説明

電気装置及びその製造方法

【課題】電源アダプターなどの電気装置において、2つのケース半体の合体強度を向上することを目的とする。
【解決手段】電気装置1は第1ケース半体10と第2ケース半体20とを備えている。第1ケース半体10の縁部の端面11と第2ケース半体20の端面21は、互いに溶着されている。また、第1ケース半体10はその内側に被係合部12を有している。第2ケース半体20は、その内側に、第1ケース半体10と第2ケース半体20の合体方向とは反対方向でのそれらの相対移動を規制するように被係合部12に係合している係合部22を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源アダプターなどの電気装置に関し、特に回路基板を収容するケースの強度を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型ゲーム装置や、携帯型のパーソナルコンピュータなどの電子機器が利用されている(例えば、下記特許文献1)。この種の電子機器には、その充電時や使用時に、電源アダプターを通して電力が供給されるものがある。電源アダプターなどの電気装置のケースには、箱形状を半分に割った形状の2つの部材(以下、ケース半体)を合体させることで構成されたものが多くある。2つのケース半体の縁部は、例えば超音波溶着により互いに溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2007/0202956号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶着面の面積は限られるため、溶着だけでは2つのケース半体の合体強度を向上することは難しい。
【0005】
本発明は、電源アダプターなどの電気装置において、2つのケース半体の合体強度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気装置は、樹脂によって形成される箱形状のケースを有する。前記ケースは、互いに合体して当該ケースを構成する第1ケース半体と第2ケース半体とを備えている。前記第1ケース半体と前記第2ケース半体は、それらの縁部に、互いに溶着された端面をそれぞれ有し、前記第1ケース半体はその内側に被係合部を有し、前記第2ケース半体は、その内側に、前記第1ケース半体と前記第2ケース半体の合体方向とは反対方向へそれらの相対移動を規制するように前記被係合部に係合している係合部を有している。本発明によれば、2つの端面を溶着させるだけでなく、係合部と被係合部とを係合させるので、2つのケース半体の合体強度を向上することができる。
【0007】
また、本発明に係る製造方法は、箱形状を有するケースを備え、前記ケースが第1ケース半体と第2ケース半体との合体により構成された電気装置の製造方法である。前記製造方法は、前記第1ケース半体と前記第2ケース半体とを樹脂によって成形する成形工程と、前記成形工程で成形された前記第1ケース半体と前記第2ケース半体とを合体させる合体工程と、を含む。前記成形工程においては、前記第1ケース半体の縁部と前記第2ケース半体の縁部とに、互いに向き合う端面がそれぞれ形成される。また、前記第1ケース半体の前記端面に、前記第2ケース半体の前記端面に向かって突出する融解凸部が形成される。さらに、前記第1ケース半体の内側と前記第2ケース半体の内側とに、前記第1ケース半体と前記第2ケース半体の合体方向とは反対方向でのそれらの相対移動を規制するように互いに係合可能な被係合部と係合部とがそれぞれ形成される。前記合体工程は、前記融解凸部を前記第2ケース半体の前記端面に接触させるとともに、前記係合部と前記被係合部とを係合させる溶着準備工程を含む。前記合体工程は、さらに、前記第1ケース半体の前記端面に形成された前記融解凸部を融解させることにより、前記第1ケース半体の前記端面と前記第2ケース半体の前記端面とを溶着する溶着工程を含む。本発明によれば、2つの端面を溶着させるだけでなく、係合部と被係合部とを係合させるので、2つのケース半体の合体強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気装置の平面図である。
【図2】上記電気装置が備えるケースの分解斜視図である。
【図3】図1に示すIII−III線を切断面とするケースの断面図である。同図では上記ケースを構成する第1ケース半体と第2ケース半体とを合体する前の状態が示されている。
【図4】図1に示すIV−IV線を切断面とするケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る電気装置1の平面図である。図2は電気装置1が備えるケース2の分解斜視図である。図3は図1に示すIII−III線を切断面とするケース2の断面図である。図4は図1に示すIV−IV線を切断面とするケース2の断面図である。なお、図2及び図3では、ケース1を構成する第1ケース半体10と第2ケース半体20とを合体する前の状態の第1ケース半体10が示されており、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを溶着する際に融解する融解凸部Bが示されている。
【0010】
この例の電気装置1は、パーソナルコンピュータやゲーム装置など携帯可能な電子機器に接続され、電源から得られる交流電力を当該電子機器の動作電圧の直流電力に変換する電源アダプターである。したがって、この例の電気装置1には、図1に示すように、電子機器に接続される第1ケーブル3と、電源に接続される第2ケーブル4とが接続されている。
【0011】
図1に示すように、電気装置1は回路基板5と回路基板5を収容するケース2とを有している。ケース2は樹脂によって成形され、箱形状を有している。すなわち、ケース2は略直方体であり、4つの側面2a,2b,2c,2dを有している。この例では、互いに反対側に位置する側面2c,2dに、第1ケーブル3と第2ケーブル4とがそれぞれ接続されている。
【0012】
図2に示すように、ケース2は、合体して当該ケース2を構成する第1ケース半体10と第2ケース半体20とを有している。第1ケース半体10と第2ケース半体20は、概ね、直方体の箱形状を平面で半分に割って得られる形状を有している。すなわち、第1ケース半体10は第2ケース半体20に向かって開いた略箱形状を有し、第2ケース半体20は第1ケース半体10に向かって開いた略箱形状を有している。図2及び図3に示すように、第1ケース半体10の底部には回路基板5を支持するための複数のリブ19が形成されている。また、第2ケース半体20には、回路基板5をリブ19との間で挟む複数のリブ29が形成されている。
【0013】
図2に示すように、第1ケース半体10と第2ケース半体20はケース2の側面2aを形成する側壁部10a,20aをそれぞれ有している。同様に、第1ケース半体10はケース2の側面2b,2c,2dをそれぞれ形成する側壁部10b,10c,10dを有し、第2ケース半体20はケース2の側面2b,2c,2dをそれぞれ形成する側壁部20b,20c,20dを有している。図3及び図4に示すように、第1ケース半体10の側壁部10a〜10dと、第2ケース半体20の側壁部20a〜20dは、それらの縁部に、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが合体する方向(この例ではD1の示す方向、以下において合体方向とする)において互いに向き合う端面11,21を有している。
【0014】
端面11と端面21は互いに溶着されている。ケース半体10,20は例えば熱可塑性樹脂によって成形され、端面11と端面21は、例えば超音波溶着によって互いに溶着されている。後において詳説するように、この例では、端面21に溝21aが形成され、端面11に溝21aに嵌る嵌合凸部11aが形成されている。端面11の一部である嵌合凸部11aの頂面が、端面21の一部である溝21aの底面に溶着されている。
【0015】
また、図3及び図4に示すように、第1ケース半体10は側壁部10aの内側に被係合部12を有している。第2ケース半体20は、側壁部20aの内側に、係合部22を有している。係合部22は、第1ケース半体10と第2ケース半体20の合体方向D1とは反対方向におけるそれらの相対移動を規制するように被係合部12に係合している。すなわち、係合部22は、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが分離方向(D1とは反対方向)に相対移動しようとしたときに被係合部12に引っ掛かり、その移動を規制する。この例では、図1に示すように、側壁部10aには複数(この例では2つ)の被係合部12が形成され、側壁部20aにも複数(この例では2つ)の係合部22が形成されている。さらに、ケース2の側面2cを構成する側壁部10c,20cにも被係合部12と係合部22とがそれぞれ形成され、側面2bを構成する側壁部10b,20bにも被係合部12と係合部22とがそれぞれ形成されている。この構造によれば、端面11,21の溶着だけで2つのケース半体10,20を合体する構造に比べて、これらの合体強度を増すことができる。
【0016】
係合部22は側壁部10a,10b,10cの内面から合体方向D1に伸びている。この例の係合部22は、図3及び図4に示すように、第2ケース半体20の端面21の位置を越えて第1ケース半体10に向けて伸びるアーム形状を有している。被係合部12は端面11から第1ケース半体10の底壁部10eに向けて離れて位置している。係合部22はその端部22aが被係合部12に引っ掛かるように形成されている。換言すると、係合部22の端部22aは、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが分離方向(D1とは反対方向)に相対移動しようとしたときに被係合部12に当る。すなわち、端部22aは被係合部12よりも第1ケース半体10の底壁部10e寄りに位置している。係合部22をこのようにアーム形状にすることにより、端面11,21から、被係合部12と係合部22との係合位置までの距離を調整できる。その結果、端面11,21の近くに外力が作用した場合であっても被係合部12と係合部22との係合状態への影響を低減できるように、上記距離を設定できる。その結果、2つのケース半体10,20の合体強度をさらに増すことができる。
【0017】
図3に示すように、この例の係合部22は一対のアーム部22bを有している。2つのアーム部22bは端部22aによって連結されている。すなわち、係合部22は略U字形状を有している。係合部22のこの形状によれば、係合部22の強度を増すとともに、端面11,21から、被係合部12と係合部22との係合位置までの距離を調整できる。一方、被係合部12は第1ケース半体10の側壁部10a,10b,10cの内面からケース2の内側に向かって突出している(図4参照)。係合部22と被係合部12とが係合している状態では、図3の2点差線で示されるように、係合部22の内側に被係合部12が位置している。なお、図3及び図4に示すように、この例の係合部22にはアーム部22bから第1ケース半体10とは反対方向に伸びるとともに第2ケース半体20の側壁部20a,20b,20cの内面から突出する基部22cが設けられている。この基部22cによってアーム部22bの強度をさらに増すことができる。なお、被係合部12は、図4に示すように、合体方向D1に対して傾斜した斜面12aを有している。この斜面12aにより、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを合体するときに、係合部22の端部22aが被係合部12を乗り越えやすくなる。
【0018】
図2及び図4に示すように、第2ケース半体20は、その側壁部10a〜10dの縁部に、第1ケース半体10に向かって突出し第1ケース半体10の縁部の内側に嵌る内凸部23を有している。内凸部23は第1ケース半体10の縁部に沿った壁状である。この例では、内凸部23は第2ケース半体20の縁部の全周に亘って形成されている。係合部22のアーム部22bは内凸部23から第1ケース半体10に向かって伸びている。この構造によれば、アーム部22bを内凸部23によって補強できる。また、電気装置1の製造時に、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを互いに嵌め易くなる。なお、この内凸部23は、後において説明するように、端面11と溶着する端面21に形成された溝21aの側壁としても機能しており、内凸部23によりその溶着強度を増すことができる。
【0019】
図4に示すように、係合部22は第1ケース半体10の側壁部10a,10b,10cの内面に沿って伸びている。係合部22と側壁部10a,10b,10cの内面との間には側壁部10a,10b,10cの厚さ方向のクリアランスCが設けられている。この構造によれば、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを例えば超音波溶着により溶着する際に、超音波振動による熱を溶着しようとする箇所(この例では、後述する融解凸部B)に集中的に生じさせることができる。この例では、係合部22と側壁部10a,10b,10cの内面との間のクリアランスが係合部22の端部22aに向かって徐々に大きくなるように、係合部22の側壁部10a,10b,10c側の面は傾斜している。なお、係合部22は上述したように内凸部23から伸びている。係合部22と側壁部10a,10b,10cの内面との間にはクリアランスが設けられるのに対して、内凸部23と側壁部10a,10b,10cの内面は密着している。
【0020】
図3及び図4に示すように、端面11,21の一方には溝が形成され、他方にはこの溝に嵌る嵌合凸部が形成されている。この例では、上述したように、第2ケース半体20の端面21に溝21aが形成され、第1ケース半体10の端面11に嵌合凸部11aが形成されている。この構造によれば、ケース2の側面2a〜2dが受ける外力に対するケース2の耐性を向上できる。また、図2及び図3に示すように、この例では、端面11と端面21とを溶着する前の状態では、第1ケース半体10は嵌合凸部11aから端面21に向かって突出する融解凸部Bを有している。端面11と端面21との溶着工程において、融解凸部Bが融解する。その際、融解した樹脂は、嵌合凸部11aの外面と溝21aの内面との間に浸透する。その結果、2つの平らな面を溶着する構造に比べて、溶着強度を増すことができる。
【0021】
図4に示すように、係合部22と被係合部12との間には、合体方向D1とは反対方向におけるクリアランスAが設けられている。この例では、クリアランスAは合体方向D1とは反対方向における係合部22の端部22aと被係合部12との間の距離である。クリアランスAは嵌合凸部11aの高さ、すなわち溝21aの深さよりも小さい。この構造によれば、端面21と端面11との間に隙間が生じることを確実に抑えることができる。なお、クリアランスAがこのような大きさになるように、後述する融解凸部Bの突出量(高さ)が設定されている。
【0022】
図4に示すように、第2ケース半体20はその縁部に外凸部24を有している。また、第2ケース半体20は、その縁部に、外凸部24に対してケース2の内方に位置する、上述した内凸部23を有している。外凸部24と内凸部23は溝21aの側壁として機能している。すなわち、外凸部24と内凸部23との間に溝21aが形成されている。この例では、溝21aの底面からの内凸部23の高さは、溝21aの底面からの外凸部24の高さよりも大きい。そのため、内凸部23の端面23bは外凸部24の下面(すなわち端面21)よりも下方に位置している。上述したように、係合部22のアーム部22bは内凸部23から第1ケース半体10に向かって下方に伸びている。そのため、アーム部22bの強度を確保しながら、端面11,21から、係合部22の端部22a、すなわち係合部22と被係合部12との係合位置までの距離を増すことができる。
【0023】
図3及び図4に示すように、係合部22のアーム部22bは、内凸部23の端面23bから伸びている。すなわち、アーム部22bは、側壁部20a,20b,20cの厚さ方向に対して垂直な方向、すなわち合体方向D1において、内凸部23の端面23bとオーバーラップしている。この構造によれば、ケース2の収容スペースが係合部22によって低減することを、抑えることができる。この例では、アーム部22bと端部22aは、内凸部23の内面23a(ケース2の内側に向いた面)に対して、ケース2の外方にオフセットしている。図4を参照すると、アーム部22bと端部22aは、内面23aを含む平面Pに対して、ケース2の外方にオフセットしている。
【0024】
ケース2の側面2cには開口が形成されている。すなわち、図2に示すように、ケース半体10,20の側壁部10c,20cの縁部には凹部10g,20gが形成され、これらの凹部10g,20gによって側面2cの開口が形成される。側面2cの開口の内側には、上述した第1ケーブル3が接続されるコネクタが配置される。上述したように、側壁部10c,20cには、被係合部12と係合部22とがそれぞれ形成されている(図1参照)。被係合部12と係合部22のこのようなレイアウトによれば、第1ケーブル3から力を受けやすい側壁部10c,20cの合体強度を増すことができる。
【0025】
ケース半体10,20の側壁部10d,20dの縁部には凹部10h,20hが形成され、これらの凹部10h,20hによって、側面2cの開口よりも大きな側面2dの開口が形成される。側面2dの開口の内側には、上述した第2ケーブル4が接続されるコネクタが配置される。図1に示すように、側面2bを構成する側壁部10b,20bには被係合部12と係合部22とがそれぞれ形成されている。この側面2bに設けられる被係合部12と係合部22は、第2ケーブル4用の開口が形成された側面2d寄りの位置に形成されている。これにより、第2ケーブル4から力を受けやすい側壁部10d,20dの合体強度を増すことができる。
【0026】
電気装置1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、第1ケース半体10と第2ケース半体20とをそれぞれ樹脂(具体的には、熱可塑性樹脂)によって成形する。ケース半体10,20は例えば射出成形によって形成され得る。この成形工程において、ケース2の側面2a〜2dを構成する第1ケース半体10の側壁部10a〜10dの縁部と、側面2a〜2dを構成する第2ケース半体20の側壁部20a〜20dの縁部とに、合体方向D1で互いに向き合う端面11,21がそれぞれ形成される。また、この成形工程において、端面11に、端面21に向かって突出する上述した融解凸部Bが形成される。この例では、端面11に上述した嵌合凸部11aが形成され、融解凸部Bは嵌合凸部11a上に形成される。融解凸部Bは、図2及び図4で示すように、その頂部が尖形を有するように、すなわち三角形の断面を有するように形成される。また、第2ケース半体20の端面21には溝21aが形成される。成形工程では、さらに、第1ケース半体10の側壁部10a,10b,10cの内側と第2ケース半体20の側壁部20a,20b,20cの内側とに、互いに係合可能な被係合部12と係合部22とがそれぞれ形成される。
【0028】
その後、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが、合体方向D1において溶着により組み合わされる(合体工程)。具体的には、溶着準備工程において、第1ケース半体10の端面11に形成された融解凸部Bと第2ケース半体20の端面21とを接触させるとともに、第1ケース半体10と第2ケース半体20の合体方向D1とは反対方向へのそれらの相対移動が規制されるように係合部22と被係合部12とを互いに係合させる。この例では、先の成形工程において端面11に嵌合凸部11aが形成され、端面21に溝21aが形成されている。そのため、溶着準備工程では、溝21aに融解凸部Bが嵌められる。溶着準備工程の後、融解凸部Bを融解させることにより、第1ケース半体10の端面11と第2ケース半体20の端面21とを溶着する(溶着工程)。具体的には、上述したように、超音波溶着によって端面11と端面21とを溶着する。
【0029】
本実施形態では、融解凸部Bが溶着準備工程において第2ケース半体20の端面21に接している時に係合部22と被係合部12との間にクリアランスが生じるように、上述の成形工程において係合部22と被係合部12とが成形される。換言すると、融解凸部Bの頂部が溝21aの底面に当っている時に係合部22の端部22aと被係合部12との間に合体方向D1の隙間が生じるように、端部22aの位置と被係合部12の位置とが予め設計されている。こうすることにより、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを超音波溶着により溶着する際に、超音波振動による熱を融解凸部Bに集中的に生じさせることができる。なお、溶着準備工程で生じるクリアランスは上述したクリアランスA(図4参照)よりも小さい。融解凸部Bが融解することにより、端部22aと被係合部12との間のクリアランスは拡大し、図4に示すクリアランスAとなる。
【0030】
以上説明したように、電気装置1は第1ケース半体10と第2ケース半体20とを備えている。第1ケース半体10の縁部の端面11と第2ケース半体20の端面21は、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが合体する方向D1で互いに向き合い、且つ溶着されている。また、第1ケース半体10はその内側に被係合部12を有している。第2ケース半体20は、その内側に、第1ケース半体10と第2ケース半体20の合体方向D1とは反対方向でのそれらの相対移動を規制するように被係合部12に係合している係合部22を有している。この電気装置1によれば、2つのケース半体の合体強度を向上できる。すなわち、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが合体方向D1とは反対方向に相対移動しようとしたときに、係合部22の端部22aと被係合部12との間のクリアランスAが解消される。すなわち、端部22aが被係合部12に引っ掛かる。その結果、第1ケース半体10と第2ケース半体20との相対移動が阻止される。
【0031】
また、第2ケース半体20の端面21には溝21aが形成され、第1ケース半体10の端面11は溝21aに嵌る嵌合凸部11aを有している。この構造によれば、2つのケース半体の溶着強度を向上できる。
【0032】
また、係合部22と被係合部12との間には、これらの合体方向D1とは反対方向への相対移動により解消され得るクリアランスAが設けられており、クリアランスAは嵌合凸部11aの高さよりも小さい。この構造によれば、端面21と端面11との間に隙間が生じることを確実に抑えることができる。
【0033】
また、第2ケース半体20の縁部は、溝21aの一方の側壁として機能する外凸部24と、溝21aの他方の側壁として機能する内凸部23とを有している。係合部22のアーム部22bは内凸部23から第1ケース半体10に向けて伸び、その端部22aが被係合部12に引っ掛かるように形成されている。この構造によれば、端面21,11の溶着強度を増すとともに、係合部22の強度をも増すことができる。
【0034】
第2ケース半体20の係合部22のアーム部22bは、内凸部23の端面23bから第1ケース半体10に向けて伸びている。この構造によれば、ケース2の収容スペースが係合部22によって低減することを、抑えることができる。
【0035】
また、溝21aの底面からの内凸部23の高さは溝21aの底面からの外凸部24の高さよりも高い。この構造によれば、係合部22の強度をさらに増すことができる。
【0036】
また、第2ケース半体20の係合部22は、当該第2ケース半体20の端面21の位置を越えて第1ケース半体10に向けて伸びるアーム形状を有し、その端部22aが被係合部12に引っ掛かるように形成されている。この構造によって、ケース半体10,20の端面11,21から、被係合部12と係合部22との係合位置までの距離を大きくできる。その結果、端面11,21の近くに外力が作用した場合であっても、被係合部12と係合部22との係合状態への影響が低減され得る。
【0037】
また、第2ケース半体20の縁部は、第1ケース半体10の縁部の内側に嵌り且つ第1ケース半体10の縁部に沿った壁状の内凸部23を有し、係合部22のアーム部22bは内凸部23から第1ケース半体10に向けて伸びている。この構造によれば、係合部22を内凸部23によって補強できる。
【0038】
また、係合部22と第1ケース半体10の内面との間にはクリアランスCが設けられている。この構造によれば、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを例えば超音波溶着により溶着する際に、超音波振動による熱を溶着しようとする箇所(以上の説明では融解凸部B)に集中的に生じさせることができる。
【0039】
また、電気装置1の製造方法は、上述したように、第1ケース半体10と第2ケース半体20とを樹脂によって成形する成形工程を含んでいる。この成形工程において、第1ケース半体10の端面11に、第2ケース半体20の端面21に向かって突出する融解凸部Bが形成され、さらに、第1ケース半体10の内側と第2ケース半体20の内側とに、第1ケース半体10と第2ケース半体20の合体方向D1とは反対方向でのそれらの相対移動を規制するように互いに係合可能な被係合部12と係合部22とがそれぞれ形成される。また、合体工程は、第1ケース半体10の融解凸部Bと第2ケース半体20の端面21とを接触させるとともに、第1ケース半体10と第2ケース半体20との合体方向とは反対方向でのそれらの相対移動が規制されるように係合部22と被係合部12とを係合させる溶着準備工程を含んでいる。合体工程は、さらに、融解凸部Bを融解させることにより、第1ケース半体10の端面11と第2ケース半体20の端面21とを溶着する溶着工程を含んでいる。このような方法で製造される電気装置1によれば、第1ケース半体10と第2ケース半体20との合体強度を増すことができる。
【0040】
また、電気装置1の製造方法では、溶着準備工程において融解凸部Bが第2ケース半体20の端面21に接している時に係合部22と被係合部12との間にクリアランスが生じるように、係合部22と被係合部12とが成形工程において成形される。この方法によれば、溶着工程において第1ケース半体10と第2ケース半体20とを例えば超音波溶着により溶着する際に、超音波振動による熱を溶着しようとする箇所、すなわち融解凸部Bに集中的に生じさせることができる。
【0041】
なお、本発明は以上説明した電気装置1に限られず、種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、以上の説明では、溝21aの底面からの内凸部23の高さは、溝21aの底面からの外凸部24の高さよりも大きい。しかしながら、内凸部23の高さ外凸部24の高さ等しくてもよい。
【0043】
また、以上の説明では、係合部22は略U字形状を有していた。しかしながら、係合部22の形状はこれに限定されない。係合部22は、第1ケース半体10と第2ケース半体20とが合体方向D1とは反対方向に移動しようとしたときに被係合部12に引っ掛かることができる形状であれば足りる。例えば、係合部22の先端に突起が形成され、第1ケース半体10の側壁部10a,10b,10cに係合部22の突起が嵌る凹部が被係合部として形成されてもよい。
【0044】
また、以上の説明では、アーム状の係合部22を有する第2ケース半体20の端面21に溝21aが形成され、第1ケース半体10に嵌合凸部11aが形成されていた。しかしながら、第1ケース半体10の端面11に溝が形成され、第2ケース半体20に嵌合凸部が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 電気装置、2 ケース、3,4 ケーブル、5 回路基板、A クリアランス、B 融解凸部、10 第1ケース半体、11 端面、11a 嵌合凸部、12 被係合部、20 第2ケース半体、21 端面、21a 溝、22 係合部、22a 端部、22b アーム部、23 内凸部、23a 内面、23b 端面、24 外凸部、D1 合体方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂によって形成される箱形状のケースを有する電気装置であって、
前記ケースは互いに合体して当該ケースを構成する第1ケース半体と第2ケース半体とを備え、
前記第1ケース半体と前記第2ケース半体は、それらの縁部に、互いに溶着された端面をそれぞれ有し、
前記第1ケース半体はその内側に被係合部を有し、
前記第2ケース半体は、その内側に、前記第1ケース半体と前記第2ケース半体の合体方向とは反対方向へそれらの相対移動を規制するように前記被係合部に係合している係合部を有している、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気装置において、
前記第2ケース半体の前記端面と前記第1ケース半体の前記端面の一方には溝が形成され、
前記第2ケース半体の前記端面と前記第1ケース半体の前記端面の他方は前記溝に嵌る嵌合凸部を有している、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気装置において、
前記係合部と前記被係合部との間には、これらの前記合体方向とは反対方向への相対移動により解消され得るクリアランスが設けられており、
前記クリアランスは前記嵌合凸部の高さよりも小さい、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気装置において、
前記クリアランスは、前記被係合部と、前記被係合部よりも前記第1ケース半体の底壁部寄りに位置する前記係合部の端部との間に設けられたクリアランスである、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の電気装置において、
前記溝は前記第2ケース半体の前記端面に形成され、
前記第2ケース半体の前記縁部は、前記溝の一方の側壁として機能する外凸部と、前記溝の他方の側壁として機能する内凸部とを有し、
前記第2ケース半体の前記係合部は前記内凸部から前記第1ケース半体に向けて伸び、その端部が前記被係合部に引っ掛かるように形成されている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気装置において、
前記第2ケース半体の前記係合部は、前記内凸部の端面から第1ケース半体に向けて伸びている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電気装置において、
前記溝の底面からの前記内凸部の高さは前記溝の底面からの前記外凸部の高さよりも高い、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電気装置において、
前記第2ケース半体の前記係合部は、当該第2ケース半体の前記端面の位置を越えて前記第1ケース半体に向けて伸びるアーム形状を有し、その端部が前記被係合部に引っ掛かるように形成されている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電機装置において、
前記第2ケース半体の前記縁部は、前記第1ケース半体の前記縁部の内側に嵌り且つ前記第1ケース半体の前記縁部に沿った壁状の内凸部を有し、
前記係合部は前記内凸部から前記第1ケース半体に向けて伸びている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電気装置において、
前記係合部と前記第1ケース半体の内面との間にはクリアランスが設けられている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項11】
箱形状を有するケースを備え、前記ケースが第1ケース半体と第2ケース半体との合体により構成された電気装置の製造方法において、
前記第1ケース半体と前記第2ケース半体とを樹脂によって成形する成形工程と、
前記成形工程で成形された前記第1ケース半体と前記第2ケース半体とを合体させる合体工程と、を含み、
前記成形工程において、
前記第1ケース半体の縁部と前記第2ケース半体の縁部とに、互いに向き合う端面がそれぞれ形成され、
前記第1ケース半体の前記端面に、前記第2ケース半体の前記端面に向かって突出する融解凸部が形成され、
前記第1ケース半体の内側と前記第2ケース半体の内側とに、前記第1ケース半体と前記第2ケース半体の合体方向とは反対方向でのそれらの相対移動を規制するように互いに係合可能な被係合部と係合部とがそれぞれ形成され、
前記合体工程は、
前記第1ケース半体の前記端面に形成された前記融解凸部を前記第2ケース半体の前記端面に接触させるとともに、前記係合部と前記被係合部とを係合させる溶着準備工程と、
前記融解凸部を融解させることにより、前記第1ケース半体の前記端面と前記第2ケース半体の前記端面とを溶着する溶着工程と、を含む、
ことを特徴とする電気装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11の製造方法において、
前記溶着準備工程において前記融解凸部が前記第2ケース半体の前記端面に接している時に前記係合部と前記被係合部との間にクリアランスが生じるように、前記係合部と前記被係合部とが前記成形工程において成形される、
ことを特徴とする電気装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−253251(P2012−253251A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125872(P2011−125872)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】