説明

電池の故障判定装置

【課題】簡易な制御で過電流遮断機構の作動検出を精度良く行うことを目的とする。
【解決手段】過電流遮断機構を備えた電池ブロックを複数直列接続した組電池と、組電池とコンバータとを接続する接続回路に接続され、コンバータのスイッチング動作に伴う電圧変動を抑制するフィルタコンデンサと、フィルタコンデンサの電圧値に関する情報を取得する第1の電圧センサと、それぞれの電池ブロックに設けられ、電池ブロックの電圧値に関する情報を取得する第2の電圧センサと、第2の電圧センサによって取得された電池ブロックの電圧値に関する情報を基に組電池の電圧値を算出するコントローラと、を備える電池の故障判定装置であって、コントローラは、第1の電圧センサより検出されたフィルタコンデンサの電圧値と、算出した組電池の電圧値とを基に過電流遮断機構の作動を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流遮断機構を備えた組電池の故障を検出する電池の故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池異常時に電池セルに設けられた過電流遮断機構を作動させることにより電流を遮断する機能を備えた電源機器が知られている。特許文献1は、並列接続された複数の電池セルから成る電池セル群を直列接続した組電池を有する電源機器において、電池セル群の電圧値及び電流値から過電流遮断機構の作動した電池セルの有無を判断し、作動が判定された場合は電流経路の一部に接続したスイッチング素子を駆動して組電池の充放電を停止させる電源機器を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、複数の単電池を備え、電池の異常状態において電流を遮断する電流遮断機構を備えた車両用の組電池と、組電池とモータに供給される組電池の電力の電圧を調整するコンバータとを接続する接続回路に接続され、コンバータのスイッチング動作に伴う電圧変動を抑制するフィルタコンデンサと、フィルタコンデンサの電圧値に関する情報を習得する第1の電圧センサと、フィルタコンデンサの電圧値の変化の度合いに基づき、電流遮断機構の作動の有無を判別するコントローラと、を有する電池の故障判定装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−182779号公報
【特許文献2】特願2010−230273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に開示された電源機器のように、電池セル群の電圧値及び電流値を用いれば過電流遮断機構の作動を精度良く検出出来る。しかしながら、上記の特許文献1に開示された電源機器は、過電流遮断機構の作動を検出するために電圧値及び電流値が必要となるため、制御が複雑化してしまう。また、上記の特許文献2に開示された電池の故障判定装置はフィルタコンデンサの電圧値の変化に基づき電流遮断機構の作動を検出しているが、フィルタコンデンサの電圧値の変化が微小であると、電流遮断機構の作動を検出することが出来ない。よって、本発明の目的は、簡易な制御で過電流遮断機構の作動を精度良く検出することが可能な電池の故障判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る電池の故障判定装置は、過電流が流れた場合に電流を遮断する過電流遮断機構を備えた電池ブロックを複数直列接続した組電池と、前記組電池とモータに供給される前記組電池の電力の電圧を調整するコンバータとを接続する接続回路に接続され、前記コンバータのスイッチング動作に伴う電圧変動を抑制するフィルタコンデンサと、前記フィルタコンデンサの電圧値に関する情報を取得する第1の電圧センサと、それぞれの前記電池ブロックに設けられ、前記電池ブロックの電圧値に関する情報を取得する第2の電圧センサと、前記第2の電圧センサによって取得された前記電池ブロックの電圧値に関する情報を基に前記組電池の電圧値を算出するコントローラと、を備える電池の故障判定装置であって、前記コントローラは、前記第1の電圧センサより検出された前記フィルタコンデンサの電圧値と、算出した前記組電池の電圧値とを基に過電流遮断機構の作動を検出することを特徴とする。
【0007】
第2の発明に係る電池の故障判定装置は、第1の発明の構成に加えて、前記コントローラは、前記第1の電圧センサより検出された前記フィルタコンデンサの電圧値と、算出した前記組電池の電圧値の差の絶対値が電圧閾値よりも高い状態が時間閾値以上続いた場合には、前記過電流遮断機構が作動したものと判断することを特徴とする。
【0008】
第3の発明に係る電池の故障判定装置は、第1の発明の構成に加えて、前記フィルタコンデンサの電圧値が、前記フィルタコンデンサの上限電圧値以上となった場合、もしくは前記フィルタコンデンサの下限電圧値以下となった場合に、前記電圧閾値を低くすることを特徴とする。
【0009】
第4の発明に係る電池の故障判定装置は、第2の発明の構成に加えて、前記フィルタコンデンサの電圧値が、前記フィルタコンデンサの上限電圧値以上となった場合、もしくは前記フィルタコンデンサの下限電圧値以下となった場合に、前記時間閾値を低くすることを特徴とする。
【0010】
第5の発明に係る電池の故障判定装置は、第3の発明の構成に加えて、前記電池ブロックは、複数の単電池を直列接続したものであり、前記過電流遮断機構は、前記単電池のそれぞれに設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な制御で過電流遮断機構の作動を精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】故障判定装置のブロック図である。
【図2】組電池を充電している場合に過電流遮断機構が作動したときのフィルタコンデンサの電圧挙動と、組電池の電圧挙動と、それらの差の絶対値の挙動を示す模式図である。
【図3】故障判定方法を示すフローチャートである。
【図4】過電流遮断機構が作動したと判断されるまでの時間を比較した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は電池の故障判定装置のブロック図である。本実施例の故障判定装置1は、バッテリの電力によってモータを駆動し、このモータの駆動力により車輪を回転させ走行する電気自動車や、バッテリの電力によってモータを駆動し、このモータの駆動力により車輪を回転させる第1の駆動経路と、内燃機関で得られた駆動力により車輪を回転させる第2の駆動経路とを動力源として兼用するハイブリッド自動車等に搭載することができる。
【0014】
組電池11は、複数の電池ブロック13を備える。これらの電池ブロック13は電気的に直列に接続されている。各電池ブロック13は、複数の単電池12を含む。これらの単電池12は、電気的に直列に接続されている。単電池12は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池であってもよい。
【0015】
コントローラ30は、故障判定装置1全体の制御を司る。各電池ブロック13はそれぞれ、電圧センサ14aを備える。各電圧センサ14aは、各電池ブロック13の電圧を検出して、その検出結果をコントローラ30に出力する。電流センサ14bは、組電池11に流れる電流を検出して、その検出結果をコントローラ30に出力する。コントローラ30は、各電圧センサ14aによって検出された各電池ブロック13の電圧を足し合わせることで、組電池11の電圧VBを算出する。
【0016】
各単電池12はそれぞれ、電圧値が使用電圧を超えると、コントローラ30に信号を出力する図示しない出力回路部と、過電流遮断機構15を備える。単電池12の使用電圧は、電池の劣化を防止する観点から設定される設計値であり、電池の種類に応じて異なる。過電流遮断機構15は、電流が過剰に流れたときに自己発熱により溶融して電流を遮断する電流ヒューズであってもよい。過電流遮断機構15は、周辺の温度が伝熱することにより可溶体が溶断して電流を遮断する温度ヒューズであってもよい。過電流遮断機構15は、特開平10−302744号公報に記載されるような圧力による変形を利用して単電池12内の電流経路を遮断する機構であってもよい。
【0017】
コントローラ30は、メモリ21に記憶された種々のプログラムを実行する。メモリ21は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)であってもよい。
【0018】
DC/DCコンバータ20は、組電池11と図示しない車載補機との間に設けられる。組電池11の定格電圧は車載補機の定格電圧より高いので、組電池11から車載補機に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータ20で降圧する。
【0019】
組電池11は、システムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pを介して、コンバータとしての昇圧回路31に接続されている。組電池11のプラス端子には、システムメインリレーSMR−Gが接続され、組電池11のマイナス端子には、システムメインリレーSMR−Bが接続されている。また、システムメインリレーSMR−Pおよびプリチャージ抵抗17は、システムメインリレーSMR−Bに対して並列に接続されている。
【0020】
これらのシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pは、コイルに対して通電したときに接点が閉じるリレーである。SMRがオンとは通電状態を意味し、SMRがオフとは非通電状態を意味する。
【0021】
コントローラ30は、電流遮断時、すなわちイグニッションスイッチのポジションがOFF位置になるときには、全てのシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pをオフする。すなわち、システムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pのコイルに対する励磁電流をオフにする。なお、イグニッションスイッチのポジションは、OFF位置→ACC位置の順に切り替わる。
【0022】
ハイブリッドシステム起動時(メイン電源接続時)、すなわち、たとえば運転者がブレーキペダルを踏み込んでプッシュ式のスタートスイッチを押し込むと、コントローラ30は、最初にシステムメインリレーSMR−Gをオンにする。次に、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Pをオンしてプリチャージを実行する。
【0023】
システムメインリレーSMR−Pにはプリチャージ抵抗17が接続されている。このため、システムメインリレーSMR−Pをオンしてもインバータ32への入力電圧は緩やかに上昇し、突入電流の発生を防止できる。
【0024】
コントローラ30は、インバータ32の電圧値が、例えば、組電池11の電圧値の約80%〜100%程度に達したとき、或いはインバータ32の電圧値が略電池モジュール13の電圧値に等しくなったときに、プリチャージを完了し、システムメインリレーSMR−PをオフしてシステムメインリレーSMR−Bをオンする。
【0025】
イグニッションスイッチのポジションがON位置からOFF位置に切り替わると、コントローラ30は、先ずシステムメインリレーSMR−Bをオフし、続いてシステムメインリレーSMR−Gをオフする。これにより、組電池11とインバータ32との間の電気的な接続が遮断され、電源遮断状態となる。
【0026】
昇圧回路31は、組電池11の出力電圧を昇圧して、インバータ32に供給する。インバータ32は、昇圧回路31からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ・ジェネレータ(三相交流モータ)34に供給する。これにより、モータ・ジェネレータ34が駆動され、モータ・ジェネレータ34で生成された運動エネルギは、車輪に伝達されて車両を走行させることができる。ここで、昇圧回路31およびインバータ32により、パワーコントロールユニット33が構成される。
【0027】
一方、車両の制動時において、モータ・ジェネレータ34は、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換して、インバータ32に供給する。インバータ32は、モータ・ジェネレータ34からの交流電力を直流電力に変換する。昇圧回路31は、インバータ32からの直流電力を降圧して、フィルタコンデンサ18に供給する。
【0028】
フィルタコンデンサ18は、昇圧回路31のスイッチング動作に応じて直流電力に付与される電圧の変動を平滑化する。コンデンサ電圧センサ19は、フィルタコンデンサ18の両端の電圧を測定する。
【0029】
次に、図2(a)及び図2(b)の模式図を用いて組電池11を充電している場合に組電池11の内部において過電流遮断機構15が作動したときの、フィルタコンデンサ18と組電池11との電圧変化について説明する。尚、図2(a)の模式図の横軸は経過時間を、縦軸はフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VL及び組電池11の電圧VBを示しており、図2(b)の模式図の横軸は経過時間を、縦軸はフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値を示している。
【0030】
尚、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLとは、コンデンサ電圧センサ19によって測定された電圧であり、組電池11の電圧VBとは、各電圧センサ14aによって測定された各電池ブロック13の電圧の和である。
【0031】
図2(a)に表されている通り、過電流遮断機構15が作動する前(時刻t1以前)はフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとはほぼ同一となる。しかしながら、時刻t1において、組電池11の過電流遮断機構15が作動すると、それまで組電池11に流れていた電流がフィルタコンデンサ18に流れるため、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが上昇し、組電池11の電圧VBは一定となる。
【0032】
組電池11の電圧VBが一定となる理由は、以下の通りである。まず、過電流遮断機構15が作動すると、組電池11に電流が流れなくなる。よって、過電流遮断機構15が作動していない電池ブロック12の電圧は一定(電池ブロック12の起電圧)となる。一方、過電流遮断機構15が作動した電池ブロック12の電圧は、過電流遮断機構15が作動した電池ブロック12の前後に接続されている電池ブロック12との電圧差により増大するが、電圧センサ14aは検出可能な電圧の上下限が決まっている。よって、電池ブロック12の電圧が電圧センサ14aの検出可能な電圧の上限値(例えば30V)を超えると、過電流遮断機構15が作動した電池ブロック12の電圧が電圧センサ14aの検出可能な電圧の上限値以上となっているにも係らず、電圧センサ14aは過電流遮断機構15が作動した電池ブロック12の電圧を一定の値(電圧センサ14aが検出可能な電圧の上限値)としてコントローラ30に出力する。従って、過電流遮断機構15が作動すると、それぞれの電圧センサ14aが電池ブロック13の電圧値を一定の値として検出するため、コントローラ30は組電池11の電圧VBを一定の値として算出する。
【0033】
つまり、過電流遮断機構15が作動すると、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが上昇し、組電池11の電圧VBは一定となるため、過電流遮断機構15が作動する前はほぼ同一であったフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとが乖離する。よって、図2(b)に表されているように、時刻t1において過電流遮断機構15が作動すると、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値は上昇する。
【0034】
過電流遮断機構15の作動後、フィルタコンデンサ18の電力はDC/DCコンバータ20等によって徐々に消費されていく。従って、時刻t2において、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが上限電圧値Vmaxを超えた後、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLは徐々に低下し、それに伴いフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値も低下する。尚、時刻t2においてコントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動したか否かを判断するために予め設けられた電圧閾値VthをVth1からVth2に、また時間変化量TthをTth1からTth2に変更するが、詳細は後述する。
【0035】
次に、組電池11の過電流遮断機構15が作動したときの故障判定方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。ステップ(以下、Sと記す)1において、コントローラ30は、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内(上限電圧値Vmax以下且つ下限電圧値Vmin以上)にあるか否かが判断される。フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内である場合はS1の判断を肯定し、S2を実行する。また、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外(上限電圧値Vmaxより大きい、もしくは下限電圧値Vmin未満)にある場合は、S1の判断を否定し、S4を実行する。
【0036】
S2では、S1においてフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にあると判断したため、コントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動したか否かを判断するために予め設けられた電圧閾値Vthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にある場合に用いられる電圧閾値Vth1とし、S3を実行する。
【0037】
S3では、S1においてフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にあると判断したため、コントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動したか否かを判断するために予め設けられた時間閾値Tthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にある場合に用いられる時間閾値Tth1とし、S6を実行する。
【0038】
S4では、S1においてフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にあると判断したため、コントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動したか否かを判断するために予め設けられた電圧閾値Vthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にある場合に用いられる電圧閾値Vth2とし、S5を実行する。尚、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にある場合に用いられる電圧閾値Vth2は、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にある場合に用いられる電圧閾値Vth1より小さく設定されている。
【0039】
S5では、S1においてフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にあると判断したため、コントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動したか否かを判断するために予め設けられた時間閾値Tthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にある場合に用いられる時間閾値Tth2とし、S6を実行する。尚、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にある場合に用いられる時間閾値Tth2は、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にある場合に用いられる時間閾値Tth1より小さく設定されている。
【0040】
S6では、コントローラ30はS2及びS3、もしくはS4及びS5にて設定された電圧閾値Vthと時間閾値Tthを用いて、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値が電圧閾値Vthより大きい状態が時間閾値Tth以上連続して継続したか否かを判断する。フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値が電圧閾値Vthより大きい状態が時間閾値Tth以上連続して継続している場合はS6の判断を肯定し、S7を実行する。フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値が電圧閾値Vthより大きい状態が時間閾値Tth以上連続して継続していない場合は、S8を実行する。
【0041】
つまり、図2(a)及び図2(b)に表されているように、コントローラ30は、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内(上限電圧値Vmax以下かつ下限電圧値Vmin以上)にある場合、つまり時刻t2となるまでは、組電池11の過電流遮断機構15の作動を判断するために予め設けられた電圧閾値Vth及び時間閾値Tthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にある場合に用いられる電圧閾値Vth1及び時間閾値Tth1に設定する。そして、コントローラ30は、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外(上限電圧値Vmaxより大きい、もしくは下限電圧値Vminより小さい)にある場合、つまり時刻t2以降は、組電池11の過電流遮断機構15の作動を判断するために予め設けられた電圧閾値Vth及び時間閾値Tthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にある場合に用いられる電圧閾値Vth2及び時間閾値Tth2に設定する。
【0042】
S7では、S6においてフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値が電圧閾値Vthより大きい状態が時間閾値Tth以上連続して継続したと判断したので、コントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動したと判断し、システムメインリレーSMR−G及びSMR−Bをオフに切り替え、本制御ルーチンを終了し次の制御サイクルを実行する。
【0043】
S8では、S6においてフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLと組電池11の電圧VBとの差の絶対値が電圧閾値Vthより大きい状態が時間閾値Tth以上連続して継続していないと判断したので、コントローラ30は組電池11の過電流遮断機構15が作動していないと判断し、本制御ルーチンを終了し次の制御サイクルを実行する。
【0044】
次に、図4を(a)及び図4(b)を用いて、過電流遮断機構15の作動を判断するために予め設けられた電圧閾値Vth及び時間閾値Tthを、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLに応じて変更した場合と変更しなかった場合の、過電流遮断機構15の作動検出精度を比較する。図4(a)は、過電流遮断機構15の作動を判断するために予め設けられた電圧閾値Vth及び時間閾値Tthを変更しなかった場合を、そして図4(b)は過電流遮断機構15の作動を判断するために予め設けられた電圧閾値Vth及び時間閾値Tthを変更した場合を示している。
【0045】
図4(a)では、時刻t1において過電流遮断機構15が作動している。そして、コントローラ30はフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが電圧閾値Vth1を超えた時刻から時間閾値Tth1経過した後、つまり時刻t3において過電流遮断機構15が作動したと判断する。しかし、時刻t3となる前にフィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが電圧閾値Vth1未満となっているため、コントローラ30は過電流遮断機構15の作動を検出しない。
【0046】
図4(b)では、図4(a)と同じように時刻t1において過電流遮断機構15が作動している。そして、時刻t2において昇圧前コンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外となると、コントローラ30は過電流遮断機構15の作動を判断するために予め設けられた電圧閾値VthをVth1からVth2に、また時間閾値TthをTth1からTth2に変更する。上述したように、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域外にある場合に用いられる電圧閾値Vth2及び時間閾値Tth2は、フィルタコンデンサ18の昇圧前電圧VLが通常利用領域内にある場合に用いられる電圧閾値Vth1及び時間閾値Tth1より小さく設定されている。よって、時刻t4において、コントローラ30は過電流遮断機構15の作動を検出することが出来る。
【0047】
以上のように、本発明に係る電池の故障判定装置1は、過電流が流れた場合に電流を遮断する過電流遮断機構15を備えた電池ブロック13を複数直列接続した組電池11と、組電池11とモータ34に供給される組電池11の電力の電圧を調整するコンバータ31とを接続する接続回路に接続され、コンバータ31のスイッチング動作に伴う電圧変動を抑制するフィルタコンデンサ18と、フィルタコンデンサ18の電圧値に関する情報を取得するコンデンサ電圧センサ19と、それぞれの電池ブロック13に設けられ、電池ブロック13の電圧値に関する情報を取得する電圧センサ14aと、電圧センサ14aによって取得された電池ブロック13の電圧値に関する情報を基に組電池11の電圧値VBを算出するコントローラ30と、を備える電池の故障判定装置であって、コントローラ30は、コンデンサ電圧センサ19より検出されたフィルタコンデンサ18の電圧値VLと算出した組電池11の電圧値VBとを基に過電流遮断機構15の作動を検出するので、簡易な制御で過電流遮断機構15の作動検出を精度良く行うことが出来る。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る電池の故障判断装置1によれば、コントローラ30は、フィルタコンデンサ18の電圧値VLと、算出した組電池11の電圧値VBの差の絶対値が電圧閾値Vthよりも高い状態が時間閾値Tth以上続いた場合には過電流遮断機構15が作動したものと判断するので、簡易な制御で過電流遮断機構15の作動検出を精度良く行うことが出来る。
【0049】
また、本発明の実施形態に係る電池の故障判断装置1によれば、フィルタコンデンサ18の電圧値VLが、フィルタコンデンサ18の上限電圧値Vmaxより大きくなった場合、もしくはフィルタコンデンサ18の下限電圧値Vmin未満となった場合に、電圧閾値Vthを低くするので、過電流遮断機構15の作動検出を速やかに行うことが出来る。
【0050】
また、本発明の実施形態に係る電池の故障判断装置1によれば、フィルタコンデンサ18の電圧値VLが、フィルタコンデンサ18の上限電圧値Vmaxより大きくなった場合に、もしくはフィルタコンデンサ18の下限電圧値Vmin未満となった場合に、前記時間閾値Tthを低くするので、過電流遮断機構15の作動検出を速やかに行うことが出来る。
【0051】
また、本発明の実施形態に係る電池の故障判断装置1によれば、電池ブロック13は、複数の単電池12を直列接続したものであり、過電流遮断機構15は、単電池12のそれぞれに設けられるので、電池ブロック11に過電流が流れても組電池11を確実に保護することが出来る。
【符号の説明】
【0052】
1 故障判定装置 11 組電池 12 単電池
13 電池ブロック 14a 電圧センサ 14b 電流センサ
15 過電流遮断機構 17 プリチャージ抵抗 18 フィルタコンデンサ
19 コンデンサ電圧センサ 30 コントローラ 31 昇圧回路
32 インバータ 34 モータ・ジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電流が流れた場合に電流を遮断する過電流遮断機構を備えた電池ブロックを複数直列接続した組電池と、
前記組電池とモータに供給される前記組電池の電力の電圧を調整するコンバータとを接続する接続回路に接続され、前記コンバータのスイッチング動作に伴う電圧変動を抑制するフィルタコンデンサと、
前記フィルタコンデンサの電圧値に関する情報を取得する第1の電圧センサと、
それぞれの前記電池ブロックに設けられ、前記電池ブロックの電圧値に関する情報を取得する第2の電圧センサと、
前記第2の電圧センサによって取得された前記電池ブロックの電圧値に関する情報を基に前記組電池の電圧値を算出するコントローラと、を備える電池の故障判定装置であって、
前記コントローラは、前記第1の電圧センサより検出された前記フィルタコンデンサの電圧値と、算出した前記組電池の電圧値とを基に過電流遮断機構の作動を検出することを特徴とする、電池の故障判定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1の電圧センサより検出された前記フィルタコンデンサの電圧値と、算出した前記組電池の電圧値の差の絶対値が電圧閾値よりも高い状態が時間閾値以上続いた場合には、前記過電流遮断機構が作動したものと判断することを特徴とする請求項1に記載の電池の故障判定装置。
【請求項3】
前記フィルタコンデンサの電圧値が、前記フィルタコンデンサの上限電圧値以上となった場合、もしくは前記フィルタコンデンサの下限電圧値以下となった場合に、前記電圧閾値を低くすることを特徴とする請求項2に記載の電池の故障判定装置。
【請求項4】
前記フィルタコンデンサの電圧値が、前記フィルタコンデンサの上限電圧値以上となった場合、もしくは前記フィルタコンデンサの下限電圧値以下となった場合に、前記時間閾値を低くすることを特徴とする請求項3に記載の電池の故障判定装置。
【請求項5】
前記電池ブロックは、複数の単電池を直列接続したものであり、前記過電流遮断機構は、前記単電池のそれぞれに設けられることを特徴とする請求項4に記載の電池の故障判定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−253861(P2012−253861A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123016(P2011−123016)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】