説明

電気集塵機

【課題】電気集塵機において、洗浄後の乾燥時間の短い形状の極板で構成された電気集塵機を提供することにある。
【解決手段】放電極3と、放電極3と平行に配置される接地極板4からなる帯電部1と、集塵極板6と、集塵極板6と平行に配置される接地極板4からなる集塵部8とを備えた電気集塵機において、放電極3は水平方向に対し所定の角度αを有し、接地極板4は、横方向の辺に水平方向に対して所定の角度βを設け、集塵極板6は横方向の辺に水平方向に対し所定の角度γを設けることによって、極板に付着した洗浄液が短い時間で水切りできるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊粒子である塵埃などを捕集する電気集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機とは、互いに対向関係で配設された集塵極および放電極に直流の高圧を印加してコロナ放電を生起させ、装置吸込み口より流入した排ガスに含まれる塵埃などに帯電させて集塵極に捕集するものである。しかし、連続運転を行う場合、特に、集塵極に捕集される塵埃がオイル状ミストやダストとの混合物である場合、塵埃は極板上に繰返し堆積し、印加電流の低下を招くため、集塵能力が著しく低下することとなる。そこで、極板上に堆積した塵埃を定期的に洗浄する必要性がある。その方法として、洗浄用ノズルより大量の水を連続噴射させ、集塵極および放電極を洗浄するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その際、噴射された水ミストが極板上で水膜となり集塵極下部より帯状となり落下するため、放電極とつながり火花放電、あるいは短絡の原因となる。その解決策として、集塵部下部を山型にカットし傾斜を設けた水切りガイドを取り付けることで、洗浄水を効果的に落下させる技術がある。
【0004】
以下、その構造について図1を参照しながら説明する。
【0005】
図9に示すように、従来の電気集塵機100は、洗浄ノズル101と、放電極102と、放電極用上部枠組103、および下部枠組104と、集塵極105と、集塵極下部に取り付けられた水切り板106とを備えて構成される。集塵極下部の水切り部の構成は、大量の水を効果的に流下させる目的で、集塵極下部を山型にカットし両面に平鋼形状の水切り板を取り付ける。
【特許文献1】登録実用新案第3004899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような湿式電気集塵機の水切り機構では、極板の完全乾燥、あるいは乾燥時間の短縮が望まれる乾式電気集塵機に適用する場合には、機能的に不十分であり、改良の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、集塵極、放電極、および接地極板を水切りに効果的な形状にし、かつファン送風を有効利用した機器構造にすることで、乾燥時間の短い電気集塵機の洗浄機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気集塵装置は上記目的を達成するために、放電極と、前記放電極と平行に配置される接地極板からなる帯電部と、前記放電極と前記接地極板との間に放電電圧を与える高圧電源と、集塵極板と、前記集塵極板と平行に配置される接地極板からなる集塵部とを備えた電気集塵機であって、前記集塵極板、接地極板の横方向の辺は水平方向に対し所定の角度を有することを特徴としたものである。
【0009】
これにより、洗浄時、極板端部に表面張力により滞留した液溜りは、勾配があることで最端部に凝集され落下されるため、水切り性が向上される。よって、乾燥時には、極板上の残留水量が角度のない場合と比して少ないため、より乾燥し易い状況が得られ、乾燥時間の短縮に繋がる。
【0010】
また他の手段は、前記集塵極板、接地極板の下部の辺にのみ水平方向に対して所定の角度を有することを特徴としたものである。
【0011】
これにより、水切り性能を確保した状態で、集塵性能に関わる極板面積の確保や、加工工数の削減等の実用性も考慮することが可能という作用を有する。
【0012】
また他の手段は、前記集塵極板と接地極板において、横方向の辺に、水平方向に対して設けた所定の角度とは、風向に対して下り勾配となる向きに設けた構造を特徴としたものである。
【0013】
これにより、ファン送風による動圧が、前述の勾配を設けたことによる水切効果を促進し、更なる乾燥時間の短縮に繋がる。
【0014】
また他の手段は、前記帯電部の放電極は、水平方向に対し所定の角度を有する針状電極であることを特徴としたものである。
【0015】
これにより、洗浄時、針に滞留した残留水は勾配に沿って針先端に凝集し落下するため、従来の水平取付の状態と比して、水切性向上に繋がる。
【0016】
また他の手段は、前記針状電極において、水平方向に対し設けた所定の角度とは、風向に対して下り勾配となる向きに設けたことを特徴としたものである。
【0017】
これにより、ファン送風による動圧が、前述の勾配を設けたことによる水切効果を促進し、更なる乾燥時間の短縮に繋がる。
【0018】
また他の手段は、前記帯電部の放電極は、平板の端部に略三角形のトゲを有するトゲ電極であって、トゲの先端とその付け根断面の中心点を結ぶ線が水平線に対し所定の角度を有することを特徴としたものである。
【0019】
これにより、洗浄時、トゲに滞留した残留水は勾配に沿って針先端に凝集し落下するため、水平取付の状態と比して、水切性向上に繋がる。
【0020】
また他の手段は、前記針状電極において、水平方向に対し設けた所定の角度とは、風向に対して下り勾配となる向きに設けたことを特徴としたものである。
【0021】
これにより、ファン送風による動圧が、前述の勾配を設けたことによる水切効果を促進し、更なる乾燥時間の短縮に繋がる。
【0022】
また他の手段は、前記放電極板、および接地極板の下部の辺に切り欠きを設けたことを特徴としたものである。
【0023】
これにより、極板底辺部分に滞留した残留水は設けられた勾配により底辺に沿って流下するが、特にその長さが長い場合や、勾配の取付に制約がある場合には、滞留時間が延長され、長時間、乾燥に時間を要することになる。そのため、勾配の途中に一定間隔に切り欠きを設けることにより、液溜りが分散し、流下し易い状態となるため、滞留時間の短縮、ひいては、乾燥時間の短縮に繋がる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、集塵極、および放電極を効果的な水切形状、つまりは、極板の横方向の辺に水平方向に対し所定の角度を設けた極板により構成することにより、洗浄時、極板上に滞留する洗浄液量を減じ、より乾燥し易い状況が得られる。さらに、ファン送風がある場合、帯電部、および集塵部を、前記所定の角度を風向に対し下り勾配となる向きに設けた極板で構成することにより、乾燥時間を大幅に短縮することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、放電極と、前記放電極と平行に配置される接地極板からなる帯電部と、前記放電極と前記接地極板との間に放電電圧を与える高圧電源と、集塵極板と、前記集塵極板と平行に配置される接地極板からなる集塵部とを備えた電気集塵機であって、前記集塵極板、接地極板の横方向の辺は水平方向に対して所定の角度を有することを特徴としたものであり、洗浄時、極板端部に表面張力により滞留した液溜りは、勾配があることで最端部に凝集され落下されるため、水切り性が向上されることで、乾燥時には、極板上の残留水量が角度のない場合と比して少ないため、より乾燥し易い状況が得られ、乾燥時間の短縮に繋がるという作用を有する。
【0026】
また、請求項2の発明は、集塵極板、および接地極板において、横方向の辺の内、下部の辺にのみ水平方向に対し所定の角度を有することを特徴としたものであり、上述の効果をほぼ維持したまま、極板面積の確保や、加工行数の削減等の実用性も考慮することが可能という作用を有する。
【0027】
また、請求項3の発明は、前記集塵極板と接地極板において、横方向の辺に、水平方向に対して設けた所定の角度とは、風向に対して下り勾配となる向きに設けた構造であることを特徴としたものであり、ファン送風による動圧が、前述の勾配を設けたことによる水切効果を促進し、更なる乾燥時間の短縮に繋がるという作用を有する。
【0028】
また、請求項4の発明は、前記帯電部において、放電極は水平方向に対して所定の角度を有する針状電極であることを特徴としたものであり、洗浄時、針に滞留した洗浄水は勾配に沿って針先端に凝集し落下する為、水平取付の状態と比して、水切性向上に繋がるという作用を有する。
【0029】
また、請求項5の発明は、前記帯電部針状電極において、水平方向に対し設けた所定の角度とは、風向に対して下り勾配となる向きに設けた構造であることを特徴としたものであり、ファン送風による動圧が、前述の勾配を設けたことによる水切効果を促進し、更なる乾燥時間の短縮に繋がるという作用を有する。
【0030】
また、請求項6の発明は、前記帯電部放電極において、平板の端部に略三角形のトゲを有するトゲ電極であって、トゲの先端とその付け根断面の中心点を結ぶ線が水平線に対し所定の角度を有することを特徴としたものであり、洗浄時、トゲに滞留した洗浄水は勾配に沿って針先端に凝集し落下する為、水平取付の状態と比して、水切性向上に繋がるという作用を有する。
【0031】
また、請求項7の発明は、前記帯電部トゲ状電極において、水平方向に対して設けた所定の角度とは風向に対して下り勾配となる向きに設けた構造であることを特徴としたものであり、ファン送風による動圧が、前述の勾配を設けたことによる水切効果を促進し、更なる乾燥時間の短縮に繋がるという作用を有する。
【0032】
また、請求項8の発明は、前記集塵極板、および接地極板の下部の辺に切り欠きを設けたことを特徴としたものであり、極板底辺部分に滞留した洗浄水は設けられた勾配により底辺に沿って流下する。特にその長さが長い場合、滞留時間が延長され、より長時間、乾燥に時間を要するが、勾配の途中に一定間隔に切り欠きを設け、底辺を強制的に分割することにより、洗浄水の滞留時間の短縮、ひいては、極板の乾燥時間の短縮に繋がるという作用を有する。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1に、本発明における電気集塵機の帯電部1の構成を示す。帯電部1の全体構成は、水平方向に対し所定の角度αを有する放電極3と、横方向の辺に水平方向に対して所定の角度βを設けた接地極板4と、放電極3と接地極板4との間に放電電圧を与える高圧電源(図示せず)からなる。放電極3と接地極板4は、電気的には絶縁されて、交互に、かつ平行になるようにフレーム2に固定されている。図2に、接地極板4の詳細を示す。所定の角度βは全ての辺において等しく、同一方向に設けるものとする。また、放電極3は、図4に示した水平方向に対して所定の角度αを有する針状電極(3a)、もしくは、図5に示したトゲの先端とその付け根断面の中心点を結ぶ線が水平線に対して角度αを有するトゲ状電極(3b)である。なお、放電極3に設けた角度αと、接地極板4に設けた角度βは、上記角度と水切特性に関する関係を考慮し設定するが、集塵効率に関係するコロナ放電の放電有効面積も考慮した上で、それぞれの値を設定するのが望ましい。また、帯電部1の風向に関する配置規定として、図1に示すように、前述の角度α、あるいは角度βを風向に対して下り勾配となる向きに電極を配置した構造とする。
【0035】
さらには、図7に示すように、接地極板4は、最も液溜りが生じ易い底辺部分に一定の間隔で切り欠き7を配置した形状とする。切り欠きの形状は、そこでの水切り性を考慮し、三角形状で、高さは液溜りの高さの2倍程度とするのが良い。
【0036】
上記構成によれば、切り欠きを設けることで液溜りが分割され、洗浄液の滞留時間が短縮されることから、結果として、乾燥時間が短縮される。特に、極板の底辺長が大きい場合や、角度αを大きくとれない場合に効果的である。
【0037】
集塵部8に関しても帯電部1と同様であり、その構成を図6に示す。集塵部8の全体構成は、横方向の辺に水平方向に対し所定の角度γを設けた集塵極板6と、接地極板4と、集塵極板6と接地極板4との間に放電電圧を与える高圧電源(図示せず)からなる。(集塵極板6、接地極板4の形状は、図2で示した帯電部1の接地極板4と同様の形状でよい。)集塵極板6と接地極板4は、電気的には絶縁されて、交互に、かつ平行になるように固定されている。集塵極板6に設けた角度γと、接地極板4に設けた角度βは、上記角度と水切特性に関する関係を考慮し設定する。
【0038】
また、図3に示すように、帯電部1の接地極板4については、横方向の辺の内、下側の辺のみに水平方向に対し、所定の角度αを設けてもよい(図3に示す接地極板4b)。
【0039】
この構成によれば、集塵性能に関する極板面積を確保し、さらに、加工工数の削減等、実用性を考慮したものとなる。
【0040】
同様に、集塵部8においても、集塵極板6と接地極板4について、横方向の辺の内、下側の辺のみに水平方向に対し、それぞれ角度α、およびγを設けた形状の極板を用いてもよい。
【実施例】
【0041】
以下に、上記角度と水切特性の関係に関する試験の方法、およびその結果を示す。
【0042】
試験対象に上記実施の形態の接地極板4の下部を試験用にカットしたアルミ製試験片(260×200[mm])を用いた。(図4に示す接地極板4) 角度βは、比較対照として、β=0°(非水切形状)、20°(水切形状)の二種類を用意し、洗浄後の洗浄水が付着した状態を想定するため、両試験片の底辺に沿って、試験用に比較的粘度のある鉱油を適量塗布した後、ファン送風により乾燥工程を模擬する。試験風速は、5.0m/sとし、極板の設置条件(向き)は本発明に同じである。評価方法は、送風前後の試験片重量を測定することにより油除去率を算出し、これと送風時間の関係より、角度αの水切特性への効果を評価する。図9に試験結果を示す。
【0043】
乾燥完了を油除去率80%と仮定し、その到達時間を乾燥時間とする。試験結果より、β=0°の非水切形状の場合、乾燥時間として14分要するに対し、β=20°の水切形状とした場合、6分程度で達しており、実質半分の時間で乾燥状態に達することが分かる。これは、より低い油除去率の段階でも当てはまる。結論として、角度βを20°程度設けることで、より乾燥時間の短い極板形状が得られる。
【0044】
以上、上記構成によれば、表面張力により極板端部に生ずる液溜りは、前述の角度βを設けたことによる勾配により流下するため、水切り性能向上に繋がる。さらに、ファン送風の風向を考慮した配置にすることで、ファン送風による動圧の効果が加わり、水切性能向上に繋がる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、洗浄機構を持つ電気集塵機で、特に、乾燥工程のある乾式電気集塵機において有効である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1の電気集塵機帯電部を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1の集塵極板、および接地極板を示す詳細図
【図3】本発明の実施の形態1の集塵極板、および接地極板を示す詳細図
【図4】本発明の実施の形態1の針状電極を示す詳細図
【図5】本発明の実施の形態1のトゲ状電極を示す詳細図
【図6】本発明の実施の形態1の電気集塵機集塵部を示す構成図
【図7】本発明の実施の形態1の極板下部に設けた切欠きに関する詳細図
【図8】本発明の実施例に関する試験データを示すグラフ
【図9】従来の電気集塵機を示す図
【符号の説明】
【0047】
1 帯電部
2 フレーム
3 放電極
4 接地極板
5 風向
6 集塵極板
7 切り欠き
8 集塵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電極と、前記放電極と平行に配置される接地極板からなる帯電部と、前記放電極と前記接地極板との間に放電電圧を与える高圧電源と、集塵極板と、前記集塵極板と平行に配置される接地極板からなる集塵部とを備えた電気集塵機であって、前記集塵極板、接地極板の横方向の辺は水平方向に対し所定の角度を有する電気集塵機。
【請求項2】
前記集塵極板、接地極板の下部の辺にのみ水平方向に対して所定の角度を有する請求項1記載の電気集塵機。
【請求項3】
前記集塵極板、接地極板は、風向に対して下り勾配となるように所定の角度を設けた請求項1または2記載の電気集塵機。
【請求項4】
前記帯電部の放電極は、水平方向に対し、所定の角度を有する針状電極である請求項1または2記載の電気集塵機。
【請求項5】
前記針状の放電極は、風向に対して下り勾配となるように所定の角度を設けた請求項4記載の電気集塵機。
【請求項6】
前記帯電部の放電極は、平板の端部に略三角形のトゲを有するトゲ電極であって、トゲの先端とその付け根断面の中心点を結ぶ線が水平線に対し所定の角度を有する請求項1または2記載の電気集塵機。
【請求項7】
前記トゲ状の放電極は、風向に対して下り勾配となるように所定の角度を設けた請求項6記載の電気集塵機。
【請求項8】
前記集塵極板、接地極板の下部の辺に切り欠きを設けた請求項1〜7記載の電気集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−63966(P2010−63966A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230791(P2008−230791)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】