説明

電池、この電池を搭載した車両、及び、この電池を搭載した電池搭載機器

【課題】 正極板及び負極板を、セパレータを介して捲回軸の周りに捲回し、集電部の一部が捲回されつつ互いに重なる形態とされた発電要素を有する電池において、発電要素内で生じたガスをこの発電要素外に放出することができる電池を提供する。また、このような電池を搭載した車両、及び、このような電池を搭載した電池搭載機器を提供する。
【解決手段】 単電池100は、いずれも帯状の正極板140、負極板170及びセパレータ190を有する発電要素130を備えている。正極板140は、正極活物質148を担持していない正極集電部143を含む帯状の正極導電部材141を有する。正極集電部143は、正極側通気孔145Hを、捲回軸130Xの周方向RTに分散して、複数有し、これらの正極側通気孔145Hは、セパレータ内側部位191を発電要素外部130Sと連通させる正極側通気経路PPの一部をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、この電池を搭載した車両、及び、この電池を搭載した電池搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル機器や携帯機器などの電源として、また、電気自動車やハイブリッドカーなどの電源として、様々な二次電池が提案されている。この二次電池の中には、電解液と、帯状の正極板及び負極板を帯状のセパレータを介して渦巻状に捲回した発電要素とを有するものがある。さらに、このような発電要素の中には、正極板のうち、正極活物質を担持しない部分(正極集電部)が、捲回軸に沿う軸線方向に、セパレータから遠ざかるにつれて、この捲回軸に向けて束ねた形態で集電されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−323106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された密閉型電池(電池)は、帯状の正極(正極板)及び負極(負極板)を帯状のセパレータを介して捲回した捲回型電極(発電要素)、この捲回型電極を収容する有底円筒状の電池ケース、及び、この電池ケースを閉塞する円板状の電池蓋(集電端子部材)を有している。この密閉型電池では、捲回型電極は、電池蓋を正極端子とし、捲回軸が電池ケースの軸に沿うように電池ケース内に収容されている。捲回された正極の一部で、活物質(正極活物質)を塗布しない正極集電体(正極集電部)は、捲回型電極から電池蓋に向けて延び、電池蓋の中心部に束ねた形態でこの電池蓋と電気的に接続している。
【0005】
ところで、二次電池では、例えば、短絡や過充電等により電池に大きな電流値の電流が流れ、発電要素内のうち、正極板及び負極板がセパレータを介して捲回された部分の温度が上昇すると、この部分で電解液がガス化することがある。
一方、正極集電部あるいは、負極板のうち負極活物質を塗布しない負極集電部、つまり集電部の端辺部を、特許文献1のように、互いに重ね合わさせる形態とすると、発電要素の軸線方向の端部を通じた発電要素内外のガスの流通が困難になる。
【0006】
すると、発電要素内に生じたガスは、発電要素内、特に発電要素の軸線方向の中央部に滞留しがちになり、この中央部が捲回軸の径方向外側に向けて膨張する。これにより、発電要素内の各部材に亀裂が生じるなどの電池の損傷を生じる虞がある。
なお、電池ケース等に内部のガスを放出させる安全弁を設けている場合であっても、ガスが発電要素内で滞留して、このガスを発電要素を収容する電池ケース内の収容空間にまで放出できないため、安全弁が十分機能しないまま電池が膨張し、同様の不具合が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、正極板及び負極板を、セパレータを介して捲回軸の周りに捲回し、集電部の一部が捲回されつつ互いに重なる形態とされた発電要素を有する電池において、発電要素内で生じたガスをこの発電要素外に放出することができる電池を提供することを目的とする。また、このような電池を搭載した車両、及び、このような電池を搭載した電池搭載機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、電解液、及び、いずれも帯状の正極板と負極板とを、帯状のセパレータを介して捲回軸の周りに捲回してなる発電要素を備える電池であって、上記正極板は、正極活物質と、帯状の正極導電部材であって、上記正極活物質を担持する正極活物質担持部、及び、上記捲回軸に沿う軸線方向の一方側に向けて、上記正極活物質担持部から延びる形態で突出し、上記正極活物質を担持しない正極集電部を含む正極導電部材と、を有し、上記負極板は、負極活物質と、帯状の負極導電部材であって、上記負極活物質を担持し、上記正極板の上記正極活物質担持部と上記セパレータを介して重なり合う負極活物質担持部、及び、上記軸線方向の他方側に向けて、上記負極活物質担持部から延びる形態で突出し、上記負極活物質を担持しない負極集電部を含む負極導電部材と、を有し、上記正極集電部及び上記負極集電部の少なくともいずれかである集電部は、このうち、上記軸線方向上記セパレータと逆側に位置する端辺部が、捲回されつつ互いに重なる形態とされ、かつ、上記セパレータのうち上記捲回軸の径方向内側に位置する部位を、上記発電要素の外部と連通させる通気経路の一部を構成する通気用欠損部を有する電池である。
【0009】
本発明の電池では、集電部は、このうち、軸線方向セパレータと逆側に位置する端辺部が捲回されつつ互いに重なる形態とされている。しかし、この集電部は、セパレータのうち捲回軸の径方向内側に位置する部分を、発電要素の外部と連通させる通気経路の一部を構成する通気用欠損部を有している。
これにより、電解液のガス化によりガスが発電要素内に生じたとしても、このガスを、通気用欠損部を含む通気経路を通じて発電要素の外部に放出することができる。
このため、このようなガスが発電要素内に滞留することが防止できる。かくして、発電要素の各部材に亀裂が生じるなど、発電要素自身の膨張による電池の損傷を抑制できる。
【0010】
なお、本発明の電池では、このようなガスを、発電要素の外部に放出できるので、安全弁を備えた電池ケースに発電要素を内部に収容する場合には、さらに、この安全弁を通じて、ガスを電池ケースの外部に放出させることができる。
【0011】
また、正極導電部材の正極集電部及び負極導電部材の負極集電部、つまり集電部としては、例えば、金属箔、所定の網目形状を有する網状部材や、内部に連続気孔を有し、表裏面間で通気が可能な発泡板材などを用いることができる。
また、通気用欠損部としては、例えば、集電部を金属箔で構成した場合には、この金属箔に穿孔した通気孔や、軸線方向に見て活物質担持部(セパレータ)と逆側の端辺に形成した通気用の切り欠きが挙げられる。また、集電部を上述の網状部材で構成した場合には、網目をなす空隙が、上述の発泡板材で構成した場合には、発泡板材の内部に含まれる通気孔が、それぞれ該当する。
【0012】
さらに、上述の電池であって、前記通気用欠損部を、捲回された前記集電部の周方向に分散して、複数有し、前記通気経路を複数設けてなる電池とすると良い。
【0013】
本発明の電池では、通気用欠損部を、複数分散して有し、通気経路を複数設けているので、発電要素の内部で発生したガスを、より容易にその外部に放出させることができる。
【0014】
また、上述の電池であって、前記集電部は、箔状であり、上記集電部のうち、前記端辺部が互いに重なりあった部位に接続してなる集電端子部材を有し、複数の前記通気用欠損部は、隣り合う上記通気用欠損部が上記集電部の周方向に見て重ならない千鳥状に配置されてなる電池とすると良い。
【0015】
複数の通気用欠損部を、箔状の集電部の周方向に1列に並べて配置すると、通気用欠損部を通じた通気はできるが、この通気用欠損部の存在により、正極活物質あるいは負極活物質と、集電端子部材との集電部を通じた通電することによる導電路が減少する。
これに対し、本発明の電池では、複数の通気用欠損部を上述のように配置しているので、通気用欠損部を通じた通気を確保できる。しかも、上述の導電路の減少を抑制でき、集電部に生ずる抵抗を抑制できる。
【0016】
また、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池であって、前記集電部は、箔状であり、前記通気用欠損部は、前記軸線方向の寸法が周方向の寸法よりも長い形態とされてなる電池とすると良い。
【0017】
本発明の電池では、通気用欠損部の軸線方向の寸法を、周方向の寸法よりも長くしている。
これにより、通気用欠損部の周方向の寸法を軸線方向の寸法よりも長くした場合に比して、正極活物質あるいは負極活物質と、集電部の端辺部との間の通電における導電路の減少を抑制でき、集電部に生ずる抵抗を抑制できる。
【0018】
また、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の電池であって、前記集電部は、所定の網目形状を有する網状部材で構成されてなり、前記通気用欠損部は、上記網状部材の網目をなす空隙である電池とすると良い。
【0019】
本発明の電池では、集電部を、所定の網目形状を有する網状部材で構成して、通気用欠損部を網目をなす空隙としているので、発電要素の内部で発生したガスを、この空隙を通じて外部に確実に放出できる。
しかも、集電部に別途、通気孔や通気可能な切り欠きを設けなくても、集電部の全周において容易に発電要素の内部と通気できる。
なお、集電部のみならず、正極活物質担持部を含めた正極導電部材全体や、負極活物質担持部を含めた負極導電部材全体を、上述の網状部材で構成しても良い。
【0020】
さらに、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の電池であって、前記集電部は、表裏面間で通気が可能な連続気孔を内部に有する発泡板材からなり、前記通気用欠損部は、上記連続気孔である電池とすると良い。
【0021】
本発明の電池は、集電部を、内部に連続気孔を有し、表裏面間で通気が可能な発泡板材で構成している。このため、この連続気孔を通気用欠損部として、発電要素の内部で発生したガスを、この連続気孔を通じて発電要素の外部に確実に放出できる。
しかも、集電部に別途、通気孔や切り欠きを設けなくても、集電部の全周において発電要素の内部と通気できる。
なお、集電部のみならず、正極活物質担持部を含めた正極導電部材全体や、負極活物質担持部を含めた負極導電部材全体を、上述の発泡板材で構成しても良い。
【0022】
さらに、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電池であって、前記発電要素を内部に収容する電池ケースを備え、この電池ケースは、上記電池ケースの内圧が所定値を越えたときに、開裂して上記電池ケースの外部にガスを放出する安全弁を有してなる電池とすると良い。
【0023】
本発明の電池では、発電要素を内部に収容する電池ケースに安全弁を備えているので、電解液のガス化によりガスが発電要素内に生じたとしても、このガスを発電要素の外部に放出して、この安全弁を通じて、ガスを電池ケースの外部に放出させることができる。
【0024】
さらに、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電池を搭載してなる車両とすると良い。
【0025】
本発明の車両では、集電部に、発電要素の外部と連通させる通気経路の一部を構成する通気用欠損部を有する発電要素を備えた前述の電池を搭載している。
これにより、電池における信頼性が高く、電池の損傷や、電池特性の低下を抑制して、良好な走行が可能な車両とすることができる。
なお、電池を搭載した車両としては、例えば、電気自動車、ハイブリッドカーのほか、バイク、フォークリフト、電動車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、鉄道車両等の車両が挙げられる。
【0026】
さらに、他の解決手段は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電池を搭載してなる電池搭載機器である。
【0027】
本発明の電池搭載機器では、集電部に、発電要素の外部と連通させる通気経路の一部を構成する通気用欠損部を有する発電要素を備えた電池を搭載しているので、信頼性の高い電源を備えた電池搭載機器とすることができる。
なお、電池を搭載した電池搭載機器としては、電池を搭載しこれをエネルギ源の一つとして利用する機器であれば良く、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、電池駆動の電動工具など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態1〜3を、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施形態1)
本実施形態1に係る車両1は、図1に示すように、エンジン3、フロントモータ4及びリヤモータ5との併用で駆動するハイブリッドカーである。この車両1は、車体2、エンジン3、これに取付られたフロントモータ4、リヤモータ5、ケーブル7及びバッテリパック6を有している。このバッテリパック6は、車両1の車体2に取り付けられており、ケーブル7によりフロントモータ4及びリヤモータ5と接続されている。このバッテリパック6は、図2に示すように、複数の電池モジュール10が列置された構成となっている。
この車両1は、バッテリパック6をフロントモータ4及びリヤモータ5の駆動用電源として、公知の手段によりエンジン3、フロントモータ4及びリヤモータ5で走行できるようになっている。
【0030】
この車両1では、バッテリパック6は、図2に示すように、複数の単電池100(電池)を一列に並べ、かつ、バスバ250により電気的に直列に接続した電池モジュール10(10A,10B)が複数(図2では、2つのみ図示)列置された構成となっている。この単電池100は、図3〜図5に示す略直方体形状の角型単電池のリチウムイオン二次電池である。
【0031】
この単電池100について説明する。
単電池100は、図3〜図5に示すように、後述する発電要素130と、この発電要素130を収容部110S内に収容するケース本体部材111、及び、この収容部110Sを閉塞する封口部材121を含む直方体形状の電池ケース110から構成されている。
ケース本体部材111は、アルミニウムからなり、図3〜図5に示すように、素材の深絞りにより有底角箱状に一体成形されている。このケース本体部材111は、挿入側(図3中、上方)が開口し、矩形板状の底部116と、この四辺から底部116に直交する方向に延びる4つの第1,第2,第3,第4側部112,113,114,115とを有している。これらのうち、第1,第2側部112,113は、図3及び図4に示すように、最も大きな側部であり、両者とも同形で互いに平行に配置されている。また、第3,第4側部114,115は、第1,第2側部112,113の間に互いに平行に配置されている。収容部110Sは、第1側部〜第4側部112〜115及び底部116に囲まれた内部空間である。
【0032】
一方、封口部材121は、アルミニウムからなり、図3〜図5に示すように、矩形状の平板とされている。この封口部材121は、ケース本体部材111の収容部110S内に発電要素130を収容した後に、ケース本体部材111の開口を液密に閉塞する。
また、この封口部材121は、第1側部141の長辺に沿った方向(図3中、左右方向)に所定の間隔で離間した正極端子挿通孔122H及び負極端子挿通孔123Hと、これらの間の位置に内外を貫通する弁孔124Hとを有している。この弁孔124Hは、電解液(図示しない)を収容部110S内に注入した後に、板状の安全弁240で閉塞される。
【0033】
この安全弁240は、アルミニウムからなり、矩形状の平板とされている。この安全弁240は、自身の外周に位置し、封口部材121の弁孔124Hの周囲に当接する環状の弁当接部241と、これよりも径方向内側に位置する弁機能部242とからなる。この弁機能部242は、電池ケース110(ケース本体部材111、封口部材121)の内圧が所定値を越えたときに、開裂して電池ケース110の外部にガスを放出するワンウェイの安全弁機能を有する。
【0034】
発電要素130は、電解液(図示しない)と、いずれも帯状の正極板140、負極板170及びセパレータ190とを有している。この発電要素130は、正極板140と負極板170とをセパレータ190を介して捲回軸130Xの周りに捲回して構成されている(図3〜図7参照)。
【0035】
この正極板140は、図7に示すように、所定の厚みのアルミ箔からなる帯状の正極導電部材141、及び、例えば、マンガン酸リチウムなどのリチウム酸化物からなる正極活物質148を備えている。
この正極導電部材141は、正極活物質148を、その両面にそれぞれ帯状に担持する正極活物質担持部142を含む。また、この正極導電部材141は、捲回軸130Xに沿う軸線方向LNの一方側(図7中、右方)に向けて、この正極活物質担持部142から延びる形態で突出し、正極活物質148を担持していない正極集電部143を含む。
【0036】
この正極集電部143は、自身のうち、軸線方向LNに対し、セパレータ190とは反対側(図7中、右方)の位置に正極端辺部143Eを含んでいる。この正極端辺部143Eは、捲回軸130Xの周りに捲回され、自身の内側部位と外側部位が互いに重なり合う形態にされ、後述する正極集電端子部材211(集電端子部材)と電気的に接続する正極接続部位144をなしている。
【0037】
また、正極集電部143は、図6及び図7に示すように、正極側通気孔145H(通気用欠損部)を、捲回軸130Xの周方向RTに分散して、複数有している。これらの正極側通気孔145Hは、セパレータ190のうち捲回軸130Xの径方向内側に位置するセパレータ内側部位191を、ケース本体部材111の収容部110Sのうち、この収容部110S内に収容した発電要素130の外部空間である発電要素外部130Sと連通させる正極側通気経路PP(通気経路)の一部をなしている。具体的には、各正極側通気孔145Hは、図6及び図7に示すように、軸線方向LNの寸法(長径)L1(L1>0)が周方向RTの寸法(短径)L2(L2>0)よりも長い長穴で、正極導電部材141に穿孔されてなる。また、これらの正極側通気孔145Hは、周方向RTに2列に並び、かつ隣り合う正極側通気孔145H同士が周方向RTに見て重ならない間隔で千鳥状に配置されている(図6参照)。かくして、正極集電部143には複数の正極側通気経路PPが設けられている。
【0038】
一方、負極板170は、図7に示すように、所定の厚みの銅箔からなる帯状の負極導電部材171、及び、炭素からなる負極活物質178を備えている。この負極導電部材171は、負極活物質178を、その両面にそれぞれ帯状に担持する負極活物質担持部172を含む。また、この負極導電部材171は、軸線方向LNの他方側(図7中、左方)に向けて、この負極活物質担持部172から延びる形態で突出し、負極活物質178を担持していない負極集電部173を含む。
【0039】
この負極集電部173は、自身のうち、軸線方向LNに対し、セパレータ190とは反対側(図7中、左方)の位置に負極端辺部173Eを含んでいる。この負極端辺部173Eは、捲回軸130Xの周りに捲回され、自身の内側部位と外側部位が互いに重なり合う形態にされ、後述する負極集電端子部材221(集電端子部材)と電気的に接続する負極接続部位174をなしている。
【0040】
また、負極集電部173にも、図6及び図7に示すように、負極側通気孔175H(通気用欠損部)を、捲回軸130Xの周方向RTに分散して、複数有している。この負極側通気孔175Hは、正極側通気孔145Hと同様に、セパレータ内側部位191を、発電要素外部130Sと連通させる負極側通気経路NP(通気経路)の一部をなしている。具体的には、各負極側通気孔175Hは、図6及び図7に示すように、軸線方向LNの寸法(長径)L1が周方向RTの寸法(短径)L2よりも長い長穴で、負極導電部材171に穿孔されてなる。これらの負極側通気孔175Hは、周方向RTに2列に並び、かつ隣り合う負極側通気孔175H同士が周方向RTに見て重ならない間隔で千鳥状に配置されている。かくして、負極集電部173には複数の負極側通気経路NPが設けられている。
【0041】
次に、正極集電端子部材211について説明する。
この正極集電端子部材211は、アルミ板をプレス加工してなり、図8に示すように、長手方向(図8中、上下方向)の寸法が幅方向(図8中、左下−右上方向)の寸法より長くされた平板状の正極平板部212、4つの正極集電部接続部213及び正極外部接続部214を有している。
このうち、正極集電部接続部213は、正極平板部212の幅方向の両側から折れ曲がって、正極平板部212の厚み方向に延びている。これらの正極集電部接続部213のうち、幅方向(図8中、左下−右上方向)に互いに向き合う正極集電部接続部213同士で、正極板140の正極集電部143の正極接続部位144を挟み、これらを加締めて保持すると共に、レーザ溶接によって正極集電部接続部213と正極接続部位144とを接続する。
【0042】
正極外部接続部214は、正極平板部212の長手方向一方側(図8中、上方)に位置し、正極平板部212から折れ曲がって正極平板部212の厚み方向に延び、さらに、長手方向一方側に向けて延びて、端に位置する正極端子部214aは、矩形平板状の形態とされている。この正極外部接続部214の正極端子部214aは、図3に示すように、封口部材121の正極端子挿通孔122Hを通じて封口部材121の外部に突出している。この正極端子部214aは、この正極端子挿通孔122Hにモールドされた正極シール部材231により、液密にシールされ、かつ、封口部材121とは電気的に絶縁されている。
【0043】
次いで、負極集電端子部材221について説明する。
この負極集電端子部材221は、銅板をプレス加工してなるが、図8に示すように、前述の正極集電端子部材211と同形状をなし、長手方向(図8中、上下方向)の寸法が幅方向(図8中、左下−右上方向)の寸法より長くされた平板状の負極平板部222、4つの負極集電部接続部223及び負極外部接続部224を有している。
このうち、負極集電部接続部223は、負極平板部222の幅方向の両側から折れ曲がって、負極平板部222の厚み方向に延びている。これらの負極集電部接続部223のうち、幅方向(図8中、左下−右上方向)に互いに向き合う負極集電部接続部223同士で、負極板170の負極集電部173の負極接続部位174を間に挟み、これを加締めて保持すると共に、レーザ溶接により負極集電部接続部223と負極接続部位174とを接続する。
【0044】
負極外部接続部224も、負極平板部222の長手方向一方側(図8中、上方)に位置し、負極平板部222から折れ曲がって負極平板部222の厚み方向に延び、さらに、長手方向一方側に向けて延びて、端に位置する負極端子部224aは、矩形平板状の形態とされている。この負極外部接続部224の負極端子部224aは、図3に示すように、封口部材121の負極端子挿通孔123Hを通じて封口部材121の外部に突出している。この負極端子部224aは、この負極端子挿通孔123Hにモールドされた負極シール部材232により、液密にシールされ、かつ、封口部材121とは電気的に絶縁されている。
【0045】
本実施形態1に係る単電池100では、前述したように、正極板140の正極集電部143の正極端辺部143Eは、捲回されつつ互いに重なり合う形態とされている。同様に、負極板170の負極集電部173の負極端辺部173Eも、捲回されつつ互いに重なり合う形態とされている。
【0046】
但し、本実施形態1では、正極集電部143に、正極側通気経路PPの一部をなす正極側通気孔145Hを、正極集電部143の周方向RTに分散して複数有している。これにより、この正極側通気孔145Hを含む正極側通気経路PPを複数設けている。また、正極集電部143と同様に、負極集電部173も、負極側通気経路NPの一部をなす負極側通気孔175Hを、負極集電部173の周方向RTに分散して複数有している。これにより、この負極側通気孔175Hを含む負極側通気経路NPを複数設けている。
かくして、電解液(図示しない)のガス化によってガスが発電要素130内に生じたとしても、このガスを、正極側通気孔145Hを含む正極側通気経路PP、及び、負極側通気孔175Hを含む負極側通気経路NPをそれぞれ通じて、発電要素外部130Sに容易に放出することができる。このため、このようなガスが発電要素130内に滞留して、発電要素130が膨張することが防止できる。
かくして、発電要素130の膨張によって各部材(正極板140,負極板170,セパレータ190)に亀裂が生じるなど、単電池100が損傷するのを抑制できる。
【0047】
なお、本実施形態1に係る単電池100では、発電要素130をケース本体部材111(電池ケース110)の収容部110S内に収容しており、この収容部110Sを閉塞する封口部材121(電池ケース110)には、安全弁240を備えている。
このため、上述のガスが発電要素130内に生じたとしても、一回このガスを発電要素外部130Sに放出して、さらにこの安全弁240を通じて、ガスを電池ケース110の外部に放出させることができる。
【0048】
また、本実施形態1に係る単電池100では、正極側通気孔145H及び負極側通気孔175Hはいずれも、軸線方向LNの寸法L1が、周方向RTの寸法L2よりも長い長穴としている。
これにより、正極側通気孔145Hの周方向RTの寸法L2を軸線方向LNの寸法L1よりも長くした場合に比して、正極活物質148と、正極集電部143の正極端辺部143Eとの間の通電における導通路の減少を抑制でき、正極集電部143に生ずる抵抗を抑制できる。同様に、負極側通気孔175Hの周方向RTの寸法L2を軸線方向LNの寸法L1よりも長くした場合に比して、負極活物質178と、負極集電部173の負極端辺部173Eとの間の通電における導通路の減少を抑制でき、負極集電部173に生ずる抵抗を抑制できる。
【0049】
ところで、正極集電部143において複数の正極側通気孔145Hを、負極集電部173において複数の負極側通気孔175Hを、正極集電部143あるいは負極集電部173の周方向RTに1列に列置しても、正極側通気孔145H、負極側通気孔175Hを通じた通気はできる。但し、正極側通気孔145H同士の間隔が狭いと、正極活物質148と、正極集電部143の正極端辺部143Eとの間の導電路が減少し、抵抗が大きくなる。同様に、負極側通気孔175H同士の間隔が狭いと、負極活物質178と、負極集電部173の負極端辺部173Eとの間の導電路が減少し、抵抗が大きくなる。
【0050】
これに対し、本実施形態1に係る単電池100では、正極集電部143において、正極側通気孔145Hを2列に列置し、しかも隣り合う正極側通気孔145H同士が正極集電部143に周方向RTに見て重ならない千鳥状に配置している。同様に、負極集電部173において、負極側通気孔175Hを2列に列置し、しかも隣り合う負極側通気孔175H同士が負極集電部173に周方向RTに見て重ならない千鳥状に配置している。
このため、正極側通気孔145H、負極側通気孔175Hを通じた通気を確保できる点は変わらない。しかも、上述した、正極活物質148と正極端辺部143Eとの間の導電路、及び、負極活物質178と負極端辺部173Eとの間の導電路の減少を抑制でき、それぞれ、正極集電部143、負極集電部173に生ずる抵抗を抑制できる。
【0051】
また、本実施形態1に係る車両1では、セパレータ内側部位191を、発電要素外部130Sと連通させる正極側通気経路PP及び負極側通気経路NPを、それぞれ有する発電要素130を備えた単電池100を搭載している。
これにより、単電池100における信頼性が高く、発電要素130の膨張による単電池100の損傷や、電池特性の低下を抑制して、良好な走行が可能な車両1とすることができる。
【0052】
(実施形態2)
実施形態2について、図9〜図11を用いて説明する。
本実施形態2に係る単電池300は、前述の実施形態1に係る単電池100とは、単電池300の形状、正極導電部材341及び負極導電部材371に用いる材料、正極導電部材341の正極集電部343と正極集電端子部材411との、及び、負極導電部材371の負極集電部373と負極集電端子部材421との接続手法などが異なる。しかしながら、発電要素330の構成、正極板340及び負極板370をセパレータ190を介して捲回し、軸線方向LNの一方側に正極集電部343を、その他方側に負極集電部373を有する点や、単電池300がリチウムイオン二次電池である点などは同様である。
そこで、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、同様な部分は実施形態1と同じ符号を用いながら、説明を省略または簡単に行う。
【0053】
単電池300は、円筒型単電池である。この単電池300は、図9に示すように、発電要素330と、この発電要素330を収容部310S内に収容するケース本体部材311、及び、この収容部310Sを閉塞する封口部材321を含む電池ケース310から構成されている。
ケース本体部材311は、アルミニウムからなり、素材の深絞りにより有底円筒形状に一体成形されている。このケース本体部材311は、挿入側(図9中、上方)が開口し、円筒状の側部312と、挿入側とは反対側(図9中、下方)に、この側部312から径方向内側に延びる底部316とを有する。この底部316の径方向の中央部には、負極端子挿通孔323Hが穿孔されている。収容部310Sは、側部312及び底部316に囲まれた内部空間である。
【0054】
一方、封口部材321は、アルミニウムからなり、径方向の中央部に正極端子挿通孔322Hを有する円環状の平板とされている。この封口部材321は、正極端子挿通孔322Hよりも径方向外側に、内外を貫通する弁孔324Hも有している。
この封口部材321は、ケース本体部材311の収容部310S内に発電要素330を収容した後に、ケース本体部材311の開口を液密に閉塞する。
【0055】
この弁孔324Hは、電解液(図示しない)を収容部310S内に注入した後に、板状の安全弁440で閉塞される。この安全弁440は、電池ケース310(ケース本体部材311、封口部材321)の内圧が所定値を越えたときに、開裂して電池ケース310の外部にガスを放出するワンウェイの安全弁機能を有する。
【0056】
発電要素330は、電解液(図示しない)と、いずれも帯状の正極板340、負極板370及びセパレータ190とを有している。この発電要素330は、正極板340と負極板370とをセパレータ190を介して捲回軸330Xの周りに捲回して構成されている(図9参照)。
【0057】
この正極板340は、図9に示すように、所定の厚みの発泡アルミ板からなる帯状の正極導電部材341、及び正極活物質148を備えている。この正極導電部材341は、正極活物質148を、その両面にそれぞれ帯状に担持する正極活物質担持部342を含む。また、この正極導電部材341は、捲回軸330Xに沿う軸線方向LNの一方側(図9中、上方)に向けて、この正極活物質担持部342から延びる形態で突出し、正極活物質148を担持していない正極集電部343を含む。
【0058】
この正極集電部343は、図9及び図10に示すように、表面343a及びこの表面343aの反対側にある裏面343bを有し、この表面343aと裏面343bとの間で通気が可能な正極側連続気孔345H(通気用欠損部)を、自身の内部に含んでいる。
この正極側連続気孔345Hは、セパレータ190のうち捲回軸330Xの径方向内側に位置するセパレータ内側部位391を、ケース本体部材311の収容部310Sのうち、この収容部310S内に収容した発電要素330の外部空間である発電要素外部330Sと連通させる正極側通気経路PP(通気経路)の一部をなしている。
【0059】
また、この正極集電部343は、軸線方向LNセパレータ190とは反対側(図9中、上方)の位置に正極端辺部343Eを含んでいる。この正極端辺部343Eは、捲回軸330Xの周りに捲回され、自身の内側部位と外側部位が互いに重なり合う形態にされて、正極接続部位344をなしている。
【0060】
この正極集電部343は、次述する正極集電端子部材411(集電端子部材)に電気的に接続している。
具体的には、この正極集電端子部材411は、図9及び図11に示すように、アルミニウムからなる円柱形状の棒材である。この正極集電端子部材411は、自身の軸線方向の一方側(図9中、上方)に位置する正極外部端子部414、及び、これとは反対側に位置する正極集電部接続部413を含んでいる。この正極集電端子部材411は、自身の軸を捲回軸330X上に合わせ、正極外部端子部414を封口部材321の外部に、正極集電部接続部413を電池ケース310の収容部310S内にそれぞれ位置するように配置されている。
正極接続部位344は、正極集電部接続部413の外周側に位置させた後に、縮径させるように加締め、さらにレーザ溶接して正極集電部接続部413に固着されている。
【0061】
また、正極集電端子部材411の正極外部端子部414は、図9に示すように、封口部材321の正極端子挿通孔322Hを通じて封口部材321の外部に突出している。この正極集電端子部材411は、この正極端子挿通孔322Hにモールドされた正極シール部材431により、液密にシールされ、かつ、封口部材321とは電気的に絶縁されている。
【0062】
一方、負極板370は、図9に示すように、所定の厚みの発泡銅板からなる帯状の負極導電部材371及び負極活物質178を備えている。この負極導電部材371は、負極活物質178を、その両面にそれぞれ帯状に担持する負極活物質担持部372を含む。また、この負極導電部材371は、捲回軸330Xに沿う軸線方向LNの他方側(図9中、下方)に向けて、この負極活物質担持部372から延びる形態で突出し、負極活物質178を担持していない負極集電部373を含む。
【0063】
この負極集電部373も、図10及び図11に示すように、表面373a及びこの表面373aの反対側にある裏面373bを有し、この表面373aと裏面373bとの間で通気が可能な負極側連続気孔375H(通気用欠損部)を、自身の内部に含んでいる。
この負極側連続気孔375Hは、セパレータ190のうちセパレータ内側部位391を、ケース本体部材311の収容部310Sのうち、発電要素外部330Sと連通させる負極側通気経路NP(通気経路)の一部をなしている。
【0064】
また、この負極集電部373は、軸線方向LNセパレータ190とは反対側(図9中、下方)の位置に負極端辺部373Eを含んでいる。この負極端辺部373Eは、捲回軸330Xの周りに捲回され、自身の内側部位と外側部位が互いに重なり合う形態にされて、負極接続部位374をなしている。
【0065】
この負極集電部373は、次述する負極集電端子部材421(集電端子部材)に電気的に接続している。
具体的には、この負極集電端子部材421は、図9及び図10に示すように、銅からなる円柱形状の棒材である。この負極集電端子部材421は、自身の軸線方向の他方側(図9中、下方)に位置する負極外部端子部424、及び、これとは反対側に位置する負極集電部接続部423を含んでいる。この負極集電端子部材411も、自身の軸を捲回軸330X上に合わせ、負極外部端子部424をケース本体部材311の底部316の外部に、負極集電部接続部423を電池ケース310の収容部310Sに位置するように配置されている。
負極接続部位374は、負極集電部接続部423の外周側に位置させた後、縮径させるように加締め、さらにレーザ溶接して負極集電部接続部423に固着されている。
【0066】
また、負極集電端子部材421の負極外部端子部424は、図9に示すように、ケース本体部材311の底部316にある負極端子挿通孔323Hを通じて封口部材321の外部に突出している。この負極外部端子部424は、この負極端子挿通孔323Hにモールドされた負極シール部材432により、液密にシールされ、かつ、ケース本体部材311とは電気的に絶縁されている。
【0067】
本実施形態2に係る単電池300でも、前述したように、正極板340の正極集電部343の正極端辺部343Eは、捲回されつつ互いに重なり合う形態とされている。同様に、負極板370の負極集電部373の負極端辺部373Eも、捲回されつつ互いに重なり合う形態にされている。
【0068】
しかし、この単電池300は、正極集電部343を、正極側通気経路PPの一部をなす正極側連続気孔345Hを有する発泡アルミ板である正極導電部材341で構成している。また、正極集電部343と同様に、負極集電部373を、負極側通気経路NPの一部をなす負極側連続気孔375Hを有する発泡銅板である負極導電部材371で構成している。
かくして、電解液のガス化によってガスが発電要素330内に生じたとしても、このガスを、正極側連続気孔345Hを含む正極側通気経路PP、及び、負極側連続気孔375Hを含む負極側通気経路NPを通じて、発電要素外部330Sに放出することができる。このため、このようなガスが発電要素330内に滞留して、電池ケース310の収容部310内で発電要素330が膨張することが防止できる。
かくして、発電要素330の膨張によって各部材(正極板340,負極板370,セパレータ190)に亀裂が生じるなど、単電池300が損傷するのを抑制できる。
しかも、正極集電部343、負極集電部373に別途、通気孔や切り欠きを設けなくても、正極集電部343、負極集電部373の全周において発電要素330内と通気できる。
【0069】
(変形形態)
実施形態2の変形形態について、図12及び図13を用いて説明する。
本変形形態に係る単電池500は、前述の実施形態2に係る単電池300とは、正極導電部材541及び負極導電部材571に用いる材料のみが異なる。
しかしながら、単電池500の形状、正極導電部材541の正極集電部543と正極集電端子部材411との、及び、負極導電部材571の負極集電部373と負極集電端子部材421との接続手法、単電池500がリチウムイオン二次電池である点などは同様である。また、発電要素530の構成、正極板540及び負極板570をセパレータ190を介して捲回し、軸線方向LNの一方側に正極集電部543を、その他方側に負極集電部573を有する点も同様である。
したがって、実施形態1,2とは異なる部分を中心に説明し、同様な部分は実施形態1,2と同じ符号を用いながら、説明を省略または簡単に行う。
【0070】
単電池500は、図12に示すように、後述する発電要素530と、この発電要素530を収容部310S内に収容するケース本体部材311、及び、この収容部310Sを閉塞する封口部材321を含む電池ケース310から構成されている。この封口部材321は、ケース本体部材311の収容部310S内に発電要素530を収容した後に、ケース本体部材311の開口を液密に閉塞する。
【0071】
発電要素530は、電解液(図示しない)と、いずれも帯状の正極板540、負極板550及びセパレータ190とを有している。この発電要素530は、正極板540と負極板570とをセパレータ190を介して捲回軸530Xの周りに捲回して構成されている(図12参照)。
【0072】
この正極板540は、図12及び図13に示すように、アルミニウムからなり、所定の網目形状を有する網状部材で構成された帯状の正極導電部材541、及び正極活物質148を備えている。この正極導電部材541は、正極活物質148を、その厚み方向(図12中、正極板540及び負極板550がセパレータ190を介して捲回された部分における左右方向)両側にそれぞれ帯状に担持する正極活物質担持部542を含む。また、この正極導電部材541は、捲回軸530Xに沿う軸線方向LNの一方側(図12中、上方)に向けて、この正極活物質担持部542から延びる形態で突出し、正極活物質148を担持していない正極集電部543を含む。
【0073】
この正極集電部543は、図12及び図13に示すように、網状部材(正極導電部材541)の網目をなす正極側空隙545H(通気用欠損部)を有している。この正極側空隙545Hは、セパレータ190のうち捲回軸530Xの径方向内側に位置するセパレータ内側部位591を、ケース本体部材311の収容部310Sのうち、この収容部310S内に収容した発電要素530の外部空間である発電要素外部530Sと連通させる正極側通気経路PP(通気経路)の一部をなしている。
【0074】
また、この正極集電部543は、軸線方向LNセパレータ190とは反対側(図12中、上方)の位置に正極端辺部543Eを含んでいる。この正極端辺部543Eは、捲回軸530Xの周りに捲回され、自身の内側部位と外側部位が互いに重なり合う形態にされて、正極接続部位544をなしている(図12及び図13参照)。
【0075】
この正極集電部543は、正極集電端子部材411(集電端子部材)に電気的に接続している。具体的には、正極接続部位544は、正極集電部接続部413の外周側に位置させた後、縮径させるように加締め、さらにレーザ溶接して正極集電部接続部413に固着されている。
【0076】
一方、負極板570は、図12及び図13に示すように、銅からなり、所定の網目形状を有する網状部材で構成された帯状の負極導電部材571、及び負極活物質178を備えている。この負極導電部材571は、負極活物質178を、その厚み方向(図12中、正極板540及び負極板550がセパレータ190を介して捲回された部分における左右方向)両側にそれぞれ帯状に担持する負極活物質担持部572を含む。また、この負極導電部材571は、捲回軸530Xに沿う軸線方向LNの他方側(図12中、下方)に向けて、この負極活物質担持部572から延びる形態で突出し、負極活物質178を担持していない負極集電部573を含む。
【0077】
この負極集電部573も、図12及び図13に示すように、網状部材(負極導電部材571)の網目をなす負極側空隙575H(通気用欠損部)を有している。この負極側空隙575Hは、セパレータ190のうちセパレータ内側部位591を、ケース本体部材311の収容部310Sのうち、発電要素外部530Sと連通させる負極側通気経路NP(通気経路)の一部をなしている。
【0078】
また、この負極集電部573は、軸線方向LNセパレータ190とは反対側(図12中、下方)の位置に負極端辺部573Eを含んでいる。この負極端辺部573Eは、捲回軸530Xの周りに捲回され、自身の内側部位と外側部位が互いに重なり合う形態にされて、負極接続部位574をなしている。
【0079】
この負極集電部573は、負極集電端子部材421(集電端子部材)に電気的に接続している。具体的には、負極接続部位574は、負極集電部接続部423の外周側に位置させた後、縮径させるように加締め、さらにレーザ溶接して負極集電部接続部423に固着されている。
【0080】
本変形形態に係る単電池500でも、前述したように、正極板540の正極集電部543の正極端辺部543Eは、捲回されつつ互いに重なり合う形態とされている。同様に、負極板570の負極集電部573の負極端辺部573Eも、捲回されつつ互いに重なり合う形態にされている。
【0081】
但し、この単電池500は、正極集電部543を、正極側通気経路PPの一部をなす正極側空隙545Hを有する網状の正極導電部材341で構成し、通気用欠損部を、正極側空隙545Hとしている。また、正極集電部543と同様に、負極集電部573を、負極側通気経路NPの一部をなす負極側空隙375Hを有する網状の負極導電部材371で構成し、通気用欠損部を、負極側空隙375Hをとしている。
このため、電解液のガス化によってガスが発電要素530内に生じたとしても、このガスを、正極側空隙545Hを含む正極側通気経路PP、及び、負極側空隙375Hを含む負極側通気経路NPを通じて、発電要素外部530Sに確実に放出できる。
しかも、正極集電部543、負極集電部573に別途、通気孔や切り欠きを設けなくても、正極集電部543、負極集電部573の全周において発電要素530内と通気できる。
【0082】
(実施形態3)
本実施形態3に係るノート型パーソナルコンピュータ601は、前述の実施形態2の単電池300を、公知の手法で搭載したものである。
このノート型パーソナルコンピュータ601は、図14に示すように、本体部602及びバッテリパック606を有する電池搭載機器である。このバッテリパック606は、本体部602内に収容されており、バッテリパック606の内部には、図示しないが複数の単電池300が電気的に直列に連結されて配置されている。
本実施形態3に係るノート型パーソナルコンピュータ601では、前述したように、正極集電部343、負極集電部373それぞれに、セパレータ内側部位391を発電要素外部330Sと連通させる正極側通気経路PP、負極側通気経路NPの一部を構成する正極側通気孔345H、負極側通気孔375Hを有する発電要素330を備えた単電池300を備えている。このため、信頼性の高いバッテリパック606、ノート型パーソナルコンピュータ601とすることができる。
【0083】
以上において、本発明を実施形態1〜3及び変形形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1では、正極集電部143をアルミ箔で構成し、通気用欠損部を、このアルミ箔に穿孔した正極側通気孔145Hとした。同様に、負極集電部173を銅箔で構成し、通気用欠損部を、この銅箔に穿孔した負極側通気孔175Hとした。
しかしながら、集電部を金属箔で構成した場合には、通気用欠損部として、軸線方向に見て活物質担持部あるいはセパレータと逆側の端辺に形成した通気用の切り欠きを用いても良い。なお、この場合、軸線方向に延びる形態にするのが好ましい。
【0084】
また、実施形態1では、複数の正極側通気孔145H及び負極側通気孔175Hを、正極集電部143及び負極集電部173のそれぞれの周方向RTに2列に並べ、かつ隣り合う正極側通気孔145H,負極側通気孔175H同士が周方向RTに見て重ならない間隔で千鳥状に配置した。
しかしながら、通気用欠損部を集電部に配置する位置や、通気用欠損部の形態及び数量は、適宜変更可能である。
【0085】
また、実施形態1,2及び変形形態では、単電池100,300等として、角型や円筒型のリチウムイオン二次電池を例示した。しかしながら、電池の種類や、形態は、適宜変更可能である。
【0086】
また、実施形態1では、車両1として四輪のハイブリッドカーを例示した。しかしながら、電池を搭載した車両の種類としては、例えば、電気自動車、バイク、フォークリフト、電動車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、鉄道車両等の他の種類の車両にも採用できる。
【0087】
また、実施形態2では、正極集電部343のみならず、正極活物質担持部342を含めた正極導電部材341全体を、帯状の発泡アルミ板で構成した。同様に、負極集電部373のみならず、負極活物質担持部372を含めた負極導電部材371全体を、帯状の発泡銅板で構成した。
しかしながら、正極導電部材あるいは負極導電部材は、集電部だけを発泡板材で構成しても良い。
【0088】
また、変形形態では、正極集電部543のみならず、正極活物質担持部542を含めた正極導電部材541全体を、アルミニウムからなる網状部材で構成した。同様に、負極集電部573のみならず、負極活物質担持部572を含めた負極導電部材571全体を、銅からなる網状部材で構成した。
しかしながら、正極導電部材あるいは負極導電部材は、集電部だけを金属からなる網状部材で構成しても良い。
【0089】
また、実施形態3では、電池搭載機器として、ノート型パーソナルコンピュータ601を例示した。
しかしながら、電池を搭載した電池搭載機器の種類としては、電池を搭載しこれをエネルギ源の一つとして利用する機器であれば良く、例えば、携帯電話機、電池駆動の電動工具など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器等の他の種類の電池搭載機器にも採用できる。
【0090】
また、実施形態3では、バッテリパック606に、実施形態2に係る単電池300を搭載したノート型パーソナルコンピュータ601を例示した。しかしながら、電池搭載機器に搭載する電池の種類や、形態、数量は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施形態1に係る車両の斜視図である。
【図2】実施形態1に係る車両に搭載されたバッテリパックを示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係る単電池を示す図であり、正面から見た断面図である。
【図4】実施形態1に係る単電池を示す図であり、図3のA−A矢視断面図である。
【図5】実施形態1に係る単電池を示す図であり、図3のB−B矢視断面図である。
【図6】実施形態1に係る単電池の発電要素を示す斜視図である。
【図7】実施形態1に係る単電池の発電要素を示す図であり、図6のC−C矢視断面図である。
【図8】実施形態1に係る単電池の両極にそれぞれ用いた集電端子部材及び外部端子部材を示す斜視図である。
【図9】実施形態2に係る単電池を示す図であり、正面から見た断面図である。
【図10】実施形態1に係る単電池の発電要素において、図9中の要部を説明するための説明図である。
【図11】実施形態1に係る単電池の発電要素を示す斜視図である。
【図12】変形形態に係る単電池を示す図であり、正面から見た断面図である。
【図13】変形形態に係る単電池の発電要素を示す斜視図である。
【図14】実施形態3に係るノート型パーソナルコンピュータの斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
1 車両
601 ノート型パーソナルコンピュータ(電池搭載機器)
100,300,500 単電池(電池)
110,310 電池ケース
130,330,530 発電要素
130S,330S,530S 発電要素外部(発電要素の外部)
130X,330X,530X 捲回軸
LN 軸線方向
RT 周方向
140,340,540 正極板
141,341,541 正極導電部材
142,342,542 正極活物質担持部
143,343,543 正極集電部(集電部)
143E,343E,543E 正極端辺部(端辺部)
343a 表面
343b 裏面
144,344,544 正極接続部位(端辺部が重なり合った部位)
PP 正極側通気経路(通気経路)
145H,345H 正極側連続気孔(通気用欠損部)
545H 正極側空隙(通気用欠損部)
L1 (通気用欠損部の)軸線方向の寸法
L2 (通気用欠損部の)周方向の寸法
148 正極活物質
170,370,570 負極板
171,371,571 負極導電部材
172,372,572 負極活物質担持部
173,373,573 負極集電部(集電部)
173E,373E,573E 負極端辺部(端辺部)
373a 表面
373b 裏面
174,374,574 負極接続部位(端辺部が重なり合った部位)
NP 負極側通気経路(通気経路)
175H,375H 負極側連続気孔(通気用欠損部)
575H 負極側空隙(通気用欠損部)
178 負極活物質
190 セパレータ
191,391,591 セパレータ内側部位(セパレータのうち捲回軸の径方向内側の部位)
211 正極集電端子部材(集電端子部材)
221 負極集電端子部材(集電端子部材)
240 安全弁
411 正極集電端子部材(集電端子部材)
421 負極集電端子部材(集電端子部材)
440 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液、及び、
いずれも帯状の正極板と負極板とを、帯状のセパレータを介して捲回軸の周りに捲回してなる発電要素を備える電池であって、
上記正極板は、
正極活物質と、
帯状の正極導電部材であって、
上記正極活物質を担持する正極活物質担持部、及び、
上記捲回軸に沿う軸線方向の一方側に向けて、上記正極活物質担持部から延びる形態で突出し、上記正極活物質を担持しない正極集電部を含む
正極導電部材と、を有し、
上記負極板は、
負極活物質と、
帯状の負極導電部材であって、
上記負極活物質を担持し、上記正極板の上記正極活物質担持部と上記セパレータを介して重なり合う負極活物質担持部、及び、
上記軸線方向の他方側に向けて、上記負極活物質担持部から延びる形態で突出し、上記負極活物質を担持しない負極集電部を含む
負極導電部材と、を有し、
上記正極集電部及び上記負極集電部の少なくともいずれかである集電部は、
このうち、上記軸線方向上記セパレータと逆側に位置する端辺部が、捲回されつつ互いに重なる形態とされ、かつ、
上記セパレータのうち上記捲回軸の径方向内側に位置する部位を、上記発電要素の外部と連通させる通気経路の一部を構成する通気用欠損部を有する
電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
前記通気用欠損部を、捲回された前記集電部の周方向に分散して、複数有し、
前記通気経路を複数設けてなる
電池。
【請求項3】
請求項2に記載の電池であって、
前記集電部は、箔状であり、
上記集電部のうち、前記端辺部が互いに重なりあった部位に接続してなる集電端子部材を有し、
複数の前記通気用欠損部は、
隣り合う上記通気用欠損部が上記集電部の周方向に見て重ならない千鳥状に配置されてなる
電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電池であって、
前記集電部は、箔状であり、
前記通気用欠損部は、
前記軸線方向の寸法が周方向の寸法よりも長い形態とされてなる
電池。
【請求項5】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の電池であって、
前記集電部は、所定の網目形状を有する網状部材で構成されてなり、
前記通気用欠損部は、上記網状部材の網目をなす空隙である
電池。
【請求項6】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の電池であって、
前記集電部は、
表裏面間で通気が可能な連続気孔を内部に有する発泡板材からなり、
前記通気用欠損部は、上記連続気孔である
電池。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電池であって、
前記発電要素を内部に収容する電池ケースを備え、
この電池ケースは、上記電池ケースの内圧が所定値を越えたときに、開裂して上記電池ケースの外部にガスを放出する安全弁を有してなる
電池。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電池を搭載してなる車両。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電池を搭載してなる電池搭載機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−218234(P2008−218234A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54737(P2007−54737)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】