説明

電気部品用ソケット

【課題】ロケータープレートとしての機能を十分に発揮させると共にロケータープレートの作動感を高めることが可能な電気部品用ソケットを提供する。
【解決手段】ICパッケージが収容されるソケット本体12と、ソケット本体12に設けられ、ICパッケージの端子に上端部13aが接触するコンタクトピン13と、ソケット本体12の下側に上下動自在に設けられ、コンタクトピン13の下端部13bが挿入される挿入孔15bが形成されたロケータープレート15と、ロケータープレート15に設けられたスタンドオフ16と、を有し、スタンドオフ16は、ロケータープレート15の最下降位置P1で、下方への移動を規制する第1係止部16cと、上方への移動を規制すると共に所定の力を受けた場合に弾性変形して上方への移動を許可する第2係止部16dと、を有するICソケット11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板上に配設され、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品の試験等を行うため、この電気部品を収容する電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の「電気部品用ソケット」としては、「電気部品」であるICパッケージを着脱自在に収容するICソケットがある。
【0003】
このICソケットは、配線基板上に配設されるソケット本体を有し、このソケット本体には、ICパッケージ端子及び配線基板を電気的に接続する複数のコンタクトピンが設けられている。また、ソケット本体の下側には、ICソケットの搬送時にコンタクトピンの下端部が曲がることを防止するため、コンタクトピンの下端部を所定位置に保持するロケータープレートが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このロケータープレートは、その外周部に複数の爪が形成され、これらの爪がソケット本体に係合することにより、最上昇位置と最下降位置(ソケット本体の下方でコンタクトピンの下端部近傍位置)との間で上下動自在に支持されている。そして、配線基板への配設前(搬送時など)には、ロケータープレートが最下降位置に位置していると共に、配線基板への配設時には、ロケータープレートが配線基板に押し上げられて最上昇位置まで移動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−155082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のものにあっては、配線基板への配設前には、ロケータープレートの爪がソケット本体に係合しているに過ぎず、最下降位置におけるロケータープレートの位置保持力があまり強くない。そのため、ICソケットの搬送時において、ロケータープレートがICソケットの振動などに伴って容易にソケット本体側へ上昇してしまい、ロケータープレートとしての機能(つまり、コンタクトピンの下端部を所定位置に保持する機能)を十分に発揮できない場合がある。
【0007】
また、ロケータープレートの爪がソケット本体に単に係合しているだけの構造であるため、ロケータープレートの上下動に円滑さを欠き、ロケータープレートの作動感が優れないという課題もある。
【0008】
そこで、この発明は、ロケータープレートとしての機能を十分に発揮させると共にロケータープレートの作動感を高めることが可能な電気部品用ソケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成するために、この発明は、電気部品が収容されるソケット本体と、該ソケット本体に設けられ、前記電気部品の端子に上端部が接触するコンタクトピンと、前記ソケット本体の下側に上下動自在に設けられ、前記コンタクトピンの下端部が挿入される挿入孔が形成されたロケータープレートと、該ロケータープレートに設けられたロック部材と、を有し、該ロック部材は、前記ロケータープレートの最下降位置で、下方への移動を規制する第1係止部と、上方への移動を規制すると共に所定の力を受けた場合に弾性変形して上方への移動を許可する第2係止部と、を有する電気部品用ソケットとしたことを特徴とする。
【0010】
他の特徴は、前記ソケット本体には、前記コンタクトピンが挿入されると共に、前記ロック部材が挿入されて前記第1係止部及び前記第2係止部に係脱される係止孔が形成されたコンタクトピンプレートを設けたことにある。
【0011】
他の特徴は、前記ロック部材は、前記ロケータープレートに固定される固定部と、該固定部から上方に延長されて前記第1係止部及び前記第2係止部が形成され、弾性変形可能な複数の係止片と、を有することにある。
【0012】
他の特徴は、前記係止片が2片、対称に設けられていることにある。
【0013】
他の特徴は、前記ロック部材が複数箇所に設けられていることにある。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ロック部材の第1,第2係止部により、最下降位置におけるロケータープレートの位置保持力が増強されるため、電気部品用ソケットの搬送時において、ロケータープレートが電気部品用ソケットの振動などに伴って容易にソケット本体側へ上昇してしまう事態は生じない。従って、ロケータープレートとしての機能を十分に発揮させることができる。
【0015】
また、ロケータープレートの最下降位置で上方への移動を規制すると共に所定の力を受けた場合に弾性変形して上方への移動を許可する第2係止部を設けることにより、ロケータープレートの上昇時にその弾性力を作用させることで、ロケータープレートの作動を円滑にして作動感を高めることができる。
【0016】
他の特徴によれば、ロック部材の係止片が2片、対称に設けられることにより、ロック部材の作動時のバランスが良くなり、ロケータープレートの上下動が円滑になる。
【0017】
他の特徴によれば、ロック部材が複数箇所に設けられることにより、ロケータープレートの爪をソケット本体に係合させることで両者間の結合力を得る従来の電気部品用ソケットに比べて、ロケータープレートを上下動させるときに平面状態を保ちやすい。
【0018】
また、ロック部材は、コンタクトピンが配設されている領域を除けば、適宜自由な位置に配設することができるため、ロケータープレートを上下動させるときの作動感や平面状態を良好な状態に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態に係るICソケットを斜め下方から見た斜視図である。
【図2】同実施の形態に係る配線基板への配設前の状態におけるICソケットの断面図である。
【図3】同実施の形態に係る図2の要部を示す拡大断面図である。
【図4】同実施の形態に係る配線基板への配設後の状態におけるICソケットの断面図である。
【図5】同実施の形態に係る図4の要部を示す拡大断面図である。
【図6】同実施の形態に係るスタンドオフ斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1乃至図6には、この発明の実施の形態を示す。
【0022】
まず、構成を説明すると、図中符号11は、「電気部品用ソケット」としてのICソケットで、このICソケット11は、「電気部品」である図示省略のICパッケージ等のバーンイン試験等を行うために、このICパッケージと配線基板Pとの電気的接続を図るものである。
【0023】
ICソケット11は、図4に示すように、配線基板P上に配設されるようになっており、図1に示すように、配線基板P上に固定され、図示省略のICパッケージが収容されるソケット本体12と、このソケット本体12に開閉自在に設けられ、図示省略のICパッケージを押圧するカバー部材17とを有している。ソケット本体12には、複数のコンタクトピン13が挿入され、これらのコンタクトピン13の上端部13aがICパッケージの図示省略の端子に接触するようになっている。
【0024】
ソケット本体12の上部には、図2に示すように、フローティングプレート19が設けられると共に、ソケット本体12の下部には、コンタクトピンプレート14が設けられ、このコンタクトピンプレート14にコンタクトピン13が圧入され、上端部13aがフローティングプレート19に挿入されている。また、このコンタクトピンプレート14には、図6に示すように、円形の係止孔14aが形成されている。
【0025】
コンタクトピンプレート14の下側には、図1,図2,図4に示すように、平板状のロケータープレート15が4個のガイドピン18を介して上下動自在に取り付けられ、ロケータープレート15には、コンタクトピン13の下端部13bが挿入される挿入孔15bが形成されている。
【0026】
ロケータープレート15には、図1に示すように、8個の「ロック部材」であるスタンドオフ16が等間隔で配設されている。それぞれのスタンドオフ16は、図3,図5に示すように、ロケータープレート15の挿入孔15aに圧入されて固定される固定部16aと、この固定部16aから上方に延長されて対称に設けられた2片の略くの字状の弾性変形可能な係止片16bとを有している。それぞれの係止片16bには、ロケータープレート15の最下降位置P1で、下方への移動を規制する第1係止部16cと、上方への移動を規制すると共に所定の力を受けた場合に弾性変形して上方への移動を許可する第2係止部16dとが形成されている。これらの第1係止部16c及び第2係止部16dは、コンタクトピンプレート14の係止孔14aに係脱されるように構成されている。
【0027】
第1係止部16cは、外側に向けて突出する鉤形状を呈し、第2係止部16dは、くの字状に折れ曲がった折曲部位である。
【0028】
次に、かかるICソケット11の使用方法について、図2乃至図5を用いて説明する。
【0029】
まず、ICソケット11が配線基板P上に配設される前(ICソケット11の搬送時など)には、図2,図3に示すように、複数のスタンドオフ16の係止片16bは、第1係止部16cがコンタクトピンプレート14の係止孔14aの上端に係止しているため、下方への移動が規制されている。また、第2係止部16d(係止片16bの折曲部位)がコンタクトピンプレート14の係止孔14aの下端より下方に位置すると共に、係止片16bが内側に向けて弾性変形されることで、その反力が外側に向けて作用することにより、第2係止部16dがコンタクトピンプレート14の係止孔14aに係止しているため、上方への移動が規制されている。その結果、ロケータープレート15は、最下降位置P1に容易に上下動しないように保持される。そのため、ICソケット11の搬送時において、ロケータープレート15がICソケット11の振動などに伴って容易にコンタクトピンプレート14側へ上昇してしまう事態は生じない。従って、ロケータープレート15としての機能(つまり、コンタクトピン13の下端部13bを所定位置に保持する機能)を十分に発揮させることができる。
【0030】
続いて、ICソケット11が配線基板P上に配設されたときには、図4,図5に示すように、ロケータープレート15は、配線基板Pに押し上げられて最上昇位置P2まで上昇し、ロケータープレート15により位置決めされていた複数のコンタクトピン13の下端部13bが配線基板Pの図示省略の挿入孔に確実に挿入され、半田付けされる。
【0031】
この場合には、図3に示す状態から、ロケータープレート15が所定の力で相対的に上方に押し上げられると、係止片16bが内側に向けて弾性変形され、第2係止部16dが上昇して係止孔14a下端との係止状態が解除され、上方への移動が許可され、第2係止部16dが係止孔14a内面を摺動して行く。そして、第2係止部16dが係止孔14aの上方へ抜けると、第2係止部16dの下側の傾斜面が係止孔14aの上縁を摺動して行く。このように、係止片16bの弾性力が作用した状態で第2係止部16dが係止孔14a内面を摺動すると共に、第2係止部16dの下側の傾斜面が係止孔14aの上縁を摺動することにより、がたつくことなくロケータープレート15を上昇させることができる。その結果、ロケータープレート15の作動を円滑にして作動感を高めることができる。
【0032】
さらに、ロケータープレート15には複数(ここでは計8個)のスタンドオフ16が等間隔で配設されているので、ロケータープレート15の平面状態を保ちつつ上昇させることができる。
【0033】
また、スタンドオフ16は係止片16bが2片、対称に設けられているため、スタンドオフ16の作動時のバランスが良くなり、ロケータープレート15の上下動が円滑になる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、「電気部品用ソケット」としてICソケット11に、この発明を適用したが、これに限らず、他の装置にも適用できることは勿論である。
【0035】
また、上記実施の形態では、ソケット本体12の下部にコンタクトピンプレート14を設けたが、例えば、係止孔14aに相当する係止孔をソケット本体12に形成することにより、コンタクトピンプレート14を省くこともできる。
【0036】
また、上記実施の形態では、ロケータープレート15に8個のスタンドオフ16を配設したが、スタンドオフ16の個数は何個でも構わない。
【0037】
また、上記実施の形態では、スタンドオフ16が2片の係止片16bを有しているが、係止片16bの個数は1片、3片あるいはそれ以上でも良い。
【0038】
さらに、上記実施の形態では、「ロック部材」としてスタンドオフ16を、この発明に適用したが、これに限らず、他の構造のものでも良い。
【0039】
また、この発明の電気部品用ソケットは、いわゆるオープントップタイプあるいはクラムシェルタイプのICソケット、あるいは電気部品を押圧するプッシャーが自動機側に設けられたもの等にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
11 ICソケット(電気部品用ソケット)
12 ソケット本体
13 コンタクトピン
13a 上端部
13b 下端部
14 コンタクトピンプレート
14a 係止孔
15 ロケータープレート
15a 挿入孔
15b 挿入孔
16 スタンドオフ(ロック部材)
16a 固定部
16b 係止片
16c 第1係止部
16d 第2係止部
17 カバー部材
18 ガイドピン
19 フローティングプレート
P 配線基板
P1 最下降位置
P2 最上昇位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が収容されるソケット本体と、
該ソケット本体に設けられ、前記電気部品の端子に上端部が接触するコンタクトピンと、
前記ソケット本体の下側に上下動自在に設けられ、前記コンタクトピンの下端部が挿入される挿入孔が形成されたロケータープレートと、
該ロケータープレートに設けられたロック部材と、を有し、
該ロック部材は、前記ロケータープレートの最下降位置で、下方への移動を規制する第1係止部と、上方への移動を規制すると共に所定の力を受けた場合に弾性変形して上方への移動を許可する第2係止部と、を有することを特徴とする電気部品用ソケット。
【請求項2】
前記ソケット本体には、前記コンタクトピンが挿入されると共に、前記ロック部材が挿入されて前記第1係止部及び前記第2係止部に係脱される係止孔が形成されたコンタクトピンプレートを設けたことを特徴とする請求項1に記載の電気部品用ソケット。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記ロケータープレートに固定される固定部と、該固定部から上方に延長されて前記第1係止部及び前記第2係止部が形成され、弾性変形可能な複数の係止片と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気部品用ソケット。
【請求項4】
前記係止片が2片、対称に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電気部品用ソケット。
【請求項5】
前記ロック部材が複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119118(P2012−119118A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266289(P2010−266289)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】