説明

電池の監視装置

【課題】電極端子又は導電材と外装体の間のショートを容易に検知できるよう構成した電池監視装置を提供する。
【解決手段】発電要素111が金属層と絶縁層を含む外装部材114,115により封止された電池11と、電池の状態を検出する検出部6と、検出部により検出された検出結果を受信する制御部7と、電池11と検出部6と制御部7とを接続する通信線を備え、絶縁層は発電要素111と金属層を絶縁し、検出部6は電池11の状態を通信信号として通信線を介して制御部7に送信し、金属層と通信線との間が接続線により電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネートシートで覆われた二次電池において、陰極とラミネートシートの金属がショートすることを検知するために、陽極とラミネートの金属を接続する電池が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−353502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の二次電池の構成では、微少な短絡が検知できないおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、微少な短絡も検知できる電池の監視装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外装材と通信線との間を接続する接続線を設け、電池内でショートが生じた場合に、通信線を通る通信信号の状態の変化を検知することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池内でショートが生じた場合に、発電要素又は電極端子と接続線が電気的に接続され、通信信号が接続線を導通することで生じる通信信号の変化を検知するため、電極端子又は発電要素と外装部材の間のショートを容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発明の実施形態に係る電池監視装置を示すブロック図である。
【図2】図1の監視装置の検出部を示す電気回路図である。
【図3】図1の電池を示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】発明の他の実施形態に係る電池を示す図3のB−B断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、発明の実施形態に係る電池監視装置5を示す図であり、モータ4の駆動システムを示すブロック図である。また図2は、図1の電圧検出回路6と電池11の接続を示す回路図である。図3は図1の電池11を示す平面図であり、接続線8及び通信配線69と電池11との接続を示す図である。図4は、図3の電池11の端部における接続線8及び通信配線69の接続を示す図であり、図3のA―A線に沿う断面図である。
【0010】
図1に示す組電池1は、複数の電池11を直列に接続することにより構成され、その両極は電力供給線2を介してインバータ3に接続される。モータ4は、インバータ3に接続され、インバータ3により変換された交流電流によって駆動する。
【0011】
なお、同図に示す組電池1によるモータ4の駆動システムは、本実施形態に係る電池監視装置5を説明するための一例であって、本例のように複数の電池11を直列に接続して組電池1を構成する以外にも、複数の電池11を直列及び/又は並列に接続して組電池1を構成することもできる。また、組電池1による電力の供給対象が直流モータの場合はインバータ3を省略することができ、さらに電力の供給対象はモータ4以外の負荷とすることもできる。
【0012】
電池監視装置5は、それぞれの電池11に接続された電圧検出装置6と、電圧検出装置6からの信号を受け、各電池11に対して充放電を制御する制御回路7を有する。本例の電圧検出装置6が発明の検出部に、制御回路7が制御部に相当する。
【0013】
電圧検出装置6は、各電池11の状態を検出し、各電池の状態を通信信号たる交流信号により制御回路7へ送信するマイクロプロセッサユニット(以下MPUと略す。)61を有し、電池11の電圧を検出するための配線68aと68bと、検出した電池の状態を交流信号として送信するため通信配線69を有する。配線68aは電池11の正極に、配線68bは電池11の負極に接続され、通信配線69は電池11の正極側に接続される。MPU61は通信配線69cによりアース設置されている。
【0014】
直流成分を除去するためのカップリングコンデンサ62及び63が、通信配線69、69cにそれぞれ接続されている。電池11が直列接続され、それぞれの電池に対して通信配線69が接続された場合、各電池11の電位に応じた異なる直流成分が通信配線69を流れる信号に載るため、制御回路7が当該交流信号を認識することが困難となる。そこで本例では、当該直流成分を除去するために、通信配線69、69cにカップリングコンデンサ62及び63を接続した。
【0015】
なお、本例は、通信信号として交流信号を用いているが、例えばデジタル信号でもよく、また配線68a、68b及び69cを必ずしも全ての電池に対し設けなくてもよい。
【0016】
制御回路7は、電圧検出装置6から送信される組電池1の状態の通信信号を受信し、受信した通信信号に基づき各電池11の出力を制御するMPU71を有し、MPU71と電力供給線2を接続する配線72と、MPU71をアース設置する配線74を有する。また配線72の間は、直流成分を除去するためにカップリングコンデンサ73が接続されている。
【0017】
MPU71は、各MPU61に対して電池11の電圧を検出させる信号を、配線72、電力供給線2及び通信配線69を介してMPU61に送信する。これを受信したMPU61は、配線68a及び68bを通じて電池11の電圧を検出し、検出した電圧の値を交流信号として、通信配線69、電力供給線2及び配線72を通じて、MPU71へ送信する。
【0018】
ここで、MPU61からMPU71へ送信させる通信信号は電池11を通って送信されるが、当該通信信号が交流信号であり電池11からの出力は直流信号であるため、それぞれの信号を同じ配線で送信できる。そして、通信信号を受信したMPU71は、当該通信信号に基づき各電池11の容量を把握することができる。
【0019】
また、MPU71は、組電池1の中である電池11の電池容量が他の電池11の電池容量より低い場合は、その他の電池11に対して放電の指示を出して、組電池1の各電池11の容量を均一にする。このように、MPU71は、各電池11の電池容量を把握し、過充電又は過充電の防止し、さらに電池11の容量の出力管理をする。
【0020】
接続線8は、電池11と通信配線69との間に接続されており、接続線8の一端は電池11の外装材114に、接続線8の他端はMPU61とカップリングコンデンサ62の間に接続されている。なお、発電要素111及び外装材114は図1に示されておらず図3を参照する。外装材114と電池11の発電要素111との間が絶縁されているため、接続線8は本図で示す駆動システムの回路の一部として常時機能することはない。本図において、接続線8は常時、システム回路の一部として機能しないため、外装材114との接続部分を点線で示している。
【0021】
一方、電池11内でショートが起こり電池11の発電要素111と外装材114が電気的に導通した場合に、電池11と接続線8間が電気的に導通される。これにより、電池11の発電要素111と外装材114が導通していない場合、接続線8は導線として機能しないため、通信配線69を通る通信信号が接続線8を流れることなく、MPU61又はMPU71が正常に通信信号を受信する。しかし、例えば、電池11内の絶縁層に亀裂等が入ることでショートが起こり電池11の発電要素と外装材が電気的に導通した場合、通信配線69を通る通信信号は接続線8にも流れる。そのため、MPU71又はMPU61が受信する通信信号のゲインが、正常に通信信号を受信したときと比べて下がる。これによって、制御回路7は、通信信号のゲインより電池11内でのショートを把握することができる。なお、接続線8と電池11の外装材114の接続の具体的構成は後述する。
【0022】
異常信号送信手段9は、MPU71に接続され、MPU71からの信号に基づいて電池11に異常が生じていることを示す信号を駆動システムの外部へ送信する。そして異常信号送信手段9から発せられる信号に基づき例えば警告ランプを点灯させたりすることで、車両の運転者は組電池1に異常が生じていることを容易に認識することができる。
【0023】
なお、同図に示す異常信号送信手段9は、制御回路7と別構成としているが、制御手段の一部の構成としてもよい。また本システムの使用者へ異常を報知する手段は、警告ランプに限らず、例えば音声等により知らせてもよい。本例の電力供給線2、通信配線69及び配線72が本発明の「通信線」に相当する。
【0024】
次に、図2を用いて、電圧検出回路6の具体的構成を示しつつ、電池11との接続回路の構成を説明する。電圧検出回路6は、電池11の正極端子に接続された配線611と負極端子に接続された配線612とを有し、配線611はマイクロプロセッサ61(以下、MPU61と略す。)の電源入力端子Vccに接続され、配線612はMPU61の接地端子GND1に接続されている。これにより、MPU61に駆動電力が供給される。
【0025】
また、電池11の正極端子に接続された配線611には、配線68aが並列に接続されるとともに、負極端子に接続された配線612には、配線68bが並列に接続されている。そして、電池11の正極端子に接続された配線68aには、電池11の電圧を検出するための抵抗641,642が設けられ、配線68aの他端は、MPU61の電圧検出端子VD1,VD2に接続されている。また、電池11の負極端子に電気的に接続された配線68bにはコンデンサ643が設けられ、当該配線68aの他端は電圧検出端子VD1に接続された配線68aに接続されている。これら2つの抵抗641,642及びコンデンサ643により電池11の端子間電圧が検出されることになる。
【0026】
ここで検出された電池11の端子間電圧値は、MPU61の内部機能によって特定周波数帯域の交流信号に変換され、通信信号出力端子Outから通信配線69a,69,611及び電力供給線2を介して制御回路7へ送出される。このとき、この交流通信信号の基準電位を定めるために、MPU61の通信信号用接地端子GND2には通信配線69cが接続され、カップリングコンデンサ63を介して、本例の組電池1を収納する電池ケースなどの接地点に接続されている。電池ケースなどの接地点は各電池11において同一電位であることから、何れの電圧検出回路6においても通信信号出力端子Outから制御回路7へ送出される交流通信信号の基準電位が等しくなる。MPU61によって変換された交流信号の周波数帯域は、インバータ3、DC/DCコンバータ(不図示)から発せられる交流信号と混成しない帯域が設定されている。また本実施形態の電池監視装置が車両等に搭載させると、車両の振動に伴うノイズも影響するおそれがあり、かかるノイズ成分の周波数帯域も避けて設定されている。
【0027】
電池11の正極端子に接続された配線611には通信配線69が並列に接続され、この通信配線69にカップリングコンデンサ62が設けられている。また、カップリングコンデンサ62の他端側の通信配線69は、2つの通信配線69a,69bに並列に分岐され、一方の通信配線69aはMPU61の通信信号出力端子Outに接続され、他方の通信配線69bはMPU61の通信信号入力端子Inに接続されている。
【0028】
MPU61の通信信号入力端子Inに接続された通信配線69bには、バンドパ
スフィルタ65を構成する抵抗651,652及びコンデンサ653が設けられている。このバンドパスフィルタ65は、低周波数帯域のノイズを除去して高周波数帯域の信号のみを抽出するハイパスフィルタと、高周波数帯域のノイズを除去して低周波数帯域の信号のみを抽出するローパスフィルタの両方の機能を有するフィルタ回路である。なお、同図に示す符号654は整流用ダイオードである。これにより、インバータ3、DC/DCコンバータ(不図示)から発せられる交流信号と混成しない帯域を抽出し、さらに本実施形態の電池監視装置が車両等に搭載させた場合の車両のノイズ成分をより軽減することができる。
【0029】
なお、発明の検出部として、本実施形態において電圧検出装置6を用いて、電池11の端子間電圧を検出するが、端子間電圧に限らず、端子間の電流を測定してもよい。電流を検知する場合、MPU61は、例えば電流積算回路を用いて、配線68a及び68bを流れる所定時間の電流値を計測し、その電流値に基づいて電池11の容量を把握することができる。そして本実施形態と同様に、その電流値に基づく電池容量を通信信号として送信すればよい。
【0030】
次に、図3及び図4を用いて、図1の電池11の具体的構成と電池11と通信配線69及び接続線8の具体的な接続例を説明する。電池11は、発電要素111を覆う上部外装材114と下部外装材115と、正電極タブ112と負電極タブ113を有する。発電要素111は、詳細な図示は省略するが、正電極タブ112に接続され正極活物質が塗布された正極層と、負電極タブ113に接続され負極活物質が塗布された負極層とを、絶縁性セパレータを介して積層したものである。正極層は、アルミニウム等からなる集電体に、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン又はリチウムニッケル酸化物等の正極材料を結着させた構造を有す。負極層は、銅などからなる集電体に、黒鉛、カーボンブラック、活性炭、コークス等の負極材料を結着させて構造を有する。セパレータには、ポリオレフィン系微多孔質セパレータ等を用いている。
【0031】
上部外装部材114と下部外装部材115は、図4に示すように、たとえばアルミニウム箔等の金属箔の一方の面(電池11の内側面)をポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン又はアイオノマー等の樹脂でラミネートし、他方の面(電池11の外側面)をポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂でラミネートしたものであり、可撓性を有する。上部外装部材114の金属箔を金属層1141、上部外装部材114の電池の外側面を絶縁層1142、上部外装部材114の電池の内側面を絶縁層1143、下部外装部材115の金属箔を金属層1151、下部外装部材115の電池の外側面を絶縁層1152、下部外装部材115の電池の内側面を絶縁層1153として示す。上部外装部材114は一方の正極層又は負極層の主面に積層されて、下部外装部材115は他方の正極層又は負極層の主面に積層される。
【0032】
そして、これら上部外装部材114及び下部外装部材115によって、上述した発電要素111、正電極タブ112の一部及び負電極タブ113の一部を包み込み、当該外装部材114,115により形成される空間に、有機液体溶媒に過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウムや六フッ化リン酸リチウム等のリチウム塩を溶質とした液体電解質を注入しながら、この空間を吸引して真空状態とした後に、外装部材114,115の外周端部の全周を熱プレスにより熱融着して封止する。この熱融着により上部外装部材114と下部外装部材115が接合ざれた部分を図3に接合部116として示す。
【0033】
なお、本例の金属層1141、1151と絶縁層1142,1143,1152,1153が発明の外装部材の金属層及び絶縁層にそれぞれ相当する。
【0034】
正電極タブ112には電力供給線2が電気的に接続されており、通信配線69はカップリングコンデンサ62を介して電力供給線2に接続されている。通信配線69の他端はMPU61と接続され、電力供給線2の他端は、インバータ3、MPU71に接続されている。
【0035】
上部外装部材114の絶縁層1142には切り欠き部118が設けられており、上部外装部材114の金属層1141の一部が当該切り欠き部118から露出する。そして接続線8の一端を、切り欠き部118から露出する金属層1141の一部と電気的に接続する。さらに、接続線8と金属層1141との接続点を含む電池11の端部をシール部材117で覆う。これにより、接続線8は、電池11の外装部材114と接続される。また接続線8の他端は、通信配線69に接続されており、カップリングコンデンサ62とMPU71との間に接続されている。
【0036】
なお図4で示す接続線8は外装部材114の金属層1141に接続する場合に限らず、外装部材1151に接続してもよい。また接続線8と金属層1141又は金属層1151との接続部分は、図4で示す構成に限らない。例えば、接続線8との接続用に、予め外装部材の金属層1141にタブを設けておき、そのタブと接続線を接続することも可能である。さらに、このタブは必ずしも金属層1141と別構成の電極タブとする必要はなく、金属層の一部をタブとして利用し、外装部材114から露出する形状にすることも可能である。
【0037】
図4において、正極タブ112と外装部材114の金属層1141の間には、絶縁層1143があるため、正極タブ112と金属層1141は絶縁されている。そのため、接続線8の経路のインピーダンスは非常に高く、通信配線69を通る通信信号が接続線8にも分岐され流れない。しかし、絶縁層1143に亀裂が生じる等により外装部材内でショートが生じ、金属層1141と正極タブ112の間が電気的に導通すると、接続線8の経路のインピーダンスが下がり、通信信号は接続線8にも分岐して流れる。そのため、通信信号のゲインが下がってしまう。
【0038】
このように、MPU71は、各電池11の電気容量を、それぞれの電池11に接続されるMPU61を用いて管理するが、組電池1の中である電池11に上述するショートが生じた場合、ショートが生じた電池に接続されたMPU61が送信する通信信号のゲインが下がったことを把握することができる。具体的には、MPU71は、ゲインが減少したことを、他の正常な電池電圧の通信信号のゲインと比較することにより把握することができる。
【0039】
またはMPU71は、ショートする前の電池11のゲインをメモリ等で記憶し、設定以上のゲイン変化が生じたときに電池11にショートが生じたと判断することでショートの有無を把握することもできる。あるいは、MPU71は、本例の駆動システムの設計時に正常な電池11に基づく通信信号ゲインとして予め設定値として有しており、当該設定値より通信ゲインが下がった時に、ショート等により電池11に異常が生じたと判断することも可能である。
【0040】
なお、本例では、電極タブと外装材とのショートを電池内のショートの例として説明したが、電極タブに限らず、例えば発電要素11と外装材114の金属層1141との間でショートが生じた場合も接続線8は導通し、MPU71は通信信号のゲインの変化を検知することで、当該ショートを検知することができる。またMPU71がゲインの変化を検知することを例に説明したが、MPU61によって電池11のショートに基づくゲインの変化を検知することができる。つまり、MPU61が例えばMPU71から送信される電池11の検出開始を示す通信信号を受信する時、ショートが電池内11で生じていなければ、当該通信信号は接続線8を通らず通信配線69を介してMPU61に流れる。しかしショートが生じると、当該通信信号が接続線8にも分岐してしまうため、MPU61に流れる通信信号のゲインも下がってしまう。これによりMPU61も、通信信号のゲイン変化の有無に基づいて、電池11内のショートを検知することができる。
【0041】
ここで、本例の電池監視装置の実施例として、電池11を1個あたり1セルとして割り当て、各セルあたりのセル電圧を3.8V、セル容量を50Ahとして、100セルの直列のバッテリーシステム(総電圧380V)を作製した。またカップリングコンデンサ62の容量は4700pFとし、通信信号の周波数は2MHzと設定した。そして、電池11内を擬似的にショートさせるために、図1に示される、組電池1の正極側から2番目の電池11のセルについて、負極タブ113と外装部材114の金属層1151の間を15Ωの抵抗で接続した。この状態で、本例の駆動システムに通信信号を流し、通信信号のゲインを計測したところ、通信信号のゲインは、当該15Ωの抵抗を接続する前の通信信号と比較して約40%減少した。
【0042】
また短絡による通信信号のゲイン減少の割合は、カップリングコンデンサ62のインピーダンスの大きさで設定できる。つまり、電池11内がショートすることで生じる短絡抵抗のインピーダンスをXとし、カップリングコンデンサ62のインピーダンスをZとすると、X=Zの時、ゲインの減少率は50%となり、X=Z/10の時、ゲインの減少率は10%未満となる。よって、通信信号の周波数又はカップリングコンデンサの容量を調整することで、検出したい短絡抵抗を設定することができる。
【0043】
上記の通り、本実施の形態に係る電池監視装置は、接続線8を電池11の外装部材114又は外装部材115と通信配線69の間に接続することにより、電池11内でショートが生じると通信配線69だけではなく接続線8にも通信信号が流れるため、接続線に8に通信信号が流れる前と流れ始めた後の通信信号の変化を検知することで、電池11内のショートを把握することができる。
【0044】
接続線8が電気的に接続されている外装部材114と発電要素111が絶縁する状態であれば、接続線8のインピーダンスは非常に高く、通信信号が接続線8に流れることはないが、電池11内のショートにより、当該外装部材114と発電要素111が導通すると、接続線の8のインピーダンスが減少し、通信信号が接続線8にも流れ出す。よって本実施の形態では、電池内のわずかなショートであっても、当該外装部材114と発電要素111が導通前後のインピーダンス変化は大きく、通信信号のゲインが変化するため、ハードショートに限らず、微少なショートでも検知することできる。
【0045】
さらに、本例の駆動システムが車両等に搭載され、車両の振動等を起因とした経時的に生じる電池11内のショートも検知することができる。また、車両用の電池など多くの電池11を接続し容量の大きい組電池とする場合、各電池の端子間の電圧検知では端子間電圧の変化が低くショートが確実に検知できないおそれがあるが、本実施の形態は、電力線通信の信号線のゲイン変化を利用してショートの検知を行うため、容量の大きい電池の駆動システムで特に有効である。
【0046】
また、本実施の形態では、接続線8の他端はカップリングコンデンサ62と電圧検出装置6の間の通信配線69に接続されるため、カップリングコンデンサ62の容量又は通信信号の周波数を調整することで、電圧検出装置6又は制御回路7が検知する電池11内のショートによる短絡抵抗を設定することができる。これにより、組電池1に用いられる電池11の特性に合わせて、ショート時の短絡抵抗を設定することができため、本例の電池監視装置は、より確実に電池11内でのショートを検知することができる。
【0047】
また本実施の形態では、異常信号送信手段9を有するため、通信信号のゲインが変化し電池11内でショートが発生した時に、使用者に対して電池11に異常が生じていることを知らせることができるため、組電池にショートが生じたことをより早く使用者に知らせることができる。
【0048】
また本実施の形態で、通信線にバンドパスフィルタ65を有するため、車両の振動によるノイズやインバータ3等が発する信号をフィルタリングして、通信配線69を通る通信信号を送受信することができる。
【0049】
また本実施の形態は、接続線8と外装部材との接続点をシール部材117で覆っているため、外装部材内の気密性をより確保することができる。
【0050】
《第2実施形態》
図5は、発明の他の実施例に係る電池11の断面図であって、図3のB―B線に沿う断面図である。本例では上述した第1実施形態に対して、電池検出装置を含む駆動システムに変わりはないが、電池11の接合部116において、上部外装部材114の金属層1141と下部外装部材115の金属層1151を接続する点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を援用する。
【0051】
本例では、絶縁層1143及び絶縁層1153は、金属層1141及び金属層1151に比べ短く形成されており、外装材114と外装材115が接合部116で封止されると、当該金属層1141及び金属層1151の一端が接合される。そして、絶縁層1142及び絶縁層1152は、金属層1141と金属層1151との接合部分を覆い融着される。これにより金属層1141と金属層1151が外装部材内で、電気的に接続された状態で封止される。また図4に示すように、電極タブ112を含む電極端部において、接続線8は金属層1141と電気的に接続されているため、接続線8は、金属層1141に加えて金属層1151とも電気的に接続されることとなる。これにより、例えば下部外装側に配置される発電要素111の導電材と金属層1151との間でショートが生じたとしても、通信信号は接続線8を導通するため、上部外装材114内のショートに加えて下部外部材内115のショートも検知することでき、発電要素114と発電要素114を覆う金属層1141、1151の間のショートを検知することができる。
【0052】
なお、本例における上部外装部材114は発明の第1外装部材に相当し、下部外装部材115は発明の第2外装部材に相当する。また上部外装部材114及び下部外装部材115は必ずしも別構成とする必要はなく、一体とした構成でも良い。また金属層1141と金属層1151との電気的な接続箇所は、図3で示す層状の電池11の端部の長辺に渡って設けられる必要はなく、一部分でも接続箇所があればよい。さらに当該接続箇所は、層状の電池11の短編側の端部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…組電池
11…電池
111…発電要素
112,113…電極タブ
114,115…外装部材
116…接合部
117…シール部材
118…切り欠き部
2…電力供給線
3…インバータ
4…モータ
5…電池監視装置
6…電圧検出回路
61…マイクロプロセッサユニット
62,63…カップリングコンデンサ
65…バンドパスフィルタ
651、652…抵抗
653…コンデンサ
654…整流用ダイオード
66…容量調整用抵抗
67…メモリ
68…配線
69…通信配線
611、612…配線
641、642…抵抗
643…コンデンサ
7…制御回路
71…マイクロプロセッサユニット
72、74…配線
73…カップリングコンデンサ
8…接続線
9…異常信号送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素が金属層と絶縁層を含む外装部材により封止された電池と、
前記電池の状態を検出する検出部と、
前記検出部により検出された検出結果を受信する制御部と、
前記電池と前記検出部と前記制御部とを電気的に接続する通信線を備え、
前記絶縁層は前記発電要素と前記金属層を絶縁し、
前記検出部は前記電池の状態を通信信号として前記通信線を介して前記制御部に送信し、
前記金属層と前記通信線との間が接続線により電気的に接続されていることを特徴とする
電池監視装置。
【請求項2】
前記通信線の間にカップリングコンデンサを接続し、
前記接続線の一端は、前記カップリングコンデンサと前記検出部の間の前記通信線に接続される
請求項1記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記金属層及び前記絶縁層は層状であり、
複数の前記絶縁層の間に前記金属層を狭持し、
前記接続線の他端は、前記金属層に接続される
請求項1又は2記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記制御部又は前記検出部は、前記通信信号が前記通信線及び前記接続線を通ることによる通信信号のゲイン変化を検出する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項5】
前記通信信号のゲインの変化に基づき電池の異常信号を送信する異常信号送信手段を有する
請求項1〜4のいずれか一項に記載する電池監視装置。
【請求項6】
前記通信線にバンドパスフィルタを設ける
請求項1〜5のいずれか一項に記載する電池監視装置。
【請求項7】
前記接続線と前記金属層との接続点は、前記電池の端部に設けられ、
前記接続点を含む電池の端部は、シール部材により覆われている
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項8】
前記外装部材は、第1外装部材と第2外装部材を有し、
前記第1外装部材の金属層と前記第2階外装部材の金属層は、電気的に接続され、
前記接続線の他端は、前記第1外装部材の金属層又は前記第2外装部材の金属層に電気的に接続する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−203848(P2010−203848A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48161(P2009−48161)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】