説明

電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法

【課題】新たに用品を加えること無しにコンデンサ容量を算出することができる電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法を提供する。
【解決手段】電気車用電源装置は、接触器2と、フィルタコンデンサ9と、充電抵抗器3aを有した初期充電回路3と、第1電圧検出器10と、第2電圧検出器11と、制御部20と、を備えている。制御部20は、充電抵抗器3aの抵抗値を示す抵抗情報、第1電圧検出器10で検出された架線1の電圧を示す第1電圧情報、第2電圧検出器11で検出されたフィルタコンデンサ9の電圧を示す第2電圧情報を基に、フィルタコンデンサ9の容量を算出可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気車用電源装置は、パンタグラフを介して架線から受け取った電力を、電気車の照明装置、空調装置等の電動機(負荷)に供給する。上記電気車用電源装置は、電圧検出器を有し、電圧検出器にて架線電圧の有無が検出される。電圧検出器が架線電圧を検出した場合、電気車用電源装置は動作を開始し、すなわち、電動機への電力の供給を開始する。
【0003】
上記のような電気車用電源装置において、パンタグラフが架線から離れた(離線)時間が短時間であれば、フィルタコンデンサに蓄積された電荷を放出して負荷側に電力を供給する事ができる。従って、パンタグラフが架線から離れた場合における負荷側への電力供給可能時間を延長するためには、フィルタコンデンサの容量を増加すれば良いことになる。
【0004】
しかしながら、単にフィルタコンデンサの容量を増加すると、パンタグラフが架線に再び接触(着線)した場合の、架線電圧とフィルタコンデンサとの電圧差により、架線からフィルタコンデンサへの充電電流が過大になってしまう。充電電流が過大になると、電気車用電源装置の入力過電流保護やフィルタコンデンサ過電圧保護が動作したり、変電所側の過電流保護が動作したりする。そこで、充電電流が過大となる状態を回避するため、フィルタコンデンサと離線補償コンデンサを分けて搭載した電気車用電源装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−154341号公報
【特許文献2】特開2010−41805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィルタコンデンサを搭載した電気車用電源装置において、フィルタコンデンサの容量低下を検出するために、コンデンサ容量を算出することが望まれている。コンデンサ容量は、充電時のフィルタコンデンサの電圧及び電流から算出することが可能である。
【0007】
フィルタコンデンサの電圧及び電流を、既存の電圧検出器及び電流検出器にて検出する場合、フィルタコンデンサの電圧は既存の電圧検出器にて検出可能である。しかしながら、フィルタコンデンサの電流は既存の電流検出器にて検出不可能である。
【0008】
なぜなら、電流検出器は、数百A乃至数千Aを数Vに変換する大電流検出用途として、事故電流に対する保護のために採用されている。また、充電時のフィルタコンデンサの電流は数A乃至十数Aである。このため、電流検出器の検出誤差は、充電電流に対して同程度かそれ以上となる。
【0009】
また、コンデンサ容量を算出するため、電気車用電源装置に新たに検出器(電流検出器や電圧検出器)を設けることが考えられる。しかしながら、この場合は、既に運用されている電気車用電源装置の改造や製造コストの高騰を招いてしまう。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、新たに用品を加えること無しにコンデンサ容量を算出することができる電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る電気車用電源装置は、
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、
前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から電力が入力され、電荷を蓄積可能であるフィルタコンデンサと、
前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記フィルタコンデンサへの突入電流を抑制するための充電抵抗器を有した初期充電回路と、
前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出可能な第1電圧検出器と、
前記フィルタコンデンサの電圧を検出可能な第2電圧検出器と、
前記充電抵抗器の抵抗値を示す抵抗情報を保持又は取得可能であり、前記第1電圧検出器で検出された前記架線の電圧を示す第1電圧情報を取得可能であり、前記第2電圧検出器で検出された前記フィルタコンデンサの電圧を示す第2電圧情報を取得可能であり、前記抵抗情報、第1電圧情報及び第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサの容量を算出可能な制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
また、一実施形態に係る電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法は、
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から電力が入力され、電荷を蓄積可能であるフィルタコンデンサと、前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記フィルタコンデンサへの突入電流を抑制するための充電抵抗器を有した初期充電回路と、前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出可能な第1電圧検出器と、前記フィルタコンデンサの電圧を検出可能な第2電圧検出器と、を備えた電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法において、
前記充電抵抗器の抵抗値を示す抵抗情報と、前記第1電圧検出器で検出された前記架線の電圧を示す第1電圧情報と、前記第2電圧検出器で検出された前記フィルタコンデンサの電圧を示す第2電圧情報と、を取得し、
前記抵抗情報、第1電圧情報及び第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサの容量を算出することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る電気車用電源装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、第2の実施形態に係る電気車用電源装置を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、第3の実施形態に係る電気車用電源装置を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法について詳細に説明する。始めに、電気車用電源装置の構成について説明する。電気車用電源装置は、鉄道車両等の電気車の照明装置、空調装置等の負荷M(電動機)に電力を供給するものである。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る電気車用電源装置を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、電気車用電源装置は、接触器(CTT)2、初期充電回路3、インバータ4、ACフィルタ5、絶縁トランス6、第1電圧検出器10、第2電圧検出器11、電流検出器13、及び制御部20を備えている。
【0016】
なお、全てを図示しないが、電気車は、それぞれ車輪Sが設けられた一対の台車フレームと、台車フレームに空気ばねを介して支持された車体と、パンタグラフ1aとを備えている。車輪Sは、レールに接触するため、地絡されている。電気車用電源装置は、車体の床下に設置されている。
【0017】
接触器2は、パンタグラフ1aを介して架線1に接続されている。接触器2は、架線1からパンタグラフ1aを介して入力される直流入力をON/OFFする。直流入力は、接触器2を介して初期充電回路3に入力される。
【0018】
初期充電回路3は、接触器2及びフィルタコンデンサ9間に接続されている。初期充電回路3は、フィルタコンデンサ9への突入電流を抑制するための充電抵抗器3aと、接点3bとを有している。電源投入時において接点3bは開いているため、フィルタコンデンサ9には、充電抵抗器3aを通った架線1からの電流(電力)が供給される。これにより、フィルタコンデンサ9への突入電流を抑制する。フィルタコンデンサ9が充電された後は初期充電回路3の接点3bは閉じられる。接触器2及び初期充電回路3の接点3bは、制御部20からの指令により開閉制御される。初期充電回路3を通った電流I(直流)は、インバータ4に入力される。
【0019】
インバータ4は、フィルタコンデンサ9を有している。フィルタコンデンサ9の一端は、初期充電回路3を介して接触器2に接続されている。フィルタコンデンサ9の他端は、車輪Sに接続され、接地されている。フィルタコンデンサ9には、パンタグラフ1a、接触器2及び初期充電回路3(充電抵抗器3a)を介して架線1から電力が入力される。これにより、フィルタコンデンサ9は、入力される電力を充電し、平滑化する。言うまでもないが、フィルタコンデンサ9は、電荷を蓄積可能である。インバータ4は、フィルタコンデンサ9で平滑化された直流をそれぞれ正弦波PWM交流に変換する。
【0020】
ACフィルタ5は、インバータ4の出力を正弦波に波形整形し、絶縁トランス6を介して車両電源を得る。つまり、絶縁トランス6はACフィルタ5の出力を直流回路と絶縁して任意の電圧に変換し電気車の負荷Mに電力を供給する。
【0021】
フィルタコンデンサ9の容量は、インバータ4が動作できる最小限の容量であり、架線電圧とインバータ4が動作できるフィルタコンデンサ9の最低動作電圧との差電圧時に、初期充電回路3の接点3bが投入状態にあるとき、入力過電流などの保護動作が発生しない容量を選定する。
【0022】
第1電圧検出器10は、パンタグラフ1aを介して架線1に接続されている。第1電圧検出器10は、架線1の電圧を検出可能であり、上記電圧を示す第1電圧情報を制御部20に与えることが可能である。第1電圧検出器10は、接触器2を投入するタイミングを計るために用いることができる。
【0023】
第2電圧検出器11は、フィルタコンデンサ9の両端に接続されている。第2電圧検出器11は、フィルタコンデンサ9の電圧を検出可能であり、上記電圧を示す第2電圧情報を制御部20に与えることが可能である。第2電圧検出器11は、インバータ4を制御するために用いることができる。
【0024】
電流検出器13は、初期充電回路3及びインバータ4(フィルタコンデンサ9)間に接続されている。電流検出器13は、パンタグラフ1a、接触器2及び初期充電回路3を介して架線1から入力される大電流(異常であるときの電流I)を検出する用途として、事故電流に対する保護のために採用されている。電流検出器13は、数百A乃至数千Aの大電流を数Vに変換することにより、上記大電流を示す電流情報を制御部20に与えることが可能である。正常であるときの充電時の電流Iは、上記大電流に比べて僅かであり、数A乃至十数Aである。なお、電流検出器13の検出誤差は、正常時の電流Iに対して同程度かそれ以上となる。
【0025】
制御部20は、記憶部21を有している。このため、記憶部21は、充電抵抗器3aの抵抗値を示す抵抗情報を保持可能である。または、制御部20は、充電抵抗器3aの抵抗値を示す抵抗情報を取得し、記憶部21に記憶させてもよい。制御部20は、第1電圧検出器10で検出された架線1の電圧を示す第1電圧情報及び第2電圧検出器11で検出されたフィルタコンデンサ9の電圧を示す第2電圧情報を取得可能である。制御部20は、抵抗情報、第1電圧情報及び第2電圧情報を基に、フィルタコンデンサ9の容量を算出可能である。フィルタコンデンサ9の容量を算出することにより、例えば、フィルタコンデンサ9が劣化しているのかどうかを判断することができる。
【0026】
次に、コンデンサ容量算出方法(フィルタコンデンサ9の容量を算出する方法)について詳しく説明する。フィルタコンデンサ9の容量Cは、蓄積される電荷Qと電極間の電圧Vで算出することができ、次の式(1−1)で表すことができる。
【0027】
=Q/V・・・(1−1)
また、フィルタコンデンサ9に流れる電流をI、電流Iが流れる時間をtとすると、電流Iを積分することにより、蓄積される電荷Qを算出することができる。蓄積される電荷Qは、次の式(1−2)で表すことができる。
【0028】
=∫Idt・・・(1−2)
式(1−1)及び式(1−2)より、容量Cは、次の式(1−3)で表すことができる。
【0029】
=∫Idt/V・・・(1−3)
電圧Vは、第2電圧検出器11を用いて求めることができる。
【0030】
また、この実施形態において、電流Iは、電流Iに等しい(I=I)ため、電流Iを算出すればよい。電流Iは、第1電圧検出器10で検出される架線1から入力される電圧V10と電圧Vの差と、初期充電回路3内の充電抵抗器3aの抵抗値R3aと、により算出することができ、次の式(1−4)で表すことができる。
【0031】
(=I)=(V10−V)/R3a・・・(1−4)
これにより、上記式(1−3)及び式(1−4)からフィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができる。
【0032】
上記のように構成された第1の実施形態に係る電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法によれば、電気車用電源装置は、接触器2と、フィルタコンデンサ9と、充電抵抗器3aを有した初期充電回路3と、第1電圧検出器10と、第2電圧検出器11と、制御部20と、を備えている。
【0033】
制御部20は、第1電圧検出器10で検出された架線1の電圧V10を示す第1電圧情報と、第2電圧検出器11で検出されたフィルタコンデンサ9の電圧Vを示す第2電圧情報と、を取得する。制御部20は、充電抵抗器3aの抵抗値R3aを示す抵抗情報、第1電圧情報及び第2電圧情報を基に、フィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができる。
【0034】
このため、算出した容量Cを基に、例えば、フィルタコンデンサ9が劣化しているのかどうかを判断することができ、さらには、フィルタコンデンサ9を交換するのかどうかの判断を行うことができる。しかも、電気車用電源装置に新たに用品(検出器)を加えること無しにフィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができるため、電気車用電源装置の改造や製造コストの高騰を抑制することができる。
上記のことから、新たに用品を加えること無しにコンデンサ容量を算出することができる電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法を得ることができる。
【0035】
次に、第2の実施形態に係る電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法について説明する。始めに、電気車用電源装置の構成について説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
図2は、第2の実施形態に係る電気車用電源装置を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、電気車用電源装置は、充電抑制回路7、補償コンデンサ(離線補償コンデンサ)8及び電流検出器14をさらに備えている。
【0037】
補償コンデンサ8は、フィルタコンデンサ9に並列に接続され、電荷を蓄積可能である。補償コンデンサ8は、パンタグラフ1aが架線1から離れた状態にてフィルタコンデンサ9に与える電力を補償する。補償コンデンサ8の容量としては、パンタグラフ1aが架線1と離れた状態において、負荷M側に電力を規定時間供給することが可能となる十分大きな容量を選定する。
【0038】
充電抑制回路7は、補償コンデンサ8に直列に接続されている。充電抑制回路7は、抵抗器とダイオードとが並列接続されて形成されている。充電抑制回路7は、補償コンデンサ8への電荷の蓄積を抑制するためのものである。
【0039】
電流検出器14は、充電抑制回路7及び補償コンデンサ8に直列に接続されている。電流検出器14は、充電抑制回路7及び補償コンデンサ8に入力される電流Iを検出可能である。電流検出器14は、電抑制回路7や補償コンデンサ8に異常が発生した時の保護のために用いることができる。
【0040】
記憶部21は、充電抑制回路7内の抵抗値を示す他の抵抗情報をさらに保持可能である。または、制御部20は、充電抑制回路7内の抵抗値を示す他の抵抗情報をさらに取得し、記憶部21に記憶させてもよい。制御部20は、充電抑制回路7及び補償コンデンサ8に入力される電流Iを示す電流情報をさらに取得可能である。
【0041】
制御部20は、抵抗情報、他の抵抗情報、第1電圧情報、第2電圧情報及び電流情報を基に、補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9の容量をそれぞれ算出可能である。補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9の容量を算出することにより、例えば、補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9が劣化しているのかどうかを判断することができる。
【0042】
次に、コンデンサ容量算出方法(補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9の容量を算出する方法)について詳しく説明する。補償コンデンサ8の容量Cは、蓄積される電荷Qと電極間の電圧Vで算出することができ、次の式(2−1)で表すことができる。
【0043】
=Q/V・・・(2−1)
また、補償コンデンサ8に流れる電流をI、電流Iが流れる時間をtとすると、電流Iを積分することにより、蓄積される電荷Qを算出することができる。蓄積される電荷Qは、次の式(2−2)で表すことができる。
【0044】
=∫Idt・・・(2−2)
式(2−1)及び式(2−2)より、容量Cは、次の式(2−3)で表すことができる。
【0045】
=∫Idt/V・・・(2−3)
この実施形態において、電流Iは、電流I及び充電抑制回路7に流れる電流Iに等しい(I=I=I)ため電流検出器14を用いて求めることができる。
【0046】
また、この実施形態において、電圧Vは、フィルタコンデンサの電圧Vと充電抑制回路7の両端間の電圧Vの差に等しい。電圧Vは、第2電圧検出器11を用いて求めることができるため、電圧Vを算出すればよい。電圧Vは、電流Iと、充電抑制回路7内の抵抗値Rとにより算出することができるため、電圧Vは、次の式(2−4)で表すことができる。
【0047】
=V−V=V−I・R・・・(2−4)
これにより、上記式(2−3)、式(2−4)及びI=Iの関係式から補償コンデンサ8の容量Cを算出することができる。
【0048】
一方、フィルタコンデンサ9の容量Cは、次の式(2−5)で表すことができる。
【0049】
=∫Idt/V・・・(2−5)
また、この実施形態において、電流Iは、電流Iと電流Iの差に等しい(I=I−I)ため、電流Iを算出すればよい。電流Iは、次の式(2−6)で表すことができるため、電流Iは、次の式(2−7)で表すことができる。
【0050】
=(V10−V)/R3a・・・(2−6)
=(V10−V)/R3a−I・・・(2−7)
これにより、上記式(2−5)及び式(2−7)からフィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができる。
【0051】
上記のように構成された第2の実施形態に係る電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法によれば、電気車用電源装置は、接触器2と、フィルタコンデンサ9と、充電抵抗器3aを有した初期充電回路3と、第1電圧検出器10と、第2電圧検出器11と、制御部20と、を備えている。電気車用電源装置は、充電抑制回路7、補償コンデンサ8及び電流検出器14をさらに備えている。
【0052】
制御部20は、第1電圧検出器10で検出された架線1の電圧V10を示す第1電圧情報と、第2電圧検出器11で検出されたフィルタコンデンサ9の電圧Vを示す第2電圧情報と、を取得する。制御部20は、補償コンデンサ8及び充電抑制回路7に入力される電流Iを示す電流情報をさらに取得する。
【0053】
制御部20は、充電抵抗器3aの抵抗値R3aを示す抵抗情報、電抑制回路7内の抵抗値Rを示す他の抵抗情報、第1電圧情報、第2電圧情報及び電流情報を基に、補償コンデンサ8の容量C及びフィルタコンデンサ9の容量Cをそれぞれ算出することができる。
【0054】
このため、算出した容量C、Cを基に、例えば、補償コンデンサ8やフィルタコンデンサ9が劣化しているのかどうかを判断することができ、さらには、補償コンデンサ8やフィルタコンデンサ9を交換するのかどうかの判断を行うことができる。しかも、電気車用電源装置に新たに用品(検出器)を加えること無しに補償コンデンサ8やフィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができるため、電気車用電源装置の改造や製造コストの高騰を抑制することができる。
上記のことから、新たに用品を加えること無しにコンデンサ容量を算出することができる電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法を得ることができる。
【0055】
次に、第3の実施形態に係る電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法について説明する。始めに、電気車用電源装置の構成について説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第1及び第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
図3は、第3の実施形態に係る電気車用電源装置を概略的に示すブロック図である。
図3に示すように、この実施形態に係る電気車用電源装置は、電流検出器14の替わりに第3電圧検出器12を備えている以外、上記第2の実施形態に係る電気車用電源装置と同様に形成されている。
【0057】
第3電圧検出器12は、補償コンデンサ8の両端に接続されている。第3電圧検出器12は、補償コンデンサ8の電圧を検出可能であり、上記電圧を示す第3電圧情報を制御部20に与えることが可能である。第3電圧検出器12は、電抑制回路7や補償コンデンサ8に異常が発生した時の保護のために用いることができる。
【0058】
制御部20は、第3電圧検出器12で検出された補償コンデンサ8の電圧を示す第3電圧情報をさらに取得可能である。制御部20は、抵抗情報、他の抵抗情報、第1電圧情報、第2電圧情報及び第3電圧情報を基に、補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9の容量をそれぞれ算出可能である。補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9の容量を算出することにより、例えば、補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9が劣化しているのかどうかを判断することができる。
【0059】
次に、コンデンサ容量算出方法(補償コンデンサ8及びフィルタコンデンサ9の容量を算出する方法)について詳しく説明する。補償コンデンサ8の容量Cは、次の式(3−1)で表すことができる。
【0060】
=∫Idt/V・・・(3−1)
電圧Vは、第3電圧検出器12を用いて求めることができる。
【0061】
この実施形態において、電流Iは、充電抑制回路7に流れる電流Iに等しい(I=I)ため、電流Iを算出すればよい。電流Iは、電圧Vと電圧Vの差と、抵抗値Rと、により算出することができ、次の式(3−2)で表すことができる。
【0062】
(=I)=(V−V)/R・・・(3−2)
これにより、上記式(3−1)及び式(3−2)から補償コンデンサ8の容量Cを算出することができる。
【0063】
一方、フィルタコンデンサ9の容量Cは、次の式(3−3)で表すことができる。
【0064】
=∫Idt/V・・・(3−3)
電圧Vは、第2電圧検出器11を用いて求めることができる。
【0065】
また、この実施形態において、電流Iは、電流Iと電流Iの差に等しい(I=I−I)ため、電流Iを算出すればよい。電流Iは、次の式(3−4)で表すことができるため、電流Iは、次の式(3−5)で表すことができる。
【0066】
=(V10−V)/R3a・・・(3−4)
=(V10−V)/R3a−I・・・(3−5)
これにより、上記式(3−3)及び式(3−5)からフィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができる。
【0067】
上記のように構成された第3の実施形態に係る電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法によれば、電気車用電源装置は、接触器2と、フィルタコンデンサ9と、充電抵抗器3aを有した初期充電回路3と、第1電圧検出器10と、第2電圧検出器11と、制御部20と、充電抑制回路7と、補償コンデンサ8と、を備えている。電気車用電源装置は、第3電圧検出器12をさらに備えている。
【0068】
制御部20は、第1電圧検出器10で検出された架線1の電圧V10を示す第1電圧情報と、第2電圧検出器11で検出されたフィルタコンデンサ9の電圧Vを示す第2電圧情報と、を取得する。制御部20は、第3電圧検出器12で検出された補償コンデンサ8の電圧Vを示す第3電圧情報を取得する。
【0069】
制御部20は、充電抵抗器3aの抵抗値R3aを示す抵抗情報、電抑制回路7内の抵抗値Rを示す他の抵抗情報、第1電圧情報、第2電圧情報及び第3電圧情報を基に、補償コンデンサ8の容量C及びフィルタコンデンサ9の容量Cをそれぞれ算出することができる。
【0070】
このため、算出した容量C、Cを基に、例えば、補償コンデンサ8やフィルタコンデンサ9が劣化しているのかどうかを判断することができ、さらには、補償コンデンサ8やフィルタコンデンサ9を交換するのかどうかの判断を行うことができる。しかも、電気車用電源装置に新たに用品(検出器)を加えること無しに補償コンデンサ8やフィルタコンデンサ9の容量Cを算出することができるため、電気車用電源装置の改造や製造コストの高騰を抑制することができる。
上記のことから、新たに用品を加えること無しにコンデンサ容量を算出することができる電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法を得ることができる。
【0071】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0072】
例えば、この発明の電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能であり、各種の電気車用電源装置及び電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…架線、1a…パンタグラフ、2…接触器、3…初期充電回路、3a…充電抵抗器、7…充電抑制回路、8…補償コンデンサ、9…フィルタコンデンサ、10…第1電圧検出器、11…第2電圧検出器、12…第3電圧検出器、13…電流検出器、14…電流検出器、20…制御部、21…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、
前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から電力が入力され、電荷を蓄積可能であるフィルタコンデンサと、
前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記フィルタコンデンサへの突入電流を抑制するための充電抵抗器を有した初期充電回路と、
前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出可能な第1電圧検出器と、
前記フィルタコンデンサの電圧を検出可能な第2電圧検出器と、
前記充電抵抗器の抵抗値を示す抵抗情報を保持又は取得可能であり、前記第1電圧検出器で検出された前記架線の電圧を示す第1電圧情報を取得可能であり、前記第2電圧検出器で検出された前記フィルタコンデンサの電圧を示す第2電圧情報を取得可能であり、前記抵抗情報、第1電圧情報及び第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサの容量を算出可能な制御部と、を備えていることを特徴とする電気車用電源装置。
【請求項2】
前記フィルタコンデンサに並列に接続され、電荷を蓄積可能であり、前記パンタグラフが前記架線から離れた状態にて前記フィルタコンデンサに与える電力を補償する補償コンデンサと、
前記補償コンデンサに直列に接続され、前記補償コンデンサへの電荷の蓄積を抑制するための充電抑制回路と、
前記補償コンデンサ及び充電抑制回路に入力される電流を検出可能な電流検出器と、をさらに備え、
前記制御部は、前記充電抑制回路内の抵抗値を示す他の抵抗情報をさらに保持又は取得可能であり、前記補償コンデンサ及び充電抑制回路に入力される電流を示す電流情報をさらに取得可能であり、前記抵抗情報、他の抵抗情報、第1電圧情報、第2電圧情報及び電流情報を基に、前記補償コンデンサ及びフィルタコンデンサの容量をそれぞれ算出可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気車用電源装置。
【請求項3】
前記フィルタコンデンサに並列に接続され、電荷を蓄積可能であり、前記パンタグラフが前記架線から離れた状態にて前記フィルタコンデンサに与える電力を補償する補償コンデンサと、
前記補償コンデンサに直列に接続され、前記補償コンデンサへの電荷の蓄積を抑制するための充電抑制回路と、
前記補償コンデンサの電圧を検出可能な第3電圧検出器と、をさらに備え、
前記制御部は、前記充電抑制回路内の抵抗値を示す他の抵抗情報をさらに保持又は取得可能であり、前記第3電圧検出器で検出された前記補償コンデンサの電圧を示す第3電圧情報をさらに取得可能であり、前記抵抗情報、他の抵抗情報、第1電圧情報、第2電圧情報及び第3電圧情報を基に、前記補償コンデンサ及びフィルタコンデンサの容量をそれぞれ算出可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気車用電源装置。
【請求項4】
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から電力が入力され、電荷を蓄積可能であるフィルタコンデンサと、前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記フィルタコンデンサへの突入電流を抑制するための充電抵抗器を有した初期充電回路と、前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出可能な第1電圧検出器と、前記フィルタコンデンサの電圧を検出可能な第2電圧検出器と、を備えた電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法において、
前記充電抵抗器の抵抗値を示す抵抗情報と、前記第1電圧検出器で検出された前記架線の電圧を示す第1電圧情報と、前記第2電圧検出器で検出された前記フィルタコンデンサの電圧を示す第2電圧情報と、を取得し、
前記抵抗情報、第1電圧情報及び第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサの容量を算出することを特徴とする電気車用電源装置のコンデンサ容量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−165598(P2012−165598A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25049(P2011−25049)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】