説明

電気自動車の充放電ハーネス配索構造

【課題】電気自動車に外力が入力した際の充放電ハーネスのプロテクト性を向上することができる電気自動車の充放電ハーネス配索構造を提供する。
【解決手段】本発明の電気自動車の充放電ハーネス配索構造は、モータルームに配置されてモータ駆動ユニット10に駆動電流を供給する強電ユニット20と、車体フロアの下部に配置したバッテリパックを、充放電ハーネス51を介して接続する電気自動車において、強電ユニット20が、モータルームと車体フロアの間に起立するダッシュパネルに対向したユニット背面(強電モジュール背面)24と、ユニット背面24から強電ユニット20の内部に向かって陥没し、その内側に充放電ハーネス51の一端51aを接続する充放電ハーネス接続端子26を設けたハーネス接続凹部25と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータルームに配置した強電ユニットと、車体フロアの下部に配置したバッテリパックとを充放電ハーネスで接続した電気自動車における充放電ハーネスの配索構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータルーム内に、走行駆動源となるモータ駆動ユニットと、このモータ駆動ユニットに供給する電圧を制御する強電ユニットを配置し、モータルームよりも車両後方に位置する車体フロアの下部にバッテリパックを配置した電気自動車が知られている。この電気自動車では、充放電ハーネスを介して、強電ユニットとバッテリパックを接続している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-20622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電気自動車の充放電ハーネス配索構造にあっては、充放電ハーネスの一端が強電ユニットの背面下部に接続され、他端がバッテリユニットの前端部中央部分に接続されている。
そのため、車両前部の衝突等により強電ユニットが後退すると、強電ユニットに接続した充放電ハーネスの一端が、モータルームと車体フロアの間に起立するダッシュパネルに干渉するおそれがあり、ハーネスプロテクト性に劣るという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電気自動車に外力が入力した際の充放電ハーネスのプロテクト性を向上することができる電気自動車の充放電ハーネス配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、モータルームに配置した強電ユニットと、車体フロアの下部に配置したバッテリパックを、充放電ハーネスを介して接続する電気自動車の充放電ハーネス配索構造を前提とする。そして、この電気自動車の充放電ハーネス配索構造において、強電ユニットは、ユニット背面と、ハーネス接続凹部と、を備える構成とした。
前記ユニット背面は、前記モータルームと前記車体フロアの間に起立するダッシュパネルに対向する。
前記ハーネス接続凹部は、前記ユニット背面から前記強電ユニットの内部に向かって陥没し、その内側に前記充放電ハーネスの一端を接続する充放電ハーネス接続端子を有する。
【発明の効果】
【0007】
よって、強電ユニットのユニット背面から、この強電ユニットの内部に向かって陥没したハーネス接続凹部が、その内側に充放電ハーネスの一端を接続する充放電ハーネス接続端子を有している。
すなわち、充放電ハーネスの一端を接続する充放電ハーネス接続端子は、ユニット背面よりも強電ユニットの内部に入り込んでいる。
そのため、電気自動車に外力が入力することで強電ユニットがダッシュパネル側に移動した場合、ユニット背面が最初にダッシュパネルに当接し、ユニット背面から陥没したハーネス接続凹部内の充放電ハーネス接続端子がダッシュパネルと一次接触することが防止される。
この結果、充放電ハーネス接続端子がその周囲のユニット背面で保護されることとなり、電気自動車に外力が入力した際の充放電ハーネスのプロテクト性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の主要構造を示す全体側面図である。
【図2】実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の前部主要構造を示す概略平面図である。
【図3】実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の前部主要構造を示す概略側面図である。
【図4】実施例1の強電ユニットを背面側から見たときの斜視図である。
【図5】実施例1の強電ユニットの充放電ハーネス接続端子における要部を拡大した断面図である。
【図6】実施例1の強電ユニットの横断面を示す断面斜視図である。
【図7】実施例1の強電ユニットにおけるハーネス退避凹部を示す要部断面斜視図である。
【図8】実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の前面衝突発生時のハーネス状態を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図を示し、(b)は要部側面図示し、(c)はハーネス退避凹部における断面図を示す。
【図9】実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車のオフセット衝突発生時のハーネス状態を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図を示し、(b)はハーネス退避凹部における断面図を示し、(c)は前面右側からのオフセット衝突後の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電気自動車の充放電ハーネス配索構造を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、実施例1の電気自動車の充放電ハーネス配索構造における構成を、「電気自動車の基本構成」、「強電ユニットのユニット背面構成」、「ハーネス配索構成」に分けて説明する。
【0011】
[電気自動車の基本構成]
図1は、実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の主要構造を示す全体側面図である。図2は、実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の前部主要構造を示す概略平面図である。図3は、実施例1の充放電ハーネス配索構造が適用された電気自動車の前部主要構造を示す概略側面図である。
【0012】
実施例1の電気自動車1は、図1及び図2に示すように、モータ駆動ユニット10と、強電ユニット20と、バッテリパック30と、充電ポート40と、を備えている。
【0013】
ここで、前記モータ駆動ユニット10及び前記強電ユニット20は、車体前部に形成されたモータルーム2に配置されている。一方、前記バッテリパック30は、モータルーム2の後方に位置する車体フロア3の下部に配置されている。なお、モータルーム2と車体フロア3の間にはダッシュパネル4が起立し、車体フロア3は、このダッシュパネル4によってモータルーム2から区画された車室5の床面を構成している。さらに、前記充電ポート40は、モータルーム2の前部において、車幅方向ほぼ中央であって、フロントバンパ6の上方に配置されている。
【0014】
前記モータ駆動ユニット10は、電気自動車1の走行駆動源であり、モータルーム2の下部に延びる一対のサイドメンバ2a,2a(図2参照)に図示しない支持手段を介して支持されている。このモータ駆動ユニット10は、車両駆動用のモータ11と、モータ11の回転を減速してディファレンシャルギヤ12aへ伝達する減速機12と、このモータ11及び減速機12を内蔵するモータハウジング13と、を有している。なお、このモータ駆動ユニット10のモータ11は、走行用の駆動源として用いるほか、発電機としても用いる。
【0015】
前記強電ユニット20は、走行駆動源となるモータ駆動ユニット10に駆動電流を供給するものであり、モータ駆動ユニット10の上側に搭載される。そして、この強電ユニット20は、インバータ21と、強電モジュール22と、を有している。
【0016】
前記インバータ21は、図示しない3相交流ハーネスを介してモータ駆動ユニット10に接続され、直流電流と三相交流電流とを相互に変換するものである。ここでは、モータ11の力行時に強電モジュール22からの直流電流を三相交流電流に変換してモータ11に供給し、モータ11の回生時にモータ11からの三相交流電流を直流電流に変換して強電モジュール22に供給する。このインバータ21は、インバータハウジング21aに内蔵され、モータ駆動ユニット10の直上に搭載されている。
【0017】
前記強電モジュール22は、モータ駆動ユニット10に供給する電力やバッテリパック30に充電する電力の電圧を制御する電圧制御装置であり、DC/DCコンバータ及び充電器を有している。この強電モジュール22は、強電モジュールハウジング23に内蔵され、インバータ21の直上に搭載されている。
そして、この強電モジュール22は、充放電ハーネス51を介してバッテリパック30に接続され、充電ハーネス52を介して充電ポート40に接続され、図示しない強電ハーネスを介してインバータ21に接続されている。
また、前記DC/DCコンバータは、図示しない外部の急速充電電源からの急速充電電圧を充電電圧に変換してバッテリパック30に充電する。さらにこのDC/DCコンバータは、モータ11の力行時にバッテリパック30からの充電電圧を駆動電圧に変換してインバータ21に供給し、モータ11の回生時にインバータ21からの発電電圧を充電電圧に変換してバッテリパック30に充電する。
また、前記充電器は、図示しない外部の普通充電電源からの普通充電電圧を充電電圧に変換してバッテリパック30に充電する。
【0018】
前記バッテリパック30は、二次電池からなる多数のバッテリモジュール、このバッテリモジュールの充放電等を制御する制御回路、冷却装置等と、これらを内蔵するバッテリハウジング31と、を備えている。なお、二次電池としては、リチウムイオン電池や充放電可能なニッカド電池、ニッケル水素電池等を用いる。
【0019】
前記充電ポート40は、図示しない外部電源を接触接続することで、バッテリパック30に充電する外部電力を入力する受電部であり、急速充電ポート41と、普通充電ポート42と、を備えている。
前記急速充電ポート41は、高圧直流電源である急速充電器が接続されるものであり、高電圧の電流が流れる充電ハーネス52である急速充電ハーネス53を介して強電モジュール22に接続されている。
前記普通充電ポート42は、家庭用の100〜200ボルト程度の低圧交流電源が接続されるものであり、急速充電ハーネス53よりも低電圧の電流が流れる充電ハーネス52である普通充電ハーネス54を介して強電モジュール22に接続されている。
【0020】
[強電ユニットのユニット背面構成]
図4は、実施例1の強電ユニットを背面側から見たときの斜視図である。図5は、実施例1の強電ユニットの充放電ハーネス接続端子における要部を拡大した断面図である。図6は、実施例1の強電ユニットの横断面を示す断面斜視図である。
【0021】
前記強電モジュールハウジング23は、ここでは矩形状の筐体であり、ダッシュパネル4に対向した強電モジュール背面(ユニット背面)24を有している。前記強電モジュール背面24には、この強電モジュール背面24から強電モジュール22の内部に向かって陥没したハーネス接続凹部25が形成されている。
【0022】
前記ハーネス接続凹部25は、車両下方に臨む庇内面25aを有し、車両後方及び車両両側方に開放したへこみである。前記庇内面25aには、充放電ハーネス接続端子26と、急速充電ハーネス接続端子27aと、普通充電ハーネス接続端子27bと、がそれぞれ下向きに設けられている。
【0023】
前記充放電ハーネス接続端子26は、充放電ハーネス51の強電モジュール22側の一端51aを下方から接続する端子であり、強電モジュールハウジング23の内部でDC/DCコンバータ及び充電器に接続されている。この充放電ハーネス接続端子26は、庇内面25aの車幅方向ほぼ中央に配置されている。
【0024】
前記急速充電ハーネス接続端子27aは、急速充電ハーネス53の強電モジュール22側の一端53aを下方から接続する端子であり、強電モジュールハウジング23の内部でDC/DCコンバータに接続されている。この急速充電ハーネス接続端子27aは、庇内面25aの一方の側部近傍に配置されている。
【0025】
前記普通充電ハーネス接続端子27bは、普通充電ハーネス54の強電モジュール22側の一端54aを下方から接続する端子であり、強電モジュールハウジング23の内部で充電器に接続されている。この普通充電ハーネス接続端子27bは、庇内面25aの車幅方向ほぼ中央からわずかに側方にずれた位置に配置され、充放電ハーネス接続端子26に隣接している。
【0026】
図7は、実施例1の強電ユニットにおけるハーネス退避凹部を示す要部断面斜視図である。
【0027】
前記インバータハウジング21aは、ここでは矩形状の筐体であり、ダッシュパネル4に対向したインバータ背面(ユニット背面)21bを有している。前記インバータ背面21bには、このインバータ背面21bからインバータ21の内部に向かって陥没し、充放電ハーネス51を収容するハーネス退避凹部21cが設けられている。このハーネス退避凹部21cは、ハーネス接続凹部25の下方領域に、このハーネス接続凹部25から連続して設けられ、車両後方に開放している。
【0028】
[ハーネス配索構造]
前記充放電ハーネス51は、図4に示すように、一端51aが充放電ハーネス接続端子26に下方から接続され、強電モジュール背面24からインバータ背面21bに沿って下方に配索される。このとき、充放電ハーネス51は、ハーネス退避凹部21cの内側に収容される。そして、図1に示すように、ダッシュパネル4の下方を通るように車両後方に向かって配索されて、他端51bがバッテリパック30の前端部中央のバッテリ端子30aに接続される。
ここで、充放電ハーネス接続端子26が庇内面25aの車幅方向ほぼ中央に配置され、バッテリ端子30aがバッテリパック30の前端部中央に設けられている。そのため、充放電ハーネス51は、車両前後方向に沿ってほぼ直線状に配索される。
【0029】
前記急速充電ハーネス53は、一端53aが急速充電ハーネス接続端子27aに下方から接続され、その後、インバータハウジング21aの側面に沿いながら車両前方に向かって配索されて、他端53bが急速充電ポート41に接続される。
このとき、急速充電ハーネス53は、急速充電ポート41と急速充電ハーネス接続端子27aとの間を、直接接続する。
【0030】
前記普通充電ハーネス54は、一端54aが普通充電ハーネス接続端子27bに下方から接続され、充放電ハーネス51の車両後方側を回り込むように配索された後、インバータハウジング21aの側面に沿いながら車両前方に向かって配索される。そして、車両前方に向かって配索され、他端54bが普通充電ポート42に接続される。
このとき、普通充電ハーネス54は、普通充電ポート42と普通充電ハーネス接続端子27bとの間を、直接接続する。また、この普通充電ハーネス54は、インバータハウジング21aの側面に沿って配索される際、急速充電ハーネス53よりも外側に配置される。すなわち、急速充電ハーネス53は、普通充電ハーネス54よりインバータハウジング21a側に配索される。
【0031】
さらに、この普通充電ハーネス54は、充放電ハーネス51の車両後方側を回り込むように配索されることで、一端54aが普通充電ハーネス接続端子27bに接続された後、充放電ハーネス51とダッシュパネル4との間を通ってから普通充電ポート42に向かうように配索される。
【0032】
実施例1の電気自動車の充放電ハーネス配索構造における作用を「前面衝突時充放電ハーネス保護作用」と、「オフセット衝突時充放電ハーネス保護作用」とに分けて説明する。
【0033】
[前面衝突時充放電ハーネス保護作用]
ダッシュパネルを挟んで車両前後に配置された強電ユニットとバッテリパックは、車両前後方向に延びる充放電ハーネスによって接続されている。このため、充放電ハーネスのプロテクト性を確保するには、前面衝突時、強電ユニットがダッシュパネルに最初に接触することが必要である。以下、図8に基づき、これを反映する前面衝突時充放電ハーネス保護作用を説明する。
【0034】
車両の前面衝突によりモータルーム2の前面が車両後方に変形すると、モータルーム2内において車両前側に配置された放熱器7やファン装置8が後退する。そして、モータルーム2がさらに車両後方へ変形することで、モータ駆動ユニット10及び強電ユニット20が車両後方に移動する。この強電ユニット20の移動に伴って、充放電ハーネス51の一端51aが接続した充放電ハーネス接続端子26は、ダッシュパネル4に近接する。
【0035】
ここで、この充放電ハーネス接続端子26は、強電ユニット20のダッシュパネル4に対向したユニット背面である強電モジュール背面24に形成されたハーネス接続凹部25の内側に設けられている。
【0036】
そのため、強電ユニット20がダッシュパネル4に干渉すると、図8(a)に示すように、強電モジュールハウジング23の強電モジュール背面24がダッシュパネル4に最初に接触する。一方、この強電モジュール背面24がダッシュパネル4に接触することで、ハーネス接続凹部25の内側に設けられた充放電ハーネス接続端子26とダッシュパネル4との間には空間H1が保持される。このため、充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4に接触することが防止される。これにより、充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4と干渉することが防止され、充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0037】
また、実施例1の充放電ハーネス配索構造では、充放電ハーネス接続端子26が、ハーネス接続凹部25の庇内面25aに下向きに設けられている。そのため、充放電ハーネス接続端子26に接続した充放電ハーネス51は、図4に示すように、強電モジュール背面24に沿って下方に配索される。すなわち、充放電ハーネス51の延在方向は、ダッシュパネル4とほぼ平行になる。これにより、図8(b)に示すように、充放電ハーネス51が後退してもダッシュパネル4と干渉しにくくなり、充放電ハーネス51のプロテクト性をさらに向上することができる。
【0038】
特に、実施例1の充放電ハーネス配索構造では、強電ユニット20であるインバータ21は、ハーネス接続凹部25の下方領域に、充放電ハーネス51を収容するハーネス退避凹部21cを備えている。
【0039】
そのため、図8(c)に示すように、前面衝突によりインバータ21が後退してダッシュパネル4に干渉した場合であっても、インバータハウジング21aのインバータ背面21bがダッシュパネル4に最初に接触する。そして、インバータ背面21bがダッシュパネル4に接触することで、ハーネス退避凹部21cに収容された充放電ハーネス51とダッシュパネル4の間には空間H2が保持される。このため、充放電ハーネス51がダッシュパネル4に接触することが防止される。このように、ハーネス退避凹部21cの周囲のインバータ背面21bが、充放電ハーネス51よりも先にダッシュパネル4と干渉することで、充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4と干渉することが防止される。この結果、充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0040】
また、実施例1の充放電ハーネス配索構造では、ハーネス接続凹部25が、図4に示すように、充電ハーネス52の一端53a,54aを接続する充電ハーネス接続端子、ここでは急速充電ハーネス接続端子27aと普通充電ハーネス接続端子27bを有している。
【0041】
そのため、車両の前面衝突の発生に伴って、強電ユニット20がダッシュパネル4に干渉した場合、強電モジュールハウジング23の強電モジュール背面24がダッシュパネル4に最初に接触する(図8(a)参照)。このため、急速充電ハーネス接続端子27aや普通充電ハーネス接続端子27bがダッシュパネル4と一次接触することが防止され、充電ハーネス52に対するプロテクト性を確保することができる。
【0042】
さらに、実施例1の充放電ハーネス配索構造では、充電ハーネス接続端子である急速充電ハーネス接続端子27a及び普通充電ハーネス接続端子27bが、ハーネス接続凹部25の庇内面25aに下向きに設けられている(図4参照)。そのため、急速充電ハーネス接続端子27aに接続した急速充電ハーネス53及び普通充電ハーネス接続端子27bに接続した普通充電ハーネス54は、強電モジュール背面24に沿って下方に配索される。すなわち、充電ハーネス52の延在方向が、充放電ハーネス51と同様にダッシュパネル4とほぼ平行にすることができる。これにより、充電ハーネス52が後退してもダッシュパネル4と干渉しにくくなり、充電ハーネス52のプロテクト性をさらに向上することができる。
【0043】
なお、実施例1の充放電ハーネス配索構造では、普通充電ハーネス54は、一端54aが充放電ハーネス接続端子26に隣接する普通充電ハーネス接続端子27bに接続された後、充放電ハーネス51の車両後方側に回り込むように配索されている。つまり、普通充電ハーネス54は、充放電ハーネス51とダッシュパネル4との間に配索されている。
【0044】
そのため、モータルーム2の変形状態によって、例えば強電ユニット20の後部が上方に傾くようなこと等があっても、充放電ハーネス51よりも車両後方側、つまりダッシュパネル4側に普通充電ハーネス54が存在する(図8(b)参照)。これにより、普通充電ハーネス54によってダッシュパネル4から充放電ハーネス51への衝撃の緩和を図ることができ、充放電ハーネス51のプロテクト性のさらなる向上を図ることができる。
【0045】
[オフセット衝突時充放電ハーネス保護作用]
ダッシュパネルを挟んで車両前後に配置された強電ユニットとバッテリパックを接続する充放電ハーネスのプロテクト性を確保するには、オフセット衝突時であっても、強電ユニットがダッシュパネルと最初に接触することが必要である。以下、図9に基づき、これを反映するオフセット衝突時充放電ハーネス保護作用を説明する。
【0046】
車両のオフセット衝突(ここでは、前面左側に荷重入力)の発生によりモータルーム2の前部左側が車両後方に変形すると、モータルーム2内において車両前側に配置された放熱器7やファン装置8の側部が後退するように変形する。
【0047】
そして、モータルーム2がさらに車両後方へ変形することで、モータ駆動ユニット10及び強電ユニット20の側部が車両斜め後方に移動し、この移動に伴って、充放電ハーネス接続端子26や、この充放電ハーネス接続端子26に一端51aが接続して強電モジュール背面24に沿って下方に配索された充放電ハーネス51は、ダッシュパネル4に近接する。
【0048】
ここで、充放電ハーネス接続端子26がハーネス接続凹部25の内側に設けられていることにより、オフセット衝突によって強電ユニット20が斜め後方に後退してダッシュパネル4に干渉した場合であっても、強電モジュールハウジング23の強電モジュール背面24がダッシュパネル4に最初に接触する(図9(a)におけるA部)。そのため、ハーネス接続凹部25の内側に設けられた充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4と一次接触することが防止され、充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0049】
さらに、強電ユニット20であるインバータ21は、ハーネス接続凹部25の下方領域に、充放電ハーネス51を収容するハーネス退避凹部21cを備えている。
【0050】
そのため、オフセット衝突により強電ユニット20が斜め後方に後退してダッシュパネル4に干渉した場合であっても、インバータハウジング21aのインバータ背面21bがダッシュパネル4に最初に接触する(図9(b)のB部)。そして、インバータ背面21bがダッシュパネル4に接触することで、ダッシュパネル4が後退するため、ハーネス退避凹部21cに収容された充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4に接触することが防止される。このように、ハーネス退避凹部21cの周囲のインバータ背面21bが、充放電ハーネス51よりも先にダッシュパネル4と干渉することで、充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4と干渉することが防止される。この結果、充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0051】
そして、実施例1の充放電ハーネス配索構造では、充電ハーネス52である急速充電ハーネス53及び普通充電ハーネス54が、インバータハウジング21aの側面に沿って配索されている。このとき、急速充電ハーネス53は、普通充電ハーネス54よりも内側、すなわちインバータハウジング21a側に配索されている。
【0052】
そのため、オフセット衝突の発生により、モータルーム2の側部が変形し、インバータハウジング21aの側面に沿って配索された充電ハーネス52に接触した場合であっても、比較的高圧の電流が流れる急速充電ハーネス53よりも、比較的低圧の電流が流れる普通充電ハーネス54の方が、先にモータルーム2の側部と接触する。すなわち、普通充電ハーネス54によって急速充電ハーネス53への衝撃の緩和を図ることができる。これにより、急速充電ハーネス53のプロテクト性を、比較的低圧の電流が流れる普通充電ハーネスのプロテクト性よりも高く保持することができる。
【0053】
なお、電気自動車1の前面右側に荷重入力するオフセット衝突が発生した場合であっても、図9(c)に示すように、強電モジュールハウジング23の強電モジュール背面24がダッシュパネル4に最初に接触する(図9(c)におけるC部)。そのため、ハーネス接続凹部25の内側に設けられた充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4と一次接触することが防止され、充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0054】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車の充放電ハーネス配索構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0055】
(1) モータルーム2に配置し、走行駆動源となるモータ駆動ユニット10に駆動電流を供給する強電ユニット(インバータ21,強電モジュール22)20と、車体フロア3の下部に配置したバッテリパック30を、充放電ハーネス51を介して接続する電気自動車1において、
前記強電ユニット(強電モジュール)22は、前記モータルーム2と前記車体フロア3の間に起立するダッシュパネル4に対向したユニット背面(強電モジュール背面)24と、
前記ユニット背面24から前記強電ユニット22の内部に向かって陥没し、その内側に前記充放電ハーネス51の一端51aを接続する充放電ハーネス接続端子26を設けたハーネス接続凹部25と、
を備えた構成とした。
これにより、電気自動車1に外力が入力した際、充放電ハーネス接続端子26がダッシュパネル4と干渉することが防止され、充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0056】
(2) 前記ハーネス接続凹部25は、車両下方に臨む庇内面25aを有し、前記充放電ハーネス接続端子26は、前記庇内面25aに下向きに設けた構成とした。
これにより、充放電ハーネス51がユニット背面24に沿って下方に配索されることで、充放電ハーネス51とダッシュパネル4が平行に配置されて干渉しにくくなり、さらにハーネスプロテクト性を向上することができる。
【0057】
(3) 前記強電ユニット(インバータ)21は、前記ハーネス接続凹部25の下方領域に、前記ユニット背面(インバータ背面)21bから前記強電ユニット(インバータ)21の内部に向かって陥没し、前記充放電ハーネス51を収容するハーネス退避凹部21cを備えた構成とした。
これにより、電気自動車1への外力の入力方向に拘わらず充放電ハーネス51のプロテクト性を向上することができる。
【0058】
(4) 前記強電ユニット(強電モジュール)22と、前記バッテリパック30に充電する外部電力を入力する受電部(充電ポート)40を、充電ハーネス52を介して接続し、
前記ハーネス接続凹部25は、前記充電ハーネス52の一端53a,54aが接続する充電ハーネス接続端子(急速充電ハーネス接続端子27a,普通充電ハーネス接続端子27b)を有する構成とした。
これにより、電気自動車1に外力が入力した際の、充電ハーネス52のプロテクト性を確保することができる。
【0059】
(5) 前記ハーネス接続凹部25は、車両下方に臨む庇内面25aを有し、前記充電ハーネス接続端子27a,27bは、前記庇内面25aに下向きに設けた構成とした。
これにより、充電ハーネス52がユニット背面24に沿って下方に配索されることで、充電ハーネス52とダッシュパネル4が平行に配置されて干渉しにくくなり、さらに充電ハーネス52のプロテクト性を向上することができる。
【0060】
(6) 前記充電ハーネス52は、高電圧の電流が流れる急速充電ハーネス53と、前記急速充電ハーネス53よりも低電圧の電流が流れる普通充電ハーネス54と、を有し、
前記普通充電ハーネス54は、前記充放電ハーネス51と前記ダッシュパネル4との間を通って前記受電部(普通充電ポート)42に向かうように配索された構成とした。
これにより、ダッシュパネル4から充放電ハーネス51に作用する衝撃を普通充電ハーネス54によって緩和することができ、充放電ハーネス51のプロテクト性より高く保持することができる。
【0061】
以上、本発明の電気自動車の充放電ハーネス配索構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0062】
実施例1では、強電ユニット20におけるインバータ21と強電モジュール22を、それぞれ異なるハウジングに収容すると共に、インバータ21の上側に強電モジュール22を配置している。しかしながら、これに限らず、例えば、インバータ21と強電モジュール22を同一のハウジング内に収容して一体化してもよいし、強電モジュール22の上側にインバータ21を配置してもよい。また、強電モジュール22内のDC/DCコンバータと充電器とを分離してもよい。いずれであっても、インバータ、DC/DCコンバータ、充電器を含み、走行駆動源となるモータ駆動ユニット10に駆動電流を供給する装置群を強電ユニット20とする。
【0063】
また、実施例1では、受電部である充電ポート40に、図示しない外部電源を接続することでバッテリパック30の充電を行うが、これに限らない。受電部としてコイルを有し、給電側の1次コイルに磁気結合させることで給電側から受電側に非接触で電力を伝送する電磁誘導型の非接触給電装置であってもよい。
【0064】
さらに、実施例1では、充電ポート40を、モータルーム2の前部に配置したがこれに限らず、車両側面に臨むように配置してもよい。さらに、モータルーム2を車両前部ではなく、例えば車両後部に区画形成してもよい。
【0065】
そして、実施例1では、急速充電ハーネス53及び普通充電ハーネス54は、図2や図3に示すように、充電ポート40に直接接続されている。しかしながら、各充電ハーネス53,54の保守性能を向上するために、充電ポート40に繋がる充電ハーネスの前側部分とその後側部分とを着脱可能に接続する中間コネクタを設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 電気自動車
2 モータルーム
3 車体フロア
4 ダッシュパネル
10 モータ駆動ユニット
20 強電ユニット
21 インバータ
21a インバータハウジング
21b インバータ背面(ユニット背面)
21c ハーネス退避凹部
22 強電モジュール
23 強電モジュールハウジング
24 強電モジュール背面(ユニット背面)
25 ハーネス接続凹部
25a 庇内面
26 充放電ハーネス接続端子
27a 急速充電ハーネス接続端子
27b 普通充電ハーネス接続端子
30 バッテリパック
40 充電ポート
41 急速充電ポート
42 普通充電ポート
51 充放電ハーネス
52 充電ハーネス
53 急速充電ハーネス
54 普通充電ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータルームに配置し、走行駆動源となるモータ駆動ユニットに駆動電流を供給する強電ユニットと、車体フロアの下部に配置したバッテリパックを、充放電ハーネスを介して接続する電気自動車において、
前記強電ユニットは、前記モータルームと前記車体フロアの間に起立するダッシュパネルに対向したユニット背面と、
前記ユニット背面から前記強電ユニットの内部に向かって陥没し、その内側に前記充放電ハーネスの一端を接続する充放電ハーネス接続端子を設けたハーネス接続凹部と、
を備えたことを特徴とする電気自動車の充放電ハーネス配索構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車の充放電ハーネス配索構造において、
前記ハーネス接続凹部は、車両下方に臨む庇内面を有し、
前記充放電ハーネス接続端子は、前記庇内面に下向きに設けたことを特徴とする電気自動車の充放電ハーネス配索構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された電気自動車の充放電ハーネス配索構造において、
前記強電ユニットは、前記ハーネス接続凹部の下方領域に、前記ユニット背面から前記強電ユニットの内部に向かって陥没し、前記充放電ハーネスを収容するハーネス退避凹部を備えたことを特徴とする電気自動車の充放電ハーネス配索構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された電気自動車の充放電ハーネス配索構造において、
前記強電ユニットと、前記バッテリパックに充電する外部電力を入力する受電部を、充電ハーネスを介して接続し、
前記ハーネス接続凹部は、前記充電ハーネスの一端が接続する充電ハーネス接続端子を有することを特徴とする電気自動車の充放電ハーネス配索構造。
【請求項5】
請求項4に記載された電気自動車の充放電ハーネス配索構造において、
前記ハーネス接続凹部は、車両下方に臨む庇内面を有し、
前記充電ハーネス接続端子は、前記庇内面に下向きに設けたことを特徴とする電気自動車の充放電ハーネス配索構造。
【請求項6】
請求項5に記載された電気自動車の充放電ハーネス配索構造において、
前記充電ハーネスは、高電圧の電流が流れる急速充電ハーネスと、前記急速充電ハーネスよりも低電圧の電流が流れる普通充電ハーネスと、を有し、
前記普通充電ハーネスは、前記充放電ハーネスと前記ダッシュパネルとの間を通って前記受電部に向かうように配索されたことを特徴とする電気自動車の充放電ハーネス配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240477(P2012−240477A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110196(P2011−110196)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】