説明

電気集じん器用放電電極

【課題】均一なコロナ放電を得ることができ、仮に火花放電が生じたときでも、断線するおそれのない電気集じん器用放電電極を提供する。
【解決手段】この放電電極板41は、金属板によって形成されている。そして、この放電電極板41の面が、帯電部4内の送気方向Sに沿って装着されるようになっており、この放電電極板41の周縁には、帯電部4内の送気方向とは交差する方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第一の鋸刃状部41m、41rと、帯電部4内の送気方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第二の鋸刃状部41t、41uとが一の放電電極板41毎に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集じん器用の放電電極に係り、特に、車両の荷台に載置して、トンネル掘削工事中に発生するコンクリート吹き付けの際の粉じんや、発破による粉じんの捕集に用いるトンネル掘削工事用電気集じん器に好適に用い得る放電電極に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネル掘削工事中に発生する粉じんを捕集できる車載式の電気集じん器としては、特許文献1に示されるものが提案されている。
同文献に示される電気集じん器は、粉じんを帯電させて集じん電極に捕集する集じんユニットと、この集じんユニットに粉じんを誘引するファンユニットと、このファンユニットで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備えている。そして、集じんユニットは、帯電部と、この帯電部の下流側に配置された集じん部とを有し、帯電部は、放電電極に電圧を印加して、隣接する帯電部電極との間で発生するコロナ放電によって粉じんに電荷を与えて帯電させ、集じん部は、帯電部で帯電した粉じんをクーロン力によって集じん電極に捕集するようになっている。
【0003】
この電気集じん器によれば、ファンユニットで誘引された空気とともに、集じんユニット内に吸い込まれた粉じんは、帯電部の放電線にて発生するコロナ放電によって粉じんに電荷が与えられて帯電する。そして、帯電した粉じんは、空気の流れにより、帯電部の下流側に配置された集じん部に移動する。次いで、帯電した粉じんが、集じん部で形成される電界のクーロン力によって集じん電極に捕集されることで、トンネル掘削工事中に発生する粉じんを捕集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−79445号公報
【特許文献2】WO−2006/009187 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、この特許文献1に示される電気集じん器は、図6に示すように、帯電部104用の放電電極として電線(放電線141)が用いられている。この放電線141の両端には、ばね等を含む支持部142(同図(b)参照)がそれぞれ付設されており、また、水平方向においても、隣接する放電線141相互が支持部142により繋がれている。そして、この両端の支持部142にばねの付勢力を加えて各放電線141が上下方向に張設されている。
ところで、この種の電気集じん器では、粉じんに電荷を効率良く与えて帯電させる上では、帯電部の放電電極において、均一にコロナ放電をさせる必要がある。そして、コロナ放電を均一にするためには、放電電極と帯電部電極との対向距離(以下、「電極間距離」ともいう)を均等にすることが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に示される電気集じん器は、図6を参照して説明したように、帯電部104用の放電電極として放電線141が用いられており、この放電線141をその上下の支持部142のばねで張設し、また、水平方向においても隣接する放電線相互の支持部142を繋いでいるので、この支持部142自体による張設構造の厚み(図6の符号T)により、図6(a)に示すように、支持部142での電極間距離D2が放電線本体部分の本来の電極間距離D1に比べて近くなってしまう。そのため、同文献に開示されるような放電線を用いてこれをその上下で張設する放電電極構造は、均一なコロナ放電を得る上で未だ解決すべき問題がある。
【0007】
また、このような放電線の支持部において、火花放電が発生すると、均一なコロナ放電が得られないばかりか、細い線材である放電線が、発生した火花放電によって支持部付近で断線してしまう場合がある。他方、このような断線を防止するために放電線の線径を太くすると効率良くコロナ放電をさせることが難しくなる。そのため、特許文献1に示される電気集じん器の放電電極構造は、印加する電圧を、火花放電が発生しない電圧まで落とす必要が生じ、コロナ放電電流を限界まで上昇させることができないという問題が残る。
【0008】
ここで、上記のような問題点に対し、例えば特許文献2に示される電気集じん器では、放電電極を帯状とし、その縁部に複数の突起を形成することにより、効率良くコロナ放電をさせ得る技術が開示される。しかし、同文献に記載の技術であっても、帯状の放電電極をその上下で支持部により張設する放電電極構造が必要となるため、帯状放電電極を多数配置する必要のある電気集じん器においては、張設の手間が掛かる上、均一なコロナ放電を得つつも、支持部付近での火花放電を防止する上で未だ改善の余地がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、放電電極の設置を容易としつつ、均一なコロナ放電を得ることができ、また、仮に火花放電が生じたときでも、断線するおそれのない電気集じん器用放電電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、粉じんを帯電させて集じん電極に捕集する集じんユニットと、該集じんユニットに粉じんを誘引するファンユニットと、該ファンユニットで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備え、前記集じんユニットが、放電電極に電圧を印加し、帯電部電極との間で発生するコロナ放電によって粉じんに電荷を与えて帯電させる帯電部と、該帯電部で帯電した粉じんをクーロン力や電界の力によって捕集する集じん部とを有し、前記帯電部が、放電電極と帯電部電極とを交互に所定間隔を隔てて並設されてなる電気集じん器に用いられる放電電極であって、前記放電電極は、金属板によって形成された放電電極板であり、当該放電電極板の面が、前記帯電部内の送気方向に沿って装着されるようになっており、さらに、前記送気方向とは交差する方向に沿って帯状に形成された複数条の帯状部が一の放電電極板毎に一体に設けられ、各帯状部には、その周縁に、前記帯電部内の送気方向とは交差する方向に沿って凸凹が交互に並んでなる第一の鋸刃状部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電気集じん器用放電電極によれば、放電電極が金属板によって形成されており、当該放電電極板の面が、帯電部内の送気方向に沿って装着されるようになっているので、放電線を用いた場合に比べて断線(破断)のおそれがなく、また、放電電極が板部材なので、特許文献1に記載される放電線のような、ばね等の付設部材によって放電電極を一定の力で張設する張設構造も不要である。
【0011】
特に、この放電電極によれば、送気方向とは交差する方向に沿って帯状に形成された複数条の帯状部が一の放電電極板毎に一体に設けられているので、例えば単にボルト・ナットを用いることで電極間距離を均一な位置に容易に固定することができる。また、送気方向で隣接する帯状部同士の距離も予め確定しているので、装着時の手間が掛からない。そして、このような構成であれば、放電線で必要とした上下の支持部の張設構造も不要なので、放電電極の固定による電極間距離が帯電部電極との固定部分で接近してしまうという問題もなく、放電電極の固定に係る火花放電に対して特段の配慮も不要である。したがって、放電電極の設置が容易である。
【0012】
そして、この放電電極板は、放電電極板の各帯状部の周縁に、帯電部内の送気方向とは交差する方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第一の鋸刃状部を形成しているので、この第一の鋸刃状部が、前記帯電部内の送気方向に複数段に亘って一の放電電極板毎に設けられることになる。そのため、均一なコロナ放電を複数段に亘って帯電部内の送気方向に発生させることができる。したがって、発生する粉じんを効率良く捕集する上で好適である。
ここで、本発明に係る電気集じん器用放電電極において、前記放電電極板の周縁には、前記帯電部内の送気方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第二の鋸刃状部が設けられていれば、より多く均一にコロナ放電をさせる構成として一層好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明の電気集じん器用放電電極によれば、放電電極の設置を容易としつつ、均一にコロナ放電をさせることができ、また、仮に火花放電が生じたときでも、断線するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るトンネル工事用電気集じん器を示す図であり、同図(a)は正面図、(b)はその左側面図、(c)はその平面図である。
【図2】集じん器本体を説明する斜視図であり、同図(a)は外枠を装着した状態の図、(b)は外枠を外した状態の図である。
【図3】帯電部の一つのユニットを説明する分解斜視図である。
【図4】本発明の放電電極の説明図であり、同図(a)はその正面図、(b)は(a)でのB部詳細図である。
【図5】同図(a)は、本発明の放電電極の作用効果を説明する模式図であり、(b)は同図(a)での一の放電電極板を模式的に示した正面図である。
【図6】同図(a)は、従来の放電電極の作用効果を説明する模式図であり、(b)は同図(a)での放電線(複数)を模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図1は、本発明の放電電極を備えるトンネル工事用電気集じん器の一実施形態を説明する図である。このトンネル工事用電気集じん器は、トンネル掘削工事中に発生するコンクリート吹き付け粉じんや、発破による粉じんの捕集に用いるものである。
図1に示すように、この電気集じん器1は、集じんユニット2、ファンユニット6、および吐出ダクトユニット7の3つのユニットを有し、これらは荷台51の後部からこの順に配置されて、車両50の荷台51上に載置固定されるようになっている。
【0016】
詳しくは、集じんユニット2は、粉じんを帯電させて捕集するユニットであり、その空気吸込口3を車両50の後方側に向けて、荷台51上の後部に配置されている。この集じんユニット2の空気吸込口3側の面には、ゴミなどの大きな異物を捕集するために、保護網20(同図(b)参照)が空気吸込口3を覆うように設けられている。
そして、この集じんユニット2に、接続ダクト21を介して粉じんを誘引するファンユニット6が連結されている。さらに、このファンユニット6には、吐出ダクトユニット7が、車両50の荷台51の長手方向に沿って略並行な姿勢で直接連結されている。そして、この吐出ダクトユニット7の空気吐出口8が、車両50の前方に向けて開口している。
【0017】
上記ファンユニット6内には、ファン6Aと、このファン6Aを駆動するモータ6Bとが設けられており、このファン6Aで誘引した空気が、集じんユニット2側から吐出ダクトユニット7側に向けて吐出されるようになっている。
ここで、この電気集じん器1は、上記接続ダクト21が、集じんユニット2側の開口部が大きく、吐出側に向かうにつれて荷台51上から離隔するように縮径されている。これにより、ファンユニット6およびこれに続く吐出ダクトユニット7は、荷台51の前方側の上方に荷台51から離隔して配置されるとともに、集じんユニット2の上部(集じん器本体2A〜Dの部分)、ファンユニット6及び吐出ダクトユニット7が、順にほぼ流路が直線的になるように連結される。
【0018】
また、その離隔によって形成された荷台51上の前方の空間には、集じんユニット2用の高圧電源盤9と、ファンユニット6及び高圧電源盤9の起動停止の制御を行う制御盤10とが配設されている。そして、これら高圧電源盤9、制御盤10および上記集じんユニット2は、一の架台11上に載置されて荷台51上に固定される。そして、荷台51上から離隔されたファンユニット6(および吐出ダクトユニット7)は、高圧電源盤9および制御盤10の左右の支柱12によって下方から支持されている。なお、架台11上の略中央部には、水を噴出して、集じんユニット2の帯電部4や集じん部5に付着した粉じんを洗い流すための洗浄装置30が設けられている。
【0019】
ここで、上記集じんユニット2は、これに誘引する処理風速が7m/s未満となるように、通過断面積(図1(b)での高さH×幅Wによって規定される面積)を5.8m以上としている。また、この集じんユニット2は、複数の集じん器本体を内部に備えており、この例では、車両50の幅方向に2つ、高さ方向に4つの集じん器本体2A〜2Hを配置している(同図(b)参照)。これにより、ファンユニット6の駆動によって、集じんユニット2に誘引される処理風量は2400m/min以上且つ処理風速が7m/s未満となるように設定されている。なお、このファンユニット6での送風能力は、上記集じんユニット2を接続した状態で、処理風量が2400m/minとなるものである。
【0020】
次に、図2〜図4を適宜参照しつつ、上記集じんユニット2内に設ける集じん器本体2A〜Hの構成について説明する。なお、この8つの集じん器本体2A〜Hは、すべて同一構成であるので、ここでは集じん器本体2Aについて説明する。
図2に斜視図を示すように、集じん器本体2Aは、空気吸込口3側に配置される帯電部4と、この帯電部4の吐出側に順に連接される三つの集じん部5とを有する。帯電部4は、放電電極板41に電圧を印加し、帯電部極板42との間で発生するコロナ放電によって粉じんに電荷を与えて帯電可能になっている。そして、集じん部5では、荷電極板43と集じん電極板44との間で電界を形成し、帯電した粉じんをクーロン力によって集じん電極板44に捕集するようになっている。帯電部4は、同図(b)に示すように、放電電極41と帯電部電極42とが、送気方向に沿って交互に配置された構造となっている。また、集じん部5は、荷電極板43と集じん電極板44とを、帯電部4内の送気方向に沿って交互に所定間隔隔てて並設している。
【0021】
以下、上記帯電部4についてより詳しく説明する。
図3に分解斜視図を示すように、この帯電部4は、複数枚の帯電部極板42が、帯電部4内の送気方向に沿って所定間隔を隔てて並設され、隣り合う帯電部極板42同士の間それぞれに、本発明に係る放電電極板41が、所定間隔を隔てて介装されている。これにより、放電電極板41の面は、帯電部4内の送気方向に沿って所定の電極間距離を隔てて装着されるようになっている。
【0022】
ここで、複数枚の放電電極板41および帯電部極板42は、矩形状の金属板によってそれぞれ形成されており、所定の位置に連結シャフト46を挿通するための複数の貫通孔が尖設されている。そして、複数枚の放電電極板41および帯電部極板42全体に、複数の連結シャフト46が送気方向とは直交する方向に挿通されるとともに、両側から一対の外枠45によって挟持されている。そして、この状態で複数の連結シャフト46の両端に形成された雄ねじをナットによって締結することで全体が固定される。なお、上記電極間距離は、放電電極板41および帯電部極板42同士の間に介装されるスペーサによって保持されている。
【0023】
以下、上記放電電極板41についてより詳しく説明する。
本実施形態の放電電極板41は、図4に示すように、送気方向に対して、送気方向に沿った方向を短辺とし、送気方向に交差する方向を長辺とする長方形状をなしている。放電電極板41の面には、送気方向に交差する方向に沿って伸びる矩形状の開口が形成され、これにより、前記送気方向とは交差する方向に沿って帯状に形成された複数条の帯状部41a, 41b, 41c, 41d, 41eが一の放電電極板毎に一体に設けられている。そして、放電電極板41の面には、その上下二箇所および中央の一箇所の計五箇所の必要な位置に、連結シャフト46を挿通するための貫通孔46hが尖設されている。また、送気方向の両側(同図での左右の辺)には、帯電部極板42との締結時の逃げ部46cが上下二箇所(左右で計4箇所)に形成されている。なお、この逃げ部46cによって、上記複数条の帯状部41a〜eのうち、帯状部41a, 41eは、3箇所に分断されている。
【0024】
そして、この放電電極板41は、各帯状部41a〜eには、その周縁に、帯電部4内の送気方向とは交差する方向に沿って、同図(b)に拡大図示するように、凸凹をなす鋸刃状の山と谷が交互に並んで設けられた第一の鋸刃状部41m、41rが設けられている。鋸刃状の山と谷の形状は、鋭利な尖頭状が好ましい。本実施形態の例では、山と谷の形状は、頂点の角度が90度をなし、これが送気方向とは交差する方向に沿って交互に連続して形成されている。
【0025】
このように、この放電電極板41は、放電電極板41の各帯状部41a〜eの周縁に、帯電部4内の送気方向とは交差する方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第一の鋸刃状部41m、41rを形成しているので、帯電部4内に装着された際には、この第一の鋸刃状部41m、41rが、帯電部4内の送気方向に複数段に亘って一の放電電極板毎に設けられることになる。
【0026】
なお、本実施形態の例では、上下方向に形成された各帯状部41a〜e毎に、第一の鋸刃状部41m、41rの組を一条として数えるとき、一の放電電極板41毎に、5条の第一の鋸刃状部41m、41rの組を有する例である。なお、5条のうちの左右の各条については、上記逃げ部46cによって上下方向において3つに分断される。さらに、この放電電極板41には、強度や撓みの程度を考慮して必要に応じて左右で隣接する条同士を繋ぐように桁部41hが設けられている。この例では、上下方向の中央の位置に、および左右の逃げ部46cの位置に桁部41hを形成している。
【0027】
さらに、この放電電極板41の周縁には、同図(b)に拡大図示したものと同様に、帯電部5内の送気方向に沿って凸凹鋸刃状の山と谷が交互に並んで設けられた第二の鋸刃状部41t、41uが設けられている。なお、この第二の鋸刃状部41t、41uにおける山と谷の形状についても、上記第一の鋸刃状部41m、41rと同様である。
本実施形態の例では、この第二の鋸刃状部41t、41uは、上下の二つの辺について形成されている。また、本実施形態の例では、この上下の二つの辺についても、その中央部に、帯電部極板42との締結時の逃げ部46cが凹の半円弧状に形成されており、第二の鋸刃状部41t、41uそれぞれが、送気方向に二分割されている。
【0028】
次に、このトンネル掘削工事用電気集じん器の作用・効果について説明する。
この電気集じん器1をトンネル掘削工事に用いる際には、車両50の荷台51に載置した状態で、トンネル内の切羽の近くまで自走によって移動させる。そして、車両50の後部側を切羽側に向け、車両50の前部側をトンネル入口側に向けた姿勢で停車させる。この状態で電気集じん器1を稼働させる。集じんユニット2とファンユニット6の所定の運転操作は、上記制御盤10によって作業者が行う。
【0029】
電気集じん器1を稼働すると、ファンユニット6のファン6Aの駆動によって空気吸込口3から集じんユニット2内に、コンクリート吹き付け粉じんや発破による粉じんが吸い込まれる。このとき、ゴミなどの大きな異物は、空気吸込口3を覆う上記保護網20で捕集される。次いで、保護網20を通過して、集じんユニット2内に吸い込まれた粉じんは、集じんユニット2(集じん器本体2A〜H)に導かれる。集じん器本体2A〜Hでは、その帯電部4にて発生するコロナ放電によって粉じんに電荷を与えて帯電させる。帯電した粉じんは、空気の流れにより、帯電部4の下流側に配置された集じん部5に移動する。そして、帯電した粉じんは、集じん部5で形成される電界のクーロン力によって集じん電極板44に捕集される。
【0030】
このようにして粉じんが捕集された後の空気は、上記接続ダクト21、ファンユニット6、および吐出ダクトユニット7を順に通過して、吐出ダクトユニット7の空気吐出口8から吐出される。なお、上記の集じん運転が終わったときには、集じんユニット2に隣接して設けた洗浄装置30から水を噴出して、集じんユニット2の帯電部4や集じん部5に付着した粉じんを洗い流す。
【0031】
ここで、この電気集じん器1によれば、帯電部4の放電電極板41が金属板によって形成されており、この放電電極板41の面が、帯電部4内の送気方向に沿って装着されるようになっているので、例えば上記特許文献1での放電線を用いた例に比べて断線のおそれがなく、また、放電電極が板部材なので、上記特許文献1での放電線のような、ばね等の付設部材によって放電電極板41を一定の力で張設する張設構造も不要である。
【0032】
特に、この放電電極板41によれば、送気方向とは交差する方向に沿って帯状に形成された複数条の帯状部41a, 41b, 41c, 41d, 41eが一の放電電極板41毎に一体に設けられているので、複数枚の放電電極板41および帯電部極板42全体に対して、上述したような連結シャフト46を用いた固定を可能とし、図5(a)に模式図を示すように、電極間距離D1を均一な位置に容易に固定することができる。また、送気方向で隣接する帯状部41a, 41b, 41c, 41d, 41e同士の距離も予め確定しているので、装着時の手間が掛からない。そして、このような構成であれば、放電線で必要とした上下の支持部の張設構造も不要なので、放電電極板41の固定による電極間距離D1が帯電部極板42との固定部分で接近してしまうという問題もなく、放電電極の固定に係る火花放電に対して特段の配慮も不要である。なお、図5の符号Sは、送気方向での送気の流れのイメージを示している。
【0033】
そして、この放電電極板41は、図5(b)にも模式図を示すように、放電電極板41の各帯状部41a〜eは、その周縁に、帯電部4内の送気方向とは交差する方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第一の鋸刃状部41m、41rを有し、この第一の鋸刃状部41m、41rが、帯電部4内の送気方向に複数段に亘って一の放電電極板41毎に設けられるので、均一なコロナ放電を複数段に亘って帯電部4内の送気方向に効率良く発生させることができる。そのため、発生する粉じんを効率良く捕集する上でも好適である。
【0034】
さらに、この放電電極板41の周縁には、同図(b)にも示すように、帯電部4内の送気方向に沿って凸凹鋸刃状の山と谷が交互に並んで設けられた第二の鋸刃状部41t、41uをも設けられているので、より多く均一なコロナ放電を得る構成として一層好適である。
なお、本発明に係る電気集じん器用放電電極は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 トンネル工事用電気集じん器
2 集じんユニット
2A〜H 集じん器本体
3 空気吸込口
4 帯電部
5 集じん部
6 ファンユニット
7 吐出ダクトユニット
8 空気吐出口
9 高圧電源盤
10 制御盤
11 架台
12 支柱
20 保護網
21 接続ダクト
30 洗浄装置
41 放電電極板(放電電極)
42 帯電部極板(帯電部電極)
43 荷電電極板(荷電電極)
44 集じん電極板(集じん電極)
45 外枠
46 連結シャフト
50 車両
51 荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉じんを帯電させて集じん電極に捕集する集じんユニットと、該集じんユニットに粉じんを誘引するファンユニットと、該ファンユニットで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備え、前記集じんユニットが、放電電極に電圧を印加し、帯電部電極との間で発生するコロナ放電によって粉じんに電荷を与えて帯電させる帯電部と、該帯電部で帯電した粉じんをクーロン力や電界の力によって捕集する集じん部とを有し、前記帯電部が、放電電極と帯電部電極とを交互に所定間隔を隔てて並設されてなる電気集じん器に用いられる放電電極であって、
前記放電電極は、金属板によって形成された放電電極板であり、当該放電電極板の面が、前記帯電部内の送気方向に沿って装着されるようになっており、さらに、前記送気方向とは交差する方向に沿って帯状に形成された複数条の帯状部が一の放電電極板毎に一体に設けられ、各帯状部には、その周縁に、前記帯電部内の送気方向とは交差する方向に沿って凸凹が交互に並んでなる第一の鋸刃状部が形成されていることを特徴とする電気集じん器用放電電極。
【請求項2】
前記放電電極板の周縁には、前記帯電部内の送気方向に沿って凸凹が交互に並んで設けられた第二の鋸刃状部が設けられていることを特徴とする電気集じん器用放電電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224516(P2011−224516A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99220(P2010−99220)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】