説明

電気貯湯容器

【課題】 転倒しても容器本体内の液体が外部に容易に漏れ出すことを抑制することができる電気貯湯容器を提供する。
【解決手段】 液体を収容して加熱するための容器本体と、容器本体の上方の開口部を覆うための蓋体4とを備え、蓋体4の底部には、容器本体内で発生した蒸気を流入させるための流入口15を備え、蓋体4の外面には、該流入口15からの蒸気を蓋体4の外側に排出するための排出口16を備え、流入口15と排出口16との間に蒸気案内経路17を介在してなる電気貯湯容器であって、蒸気案内経路17が、容器本体の中心軸方向と直交する平面上に、流入口15からの蒸気を案内するための第1案内部18と、第1案内部18の終端から流入口15側へ折り返して排出口16へ案内する第2案内部19を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容して加熱するための容器本体と、該容器本体の上方の開口部を覆うための蓋体とを備え、液体を加熱して沸騰することにより発生する蒸気を容器本体の外部に排出することで、容器本体の内圧が異常に高くなることがないように構成された電気貯湯容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、電気貯湯容器では、容器本体に液体を収容して加熱して沸騰することによって、容器本体内で発生する蒸気を外部に排出することで、容器が破損することがないようにしている。具体的には、発生した蒸気を取り込むための流入口を蓋体の底部に形成するとともに、蓋体の上端外面に流入口から取り込んだ蒸気を外部に排出するための排出口を形成し、前記流入口と排出口とを、蒸気案内経路形成用の軟質樹脂パイプにより連結している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−38818号公報(図1、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の構成では、緩やかに湾曲した湾曲形状の軟質樹脂パイプにより、流入口と排出口とを単に連結しているだけであるため、例えば電気貯湯容器が転倒した場合に、容器本体内の液体が流入口を通して軟質樹脂パイプ内に直ちに入り込んでしまう。そして、軟質樹脂パイプ内に入り込んだ液体が軟質樹脂パイプの終端まで移動したのち、排出口を通して外部に漏れ出してしまうことがあり、改善の余地があった。
【0004】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、転倒しても容器本体内の液体が外部に容易に漏れ出すことを抑制することができる電気貯湯容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気貯湯容器は、前述の課題解決のために、液体を収容して加熱するための容器本体と、該容器本体の上方の開口部を覆うための蓋体とを備え、該蓋体の底部には、前記容器本体内で発生した蒸気を流入させるための流入口を備え、該蓋体の外面には、該流入口からの蒸気を該蓋体の外側に排出するための排出口を備え、前記流入口と前記排出口との間に蒸気案内経路を介在してなる電気貯湯容器であって、前記蒸気案内経路が、前記容器本体の中心軸方向と直交する平面上に、前記流入口からの蒸気を案内するための第1案内部と、該第1案内部の終端から前記流入口側へ折り返して前記排出口へ案内する第2案内部とを有する折曲経路を備えていることを特徴としている。
【0006】
上記のように、蒸気案内経路を、前記容器本体の中心軸方向と直交する平面上に形成することによって、容器本体の転倒時において、流入口に入り込んでくる液体の方向に対して90度異なる方向に液体を方向転換させることになることから、液体の移動に抵抗を与えて、液体の移動速度を減速させることができる。また、蒸気案内経路を、流入口からの蒸気を案内するための第1案内部と、該第1案内部の終端から前記流入口側へ折り返して前記排出口へ案内する第2案内部とを有する折曲経路を備えることによって、容器本体の転倒時において、液体の移動距離を長くすることができるだけでなく、折り返された部分において液体の移動方向が大きく変更されることから、液体の移動に抵抗を与えて、液体の移動速度を減速させることができる。
【0007】
また、本発明の電気貯湯容器は、前記容器本体に、上下方向に長い把持部を有する取手を備え、前記蓋体の底部のうちの該取手の左右方向中心線と前記容器本体の中心とを結ぶ延長線により区分けされる2つの領域のうちの一方の領域内に前記流入口を配置してもよい。
【0008】
また、本発明の電気貯湯容器は、前記流入口が、一方の領域のうちの前記容器本体の外周縁近傍に配置され、前記第1案内部が、該流入口からの蒸気を前記容器本体の中心又は中心近傍を通って他方の領域の外周縁近傍まで案内する経路からなり、該第1案内部の終端から該流入口側へ折り返してもよい。
【0009】
上記のように、第1案内部が、容器本体の外周縁近傍に配置された流入口からの蒸気を前記容器本体の中心又は中心近傍を通って他方の領域の外周縁近傍まで案内する経路に構成するようにすれば、容器本体の幅をできる限り利用して経路長を長くすることができ、容器本体の転倒時に、液体が漏れ出すまでの時間を長くすることができる。
【0010】
また、本発明の電気貯湯容器は、前記流入口に、前記蒸気案内経路の上端よりも上方に立ち上げた筒状部を備え、筒状部の上端から排出される蒸気を取り囲んで前記第1案内部へ下降案内するための覆い部を備えてもよい。
【0011】
上記のように、流入口に、蒸気案内経路の上端よりも上方に立ち上げた筒状部を備え、筒状部の上端から排出される蒸気を取り囲んで前記第1案内部へ下降案内するための覆い部を備えるようにすれば、容器本体の転倒時に、流入口から流入した液体が一旦上昇した後、下降してから蒸気案内経路に移動することになり、液体の移動経路を長くすることができるだけでなく、上昇から下降へ液体が方向転換するときに液体に移動抵抗が付与され、液体の移動速度を減速させることができる。
【0012】
また、本発明の電気貯湯容器は、前記蒸気案内経路内に、堰を設ける、又は前記蒸気案内経路に案内方向において案内幅が狭くなる部分を設けるようにすれば、堰を設けた部分及び案内幅が狭くなる部分において液体に移動抵抗を付与することができ、液体の移動速度を減速させることができ、更に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
蒸気案内経路が、前記容器本体の中心軸方向と直交する平面上に、前記流入口からの蒸気を案内するための第1案内部と、該第1案内部の終端から前記流入口側へ折り返して前記排出口へ案内する第2案内部とを有する折曲経路を備えることによって、容器本体が転倒した場合において、容器内の液体が流入口から排出口まで移動する時間を、従来のような単純な湾曲形状にしたパイプのみで構成した場合に比べて長くすることができるから、容器本体内の液体が外部に容易に漏れ出すことを抑制することができる電気貯湯容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、本発明の電気貯湯容器の一例である電気ポット(電気ケトルともいう)を示している。
前記電気ポットは、水を収容してお湯を沸かすためのポット本体1と、このポット本体1に電力を供給してポット本体内に備えた電熱装置(図示せず)を駆動するための電力供給用の台座2とを備えている。ここでは、台座2には図示していない電源コードを接続することによって、コードレス式のポット本体1を構成することができる場合を示しているが、台座2をポット本体1に組み込んで、電源コードを備えたポット本体1から電気ポットを構成してもよい。
【0015】
前記ポット本体1は、水を収容するために上端が開放された有底筒状でかつ平面視において外形が円形となる容器本体3と、該容器本体3の上端の開口を閉じるために装着される平面視において円形で、かつ、側面視において外形が円弧状の蓋体4とを備えている。
【0016】
前記容器本体3は、図示していないが、金属製(たとえばステンレス製)で有底筒状の収容部と、この収容部の外側を覆うための合成樹脂製のカバー部とを備えている。
【0017】
前記容器本体3の外側面の特定一箇所、具体的には図6(a),(b)に示すように、蓋体4に対して点対象となる位置に、上下方向に長い把持部5Aを有する取手5を備えている。
【0018】
前記蓋体4には、図1〜図3に示すように、容器本体3の上端開口を閉じるとともに注出口10を形成するための合成樹脂製の底部材6と、この底部材6の上面にビス止めされて後述する操作部材7を取り付けるための合成樹脂製の中間部材8と、中間部材8の上方を覆うための合成樹脂製のカバー部材9とを備えている。尚、前記底部材6は、板状で円形の円盤部6Aと、この円盤部6Aの外周縁に下方に垂下するスカート部6Bと、前記円盤部6Aの上面の一箇所に上方に突出して前記注出口10を形成するための環状に形成された縦壁部6Cとを備えている。
【0019】
また、前記底部材6には、容器本体3内のお湯を蓋体4へ流入させるための取込口14(図4参照)及び該取込口14から流入したお湯を外部へ流出させるための前記注出口10が形成されている。さらに、前記取込口14を閉じる開閉自在な弁体11が、底部材6と中間部材8とで形成される空間内に入り込んだ状態で配置され、前記注出口10を閉じる開閉自在な蓋部12が、前記底部材6と中間部材8との間に配置されている。そして、弁体11の開放動作に連動して蓋部12を開放させるべく、弁体11と蓋部12とを連係している。
【0020】
前記弁体11は、図3にも示すように、円筒状の本体11Aと、この本体11Aの下端に一体形成された円弧状の弁部11Bと、この弁部11Bを覆うように被せられたゴム製の弾性材11Cとを備えている。
【0021】
前記構成の弁体11は、前記取込口14の上方に位置しかつ前記底部材6の上面に当接して取込口14を閉じる閉じ位置と、この閉位置から設定距離上昇して該取込口14を開放する開放位置とに位置するように、蓋体4に昇降自在に取り付けている。また、前記弁部11Bには、コイルスプリング13が外装されており、弁体11を閉じ位置に付勢することができるようになっている。
【0022】
そして、前記弁体11は、蓋体4に備えられた操作部材7により昇降操作できるように構成されている。このように構成された弁体11の直上方には、前記蓋部12が揺動開閉自在に配置され、前記操作部材7により弁体11を上昇操作することにより該弁体11が前記蓋部12に当接して該蓋部12を開放操作することができるようになっている。
【0023】
前記蓋部12は、図3にも示すように、揺動軸を構成する棒状の軸体12Aと、前記注入口10を閉じる蓋12Bと、軸体12Aと蓋12Bとを連結する下方に突出湾曲した連結部12Cとを備えるとともに、自重により閉じ位置に付勢されている。
【0024】
前記蓋体4から突出する操作部材7の操作部7Aを、前記取手5の直上方に配置して、取手5を持つ一方の手で操作部7Aを操作することができるようになっている。
【0025】
前記操作部材7は、前記弁体11に長手方向一端部が連結され、かつ、長手方向中間部において水平軸芯X周りで揺動自在に取り付けられた揺動部材7Bと、該揺動部材7Bの長手方向他端に連結された操作部7Aとを備えている。
【0026】
尚、前記操作部材の一端に備えた傾斜部7cには、前記操作部材7を一端から挿入可能な貫通孔7Kを備えている。従って、操作部材7の挿入状態において操作部材7の一端に備えさせた一対の係止部7S,7S(図3では左側のみ図示)が貫通孔に係止することによって、操作部材7を傾斜部7cに係止固定することができるように構成されている。
【0027】
前記のように構成された電気ポット内のお湯を湯呑み等の他の容器に注ぐときの手順を説明する。
【0028】
まず、片手で電気ポットの取手5を掴むとともに掴んだ片手の親指(他の指でもよい)で操作部7Aを下方に押圧操作する。この押圧操作により、揺動部材7Bが揺動操作されて、閉じ位置の弁体11が上方に移動し、弁体11が開放位置まで移動する。このとき、弁体11の弁部11Bが弾性材11Cを介して蓋部12の連結部12Cを上方側に押し上げるように連結部12Cに当接して、蓋部12が開放する。
【0029】
蓋部12が開放すると、電気ポットを傾けることによって、注出口10を容器の開口に臨ませて、注出口10を介してお湯を容器へ注出することができる。尚、容器への注出が完了した後は、操作部7Aへの押圧を解除することによって、コイルスプリング13の付勢力により弁体11が閉位置まで移動する。
【0030】
前記電気ポットには、容器本体3内で発生した蒸気が蓋体4を通して外部に排出されるように構成されており、その構成を次に説明する。
【0031】
前記蓋体4の底部、つまり底部材6には、前記容器本体3内で発生した蒸気を流入させるための流入口15を備え、該蓋体4の外面、つまりカバー部材9の外面には、該流入口15からの蒸気を該蓋体4の外側に排出するための排出口16を備え、前記流入口15と前記排出口16との間に蒸気案内経路17及び蒸気案内経路17の終端まで案内された蒸気を前記排出口16まで案内するための円筒状の排気管20を介在している。尚、前記排出口16は、多数の排気孔9Aから構成されている。
次に、蒸気案内経路17を図5(a),(b)及び図6(a),(b)に基づいて説明する。
【0032】
前記蒸気案内経路17が、前記容器本体3の中心軸方向と直交する平面上に、前記流入口15からの蒸気を案内するための第1案内部18と、該第1案内部18の終端から前記流入口15側へ折り返して前記排出口側、つまり排気管20の始端へ案内する第2案内部19とを有する折曲経路を備えており、流入口15から排気管20の始端までの経路が長くなるようにしている。
【0033】
前記蒸気案内経路17は、前記底部材6の上面6aと前記中間部材8に上方に膨出形成された膨出部8Aとの間に形成され、膨出部8Aの終端に上方に前記排気管20を一体形成している。そして、前記底部材6の上面6aと膨出部8Aとの間にシール材21を介在することによって、両者を密閉することができるようになっている。
【0034】
図5(a)及び図6(a),(b)に示すように、前記流入口15は、前記蓋体4の底部である底部材6のうちの該取手5の左右方向中心線Cと前記容器本体3の中心とを結ぶ延長線Eにより区分けされる2つの領域である第1領域R1及び第2領域R2のうちの一方の第1領域R1内に配置されている。
【0035】
前記流入口15が、前記第1領域R1のうちの前記容器本体3の外周縁近傍、つまり中間部材8の外周縁8G近傍に配置されている。また、前記第1案内部18が、該流入口15からの蒸気を前記容器本体3、つまり中間部材8の中心D近傍(中心でもよい)を通って他方の第2領域R2の外周縁近傍、つまり中間部材8の外周縁8G近傍まで案内する湾曲経路(直線経路でもよいし、蛇行した経路やジグザグに屈曲した経路でもよい)からなり、該第1案内部18の終端から該流入口15側へ折り返されている。
【0036】
前記第2案内部19は、第1案内部18の終端から所定角度で折り返された折り返し部19Aと、折り返し部19Aの終端から更に折り返され第1案内部18とほぼ平行となり、かつ、第1案内部18よりも幅広となる幅広部19Bと、この幅広部19Bの終端からほぼ90度方向転換されて中間部材8の中心Dに向かう経路延長部19Cとを備えている。
【0037】
また、図5(b)に示すように、前記流入口15には、前記蒸気案内経路17の上端よりも上方に立ち上げた筒状部22を備え、筒状部22の上端から排出される蒸気を取り囲んで前記第1案内部へ下降案内するための覆い部23を備えている。従って、電気ポットが転倒することにより、容器本体3内の液体(お湯)が筒状部22の上端から上方に移動すると、覆い部23の内面23Aに液体が衝突して下方に方向転換させられる。このとき、液体の移動速度が減速されることになり、排出口16までの移動時間を長くすることができる。
【0038】
更に、流入口15を、図6(a),(b)に示すように、取手5と蓋部12の間のほぼ中央位置(蓋部12寄りであれば更によい)から右横側の第1領域R1の外周縁8Gに寄った位置に配置している。図6(a)では、蓋部12から見て右側面部と取手5とが床面に接触する右側に転倒した電気ポットを示している。このような転倒時において、容器本体3のお湯の水位がL1の場合には、L2の水位になるまで流入口15から第1案内部18に流れ込んでしまうが、水位がL2及びL3の場合には、流入口15が上側に位置していることから、お湯が第1案内部18に流れ込んで外部にお湯が漏れ出すことがなく、取手5寄りに流入口15を配置した場合に比べてお湯の漏れる量を少なくできる。
【0039】
また、第1案内部18と第2案内部19との折れ曲がり部23を、取手5と蓋部12の間のほぼ中央位置(蓋部12寄りであれば更によい)から左横側の第2領域R2の外周縁8Gに寄った位置に配置している。図6(b)では、図6(a)とは左右が反対となる転倒、つまり蓋部12から見て左側面部と取手5とが床面に接触する左側に転倒した電気ポットを示している。この場合、容器本体3のお湯の水位がL1の場合には、L2の水位になるまで流入口15から第1案内部18に流れ込んでしまうが、水位がL2及びL3の場合には、折れ曲がり部23が上側に位置していることから、お湯が第1案内部18に流れ込んでも、折れ曲がり部23から第2案内部19に流れ込んで外部にお湯が漏れ出すことがなく、取手5寄りに折れ曲がり部23を配置した場合に比べてお湯の漏れる量を少なくできる。尚、前記電気ポットが平面視において、円形であるとともに、電気ポットの外側面の一箇所に、上下方向に長い取手5を備えていることから、電気ポットが転倒した場合には、取手5の重みで容器本体は転がり、図6(a),(b)で示す二通りの倒れ方になる。
【0040】
従って、流入口15及び折れ曲がり部23を、図6(a),(b)で示したように配置することと、第1案内部18から折り返して第2案内部19を設けることにより案内経路を長くすることによって、電気ポットが転倒した場合でも、外部にお湯が漏れ難い構成とすることができる。
【0041】
また、前記容器本体3を構成する収容部とカバー部との間に形成される空間内に、沸騰検知器を備えている。この沸騰検知器は、前記空間内に蒸気が入り込んで空間内の圧力が所定圧力以上になることにより作動して、水が沸騰したことを検知するようになっている。そして、前記空間内への蒸気の流入は、前記蒸気案内経路17のうちの排出口16の近傍箇所で連通するように前記底部材6に形成した開口6J(図3、図4、図5(b)参照)を通して行われ、図3及び図5(b)に示す沸騰検知器Fがこれを検知するようになっている。このように排出口16の近傍箇所、つまり前記流入口15から遠い位置に開口6Jを備えさせることによって、前記のように電気ポットの転倒時に開口6Jにお湯が入り難くしている。例え、開口6Jにお湯が入り込んでも、沸騰検知器は、収容部とカバー部とで密閉されているため、外部に入り込んだお湯が流出することはない。なお、沸騰検知器へ導入させる蒸気は、容器本体3の内部の上方部(お湯面上部)より採取しても良いが、この場合、容器本体3の見た目がよくなくデザイン性に劣り、更には容器本体3の洗浄もやり難い。これに対して、蒸気案内経路17の任意の場所(位置)から蒸気を導入すると、より好適である。
【0042】
図7(a),(b)に示すように、前記蒸気案内経路17内に、2個(何個でもよい)の堰24,24を所定間隔を隔てて設けてもよい。このように堰24,24を設けることによって、蒸気案内経路17の案内幅(高さも)を小さくすることができ、電気ポットの転倒時にお湯の移動速度を堰24,24によって減速させることができ、お湯の移動時間を長くすることができる。図7(a),(b)では、2つの堰24,24のうちの一方を、蒸気案内経路17の幅方向両端のうちの一端から他端に延びるように配置し、残りの他方を、蒸気案内経路17の幅方向両端のうちの他端から一端に延びるように配置したが、全ての堰24,24を、一端から他端へ延びるように配置してもよい。
【0043】
又、図8に示すように、前記蒸気案内経路17に案内方向において案内幅が狭くなる幅狭部分25を設けて実施することもできる。つまり、膨出部8Aの内面の左右幅H2が他の幅H1よりも狭くなるように特定部分のみ左右の幅を絞っている。このように構成することによって、電気ポットの転倒時にお湯の移動速度を幅が狭くなった幅狭部分25によりお湯の移動速度を減速させることができ、お湯の移動時間を長くすることができる。
【0044】
尚、本発明の電気貯湯容器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、前記実施形態では、蒸気案内経路17を底部材6と中間部材8とそれらを密閉するためのシール材21とから構成したが、1つの部材で構成することもできるし、場合によっては4つ以上の部材を用いて実施することもできる。
【0046】
また、前記実施形態では、蒸気案内経路17を渦巻き状に構成することによって、案内経路を長くするようにしたが、U字状又はコの字状に構成するなど、どのような形状に構成してもよい。尚、蒸気案内経路17を構成する幅広部19B(図5(a)に示している)は、必ずしも設けなくてもよいが、幅広部19Bを設けると、幅広部19Bがお湯溜め部となってお湯の流出を遅らせる効果がある。
【0047】
更に、前記実施形態では、取手5を環状に構成したが、逆L字状又は逆U字状など、どのような形状であってもよい。
【0048】
また更に、前記実施形態では、蒸気案内経路17の上端よりも上方に立ち上げた筒状部22を備え、筒状部22の上端から排出される蒸気を取り囲んで前記第1案内部へ下降案内するための覆い部23を1箇所にのみ備えたが、2箇所以上に備えてもよいし、場合によっては、省略してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、カバー部材9に形成した排出口16と蒸気案内経路17を形成する膨出部8Aとの間を排気管20により連結するように構成したが、カバー部材9と膨出部8Aとの間に隙間の無い状態にすれば、膨出部8Aの終端にカバー部材9の排出口16に連通する孔を形成するだけで、排気管20を省略することができる。
【0050】
本発明は、電気ポットに適用することができる他、蒸気を逃がすための蒸気案内経路17を備えたものであれば、どのような電気貯湯容器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】電気ポットの全体側面図である。
【図2】カバー部材を取り外した電気ポットの斜視図である。
【図3】蓋体の分解斜視図である。
【図4】底部材の底面図である。
【図5】中間部材を示し、(a)はそれの平面図、(b)は中間部材と底部材とで形成される蒸気案内経路の始端と終端とを示す縦断面図である。
【図6】転倒した電気ポットの概略図を示し、(a)はポットの正面から見て右側に倒れた状態であり、(b)はポットの正面から見て左側に倒れた状態である。
【図7】蒸気案内経路内に堰を備えた別の中間部材を示し、(a)は、それの平面図、(b)は(a)におけるI−I線断面図である。
【図8】蒸気案内経路の一箇所を狭くした別の中間部材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1… ポット本体、2…台座、3…容器本体、4…蓋体、5…取手、5A…把持部、6…底部材、6A…円盤部、6B…スカート部、6C…縦壁部、6a…上面、7…操作部材、7A…操作部、7B…揺動部材、7K…貫通孔、7S…係止部、7c…傾斜部、8…中間部材、8A…膨出部、8G…外周縁、9…カバー部材、9A…排気孔、10…注出口、11…弁体、11A…本体、11B…弁部、11C…弾性材、12…蓋部、12A…軸体、12B…蓋、12C…連結部、13…コイルスプリング、14…取込口、15…流入口、16…排出口、17…蒸気案内経路、18…第1案内部、19…第2案内部、19A…折り返し部、19B…幅広部、19C…経路延長部、20…排気管、21…シール材、22…筒状部、23…覆い部、23A…内面、24…堰、25…幅狭部分、C…左右方向中心線、D…中心、E…延長線、H1,H2…幅、R1,R2…領域、X…水平軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容して加熱するための容器本体と、該容器本体の上方の開口部を覆うための蓋体とを備え、該蓋体の底部には、前記容器本体内で発生した蒸気を流入させるための流入口を備え、該蓋体の外面には、該流入口からの蒸気を該蓋体の外側に排出するための排出口を備え、前記流入口と前記排出口との間に蒸気案内経路を介在してなる電気貯湯容器であって、
前記蒸気案内経路が、前記容器本体の中心軸方向と直交する平面上に、前記流入口からの蒸気を案内するための第1案内部と、該第1案内部の終端から前記流入口側へ折り返して前記排出口へ案内する第2案内部とを有する折曲経路を備えていることを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】
前記容器本体に、上下方向に長い把持部を有する取手を備え、前記蓋体の底部のうちの該取手の左右方向中心線と前記容器本体の中心とを結ぶ延長線により区分けされる2つの領域のうちの一方の領域内に前記流入口を配置したことを特徴とする請求項1記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
前記流入口が、一方の領域のうちの前記容器本体の外周縁近傍に配置され、前記第1案内部が、該流入口からの蒸気を前記容器本体の中心又は中心近傍を通って他方の領域の外周縁近傍まで案内する経路からなり、該第1案内部の終端から該流入口側へ折り返したことを特徴とする請求項2記載の電気貯湯容器。
【請求項4】
前記流入口に、前記蒸気案内経路の上端よりも上方に立ち上げた筒状部を備え、筒状部の上端から排出される蒸気を取り囲んで前記第1案内部へ下降案内するための覆い部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項5】
前記蒸気案内経路内に、堰を設ける、又は前記蒸気案内経路に案内方向において案内幅が狭くなる部分を設けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−131234(P2010−131234A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310717(P2008−310717)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(507001678)森田電工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】