電気自動車の充電システム
【課題】施設における電力ピークの発生を効果的に回避可能な電気自動車の充電システムを提供する。
【解決手段】充電システム1は、施設に設置された充電スタンド3において電気自動車EVに充電するものであって、充電スタンドにて電気自動車を充電するために必要な充電量から施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、この予測部が予測した施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、この選択肢決定部にて決定された選択肢を電気自動車の利用者に提示する提示部とを備える。
【解決手段】充電システム1は、施設に設置された充電スタンド3において電気自動車EVに充電するものであって、充電スタンドにて電気自動車を充電するために必要な充電量から施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、この予測部が予測した施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、この選択肢決定部にて決定された選択肢を電気自動車の利用者に提示する提示部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗等の充電可能施設において電気自動車に充電を行う充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境問題から電気自動車の普及が望まれている。この場合、電気自動車への充電インフラの整備は必須であり、その一環として、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ショッピングセンタ等の店舗や病院等の施設に充電スタンドを設置し、電気自動車に充電するシステムの開発が行われている。
【0003】
その際、店舗等の施設に設置されている充電器の空き数や充電に要する時間を当該店舗に出向かずに知ることができる車載用ナビゲーション装置も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−164050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、店舗等の施設における消費電力量は、気温や湿度等の環境により大きく変化し、時間帯によっては電気自動車を充電することによって電力ピークが発生してしまう。一般に、電力会社との契約により電気料金は基本料金と電力量料金から算出される。この基本料金は、予め定められたデマンド時間毎の施設全体の消費電力量の積算値の最大値(最大デマンド)に基づいて決定されるため、ピークカットレベル(目標値)を超える電力消費が予想されるときには、消費電力量のピーク、即ち、電力ピークの発生を回避しなければならない。
【0006】
しかしながら、上記のようなナビゲーション装置では、当該店舗の消費電力量についてまでは考慮されておらず、時間帯によっては電気自動車の充電によって電力ピークが発生してしまう危険性があった。
【0007】
また、当該施設において電力ピークの発生を回避するために、電気自動車への単位時間当たりの充電量を抑制するなどのデマンド制御を利用者の関知しないところで行ってしまうと、利便性を著しく損ねると共に、利用者に不快感を与えてしまう可能性が高い。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、施設における電力ピークの発生を効果的に回避可能な電気自動車の充電システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の充電システムは、施設に設置された充電スタンドにおいて電気自動車に充電するものであって、充電スタンドにて電気自動車を充電するために必要な充電量から施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、この予測部が予測した施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、この選択肢決定部にて決定された選択肢を電気自動車の利用者に提示する提示部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の電気自動車の充電システムは、上記において選択肢決定部が、複数の選択肢に対して優先順位と利用者に対する付加価値を決定すると共に、提示部は、優先順位と付加価値とを選択肢と合わせて利用者に提示することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の電気自動車の充電システムは、上記において選択肢決定部が、電力ピークの回避に対する有効性、及び/又は、利用者の利便性に基づいて優先順位を決定することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の電気自動車の充電システムは、請求項2又は請求項3の発明において選択肢決定部が、優先順位が高い選択肢程、高い付加価値を設定することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の電気自動車の充電システムは、請求項2乃至請求項4の発明において選択肢決定部が、充電量を調整して電気自動車の充電を行う充電方法と、電力ピークが発生する期間を回避して電気自動車の充電を行う充電方法を選択肢に含めると共に、電力ピークが発生する期間の長さに応じてそれらの優先順位を決定することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明の電気自動車の充電システムは、上記各発明において電気自動車の電池残量から到達可能な系列施設を検索し、当該系列施設において電気自動車を充電した場合でも電力ピークが発生しないときに当該系列施設への誘導情報を生成する誘導情報生成部を更に備え、選択肢決定部は、誘導情報生成部から誘導情報を入手した場合に、系列施設へ誘導する充電方法を選択肢に含めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施設に設置された充電スタンドにおいて電気自動車に充電する充電システムにおいて、充電スタンドにて電気自動車を充電するために必要な充電量から施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、この予測部が予測した施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、この選択肢決定部にて決定された選択肢を電気自動車の利用者に提示する提示部とを備えているので、複数の充電方法の何れかを利用者に選択させることで、利用者の利便性を損なうこと無く、且つ、利用者に不快感を与えること無く、当該施設における電力ピークの発生を回避することが可能となる。
【0016】
この場合、それに加えて請求項2の発明の如く選択肢決定部が、複数の選択肢に対して優先順位と利用者に対する付加価値を決定すると共に、提示部が、優先順位と付加価値とを選択肢と合わせて利用者に提示するようにすれば、例えば請求項3の発明の如く電力ピークの回避に対する有効性、及び/又は、利用者の利便性に基づいて優先順位を決定し、請求項4の発明の如く優先順位が高い選択肢程、高い付加価値を選択肢決定部が設定するようにすることで、電力ピークの回避や利用者利便性により有効な充電方法を利用者が選択するようになる。これにより、より一層円滑に施設での電力ピークの発生を回避することが可能となる。
【0017】
また、請求項5の発明の如く選択肢決定部が、充電量を調整して電気自動車の充電を行う充電方法と、電力ピークが発生する期間を回避して電気自動車の充電を行う充電方法を選択肢に含めると共に、電力ピークが発生する期間の長さに応じてそれらの優先順位を決定するようにすれば、施設での電力ピークの発生をより効果的に回避しながら、利用者の利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0018】
更に、請求項6の発明の如く電気自動車の電池残量から到達可能な系列施設を検索し、当該系列施設において電気自動車を充電した場合でも電力ピークが発生しないときに当該系列施設への誘導情報を生成する誘導情報生成部を更に備え、選択肢決定部が、誘導情報生成部から誘導情報を入手した場合に、系列施設へ誘導する充電方法を選択肢に含めるようにすれば、移動可能な電池残量の電気自動車を他の系列施設に振り向けることが可能となる。これにより、一層確実に電力ピークの発生を回避することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した一実施例の電気自動車の充電システムの概略構成図である。
【図2】図1に示した統合コントローラと集中管理サーバとの間でやり取りされるデータを説明する図である。
【図3】図1の統合コントローラが決定する充電方法の選択肢を示す図である。
【図4】図1の統合コントローラが決定する選択肢の優先順位を示す図である。
【図5】図1の統合コントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図6】図1の統合コントローラの動作を説明するもう一つのフローチャートである。
【図7】店舗において予想される電力ピークの発生時間を示す図である。
【図8】同じく店舗において予想される電力ピークの発生時間を示す図である。
【図9】図1の統合コントローラの動作を説明する更にもう一つのフローチャートである。
【図10】図1の集中管理サーバの動作を説明するフローチャートである。
【図11】図3の選択肢Aが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【図12】図3の選択肢Bが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【図13】図3の選択肢Cが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【図14】図3の選択肢Dが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の実施例ではスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗(施設)M1、M2に来店した利用者(顧客)の電気自動車EVに対して、店舗M1、M2の駐車場等に設置された充電スタンド3にて充電を行うものとする。また、以下の本発明において電気自動車とはエンジンを備えず、蓄電池と走行用モータを備えて蓄電池からの給電により走行用モータにて走行する純粋な電気自動車の他、エンジンと走行用モータ及び蓄電池を備え、エンジンにて蓄電池への充電を行い、走行用モータにて走行する、或いは、エンジンと走行用モータの併用にて走行するが、外部電源から蓄電池への充電が可能であるハイブリッド自動車も含むものとする。
【0021】
図1において、実施例の充電システム1は、系列(チェーン)の店舗(施設)M1、M2にそれぞれ設置されて各店舗内の全電力を管理する統合コントローラ(施設側制御手段)2と、各店舗M1、M2の駐車場等に設置されて電気自動車EVに充電する充電手段としての充電スタンド3と、当該店舗チェーンの例えば全店舗の電力を管理する集中管理サーバ(管理側制御手段)4等から構成されている。そして、統合コントローラ2は本発明の予測部、選択肢決定部を構成し、集中管理サーバ4は本発明の誘導情報生成部を構成する。また、充電スタンド3は本発明の提示部を構成するものである。
【0022】
各店舗M1、M2の統合コントローラ2は、インターネットを介して集中管理サーバ4とデータの授受を行う。充電スタンド3は当該店舗の統合コントローラ2に接続され、充電器を有している。各統合コントローラ2は自らの店舗M1、又は、M2に設置された各機器(ショーケースや空気調和機、照明、充電スタンド3)の運転を管理しており、自らの店舗M1、又は、M2における消費電力量が目標値(ピークカットレベル)を超えないようにそれぞれの機器を管理している。集中管理サーバ4は例えば当該店舗チェーンの本部等に設置され、全系列店舗M1、M2における消費電力量を監視している。
【0023】
また、充電スタンド3には図1に拡大して示すようにカラー液晶ディスプレイ等から構成される表示部6と、スイッチから構成される入力部7と、電気自動車EVの蓄電池に着脱可能に接続される接続部8が設けられている。電気自動車EVの利用者が接続部8を自身の電気自動車EVに接続すると、当該電気自動車EVの電池残量が充電スタンド3に読み取られ、統合コントローラ2に送信される。また、入力部7より利用者が希望する充電量が入力されると、これも充電スタンド3から統合コントローラ2に送信される(図2)。
【0024】
尚、実施例では充電スタンド3にて利用者が希望する充電量(例えば満充電、3/4充電、1/2充電等)を入力部7より入力する方式で説明するが、それに限らず、充電スタンド3から送信された電池残量から満充電にするのに必要な充電量を自動的に統合コントローラ2が算出するようにしても良い。
【0025】
統合コントローラ2は、充電スタンド3から送信された電池残量及び希望の充電量を集中管理サーバ4に送信し、集中管理サーバ4からは誘導情報としての後述する他店舗情報(場所:位置情報)が統合コントローラ2に送信される。統合コントローラ2はこれを受けて自らの店舗M1、又は、M2において発生する電力ピーク、即ち、店舗における消費電力量が目標値(ピークカットレベル)を超えることを回避するために後述する充電方法の選択肢を決定し、充電スタンド3に送信する(図2)。充電スタンド3は統合コントローラ2から送信された選択肢や後述する付加価値を表示部6に表示して利用者に提示する。利用者は表示部6に表示された選択肢のうちの何れかの充電方法を選択して後述する如く充電を開始し、若しくは待機し、或いは、他店舗に移動することになる。
【0026】
次に、図3は統合コントローラ2が決定する充電方法の複数の選択肢の一例を示している。選択肢Aは単位時間当たりの充電量を多くして電気自動車EVの蓄電池を急速に充電する急速充電、選択肢Bは単位時間当たりの充電量を少なく調整しながら充電を行う調整充電、選択肢Cは店舗M1、M2で電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う待機充電、選択肢Dは系列の他店舗(店舗M1に対する例えば店舗M2)へ誘導する他店舗誘導充電の四つである。
【0027】
そして、図4は電気自動車EVの電池残量と電力ピーク時間に応じて統合コントローラ2が決定する各選択肢A〜Dの優先順位の一例を示している。優先順位は、基本的には電力ピークの回避に対する有効性、及び(/又は)、利用者の利便性に基づいて統合コントローラ2が決定するものであるが、詳細は後述する。
【0028】
また、統合コントローラ2は選択肢に優先順位をつけて表示部6に表示するのに加えて、各選択肢に対応して利用者に対する付加価値も併せて表示する。各統合コントローラ2は、前述したように自らの店舗M1、又は、M2において電力ピークが発生することを回避するために充電方法の選択肢を利用者に提示するものであるから、優先順位の高い選択肢は、充電を希望する利用者にとっては当然に不便なものとなる。即ち、前記選択肢Aであれば利用者には便利であるが、店舗にとっては消費電力量が増大するため、電力ピークが発生し易くなる。一方、前記選択肢Bでは充電に時間がかかるため、退店時までの充電量は希望する値に到達しない場合もある。また、前記選択肢Cの場合は電力ピークが発生する時間だけ充電を待たねばならず、同様に充電量が希望に満たない場合も生じる。更に、前記選択肢Dの場合は他店舗への移動を要することになるため、統合コントローラ2は、その見返りとしての利用者に利益となる付加価値を各選択肢につける。
【0029】
このような理由から、付加価値は優先順位の高い選択肢程、その価値が高いものとなる。付加価値の例としては、(1):当該充電方法の選択により削減することができた電気代(円)×一定の比率(予想される電力ピークの値と実際の消費電力量の差から算出する)、或いは、(2):他店舗までの距離を走行した場合にかかる電気代(円)、等が考えられる。
【0030】
そして、付加価値の高さについては、上記(1)の場合の比率を優先順位が高い程高くする、或いは、他店舗誘導充電Dについては、(1)に加えて(2)を追加する等の操作によってその価値の高低をつけることになる。利用者に不便となる選択肢(優先順位の高い選択肢)程、付加価値を高くすることで、電力ピークの発生をより効果的に回避できるようにする。尚、他店舗誘導充電Dの場合には更に、付加価値を誘導した店舗側が請け負うようにしても良く、その場合には付加価値はチェーン店舗内でどこでも利用可能とすれば良い。
【0031】
また、付加価値は充電に要する費用でつけるだけでなく、当該店舗M1、M2での商品購入の際の特典であっても良い。更に、その費用は所謂ネガワット制度から得られる費用で運用することも可能である。
【0032】
次に、図5以降のフローチャートを参照しながら、実施例の充電システム1の実際の動作について説明する。利用者が電気自動車EVで例えば店舗M1に到着し、充電スタンド3の接続部8を電気自動車EVに接続する。そして、入力部7を用いて希望する充電量、例えば満充電を入力したものとする。充電スタンド3は電気自動車EVが接続された場合、自動的に当該電気自動車EVの蓄電池の電池残量を読み取り、入力された充電量と共に統合コントローラ2に送信する。
【0033】
統合コントローラ2は、図5のステップS1で充電スタンド3から充電量と電池残量の情報を受信する。次に、ステップS2で受信した利用者が希望する充電量と自らが監視している当該店舗M1の消費電力量の推移から、充電スタンド3において当該電気自動車EVの充電を行った場合、店舗全体の消費電力量が目標値を超える電力ピークが発生するか否かを予測する。
【0034】
そして、充電量が電力ピークにひびく量では無い場合、即ち、当該電気自動車EVに充電を行っても電力ピークが発生する危険性が無い場合、統合コントローラ2はステップS3に進んで充電開始の情報を充電スタンド3に送信する。充電スタンド3はこれを受けて接続部8が接続されている電気自動車EVの蓄電池に対し、充電器を用いて充電を行う。
【0035】
一方、ステップS2で電力ピークが発生すると予測される場合、統合コントローラ2はステップS4に進んで当該電気自動車EVの電池残量が有るか否か判断する。そして、充電スタンド3から受信した情報から電池残量が無い場合、即ち、電気自動車EVの蓄電池が放電し切っている場合、若しくは、残量が僅かしか無い場合にはステップS5に進んで選択肢の設定を行う。
【0036】
また、ステップS4で電池残量が有る場合、統合コントローラ2はステップS7に進んで集中管理サーバ4による最寄り店舗検索データ取得制御を行う。このステップS7で行われる統合コントローラ2と集中管理サーバ4の動作を図9と図10に示されている。即ち、先ず統合コントローラ2は図9のステップS12で電池残量と充電量を集中管理サーバ4に送信する。集中管理サーバ4は図10のステップS16で統合コントローラ2から電池残量と充電量を受信すると、ステップS17で受信した電池残量より走行可能距離を計算する。そして、当該店舗M1から算出した走行可能距離内に誘導可能な他の系列店舗が有るか否かを検索する。
【0037】
走行可能距離内の他の系列店舗が無い場合、集中管理サーバ4はステップS19に進んで該当の店舗無しの情報を送信データに入れ、ステップS20で統合コントローラ2に当該情報を送信する。この場合は前述した選択肢D:他店舗誘導充電は提示されなくなる。
【0038】
一方、ステップS18で走行可能距離内に誘導可能な他の系列店舗(例えばM2)が検索された場合、当該店舗M2の充電スタンド3において当該電気自動車EVの充電を行った場合、店舗(M2)全体の消費電力量が目標値を超える電力ピークが発生するか否かを予測する。そして、電力ピークが発生すると予測した場合、集中管理サーバ4はステップS19に進んでやはり該当の店舗無しの情報を送信データに入れ、ステップS20で統合コントローラ2に当該情報を送信する。
【0039】
図10のステップS21で電力ピークが発生しないと予測された場合、集中管理サーバ4はステップS22に進んで該当する店舗M2の位置情報(場所)を送信データに入れ、ステップS20で統合コントローラ2に当該情報を送信する。尚、走行可能距離内の他の系列店舗が複数存在する場合には、全ての店舗を対象としても良いし、店舗M1から最寄りの一店舗のみを対象としても良い。本実施例では便宜上、走行可能距離内にある最寄りの店舗M2に誘導する場合について説明しているが、これに限られるものでは無く、走行可能距離内の複数の店舗から利用者に選択させるようにしても良い。
【0040】
他方、店舗M1の統合コントローラ2は、集中管理サーバ4から他店舗検索結果のデータの受信を待っており、受信した場合はステップS13で誘導可能な他店舗が検索されたか否か判断し、該当店舗無し(ステップS19)であった場合にはステップS14に進んで選択肢にD:他店舗誘導充電の情報は入れない。
【0041】
一方、誘導可能な他店舗M2が検索できた場合(ステップS22)、ステップS15に進んで優先順位の最上位にD:他店舗誘導充電を設定する(実際には図5のステップS5で行う)。
【0042】
次に、図5のステップS5における選択肢の設定動作について説明する。上述した如く、電気自動車EVに電池残量があって他店舗に誘導可能である場合には、統合コントローラ2はD:他店舗誘導充電を選択肢に含めて、且つ、優先順位は最上位とする(図4の左から一つめと二つめの列)。
【0043】
次に、予測される電力ピーク時間の長さを判定する。即ち、統合コントローラ2は図6のステップS8で電力ピークが長時間発生するか否か判断する。図7に示すようにデマンド時限(各棒グラフ)において消費電力量が目標値を超える電力ピークが発生する時間が長い場合(所定時間以上の場合)、統合コントローラ2は図6のステップS11に進んで充電方法の選択肢の一つである選択肢B:単位時間当たりの充電量を少なく調整しながら充電を行う調整充電を、選択肢C:店舗で電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う待機充電より上位に設定する。
【0044】
電力ピークが発生する時間が長い場合、選択肢Cでは利用者を長時間待たせることになり、利便性が著しく低下するので、調整しながら充電する選択肢Bを最上位の選択肢Dの次の優先順位とする。これにより、利用者の利便性を担保する。
【0045】
一方、図8に示すように電力ピークが発生する時間が短い場合(所定時間未満の場合)、統合コントローラ2は図6のステップS9に進んで充電方法の選択肢の一つである選択肢C:店舗で電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う待機充電をB:単位時間当たりの充電量を少なく調整しながら充電を行う調整充電より上位に設定する。
【0046】
電力ピークが発生する時間が短い場合には、その間待機してもらってその後急速充電した方が利用者の利便性にかなうことになる。そこで、電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う選択肢Cを最上位の選択肢Dの次の優先順位とする。これによって利用者の利便性を担保する。
【0047】
次に、統合コントローラ2はステップS10で前述した利用者に対する付加価値を各選択肢に割り振る。この場合、付加価値は前述したように優先順位の高い選択肢程、その価値が高いものとする。そして、最後に選択肢A:急速充電を優先順位の最下位に設定する。
【0048】
統合コントローラ2は、このようにして充電方法の複数の選択肢を設定した後、図5のステップS6で当該選択肢の情報を充電スタンド3に送信する。充電スタンド3は受信した選択肢を優先順位に基づいて表示部6に表示し、且つ、各選択肢に対応して付加価値を同じく表示部6に表示する。尚、その際表示部6には、例えば「省エネに取り組んでいる」旨の理由表示を行い、利用者に協力を仰ぐと良い。
【0049】
図4はこのようにして設定され、表示部6にて利用者に提示される選択肢の優先順位を整理して示している。即ち、電気自動車EVの電池残量がある場合、予想される電力ピークの発生時間が長い場合には優先順位の1位は選択肢D、2位は選択肢B、3位は選択肢C、4位は選択肢Aとなり、電力ピークの発生時間が短い場合には優先順位の1位は選択肢D、2位は選択肢C、3位は選択肢B、4位は選択肢Aとなる。また、電池残量が無い場合、予想される電力ピークの発生時間が長い場合には優先順位の1位は選択肢B、2位は選択肢C、3位は選択肢Aとなり、電力ピークの発生時間が短い場合には優先順位の1位は選択肢C、2位は選択肢B、3位は選択肢Aとなる。
【0050】
利用者は充電スタンド3の表示部6に優先順位をつけて表示された各選択肢とそれらに対する付加価値を見て充電方法を選択する。図11は選択肢A:急速充電が選択された場合を示している。優先順位最下位の選択肢Aが利用者によって選択された場合、電力ピークが発生すると考えられるので、統合コントローラ2は当該店舗M1に設置された設備機器の消費電力を制御し、消費電力量を目標値未満に抑制するデマンド制御を実行する。この図の例では店舗M1の空調設定温度を例えば+28℃に上昇させている。それにより、店舗M1における電力ピークの発生を回避する。
【0051】
選択肢Bが利用者によって選択された場合、統合コントローラ2は充電スタンド3による電気自動車EVの単位時間当たりの充電量を調整(抑制)することにより、店舗M1における電力ピークの発生を回避する。
【0052】
選択肢Cが利用者によって選択された場合、統合コントローラ2は予想される電力ピークの発生時間帯を避け、当該時間帯が経過するまで充電を待機する。そして、電力ピークが発生すると予想される時間帯が経過した後、充電スタンド3により電気自動車EVに急速充電することにより、店舗M1における電力ピークの発生を回避する。
【0053】
選択肢Dが利用者によって選択され、他店舗に誘導された場合、最大の付加価値を利用者に提供する。この付加価値は前述したもので、この例示では200円割引のクーポン(店舗での商品購入や充電に利用可)を示している。
【0054】
尚、上記実施例における電気自動車の充電は、店舗において有料で充電する場合と、無料、即ち、来店顧客に対するサービスで充電する場合の双方を含むものとする。また、実施例では店舗における充電方法の提示について説明したが、それに限らず、充電スタンドのみの有料の充電施設でも本発明は有効である。
【0055】
また、例示した充電方法の選択肢や付加価値についても、それらに限定されるものでは無く、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々設定可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 充電システム
2 統合コントローラ
3 充電スタンド
4 集中管理サーバ
6 表示部
7 入力部
8 接続部
EV 電気自動車
M1、M2 店舗
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗等の充電可能施設において電気自動車に充電を行う充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境問題から電気自動車の普及が望まれている。この場合、電気自動車への充電インフラの整備は必須であり、その一環として、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ショッピングセンタ等の店舗や病院等の施設に充電スタンドを設置し、電気自動車に充電するシステムの開発が行われている。
【0003】
その際、店舗等の施設に設置されている充電器の空き数や充電に要する時間を当該店舗に出向かずに知ることができる車載用ナビゲーション装置も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−164050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、店舗等の施設における消費電力量は、気温や湿度等の環境により大きく変化し、時間帯によっては電気自動車を充電することによって電力ピークが発生してしまう。一般に、電力会社との契約により電気料金は基本料金と電力量料金から算出される。この基本料金は、予め定められたデマンド時間毎の施設全体の消費電力量の積算値の最大値(最大デマンド)に基づいて決定されるため、ピークカットレベル(目標値)を超える電力消費が予想されるときには、消費電力量のピーク、即ち、電力ピークの発生を回避しなければならない。
【0006】
しかしながら、上記のようなナビゲーション装置では、当該店舗の消費電力量についてまでは考慮されておらず、時間帯によっては電気自動車の充電によって電力ピークが発生してしまう危険性があった。
【0007】
また、当該施設において電力ピークの発生を回避するために、電気自動車への単位時間当たりの充電量を抑制するなどのデマンド制御を利用者の関知しないところで行ってしまうと、利便性を著しく損ねると共に、利用者に不快感を与えてしまう可能性が高い。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、施設における電力ピークの発生を効果的に回避可能な電気自動車の充電システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の充電システムは、施設に設置された充電スタンドにおいて電気自動車に充電するものであって、充電スタンドにて電気自動車を充電するために必要な充電量から施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、この予測部が予測した施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、この選択肢決定部にて決定された選択肢を電気自動車の利用者に提示する提示部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の電気自動車の充電システムは、上記において選択肢決定部が、複数の選択肢に対して優先順位と利用者に対する付加価値を決定すると共に、提示部は、優先順位と付加価値とを選択肢と合わせて利用者に提示することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の電気自動車の充電システムは、上記において選択肢決定部が、電力ピークの回避に対する有効性、及び/又は、利用者の利便性に基づいて優先順位を決定することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の電気自動車の充電システムは、請求項2又は請求項3の発明において選択肢決定部が、優先順位が高い選択肢程、高い付加価値を設定することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の電気自動車の充電システムは、請求項2乃至請求項4の発明において選択肢決定部が、充電量を調整して電気自動車の充電を行う充電方法と、電力ピークが発生する期間を回避して電気自動車の充電を行う充電方法を選択肢に含めると共に、電力ピークが発生する期間の長さに応じてそれらの優先順位を決定することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明の電気自動車の充電システムは、上記各発明において電気自動車の電池残量から到達可能な系列施設を検索し、当該系列施設において電気自動車を充電した場合でも電力ピークが発生しないときに当該系列施設への誘導情報を生成する誘導情報生成部を更に備え、選択肢決定部は、誘導情報生成部から誘導情報を入手した場合に、系列施設へ誘導する充電方法を選択肢に含めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施設に設置された充電スタンドにおいて電気自動車に充電する充電システムにおいて、充電スタンドにて電気自動車を充電するために必要な充電量から施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、この予測部が予測した施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、この選択肢決定部にて決定された選択肢を電気自動車の利用者に提示する提示部とを備えているので、複数の充電方法の何れかを利用者に選択させることで、利用者の利便性を損なうこと無く、且つ、利用者に不快感を与えること無く、当該施設における電力ピークの発生を回避することが可能となる。
【0016】
この場合、それに加えて請求項2の発明の如く選択肢決定部が、複数の選択肢に対して優先順位と利用者に対する付加価値を決定すると共に、提示部が、優先順位と付加価値とを選択肢と合わせて利用者に提示するようにすれば、例えば請求項3の発明の如く電力ピークの回避に対する有効性、及び/又は、利用者の利便性に基づいて優先順位を決定し、請求項4の発明の如く優先順位が高い選択肢程、高い付加価値を選択肢決定部が設定するようにすることで、電力ピークの回避や利用者利便性により有効な充電方法を利用者が選択するようになる。これにより、より一層円滑に施設での電力ピークの発生を回避することが可能となる。
【0017】
また、請求項5の発明の如く選択肢決定部が、充電量を調整して電気自動車の充電を行う充電方法と、電力ピークが発生する期間を回避して電気自動車の充電を行う充電方法を選択肢に含めると共に、電力ピークが発生する期間の長さに応じてそれらの優先順位を決定するようにすれば、施設での電力ピークの発生をより効果的に回避しながら、利用者の利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0018】
更に、請求項6の発明の如く電気自動車の電池残量から到達可能な系列施設を検索し、当該系列施設において電気自動車を充電した場合でも電力ピークが発生しないときに当該系列施設への誘導情報を生成する誘導情報生成部を更に備え、選択肢決定部が、誘導情報生成部から誘導情報を入手した場合に、系列施設へ誘導する充電方法を選択肢に含めるようにすれば、移動可能な電池残量の電気自動車を他の系列施設に振り向けることが可能となる。これにより、一層確実に電力ピークの発生を回避することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した一実施例の電気自動車の充電システムの概略構成図である。
【図2】図1に示した統合コントローラと集中管理サーバとの間でやり取りされるデータを説明する図である。
【図3】図1の統合コントローラが決定する充電方法の選択肢を示す図である。
【図4】図1の統合コントローラが決定する選択肢の優先順位を示す図である。
【図5】図1の統合コントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図6】図1の統合コントローラの動作を説明するもう一つのフローチャートである。
【図7】店舗において予想される電力ピークの発生時間を示す図である。
【図8】同じく店舗において予想される電力ピークの発生時間を示す図である。
【図9】図1の統合コントローラの動作を説明する更にもう一つのフローチャートである。
【図10】図1の集中管理サーバの動作を説明するフローチャートである。
【図11】図3の選択肢Aが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【図12】図3の選択肢Bが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【図13】図3の選択肢Cが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【図14】図3の選択肢Dが選択されたときの統合コントローラの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の実施例ではスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗(施設)M1、M2に来店した利用者(顧客)の電気自動車EVに対して、店舗M1、M2の駐車場等に設置された充電スタンド3にて充電を行うものとする。また、以下の本発明において電気自動車とはエンジンを備えず、蓄電池と走行用モータを備えて蓄電池からの給電により走行用モータにて走行する純粋な電気自動車の他、エンジンと走行用モータ及び蓄電池を備え、エンジンにて蓄電池への充電を行い、走行用モータにて走行する、或いは、エンジンと走行用モータの併用にて走行するが、外部電源から蓄電池への充電が可能であるハイブリッド自動車も含むものとする。
【0021】
図1において、実施例の充電システム1は、系列(チェーン)の店舗(施設)M1、M2にそれぞれ設置されて各店舗内の全電力を管理する統合コントローラ(施設側制御手段)2と、各店舗M1、M2の駐車場等に設置されて電気自動車EVに充電する充電手段としての充電スタンド3と、当該店舗チェーンの例えば全店舗の電力を管理する集中管理サーバ(管理側制御手段)4等から構成されている。そして、統合コントローラ2は本発明の予測部、選択肢決定部を構成し、集中管理サーバ4は本発明の誘導情報生成部を構成する。また、充電スタンド3は本発明の提示部を構成するものである。
【0022】
各店舗M1、M2の統合コントローラ2は、インターネットを介して集中管理サーバ4とデータの授受を行う。充電スタンド3は当該店舗の統合コントローラ2に接続され、充電器を有している。各統合コントローラ2は自らの店舗M1、又は、M2に設置された各機器(ショーケースや空気調和機、照明、充電スタンド3)の運転を管理しており、自らの店舗M1、又は、M2における消費電力量が目標値(ピークカットレベル)を超えないようにそれぞれの機器を管理している。集中管理サーバ4は例えば当該店舗チェーンの本部等に設置され、全系列店舗M1、M2における消費電力量を監視している。
【0023】
また、充電スタンド3には図1に拡大して示すようにカラー液晶ディスプレイ等から構成される表示部6と、スイッチから構成される入力部7と、電気自動車EVの蓄電池に着脱可能に接続される接続部8が設けられている。電気自動車EVの利用者が接続部8を自身の電気自動車EVに接続すると、当該電気自動車EVの電池残量が充電スタンド3に読み取られ、統合コントローラ2に送信される。また、入力部7より利用者が希望する充電量が入力されると、これも充電スタンド3から統合コントローラ2に送信される(図2)。
【0024】
尚、実施例では充電スタンド3にて利用者が希望する充電量(例えば満充電、3/4充電、1/2充電等)を入力部7より入力する方式で説明するが、それに限らず、充電スタンド3から送信された電池残量から満充電にするのに必要な充電量を自動的に統合コントローラ2が算出するようにしても良い。
【0025】
統合コントローラ2は、充電スタンド3から送信された電池残量及び希望の充電量を集中管理サーバ4に送信し、集中管理サーバ4からは誘導情報としての後述する他店舗情報(場所:位置情報)が統合コントローラ2に送信される。統合コントローラ2はこれを受けて自らの店舗M1、又は、M2において発生する電力ピーク、即ち、店舗における消費電力量が目標値(ピークカットレベル)を超えることを回避するために後述する充電方法の選択肢を決定し、充電スタンド3に送信する(図2)。充電スタンド3は統合コントローラ2から送信された選択肢や後述する付加価値を表示部6に表示して利用者に提示する。利用者は表示部6に表示された選択肢のうちの何れかの充電方法を選択して後述する如く充電を開始し、若しくは待機し、或いは、他店舗に移動することになる。
【0026】
次に、図3は統合コントローラ2が決定する充電方法の複数の選択肢の一例を示している。選択肢Aは単位時間当たりの充電量を多くして電気自動車EVの蓄電池を急速に充電する急速充電、選択肢Bは単位時間当たりの充電量を少なく調整しながら充電を行う調整充電、選択肢Cは店舗M1、M2で電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う待機充電、選択肢Dは系列の他店舗(店舗M1に対する例えば店舗M2)へ誘導する他店舗誘導充電の四つである。
【0027】
そして、図4は電気自動車EVの電池残量と電力ピーク時間に応じて統合コントローラ2が決定する各選択肢A〜Dの優先順位の一例を示している。優先順位は、基本的には電力ピークの回避に対する有効性、及び(/又は)、利用者の利便性に基づいて統合コントローラ2が決定するものであるが、詳細は後述する。
【0028】
また、統合コントローラ2は選択肢に優先順位をつけて表示部6に表示するのに加えて、各選択肢に対応して利用者に対する付加価値も併せて表示する。各統合コントローラ2は、前述したように自らの店舗M1、又は、M2において電力ピークが発生することを回避するために充電方法の選択肢を利用者に提示するものであるから、優先順位の高い選択肢は、充電を希望する利用者にとっては当然に不便なものとなる。即ち、前記選択肢Aであれば利用者には便利であるが、店舗にとっては消費電力量が増大するため、電力ピークが発生し易くなる。一方、前記選択肢Bでは充電に時間がかかるため、退店時までの充電量は希望する値に到達しない場合もある。また、前記選択肢Cの場合は電力ピークが発生する時間だけ充電を待たねばならず、同様に充電量が希望に満たない場合も生じる。更に、前記選択肢Dの場合は他店舗への移動を要することになるため、統合コントローラ2は、その見返りとしての利用者に利益となる付加価値を各選択肢につける。
【0029】
このような理由から、付加価値は優先順位の高い選択肢程、その価値が高いものとなる。付加価値の例としては、(1):当該充電方法の選択により削減することができた電気代(円)×一定の比率(予想される電力ピークの値と実際の消費電力量の差から算出する)、或いは、(2):他店舗までの距離を走行した場合にかかる電気代(円)、等が考えられる。
【0030】
そして、付加価値の高さについては、上記(1)の場合の比率を優先順位が高い程高くする、或いは、他店舗誘導充電Dについては、(1)に加えて(2)を追加する等の操作によってその価値の高低をつけることになる。利用者に不便となる選択肢(優先順位の高い選択肢)程、付加価値を高くすることで、電力ピークの発生をより効果的に回避できるようにする。尚、他店舗誘導充電Dの場合には更に、付加価値を誘導した店舗側が請け負うようにしても良く、その場合には付加価値はチェーン店舗内でどこでも利用可能とすれば良い。
【0031】
また、付加価値は充電に要する費用でつけるだけでなく、当該店舗M1、M2での商品購入の際の特典であっても良い。更に、その費用は所謂ネガワット制度から得られる費用で運用することも可能である。
【0032】
次に、図5以降のフローチャートを参照しながら、実施例の充電システム1の実際の動作について説明する。利用者が電気自動車EVで例えば店舗M1に到着し、充電スタンド3の接続部8を電気自動車EVに接続する。そして、入力部7を用いて希望する充電量、例えば満充電を入力したものとする。充電スタンド3は電気自動車EVが接続された場合、自動的に当該電気自動車EVの蓄電池の電池残量を読み取り、入力された充電量と共に統合コントローラ2に送信する。
【0033】
統合コントローラ2は、図5のステップS1で充電スタンド3から充電量と電池残量の情報を受信する。次に、ステップS2で受信した利用者が希望する充電量と自らが監視している当該店舗M1の消費電力量の推移から、充電スタンド3において当該電気自動車EVの充電を行った場合、店舗全体の消費電力量が目標値を超える電力ピークが発生するか否かを予測する。
【0034】
そして、充電量が電力ピークにひびく量では無い場合、即ち、当該電気自動車EVに充電を行っても電力ピークが発生する危険性が無い場合、統合コントローラ2はステップS3に進んで充電開始の情報を充電スタンド3に送信する。充電スタンド3はこれを受けて接続部8が接続されている電気自動車EVの蓄電池に対し、充電器を用いて充電を行う。
【0035】
一方、ステップS2で電力ピークが発生すると予測される場合、統合コントローラ2はステップS4に進んで当該電気自動車EVの電池残量が有るか否か判断する。そして、充電スタンド3から受信した情報から電池残量が無い場合、即ち、電気自動車EVの蓄電池が放電し切っている場合、若しくは、残量が僅かしか無い場合にはステップS5に進んで選択肢の設定を行う。
【0036】
また、ステップS4で電池残量が有る場合、統合コントローラ2はステップS7に進んで集中管理サーバ4による最寄り店舗検索データ取得制御を行う。このステップS7で行われる統合コントローラ2と集中管理サーバ4の動作を図9と図10に示されている。即ち、先ず統合コントローラ2は図9のステップS12で電池残量と充電量を集中管理サーバ4に送信する。集中管理サーバ4は図10のステップS16で統合コントローラ2から電池残量と充電量を受信すると、ステップS17で受信した電池残量より走行可能距離を計算する。そして、当該店舗M1から算出した走行可能距離内に誘導可能な他の系列店舗が有るか否かを検索する。
【0037】
走行可能距離内の他の系列店舗が無い場合、集中管理サーバ4はステップS19に進んで該当の店舗無しの情報を送信データに入れ、ステップS20で統合コントローラ2に当該情報を送信する。この場合は前述した選択肢D:他店舗誘導充電は提示されなくなる。
【0038】
一方、ステップS18で走行可能距離内に誘導可能な他の系列店舗(例えばM2)が検索された場合、当該店舗M2の充電スタンド3において当該電気自動車EVの充電を行った場合、店舗(M2)全体の消費電力量が目標値を超える電力ピークが発生するか否かを予測する。そして、電力ピークが発生すると予測した場合、集中管理サーバ4はステップS19に進んでやはり該当の店舗無しの情報を送信データに入れ、ステップS20で統合コントローラ2に当該情報を送信する。
【0039】
図10のステップS21で電力ピークが発生しないと予測された場合、集中管理サーバ4はステップS22に進んで該当する店舗M2の位置情報(場所)を送信データに入れ、ステップS20で統合コントローラ2に当該情報を送信する。尚、走行可能距離内の他の系列店舗が複数存在する場合には、全ての店舗を対象としても良いし、店舗M1から最寄りの一店舗のみを対象としても良い。本実施例では便宜上、走行可能距離内にある最寄りの店舗M2に誘導する場合について説明しているが、これに限られるものでは無く、走行可能距離内の複数の店舗から利用者に選択させるようにしても良い。
【0040】
他方、店舗M1の統合コントローラ2は、集中管理サーバ4から他店舗検索結果のデータの受信を待っており、受信した場合はステップS13で誘導可能な他店舗が検索されたか否か判断し、該当店舗無し(ステップS19)であった場合にはステップS14に進んで選択肢にD:他店舗誘導充電の情報は入れない。
【0041】
一方、誘導可能な他店舗M2が検索できた場合(ステップS22)、ステップS15に進んで優先順位の最上位にD:他店舗誘導充電を設定する(実際には図5のステップS5で行う)。
【0042】
次に、図5のステップS5における選択肢の設定動作について説明する。上述した如く、電気自動車EVに電池残量があって他店舗に誘導可能である場合には、統合コントローラ2はD:他店舗誘導充電を選択肢に含めて、且つ、優先順位は最上位とする(図4の左から一つめと二つめの列)。
【0043】
次に、予測される電力ピーク時間の長さを判定する。即ち、統合コントローラ2は図6のステップS8で電力ピークが長時間発生するか否か判断する。図7に示すようにデマンド時限(各棒グラフ)において消費電力量が目標値を超える電力ピークが発生する時間が長い場合(所定時間以上の場合)、統合コントローラ2は図6のステップS11に進んで充電方法の選択肢の一つである選択肢B:単位時間当たりの充電量を少なく調整しながら充電を行う調整充電を、選択肢C:店舗で電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う待機充電より上位に設定する。
【0044】
電力ピークが発生する時間が長い場合、選択肢Cでは利用者を長時間待たせることになり、利便性が著しく低下するので、調整しながら充電する選択肢Bを最上位の選択肢Dの次の優先順位とする。これにより、利用者の利便性を担保する。
【0045】
一方、図8に示すように電力ピークが発生する時間が短い場合(所定時間未満の場合)、統合コントローラ2は図6のステップS9に進んで充電方法の選択肢の一つである選択肢C:店舗で電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う待機充電をB:単位時間当たりの充電量を少なく調整しながら充電を行う調整充電より上位に設定する。
【0046】
電力ピークが発生する時間が短い場合には、その間待機してもらってその後急速充電した方が利用者の利便性にかなうことになる。そこで、電力ピークが発生している間待機した後、急速充電を行う選択肢Cを最上位の選択肢Dの次の優先順位とする。これによって利用者の利便性を担保する。
【0047】
次に、統合コントローラ2はステップS10で前述した利用者に対する付加価値を各選択肢に割り振る。この場合、付加価値は前述したように優先順位の高い選択肢程、その価値が高いものとする。そして、最後に選択肢A:急速充電を優先順位の最下位に設定する。
【0048】
統合コントローラ2は、このようにして充電方法の複数の選択肢を設定した後、図5のステップS6で当該選択肢の情報を充電スタンド3に送信する。充電スタンド3は受信した選択肢を優先順位に基づいて表示部6に表示し、且つ、各選択肢に対応して付加価値を同じく表示部6に表示する。尚、その際表示部6には、例えば「省エネに取り組んでいる」旨の理由表示を行い、利用者に協力を仰ぐと良い。
【0049】
図4はこのようにして設定され、表示部6にて利用者に提示される選択肢の優先順位を整理して示している。即ち、電気自動車EVの電池残量がある場合、予想される電力ピークの発生時間が長い場合には優先順位の1位は選択肢D、2位は選択肢B、3位は選択肢C、4位は選択肢Aとなり、電力ピークの発生時間が短い場合には優先順位の1位は選択肢D、2位は選択肢C、3位は選択肢B、4位は選択肢Aとなる。また、電池残量が無い場合、予想される電力ピークの発生時間が長い場合には優先順位の1位は選択肢B、2位は選択肢C、3位は選択肢Aとなり、電力ピークの発生時間が短い場合には優先順位の1位は選択肢C、2位は選択肢B、3位は選択肢Aとなる。
【0050】
利用者は充電スタンド3の表示部6に優先順位をつけて表示された各選択肢とそれらに対する付加価値を見て充電方法を選択する。図11は選択肢A:急速充電が選択された場合を示している。優先順位最下位の選択肢Aが利用者によって選択された場合、電力ピークが発生すると考えられるので、統合コントローラ2は当該店舗M1に設置された設備機器の消費電力を制御し、消費電力量を目標値未満に抑制するデマンド制御を実行する。この図の例では店舗M1の空調設定温度を例えば+28℃に上昇させている。それにより、店舗M1における電力ピークの発生を回避する。
【0051】
選択肢Bが利用者によって選択された場合、統合コントローラ2は充電スタンド3による電気自動車EVの単位時間当たりの充電量を調整(抑制)することにより、店舗M1における電力ピークの発生を回避する。
【0052】
選択肢Cが利用者によって選択された場合、統合コントローラ2は予想される電力ピークの発生時間帯を避け、当該時間帯が経過するまで充電を待機する。そして、電力ピークが発生すると予想される時間帯が経過した後、充電スタンド3により電気自動車EVに急速充電することにより、店舗M1における電力ピークの発生を回避する。
【0053】
選択肢Dが利用者によって選択され、他店舗に誘導された場合、最大の付加価値を利用者に提供する。この付加価値は前述したもので、この例示では200円割引のクーポン(店舗での商品購入や充電に利用可)を示している。
【0054】
尚、上記実施例における電気自動車の充電は、店舗において有料で充電する場合と、無料、即ち、来店顧客に対するサービスで充電する場合の双方を含むものとする。また、実施例では店舗における充電方法の提示について説明したが、それに限らず、充電スタンドのみの有料の充電施設でも本発明は有効である。
【0055】
また、例示した充電方法の選択肢や付加価値についても、それらに限定されるものでは無く、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々設定可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 充電システム
2 統合コントローラ
3 充電スタンド
4 集中管理サーバ
6 表示部
7 入力部
8 接続部
EV 電気自動車
M1、M2 店舗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置された充電スタンドにおいて電気自動車に充電する充電システムであって、
前記充電スタンドにて前記電気自動車を充電するために必要な充電量から前記施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、
該予測部が予測した前記施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための前記電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、
該選択肢決定部にて決定された選択肢を前記電気自動車の利用者に提示する提示部とを備えたことを特徴とする電気自動車の充電システム。
【請求項2】
前記選択肢決定部は、前記複数の選択肢に対して優先順位と前記利用者に対する付加価値を決定すると共に、
前記提示部は、前記優先順位と付加価値とを前記選択肢と合わせて前記利用者に提示することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項3】
前記選択肢決定部は、前記電力ピークの回避に対する有効性、及び/又は、前記利用者の利便性に基づいて前記優先順位を決定することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項4】
前記選択肢決定部は、優先順位が高い前記選択肢程、高い前記付加価値を設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項5】
前記選択肢決定部は、充電量を調整して前記電気自動車の充電を行う充電方法と、前記電力ピークが発生する期間を回避して前記電気自動車の充電を行う充電方法を前記選択肢に含めると共に、前記電力ピークが発生する期間の長さに応じてそれらの優先順位を決定することを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちの何れかに記載の電気自動車の充電システム。
【請求項6】
前記電気自動車の電池残量から到達可能な系列施設を検索し、当該系列施設において前記電気自動車を充電した場合でも前記電力ピークが発生しないときに当該系列施設への誘導情報を生成する誘導情報生成部を備え、
前記選択肢決定部は、前記誘導情報生成部から前記誘導情報を入手した場合に、前記系列施設へ誘導する充電方法を前記選択肢に含めることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の電気自動車の充電システム。
【請求項1】
施設に設置された充電スタンドにおいて電気自動車に充電する充電システムであって、
前記充電スタンドにて前記電気自動車を充電するために必要な充電量から前記施設における消費電力量の推移を予測する予測部と、
該予測部が予測した前記施設における消費電力量が、当該消費電力量の目標値を超える電力ピークが発生する場合に、当該電力ピークを回避するための前記電気自動車の充電方法の選択肢を複数決定する選択肢決定部と、
該選択肢決定部にて決定された選択肢を前記電気自動車の利用者に提示する提示部とを備えたことを特徴とする電気自動車の充電システム。
【請求項2】
前記選択肢決定部は、前記複数の選択肢に対して優先順位と前記利用者に対する付加価値を決定すると共に、
前記提示部は、前記優先順位と付加価値とを前記選択肢と合わせて前記利用者に提示することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項3】
前記選択肢決定部は、前記電力ピークの回避に対する有効性、及び/又は、前記利用者の利便性に基づいて前記優先順位を決定することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項4】
前記選択肢決定部は、優先順位が高い前記選択肢程、高い前記付加価値を設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電気自動車の充電システム。
【請求項5】
前記選択肢決定部は、充電量を調整して前記電気自動車の充電を行う充電方法と、前記電力ピークが発生する期間を回避して前記電気自動車の充電を行う充電方法を前記選択肢に含めると共に、前記電力ピークが発生する期間の長さに応じてそれらの優先順位を決定することを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちの何れかに記載の電気自動車の充電システム。
【請求項6】
前記電気自動車の電池残量から到達可能な系列施設を検索し、当該系列施設において前記電気自動車を充電した場合でも前記電力ピークが発生しないときに当該系列施設への誘導情報を生成する誘導情報生成部を備え、
前記選択肢決定部は、前記誘導情報生成部から前記誘導情報を入手した場合に、前記系列施設へ誘導する充電方法を前記選択肢に含めることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の電気自動車の充電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−94007(P2013−94007A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235841(P2011−235841)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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