説明

電気電子機器用銅合金

【課題】耐応力緩和特性、導電性、強度、曲げ加工性およびハンダ密着性に優れた電気電
子機器用銅合金を提供する。
【解決手段】Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、MgとZrの一方または両方を合わせて 0.02〜0.3mass%、Zn 0.1〜5mass%を含み、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気電子機器用銅合金に関し、詳しくは電子電気機器用のコネクタ、端子材などのコネクタや端子材などに好適な電気電子機器用銅合金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に電気電子機器用材料としては、ステンレス系鋼のほか、電気伝導性および熱伝導性に優れるリン青銅、丹銅、黄銅等の銅(Cu)系材料も広く用いられている。
近年、電気電子機器の小型化、軽量化、さらにこれに伴う高密度実装化に対する要求が高まっている。小型化が進めればコンタクト部分の接点面積が減少となり、使用される板厚も薄くなり、従来と同等な信頼性を保つためにはより高強度な材料が必要となっている。コネクタは一般的に材料が「たわむ」、すなわち、変形することにより、所定の接圧を発生させて互いに嵌合(接合)する機構により通電や情報信号のやり取りを行っている。よって、使用中にこの接圧が減少することにより嵌合(接合)する力が低下して、通電や情報信号のやり取りができなくなることは致命的な欠陥である。この嵌合(接合)力の低下を応力緩和(耐クリープ)特性と称し、応力緩和特性が劣化しない、つまり、耐応力緩和特性が優れる銅合金がこれら電子部品に使用される材料に求められている。
【0003】
また、コネクタの種類によってはパソコンなどのCPU(集積演算装置)のように発熱を伴う機器に接続されている場合がある。この場合、コネクタ材料は加熱されることで、応力緩和が促進して速く嵌合(接合)力が低下するため、熱を速く放散させる機能を有している必要がある。放熱特性は材料の導電性に起因しており、より導電率の高い材料が求められている。なお、導電性が高い材料の要求は今後の高い周波数を用いた情報のやり取りからも要望されている。
さらに、電子電気機器の小型化は良好な曲げ加工性も材料に要求される。小型化の1つの方向に機器の薄型化がある。薄型化によりコネクタの低背化(高さが低い)が進む。そのため、コネクタにはより加工性の良好な材料が求められている。
【0004】
これらの理由で、強度が高く、優れた導電性を保ち、かつ、耐応力緩和特性と曲げ加工性に優れた材料が望まれている。具体的には、強度は600MPa以上、導電率は望ましくは50%IACS以上、応力緩和率は150℃×1000h後の緩和率が20%以下で、曲げ加工性の指針のR/tが望ましくは1以下の性能を有する材料が求められている。また、強度650MPa以上、導電率55%IACS以上の材料も求められている。
金属材料の強度を増加させる手法として材料に加工歪を導入する加工強化法や他の元素を固溶させた固溶強化法、第二相を析出させて強化する析出強化法が一般に行われている。
【0005】
析出強化法を利用したCu−Be合金(C17200)、Cu−Ni−Si合金(C70250)、Cu−Fe合金(C19400)、Cu−Cr合金(C18040)などがある。しかしながら、C17200はBeをCu母相中に析出させる強化機構を使うことで、強度が1000MPa以上で応力緩和率は20%以下、曲げ加工性も良好であるが、導電率が約25%IACSである。さらに、ベリリウム(Be)はその環境問題から使用について懸念があることも事実である。
C70250は、Ni−Siから成る金属間化合物をCu母相中に析出させることで強度が600MPa以上で応力緩和率が20%以下、曲げ加工性も良好であるが、導電率が50%IACS以上にならない。
【0006】
C19400は、鉄(Fe)をCu母相中に析出させる強化機構を使用しており、強度が600MPa以上で導電率も約65%IACSであるが、応力緩和率と曲げ加工性が要求特性を満足できない。
C18040の導電率は約80%IACSで強度は約600MPaであるが、C19400と同じく応力緩和率と曲げ加工性が要求特性を満足できない。
このようにいずれの析出強化手法でも要求した特性を満足できる材料はなく、新しい材料を開発することが強く求められている。
【0007】
これに対し、電子機器用銅合金において、Ni−Ti金属間化合物を均一微細にCuマトリックス中に析出させ、強度及び導電性を向上させた例がある(たとえば、特許文献1)。
また、Cu−Ni−Ti合金に、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)を添加することにより、リードフレームとレジンの密着性を向上させた例がある(たとえば、特許文献2)。
しかしながら、これらの銅合金であっても、強度と導電率と曲げ加工性、さらには耐応力緩和特性を同時に満足できないため、近年の電子機器の性能向上に伴う銅合金への特性要求を満たせなくなっている。
Ni-Ti金属間化合物を銅中に析出させることにより、諸特性を向上させた例がある(たとえば、特許文献3,4)。
【特許文献1】特開昭63−219540号公報
【特許文献2】特開昭61−157651号公報
【特許文献3】特開昭63−274728号公報
【特許文献4】特開昭63−14832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性、さらにハンダ密着性に優れた新しい電気電子機器用銅合金を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、第二相を析出させて強化する析出強化法で、ニッケル(Ni)とチタン(Ti)から成る金属間化合物による強化の研究を進めていく中でマグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)等を加えることにより金属間化合物が変化することで、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性、さらにハンダ密着性についての要求特性をほぼ満たすことのできる材料を製造し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、MgとZrの一方または両方を合計で0.02〜0.3mass%、Zn 0.1〜5mass%を含み、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金、
(2)Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、MgとZrの一方または両方を合計で0.02〜0.3mass%、Zn 0.1〜5mass%を含み、Snが0を超え0.5mass%以下であり、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金、
(3)Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、Mg 0.02〜0.3mass%及びZn 0.1〜5mass%を含み、Zr、Hf、In、Agのいずれか1つまたは2つ以上が合計で0を超え1.0mass%以下であり、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金、
(4)Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、Mg 0.02〜0.3mass%及びZn 0.1〜5mass%を含み、Snが0を超え0.5mass%以下であり、Zr、Hf、In、Agのいずれか1つまたは2つ以上が合計で0を超え1.0mass%以下であり、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金、および
(5)(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の電気電子機器用銅合金の製造方法であって、450〜650℃の温度で5時間以内の時間の時効析出熱処理を1回または2回以上行い、その時効析出熱処理の前の状態において35%IACS以下の導電性であることを特徴とする特徴とする電気電子機器用銅合金の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の銅合金は、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性、さらにハンダ密着性に優れる。さらに、強度は650MPa以上、応力緩和率は150℃×1000h後の緩和率が20%以下、導電率は55%IACS以上の性能を具備することができ、これらの金属材料は、電気電子機器用端子・コネクタあるいはリレー・スイッチ等に好適な合金材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を述べる。
本発明において、Cu母相中に析出するNi、Ti、およびMgからなる金属間化合物(以下「Ni−Ti−Mg」とする)、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物(以下、「Ni−Ti−Zr」とする)あるいはNi、Ti、MgおよびZrからなる金属間化合物(以下、「Ni−Ti−Mg−Zr」とする)が形成することにより合金の諸特性を格段に向上させる。これは、従来の合金においてNi−Ti析出物が形成した場合とは全く異なり、これらの金属間化合物が極めて高い強度、導電性および耐応力緩和特性を発現する。
【0012】
上述したように、Ni−TiがCu母相中に微細に分散した場合、析出強化機構により強度が向上し、同時に、導電率が上昇する。この時、Ni−Ti−Mg、Ni−Ti−ZrあるいはNi−Ti−Mg−Zrが個々に、あるいは複合的にCu母相中に微細分散することにより、Ni−Tiが析出した場合と比較して非常に大きな強化量を示す。この効果により、良好な強度と導電率を有する材料を得ることができる。なお、同時にNi−Ti化合物が分散していても、その効果は現れ、Ni−Ti−Mg、Ni−Ti−ZrあるいはNi−Ti−Mg−Zrの分散密度が高くなればなるほど強化量は大きい。その場合、Ni−Ti−Mg、Ni−Ti−ZrあるいはNi−Ti−Mg−Zrの分散密度は、Ni−Tiと比較して同量以上が望ましい。これらNi-Ti系の3元、または多元化合物は耐応力緩和特性の向上にも寄与する。
また、Mg、Snを適量固溶させることにより、導電性を落とすことなく強度と耐応力緩和特性を向上させることができる。
この所望の特性は下記に規定された成分の含有量により得ることができる。
【0013】
Niの含有量を1〜3mass%に限定したのは、1mass%未満では析出による強化量が小さく十分な強度を得ることができず、また耐応力緩和特性も改善できないためである。また、Niが3mass%を超えると時効処理後も過剰なNiが母相に固溶するため導電率の低下を招くためである。また、溶体化処理温度が融点近傍温度となり、工業的に安定なプロセスで製造できなくなる。さらに、高温、長時間の溶体化処理が必要となり、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣るという問題が発生する。Niの含有量は、好ましくは1.2〜2.4mass%、より好ましくは1.4〜2.2mass%である。
【0014】
Tiの含有量を0.2〜1.4mass%に限定した理由は、0.2%mass未満では析出による強化量が小さく十分な強度を得ることができず、また耐応力緩和特性も改善できないためである。また、Tiが1.4mass%を超えると時効処理後も過剰なTiが母相に固溶するため導電率の低下を招くためである。また高温、長時間の溶体化処理が必要となり、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣るという問題が発生する。Tiの含有量は、好ましくは0.3〜1.0mass%、より好ましくは0.35〜0.9mass%である。
【0015】
Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7の範囲に限定した理由は、Ni-Ti系もしくは、Ni-Ti-Mg系などの多元化合物がCu中である化学量論組成の化合物として析出するため、適切な比で配合する必要がある。この比率でない場合は溶質元素が化合物の生成に寄与せずに固溶して導電性を低下させるため、好ましくない。Ni/Tiは、好ましくは2.6〜3.8、さらに好ましくは2.8〜3.6である。
【0016】
MgはNi、Ti、およびZrとともに金属間化合物(以下、「析出物」とも言う)を形成し、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性等を向上させる。MgとZrの一方または両方の含有量を合計で0.02〜0.3mass%に限定した理由は、0.02mass%未満であるとNi、Ti、およびMgから成る析出物、Ni、Ti、およびZrから成る析出物、及び/またはNi、Ti、Mg、およびZrから成る析出物が少ないため強度が劣るためである。また、0.3mass%を超えると高温、長時間の溶体化処理が必要となり、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣るためである。また時効処理を行っても過剰なMg及びZrが固溶したままとなり導電率が劣る。MgとZrの一方または両方の含有量の合計は、好ましくは0.05〜0.18mass%、より好ましくは0.08〜0.15mass%である。
【0017】
前記金属間化合物は、分布密度が1×109〜1013個/mm2であると強度及び曲げ加工性に優れ、好ましい。
金属間化合物の分布密度が1×109個/mm2未満であると析出による強度向上の効果が不足し、1×1013個/mm2を超えると粒界に粗大な析出物が形成しやすくなり、曲げ加工性を劣化させるという問題が発生する。分布密度は、さらに好ましくは3×1010〜5×1012個/mm2、より好ましくは1×1011〜3×1012個/mm2である。なお、金属間化合物の分布密度は、時効析出熱処理、時効析出熱処理の前に行う冷間加工、溶体化処理、熱間圧延の条件を適宜組み合わせることにより制御する。
なお析出物の分布密度は、透過電子顕微鏡観察により析出物の個数を測定して、その個数を単位面積あたり(個/mm2)に算出する。
【0018】
Znはハンダ密着性を向上させ、メッキの剥離を防止する効果がある。本発明の好ましい用途は電子機器であり、その多くの部品はハンダで接合される。そのため、ハンダの密着性が向上することは部品の信頼性向上につながり、電子機器用途には不可欠な要求特性である。Znの効果には昨今の議論がある(たとえば、伸銅技術研究会誌 vol.026 (1987) p51〜p56)。この中ではZnを添加すると、耐熱剥離性は良好とされている。これは、Znを添加することにより、ボイドの生成が抑制され、またNi、Siの母材と拡散層の界面への濃縮が抑えられるために、耐熱剥離性が向上するとされている。この例は同じ析出型合金のCu−Ni−Si合金であるが、同様の効果を本発明でも確認した。
【0019】
Znの含有量を0.1〜5mass%に限定したのは、0.1mass%未満では耐熱剥離特性の効果が現れず、5mass%を超えると導電率の低下を招くという問題があるためである。Znの含有量は、好ましくは0.2〜3.0mass%、より好ましくは0.3〜1mass%である。
【0020】
SnはMgとともに固溶して耐応力緩和特性等を向上させる。また、900℃以上で行われる熱間圧延や溶体化熱処理の冷却中においてNi-Tiの粗大な析出を抑制する効果があり、析出硬化量を促進させて強度を向上させる。本合金系はほぼ全ての原子が固溶する理想的な溶体化状態が900℃以上の高い温度で実現するため、原子拡散が早い高温における粗大析出を防止することが、良好な析出強化を得るために重要であるが、Snの添加によりそれがより良好に実現し、時効析出による強度と耐応力緩和特性が向上する。また、粒界などへの粗大析出を防止して曲げ加工性を向上させる。Snの含有量が増えれば増えるほど前記効果が高まるが、0.5mass%を超えると過剰なSnが固溶したままとなり導電率が劣る。Snの含有量は0を超え0.5mass%以下、好ましくは0.05〜0.25mass%である。
【0021】
Zr、Hf、InおよびAgは、Ni、Tiとともに析出物を形成するなどして、強度、導電率、耐応力緩和特性等を向上させる。含有量が増えれば増えるほど前記効果が高まるが、1.0mass%を超えると高温、長時間の溶体化処理が必要となり、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣る。また時効処理を行っても過剰な原子が固溶したままとなり導電率が劣る。ZrとHfとInとAgの含有量は0を超え1.0mass%以下、好ましくは0.05〜0.5mass%、より好ましくは0.07〜0.3mass%である。
【0022】
本発明の電気電子機器用銅合金の引張強度は650MPa以上である。好ましくは、750MPa以上であり、上限値は特に制限はないが850MPaである。
本発明の電気電子機器用銅合金の導電率は55%IACS以上である。好ましくは、60%IACS以上であり、上限値は特に制限はないが70%IACSである。
本発明の電気電子機器用銅合金を150℃で1000時間保持したときの応力緩和率は20%以下である。好ましくは18%以下、より好ましくは16%以下であり、下限値は特に制限はないが10%である。
【0023】
本発明に係る銅合金は、例えば鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効処理、必要に応じて更に仕上げ冷間圧延、歪み取り焼鈍という工程で製造される。
鋳造のとき、最終凝固部などにおいて溶質元素の偏析が起こることを防止するためには冷却速度を速めるのが好ましく、また速すぎると鋳塊内に空洞ができてしまい品質を低下させたり鋳塊内部応力を高めて内部欠陥の原因になるので、1〜100℃/秒の冷却速度で行うことが好ましい。より好ましくは10〜80℃/秒で行う。
均質化焼鈍において、粗大なNi-Ti系化合物の析出を防止して固溶させるために、合金の溶質原子量に応じた溶体化温度以上の温度で行うことが好ましい。また、必要以上に高い温度で行うことは、Ti、Mg、Zr、Hfなどの元素の酸化を助長し製品のメッキ密着性などの品質を低下させるので好ましくない。よって、熱間圧延前に鋳塊を保持する温度は、通常800〜1050℃、好ましくは900〜1000℃、更に好ましくは960〜1000℃で行う。保持時間は、十分に溶体化させ、かつ酸化を防止するために1時間以上10時間以内が好ましい。保持温度までの昇温速度が遅い場合に粗大な析出物を発生させるため、3℃/分以上の速度で昇温するのが好ましい。
また、熱間圧延の開始から終了までの冷却中に溶質原子の析出を抑制するためには、通常20℃以下の冷水のシャワーによる冷却などによって冷却速度を高める。好ましくは5〜300℃/秒、より好ましくは50〜300℃/秒で行う。
【0024】
この工程の中で、冷間圧延によって板厚を減少させる工程の間に、450〜650℃の温度で5時間以内の時間の時効析出熱処理を1回または2回を行うことにより、優れた強度と導電性と耐応力緩和特性と曲げ加工性が得られる。
時効析出熱処理温度が低すぎると析出が不足して強度と導電性が不足し、高すぎると析出物が粗大化してしまい強度に寄与しなくなる。好ましくは480℃〜620℃である。
時効析出熱処理時間は、好ましくは4時間以内であり、下限値は0.1時間である。
また、この時効析出熱処理の工程を冷間圧延をはさんで2回以上行うことにより、更に強度と導電性が向上する。これは、1回目の時効によって析出した微細な化合物によって、次の冷間圧延において導入される転位の密度をより高めることができ、このときの転位が2回目以降の時効析出熱処理において析出物が析出するときの析出核生成サイトとなり、より析出物の密度を高めてより高強度が実現する。よって、1回目の時効条件は析出物の密度が最も高い条件を採用するのが好ましい。
また、この時効析出熱処理においてその効果を引き出すためには、析出させる前の状態において溶質原子の固溶量を極力増加させることによりその効果が格段に大きくなる。すなわち、時効析出熱処理の前に良好な溶体化状態をつくり、時効析出熱処理によって高密・微細な析出状態を実現することにより、高強度、高導電、高耐応力緩和特性、の特性が出現する。溶体化度は一般的に電気伝導性を指標に用いるが、時効析出熱処理の前の電気伝導性が35%IACS以下の場合に強度、耐応力緩和特性が向上する。35%IACSを越えた導電性の場合は時効析出熱処理において高密・微細に析出する溶質原子量が少なくなり、強度と耐応力緩和特性が劣る。さらに好ましくは30%IACS以下が良い。
【0025】
本発明において、最終塑性加工方向とは、最終に施した塑性加工が圧延加工の場合は圧延方向、引抜(線引)の場合は引抜方向を指す。なお、塑性加工とは圧延加工や引抜加工であり、テンションレベラーなどの矯正(整直)を目的とする加工は含めない。
【0026】
本発明の電気電子機器用銅合金は、それに限定されるものではないが、例えば、コネクタ、端子、リレー・スイッチ、リードフレームなどに好適に用いることができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明品における、高い導電性を持ち、なおかつ強度と耐応力緩和特性に優れるという特性は、Ni-Ti系、Ni-Ti-Mg系、Ni-Ti-Zr系、その他Ni-Tiをベースとする多元金属間化合物が時効析出焼鈍の熱処理においてCu母相中に高密・微細に析出することによって出現する。そのためには、時効析出工程以前の状態において溶質原子の固溶量を極力増加させることが必要であり、その時の溶体化度の指標である電気伝導性は35%IACS以下、さらに好ましくは30%IACS以下が良い。そのために、時効析出熱処理よりも前の工程において、(1)鋳造速度、(2)その後に行う均質化熱処理の昇温速度と保持温度と保持時間、(3)その後に行う熱間圧延と熱間圧延における冷却速度、を下記のような方法で行った。
【0029】
Ni、Ti、Mg、Zn、Sn、Zr、Hf、InおよびAgを表1〜5に示す量を含有し、残部をCuとする組成の合金を高周波溶解炉により溶解し、鋳造して厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊を得た。1〜100℃/秒の冷却速度で行った。
その鋳塊を800〜1050℃×1hの均質化焼鈍後、熱間圧延により厚さ約10mmの熱延板を仕上げた。3℃/分以上の速度で昇温した。
また、熱間圧延の冷却速度を10〜300℃/秒で行った。
その熱間圧延材を両面約1.0mm面削して酸化膜を除去し、次いで冷間加工により厚さ0.1〜2mmの板材を得た。この板材を以下に示すような工程1〜4、5−1〜5−4、6−1〜6−4及び7−1〜7−4に従って加工・熱処理を行って、各々の試験材を得た。
【0030】
[工程1]
冷間圧延の後に、不活性ガス中で850〜1000℃の温度で15〜600秒の溶体化処理を行い、次いで冷間加工を行い、450〜650℃の温度で5時間以内の時効析出焼鈍を1回行い、この焼鈍材に0を超え30%以下の加工率で最終冷間加工を行い、150〜500℃の歪み取り焼鈍を行って試験材とした。
[工程2]
冷間圧延の後に、不活性ガス中で850〜1000℃の温度で15〜600秒の溶体化処理を行い、次いで冷間加工を1回以上と450〜650℃の温度で5時間以内の時効析出焼鈍を2回以上を交互に行い、最終時効焼鈍材に0を超え30%以下の加工率で最終冷間加工を行い、150〜500℃の歪み取り焼鈍を行って試験材とした。
[工程3]
冷間加工の後に450〜650℃の温度で5時間以内の時効析出焼鈍を1回行い、この焼鈍材に0〜30%の加工率で最終冷間加工を行い、150〜500℃の歪み取り焼鈍を行って試験材とした。
[工程4]
冷間加工を2回以上と450〜650℃の温度で5時間以内の時効析出焼鈍を2回以上を交互に行い、最終時効焼鈍材に0を超え30%以下の加工率で最終冷間加工を行い、150〜500℃の歪み取り焼鈍を行って試験材とした。
[工程5−1〜5−4]
工程1、2、3、4の時効析出焼鈍の1つまたは2つ以上において650℃を超える温度で行った。これらの工程をそれぞれ、工程5−1〜5−4とした。
[工程6−1〜6−4]
工程1、2、3、4の時効析出焼鈍の1つまたは2つ以上において450℃未満の温度で行った。これらの工程をそれぞれ、工程6−1〜6−4とした。
[工程7−1〜7−4]
工程1、2、3、4において、時効析出焼鈍を行う前の導電率が35%IACSを超える状態で時効析出焼鈍を行った。これらの工程をそれぞれ、工程7−1〜7−4とした。
【0031】
このようにして得られた各々の板材について、[1]引張強度(TS)、[2]導電率(EC)、[3]応力緩和特性(SR)、[4]曲げ加工性、[5]析出物(PPT)の密度、[6]ハンダ密着性を下記方法により調べた。各評価項目の測定方法は以下の通りである。
[1]引張強度(TS)
圧延平行方向から切り出したJIS−13B号の試験片をJIS−Z2241に準じて3本測定しその平均値(MPa)を示した。
[2]導電率(EC)
圧延平行方向から切り出した10×150mmの試験片を作製して四端子法を用いて、20℃(±1℃)に管理された恒温槽中で2本測定しその平均値(%IACS)を示した。なお、端子間距離は100mmである。
[3]応力緩和特性(SR)
日本電子材料工業会標準規格 EMAS−3003に準じて150℃×1000hの条件で測定した。
図1は、応力緩和特性の試験方法の説明図である。図1(a)は初期たわみ量δの測定を模式的に示した説明図である。1は試験片、4は試料台を示す。片持ち梁法を採用し初期応力として0.2%耐力の80%を負荷した。この後、150℃で1000hrまで暴露した。試験片は図1(b)の2に示す位置になる。図1(b)中、3はたわみを生じさせない試験片の位置を示す。永久たわみ量δはH−Hの値となる。
そこで、応力緩和率(%)は、δ/δ×100で表される。この試験は端子材などに用いたときに長時間一定歪みのもとでの応力変化を調べるものであり、応力緩和率が小さい合金ほど良好と見なされる。
【0032】
[4]曲げ加工性(R/t)
板材を幅0.5mm、長さ25mmに切出し、これに板厚(t)と同じ曲げ半径(R)でW(90°)曲げし、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察した。評価基準は曲げ部表面に割れが無い場合は○、割れが有る場合は×で表記した。
[5]析出物(PPT)
供試材を直径3mmへ打ち抜き、ツインジェット研磨法を用いて薄膜研磨を行った後、加速電圧300kVの透過型電子顕微鏡で5000〜500000倍の写真を撮影して、その写真上で析出物の粒径と密度を測定した。析出物の粒径と密度を測定するとき、n=10(nは観察の視野数)でその個数を測定することで、個数の局所的な偏りを排除するように測定した。その個数を単位面積当たり(個/mm)へ演算した。
【0033】
[6]ハンダ密着性
図2に模式的に示した説明図に従いハンダ密着性を試験した。供試材を20×20mmへ切断し、前処理として材料表面の電解脱脂を実施し厚さ6mmの材料13とした。材料13の表面にSn−Pbの共晶はんだを盛ってハンダ部12とし、そこへFe線にCuを被覆したφ2mmの鉄線11(長さ約100mm)を材料13と前記線11が直角になるように固定した(図2(a))。
前記線11を付けた試験片を大気中で加熱し、加熱前後の鉄線11と材料13とのハンダ接続強度を測定した。加熱条件は恒温漕中で150℃×500hとし、恒温漕から取り出した後、十分に空冷にて徐冷させたのち(b)に示すように矢印方向への引張試験を行い荷重を測定した。引張試験の条件はロードセル速度を10mm/minとし室温で測定した。引張試験では供試材の線11とハンダ部12の界面から剥離した試験材料13の引張強度を求めた。なお、界面から剥離せず、鉄線11がハンダ部12より抜けたものは鉄線11とハンダとの密着が悪かったと判断し評価対象にはしていない。
同様に熱処理前の引っ張り強度も測定し、熱処理前の試験材料13の強度と熱処理後の試験材料13の強度を測定し、その強度低下量が50%以下の場合は○、50%以上の場合は×として評価した。経時的に接合強度が低下しない(強度残存率が高い)方が、はんだ性が良好であり、信頼性が高い。
【0034】
また、析出物の同定は透過電子顕微鏡観察を行い、透過電子顕微鏡の附属のEDX分析装置(エネルギー分散型装置)にて5〜10個の析出物の分析をして、Ni、Ti、Mg、Zrの分析ピークを確認した。また、透過電子顕微鏡で回折像を撮影し、Ni−Ti析出物が形成されている場合とは異なる回折像になることを確認した。つまり、回折像が異なるとは、Ni−Ti以外の析出物が形成されていることを示している。回折像の撮影には析出物が約10〜100個ある結晶粒を選択して同定の評価を実施した。
上記の[1]〜[6]の評価結果についても、表1〜5に合わせて示した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
表1から明らかなように、本発明例1〜16はいずれも引張強度650MPa以上、導電率55%IACS、応力緩和率が20%以下の優れた特性を有した。
これに対し、比較例17はNiが多いので高温、長時間の溶体化処理が必要となり、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣った。また固溶するNi量が多くなったために導電率が劣った。
比較例18はNi量が少ないので十分な析出強化量を得られないため引張強度が劣った。
比較例19、20はNi/Ti比が本発明で規定する範囲と異なるので、固溶する元素の量が増えてしまい導電率が劣った。
比較例21はZnが配合されていないのでハンダ密着性が悪化した。
比較例22、23はMgが配合されていない、または過小量なのでNi、Ti、Mgから成る析出物が少ないために強度が不足し、Mg固溶量も少ないために応力緩和率が劣った。
比較例24はMgが過剰量なので、時効処理を行っても過剰なMgが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例25は析出物の密度が低いために強度と応力緩和率が劣った。
比較例26は析出物の密度が高いため粒界に粗大な析出物が形成しやすくなり、曲げ加工性が劣った。
比較例26−1はZn添加量が多いために過剰なZnが固溶したままとなり導電率が低下した。
なお上記の比較例17〜26及び26−1は請求項1の発明の比較例である。
【0041】
表2から明らかなように、本発明例27〜46はいずれも引張強度650MPa以上、導電率55%IACS、応力緩和率が20%以下の優れた特性を有した。
これに対し、比較例47はNiが多いので高温、長時間の溶体化処理が必要となり、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣った。また固溶するNi量が多くなったために導電率が劣った。
比較例48はNi量が少ないので十分な析出強化量を得られないため引張強度が劣った。
比較例49、50はNi/Ti比が本発明で規定する範囲と異なるので、固溶する元素の量が増えてしまい導電率が劣った。
比較例51はZnが配合されていないのでハンダ密着性が悪化した。
比較例52、53はMgが配合されていない、または過小量なのでNi、Ti、Mgから成る析出物が少ないために強度が不足し、Mg固溶量も少ないために応力緩和率が劣った。
比較例54はMgが過剰量なので、時効処理を行っても過剰なMgが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例55は析出物の密度が低いために強度と応力緩和率が劣った。
比較例56は析出物の密度が高いため粒界に粗大な析出物が形成しやすくなり、曲げ加工性が劣った。
比較例57、58はSn量が多いために導電率が劣った。
比較例58−1はZn添加量が多いために過剰なZnが固溶したままとなり導電率が低下した。
なお上記の比較例47〜58及び58−1は請求項2の発明の比較例である。
【0042】
表3から明らかなように、本発明例59〜62はいずれも引張強度650MPa以上、導電率55%IACS、応力緩和率が20%以下の優れた特性を有した。
これに対し、比較例63は、Zrが過剰量なので、過剰なZrが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例64は、Hfが過剰量なので、過剰なHfが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例65は、Inが過剰量なので、過剰なInが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例66は、Agが過剰量なので、過剰なAgが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
なお上記の比較例63〜66は請求項3の発明の比較例である。
【0043】
表4から明らかなように、本発明例67〜70はいずれも引張強度650MPa以上、導電率55%IACS、応力緩和率が20%以下の優れた特性を有した。
これに対し、比較例71は、Zrが過剰量なので、過剰なZrが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例72は、Hfが過剰量なので、過剰なHfが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例73は、Inが過剰量なので、過剰なInが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
比較例74は、Agが過剰量なので、過剰なAgが固溶したままとなり導電率、曲げ加工性ともに劣った。
なお上記の比較例71〜74は請求項4の発明の比較例である。
【0044】
表5から明らかなように、本発明例1、28、29及び4はいずれも引張強度650MPa以上、導電率55%IACS、応力緩和率が20%以下の優れた特性を有した。
これに対し、比較例75〜77は時効温度が高すぎるために析出物の密度が低くなり強度と応力緩和率が劣った。
比較例78〜80は時効温度が低すぎるために析出量が不十分で密度が低いために、強度と導電率と応力緩和率が劣った。
比較例81〜83は時効析出熱処理の前の状態において35%IACS以上の導電性で、時効析出熱処理を行ったために、時効析出熱処理後の析出物の密度が低くなり強度と応力緩和率が劣った。
なお上記の比較例75〜83は請求項5の発明の比較例である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】応力緩和特性の試験方法の模式的な説明図である。
【図2】ハンダ密着性の試験方法の模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3 試料
4 試料台
11 鉄線
12 ハンダ部
13 材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、MgとZrの一方または両方を合計で0.02〜0.3mass%、Zn 0.1〜5mass%を含み、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金。
【請求項2】
Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、MgとZrの一方または両方を合計で0.02〜0.3mass%、Zn 0.1〜5mass%を含み、Snが0を超え0.5mass%以下であり、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金。
【請求項3】
Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、Mg 0.02〜0.3mass%及びZn 0.1〜5mass%を含み、Zr、Hf、In、Agのいずれか1つまたは2つ以上が合計で0を超え1.0mass%以下であり、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金。
【請求項4】
Ni 1〜3mass%及びTi 0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、Mg 0.02〜0.3mass%及びZn 0.1〜5mass%を含み、Snが0を超え0.5mass%以下であり、Zr、Hf、In、Agのいずれか1つまたは2つ以上が合計で0を超え1.0mass%以下であり、残部がCuと不回避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、およびMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、およびZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、およびZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×109〜1×1013個/mm2であり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55%IACS以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下であることを特徴とする電気電子機器用銅合金。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気電子機器用銅合金の製造方法であって、450〜650℃の温度で5時間以内の時間の時効析出熱処理を1回または2回以上行い、その時効析出熱処理の前の状態において35%IACS以下の導電性であることを特徴とする特徴とする電気電子機器用銅合金の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−336068(P2006−336068A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161475(P2005−161475)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】