説明

電気絶縁性シートの塗布方法及び薄膜付き電気絶縁性シートロール体の製造方法

【課題】電気絶縁性シートの表面を塗布する方法において、塗液を塗布する前に予め、静電荷をシート表面に付与することで、塗膜付電気絶縁性シートの製造方法を提供する。
【解決手段】塗布ロールとそれに対し付勢する圧胴ロールB2との間を、所定の移動方向に移動する電気絶縁性シートSの表面を塗布する方法において、塗布の前に、まず、電気絶縁性シートの各面を除電処理してから、電気絶縁性シートの各面に、互いに逆極性の直流的な静電荷を付与することにより、塗液Wを電気絶縁性シートの表面に、塗布ムラの発生を極力抑制した状態で、塗布することを可能とし、更に、塗液を塗布後の薄膜付きシートの剥離放電防止、及び、薄膜付きシートの扱いやすさの向上とを両立する塗布方法、ならびに、塗膜付電気絶縁性シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁性シートの塗布方法及び薄膜付き電気絶縁性シートロール体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気絶縁性シート、例えば、ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐薬品性、機械的特性において優れた特性を有することから、磁気記録材料、各種写真材料、電気絶縁材料、各種工程紙材料として多くの用途に用いられている。このため、用途毎に適した表面特性が要求される場合があり、この要求を満足させるために、シートの表面に、各種のコーティング層が形成されている。例えば、磁性体塗料やインク塗料、易滑性塗料、離型性塗料がシートの表面に薄く塗布されることにより、これらの材料からなるコーティング層が形成されている。
【0003】
連続して走行する電気絶縁性シートの表面に、塗液を塗布する装置として、バー方式やグラビアロール方式、ダイ方式、カーテン方式等に基づく塗布装置が知られている。このような塗布装置において、走行する電気絶縁性シートに対して、塗液の塗布厚みが所定の厚さになるように、電気絶縁性シートの表面に塗液が塗布される。この際、塗布厚みの均一性は、上記各用途の表面要求特性として非常に重要であり、塗布厚みに一定以上のばらつきがある場合は、品質上問題になることが多い。電気絶縁性シート表面に対し、塗液を所定の厚さになるように均一に塗布する際、塗布厚みの均一性を阻害する要因の1つとして、電気絶縁性シート表面の帯電が挙げられる。
【0004】
塗布厚みが不均一になることに対する対策として、電気絶縁性シート表面の帯電を、塗液を塗布する前に、交流電圧が印加されたコロナ放電電極を用いて除電する方法が、一般的に知られており、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている除電装置を用いて、電気絶縁性シートを除電すると、電気絶縁性シートの表面に存在する数100μC/mの大きな静電荷は大幅に低減され、大きな静電荷に起因する塗布厚みの均一性を阻害に対しては非常に有効である。
【0005】
しかし、この方法によって除電処理された電気絶縁性シートの表面、及び、裏面には、電荷密度の絶対値の最大値がおおよそ10〜30μC/mの静電荷が逆帯電し、その静電荷がシート移動方向に対し、正弦波状に正負交互に変化する交流的な逆帯電が発生する。また、この方法で電気絶縁性シートを除電した場合、シートの表面と裏面は逆極性の帯電を有する。
【0006】
このような帯電状態を有するシートに対し、塗液を供給する塗布ロールに圧胴ロールに対し付勢しない状態でシートのいずれかの面に塗液を塗布する場合、前述のシート各面に存在する交流的な逆帯電の影響は小さく、塗布厚みの均一性は大きくは阻害されないことが多い。これは、シートの表面と裏面は逆極性の帯電を有するため、シートの表面の静電荷とシートの裏面の静電荷との間に電界が形成され、塗布膜にはシートの各面の静電荷による電界の影響が小さいためであると考えられる。
【0007】
しかし、本発明者らの知見によれば、塗液を供給する塗布ロールとそれに対し付勢する圧胴ロール間に前記帯電状態のシートを移動させてシート表面に塗液を塗布する方法の場合、シート表面への塗液の塗布直後に、シートの被塗布面の正の静電荷及び負の静電荷が存在する範囲と、正の静電荷及び負の静電荷の存在する範囲の境界部にあたる静電荷が極めて少ない範囲とで、塗液の塗れ方に差が生じ、その結果、シート移動方向に周期的に塗布ムラが発生する場合があった。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記の理由については、以下のように推察している。すなわち、塗布膜を貫く電界の大きさによって塗液中の粒子の挙動が異なり、圧胴ロールを塗布ロールに対し付勢する場合としない場合で塗布膜を貫く電界の大きさが異なると推察される。
【0009】
これに関し、以下に図1を用いて、詳細に説明する。なお、塗布膜を貫く電界の大きさは、塗布膜の表面の表面電位に比例すると考えられるため、圧胴ロールの塗布ロールに対する付勢状態別に塗布膜の表面の表面電位を理論上計算し、比較する。図1は、本発明の一実施形態に係る塗布装置の接液部を平板コンデンサで近似した断面模式図である。図1において、B1は導電性を有する圧胴ロールの表面を、S2は電気絶縁性シートの第2の面を、S1は電気絶縁性シートの第1の面を、G1は接地された塗布ロール表面をそれぞれ表している。また、Laは導電性を有する圧胴ロールの表面B1と電気絶縁性シートの第2の面S2との間に設けられた厚みaの空気層を、Lbは厚みbの電気絶縁性シート層を、Lcは接地された塗布ロール表面G1によって塗液が塗布された厚みcの塗布層をそれぞれ表している。また、q1は電気絶縁性シートの第1の面S1の電荷密度を、q2は第2の面S2の電荷密度をそれぞれ表している。なお、図1中では、静電荷の電荷密度q1は正極性、静電荷の電荷密度q2は負極性を記載しているが、極性はこの限りでない。
【0010】
空気層La、シート層Lb、塗布層Lcそれぞれの静電容量をCa、Cb、Ccとした場合、被塗布面である電気絶縁性シートの第1の面S1の表面電位V1は、式(1)で表される。
V1={Cb*q2+(Ca+Cb)*q1}/(CaCb+CbCc+CcCa)
・・・・式(1)
ここで、圧胴ロールが塗布ロールに対し付勢しない状態での塗布状態は、圧胴ロールの表面B1と電気絶縁性シートの第2の面S2との距離aが十分大きい、すなわち、静電容量Ca=0と考えることができるため、被塗布面である電気絶縁性シートの第1の面S1の表面電位V1rは、式(2)で表される。
【0011】
V1r= (q1+q2)/Cc ・・・・式(2)
一方、圧胴ロールが塗布ロールに対し付勢する状態での塗布状態は、圧胴ロールの表面B1と電気絶縁性シートの第2の面S2との距離a=0であり、静電容量Caは静電容量Cb及び静電容量Ccより十分大きいと考えることができるため、被塗布面である電気絶縁性シートの第1の面S1の表面電位V1sは、式(3)で表される。
【0012】
V1s= q1/(Cb+Cc) ・・・・式(3)
式(2)、(3)から、圧胴ロールが塗布ロールに対し付勢していない状態の表面電位V1rは、電気絶縁性シートの各面S1、S2の静電荷の和q1+q2で決まるため、電気絶縁性シートの各面S1、S2の静電荷q1、q2の絶対値は無関係で、等量逆極性の静電荷であれば、表面電位V1rは非常に小さくなり、塗液への作用が小さいと考えられる。一方、圧胴ロールが塗布ロールに対し付勢している状態の表面電位V1sは、電気絶縁性シートの被塗布面S1の静電荷の電荷密度q1の絶対値のみで決まり、反塗布面S2の静電荷の電荷密度q2とは無関係のため、圧胴ロールが塗布ロールに対し付勢していない状態に比べて、電気絶縁性シートの被塗布面S1のわずかな静電荷によっても、塗液への影響が非常に大きいと推察される。
【0013】
また、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、上述のように、圧胴ロールが塗布ロールに対し付勢する状態では、シート表面への塗液の塗れ方は、塗布膜を貫く電界の大きさに単純に比例するわけではなく、ゼロよりもやや大きいある一定の電界の大きさ以上になると、急激に塗液が塗れやすくなり、それ以上大きい電界を塗液に作用させた場合に限り、シート表面への塗液の塗れ方は、塗布膜を貫く電界の大きさに比例する傾向があるということを確認している。これに関し、明確な理由は不明だが、シート表面の静電荷が極めて少ない状態、つまり、塗布膜を貫く電界の大きさがほとんどゼロに近い場合は、シート表面の表面張力のほうが、塗液自体の表面張力よりも小さいため、塗液がシート表面に対し、はじかれやすいのに対し、シート表面の静電荷がある一定の量以上存在する、つまり、塗布膜を貫く電界の大きさがある一定の大きさ以上になると、この電界の影響で、シート表面の表面張力が、塗液自体の表面張力よりも大きくなり、塗液がシート表面に対し、はじかれにくい状態になる結果、塗布膜の厚みが均一になりやすいと推察される。
【0014】
以上のような、本発明者らの推察から、シートの被塗布面に対して、正の静電荷及び負の静電荷が存在する範囲と、正の静電荷及び負の静電荷の存在する範囲の境界部にあたる、正負の静電荷が極めて少ない範囲を形成してしまう、特許文献1に開示されている除電装置を用いた場合、シート移動方向の周期的な塗布ムラを緩和するためには、交流電圧が印加されたコロナ放電電極からシート表面に照射するイオン量を減らし、シート表面におけるシート移動方向の周期的な正負の静電荷を減らし、塗布膜を貫く電界の大きさを小さくすることによって、シート全面における塗液の塗れ方を均一化するしか方法がないが、その場合、シート表面の除電能力も同時に低下してしまうため、除電器としての機能を果たすことができないと推察される。
【0015】
一方、シート表面の塗布厚みの均一性の安定化を図るべく、シート表面への塗液の接液部に静電気力を積極的に作用させ、シートへの塗液の付着を補助することからなる塗布方法に関しても従来から知られており、特許文献2あるいは特許文献3に開示されている。
【0016】
特許文献2、及び、3は、連続走行するシートの被塗布面に対し、塗布前に設けられた帯電手段により、バックアップローラ上でのシート表面の帯電電位をおおよそ100〜3000Vになるよう帯電させることで、シート表面への塗液の付着を、大きな静電気力によって補助することを目的とする塗布方法である。特許文献2、3には、具体的なシートの厚み、及び、シート表面の帯電の均一性については言及がないが、上記の電位差を接液部に付与するためには、シート表面の電荷密度の絶対値が少なくとも30μC/m以上必要であり、この場合、塗液を塗布した直後に関しては、大きな静電気力によって塗液のシート表面への付着性が高まり、塗布厚みの均一性は安定化する。一方で、移動するシートがバックアップローラーから剥離する際、シート表面の帯電量が多すぎ、かつ、シートの表面のみ多くの静電荷が存在する状態のため、移動するシートがバックアップローラから剥離する際、シートとバックアップローラー間で剥離放電が発生する可能性があり、塗液の表面張力、シート表面の表面張力によっては、一旦バックアップローラー上で均一に塗布された塗液が剥離放電による帯電の影響で不均一になることがあると推察される。また、塗液の塗布装置周辺で剥離放電が発生すると、可燃性ガスに着火して爆発が発生する可能性がある点も問題である。また、剥離放電による帯電の影響を受けない場合でも、塗液を塗布されたシート表面の帯電量が多いため、塗布後のシートを積層ロール状に巻いた際、及び、巻き上がった積層ロールから塗布済みシートを巻き出す際に、シート表面の多量の帯電の影響により、剥離放電が発生し、作業者への電撃、まとわりつきなどのシートの取り扱いの面での問題が考えられる。更に、シートの被塗布面を帯電させる際、シート表面の位置によって帯電電位に大きな差がある場合(例えば、シートの被塗布面内で100Vの箇所と3000Vの箇所が存在する場合)は、シートの同一面内における帯電の差によって、塗布厚みが不均一になることも推察される。
【0017】
特許文献2、3は走行するシートの被塗布面を帯電処理することで、接液部に静電気力を作用させる塗布方法であるが、シート自体ではなく、圧胴ロールの表面に帯電処理を施すことで、接液部に静電気力を作用させる塗布方法に関しても従来から知られており、特許文献4に開示されている。
【0018】
特許文献4は、シート表面に塗液を供給する塗工ロールと、シートを介して塗工ロールに対し付勢した導電性の圧胴ロールからなり、圧胴ロールに非接触に配置された帯電手段により、圧胴ロール表面を帯電させるとともに、塗液自体に対しても導電性の圧胴ロール表面を通じて静電荷を供給することで、接液部に積極的に静電気力を作用させる塗布方法である。しかし、この塗布方法は、塗液に可燃性物質が含まれる場合、帯電手段を防爆対応する安全対策を講じる必要があり、また、圧胴ロール表面の導電性ゴムの劣化などによって、ゴム表面の抵抗値の変化による、塗液への静電荷の供給量のばらつきが大きく、安定した品質維持が困難という課題があった。
【0019】
以上の通り、簡便な方法で、かつ、均一な塗布厚みを安定して有し、かつ、塗布後の剥離放電やまとわりつきのない扱いやすさを有するという点を両立する塗布方法、及び、薄膜付きシートの製造方法は、従来技術で満足できなかった。
【特許文献1】特開2005−222925号公報
【特許文献2】特開平11−128804号公報
【特許文献3】特許第2597237号公報
【特許文献4】実開昭61−206445号公報
【特許文献5】特開2004−39421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、塗布ロールとそれに対し付勢する圧胴ロールとの間を、所定の移動方向に移動する電気絶縁性シートの表面を塗布する方法において、塗液を塗布する前に予め、直流的な静電荷をシート表面に付与することで、シート表面の塗液の塗布厚みの均一性の向上と、塗液を塗布後の薄膜付きシートの剥離放電防止、及び、薄膜付きシートの扱いやすさの向上とを簡便な方法で同時に実現し得る、塗布方法、ならびに、薄膜付電気絶縁性シートロール体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明によれば、塗液を供給する導電性の表面を有する塗布ロールと、前記塗布ロールに向かって付勢され導電性の表面を有する圧胴ロールとの間を、所定の移動方向に移動する電気絶縁性シートの第1の面に、電気絶縁性の塗液を塗布する、電気絶縁性シートの塗布方法であって、前記塗布ロールよりも上流に、前記電気絶縁性シートを挟んで、前記電気絶縁性シートに非接触に対向配置された前記電気絶縁性シートの帯電手段により、前記電気絶縁性シートの第1の面及び第2の面に、互いに逆極性の直流的な静電荷を付与する工程を有することを特徴とする、電気絶縁性シートの塗布方法が提供される。
【0022】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記電気絶縁性シートの帯電手段よりも上流の工程において、前記電気絶縁性シートを挟んで、前記電気絶縁性シートに非接触に対向配置された前記電気絶縁性シートの除電手段により、前記電気絶縁性シートの第1の面及び第2の面に、互いに逆極性の交流的な静電荷を付与して除電処理することを特徴とする、前記電気絶縁性シートの塗布方法が提供される。
【0023】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記電気絶縁性シートの帯電手段によって、
(1)前記電気絶縁性シートの第1の面と第2の面の静電荷の電荷密度の和が2μC/m以下であり、かつ、
(2)前記電気絶縁性シートの第1の面及び前記第2の面の各面の静電荷の電荷密度の絶対値がともに、5μC/m以上30μC/m以下であり、かつ、
(3)前記第1の面の静電荷の電荷密度と、前記第2の面の静電荷の電荷密度とがともに、前記シートの移動方向に滑らかに変化し、前記電荷密度の変化の振幅が、20μC/m以下であるように、前記電気絶縁性シートを帯電処理することを特徴とする、前記電気絶縁性シートの塗布方法が提供される。
【0024】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記塗液として帯電量の絶対値が100nC/l以上であるものを供給することを特徴とする、前記電気絶縁性シートの塗布方法が提供される。また、本発明の好ましい形態によれば、前記塗布ロールとして、グラビアロールを用いることを特徴とする、前記電気絶縁性シートの塗布方法が提供される。
【0025】
また、本発明の別の形態によれば、前記電気絶縁性シートの塗布方法を用いて塗液を電気絶縁性シートに塗布し、その後巻き取ることを特徴とする、薄膜付き電気絶縁性シートロール体の製造方法が提供される。
【0026】
本発明が適用される電気絶縁性シートとして、代表的なものには、プラスチックフィルム、布帛、紙等のシートや枚葉体があるが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ナイロンフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムは、電気絶縁性が高いため、本発明を適用するのに特に好適である。
【0027】
本発明における「塗布ロール」として、代表的なものには、ロール表面に特に凹凸が形成されていない単純なロール、ロール表面に緻密な溝が刻印され、その溝部に塗液を溜めるグラビアロール、ロッドにワイヤーを巻いたり、円周方向の溝を形成したメタリングバーなどがある。このロールは通常、装置全体のフレームなどに接地されていることが多い。本発明において電位については、この塗布ロールの電位に対する電位をいうものとする。
【0028】
本発明において、「移動する電気絶縁性シートの第1の面」とは、電気絶縁性シートの二つの主要な面のうち、塗液が塗布され塗液層が形成される面をいう。
【0029】
本発明において、「電気絶縁性シートの第2の面」とは、電気絶縁性シートの二つの主要な面のうち、第1の面と反対側の面をいう。
【0030】
本発明において、「静電荷」とは、物質が持つ時間的に変化しない電荷のことをいう。静電荷が発生することで物質は帯電した状態となる。
【0031】
本発明において、「電気絶縁性の塗液」とは、体積抵抗率が10[Ω・cm]以上の塗液をいう。本発明において、電気絶縁性の塗液の体積抵抗率は、電気絶縁性の平底容器に、被測定液体(塗液)100ミリリットルを深さ2mmになるように薄く広げた状態とし、液体(塗液)表面に2つの測定端子(直径2mm、長さ50mm)を50mmの距離を隔てて平行に配置し、測定端子間に直流電圧15Vを印加し、商品名「Worksurface Tester」(シムコ社製)で抵抗値[Ω]を読みとることで測定することが出来る。
【0032】
本発明において、「導電性の表面を有する」とは、表面抵抗率が10[Ω/□]以下の物質で構成される表面部を有することをいう。表面抵抗率は、ロール表面に、ロールの長手方向に、2つの測定端子(直径2mm、長さ50mm)を50mmの距離を隔てて平行に配置し、測定端子間に直流電圧15Vを印加し、商品名「Worksurface Tester」(シムコ社製)で抵抗値[Ω]を読みとることで測定することが出来る。
【0033】
本発明において、「電気絶縁性シートを挟んでシートに非接触に対向配置されたシートの帯電手段」とは、電気絶縁性シートの第1の面側に、シート表面に非接触に配置された帯電手段と、電気絶縁性シートの第2の面側に、シート表面に非接触に配置された帯電手段とが、シートを挟んで向かい合っている帯電手段をいう。
【0034】
本発明において、「電気絶縁性シートを挟んでシートに非接触に対向配置されたシートの除電手段」とは、電気絶縁性シートの第1の面側に、シート表面に非接触に配置された除電手段と、電気絶縁性シートの第2の面側に、シート表面に非接触に配置された除電手段とが、シートを挟んで向かい合っている除電手段をいう。
【0035】
本発明において、「シートの第1の面及び第2の面に、逆極性の直流的な静電荷を付与する」とは、移動するシートの一方の面に対して、2秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは2分間以上の時間にわたり、極性の変化はなく、単一極性の静電荷を付与し、シートの反対面には、シートの一方の面とは逆極性の静電荷を同様に付与することをいう。ただし、ホワイトノイズ等の非周期的なノイズ成分によって付与される静電荷の極性が変化する点は、ここでは極性の変化とはしない。
【0036】
本発明において、「シートの第1の面及び第2の面に、交流的な静電荷を付与する」とは、移動するシートの一方の面に対して、時間的に極性の変化する静電荷を付与し、シートの反対面には、シートの一方の面とは逆極性の静電荷を、シートの一方の面に対する静電荷の付与と同時に実施することをいう。ただし、ホワイトノイズ等の非周期的なノイズ成分によって付与される静電荷の極性が変化する点は、ここでは極性の変化とはしない。
【0037】
本発明において、「第1の面の静電荷の電荷密度」とは、シートの第2の面に接地導体をシートの厚みの20%または10μmのいずれか小さい方よりも近く近接させるか密着させて、上記シートの第2面の静電荷と等量逆極性の静電荷を上記接地導体に誘導させ、これによって上記シートの第2面の電位を実質的に0電位とした状態において、表面電位計の測定プローブを、第1の面側から0.5乃至2[mm]程度までシートに十分近接させた状態で、表面電位を測定後、以下の方法で求められた、シートの第1の面上の単位面積[m]当たりに存在する静電荷の量[C]をいう。すなわち、電荷密度は、シートの単位面積当たりの静電容量C[μF/m]と背面平衡電位vの関係式σ=C・vから求める。シートの単位面積当たりの静電容量Cは、平行平板の単位面積当たりの静電容量の関係式C=εε/tにより求める。ここで、εは、真空中の誘電率であり、その値は8.854×10−12[F/m]とする。εは、フィルムの比誘電率である。tは、フィルムの厚み[m]である。帯電の大きさに対して充分小さい視野の表面電位計を用いることで、微小面積の局所的な帯電電荷密度を正確に知ることが出来る。なお、表面電位計の測定プローブとしては、測定開口部直径が数ミリメートル以下の微小なものが良く、例えば、商品名「プローブ1017」(モンロー社製)、開口部直径1.75[mm]や、商品名「1017EH」(同社製)、開口部直径0.5[mm]がある。
【0038】
第1の面上の帯電の分布状態は、表面電位計のプローブ、または、背面に接地導体を密着させた状態のシートのいずれか一方を、XYステージなどの位置調整可能な移動手段を用いて、低速(5[mm/秒]程度)で移動させながら表面電位を順次測定し、得られたデータを2次元的にマッピングすることで得られる。第2の面の静電荷の電荷密度も同様にして求められる。
【0039】
本発明において、「塗布ロールよりも上流」とは、塗布装置における塗布ロールによる塗布よりも時間的に前である場合、または、位置的に所定の移動方向の上流である場合をいう。具体的には、塗布装置において、塗布ロールの位置よりも、シート移動方向に対して位置的に上流に配置される場合を指す場合、および、別の工程で、塗布対象のシートを製造し、そのシートに対して塗布装置で塗布する場合、この「別の工程」を指す場合の両方を含めて上流という。
【0040】
本発明において、「シートの帯電手段よりも上流の工程」とは、シートの帯電手段による帯電処理よりも、時間的に前である場合、及び、位置的に所定の移動方向の上流である場合をいう。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、簡便な方法で、電気絶縁性シートの表面への塗液の塗布性がよく、塗布厚みが均一となる電気絶縁性シートの塗布方法が提供され、かつ、塗布後の電気絶縁性シートにおいて、剥離放電などの問題が少ない、塗膜付電気絶縁性シートの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の電気絶縁性シートS(以下、シートS)の塗布方法の好ましい実施形態例を、図面を参照しながら説明する。シートSとしてプラスチックフィルム(以下、単に、フィルムという)を用いる場合を例にとって説明する。本発明は、これらの例に限られるものではない。
【0043】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るシートの製造装置および塗布装置の概略縦断面図である。
【0044】
シートSは、図示しないモータの駆動力によって所定の速度で回転する、シートSの搬送ロールR1とシートSの搬送ロールR2によって掛け渡され、シートSは、一定の張力をもって、移動方向Dの方向に移動している。なお、シートSは、搬送ロールR1、及び、搬送ロールR2の表面に密着しながら移動する。搬送ロールR1、R2としては、例えば、ハードクロムメッキされた金属ロールや弾性体が被覆された金属ロールが用いられる。移動するシートSを挟んで、塗布ヘッドCHが配置されている。塗液の塗布は、実質、塗布ヘッドCHにてなされる。塗布ヘッドCHの概略構成について簡単に説明する。移動するシートSの第1の面S1には、回転方向rgの方向に、塗液容器Pに充填された塗液Wを汲み上げながら回転する塗布ロールG2によって、塗液Wが塗布され、塗布膜WLが形成される。圧胴ロールB2は、移動するシートSを挟んで、塗布ロールG2に対し付勢し、回転方向rbの方向に回転する。圧胴ロールB2は、シートSを安定に移動方向Dに移動させ、シートSの第1の面S1を安定して塗布ロールG2の表面に密着させる。
【0045】
塗布ロールG2としては、ハードクロムメッキされた鏡面ロールや、メタリングバーでもよいが、これらに比べて、ロール表面の微細な凹溝(セル)加工により、シートSの表面への塗液の計量の安定供給性、高精彩な塗布が可能である、グラビアロールが好ましい。グラビアロールの表面は耐摩耗性に優れた導電性ハードクロムメッキ加工されていることが好ましいが、更に耐摩耗性を向上すべく導電性セラミック加工された表面でも良い。この実施形態では、可燃性気体への着火による爆発などの問題がないよう塗布ロールG2はアースされている。圧胴ロールB2は、ロールの芯金はアースされた金属であり、ロール表面は、シートSに接触した際のロール表面の摩擦帯電による可燃性気体への着火による爆発などの問題がないよう導電性であることがこのましい。更に、本発明においては、圧胴ロールB2の表面が導電性でないと、シートSの反塗布面(第2の面)の静電荷に対し、逆極性の静電荷を圧胴ロールB2の表面に誘導することで、シートSの反塗布面(第2の面)の静電荷のみを一時的にキャンセルし、シートSの塗布面(第1の面)の静電荷による電界の影響を、塗液に作用させることができないため、導電性は必須である。なお、導電性といっても、金属ロールなどを使用すると、塗布ロールとの摩擦による磨耗が激しい上、シートSを幅方向に均一に付勢できないため、導電性ゴムを用いることが好ましい。なお表面抵抗率の測定方法は前述の方法で測定される。
【0046】
なお、図示していないが、搬送ロールR1の上流には、積層ロール状になった未塗布状態のシートSの巻き出し装置が配置され、搬送ロールR2の下流には、塗布膜WLを有するシートSを積層ロール状巻き取り装置が配置されており、塗布ヘッドCHとシートSの巻き取り装置の間には、シートSの第1の面S1に塗布された塗布膜WLを乾燥させる乾燥機が配置されてもよい。シートSの巻き出し装置にセットされ未塗布状態のシートSと、巻き取り装置によって巻き取られる積層ロールとの間を、シートSが所定の速度で連続的に移動している。ここで、特許文献5に開示されている、シートSの第1の面S1、及び、第2の面S2の両方に、互いに逆極性の直流的な静電荷を付与するための帯電装置SCを、塗布ヘッドCHの上流に配置する。シート帯電装置SCは、シートSを挟んで対向させて配置された、電極2aと電極2bとを有し、電極2aは、シートSの第1の面S1側に、電極2bは、シートSの第2の面S2側に配置されている。電極2aには、第1の直流電源2cが接続され、電極2bには、第2の直流電源2dが接続されている。第1の直流電源2cと第2の直流電源2dには、互いに極性が異なる直流電圧が印加される。
【0047】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るシートSの帯電装置SCにおける電極2a、電極2bの一例の拡大概略縦断面図である。帯電ユニットCUは、第1の電極ユニットEUfと第2の電極ユニットEUdとからなる。帯電ユニットCUにおいて、第1の電極ユニットEUfは、シートSの第1の面S1に向かい、第1の面S1に対して間隔をおいて設けられている。第2の電極ユニットEUdは、シートSの第2の面S2に向かい、第2の面S2に対して間隔をおいて設けられている。シートSは図3には図示しないが、第1の電極ユニットEUfと第2の電極ユニットEUdとは、シートSを挟んで、互いに対向している。次に、シート帯電装置SCにおける帯電ユニットCUの第1の電極ユニットEUf、および、第2の電極ユニットEUdの構成について説明する。第1の電極ユニットEUfは、第1のイオン生成電極3fと、第1のイオン生成電極3fに対する開口部を有する第1のシールド電極3hと、絶縁部材とからなる。第2の電極ユニットEUdは、第2のイオン生成電極3dと第2のイオン生成電極3dに対する開口部を有する第2のシールド電極3gと、絶縁部材とからなる。
【0048】
第1のシールド電極3hの開口部は、第1のイオン生成電極3fの先端近傍にシートSに向かって開口している。第1および第2のシールド電極3h、3gは、第1および第2のイオン生成電極3f、3dとの間に適切な電位差を与えられたときに、それぞれのイオン生成電極3f、3dにおける放電を助ける機能を有する。また、対向した第1および第2のイオン生成電極3f、3dから照射される静電荷を、実質的に均一にシートSの第1の面S1、及び第2の面S2に付与する機能を有する。これは、シールド電極3h、3gにより、対向させた第1および第2のイオン生成電極3f、3dの逆極性の電圧による局所的な電界集中を和らげるためである。これにより、局所的な電界集中によりイオン生成電極直下に静電荷が集中的に付与されることが、防止される。なお、イオン生成電極3f、3dとしては、針状電極が好ましい。これは、針状電極の針先に、より低い印加電圧で電界を効率よく発生させ、針先からの静電荷の生成を促進できるからである。第1のイオン生成電極3fの先端と、第2のイオン生成電極3dの先端とは、シートSの法線方向において、間隔dを置いて、シートSの移動方向Dにおいて間隔dを置いて配置される。また、第1のシールド電極3hと第2のシールド電極3gとは、シートSにもっとも近い部位同士が、シートSの法線方向において、間隔dを置いて配置される。第1のイオン生成電極3fと第2のイオン生成電極3gとは、逆極性の直流電圧が出力されるよう、第1の直流電源2cと第2の直流電源2dに接続されている。第1および第2のシールド電極3h、3gとは、それぞれ接地されている。直流電源には、出力電圧が接地点に対して、極性が反転することなく1秒以上継続して同一の極性を維持する、脈動率が5%以下、より好ましくは、1%以下の直流電源を用いることが好ましい。直流印加電圧は、シートSの各面S1、S2に付与したい静電荷の量に応じて、適宜選べばよいが、おおよそ正電圧、負電圧ともに10kV以下が好ましい。これ以上になると、接地されたシールド電極とイオン生成電極間で異常放電が発生することがあるためである。また、省エネルギーの面、及び、作業者の安全面からもなるべく印加電圧は小さいほうが好ましい。脈動率の下限は特に考慮しなくて良いが、実用上、0.01%以上とすると良い。その理由は、これ以上の高精度直流電源が高価になるためである。第1および第2のイオン生成電極3f、3dにそれぞれいずれの極性の直流電圧を印加するかは適宜選べば良い。なお、上記実施形態においては、各帯電ユニットの第1および第2のイオン生成電極やこれに対応するシールド電極は、それぞれ実質的に同一の形態を有するものを用いて構成するのが好ましい。
【0049】
次に、図2に図示する帯電装置SCの動作について、図3の帯電ユニットCUを参照して簡単に説明する。帯電ユニットCUにおいて、第1のイオン生成電極3fに正の直流電圧が印加され、第2のイオン生成電極3dに負の直流電圧が印加されている場合について説明する。このとき、第1のイオン生成電極3fからは正の静電荷が、第2のイオン生成電極3dからは負の静電荷が生成される。第1のイオン生成電極3fと第2のイオン生成電極3dとの間の電界強度が一定の強度以上になると、電界によって、正の静電荷がシートSの第1の面S1に、負の静電荷がシートSの第2の面S2に強制的に付与される。第1のイオン生成電極3fから生成された正の静電荷と第2のイオン生成電極3dから生成された負の静電荷はそれぞれ、対向する第1および第2のイオン生成電極3f、3dのつくる電気力線に沿って、シートSの近傍まで引き寄せられ、シートSの各面に強制的に付与される。
【0050】
このとき、第1の面S1および第2の面S2に正負の静電荷が同時に付与されるので、シートSは見かけ上無帯電な状態を維持出来るため、第1および第2のイオン生成電極3f、3dで生成された正負の静電荷はシートSに十分な量、充電される。例えば、直流印加電圧の絶対値を約10kV、距離dが約2mm、距離dが約50mm、距離dが約35mm、シートSの移動速度が300m/分程度においては、シートSの第1の面S1には、5〜15μC/m程度の静電荷が強制的に充電付与され、シートSの第2の面S2には、シートSの第1の面S1に付与される正の静電荷と絶対値はほぼ同じ程度の負の静電荷が充電付与される。なお、「見かけ上無帯電」とは、シートSの第1の面S1の任意の位置における静電荷の電荷密度と、第2の面S2において、シートSの第1の面S1の前記位置の裏側の位置における静電荷の電荷密度の和の絶対値が2μC/m以下のことをいう。シートSの移動速度が低速になれば、単位面積当たりの静電荷の付着量が大きくなり、移動速度に反比例して、静電荷のシートSの各面への付着量は増大する。なお、この静電荷の付与は、シートSの第1の面S1と第2の面S2が、互いに逆極性で静電荷の量もほぼ等しいので、シートSは見かけ上の無帯電な状態となる。シートSの各面への静電荷の付与量は、直流印加電圧が大きくなると、イオン生成電極からの静電荷の発生量が印加電圧にほぼ比例して増加する。また、対向するイオン生成電極の印加電圧が高くなるため、対向したイオン生成電極で発生した静電荷を電界に比例して加速しシートSの面に引き寄せる。よって、静電荷の付与量は、印加電圧のおよそ2乗に比例して大きくなる。一方、各帯電ユニットEUd、EUfの第1と第2のイオン生成電極間距離dが小さくなると、電界が強くなり、更に、距離が近づくことで各イオン生成電極から発生し、シートSの各面に付着する静電荷の量を大きくすることができる。このように、図2のシート帯電装置SCにより、シートSの第1の面S1と第2の面S2は、見かけ上無帯電の状態になるよう、互いに逆極性で等量の、シートSの幅方向に均一な直流的な静電荷が、その必要量に応じて、帯電条件を制御して付与される。
【0051】
帯電装置SCにおいて、帯電ユニットCUは1個以上シートSの移動方向に並べる必要がある。なお、帯電ユニットCUをシートSの移動方向に、シートSを挟んで2個以上並設する場合は、シートSの第1の面S1側に配置される各帯電ユニットEUdの各イオン生成電極3dに印加される直流電圧の極性は同極性であり、かつ、シートSの第2の面S2側に配置される各帯電ユニットEUfの各イオン生成電極3fに印加される直流電圧の極性は同極性であることが、直流的な静電荷付与の効率上好ましい。
【0052】
帯電装置SCを用いて、上述のようにシートSの各面に静電荷を与えて、シートSの各面を直流的に帯電させた状態のシートSの第1の面S1に塗布ヘッドCHを用いて塗液Wを塗布すると、導電性の表面を有する圧胴ロールB2の作用により、前述の式(3)に示すように、塗布膜WLにおいて、シートSの第1の面S1に付与される静電荷のみによって、塗布膜WLの厚み方向に電界が形成されるため、この電界の作用により、塗液WのシートSの第1の面S1への付着性が向上され、かつ、直流的な静電荷による電界のため、シートSの移動方向において前記電界の大きさの変化は小さく、塗液WのシートSの第1の面S1への付着作用は、シートSの移動方向に対して均一性を維持することができるため、塗布膜WLの厚みを均一にすることができる。
【0053】
なお、塗布膜WLの厚みが均一化され、塗布ムラが見えなくなる理由は、本発明者らの知見によると、シートSの第1の面S1への塗液Wの塗れ方は、塗布膜WLを貫く電界の大きさ(絶対値)に単純に比例するわけではなく、ゼロよりもやや大きいある一定の電界の大きさ(絶対値)以上になると、急激に塗液Wが塗れやすくなり、それ以上絶対値の大きい電界を塗液Wに作用させた場合に限り、シート表面への塗液の塗れ方は、塗布膜WLを貫く電界の大きさ(絶対値)に比例する傾向がある。これに関し、シートSの第1の面S1の静電荷が極めて少ない状態、つまり、塗布膜WLを貫く電界の大きさ(絶対値)がほとんどゼロに近い場合は、シートSの第1の面S1の表面張力のほうが、塗液自体の表面張力よりも小さいため、塗液WがシートSの第1の面S1に対し、はじかれやすいのに対し、シートSの第1の面S1の静電荷がある一定の量以上存在する、つまり、塗布膜WLを貫く電界の大きさ(絶対値)がある一定の大きさ以上になると、この電界の影響で塗液W自体の表面張力よりも、シートSの第1の面S1の表面張力が大きくなり、塗液WがシートSの第1の面S1に対し、はじかれにくい状態になるため、塗布膜WLの厚みが均一になりやすいと考えられる。これを図7A、図7Bを用いて具体的に説明する。図7A、図7Bは、シートSのそれぞれの移動方向位置における塗布膜WLを貫く電界と塗布膜の厚みの関係を表した概念図である。図7Aでは、塗布膜WLを貫く電界を正負極性別に示しており、電界が正の場合は、シートSの表面から塗布膜WLに対する方向の電気力線が形成されており、一方、電界が負の場合は、塗布膜WLからシートSの表面に対する方向の電気力線が形成されていることを意味している。ところが、本発明者らの知見によると、これに対応して、図7Bのとおり、塗布膜WLを貫く電界の極性に関わらず、電界の大きさ(絶対値)に対する塗布膜WLの厚みの変化は非線形で、電界の大きさがその極性によらずゼロ近傍になると、塗布膜WLの厚みは急峻な変化が生じ、塗布ムラとなる。また、図7Cに示すように、図7Aに示した電界の変化曲線を振幅、周期は全く同じで、シートSの移動方向のすべての位置において塗布膜WLを貫く電界がゼロにならないように正側にシフトした場合、図7Dに示すように、塗布膜WLは、図7Bとは大きく異なり、塗布膜WLの厚みの変化はほとんど生じず、塗布ムラとならない。このことから、塗布膜WLの厚みは電界の大きさがゼロ近傍でのみ、急峻に変化し、塗布ムラになりやすいものと考えられる。
【0054】
塗液の塗れやすさに関しては、たとえば、電気絶縁性の塗液Wの中の塗液自体を構成する粒子(分子)が、シートSの帯電による電界の作用により分極し、電気泳動力によって移動するがその移動度がシートSの移動方向に均一化されやすい、あるいは、電気絶縁性の塗液Wの中の塗液自体を構成する粒子(分子)の配向がシートSの移動方向に均一化されやすいことなどが考えられる。
【0055】
また、塗液Wの中の塗液自体を構成する粒子(分子)の帯電とシートSの帯電とのクーロン力の影響で、シートSの表面の帯電がほぼゼロの場合に比べ、前記粒子(分子)がシートSの表面で安定しやすくなるため、塗液が塗れやすくなることも考えられ、本発明者らの知見によると、塗液中の塗液自体を構成する粒子(分子)の帯電量絶対値が、100nC/リットル以上の塗液をシートSの表面に塗布するような状況においては、さらに塗液の塗れやすさが向上し、本実施形態の塗布方法を使用する効果が最も大きいため好ましい。
【0056】
なお、塗液Wの帯電量は、ファラデーケージに塗液Wを1リットル注入することで、塗液Wの1リットルあたりの帯電量が測定される。
【0057】
このように、塗布膜WLの厚みを均一にするためには、シートSの第1の面S1の静電荷によって形成される電界を塗液Wに作用させることが重要であり、そのために、導電性の表面を有する圧胴ロールB2は、本発明においては必須である。塗液Wを塗布後、シートSが圧胴ロールB2から剥離する際も、塗布膜WLは電気絶縁性のためシートSの第1の面S1に存在する静電荷はそのまま残り、シートSは塗布前と同等の見かけ上無帯電の状態を維持するため、圧胴ロールとシートSの間で剥離放電が発生することは少ない。
【0058】
なお、帯電装置SCによって、シートSの各面に付与される、互いに逆極性の直流的な静電荷の量は、塗布膜WLの厚みの均一化に関すれば、特に上限はないが、静電荷の電荷密度が30μC/mを超えると、塗布装置1で塗布後、塗布膜WLを有するシートSのいずれかの面に金属膜などの導電性膜を付与されると、非導電面の静電荷の影響により、剥離放電や人体へのまとわりつきなどが発生しやすいため、静電荷の電荷密度は30μC/m以下であることが最も好ましい。
【0059】
図2において、帯電装置SCよりも上流に配置されたシートSの除電装置SEが配置されることが最も好ましい。その理由は、この除電装置SEは、シートSの第1の面S1にこの除電装置SEは、従来の除電装置では達成出来なかった、正負の静電荷が混在した帯電を有する電気絶縁性シートの除電を行うことが可能であるからである。なお、この除電装置自体は、特許文献1に開示されている。図2に図示されるように、除電装置SEは、図2に図示される帯電装置SCに示す直流電源2cを交流電源2gに、直流電源2dを交流電源2hとし、シートSを挟んで対向配置される電極群2e、電極群2fに互いに逆極性、すなわち、交流電圧波形の位相差が180°である交流電圧を印加するようにした除電装置である。
【0060】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るシートSの除電装置SEの構成要素である電極群2e、電極群2fの位置関係を示す拡大概略縦断面図である。
図4をもとに、除電装置SEの動作について説明する。なお、除電ユニットSUk(k=1、2、・・)の動作の説明を、シートSの移動方向の最上流の第1番目の除電ユニットSU1を代表させて行う。なお、除電ユニットSUkは、シートSを挟んで対向配置され、シートSの第1の面S1側に配置された第1の電極ユニットENf−kと、シートSの第2の面S2側に配置された第2の電極ユニットENd−kからなる。第1の除電ユニットSU1において、第1のイオン生成電極4f−1と第2のイオン生成電極4d−1には、時間的に極性が反転する交流電圧が印加され、時間的極性の反転に応じて、第1および第2のイオン生成電極4f−1、4d−1から正および負の静電荷が生成する。
【0061】
第1のイオン生成電極4f−1に正の電圧が印加され、第2のイオン生成電極4d−1に負の電圧が印加されている場合について説明する。このとき、第1のイオン生成電極4f−1からは正の静電荷が、第2のイオン生成電極4d−1からは負の静電荷が生成される。第1のイオン生成電極4f−1と第2のイオン生成電極4d−1との間の電界強度が強いとき、電界によって、正の静電荷がシートSの第1の面S1に、負の静電荷がシートSの第2の面S2に強制的に付与される。第1のイオン生成電4f−1から生成された正の静電荷と第2のイオン生成電極4d−1から生成された負の静電荷は、それぞれ、対向する第1および第2のイオン生成電極4f−1、4d−1のつくる電気力線に沿って、シートSの近傍まで引き寄せられ、シートSに付着しようとする。このとき、第1の面S1および第2の面S2に正負の帯電を有する電気絶縁性シートSの近傍において、第1および第2のイオン生成電極4f−1、4d−1から生成され、シートSの表面に指向する正の静電荷と負の静電荷とは、シートS上に負の静電荷や正の静電荷があると、クーロン力によって、主に逆極性の静電荷が、選択的に引き寄せられ、シートSの第1の面S1の負の静電荷と第2の面S2の正の静電荷が除電される。次に、各除電ユニットの第1の電極ユニットENfを構成する第1のイオン生成電極4f、および、第2の電極ユニットEUdを構成する第2のイオン生成電極4dに印加する交流電圧の位相が反転し、第1のイオン生成電極4f−1に負の電圧が印加され、第2のイオン生成電極4d−1に正の電圧が印加されると、第1および第2のイオン生成電極から時間的に前の静電荷とは逆極性の静電荷が生成され、同様の作用で、電気絶縁性シートSの第1の面S1の負の静電荷と第2の面S2の正の静電荷が除電される。各除電ユニットにおいて、移動するシートSに対して、これを繰り返すことにより、除電前に比べて、シートSの各面の正の静電荷と負の静電荷を除電し、その静電荷の量を大幅に低減できる。なお、図4に図示する、シートSの移動方向に隣接する電極ユニット距離d4は20〜40mm程度、除電ユニット数kは、除電したい帯電の大きさにもよるが、2〜10個が、除電装置SEの設置スペースの面で好ましい。第1のイオン生成電極4f−kと第2のイオン生成電極4d−kとの距離d3、および、第1のシールド電極4h−kと第2のシールド電極4g−kの距離d5はともに30〜40mm程度が、各電極ユニットと、移動するシートSの接触回避の点で好ましい。また、第1のイオン生成電極4f−kと第2のイオン生成電極4d−kとのシート移動方向に対する距離d0は、2mm以下が静電荷の生成効率、つまり、シートの除電効率の面で好ましい。各イオン生成電極に印加される交流電圧は、実効値で約7kV程度以下が好ましい。
【0062】
除電装置SEを用いてシートSの各面S1、S2を除電すると、元々除電前に存在する強い帯電に対しては大幅な帯電量を低減できる反面、第1のイオン生成電極4f−kと第2のイオン生成電極4d−kとの間の電界強度が強いとき、電界によって、正の静電荷をシートSの第1の面S1に、負の静電荷をシートSの第2の面S2に強制的に付与するために、除電前には、静電荷が存在しなかったシートSの表面にも強制的に、シートSの移動方向に交流電圧周波数とシートSの移動速度に応じた、正の静電荷の付着範囲と負の静電荷の付着範囲とが、静電荷のない範囲を挟んで、周期的に逆帯電が発生することが多い。この逆帯電の静電荷の量は、前述の、元々除電前に存在する強い帯電に対して、除電装置SEの除電処理によって低減する静電荷の量に比べると、数10分の1のレベルである。このような帯電状態のシートを塗布ヘッドCHで塗布する場合、前述のように、シートSの第1の面S1の正負の静電荷が存在する範囲と静電荷のない範囲とのシートS上の位置的な周期的な繰り返しによって、塗布膜WLを貫く電界の大きさが、シート移動方向に位置的に変化するため、その塗液Wの付着性の不均一をまねくことがある。特に、塗布ロールG2と圧胴ロールB2をシートSを挟んで付勢した状態で塗液Wを塗布する場合において、塗布ロールG2として、高精細な凹溝がロール表面に彫刻されたグラビアロールを用いる場合は、シートSの第1の面S1上の静電荷と、接地されたグラビアロール表面との間に形成される電界が、鏡面ロールの場合に比べ、表面の凹形状の影響で、不平等な電界となりやすく、これにより塗布膜WLを貫く電界の大きさが、鏡面ロールなどと比べるとやや大きめになり、その分やや塗液Wに影響を及ぼしやすいことも考えられる。なお、図7A、図7Bを用いて前述したが、本発明者らの知見によれば、塗布膜WLを貫く電界が正または負の領域よりも、電界の大きさがその極性によらずゼロ付近の領域のほうが塗布膜WLの厚みがやや厚くなる傾向がある。除電装置SEによって除電処理された、このような帯電状態のシートSに対しても、除電装置SEよりも下流に、帯電装置SCを備え、シートSの各面に前述のような帯電処理を施した後、塗布ヘッドCHによって、塗液Wを塗布すれば、塗布膜WLの厚みを均一に形成することができる。
【0063】
この作用について簡単に説明する。除電装置SEによって除電処理され、シートSの第1の面S1に、正の静電荷の付着範囲と負の静電荷の付着範囲とが、静電荷のない範囲を挟んで、シートSの移動方向に周期的に存在するシートSに対して、帯電装置1によってシートSの各面に供給される正の静電荷および負の静電荷は、前述のように、第1の面S1と第2の面S2に充電され、例えば、第1の面S1を正の静電荷を充電し、第2の面S2を負の静電荷を充電する。この帯電処理の際、前記除電処理によって第1の面S1に付着した負の静電荷に対しては、帯電装置1より供給された、より多くの正の静電荷がクーロン力により選択的に引き寄せられ、前記除電処理によって第1の面S1に付着した正の静電荷に対しては、帯電装置1より供給された、正の静電荷が、クーロン反発力により、選択的に遠ざけられる。すなわち、帯電装置1によって、前記除電処理によって第1の面S1に付着した正の静電荷と負の静電荷の量の差を縮めて、塗布膜WLを貫く電界の大きさの変化量を小さくしつつ、かつ、第1の面S1に正の静電荷のみを供給し、シートSの第1の面S1を正極性に塗り潰すことにより、塗布膜WLを貫く電界が特に弱い、極性の変化する点が派生しないようにする。これにより、シートSの第1の面S1全面において、塗布膜WL全面に対し、シートSの第1の面S1の表面張力が塗液Wの表面張力よりも常に大きくなるように、ある一定以上の電界の大きさが作用するために、塗布膜WLの厚みの均一化が可能となる。
【0064】
なお、塗布膜WLを貫く電界の、シート表面の位置における変化量(ばらつき)の上限に関しては、シートSの第1の面S1の静電荷の量は、塗液Wの表面張力よりもシートSの第1の面S1の表面張力を大きくするためには、絶対値で5μC/m以上あるのが好ましく、かつ、シートSの第1の面S1の静電荷の量の絶対値が30μC/mを超えると、塗布後、剥離放電などの問題があることを考慮すると、20μC/m以下の静電荷の変化量にとどめることが好ましい。
【0065】
図5Aは、本発明の第2の実施形態に係るシートの製造装置の概略縦断面図である。また、図5Bは、本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略縦断面図である。シートSの製造装置2において、移動方向Dに移動するシートSは搬送ロールR3、R4に掛け渡され、前述の除電装置SE、および、帯電装置SCによって処理された後、シート巻取り装置SRWの図示しないモータに接続され、回転するスピンドルSP1によって積層状に積層ロールLSが形成される。巻き取られたシートSの積層ロールLSは、塗布装置3の巻きだし装置SUWにセットされ、図示しないモータによって駆動され回転するスピンドルSP2によって、巻きだされ、塗布装置3によって、シートSの第1の面S1に塗液Wを塗布される。塗布装置CHは、図2の塗布装置CHと同じである。図5Aのように、塗布装置外である、シートSの製造装置2で除電処理、帯電処理を事前に施したシートSに対し、図5Bに示す塗布装置3で塗布する場合も、塗布されるシートSの各面の静電荷の状態は、図2に示す構成と同じであり、塗布膜WLへの電界の作用は同等である。
【0066】
さらに、図6Aは、本発明の第3の実施形態に係るシートの製造装置の概略縦断面図である。また、図6Bは、本発明の第3の実施形態に係る塗布装置の概略縦断面図である。シートSの製造装置4において、移動方向Dに移動するシートSは搬送ロールR3、R4に掛け渡され、前述の除電装置SEによって除電処理された後、シート巻取り装置SRWの図示しないモータに接続され、回転するスピンドルSP1によって積層状に積層ロールLSが形成される。巻き取られたシートSの積層ロールLSは、塗布装置5の巻きだし装置SUWにセットされ、図示しないモータによって駆動され回転するスピンドルSP2によって、巻きだされ、帯電装置SCによってシートSの各面に帯電処理され、塗布装置3によって、シートSの第1の面S1に塗液Wを塗布される。塗布装置CHは、図2の塗布装置CHと同じである。図6Aのように、塗布装置外である、シートSの製造装置4で除電処理したシートに対し、図6Bに示す塗布装置6で、帯電装置SCにより帯電処理したシートSに塗布する場合も、塗布されるシートSの各面の静電荷の状態は、図2に示す構成と同じであり、塗布膜WLへの電界の作用は同等である。
【実施例】
【0067】
本発明の塗布方法を用いた、電気絶縁性シートへの塗液の塗布の実施例、ならびに、比較例を示す。なお、実施例および比較例に登場する種々の評価手法は、次の通りであり、シートSの各面の静電荷の電荷密度と塗布ムラの評価結果について、相関を確認した。
[塗布ムラの評価方法]
電気絶縁性シートSとしてフィルムを用い、フィルムに塗液を塗布して、塗布ムラ、すなわち、塗液の塗布厚みが、局所的に異なる領域の有無を調べた。なお、塗液は、シリコーン系塗布剤(品番:KS847H。信越化学(株)製。 10重量部、品番:PL−50T。信越化学(株)製。 0.1重量部、品名:トルエン 100重量部)を用いた。塗布ムラの発生有無は、シートSが塗布装置を通過した後、目視にて確認し、次の3段階で評価した。
【0068】
◎: 塗布ムラが全くなく、品質上良好。
【0069】
○: やや微小な塗布ムラあるが、品質上問題ない。
【0070】
×: 微小な塗布ムラも、シート移動方向に周期的な塗布ムラもはっきり見える。
[電気絶縁性シートSの各面の静電荷の電荷密度の算出方法]
電気絶縁性シートSへの塗布を開始する前に、あらかじめ、被塗布用のシートSに対し、本発明の帯電処理、除電処理を実施し、シートSの被塗布面の帯電状態を調べた。電気絶縁シートSの被評価面(被塗布面)とは逆の面を金属ロール(直径10[cm]のハードクロムメッキロール)に密着させ、電位を測定した。シートSと金属ロールの界面の間に実質的にギャップがない状態にまでぴったりと接触させて測定する。この状態で、電位計(商品名:表面電位計モデル244 モンロー社製)のセンサ(商品名:プローブ1017EH。開口部直径0.5[mm]。モンロー社製)を、シートSの面から0.5[mm]の位置におき、金属ロールを低速回転させながら電位を測定し、被評価面の電位v[V]を得た。なお、上記0.5[mm]位置においたときの視野は、モンロー社カタログより、直径0.25[mm]以下の範囲となる。また、上記低速回転は、リニアモータを使用し、回転速度を、約0.3[m/分]とした。
【0071】
シートSの被評価面内の電位は、先ず、シートSの幅方向に、電位計を20mm程度スキャンさせて、最大値が得られる幅方向の位置を決め、幅方向の位置を固定して、電位計をシートSの移動方向SD、つまり、シートSの長手方向にスキャンさせて、電位を測定した。シートSの被評価面内の電位は、2次元的にすべてのポイントを測定するのが理想であるが、前述の方法で、シートSの面内の電位の分布を近似することで、通常、実用上は差し支えない。シートSの幅が1mを越す場合には、シートSの幅方向のほぼ中央部と端部において、200mm程度を切り出したサンプルシートを用いて測定する。本測定により得られた電位v[V]の分布から、電荷密度σ[μC/m]の分布を求めた。電荷密度は、シートSの単位面積当たりの静電容量C[μF/m]と、本測定により得られた電位vの関係式σ=C・vから求めた。シートSの単位面積当たりの静電容量Cは、平行平板の単位面積当たりの静電容量の関係式C=εε/tにより求めた。ただし、εは、真空中の誘電率:8.854×10−12[F/m]、εは、シートの比誘電率(値は3とした)、tは、シートの厚み[m]である。
[塗液Wの帯電量の測定方法]
以下の実施例、比較例を実施する前に、塗液Wの帯電量を測定した。
塗液Wの充填槽Pから、塗液Wを1リットル計量カップで抽出し、ファラデーケージ(春日電機社製 型式:Model KQ−1400)の計量部に注入して帯電量を測定した。<確認1;第1の面S1の静電荷量と塗布ムラの関係の確認>
[実施例1]
図5Aに示すシートSの製造装置2、および、図5Bに示す塗布装置3を用い、シートSの各面の静電荷の電荷密度と塗布ムラの相関を確認した。シートSの製造装置2によって、シートSは移動速度280m/分で移動する。シート(電気絶縁性シート)Sとして、一軸延伸フィルム(商品名:ルミラー、東レ株式会社製)を用い、その幅は、約600[mm]、厚さは、12[μm]である。
【0072】
フィルムSは、シートSの製造装置2において、シート除電装置SEによって除電処理した後、シート帯電装置SCによって帯電処理し、シートSの巻取り装置SRWによって、シートSを巻き取り、積層状ロールLSを得た。巻き取りシートS、積層状ロールLSからシートSを手動で巻きだし、280m/分で除電処理、および、帯電処理されたシートSの第1の面、および、第2の面の静電荷の電荷密度を、前述の評価方法でシート移動方向に確認した。その後、残りの積層状ロールLSを塗布装置3の巻きだし装置SUWにセットし、50m/分でシートSを移動させ、第1の面S1に塗液Wを塗布し、前述の塗布ムラの評価方法で、シートSの塗布ムラの状態を確認した。事前に、塗液Wの帯電量を前述の測定方法で測定した結果、+100nC/リットルであった。
【0073】
第1の面S1における塗液の塗布幅は、560mmとし、フィルムSのほぼ中央部に、塗液Wを塗布した。圧胴ロールB2は、グラビアロールG2に対し、シートSの幅方向に均一になるように付勢した。グラビアロールG2、および、圧胴ロールB2の径はともに300mm、長手方向の長さは2000mmである。グラビアロールG2は全体が接地されている。圧胴ロールB2の表面は、厚みが5mmの導電性ゴム(導電率 10Ω・cm)で被覆されている。グラビアロールG2、圧胴ロールB2ともにシートSと同じ速度で、それぞれ、rg、rbの方向に図示しないモータにより駆動され、回転している。
【0074】
シートSを帯電させるためにシート帯電装置SCとして、図3に示す電極ユニットEUd、EUfが対向した帯電装置を用いた。なお、電極ユニットEUdのイオン生成電極3dは、針状の金属が間隔10mmでシートSの移動方向Dに直交する方向に複数(60本)並んで配置されており、すべての針状電極は導通状態である。また、電極ユニットEUfのイオン生成電極3fは、針状の金属が間隔10mmでシートSの移動方向Dに直交する方向に複数(60本)並んで配置されており、すべての針状電極は導通状態である。各電極ユニットEUd、EUfの長手方向(針状電極並設方向)の中央が、シートSの幅方向の中央になるように、各電極ユニットEUd、EUfを配置し、かつ、電極ユニットEUd、EUfを、シートSの移動方向Dに対して直交するように、かつ、シートSの面と平行になるように、シートSを挟んで設置した。シートSの移動方向Dに沿って並べる帯電ユニットCUの数Nは、図3に示すとおり1個とした。上下のイオン生成電極先端同士の間隔dは、50[mm]とした。シートSは、電極間の略中央を通るようにした。上下のシールド電極の間隔dは、35[mm]とした。イオン生成電極3f、3dに接続する電源2c、2dには、直流電源を用い、互いに逆極性になるよう接続し、第1の面S1が正極性となるように、印加極性を決定した。直流電源としては、脈動率が5%以下のものを用いた。第1および第2の各イオン生成電極に、電圧10[kV]を印加し、シールド電極3g、3hは、ともに接地とした。このようにして、第1の面S1と第2の面S2とを逆極性に帯電させた。
【0075】
帯電装置SCの上流には、図4に示す電極が対向したシート除電装置SEを用いた。なお、電極ユニットENdkのイオン生成電極は4d−kは、針状の金属が間隔10mmでシートSの移動方向Dに直交する方向に複数(60本)並んで配置されており、すべての針状電極は導通状態である。また、電極ユニットENfkのイオン生成電極4f−kは、針状の金属が間隔10mmでシートSの移動方向Dに直交する方向に複数(60本)並んで配置されており、すべての針状電極は導通状態である。各電極ユニットENdk、ENfkの長手方向(針状電極並設方向)の中央が、シートSの幅方向の中央になるように、各電極ユニットENdk、ENfkを配置し、かつ、各電極ユニットがシートSの移動方向Dに対して直交するように、かつ、フィルムSの面と平行になるように、フィルムSを挟んで設置した。シートSの移動方向Dに沿って並べる除電ユニットの数Nは、8個とした。上下のイオン生成電極先端同士の間隔dは、30[mm]とした。フィルムSは、電極間の略中央を通るようにした。フィルムSの移動方向Dにおいて隣接するイオン生成電極先端同士の間隔dは、25[mm]とした。
【0076】
イオン生成電極群2e、2fに接続する電源2g、2hには、周波数60Hzの交流電源を用い、互いに逆位相となるように接続した。第1および第2の各イオン生成電極4f、4dに、交流波形の位相差が180[度]であり、実効値で4.0[kV]の交流電圧を印加し、シールド電極4h、4gは、ともに接地とした。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、帯電装置SCにおける直流印加電圧の絶対値を8kVにした以外は、実施例1と同じ装置および条件で塗布評価した。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、帯電装置SCにおける直流印加電圧の絶対値を0kVにした以外は、実施例1と同じ装置および条件で塗布評価した。なお、帯電装置SCにおける直流印加電圧の絶対値を0kVにすることと、帯電装置SCを設けないことは、シートSの各面の帯電状態の観点から見ると等価である。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、除電装置SEの交流電源2g、2hの出力電圧を0kVにした以外は、実施例1と同じ条件で塗布評価した。なお、除電装置SEにおける出力電圧を0kVにすることと、除電装置SEを設けないことは、シートSの各面の帯電状態の観点から見ると等価である。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例3において、帯電装置SCにおける直流印加電圧の絶対値を8kVにした以外は、実施例3と同じ条件で塗布評価した。なお、除電装置SEにおける出力電圧を0kVにすることと、除電装置SEを設けないことは、シートSの各面の帯電状態の観点から見ると等価である。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、帯電装置SCにおける直流印加電圧の絶対値を12kVにし、除電装置SEの交流電源2g、2hの出力電圧を4.5kVにした以外は、実施例1と同じ装置および条件で塗布評価した。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
<確認1のまとめ>
実施例1、2、3、4、5および、比較例1の比較から、第1の面S1の静電荷の電荷密度は、その最小値が5μC/mより大きくなると好ましい結果が得られ、かつ、電荷密度の最大値と最小値の差の絶対値は、20μC/m以下であれば、最も完全に塗布ムラを解消することができることがわかる。
<確認2;第1の面S1の静電荷の有無と塗布ムラの関係の確認>
[比較例2]
実施例1において、除電装置SEの交流電源2g、2hの出力電圧を0kVにし、また、帯電装置SCの直流電源2c、2dの出力電圧を0kVにした以外は、実施例1と同じ条件で塗布評価した。なお、帯電装置SCにおける直流印加電圧の絶対値を0kVにすることと、帯電装置SCを設けないことは、シートSの各面の帯電状態の観点から見ると等価である。
同じく、除電装置SEにおける出力電圧を0kVにすることと、除電装置SEを設けないことは、シートSの各面の帯電状態の観点から見ると等価である。
このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
<確認2のまとめ>
比較例2に示すように、除電処理、帯電処理の両方とも実施しないシートSの表面に塗布をすると、塗布ムラの状態は良好であったが、別途、実施例2で得られた塗布済みシートSとの違いをSEM写真撮像による断面分析をして比較すると、実施例2で得られたシートSの塗布膜WLに比べて、塗布膜WLとシート面S1との界面が非常に明瞭に撮像された。原因は定かではないが、シートSの表面への密着力がやや小さいためと推察され、実施例3で得られる塗布済みシートのほうが、塗液Wのシート面への塗れ性がやや向上する効果もあると考えられる。
【0077】
また、比較例2では、塗布前に帯電欠点のないシートを用いるか、除電等をしないので、前工程で帯電してしまった場合に塗布ムラは避けられない。
<確認3;圧胴ロールB2のグラビアロールG2に対する付勢有無による、第1の面S1の静電荷の有無と塗布ムラの関係の確認>
[参考例1]
比較例1において、圧胴ロールB2をグラビアロールG2から離間した以外は、比較例1と同じ条件で塗布評価した。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
<確認3のまとめ>
比較例1では、塗布ムラが発生する帯電状態のシートSを、参考例1では、圧胴ロールを離間して塗布すると、塗布ムラが解消した。これは、圧胴ロールを離間すると、前述の式(2)に従って、塗布膜WLを貫く電界の大きさは、シートSの第1の面S1と第2の面S2の静電荷の和によってきまるため、シートSの第1の面S1に例え静電荷があっても塗布膜WLへの電界の影響は小さいのに対し、圧胴ロールをグラビアロールに対し付勢すると、前述の式(3)に従い、シートSの第1の面S1に存在する静電荷による電界が塗布膜WLを貫き、塗布膜WLは電界の影響を受けやすいためと考えられる。
<確認4;塗液Wの帯電量と塗布ムラ発生の関係の確認>
[比較例3]
比較例1と同じ装置、条件で塗布評価した。但し、塗布評価前に、塗液Wの帯電を前述の方法で測定したところ、+60nC/リットルであった。このとき、シートSの帯電状態と塗布ムラ評価結果を表1に示す。
【0078】
<確認4のまとめ>
比較例3のように塗液Wの帯電量が小さい場合は、比較例1に比べ、塗布結果は良化が確認されるが、実施例1に比べるとやや塗布ムラの状態は劣っている。このことから、本発明の塗布方法は、塗液Wの帯電量に関わらず有効である上、さらに、実施例1と比較例1の対比によれば、塗液Wの帯電量がある程度大きい場合には、本発明の塗布方法が一層有効であることが確認される。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、塗布の前に、電気絶縁性シートの各面に、互いに逆極性の直流的な静電荷を付与することにより、塗液を電気絶縁性シートの表面に、塗布ムラの発生を極力抑制した状態で、塗布することを可能とするため、均一な塗膜を有する電気絶縁性シートの製造に適する。なお、本発明が適用される塗液を塗布するシートとしては、プラスチックフィルム、紙等のウエブやシリコンウエハ、ガラス基板等の枚葉物がある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る塗布装置の接液部を平板コンデンサで近似した断面模式図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るシートの製造装置および塗布装置の概略縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係るシートSの帯電装置SCにおける電極2a、電極2bの一例の拡大概略縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係るシートSの除電装置SEの構成要素である電極群2e、電極群2fの位置関係を示す拡大概略縦断面図である。
【図5A】図5Aは、本発明の第2の実施形態に係るシートの製造装置の概略縦断面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略縦断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の第3の実施形態に係るシートの製造装置の概略縦断面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の第3の実施形態に係る塗布装置の概略縦断面図である。
【図7A】図7Aは、塗布膜WLを貫く電界が正負交互に変化に関する波形の概念図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに対応した塗布膜WLの厚みの変化に関する概念図である。
【図7C】図7Cは、図7Aに示す塗布膜WLを貫く電界の変化波形を正側にオフセットした波形の概念図である。
【図7D】図7Dは、図7Cに対応した塗布膜WLの厚みの変化に関する概念図である。
【符号の説明】
【0082】
G1:塗布ロール表面
B1:圧胴ロール表面
La:空気層
Lb:シート層
Lc:塗液層
S:電気絶縁性シート
S1:電気絶縁性シートSの第1の面
S2:電気絶縁性シートSの第2の面
D:電気絶縁性シートSの移動方向
a:空気層Laの厚み
b:シート層Lbの厚み
c:塗液層Lcの厚み
q1:電気絶縁性シートSの第1の面S1の静電荷
q2:電気絶縁性シートSの第2の面S2の静電荷
1:塗布装置
R1:シート搬送用ロール
R2:シート搬送用ロール
R3:シート搬送用ロール
R4:シート搬送用ロール
CH:塗布ヘッド
G2:塗布ロール
B2:圧胴ロール
rb:圧胴ロールB2の回転方向
rg:塗布ロールG2の回転方向
P:塗液の充填槽
W:塗液
WL:塗布膜
SC:シートSの帯電装置
2a:電極
2b:電極
2c:直流電源
2d:直流電源
SE:シートSの除電装置
2e:電極群
2f:電極群
2g:交流電源
2h:交流電源
2:シートSの製造装置
SRW:シートSの巻き取り装置
SP1:シートSの巻き取り装置のスピンドル
LS:シートSの積層ロール
3:塗布装置
SUW:シートSの巻き出し装置
SP1:シートSの巻き出し装置のスピンドル
4:シートSの製造装置
5:塗布装置
CU:帯電ユニット
EUf:第1の帯電電極ユニット
EUd:第2の帯電電極ユニット
3f:第1のイオン生成電極
3d:第2のイオン生成電極
3h:第1のシールド電極
3g:第2のシールド電極
SUk:シートSの移動方向に対し、k番目の除電ユニット
ENf−k:シートSの移動方向に対し、k番目の第1の除電電極ユニット
ENd−k:シートSの移動方向に対し、k番目の第2の除電電極ユニット
4f−k:除電電極ユニットENf−kにおける第1のイオン生成電極
4d−k:除電電極ユニットENd−kにおける第2のイオン生成電極
4h−k:除電電極ユニットENf−kにおける第1のシールド電極
4g−k:除電電極ユニットENd−kにおける第2のシールド電極
4f−k+1:除電電極ユニットENf−k+1における第1のイオン生成電極
4d−k+1:除電電極ユニットENd−k+1における第2のイオン生成電極
4h−k+1:除電電極ユニットENf−k+1における第1のシールド電極
4g−k+1:除電電極ユニットENd−k+1における第2のシールド電極
:帯電ユニットCUにおける第1のイオン生成電極3fと第2のイオン生成電極3dのシートSの移動方向の距離
:帯電ユニットCUにおける第1のイオン生成電極3fと第2のイオン生成電極3dのシートSの法線方向の距離
:帯電ユニットCUにおける第1のシールド電極3hと第2のシールド電極3gのシートSの法線方向の距離
:k番目の除電ユニットSUkにおける第1のイオン生成電極4f−kと第2のイオン生成電極4d−kのシートSの法線方向の距離
:k番目の除電ユニットSUkとk+1番目の除電ユニットSUk+1におけるシートSの移動方向の距離
:除電ユニットSUkにおける第1のシールド電極4h−kと第2のシールド電極4g−kのシートSの法線方向の距離
:除電ユニットSUkにおける第1のイオン生成電極4f−kと第2のイオン生成電極4d−kのシートSの移動方向の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗液を供給する導電性の表面を有する塗布ロールと、前記塗布ロールに向かって付勢され導電性の表面を有する圧胴ロールとの間を、所定の移動方向に移動する電気絶縁性シートの第1の面に、電気絶縁性の塗液を塗布する、電気絶縁性シートの塗布方法であって、前記塗布ロールよりも上流に、前記電気絶縁性シートを挟んで、前記電気絶縁性シートに非接触に対向配置された前記電気絶縁性シートの帯電手段により、前記電気絶縁性シートの第1の面及び第2の面に、互いに逆極性の直流的な静電荷を付与する工程を有することを特徴とする、電気絶縁性シートの塗布方法。
【請求項2】
前記電気絶縁性シートの帯電手段よりも上流の工程において、前記電気絶縁性シートを挟んで、前記電気絶縁性シートに非接触に対向配置された前記電気絶縁性シートの除電手段により、前記電気絶縁性シートの第1の面及び第2の面に、互いに逆極性の交流的な静電荷を付与して除電処理することを特徴とする、請求項1に記載の電気絶縁性シートの塗布方法。
【請求項3】
前記電気絶縁性シートの帯電手段によって、
(1)前記電気絶縁性シートの第1の面と第2の面の静電荷の電荷密度の和が2μC/m以下であり、かつ、
(2)前記電気絶縁性シートの第1の面及び前記第2の面の各面の静電荷の電荷密度の絶対値がともに、5μC/m以上30μC/m以下であり、かつ、
(3)前記第1の面の静電荷の電荷密度と、前記第2の面の静電荷の電荷密度とがともに、前記シートの移動方向に滑らかに変化し、前記電荷密度の変化の振幅が、20μC/m以下であるように、前記電気絶縁性シートを帯電処理することを特徴とする、請求項1または2に記載の電気絶縁性シートの塗布方法。
【請求項4】
前記塗液として帯電量の絶対値が100nC/l以上であるものを供給することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電気絶縁性シートの塗布方法。
【請求項5】
前記塗布ロールとして、グラビアロールを用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電気絶縁性シートの塗布方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電気絶縁性シートの塗布方法を用いて塗液を電気絶縁性シートに塗布し、その後巻き取ることを特徴とする、薄膜付き電気絶縁性シートロール体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【公開番号】特開2008−114216(P2008−114216A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137510(P2007−137510)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】