説明

電気集塵装置

【課題】容量の大きな抽気装置を必要とすることなく、目詰まりせずに、高風速条件下でも再飛散しにくく、高い集塵性能を発揮し、故障の可能性が低い電気集塵装置を提供する。
【解決手段】筒状電極3と、該筒状電極の中央部に配置される放電電極2とを備え、前記筒状電極3の内部に粒子状物質含有ガスを通流させた状態で前記筒状電極3と前記放電電極2間に電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、前記粒子状物質含有ガス中の粒子状物質5を除去する電気集塵装置である。前記筒状電極3に前記粒子物質を通過させる貫通孔3bを多数形成するとともに、前記筒状電極3を当該筒状電極3より大きな筒状のケーシング電極4の内部に配置して、当該ケーシング電極4には前記筒状電極3と同極性の電位を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質(PM:Particulate Matter)を含有する例えば内燃機関の排気ガス等の粒子状物含有ガス中から粒子状物質を除去するようにした電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガスには、NOx、SOxの他、炭素を主成分とする粒子状物質などの有害物質が含まれている。人間が呼吸により粒子状物質を体内に吸い込むと様々な健康被害が発生することが知られており、粒子状物質を効率良く除去する粒子状物質除去装置の開発が望まれている。
このような粒子状物質除去装置として、排気ダクト中に、フィルタを設置する方向があるが、フィルタは目詰まりし易く、圧力損失が大きいなどの課題がある。これに対して電気集塵装置は、目詰まりせず、圧力損失が小さいため、内燃機関の排気ダクトに取り付けるには有効である。
【0003】
このような電気集塵方式の粒子状物質除去装置としては、例えば図8に示すように、粒子状物質を含むガス流れの中に放電電極101と、この放電電極101と対向して設けられたろ過装置102と、放電電極101及びろ過装置102間に高電圧を印加する高圧電源103と、ろ過装置102を通過するガス流を調節する抽気用送風機104と、排気ガスを吸引する主送風機105とを備えた除じん装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。同様に、図9に示すように、抽気用送風機104を省略し、これに代えてガス出口を2つに分流させて、各ガス出口に圧損調整用のダンパ110を設けるようにした除じん装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図10及び図11に示すように、粒子状物質を含むガス流れの中に放電電極101と、この放電電極101と対向して設けられた対向電極107をもつろ過装置102と、放電電極101及びろ過装置102間に高電圧を印加する高圧電源103と、ろ過手段102内又はその背面に閉鎖された閉鎖空間108を備えた除じん装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−63560号公報
【特許文献2】特開平2−184357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の図8に示す従来例にあっては、抽気用送風機104によりろ過装置102を通るガスの排気量を調整するが、ろ過装置102はサブミクロンオーダーの大きさである粒子状物質をろ過するためには十分に目が細かいものを使用する必要があるので、ろ過装置102による圧損が大きくなり、抽気用送風機104として、容量が大きなものが必要となる。この場合には、ある程度の時間運転すると、図12に示すように、ろ過装置102に粒子状物質109が詰まって目詰まりが生じて、集塵不可能となるため、ろ過装置102の交換が頻繁に必要となるという未解決の課題がある。逆に、抽気用送風機104の容量が小さい場合には、ろ過装置102を通過する風量が小さいため、図13に示すように、粒子状物質109がろ過装置102の表面付近に集中して補集されることになり、その場合、補集された粒子状物質109が主ガス流に晒されてしまうために、主ガス流の風速が高い条件化では、主ガス流の抗力によってろ過装置102の表面に補集された粒子状物質が引き剥がされて再飛散してしまうという未解決の課題がある。
【0007】
同様に、特許文献1に記載されている図9に示す従来例にあっても、抽気用送風機を省略することができるが、圧損調整ダンパ110によりろ過装置102の抽気量を調整するので、ろ過装置102としてはサブミクロンオーダーの大きさである粒子状物質をろ過するためには十分に目が細かいものを使用する必要があるので、ろ過装置102による圧損が大きくなり、圧損調整ダンパ110を大きく閉じた状態にする必要がある。この場合、圧損調整ダンパ110による主ガス流の圧損が大きくなるため、送風機105に容量の大きなものが必要となる。また、図12に示すように、ある程度の時間運転すると、ろ過装置102に目詰まりが生じて、集塵不可能となるという未解決の課題がある。逆に、圧損調整ダンパ110の閉じ量が小さい場合には、送風機105の容量は小さくてよいが、ろ過装置102を通過する風量が小さいために、図13に示すように、ろ過装置102の表面に補集された粒子状物質109が引き剥がされ、再飛散が生じてしまうという未解決の課題がある。また、圧損調整ダンパ110のような可動機構は、高温の排ガス中においては、故障の危険性が非常に高いという未解決の課題もある。
【0008】
また、特許文献2に記載された図10に示す従来例にあっては、放電電極101と対向電極107との間に生じるイオン風による二次流れは、最大風速2m/s程度である。ろ過装置102はサブミクロンオーダーの大きさである粒子状物質をろ過するためには十分目が細かいものを使用する必要があり、ろ過装置102による圧損が大きいため、イオン風による二次流れのみで、ろ過装置102をガスが十分に通過することが困難であり、図14に示すように、粒子状物質109はろ過装置102の表面付近に集中して補集される。この場合、補集された粒子状物質が主ガス流に晒されてしまうために、主ガス流の風速が高い条件化では主ガス流の抗力によってろ過装置102の表面に補集された粒子状物質109が引き剥がされ、再飛散が生じてしまうという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、容量の大きな抽気装置を必要とすることなく、目詰まりせずに、高風速条件下でも再飛散しにくく、高い集塵性能を発揮し、故障の可能性が低い電気集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電気集塵装置は、筒状電極と、該筒状電極の中央部に配置される放電電極とを備え、前記筒状電極の内部に粒子状物質含有ガスを通流させた状態で前記筒状電極と前記放電電極間に電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、前記粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させて前記筒状電極側で吸引して捕集する電気集塵装置である。そして、前記筒状電極に前記粒子物質を通過させる貫通孔を複数形成するとともに、前記筒状電極を当該筒状電極より大きな筒状のケーシング電極の内部に配置して、当該ケーシング電極には前記筒状電極と同極性の電位が印加されている。
この構成によると、放電電極は筒状電極間に発生するコロナ放電によって、粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させ、クーロン力によって貫通孔を通じて前記筒状電極の外面と前記ケーシング電極の内面との間に形成される補集空間内に移動させて補集空間内に補集させる。
【0010】
また、本発明の一の形態に係る電気集塵装置は、筒状電極と、該筒状電極の中央部に配置される放電電極とを備え、前記筒状電極の内部に集塵対象ガスを通流させた状態で前記筒状電極と前記放電電極間に電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、前記集塵対象ガス中の粒子状物質を帯電させて前記筒状電極側で吸引して捕集する電気集塵装置である。そして、前記筒状電極に前記粒子物質を通過させる貫通孔を複数形成するとともに、複数の前記筒状電極を所定間隔を保って整列させて配置し、当該複数の筒状電極を取り囲むように筒状のケーシング電極を配置して、当該ケーシング電極には前記筒状電極と同極性の電位が印加し、前記各筒状電極の外面と前記ケーシング電極の内面とで前記粒子物質を補集する補集空間が形成されている。
【0011】
この構成によると、複数の筒状電極のそれぞれにおいて、放電電極は筒状電極間に発生するコロナ放電によって、粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させ、クーロン力によって貫通孔を通じて補集空間内に移動させて当該補集空間内に補集させる。したがって、筒状電極の配置数を調整することにより、様々な流量で適切な風速に調整して粒子状物質を効果的に集塵することができる。
【0012】
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記補集空間に複数の補助電極が配置されている。
この構成によると、補集空間内に補助電極が配置されているので、粒子状物質の補集領域を拡大して粒子状物質を補集する許容限界量を大幅に増加させることができる。
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記補集空間に、液体を噴霧するノズルが配置され、当該ノズルから前記補集空間に補集された粒子状物質に液体が噴霧される。
この構成によると、補集空間内においてノズルから液体を噴霧して粒子状物質を湿らせ、液体の表面張力によって粒子状物質の電極との吸着力を増加させて、再飛散を抑制する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部に放電電極を配置した筒状電極に複数の貫通孔を形成するとともに、筒状電極をケーシング電極で覆うことにより、補集空間を形成したので、放電電極及び筒状電極間にコロナ放電を発生させて、粒子状物質を負に帯電させ、クーロン力によって貫通孔を通じて補集空間内に移動させて、補集空間内で粒子状物質を補集することができ、容量の大きな抽出用送風機を設ける必要がないとともに、貫通孔を粒子状物質に比較して大きな径とすることにより、目詰まりを生じることがなく、さらに高風速条件下でも再飛散しにくく、高い集塵性能を発揮することができ、故障が発生しにくい電気集塵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る電気集塵装置の第1の実施形態を示す中央部を断面とした斜視図である。
【図2】粒子状物質の補集状態を示す模式図である。
【図3】本発明に係る電気集塵装置の第2の実施形態を示す要部を断面とした斜視図である。
【図4】図3のA−A線上の断面図である。
【図5】本発明に係る電気集塵装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る電気集塵装置の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る電気集塵装置の第5の実施形態を示す横断面図である。
【図8】従来例を示す説明図である。
【図9】他の従来例を示す説明図である。
【図10】さらに他の従来例を示す説明図である。
【図11】図10のろ過装置の詳細構成図である。
【図12】ろ過装置における粒子状物質の補集状態を示す模式図である。
【図13】ろ過装置における粒子状物質の再飛散状態を示す模式図である。
【図14】ろ過装置における粒子状物質の再飛散状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示す中央部を断面とした斜視図である。
図中、1は例えば内燃機関特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる炭素を主成分とする粒子径が100μm以下の粒子状物質(PM:Particulate Matter)、特に粒子径が10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)を補集可能な電気集塵装置である。
【0016】
この電気集塵装置1は、中心部に放電電極2を配置し、この放電電極2と同軸的に例えば円筒状の筒状電極3が配設され、この筒状電極3が例えば方形角筒状のケーシング電極4によって囲まれた構成を有する。そして、放電電極2と筒状電極3との間の空間が粒子状物質5を含む排気ガス6を通過させるガス流路7とされている。
放電電極2は、断面円形の棒状導体2aを有する。この棒状導体2aの外周面には、軸方向に所定間隔を保ち、且つ円周方向に所定間隔(例えば90°)を保って多数の針状電極部2bが突出形成されている。
【0017】
筒状電極3は、放電電極2の針状電極部2bと所定間隔を保って対向するように例えば円筒状のステンレスパイプ3aで構成されている。このステンレスパイプ3aは、放電電極2の針状電極部2bと対向する位置に、粒子状物質4の粒子径より十分に大きい直径(例えば数mm程度)を有する多数の貫通孔3bが形成されたパンチングパイプが適用されている。
【0018】
ケーシング電極4は、筒状電極3の外周側に筒状電極3の外周面に対して所定距離離れて対向する導電性を有する角枠板部4aと、この角枠板部4aの軸方向両端面と筒状電極3の軸方向両端面との間を連結する端板部4bとで構成されている。そして、筒状電極3の外周面とケーシング電極4の角枠板部4a及び端板部4bの内周面とで補集空間としての半閉空間8が形成されている。この半閉空間8は、筒状電極3の貫通孔3aを介してガス流路7と連通されている。
また、放電電極2とケーシング電極4との間には、ケーシング電極4に正極を接続し、放電電極2に負極を接続した例えば103〜105ボルト程度の高電圧を印加する高圧電源9が接続され、この高圧電源9の正極側が接地されている。
【0019】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
高圧電源9から放電電極2と筒状電極3及びケーシング電極4との間に高電圧を印加することにより、放電電極2の針状電極部2bの先端から筒状電極3に向けてガス流路7を横切るコロナ放電が生じる。
この状態で、ガス流路7に内燃機関等から排出される粒子状物質5を含む粒子状物質含有ガスとしての排気ガスを流すと、粒子状物質5はコロナ放電を浴びて帯電する。そして、放電電極2と筒状電極3間の電界により粒子状物質5にクーロン力が働き、筒状電極3へ向けて運動を始める。粒子状物質5は質量を持つために、慣性力によってそのまま筒状電極3の貫通孔3bを通過して半閉空間(補集空間)8に導かれる。
【0020】
この半閉空間8では、流れ場は非常に緩やかなため、粒子状物質5は流れ場の影響を受けにくく、粒子状物質5は自分自身の電荷と筒状電極3及びケーシング電極4間の電位差による電気影像力を受けて、図2に模式的に示すように、筒状電極3の外周面及びケーシング電極4の内周面に移動付着して補集される。なお、数値解析によれば、ガス流路7における排気ガス主流の流速に比べ、半閉空間8の大部分で約1/20〜1/10程度、局所的に1/4程度の流速となることが確認されている。
【0021】
このように、上記第1の実施形態によれば、単に放電電極2及び筒状電極3間のガス流路7に排気ガスを通流させるだけで、抽気手段としての送風機等を設ける必要がない。また、排気ガスの流れを妨げるダンパ等を設ける必要もないので、排気ガスの圧力損失を少なくすることができる。さらに、筒状電極3に形成した貫通孔3bの径を粒子状物質5の粒子径にかかわらず大きな径に形成することができるので、この分の圧力損失も小さく抑制することができる。さらに、粒子状物質5が半閉空間8を構成する筒状電極3の外周面やケーシング電極4の内周面で補集するので、両電極3及び4の表面積に応じた多量の粒子状物質5の補集を許容することができるとともに、貫通孔3bは極めて目詰まりしにくく、目詰まりによる補集障害を生じることを確実に防止することができる。さらにまた、半閉空間8の流れ場が小さいために、一度補集した粒子状物質5の再飛散が生じにくい。また、ダンパや送風機等の可動部が存在しないために、故障の可能性が極めて低いという種々の効果を得ることができる。
【0022】
次に、本発明の第2の実施形態を図3及び図4について説明する。
この第2の実施形態では、排気ガス流量を増大させることが可能としたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図3及び図4に示すように、前述した第1の実施形態における図1の構成において、複数例えば2つの放電電極2A及び2Bを個別に内装した2つの筒状電極3A及び3Bを軸直角方向に両者間に所定の半閉空間8を形成するように同一平面状に並行配置されている。そして、各筒状電極3A及び3Bの外周側を、所定間隔を保って角筒状のケーシング電極4で覆うようにしている。この図3の構成において、図1との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0023】
この第2の実施形態においては、放電電極2A及び2Bと筒状電極3A及び3Bとで2つのガス流路7A及び7Bが形成されるので、排気ガスの通流面積を増加させて、排気ガスの流速を抑制することができる。大流量の排気ガスでも粒子状物質5の良好な補集機能を発揮することができる。この場合、粒子状物質5を補集すべき排気ガス流量が多いときには、排気ガス流量に応じて放電電極2及び筒状電極3の組数を増加させればよく、ガス流路7の排気ガス流速を適正に制御して、良好な集塵性能を発揮することができる。
【0024】
次に、本発明の第3の実施形態を図5について説明する。
この第3の実施形態においては、半閉空間8内における粒子状物質5の補集性能を向上させるようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図5に示すように、筒状電極3及びケーシング電極4で構成される半閉空間8内に筒状電極3の貫通孔3bを除く外周面とケーシング電極4の四隅との間に例えば4つの補助電極11を放射状に設けるようにしている。
この第3の実施形態によると、半閉空間8内に4つの補助電極11が付加されているので、これら補助電極11の表面積分だけ粒子状物質5の補集面積を増加させることができる。このため、粒子状物質5の補集許容量を前述した第1の実施形態に比較して大幅に増加させることができる。
【0025】
次に、本発明の第4の実施形態を図6について説明する。
この第4の実施形態でも、前述した第3の実施形態と同様に、半閉空間8内における粒子状物質5の補集性能を向上させたものである。
すなわち、第4の実施形態では、図6に示すように、筒状電極3及びケーシング電極4で構成される半閉空間8内に筒状電極3と同軸的に4つの断面円弧状の補助電極12が形成されている。これら補助電極12は軸方向の両端がそれぞれケーシング電極4の端板部4bに連結され、ケーシング電極4を介して高圧電源9の正極側に接続されている。
【0026】
この第4の実施形態によると、前述した第3の実施形態と同様に半閉空間8内に4つの補助電極12が形成されているので、これら補助電極11の表面積分だけ粒子状物質5の補集面積を増加させることができる。このため、粒子状物質5の補集許容量を前述した第1の実施形態に比較して大幅に増加させることができる。
なお、上記第3及び第4の実施形態においては、補助電極11及び12を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、補助電極11の半径方向の中間部に補助電極12を形成して、さらに粒子状物質5の補集面積を増加させるようにしてもよい。
【0027】
次に、本発明の第5の実施形態を図7について説明する。
この第5の実施形態では、半閉空間8内に粒子状物質5をより確実に補集するようにしたものである。
すなわち、第5の実施形態では、図7に示すように、ケーシング電極4の軸方向両端の端板部4bにそれぞれ液体をミスト状に噴出するノズル15を配設したことを除いては前述した第1の実施形態における図1と同様の構成を有する。したがって、図7において、図1との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。ここで、ノズル15から噴霧する液体としては、排気ガス温度が低い場合には、水を使用し、排気ガス温度が高い場合には、融点の高いオイルなどを使用する。
【0028】
この第5の実施形態によると、半閉空間8内にノズル15から液体をミスト状にして噴霧するので、コロナ放電によって帯電されて、クーロン力によって半閉空間8内に導入されて筒状電極3の外周面及びケーシング電極4の内周面に補集された粒子状物質5が液体ミストを浴びることによって湿る。このため、液体の表面張力によって粒子状物質5の筒状電極3又はケーシング電極4との吸着力が増加し、粒子状物質5が筒状電極3又はケーシング電極4の補集面から剥離して再飛散することに対して大きな抑制効果を発揮することができる。
【0029】
なお、上記第5の実施形態においては、前述した第1の実施形態にノズル15を付加した場合について説明したが、前述した第2〜第4の実施形態にノズル15を付加するようにしてもよい。
また、上記第1〜第5の実施形態においては、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質5を除去する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の粒子状物質含有ガスから粒子状物質を除去することができる。
また、上記第1〜第5の実施形態においては、ケーシング電極4が角筒状である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、筒状電極3を、半閉空間8を形成して覆うことができればよく、円筒状、多角筒状等の任意の形状とすることができる。
【0030】
同様に、筒状電極3についても円筒状に限定されるものではなく、放電電極2の針状電極部2bと対向する内周面と針状電極部2bとの間の距離を等しくすれば任意の形状とすることができる。すなわち、例えば棒状導体2aに針状電極部2bを円周方向に60°(又は45°)間隔で6本(又は8本)形成する場合には、筒状電極3を6角筒状(又は8角筒状)に形成するようにしてもよい。
また、上記第1〜第5の実施形態においては、放電電極2の針状電極部2bを軸方向で全て同一方向に突出させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、針状電極部2bの突出位置が軸方向の各部で円周方向にずらして配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…電気集塵装置、2…放電電極,2a…棒状導体、2b…針状電極部、3…筒状電極、3a…ステンレスパイプ、3b…貫通孔、4…ケーシング電極、4a…角枠板部、4b…端板部、5…粒子状物質、6…排気ガス、7…ガス流路、8…半閉空間(補集空間)、9…高圧電源、11,12…補助電極、15…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状電極と、該筒状電極の中央部に配置される放電電極とを備え、前記筒状電極の内部に粒子状物質含有ガスを通流させた状態で前記筒状電極と前記放電電極間に電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、前記粒子状物質含有ガス中の粒子状物質を帯電させて前記筒状電極側で吸引して捕集する電気集塵装置であって、
前記筒状電極に前記粒子物質を通過させる貫通孔を複数形成するとともに、前記筒状電極を当該筒状電極より大きな筒状のケーシング電極の内部に配置して、当該ケーシング電極には前記筒状電極と同極性の電位を印加することを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
筒状電極と、該筒状電極の中央部に配置される放電電極とを備え、前記筒状電極の内部に集塵対象ガスを通流させた状態で前記筒状電極と前記放電電極間に電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、前記集塵対象ガス中の粒子状物質を帯電させて前記筒状電極側で吸引して捕集する電気集塵装置であって、
前記筒状電極に前記粒子物質を通過させる貫通孔を複数形成するとともに、複数の前記筒状電極を所定間隔を保って整列させて配置し、当該複数の筒状電極を取り囲むように筒状のケーシング電極を配置して、当該ケーシング電極には前記各筒状電極と同極性の電位を印加することを特徴とする電気集塵装置。
【請求項3】
前記筒状電極の外面と前記ケーシング電極の内面との間に、前記粒子状物質を捕集する補集空間が形成され、
当該補集空間に複数の補助電極を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記補集空間に、液体を噴霧するノズルを配置し、当該ノズルから前記補集空間に補集された粒子状物質に液体を噴霧することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−245429(P2011−245429A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121669(P2010−121669)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(591118041)財団法人シップ・アンド・オーシャン財団 (21)
【出願人】(508278893)
【出願人】(505286316)
【Fターム(参考)】