説明

電気鍍金処理方法

【課題】工数を抑え且つ色調の良い再鍍金処理を可能とする。
【解決手段】酸洗処理部4、基準電流密度A0で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽6を備えた電気鍍金部5、及びロールコーター7を備えるコーティング処理部の順に配置された連続処理ラインに通板することで、鋼板12に対し電気鍍金及びコーティングを連続して施す電気鍍金処理設備を使用する。そして、上記連続処理ラインで再鍍金処理を行う際に、一部の電気鍍金処理槽6a、6bだけを使用し、その電気鍍金処理槽6a、6bでの電流密度を、上記基準電流密度A0の上限値よりも高い高電流密度AMに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気亜鉛鍍金などの電気鍍金処理を行う連続処理ラインに通板して再鍍金処理を行う再鍍金技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鍍金を既に施した鋼板が、鍍金ムラなどの外観不良によって目標鍍金基準を満たさない場合には、従来では、既に施した鍍金を完全に落としてから再鍍金することが実施される。例えば、特許文献1や特許文献2では、亜鉛−ニッケル合金鍍金鋼板の再鍍金方法が開示されている。特許文献1では、高濃度酸洗処理液による酸洗処理によって鍍金を溶かし、次いで水洗及びブラシロールで表面研削をして鍍金を完全に落とした後に、再度酸洗処理して再鍍金を行っている。一方、特許文献2では、脱脂処理後、弱塩酸で酸洗処理を施して表面の鍍金を溶かし、ブラシロールで表面研削を行った後に再鍍金を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−141882号公報
【特許文献2】特開昭64−83687号公報
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1のように鍍金を完全に除去してから再鍍金する従来技術では、鍍金除去時間がかかり、表面研削も必要で、また、酸洗液濃度や回数も複数回変更する必要がある。このため、鍍金処理ラインとは別に、既に施した鍍金を落とすラインが必要となるという課題がある。
また、再鍍金処理を通常の電気鍍金処理ラインと同一ラインで実施する場合は、鍍金を落とす際に、例えば電気鍍金部を非通電の状態として鋼板を鍍金処理ラインに通板させることで、酸洗槽で鍍金を徐々に落とすこととなる。この場合であっても、上記従来技術にも記載のように、酸洗槽を1回通しただけでは完全に鍍金を落とすことは出来ない。すなわち、鍍金落としの為に、鍍金処理ラインに複数回通板する必要があり、工数が掛かる。また、鋼板の表面が酸洗によって不均一に溶解して外観が悪化する。更に、電気鍍金部を非通電状態で通板させると、鍍金液中の硫酸等によって鋼板の表面が荒れることでも外観悪化の原因となる。このため、目標鍍金の外観基準が高いほど、再鍍金で対応出来ない状況となる。
【0005】
また、通常、鍍金が残存した状態で再鍍金を施した場合、鍍金液中に微量含有しているPbが優先的に析出し、耐黒変性が劣化する傾向にあり、外観の色調を重視する用途では問題が発生する。
本発明は、上記のような点を考慮してなされたもので、工数を抑え且つ耐黒変性が優れた再鍍金処理を可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、酸洗処理部と、鍍金液を収容し当該鍍金液に浸漬した鋼板部分に予め設定した電流密度である基準電流密度で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽を備えた電気鍍金部とを備える連続処理ラインに通板することで、鋼板に対し電気鍍金を施す電気鍍金処理設備を使用し、電気鍍金を既に施した鋼板を上記連続処理ラインに通板して、再鍍金処理を行う電気鍍金処理方法であって、
上記複数の電気鍍金処理槽のうち、少なくとも通電を行う最初の電気鍍金処理槽での電流密度を、上記基準電流密度の上限値よりも高い高電流密度に設定し、その高電流密度に設定した電気鍍金処理槽が最下段の電気鍍金処理槽で無い場合には、高電流密度に設定した電気鍍金処理槽よりも下段の電気鍍金処理槽を全て上記高電流密度よりも低い電流密度での通電状態に設定することを特徴とするものである。
【0007】
ここで、「基準電流密度」とは、未鍍金の鋼板に鍍金処理する際に設定する電流密度である。
「基準電流密度の上限値」とは、各電気鍍金処理槽に設定する基準電流密度のうち一番大きな値の基準電流密度を指す。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記高電流密度は、50[A/dm2]以上であることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した構成に対し、上記高電流密度に設定した電気鍍金処理槽を最下段の電気鍍金処理槽とせず、最下段の電気鍍金処理槽での電流密度を5[A/dm2]以上20[A/dm2]以下の範囲として、色調調整のための電気鍍金を行うことを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項4に記載した発明は、酸洗処理部と、鍍金液を収容し当該鍍金液に浸漬した鋼板部分に予め設定した電流密度である基準電流密度で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽を備えた電気鍍金部とを備える連続処理ラインに通板することで、鋼板に対し電気鍍金を施す電気鍍金処理設備を使用し、電気鍍金を既に施した鋼板を上記連続処理ラインに通板して、再鍍金処理を行う電気鍍金処理方法であって、
酸洗処理部での酸洗で、既に施されている鍍金の表層だけを活性化させ、次いで電気鍍金部で、酸洗での除去相当分若しくはそれ以上の鍍金を、上記基準電流密度よりも高い電流密度で電気鍍金することで行うことを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、上記連続処理ラインは、電気鍍金部の下流に、ロールコーターを備えるコーティング処理部を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鍍金処理ラインに1回通板させることで再鍍金の処理を行うことができ、耐黒変性も良好である。このため、再鍍金のための工数を抑えることが出来る。
また、再鍍金のための電気鍍金を高い電流密度で行うことで、鍍金液からのPbの析出が抑制されて、品質の良い鍍金鋼板を製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る連続処理ライン設備を説明する概念図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る電気鍍金処理槽の構成を説明する図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係るコーター装置本体を説明する図である。
【図4】第1実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態で使用する連続処理ライン設備を示す概念図である。
ここで、以下に説明する実施形態の連続処理ライン設備では、電気鍍金部5の下流にコーティング処理部7を設けた例で説明する。但し、電気鍍金部5とコーティング処理部7と一つのラインに設け無くても良い。すなわち、後述の連続処理ライン設備にコーティング処理部7を設けなくても良い。
【0013】
(設備の構成)
本実施形態の連続処理ライン設備は、酸洗処理部及び電気鍍金処理部を有する通常の電気鍍金設備、さらにコーティング部を有する設備等が使用出来る。その一例を図1に示す。図1に示すように、次の設備が上流側から順に配置される。すなわち、本実施形態の連続処理ライン設備は、アンコイラー1、ウエルダー2、入側ルーパー3、酸洗処理部4、電気鍍金部5、コーティング処理部7、出側ルーパー8、トリマー9、検査部10、及びコイラー11を順に備える。
【0014】
アンコイラー1は、鍍金処理を行う鋼板12を払い出す。ウエルダー2は、払い出される鋼板12を溶接にて順次接合して、連続した鍍金処理を可能とする。
酸洗処理部4は、硫酸などの酸を収容した酸洗槽を備える。鋼板12を酸洗槽に通過させることで、鋼板12の表面を洗浄、つまり鍍金付着のための前処理を行う。
電気鍍金部5は、複数段、例えば7段の電気鍍金処理槽6を直列に配置することで構成される。各電気鍍金処理槽6は、図2に示すように、鍍金液61を収容した鍍金槽62と、鍍金槽62内の鋼板部分に所定の電流密度で通電を行う通電装置とを備える。電極65及び通電ロール64が通電装置となる。また、符号63はゴムロールである。
【0015】
図1に例示するコーティング処理部7は、コーター装置が表裏一対で構成され、3ロールコーターの場合であり、図3では、その3ロールコーターを例示している。コーター装置は、コーター装置本体、オーブン、冷却帯を備える。コーター装置本体は、図3に示すように、連続して搬送されてくる鋼板12の表面に対し、コーターパン21内の塗料22を塗布ロール23で転写する。
【0016】
トリマー9は、処理が終了した鋼板12を分離する。検査部10は、鋼板12の表面品質を検査する。外観不良つまり予め設定した目標鍍金基準を満たしていないと判定すると再鍍金の対象となる。
【0017】
(鍍金処理)
上記連続処理ライン設備を使用して、未鍍金の鋼板12に対して電気鍍金及びコーティングを連続して実施する。鋼板12は、例えば冷延鋼板である。また、電気鍍金は例えば電気亜鉛鍍金とする。
【0018】
ここで、未鍍金の鋼板12を対象とした、各電気鍍金処理槽6での通電時の電流密度、すなわち、基準電流密度A0は、目標とする鍍金の付着量やラインスピードにもよるが、通常35[A/dm2]〜45[A/dm2]の範囲に設定されることが多い。
すなわち、通常の未鍍金の鋼板12を上記連続処理ライン設備で通板すると、まず酸洗槽で鋼板表面の洗浄が実施され、続いて、電気鍍金部5の各電気鍍金処理槽6で順次鍍金が付着して目的の鍍金量の付着が実施される。その後に、コーティング処理部7で、塗料の塗布処理が実施される。上記処理が完了すると、再度コイルにするためにトリマー9で切断されてコイラー11に巻き取られる。このとき、鋼板12の品質が検査され、外観不良と判定されると再鍍金処理が必要なコイルとして扱う。
【0019】
次に、再鍍金処理が必要なコイルと判定された、既に電気鍍金が施された鋼板12についての再鍍金処理について説明する。ここで、再鍍金の対象となる鋼板12は、上記連続処理ライン設備で鍍金が施された鋼板12でなくても良い。
【0020】
再鍍金処理の場合には、7段の電気鍍金処理槽6のうち、下段側の2段、本実施形態では最下段とその一つ手前の各電気鍍金処理槽6a、6bだけを使用して再鍍金を行う。その他の電気鍍金処理槽6は非通電状態とする。下段側の2段の電気鍍金処理槽6a、6bでの通電時の電流密度は、上記未鍍金の鋼板に通常の電気鍍金を施す時の基準電流密度A0の上限値よりも高い高電流密度AMに設定して電気鍍金を行う。
【0021】
この最初の鍍金処理と再鍍金処理を同一のラインで行う場合は、基準電流密度A0は、鋼板12に最初の鍍金処理を行ったときの電流密度の最高値と考えればよい。本実施形態では、未鍍金の鋼板への鍍金処理を50[A/dm2]未満で行っており、上記高電流密度AMとして50[A/dm2]以上に設定する。高電流密度AMの上限は、設備の制約から自ずと決定し、例えば上記高電流密度AMの上限値は100[A/dm2]である。又、目標とする鍍金付着量に対する、再鍍金量によっても上限値が決定する。
【0022】
上記連続処理ライン設備を再鍍金用の設定にして、既に鍍金を施した鋼板12を通板すると、先ず酸洗処理部4で鋼板12の鍍金の表層が活性化して、表層が除去される。ここで、一回の酸洗処理部4を通板させるだけでは、既に施した鍍金を全て除去することは出来ない。
続いて、酸洗処理後の鋼板12が電気鍍金処理部に送られて、再度の電気鍍金が施される。
【0023】
通常、酸洗処理部4での酸洗による除去相当分だけの電気鍍金を実施しようとする場合、鍍金付着量は少なくてよいので、電流密度を上記基準電流密度A0よりも低く設定することが想定されるが、本実施形態では、逆に上記基準電流密度A0よりも高く設定する。このため、通電する電気鍍金処理槽6を減らす。
黒変が起こる理由については、不純物のPbが原因と考えられる。酸洗後に鍍金が残存した状態で再鍍金を行う場合、通電を開始する鍍金槽での電流密度が低いほどPbが析出しやすくなる。
【0024】
この点、本実施形態では、再鍍金処理時の電流密度を高電流密度AMに設定することで、再鍍金の際にPbの析出を抑える。このことは、再鍍金による耐黒変性劣化を抑えることに繋がる。
続いて、コーティング処理部7で塗料の塗布処理が実行される。
ここで、上記実施形態では、再鍍金前と再鍍金後とで鍍金付着量が同じ場合を例示したが、再鍍金によって鍍金付着量を変更する場合には、例えば酸洗処理での鍍金の活性化で除去された分相当よりも多く付着するように設定しても良い。この場合は、少なくとも通電を行う最初の電気鍍金処理槽での電流密度を、上記基準電流密度よりも高い高電流密度に設定すればよい。
【0025】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、再鍍金の際には、電気鍍金の前処理としての酸洗処理にて、既に施した鍍金の表層だけを除去し、その後必要な鍍金量を再鍍金する。この際に、電流密度を、未鍍金の鋼板12に対する電流密度の上限値よりも高い設定にすることで、鍍金液61からのPbの析出を抑えることができ、再鍍金量が少なくても鍍金外観の低下を抑えることが出来る。
【0026】
以上のように、電気鍍金部5の設定を再鍍金用の高電流密度に設定するだけで、上記連続処理ライン設備に1回だけ通板することで、所定の品質を確保しつつ再鍍金が可能となる。
このとき、再鍍金時の高電流密度AMを、50[A/dm2]以上に設定することで優れた耐黒変性を得ることが可能となる。
【0027】
高電流密度AMは、高い方が好ましく、好ましくは、80[A/dm2]以上に設定すると良い。もっとも、再鍍金によって付着する鍍金量及び使用する電気鍍金処理槽の数、ライン速度等によっても、高電流密度AMの上限は制限を受ける。
【0028】
(変形例)
(1)上記実施形態では、再鍍金で使用する、つまり通電する電気鍍金処理槽6を2段設定する場合を例示したが、再鍍金で使用する、つまり通電する電気鍍金処理槽6を1段だけ若しくは3段以上設定しても良い。
(2)上記実施形態では、再鍍金で使用する電気鍍金処理槽6を、最下段及びその一つ前の電気鍍金処理槽6a、6bとし、再鍍金で使用しない、つまり通電しない電気鍍金処理槽は、6a,6bよりも上段側とした。このため、再鍍金のために使用する電気鍍金処理槽6よりも下段側に再鍍金に使用しない電気鍍金処理槽6は、存在しない。
再鍍金で使用する電気鍍金処理槽6の下段側に、再鍍金で使用しない電気鍍金処理槽6を設定する場合には、その電気鍍金処理槽6は、非通電とせず、高電流密度AMよりも低い電流密度で通電状態とする。これは、非通電状態とすると、鍍金液61によって再鍍金した鍍金の表面が荒らされる可能性があるからである。
高電流密度AMで再鍍金処理を行うため、当初の鍍金付着量より相当量厚くする場合以外、全ての電気鍍金処理槽6に通電する場合は少なく、上記再鍍金で使用する(通電する)電気鍍金処理槽6は、出来るだけ下段側に配置することが好ましい。
(3)また、上記再鍍金で使用する(通電する)電気鍍金処理槽6を、最下段以外に設定する。例えば、上記再鍍金で使用する電気鍍金処理槽6を、最下段の一つ前ともう一つ前の電気鍍金処理槽6b、6cに設定する。
【0029】
そして、最下段の電気鍍金処理槽6aを、色調調整の為に使用しても良い。この場合には、最下段の電気鍍金処理槽6aでの電流密度を、5[A/dm2]以上20[A/dm2]以下の範囲に設定する。すなわち、鍍金表面に対して予め決定されている色調がある場合には、その色調を確保するために、低電流で電気鍍金をして鍍金表面の色調を調整する。
【実施例】
【0030】
(第1実施例)
上記の連続処理ライン設備を使用して再鍍金処理の実験を行った。
ここで、再鍍金する鋼板12として、冷延鋼板(中低炭素鋼)、板厚0.4mm×板幅1250mmのものに、電気亜鉛鍍金を20[g/m2]形成した電気亜鉛鍍金鋼板を用いた。本実施例では、ライン速度を60mpmとした。
【0031】
上記酸洗処理部4は、次のように設定した。
・酸洗濃度:酸(H2SO4)の濃度が60〜80[g/l]
・酸洗温度:15〜40[℃]
電気鍍金処理槽6は、7段の電気鍍金処理槽6のものを使用した。また、未鍍金の鋼板に対する各電気鍍金処理槽6の電流密度として、35[A/dm2]に設定した。
【0032】
但し、再鍍金時には、後段の2段以外は非通電状態とし、後段の2段の電流密度を高電流密度AMとして、30[A/dm2]〜100[A/dm2]の間で変更して再鍍金を実施した。
実験結果を図4に示す。この図4は、再鍍金時における、電流密度と、耐黒変性評価に関するΔL値との関係を示すものである。
この図4から分かるように、電流密度を上げるほどΔL値が向上する。そして、50[A/dm2]以上、好ましくは80[A/dm2]以上とすることで、ΔL値をそれぞれ、−2.0以上、−1.0以上にすることが分かる。
【0033】
(第2実施例)
鋼板12として、第1実施例と同様の鋼板を使用し、表1に示す条件で再鍍金処理を行い、性能評価を行った。結果も表1に示す。例えば、表1の実施例1では、再鍍金量を4[g/m2]とし、後段から2つ目の電気鍍金処理槽6を高電流密度AM(50[A/dm2])とし、最下段の電気鍍金処理槽6を色調調整のため低電流密度に設定した。また、使用しない前段の電気鍍金処理槽6は、無通電とした。
【0034】
また、ライン速度は60mpmとした。
また、比較例1では、ラインを4回通板して、酸洗により既に施した旧鍍金層を完全に剥離した後、再鍍金した場合を示す。この場合には、再鍍金量を20[g/m2]とし、未鍍金時の電流密度条件で鍍金処理を実施した。なお、この場合には、鍍金落としに3回通板し、再鍍金に1回通板した場合である。
【0035】
その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
この表1から分かるように、従来に比べて、良好な再鍍金が実現出来ていることが分かる。
なお、品質性能の評価は、以下のようにして行った。
(1)外観:再鍍金後の鋼板表面の目視判定
評価基準
○:均一
×:鍍金ムラあり
(2)色調
スガ試験機株式会社製光沢計ハンディカラーテスターHC1で、L値(明度)を測定した 。
評価基準
◎:L値62.5以上
○:L値61以上62.5未満
×:L値61未満
【0038】
(3)耐黒変性
下記(イ)から(ア)を差し引いた値をΔL値とした。
(ア)再鍍金直後の鋼板の初期L値
(イ)再鍍金後の鋼板を、50℃で5日間経過後、80℃,95%RHの恒温恒湿槽中に 5.5時間放置後のL値
評価基準
◎:ΔL値 −1.0以上
○:ΔL値 −2.0以上 −1.0未満
△:ΔL値 −3.0以上 −2.0未満
×:ΔL値 −3.0未満
【0039】
(4)耐食性
・裸耐食性
再鍍金後の鋼板を、JIS−Z−2371に基づく塩水噴霧試験72時間後の外観(白錆 発生面積率)で評価した。
・アルカリ脱脂後耐食性
再鍍金後の鋼板を(日本パーカライジング(株)製CL−N364S)を用いて、60℃,2分間スプレー処理の条件で脱脂した後、JIS−Z−2371に基づく塩水噴霧試験48時間後の外観(白錆発生面積率)で評価した。
評価基準
○:白錆発生面積率 10%以下
△:白錆発生面積率 10%超25%以下
×:白錆発生面積率 25%超
【0040】
(5)塗装後密着性
再鍍金後の鋼板を下記条件で塗装後、碁盤目試験及びエリクセン押し込み試験を行った。
塗料:デリコンNo.700(大日本塗料(株))、膜厚:30μm
加熱:130℃×30分
評価基準
○:碁盤目試験 剥離率20%以下 かつエリクセン押込み量5mm以上で剥離なし
△:碁盤目試験 剥離率20%超50%以下 または エリクセン3〜5mmで剥離
×:碁盤目試験 剥離率50%超え または エリクセン3mm未満で剥離
【0041】
(6)鍍金密着性
再鍍金後の鋼板を下記条件でエリクセン加工後に鍍金の剥離状況で評価した。
試験方法:エリクセン・テープテスト
(ア)試験対象面にエリクセン試験機により素地に亀裂が入るまで押し出す(碁盤目は入れない)。
(イ)押し出した凸部に粘着テープを貼り、ただちにテープを剥がしてめっき剥離を目視観察する
評価基準
○:めっき層の剥離なし
×:めっき層の一部剥離あり
【符号の説明】
【0042】
4 酸洗処理部
5 電気鍍金部
6 電気鍍金処理槽
7 コーティング処理部
12 鋼板
61 鍍金液
62 鍍金槽
A0 基準電流密度
AM 高電流密度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸洗処理部と、鍍金液を収容し当該鍍金液に浸漬した鋼板部分に予め設定した電流密度である基準電流密度で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽を備えた電気鍍金部とを備える連続処理ラインに通板することで、鋼板に対し電気鍍金を施す電気鍍金処理設備を使用し、
電気鍍金を既に施した鋼板を上記連続処理ラインに通板して、再鍍金処理を行う電気鍍金処理方法であって、
上記複数の電気鍍金処理槽のうち、少なくとも通電を行う最初の電気鍍金処理槽での電流密度を、上記基準電流密度の上限値よりも高い高電流密度に設定し、
その高電流密度に設定した電気鍍金処理槽が最下段の電気鍍金処理槽で無い場合には、高電流密度に設定した電気鍍金処理槽よりも下段の電気鍍金処理槽を全て上記高電流密度よりも低い電流密度での通電状態に設定することを特徴とする電気鍍金処理方法。
【請求項2】
上記高電流密度は、50[A/dm2]以上であることを特徴とする請求項1に記載した電気鍍金処理方法。
【請求項3】
上記高電流密度に設定した電気鍍金処理槽を最下段の電気鍍金処理槽とせず、最下段の電気鍍金処理槽での電流密度を5[A/dm2]以上20[A/dm2]以下の範囲として、色調調整のための電気鍍金を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載した電気鍍金処理方法。
【請求項4】
酸洗処理部と、鍍金液を収容し当該鍍金液に浸漬した鋼板部分に予め設定した電流密度である基準電流密度で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽を備えた電気鍍金部とを備える連続処理ラインに通板することで、鋼板に対し電気鍍金を施す電気鍍金処理設備を使用し、
電気鍍金を既に施した鋼板を上記連続処理ラインに通板して、再鍍金処理を行う電気鍍金処理方法であって、
酸洗処理部での酸洗で、既に施されている鍍金の表層だけを活性化させ、次いで電気鍍金部で、酸洗での除去相当分若しくはそれ以上の鍍金を、上記基準電流密度よりも高い電流密度で電気鍍金することで行うことを特徴とする電気鍍金処理方法。
【請求項5】
上記連続処理ラインは、電気鍍金部の下流に、ロールコーターを備えるコーティング処理部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した電気鍍金処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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