と、
少なくとも上記本体内に設けられ、上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記本体内または上記蓋体の少なくとも一方に設けられ、上記内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加する添加部と、
上記添加部と上記加熱部を制御する制御装置と
を備え、
上記制御装置は、
上記加熱部により上記内鍋を加熱することにより予熱工程とその予熱工程の後の炊き上げ工程とを含む炊飯運転を行う炊飯運転制御部と、
上記予熱工程の途中から上記炊き上げ工程の沸騰する直前までの期間内に、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に上記ミネラル成分を添加するミネラル添加制御部と
を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、炊飯運転制御部により加熱部を制御して、加熱部により内鍋を加熱することにより予熱工程とその予熱工程の後の炊き上げ工程とを含む炊飯運転を行うと共に、ミネラル添加制御部により添加部を制御して、予熱工程の途中から炊き上げ工程の沸騰する直前までの期間内に、本体内または蓋体に設けられた添加部から内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加することによって、予熱工程の開始からミネラル成分を添加するまでの間に米への吸水が行われるので、その後に添加されたミネラル成分で米への吸水が阻害されることがない。したがって、ご飯が硬くなったり米に含まれる澱粉のα化が阻害されたりすることなく、ミネラル成分が豊富なおいしいご飯を炊き上げることができる。
【0008】
なお、炊き上げ工程の内鍋内が沸騰した状態では、突沸や気泡など生じるため、添加部から内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加するのに不都合である。
【0009】
また、一実施形態の電気炊飯器では、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記予熱工程を終了した時点または上記予熱工程を終了した時点近傍で、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に上記ミネラル成分を添加する。
【0010】
上記実施形態によれば、ミネラル添加制御部により添加部を制御して、予熱工程を終了した時点(または予熱工程を終了した時点近傍)で、添加部から内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加することによって、予熱工程において米への吸水を十分に行えるので、ミネラル成分によって米への吸水が阻害されるのを確実に防止できる。
【0011】
また、一実施形態の電気炊飯器では、
上記内鍋内に設けられた攪拌翼と、
上記本体内に設けられ、上記攪拌翼を回転させる駆動部と
を備えた。
【0012】
上記実施形態によれば、例えば、予熱工程において、本体内に設けられた駆動部により攪拌翼を回転させることによって、内鍋内の米と水を均一な温度(例えば60℃)に保って米に効率よく吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成することができる。また、添加部から内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加した後に駆動部により攪拌翼を回転させることによって、ミネラル成分を内鍋内に均一に分散させることができ、炊き上げたご飯にミネラル成分が偏らないようにできる。
【0013】
また、一実施形態の電気炊飯器では、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に上記ミネラル成分を添加した後、上記駆動部を制御して、上記攪拌翼により上記内鍋内を攪拌する。
【0014】
上記実施形態によれば、ミネラル添加制御部により添加部と駆動部を制御して、添加部から内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加した後に攪拌翼により内鍋内を攪拌するので、内鍋内のミネラル成分の分布を均一にできる。
【0015】
また、一実施形態の電気炊飯器では、
上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量を計測する計量部と、
上記計量部により計測された上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量に基づいて、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加する上記ミネラル成分の添加量を算出する添加量算出部と
を備え、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記添加量算出部により算出された上記添加量の上記ミネラル成分を上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加する。
【0016】
上記実施形態によれば、計量部により計測された内鍋内の上記被加熱物の量に基づいて、添加量算出部により添加部から内鍋内の被加熱物に添加するミネラル成分の添加量を算出し、ミネラル添加制御部により添加部を制御して、その添加量算出部により算出された添加量のミネラル成分を添加部から内鍋内の被加熱物に添加することによって、内鍋内の上記被加熱物に対して、最適な添加量のミネラル成分を添加することが可能になる。
【0017】
また、一実施形態の電気炊飯器では、
上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量を計測する計量部と、
上記計量部により計測された上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量に基づいて、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加する上記ミネラル成分の添加量を算出する添加量算出部と
を備え、
上記計量部は、上記攪拌翼を回転させる上記駆動部のモータ電流またはモータ回転数の少なくとも一方に基づいて、上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量を計測し、
上記制御部は、上記添加部を制御して、上記添加量算出部により算出された上記添加量の上記ミネラル成分を上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加する。
【0018】
上記実施形態によれば、攪拌翼を回転させる駆動部のモータ電流またはモータ回転数の少なくとも一方に基づいて、計量部により内鍋内の被加熱物の量を計測することによって、重量センサなどを別に用いることなく、内鍋内の被加熱物を計量することができる。そして、その計量部により計測された内鍋内に収容された被加熱物の量に基づいて、添加量算出部によりミネラル成分の添加量を算出し、ミネラル添加制御部により添加部を制御して、その添加量算出部により算出された添加量のミネラル成分を添加部から内鍋内の被加熱物に添加することによって、内鍋内の被加熱物に対して、最適な添加量のミネラル成分を添加することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上より明らかなように、この発明の電気炊飯器によれば、ご飯が硬くなったり米に含まれる澱粉のα化が阻害されたりすることなく、ミネラル成分が豊富なおいしいご飯を炊き上げることができる電気炊飯器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器の斜視図である。
【図2】図2は上記電気炊飯器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図3】図3は図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図4】図4は上記電気炊飯器の制御ブロック図である。
【図5】図5は上記電気炊飯器の加熱調理運転時の内鍋内の温度変化を示す図である。
【図6】図6は上記電気炊飯器の攪拌翼の上面図である。
【図7】図7は上記攪拌翼の側面図である。
【図8】図8は上記攪拌翼の縦断面図である。
【図9】図9は上記攪拌翼の保持部とヨークと磁石の組立後の上面図である。
【図10】図10は上記電気炊飯器のロータの上面図である。
【図11】図11は上記ロータの側面図である。
【図12】図12は上記ロータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の電気炊飯器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
図1はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器を斜め上方から見た斜視図を示している。
【0023】
この実施の一形態の電気炊飯器は、図1に示すように、炊飯器本体1と、炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2とを備えている。炊飯器本体1は、前面側に設けられた表示操作部3と、前面側かつ上側に設けられたフックボタン4と、後面側に回動自在に取り付けられた本体ハンドル5と、後面側かつ下側に接続された電源コード6とを有する。また、蓋体2の後面側に蒸気口2aを設けている。表示操作部3は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンにより構成され、調理メニューや調理状況などの表示とボタン操作が可能である。蓋体2は、炊飯器本体1に設けられたラッチ機構(図示せず)により係脱可能に係止された状態で閉じられており、フックボタン4を押すことによりラッチ機構が外れて、スプリング26(図3に示す)の付勢力で蓋体2が開く。
【0024】
また、図2は上記電気炊飯器の蓋体2を開いた状態の斜視図を示しており、図1と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0025】
この電気炊飯器は、図2に示すように、炊飯器本体1の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸20(図3に示す)を介して蓋体2を上下方向に回動自在に支持している。この蓋体2は、外蓋21と内蓋22とを有する。また、炊飯器本体1内に被加熱物を収容する内鍋10を収納している。
【0026】
上記内鍋10の上側開口の縁に環状のフランジ部10aを設けている。その内鍋10のフランジ部10aの半径方向に対向する位置に、磁石取付部の一例としての耐熱樹脂製の内鍋把手11,11を取り付けている。炊飯器本体1の上面の左右2箇所に、位置決め部の一例としての凹部12a(図2では右側のみを示す)を設けて、この2つの凹部12aに内鍋10の内鍋把手11,11が夫々嵌合する。これにより、炊飯器本体1に収納された内鍋10が炊飯器本体1に対して位置決めされる。
【0027】
図3は図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図3に示すように、炊飯器本体1は、外ケース12と、その外ケース12内に配置され、内鍋10を収納する内ケース13とを有する。内ケース13は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。
【0028】
上記外ケース12と内ケース13との間の空間の後面側(図3の右側)に、電源回路やインバータ回路などを含む電源部14を配置し、電源部14の下側に電源部14などを冷却する冷却ファン15を配置している。さらに、冷却ファン15の下側かつ外ケース12の底部に、電源コード6を巻き取るコードリール7を配置している。
【0029】
また、内鍋10の底部に、内側に突出する円筒形状の凸部10bを設けている。この内鍋10の凸部10bに円板形状の攪拌翼40を回転自在に嵌合している。この攪拌翼40は、環状のヨーク41と、そのヨーク41の内側に周方向かつ等間隔に配列された複数の磁石42とを有する。この内鍋10の凸部10bに対向する内ケース13の領域に開口部13aを設けている。そして、内鍋10の凸部10bの下側かつ凸部10bの内周側に、複数の磁石18が周方向かつ等間隔に配置されたロータ16を配置し、このロータ16の軸部16aに回転軸17aが連結された攪拌モータ17を内鍋10の底部の下側に配置している。そして、ロータ16と攪拌翼40は、夫々の磁石18,42によるラジアル型の磁気カップリングにより連結され、攪拌モータ17により駆動されたロータ16が回転することにより、磁気カップリングを介して攪拌翼40が回転する。このロータ16と攪拌モータ17で駆動部を構成している。
【0030】
また、外ケース12と内ケース13との間の空間の前面側(図3の左側)に、表示操作部3(図1,図2に示す)と電源部14のインバータ回路と冷却ファン15および攪拌モータ17などを制御する制御装置30を配置している。
【0031】
また、炊飯器本体1内の内ケース13の下側かつ外側に、内鍋10を誘導加熱するための誘導コイル31を配置している。この誘導コイル31は、耐熱性を有する樹脂などにより内ケース13の外面に接着されている。また、誘導コイル31の下側には、誘導コイル31の漏れ磁束を防止するフェライト部材38を配置している。さらに、炊飯器本体1内の内ケース13の上側の側面を囲むように横ヒータ32を周方向に沿って配置している。また、内ケース13の下側に内ケース13を貫通する底温度センサ33を配置している。この底温度センサ33は、内ケース13に収納された内鍋10の底部近傍に先端部が当接して、内鍋10の温度を検出する。なお、蓋体2内に蓋ヒータ(図示せず)と蓋温度センサ34(図4に示す)を配置している。
【0032】
上記誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータで内鍋10全体を加熱する加熱部を構成している。
【0033】
上記内鍋10は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、その外面に加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体を貼り付ける一方、内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。
【0034】
一方、上記蓋体2は、炊飯器本体1の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸20(図3に示す)を介して蓋体2が回動自在に支持された外蓋21と、その外蓋21の内鍋10に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋22とを有する。この内蓋22の外周に環状の耐熱ゴム製のパッキン23を着脱自在に取り付けている。蓋体2が閉じられたときにパッキン23は、内鍋10のフランジ部10aの上面に密着して、内鍋10と内蓋22との間をシールする。また、図3において、24は内蓋22に設けられた蒸気穴である。
【0035】
上記蓋体2に、内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加するための添加部8を設けている。なお、図2では、添加部8は省略している。
【0036】
上記内鍋把手11の樹脂成形時に、内鍋把手11の屈曲部11c内に被検知部の一例としての磁石(図示せず)を埋め込んでいる。また、この内鍋把手11の屈曲部11c内に磁石の対向する外蓋21の位置に、蓋体2を閉じたときに磁石の磁気によりオンする磁気センサの一例としてのリードスイッチ25を取り付けている。
【0037】
図4は上記電気炊飯器の制御ブロック図を示している。制御装置30は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、表示操作部3からの操作信号や、リードスイッチ25,底温度センサ33,蓋温度センサ34からの信号などに基づいて、表示操作部3,攪拌モータ17,冷却ファン15,誘導コイル用インバータ回路35,横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37および添加部8を制御する。誘導コイル用インバータ回路35は、誘導コイル31に交番磁界を発生させる。
【0038】
また、添加部8は、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラル成分を顆粒状または錠剤状にしたものを内鍋10内に投入してもよいし、そのようなミネラル成分を溶液に溶かしたものを内鍋10内に滴下してもよい。例えば、顆粒状のミネラル成分の場合は、容器の下側に設けた開閉部の開閉時間などを制御して、添加量を調整してもよいし、溶液状のミネラル成分の場合は、容器の弁の開閉時間などを制御して、添加量を調整してもよい。なお、添加部は、蓋体内に限らず、炊飯器本体内に設けてもよい。
【0039】
また、蓋体2を閉じたときに蓋体2に設けた磁石(図示せず)の磁気により、外蓋21に配置されたリードスイッチ25がオンする。
【0040】
上記制御装置30は、添加部8と加熱部(誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ)を制御する炊飯運転制御部30aと、内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加する添加部8を制御するミネラル添加制御部30bと、内鍋10内に収容された被加熱物の量を計測する計量部30cと、炊飯器本体1内に収納された内鍋10内の被加熱物に添加するミネラル成分の添加量を算出する添加量算出部30dとを有する。
【0041】
上記誘導コイル用インバータ回路35,横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37は、電源部14(図3に示す)に含まれている。
【0042】
上記構成の電気炊飯器によれば、適量の米と水を入れた内鍋10を炊飯器本体1内に収納した後、使用者が表示操作部3を操作して、加熱調理(炊飯)を開始すると、制御装置30は、リードスイッチ25がオンか否かを判定する。すなわち、炊飯器本体1内に内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられているか否かを判定するのである。そして、制御装置30がリードスイッチ25がオンしていると判定すると、炊飯運転制御部30aにより誘導コイル31,横ヒータ32,蓋ヒータを制御して加熱調理(炊飯)を開始する。
【0043】
図5は上記電気炊飯器の加熱調理運転時の内鍋10内の温度変化を示しており、この加熱調理運転では、図5に示すように、予熱、立ち上げ、炊き上げ、蒸らし、保温(図示せず)の順に行う。
【0044】
この加熱調理運転において、制御装置30は、予熱運転モード、立ち上げ運転モード、炊き上げ運転モード、蒸らし運転モード、保温運転モードの順に制御を行う。
【0045】
〔予熱運転モード〕
まず、予熱運転モード(予熱工程)では、攪拌モータ17により攪拌翼40を回転駆動して、内鍋10内を攪拌しながら、誘導コイル用インバータ回路35から誘導コイル31に小電力を供給して、誘導コイル31により内鍋10を誘導加熱し、底温度センサ33により検出された内鍋10内の温度を60℃に保つように誘導コイル31の電力を制御して、予熱運転を所定時間行う。このとき、攪拌翼40により内鍋10内を攪拌することにより、内鍋10内の被加熱物(米と水)を均一な目標温度(60℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成する。
【0046】
この予熱運転モードでは、澱粉分解酵素が最も有効に働く温度である60℃に設定されており、15分〜20分の間、内鍋10内の温度を60℃に保つ。この実施の形態では、予熱運転モードの目標温度を60℃としたが、これに限らず、目標温度は諸条件に応じて適宜設定すればよい。
【0047】
この予熱運転モードの終了時点で、ミネラル添加制御部30bにより添加部8を制御して、添加部8から内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加する。このとき、攪拌モータ17を予熱運転モードから継続して運転し、ミネラル成分の添加から所定時間、攪拌翼40により内鍋10内を攪拌する。
【0048】
〔立ち上げ運転モード〕
次に、攪拌モータ17の運転を停止して攪拌翼40を止めた後、誘導コイル用インバータ回路35から誘導コイル31に大電力を供給して、誘導コイル31により内鍋10を誘導加熱すると共に、横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37を制御して、横ヒータ32,蓋ヒータにより内鍋10を側方と上側から加熱し、内鍋10内の温度を100℃に立ち上げる立ち上げ運転を行う。ここで、内鍋10内の温度は、底温度センサ33と蓋温度センサ34により検出する。
【0049】
この立ち上げ運転モードは、次の炊き上げ運転モードのための加熱動作であり、炊き上げ運転モードと共に炊き上げ運転工程に含まれる。
【0050】
〔炊き上げ運転モード〕
次に、内鍋10内の温度が100℃に達してから内鍋10内の温度が120℃になるまで、誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータによる加熱量を調整して沸騰を維持した炊き上げ運転を行う。ここで、内鍋10内の水が無くなって沸騰しなくなると、内鍋10内の温度が100℃から上昇し始める。
【0051】
上記炊き上げ運転によって、米に熱と水が加わって米に含まれるβ澱粉がα澱粉へと変化する糊化(α化)という化学反応が起こり、美味しいご飯ができる。
【0052】
〔蒸らし運転モード〕
そうして、内鍋10内の温度が120℃に達すると、誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータによる加熱量を調整して蒸らし運転を所定時間行った後、加熱調理(炊飯)を終了して、保温運転モードに移る。
【0053】
なお、上記実施の形態では、検知部としてリードスイッチ24を用いたが、検知部はこれに限らず、ホール素子などの磁気センサを用いてもよい。また、検知部は磁気センサに限らず、蓋に設けられたリミットスイッチを検知部として用いてもよく、蓋を閉じたとき、蓋に設けられたリミットスイッチを作動させる作動部材が当接する被検知部の一例としての被当接部を内鍋に設けてもよい。
【0054】
上記構成の電気炊飯器によれば、炊飯運転制御部30aにより加熱部(誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ)を制御すると共にミネラル添加制御部30bにより添加部8を制御して、予熱運転モード(予熱工程)が終了した時点で添加部8から内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加することによって、予熱工程の開始からミネラル成分を添加するまでの間に米への吸水が行われるので、その後に添加されたミネラル成分で米への吸水が阻害されることがない。また、炊き上げ工程の初期段階までにミネラル成分を添加するので、内鍋10内で炊き上げによる被加熱物の攪拌によりミネラル成分を均一に混ぜることができる。なお、ミネラル成分を添加する時点は、少なくとも予熱工程の途中から炊き上げ工程の内鍋10内の被加熱物が沸騰する直前までの期間内であればよい。
【0055】
したがって、ご飯が硬くなったり米に含まれる澱粉のα化が阻害されたりすることなく、ミネラル成分が豊富なおいしいご飯を炊き上げることができる。
【0056】
また、ミネラル添加制御部30bにより添加部8を制御して、予熱工程を終了した時点で添加部8から内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加することによって、予熱工程において米への吸水を十分に行えるので、ミネラル成分によって米への吸水が阻害されるのを確実に防止できる。なお、ミネラル成分を添加するのは、予熱工程を終了した時点近傍であればよい。
【0057】
また、例えば、予熱工程において、炊飯器本体1内に設けられた駆動部(ロータ16と攪拌モータ17)より攪拌翼40を回転させることによって、内鍋10内の米と水を均一な温度(例えば60℃)に保って米に効率よく吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成することができる。また、添加部8から内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加した後に駆動部(ロータ16と攪拌モータ17)により攪拌翼40を回転させることによって、ミネラル成分を内鍋10内に均一に分散させることができ、炊き上げたご飯中のミネラル成分の分布が偏らないようにできる。
【0058】
また、ミネラル添加制御部30bにより添加部8と駆動部(ロータ16と攪拌モータ17)を制御して、添加部8から内鍋10内の被加熱物にミネラル成分を添加した後に攪拌翼40により内鍋10内を攪拌するので、内鍋10内の被加熱物中のミネラル成分の分布を均一にできる。
【0059】
また、計量部30cにより計測された内鍋10内の被加熱物の量に基づいて、添加量算出部30dにより内鍋10内の被加熱物の量に適したミネラル成分の添加量を算出し、ミネラル添加制御部30bにより添加部8を制御して、その添加量算出部30dにより算出された添加量のミネラル成分を添加部8から内鍋10内の被加熱物に添加することによって、内鍋10内の被加熱物に対して、最適な添加量のミネラル成分を添加することが可能になる。ここで、ミネラル成分の最適な添加量とは、健康や食味などを考慮した被加熱物の量に対して過剰にならない添加量である。
【0060】
また、上記計量部30cは、攪拌翼40を回転させる攪拌モータ17のモータ電流またはモータ回転数の少なくとも一方に基づいて、計量部30cにより内鍋10内の被加熱物の量を計測する。すなわち、内鍋10内の被加熱物の量の大小に応じて攪拌翼40の回転トルクが増減するので、被加熱物の量の大小に応じて攪拌モータ17のモータ電流が大小に変化したり、攪拌モータ17のモータ回転数が低高に変化したりする。このような攪拌モータ17の特性を利用して、内鍋10内の被加熱物の量を推定することができる。
【0061】
これによって、重量センサなどを別に用いることなく、内鍋10内の被加熱物の量を計測することができる。なお、計量部30cにより内鍋10内の被加熱物の量を計測する方法は、これに限らず、加熱部(誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ)による加熱の内鍋10内の温度上昇の傾きなどに基づいて計測してもよい。
【0062】
また、炊飯器本体1の上部に開閉自在に取り付けられた蓋体2側の1つのリードスイッチ25によって、炊飯器本体1内に内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられているか否かを検知する。すなわち、内鍋10が炊飯器本体1に収納されていない状態か、または、蓋体2が開いている状態の少なくとも一方である場合、炊飯器本体1内に内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられていないとして、リードスイッチ25はオフのままである。一方、内鍋10が炊飯器本体1に収納された状態で、かつ、蓋体2が閉じられている状態である場合、炊飯器本体1内に内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられているとして、リードスイッチ25は、内鍋把手11の磁石の磁気によりオンする。これにより、炊飯器本体1内に内鍋10が収容された状態で蓋体2が閉じられているか否かを簡単な構成で確実に検知することができる。
【0063】
また、加熱運転時に、リードスイッチ25により炊飯器本体1内に内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられていないことを検知すると、制御装置30は加熱運転を停止するので、蓋体2が開いた状態での加熱運転や内鍋10がない空焚き運転を確実に防止することができる。
【0064】
また、図6は上記電気炊飯器の攪拌翼40の上面図を示している。
【0065】
この攪拌翼40は、図6に示すように、上下を逆にしたおわん形状の基部71と、その基部71の上側に、中央から放射状に半径方向外側に向かって延びかつ周方向に等間隔に設けられた畝状の4つの翼部72とを有する円板部70を備えている。4つの翼部72は、円板部70の外周縁よりも外側に突出し、かつ、下方に延びる先端部72aを有する。また、円板部70の内周側に雌ねじ部73(図8に示す)を形成している。
【0066】
図7は組立後の攪拌翼40の側面図を示し、図8はその組立後の攪拌翼40の縦断面図を示している。また、図9は上記攪拌翼40の下側の保持部60とヨーク41と磁石42の組立後の上面図を示している。
【0067】
図9に示すヨーク41と磁石42が組み込まれた保持部60に、上側から図6に示す円板部70を被せて、保持部60の雄ねじ部64(図8に示す)を円板部70の雌ねじ部73に螺合させることによって、保持部60に円板部70を取り付けて攪拌翼40を完成させる。
【0068】
また、図10は上記電気炊飯器のロータ80の上面図を示し、図11はロータ80の側面図を示し、図12はロータ80の縦断面図を示している。
【0069】
このロータ80は、図10〜図12に示すように、上部が略正六角形のコア部81と、コア部81に設けられた挿入穴81aに下側から挿入されて固定された軸部82とを有している。また、軸部82には、攪拌モータ17の回転軸17aが挿入されて固定される挿入穴82aを設けている。
【0070】
上記ロータ80のコア部81の上部の外周に周方向等間隔に6つの磁石18を固定している。なお、6つの磁石18は、半径方向外側がS極の磁石18と半径方向外側がN極の磁石18が交互に配列されている。
【0071】
上記実施の形態では、攪拌モータ17により駆動されたロータ16が回転する駆動部により、磁気カップリングを介して攪拌翼40が回転する構成としたが、攪拌翼と駆動部の構成はこれに限らず、例えば、蓋体に攪拌翼と駆動部を配置した構成でもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータで内鍋10全体を加熱する加熱部を構成したが、加熱部の構成はこれに限らず、例えば、誘導コイルの代わりに横ヒータなどと同様のヒータを用いてもよい。
【0073】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…炊飯器本体
2…蓋体
2a…蒸気口
3…表示操作部
4…フックボタン
5…本体ハンドル
6…電源コード
7…コードリール
8…添加部
10…内鍋
10a…フランジ部
10b…凸部
11…内鍋把手
12…外ケース
12a…凹部
13…内ケース
14…電源部
15…冷却ファン
16…ロータ
17…攪拌モータ
18…磁石
20…ヒンジ軸
21…外蓋
22…内蓋
23…パッキン
24…蒸気穴
25…リードスイッチ
26…スプリング
30…制御装置
30a…炊飯運転制御部
30b…ミネラル添加制御部
30c…計量部
30d…添加量算出部
31…誘導コイル
32…横ヒータ
33…底温度センサ
34…蓋温度センサ
35…誘導コイル用インバータ回路
36…横ヒータ用回路
37…蓋ヒータ用回路
38…フェライト部材
40…攪拌翼
41…ヨーク
42…磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される本体と、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じる蓋体と、
少なくとも上記本体内に設けられ、上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記本体内または上記蓋体の少なくとも一方に設けられ、上記内鍋内の被加熱物にミネラル成分を添加する添加部と、
上記添加部と上記加熱部を制御する制御装置と
を備え、
上記制御装置は、
上記加熱部により上記内鍋を加熱することにより予熱工程とその予熱工程の後の炊き上げ工程とを含む炊飯運転を行う炊飯運転制御部と、
上記予熱工程の途中から上記炊き上げ工程の沸騰する直前までの期間内に、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に上記ミネラル成分を添加するミネラル添加制御部と
を有することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気炊飯器において、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記予熱工程を終了した時点または上記予熱工程を終了した時点近傍で、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に上記ミネラル成分を添加することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気炊飯器において、
上記内鍋内に設けられた攪拌翼と、
上記本体内に設けられ、上記攪拌翼を回転させる駆動部と
を備えたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項4】
請求項3に記載の電気炊飯器において、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に上記ミネラル成分を添加した後、上記駆動部を制御して、上記攪拌翼により上記内鍋内を攪拌することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の電気炊飯器において、
上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量を計測する計量部と、
上記計量部により計測された上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量に基づいて、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加する上記ミネラル成分の添加量を算出する添加量算出部と
を備え、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記添加量算出部により算出された上記添加量の上記ミネラル成分を上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項6】
請求項3または4に記載の電気炊飯器において、
上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量を計測する計量部と、
上記計量部により計測された上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量に基づいて、上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加する上記ミネラル成分の添加量を算出する添加量算出部と
を備え、
上記計量部は、上記攪拌翼を回転させる上記駆動部のモータ電流またはモータ回転数の少なくとも一方に基づいて、上記内鍋内に収容された上記被加熱物の量を計測し、
上記ミネラル添加制御部は、上記添加部を制御して、上記添加量算出部により算出された上記添加量の上記ミネラル成分を上記添加部から上記内鍋内の被加熱物に添加することを特徴とする電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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