説明

電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造

【課題】地震等による振動を受けた場合にも縦フレームのねじ固定部の破壊を防止し、キャビネット全体の強度を高めることができる電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造を提供する。
【解決手段】縦フレーム1と横フレーム2と奥行きフレーム3との各端面をコーナー部材20に当接させ、各端面をコーナー部材側からねじ止めしたキャビネットのフレーム固定構造であり、縦フレーム1とコーナー部材20とのねじ固定部4、5を、キャビネットを平面視した場合の中心点Oからキャビネットの各コーナーに向かって引いた直線OPをはさむ両側に、それぞれ配置した。これによりコーナー方向の揺れを受けた場合にも4本のねじ21が縦フレーム1を支え、耐震性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦フレームと横フレームと奥行きフレームとからなる電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気電子機器収納用箱体として用いられるキャビネットとしては、縦フレームと横フレームと奥行きフレームとを直方体状に組み合わせ、各コーナー部をコーナー部材により連結固定した構造が一般的である。特許文献1はその一例を示すものであり、縦フレームと横フレームと奥行きフレームとの各端部をコーナー部材に当接させ、各端面をコーナー部材側からねじ止めして固定したものである。
【0003】
特許文献1の図2に示されるように、コーナー部材にはXYZの互いに垂直な3方向にねじ孔が形成されており、各フレームを1本ずつのねじによって固定している。しかし耐震性等を考慮してキャビネット全体の強度を向上させるためには、このような従来構造では十分ではなかった。すなわち、キャビネットは底面をアンカーボルト等により固定して設置されるのが普通であり、地震等による振動を受けた場合には上部が水平方向に振動することとなるため、特に縦フレームの支持強度が問題となる。そして縦フレームが単一のねじによりコーナー部材に固定されていた従来構造では、この単一のねじに負荷が集中するため、ねじ固定部が破壊されるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平8−506476号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、地震等による振動を受けた場合にも縦フレームのねじ固定部の破壊を防止し、キャビネット全体の強度を高めることができる電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、縦フレームと横フレームと奥行きフレームとの各端面をコーナー部材に当接させ、各端面をコーナー部材側からねじ止めしたキャビネットのフレーム固定構造であって、各フレームを押し出し成形されたフレーム材により構成し、各縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点からの放射線をはさむ両側に、それぞれ配置したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のように、各縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点からキャビネットの各コーナーに向かって引いた直線をはさむ両側にそれぞれ配置することができる。
【0008】
また請求項3のように、縦フレームが断面L字型の押し出し材からなり、L字の各辺にねじ固定部を設けるとともに、キャビネットの内側角部に内部空間を形成し、この内部空間に臨む面に機器取付用溝部又は孔を設けたものであることが好ましい。
【0009】
また請求項4のように、下部の各コーナー部材がアンカーボルト挿通孔を備えたものであり、このアンカーボルト挿通孔と縦フレームのコーナー部とを結ぶ線の両側に、縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を配置した構造とすることが好ましい。
【0010】
また請求項5のように、縦フレームがキャビネットのコーナー部において、横フレームと平行な面に開口する縦溝と、コーナーから離れる方向に傾斜する面に開口する縦溝とを備えたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造は、各縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点から放射線を挟む両側にそれぞれ配置したり、キャビネットの各コーナーに向かって引いた直線をはさむ両側にそれぞれ配置したものであるから、単一のねじによる固定よりも縦フレームの固定強度を高めることができる。なおこの直線上に2本のねじ固定部を配置した場合には、コーナー方向への揺れに伴って発生する応力は外側の2本のねじ固定部に集中的に作用することとなるため、十分な強度増加が得られない。しかし本発明によれば、面方向への揺れは外側4本のねじによって支え、コーナー方向への揺れも4本のねじによって支えることができるので、耐震性が向上する。なおこの点については後に詳述する。
【0012】
請求項3のように、キャビネットの内側角部の内部空間に臨む縦フレームの面に機器取付用溝部又は孔を設けておけば、ダクトや各種機器の取り付けに便利である。また請求項4のように、下部の各コーナー部材がアンカーボルト挿通孔を備えたものであり、このアンカーボルト挿通孔と縦フレームのコーナー部とを結ぶ線の両側に、縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を配置すれば、キャビネットの強度を向上させることができる。さらに請求項5の構造とすれば、隣接するキャビネットの縦フレーム間を連結金具で連結する際に、互いに引き合う方向に力を作用させることができ、連結強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示す電気電子機器収納用キャビネットの全体斜視図である。
【図2】フレーム部材の断面図である。
【図3】コーナー部材と縦フレームとの関係を示す斜視図である。
【図4】コーナー部材と縦フレームとの関係を示す分解斜視図である。
【図5】コーナー部材と縦フレームとの関係を示す底面図である。
【図6】キャビネットを平面視した説明図である。
【図7】本発明の作用の説明図である。
【図8】他の実施形態のフレーム部材の断面図である。
【図9】下部のコーナー部材を示す説明図である。
【図10】キャビネットの連結状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明では4本の縦フレーム1と4本の横フレーム2と4本の奥行フレーム3とを直方体状に組み合わせ、電気電子機器収納用キャビネットの骨格を形成する。この実施形態では各フレームを構成するフレーム部材はアルミニウムの押し出し材である。
【0015】
図2は縦フレーム1を構成するフレーム部材の断面図である。なお横フレーム2と4本の奥行フレーム3とを構成するフレーム部材は縦フレーム1とはやや異なる断面形状を有するのであるが、本発明では縦フレーム1の断面形状が重要であるので、縦フレーム1のみについて説明する。図2の右側のフレーム部材に着目すると、その全体は断面L字型となっている。そしてL字の各辺、すなわち縦の辺のほぼ中央部にねじ固定部4を設けるとともに、横の辺の中央よりも先端寄りの部分にもねじ固定部5を設けてある。これらのねじ固定部4、5は、ねじ切りが行えるサイズの略円形孔となっている。
【0016】
またキャビネット外面板6は、L字の外側面に添って取り付けられるものであり、L字の内側角部には内部空間7が形成されることとなる。そしてフレーム部材のこの内部空間7に臨む面に、機器取付用溝部8が設けられている。またL字の各先端部にも機器取付用溝部9,10が設けられている。これらはいずれもその内部にナットをはめ込み、キャビネットの内面にレールや各種機器を取り付けるために用いられるものである。この目的のために入口が狭く奥が広がった断面形状となっている。内部空間7にはダクトや機器を取り付けることができる。なおこの機器取付用溝部9,10は溝に限定されるものではなく、孔であってもよい。
【0017】
またキャビネットのコーナー部Pにおいて、横フレームと平行な面(L字の横の辺の下側の面)に開口する縦溝11を備える。さらにL字の横の辺の下側先端部には縦方向に垂下する断面三角形の突出部12が形成されており、その斜面であるコーナーから離れる方向に傾斜する面に開口する縦溝13が形成されている。
【0018】
上記のような断面形状を備えたフレーム部材からなる縦フレーム1及び横フレーム2と奥行きフレーム3とは、図3、図4に示すようにフレーム部材の各端面をコーナー部材20に当接させ、ねじ21をコーナー部材20側からフレーム部材の端面に向けてねじ止めすることによって相互に固定されている。
【0019】
コーナー部材20は図3、図4に示されるようなブロックであり、好ましくは金属鋳造品である。フレーム部材20のフレーム部材端面と当接する面には小突起22が突設されており、フレーム部材の端面を位置決めできるようになっている。またコーナー部材20には3方向(XYZ方向)の貫通孔が形成されており、ねじ21を挿通できるようになっている。このうち横フレーム2と奥行きフレーム3とにねじ込まれるねじ21は1本であるからねじの貫通孔23,24は1つずつであるが、縦フレーム1にねじ込まれる垂直方向のねじ21は2本であり、ねじの貫通孔25は2個形成されている。これらの貫通孔25の位置が縦フレーム1のねじ固定部4,5と一致している。
【0020】
図5、図6に示すように、本発明では各縦フレーム1と各コーナー部材20とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点Oからキャビネットの各コーナーに向かって引いた直線OPをはさむ両側に、それぞれ配置した。このような配置を取ると、面方向の揺れを受けた場合には8本のねじのうち揺れ方向の外側となる4本のねじ21が縦フレーム1を支え、直線OP上に2本のねじを配置したときと大差はない。しかしコーナー方向の揺れを受けた場合には、本発明では図7(a)に示すようにABCDの4本のねじ21が縦フレーム1を支えるが、図7(b)に示すように直線OP上に2本のねじを配置しても、外側のacの2本のねじに荷重が集中し、内側のねじbdは荷重を有効に受けることができない。よってコーナー方向の揺れに対するキャビネットの耐震性が向上する。
【0021】
この実施形態ではキャビネットの各コーナーに向かった直線OPのコーナーPは、キャビネットの扉や側面パネルであるキャビネット外面板6のコーナーで説明したが、本発明のコーナー部とは広義の意味での、縦フレームの突出部を含めた外郭面の交わる箇所や、縦フレームの扉と平行面と側面パネル並行面との交わる箇所や、狭義の意味での、縦フレームの荷重を受けるコーナー部材におけるコーナー部材と縦フレームとの接合面でのコーナーの全てを含むものである。
【0022】
次に図8を用いて実施形態を説明する。この実施形態ではキャビネットの中心点Oとコーナー部Pとを結ぶ直線OPの片側であるが、キャビネットの中心点Oからの放射線Lの両側に縦フレームとコーナー部材とのねじ固定部を設けたものである。よって図7で説明したように、キャビネットのコーナー方向の揺れに対してねじ4本で荷重を有効に受けることができるものである。このように本発明は各縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点からの放射線をはさむ両側にそれぞれ配置したので、コーナー方向の揺れを受けた場合でも4本のねじが縦フレームを支え,耐震性が向上するものである。
【0023】
また図9に示すように、下部のコーナー部材20は内側にアンカーボルト挿通孔26を備えている。そしてこのアンカーボルト挿通孔26と縦フレーム1のコーナー部Pとを結ぶ線の両側に、縦フレーム1とコーナー部材20とのねじ固定部を配置することが好ましい。このアンカーボルト挿通孔26に挿通されるアンカーボルトによってアンカーボルト取付片27が下部のコーナー部材20と一体化されている。このためアンカーボルト挿通孔26が縦フレーム1の固定点となるので、アンカーボルト挿通孔26と縦フレーム1のコーナー部Pとを結ぶ線の両側にねじ固定部を配置すれば、面方向の揺れを受けた場合にもコーナー方向の揺れを受けた場合にも、ねじ21が有効に作用する。ねじ固定部はコーナー部材20としてはねじ21の貫通孔25となる。
【0024】
なお、2つキャビネットどうしを連結する場合には、図10のように連結金具40をコーナー部材20の外側に当てて連結するが、縦フレーム1がキャビネットのコーナー部において、横フレーム2と平行な面に開口する縦溝11と、コーナーから離れる方向に傾斜する面に開口する縦溝13とを備えた形状としておけば、連結金具40に互いに引き合う方向に力を作用させることができ、連結強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 縦フレーム
2 横フレーム
3 奥行フレーム
4 ねじ固定部
5 ねじ固定部
6 キャビネット外面板
7 内部空間
8 機器取付用溝部
9 機器取付用溝部
10 機器取付用溝部
11 縦溝
12 突出部
13 縦溝
20 コーナー部材
21 ねじ
22 小突起
25 貫通孔
26 アンカーボルト挿通孔
27 アンカーボルト取付片
40 連結金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦フレームと横フレームと奥行きフレームとの各端面をコーナー部材に当接させ、各端面をコーナー部材側からねじ止めしたキャビネットのフレーム固定構造であって、各フレームを押し出し成形されたフレーム材により構成し、各縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点からの放射線をはさむ両側に、それぞれ配置したことを特徴とする電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造。
【請求項2】
各縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を、キャビネットを平面視した場合の中心点からキャビネットの各コーナーに向かって引いた直線をはさむ両側にそれぞれ配置したことを特徴とする請求項1記載の電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造。
【請求項3】
縦フレームが断面L字型の押し出し材からなり、L字の各辺にねじ固定部を設けるとともに、キャビネットの内側角部に内部空間を形成し、この内部空間に臨む面に機器取付用溝部又は孔を設けたものであることを特徴とする請求項1記載の電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造。
【請求項4】
下部の各コーナー部材がアンカーボルト挿通孔を備えたものであり、このアンカーボルト挿通孔と縦フレームのコーナー部とを結ぶ線の両側に、縦フレームと各コーナー部材とのねじ固定部を配置したことを特徴とする請求項1記載の電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造。
【請求項5】
縦フレームがキャビネットのコーナー部において、横フレームと平行な面に開口する縦溝と、コーナーから離れる方向に傾斜する面に開口する縦溝とを備えたものであることを特徴とする請求項2記載の電気電子機器収納用キャビネットのフレーム固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−267854(P2010−267854A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118700(P2009−118700)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】