電池セパレーターおよびその製造方法
【課題】電池セパレーターおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、電池セパレーターを提供する。この電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーと、多孔質構造材料と、を含む。本発明は、更に、電池セパレーターの製造方法、及び、電池セパレーターを有する二次電池も提供する。
【解決手段】本発明は、電池セパレーターを提供する。この電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーと、多孔質構造材料と、を含む。本発明は、更に、電池セパレーターの製造方法、及び、電池セパレーターを有する二次電池も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セパレーターおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子産業の発展に伴い、電池は、幅広く、各種製品、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップコンピューター、又は、電気自動車に応用される。これにより、電池の要求は、絶えず増大する。しかし、電池性能の向上を追及すると同時に、電池の安全性も、大いに注目を集めている。
【0003】
一般の電池は、主に、電極、電解液、及び、セパレーターを含む。電極で生成されるイオンが電解液中で運ばれて、電流を形成し、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。リチウム電池は、その高いエネルギー密度のため、電気自動車の主電源の一つになっている。しかし、電池のエネルギー密度が増加するにつれて、出力電力と電池サイズも増加して、操作時に、大量の熱を生成する。効果的な方法で散熱しないと、電池温度が上昇し、爆発する。よって、電池の安全性の確保が、ますます重要になっている。
【0004】
電池セパレーターは、リチウム電池中で、重要な役割を担う。電池セパレーターが二個の電極間に設置されて、二個の電極間の物理的な接触を回避し、電池の安全性を向上させている。よって、高空隙率、良好な耐熱性、及び、電界効果メカニズムを有する電池セパレーターを提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中華民国特許公報第201024343号
【特許文献2】米国特許出願公開第20100167101号
【特許文献3】米国特許出願公開第20100143767号
【特許文献4】中華民国特許公報第201025697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電池セパレーターおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電池セパレーターを提供する。この電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーと、多孔質構造材料と、を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、電池セパレーターの製造方法を提供する。この製造方法は、多孔質構造膜を提供するステップと、多孔質構造膜上に、多孔質高分岐ポリマーをコートして、電池セパレーターを形成ステップと、を含み、電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、電池セパレーターの製造方法を提供する。この製造方法は、多孔質構造材料と多孔質高分岐ポリマーを混合して、混合物を形成するステップと、混合物に、ドライ、又は、ウェットプロセスを実行して、電池セパレーターを形成するステップと、を含み、電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、二次電池を提供する。この二次電池は、陰極と陽極と、陰極と陽極との間の電解液と、陰極と陽極との間に設置され、陰極と陽極とを分離する上記の電池セパレーターと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池セパレーターは、高空隙率、良好な耐熱性、及び、電界効果メカニズムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のある態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の別の態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートである。
【図3】本発明のある態様で形成される二次電池を示す図である。
【図4】ある実施例による様々な温度下の高分岐ポリマーの自由体積を示す図である。
【図5】ある実施例による浸漬で実行されるコーティングプロセスを示す図である。
【図6】ある実施例による、その場での合成により実行されるコーティングプロセスを示す図である。
【図7A】比較例によるセパレーターのSEM図である。
【図7B】比較例によるセパレーターのSEM図である。
【図8A】ある実施例による加圧成形プロセス前のセパレーターのSEM図である。
【図8B】ある実施例による加圧成形プロセス後のセパレーターのSEM図である。
【図9A】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9B】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9C】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9D】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9E】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のある態様では、多孔質高分岐ポリマーが提供される。多孔質高分岐ポリマーは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する。これにより、多孔質高分岐ポリマーが電池セパレーターに応用される。多孔質高分岐ポリマーにより形成される電池セパレーターは、細孔径が約0.2nm〜500nm、好ましくは、約0.3nm〜300nmである。電池セパレーターは、空隙率が約10%〜80%、好ましくは、約30%〜60%である。細孔径が原寸の約35%〜70%に縮小すると、セパレーターは閉鎖気孔構造に変わるとみなされる。この場合、セパレーターは、約0.15nm〜200nmの細孔径を有し、セパレーター上の気孔の50%〜100%は閉鎖気孔構造であり、よって、電池中のイオン輸送を停止させることができる。
【0014】
本発明の高分岐ポリマーは0.5以上の「分岐度(DB)」を有する。分岐度(DB)は以下のように定義される:
DB=(ΣD+ΣT)/(ΣD+ΣL+ΣT)
【0015】
上記式中、DBは分岐度を示し、Dは樹枝状ユニット数(少なくとも3個のリンク結合を含み、反応性官能基を有しない)を示し、Lは直鎖状ユニット数(ユニットの両末端は延伸可能な接続結合である)を示し、Tは末端ユニット数(少なくとも一つの末端接続結合と少なくとも一つの反応性官能基とを含む)を示す。
【0016】
多孔質高分岐ポリマーは、窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成される。(A)窒素含有ポリマーは、(A1)アミン、(A2)アミド、(A3)イミド、(A4)マレイミド、(A5)イミン、又は、それらの組み合わせを含むジケトン含有化合物は、バルビツール酸(BTA)を含む。注意すべきことは、窒素含有ポリマーは、数平均分子量が1500以上の窒素含有化合物だけでなく、数平均分子量が200〜1500の窒素含有オリゴマーを含むことである。
【0017】
(A1)アミンは、以下の一般式で示される:
【0018】
【化1】
【0019】
上記式中、R1、R2、及び、R3は、同一又は相異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、及び、芳香族基を示す。第1級アミン(R2及びR3は共に水素)が特に好ましい。アミン(A1)の具体例は、1,1’−ビス(メトキシカルボニル)ジビニルアミン(BDA)、N−メチル−N,N−ジビニルアミン、及び、ジビニルフェニルアミンを含む。
【0020】
(A2)アミドは、以下の一般式で示される:
【0021】
【化2】
【0022】
上記式中、R、R’、及び、R”は、同一又は相異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、又は、芳香族基を示す。第1級アミド(R’およびR”は共に水素)が特に好ましい。アミド(A2)の具体例は、N−ビニルアミド、ジビニルアミド、シリル(ビニル)アミド、及び、グリオキシル化ビニルアミドを含む。
【0023】
(A3)イミドは、以下の一般式により示される:
【0024】
【化3】
【0025】
上記式中、R1、R2、及び、R3は同じか、異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、又は、芳香族基を示す。イミド(A3)の具体例は、ジビニルイミド、例えば、N−ビニルイミド、N−ビニルフタルイミド、及び、ビニルアセトアミドを含む。
【0026】
(A4)マレイミドは、モノマレイミド、ビスマレイミド、トリスマレイミド、及び、ポリマレイミドを含み、ビスマレイミドは、一般式(I)又は(II)を有する:
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
上記式中、R1は、−RCH2R−,−RNH2R−,−C(O)CH2−,−CH2OCH2−,−C(O)−,−O−,−O−O−,−S−,−S−S−,−S(O)−,−CH2S(O)CH2−,−(O)S(O)−,−C6H5−,−CH2(C6H5)CH2−,−CH2(C6H5)(O)−,フェニレン、ジフェニレン、置換フェニレン、又は、置換ジフェニレンであり、R2は、−RCH2−,−C(O)−,−C(CH3)2−,−O−,−O−O−,−S−,−S−S−,−(O)S(O)−、又は、−S(O)−であり、RはC1−6アルキルである。ビスマレイミドの代表例は、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタン,1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド,N,N’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド,N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド,1,1’−(3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド,N,N’−エチレンジマレイミド,N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド,N,N’−(1,3−フェニレン)ジマレイミド,N,N’−チオジマレイミド,N,N’−ジチオジマレイミド,N,N’−ケトンジマレイミド,N,N’−メチレン−ビス−マレイミド,ビス−マレイミドメチル−エーテル,2−ビス−(マレイミド)−1,2−エタンジオール,N,N’−4,4’−ジフェニルエーテル−ビス−マレイミド,4,4’−ビス(マレイミド)−ジフェニルスルホン等である。
【0030】
(A5)イミンは、以下の一般式で示される:
【0031】
【化6】
【0032】
上記式中、R1、R2、及び、R3は、同一又は相異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、又は、芳香族基を示す。イミン(A5)の具体例は、ジビニルイミン、及び、アリルイミンを含む。
【0033】
(B)ジオンは、(B1)バルビツール酸及びその誘導体;及び(B2)アセチルアセトン及びその誘導体を含む。
【0034】
(B1)バルビツール酸及びその誘導体は、以下の一般式で示される:
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
上記式中、R1〜R8は、それぞれ独立して、H,CH3,C2H5,C6H5,CH(CH3)2,CH2CH(CH3)2,CH2CH2CH(CH3)2,又は、
【0040】
【化11】
を示す。
【0041】
R1及びR2が共に水素の場合、ジオンはバルビツール酸である。
【0042】
(B2)アセチルアセトン及びその誘導体は、以下の一般式で示される:
【0043】
【化12】
【0044】
上記式中、R及びR’は、同一又は相異なり、それぞれ、脂肪族基、芳香族基、又は、ヘテロアリール基を示す。R及びR’が共にメチルの場合、ジオンはアセチルアセトンである。
【0045】
(B)ジオン対(A)アミン、アミド、イミド、マレイミド、又は、イミンのモル比は、約1:20〜4:1、好ましくは、約1:5〜2:1、更に好ましくは、約1:3〜1:1である。
【0046】
ある態様では、ビスマレイミドオリゴマーを含む高分岐ポリマーが提供される。ビスマレイミドオリゴマーは、超分岐機構、又は、複数の二重結合反応性官能基を有する多機能ビスマレイミドオリゴマーである。超分岐機構において、ビスマレイミドは構造マトリクスとなる。ラジカルとなるバルビツール酸は、ビスマレイミドの二重結合にグラフトされ、ビスマレイミドの二重結合は、片側、又は、両側で壊れ、分岐と秩序化の重合反応を受ける。また、例えば、濃度比率、各ステップの進行順序、反応温度、反応時間、又は、環境条件の調整により、分岐度、重合度、構造配置、及び、分子量を変化させることができ、多機能ビスマレイミドオリゴマーが高純度で形成される。分岐構造は[(ビスマレイミド単量体)−(バルビツール酸)x]mであり、xは0〜4、且つ、m(繰り返しユニットを示す)は20より小さい。
【0047】
上記の高分岐ポリマーは、溶媒系中、ビスマレイミド含有化合物を、バルビツール酸、又は、その誘導体と重合することにより調製することができる。特に、ビスマレイミド含有化合物とバルビツール酸のモル比は、20:1〜1:5、好ましくは、5:1〜1:2である。
【0048】
本発明に用いられる溶剤は、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアミン(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレンカーボネート(PC)、水、イソプロピルアルコール(IPA)、又は、それらの組み合わせである。
【0049】
開始剤は、例えば、過酸化物開始剤、又は、アゾ開始剤であり、活性化により、分解されて遊離ラジカル種を生成する。開始剤は、2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン−1−オール)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−(N)−(1,1)−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオン酸アミド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジラウロイルペルオキシド、t−アミルペルオキシド、t−アミルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、カリウムペルオキシジスルフェート、アンモニウムペルオキシジスルフェート、ジ−t−ブチルペルオキシド、亜硝酸ジ−t−ブチル、亜硝酸ジクミル、又は、それらの組み合わせである。高分岐ポリマーの調製及び特性の詳細に関しては、出願人の関連する特許出願、例えば、特許文献1(中華民国特許公報第201024343号)、特許文献2(米国特許出願公開第20100167101号)、特許文献3(米国特許出願公開第20100143767号)、又は、特許文献4(中華民国特許公報第201025697号)を参照されたい。
【0050】
高分岐ポリマーは、電界効果条件、例えば、電流、電圧、温度、又は、光で、その自由体積が変化する。例えば、温度70°Cで、高分岐ポリマーは最大自由体積を有するので、電解液中のイオン(例えば、リチウムイオン)はポリマーを自由に通過することができ、よって、高分岐ポリマーが電池セパレーターとして機能する。しかし、電池の温度が上昇する時、高分岐ポリマーの自由半径が徐々に縮小する。即ち、高分岐ポリマーの細孔径が小さくなる。これにより、電解液中のイオン輸送速度が遅くなり、電池温度の急激な上昇が回避できる。電池の温度が150℃以上であると、高分岐ポリマーは、徐々に互いに反応して架橋構造を形成し、更に、その自由体積を縮小する。電池の温度が200℃以上であると、高分岐ポリマーの自由体積は小さすぎて、電解液中の溶媒和リチウムイオンは、セパレーターを通過できない。これにより、セパレーターは閉鎖気孔構造となり、電池中のイオン輸送の速度が落ちるか、又は、停止し、電池の温度の上昇を停止することができる。更に、高分岐ポリマーは、優れた絶縁能力、耐熱性、化学安定性、及び、電解液保持力を有する。よって、電池の電気特性及び安全性が改善される。
【0051】
図1は、本発明のある態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートを示す図である。ステップ102で、多孔質構造膜が提供される。高分岐ポリマーが多孔質構造膜上にコートされて(ステップ104)、電池セパレーターを形成する(ステップ106)。
【0052】
ステップ102で、多孔質構造膜は、ドライプロセス、又は、ウェットプロセスにより提供される。ドライプロセスは、例えば、多孔質構造材料を溶解して薄膜状に押し出すことを含む。次に、アニール工程が実行され、膜が比較的低い温度で延伸され、気孔を形成する。その後、膜が比較的高い温度で再度延伸され、ミクロ多孔質構造膜を形成する。一方、ウェットプロセスは、例えば、高温で、多孔質構造材料と希釈剤とを混合し、溶融して、混合物を形成する。次に、混合物はシート状に加工され、延伸されて、膜を形成する。その後、希釈剤は、揮発性溶剤(例えば、トリクロロエチレン)を用いることにより、膜から抽出される。希釈剤により占有される空間は、多孔質構造膜中の気孔となる。希釈剤は、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアミン(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレンカーボネート(PC)、イソプロピルアルコール(IPA)、又は、それらの組み合わせを含む。
【0053】
多孔質構造材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアニリン、ポリイミド(PI)、不織布、ポリエチレンフタフタレート、ポリスチレン(PS)、セルロース、又は、それらの組み合わせを含む。
【0054】
ある態様では、ステップ104の前に、表面改質が実行される。表面改質は、多孔質構造膜の表面をアルカリ化することにより実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応が、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、多孔質構造材料の表面にグラフトされる。その後、単量体セットがNMPに加えられ、温度40℃〜80℃のNMP中で、反応を続行する。高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面に形成される。また、表面改質は、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電し、単量体セットのその場での重合反応を誘発する。
【0055】
ステップ104で、高分岐ポリマーが多孔質構造膜上にコートされ、ステップ106で、電池セパレーターを形成する。高分岐ポリマーは、スピンコーティング、キャスティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、ワイヤーバーコーティング、浸漬コーティング等によりコーティングされる。
【0056】
ある態様では、高分岐ポリマーは、浸漬コーティング工程により、多孔質構造膜上にコートされる。図5を参照すると、未処理の多孔質構造膜は、セパレーター分注リール502のローラー512により、高分岐ポリマー溶液504に入れられる。コーティングで処理される際には、高分岐ポリマー溶液の温度が調節される(室温〜100℃)。その後、セパレーターは、赤外線加熱板506を有するオーブン508で乾燥される。形成された多層セパレーターは、セパレーター回収リール510により収集される。
【0057】
別の態様では、高分岐ポリマーは、その場で、コーティングプロセスにより、多孔質構造膜にコートされる。図6を参照すると、未処理の多孔質構造膜は、セパレーター分注リール602のローラー612により、高分岐ポリマー単量体セット溶液604に入れられる。コーティングで処理される際には、高分岐ポリマー単量体セット溶液の温度が調節される(室温〜100℃)。その後、セパレーターは、赤外線加熱板606を有するオーブン608で乾燥される。多層セパレーターは、セパレーター回収リール610により得られる。
【0058】
ある態様では、高分岐ポリマーが多孔質構造膜にコートされる前に、表面改質プロセスが実行される。表面改質は、高分岐ポリマーの表面のアルカリ化により実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応が、40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、高分岐ポリマーの表面にグラフトされる。その後、アルカリ化表面を有する多孔質構造膜は、改質された高分岐ポリマー溶液に浸漬される。高分岐ポリマーは、温度40℃〜80℃のNMP中、その場で、アルカリ化多孔質構造材料の表面にコートされる。また、表面改質プロセスは、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電され、改質された高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面にコートされる。
【0059】
別の態様では、多孔質構造膜にコートされる前に、高分岐ポリマーはバインダーと予備混合される。バインダーは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又は、それらの組み合わせを含む。
【0060】
ステップ106で、電池セパレーターが提供される。電池セパレーターは、多孔質構造膜及び高分岐ポリマーを含む。高分岐ポリマーは、電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する。多孔質構造膜上の高分岐ポリマーは、0.2nm〜500nmの細孔径で、好ましくは、0.3nm〜300nmである。高分岐ポリマーは、5μm以下の厚さである。
【0061】
図2は、本発明の別の態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートである。ステップ202で、多孔質構造材料と高分岐ポリマーとが混合されて、混合物を形成する。ステップ204で、ドライ、又は、ウェットプロセスが実行され、ステップ206で、電池セパレーターを形成する。この態様では、電池セパレーターは単一膜である。
【0062】
ステップ202で、多孔質構造材料と高分岐ポリマーとが混合されて、混合物を形成する。多孔質構造材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせを含む。多孔質高分岐ポリマーは、窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成される。窒素含有ポリマーは、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含む。ジケトン含有化合物は、バルビツール酸(BTA)を含む。ある態様では、高分岐ポリマー単量体セット溶液が多孔質構造材料溶液に加えられる。その後、混合物は反応タンクに入れられる。混合溶液の温度が調節されて(室温〜150℃)、その場で、混合反応を実行し、多孔質構造材料と高分岐ポリマーとが均一に混合されて、溶媒系中に、半相互貫通型(semi−interpenetrating)ポリマーネットワーク(半IPN)構造を構築する。
【0063】
別の態様では、混合物は、更に、バインダーを含む。バインダーは、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又は、それらの組み合わせを含む。別の態様では、高分岐ポリマーと混合される前に、多孔質構造材料は改質される。改質は、多孔質構造材料の表面のアルカリ化により実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応は、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、多孔質構造材料の表面にグラフトされる。その後、単量体セットがNMPに加えられ、温度40℃〜80℃のNMP中で、反応を続行する。高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面に形成される。また、表面改質は、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電し、単量体セットがその場での重合反応を生成するように誘発する。更に別の態様では、多孔質構造材料と混合される前に、高分岐ポリマーが改質される。改質は、高分岐ポリマーの表面のアルカリ化により実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応は、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、高分岐ポリマーの表面にグラフトされる。その後、アルカリ化表面を有する多孔質構造膜が、改質された高分岐ポリマー溶液中に浸漬される。高分岐ポリマーが、温度40℃〜80℃のNMP中、その場で、アルカリ化多孔質構造材料の表面にコートされる。また、表面改質は、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電され、改質された高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面にコートされる。
【0064】
ステップ204で、ドライ、又は、ウェットプロセスが混合物に実行されて、ステップ206で、電池セパレーターを形成する。
【0065】
ドライプロセスは、例えば、混合物を溶解して薄膜状に押し出すことを含む。次に、アニール工程が実行され、膜が比較的低い温度で延伸され、気孔を生成する。その後、膜が比較的高い温度で再度延伸され、ミクロ多孔質構造膜を形成する。一方、ウェットプロセスは、例えば、高温で、混合物と希釈剤とを混合し、溶融して、単一シートを形成する。その後、希釈剤は、揮発性溶剤(例えば、トリクロロエチレン)を用いることにより、膜から抽出される。希釈剤により占有される空間は、膜中の気孔になる。ある態様では、紡糸又は静電気紡糸により、繊維状のセパレーターが形成される。
【0066】
ステップ206では、セパレーターが形成される。セパレーターは、多孔質構造材料及び高分岐ポリマーから形成された単一膜を含む。高分岐ポリマーは、電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成し、高分岐ポリマーの細孔径は0.2nm〜500nm、好ましくは、0.3nm〜300nmである。膜の厚さは約5μmより薄い。
【0067】
図3は、本発明のある態様によるリチウム電池の断面図である。電池は、陽極板302及び陰極板304を含む。セパレーター306は、陽極板302と陰極板304との間に設置される。セパレーター306は電解液を含む。また、パッケージが提供されて、陽極板302、陰極板304、セパレーター306、及び、セパレーター内側の電解液(図示しない)を内包する。ある態様では、セパレーターは、多孔質構造材料及び高分岐ポリマーから形成される単一膜である。別の態様では、セパレーターは、多孔質構造膜及び高分岐ポリマーを含む多層膜である。
【0068】
図3を参照すると、二次電池において、高分岐ポリマーを有するセパレーターは、安全性の懸念を生じる過熱から電池を保護することができる。高分岐ポリマーは、電極プレートに対して良好な親和性を有する。組立工程後、高分岐ポリマーは、電極プレートと接触し、充電、放電、エージングプロセスにおいて、その場で、電解液の結合反応を誘発する。セパレーターと電極プレートとが互いにしっかりと取り付けられているので、電池中のリチウムイオンの輸送抵抗が減少する。通常、電池セパレーター中の閉鎖気孔層は、例えば、ポリエチレン(PE)である。電池温度が閉鎖気孔温度(約130℃)に達すると、PE層はセパレーターの気孔を溶融して封鎖する。リチウムイオン輸送は停止される。これは、電池中の連続的な反応を停止し、電池を過熱や爆発から守る。しかし、温度が閉鎖気孔温度になる前に、イオンは、迅速に、電解液中に輸送され続ける。これにより、セパレーター中の気孔がシャットダウンしても、電池の温度は、すぐに増加するのを停止することができない。また、溶解したPE層はセパレーター中の全ての気孔を被覆できないので、反応続行を維持するセパレーター中の気孔がまだ存在する。それゆえ、電池の温度が上昇し続け、セパレーターが過度に溶融し、陽極と陰極とが直接接触する。この短絡が連鎖反応を引き起こして、例えば、熱暴走や爆発等を生じる。
【0069】
しかし、ある態様によると、本発明のセパレーターは、電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成し、更に、シャットダウン構造を形成することができる。例えば、温度を調節することにより、高分岐ポリマーの自由体積は、温度70℃で最大サイズに達する。電池の温度が上昇した後、気孔の自由体積が小さくなる。つまり、電池の温度が約70℃又は80℃に達すると、セパレーターの細孔径が縮小し始め、イオン輸送速度が減速し始める。これにより、電池の温度が200℃に達し、セパレーターのシャットダウン構造を形成する前(例えば、温度約150℃)、電池の反応は、既に、減速している。よって、セパレーターがシャットダウンすると、電池の温度は、効果的に、上昇を停止する。
【0070】
更に、高分岐ポリマーの細孔径は、従来公知のセパレーターより小さい。温度が上昇し始めると、高分岐ポリマーの自由体積がすぐに縮小して、イオン輸送がすぐに妨害される。これにより、イオン輸送速度が減速し、電池の反応速度も遅くなる。しかし、通常、セパレーターの細孔径は、リチウムイオンより大幅に大きい。セパレーター内側の気孔は、大きい割合で、イオン輸送を妨げるのに十分な小さいサイズに縮小される。これにより、セパレーターの気孔が完全に塞がるまで、電池のイオン輸送速度が減速しない。また、従来公知のセパレーターの気孔が大き過ぎるので、大量の多孔質構造膜(例えば、PE)が必要である。通常、セパレーター内側の全ての気孔を封止するのに十分なPEが存在しないので、セパレーターの気孔が部分的にシャットダウンされる。
【0071】
更に、従来公知のポリエチレンセパレーターは、シャットダウン温度で溶融し、電池セパレーターとしての機能を失う。しかし、電池温度がシャットダウン温度に達する前に、本発明の高分岐ポリマーの自由体積は、可逆的に調節される。つまり、温度が約70℃に達すると、電池セパレーターの高分岐ポリマーの自由体積が縮小し、電池の反応速度が制限される。これにより、電池温度がシャットダウン温度に達する可能性が減少し、電池の持続時間が長期になる。また、温度が上昇すると、電池のイオン輸送速度を徐々に制御することにより、電池の電流及び電圧も安定する。
【0072】
従来、電池セパレーターに関連する研究は、セパレーターの耐熱温度を上昇させることに集中している。しかし、電池温度が200℃以上に達すると、電極が分解し始め、高温で電解液と反応する。これにより、まだ、電池爆発のリスクが存在する。よって、電池の安全性は、単に、耐熱温度を上昇させるだけでは、効果的に改善されない。一方、本発明の高分岐ポリマーは耐熱材料である。温度が約70℃又は80℃に達すると、高分岐ポリマーを有する電池のイオン輸送速度が遅くなり始める。温度が150℃に達すると、セパレーターは、シャットダウンメカニズムを受けて、電池中で溶媒和リチウムイオンが輸送されるのを妨げる。これにより、電池温度の上昇を減少させたり、温度上昇を回避したりすることができる。その結果、電池の電極は高温で分解されず、電極と電解液との間の酸化還元反応が回避されるので、熱暴走、又は、爆発が発生しない。
【0073】
しかし、電池温度の上昇が維持されても、高分岐ポリマーは、難燃性化学材料、例えば、CO2、NO2等に分解される。これにより、電池の安全性が改善される。
【0074】
上記の理由に加え、高分岐ポリマーを電池セパレーターとする別の長所は、電池の充放電速度を改善することができることである。
【0075】
高分岐ポリマーの超分岐特性は、その分子間の親和性を悪くし、これにより、構造中の気孔が自然に形成される。相対的に、従来公知のドライフィルムプロセスの機械的延伸により形成される電池セパレーターは、大きい細孔径を有し、製造工程で、大きい膜厚さで、破損を防止することが必要である。
【0076】
本発明のある態様では、電池セパレーターは薄く作られ、イオン輸送抵抗が減少する。これにより、電池の充放電速度が改善される。
【0077】
二次電池に用いられる従来公知の電池セパレーターは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等である。用いられる電解液は、例えば、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等である。PE及びPPは、PC及びECに対する湿潤性が不良であるので、電池中のリチウムイオンは、セパレーターを自由に通過することができない。これにより、従来公知の電解液は、50%以上のDECが必要であり、これは、PE及びPPに対して良好な湿潤性を有する。しかし、リチウムは、DEC中における解離定数が小さく、電池で充分なリチウムイオンを放出するために、大量のリチウム塩が必要である。よって、プロセスのコストが増加する。
【0078】
しかし、本発明のある態様では、高分岐を有する電池セパレーターは、電解液に対する良好な湿潤性を有し、これにより、従来公知の電解液組成が変化する。高分岐ポリマーを有するセパレーターを備える二次電池では、電解液は含有するDECが少ない。例えば、電解液のDECは、10%〜50%、好ましくは、20%〜45%である。一例では、電解液組成は、EC:PC:DEC=3:2:5(v:v:v)、EC:PC:DEC=1:1:1(v:v:v)、又は、EC:PC:DEC=2:1:2(v:v:v)である。高分岐ポリマーは電解液への良好な湿潤性を有するので、リチウムイオン輸送速度が増加し、充放電速度が改善される。更に、電解液中のDEC量を減少させることにより、更に多くのリチウムイオンが電解液中に放出され、電気容量も改善される。また、セパレーターの電解液保持力も、高分岐ポリマーにより改善される。
【実施例】
【0079】
実施例1 高分岐ポリマーの製造
高分岐ポリマー−a
2.55g(0.0071M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び0.45g(0.0036M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、97.00gのNMPをリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、48時間反応させ、固形分3.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が90℃〜260℃、最適熱作動温度が140℃〜200℃であることを示した。
【0080】
高分岐ポリマー−b
16.97g(0.0474M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び3.033g(0.0237M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、80.00gのγ−ブチロラクトン(GBL)をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、6時間反応させ、固形分20.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が100℃〜240℃、最適熱作動温度が120℃〜180℃であることを示した。
【0081】
高分岐ポリマー−c
6.36g(0.0178M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び1.14g(0.0089M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。92.50gのNMP:N’,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)(1:1;質量)の混合物をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で反応させ、固形分7.5wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が90℃〜260℃、最適熱作動温度が140℃〜100℃であることを示した。
【0082】
高分岐ポリマー−d
2.55g(0.0071M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び0.45g(0.0039M)のアセチルアセトンを、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、97.00gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、48時間反応させ、固形分3.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が150℃〜250℃、最適熱作動温度が170℃〜210℃であることを示した。
【0083】
高分岐ポリマー−e
2.55g(0.0071M)のポリマレイミド及び0.45g(0.0029M)の1,3−ジメチルバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。97.00gのプロピレンカーボネート及びジエチルカーボネート(DEC)(4:6;容量)の共溶媒をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、48時間反応させ、固形分3.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が170℃〜280℃、最適熱作動温度が190℃〜240℃であることを示した。
【0084】
高分岐ポリマー−f
1.23g(0.0026M)のポリマレイミド及び3.033g(0.0237M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。窒素下、温度130℃で、30分反応させ、窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が180℃〜250℃、最適熱作動温度が190℃〜230℃であることを示した。
【0085】
高分岐ポリマー−g
2.8g(0.0060M)のポリマレイミド及び0.20g(0.0016M)のバルビツール酸を、機械的に攪拌するリアクターに入れた。固体状態で、窒素下、温度130℃で、30分攪拌し(500rmp)、窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が130℃〜240℃、最適熱作動温度が160℃〜220℃であることを示した。
【0086】
高分岐ポリマー−h
2.55g(0.0071M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド、1.54g(0.0071M)の1,4−マレイミド安息香酸、及び、0.91g(0.0071M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、95.00gのNMPをリアクターに加え、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、24時間反応させ、固形分5.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が90℃〜220℃、最適熱作動温度が130℃〜180℃であることを示した。
【0087】
高分岐ポリマー−i
0.85g(0.0024M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び0.15g(0.0012M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。9gのNMPをリアクターに加え、60℃に加熱した。その後、全ての化合物が溶解するまで、混合物を攪拌した。100gのポリアクリロニトリル(PAN)/N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)溶液(固形分10.0wt%)を混合物に加えた。窒素下、温度130℃で、24時間反応させ、固形分10.0wt%の(PAN−STOBA)−DMAC/NMP溶液を得た。静電紡糸により、膜を繊維形式で形成し、加圧(7N)後、不織布のセパレーターを更に得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が180℃〜300℃、最適熱作動温度が240℃〜280℃であることを示した。
【0088】
比較例1
テレフタル酸ポリエチレン(PET)をN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、PET溶液に電荷が誘発され、荷電PET溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケール繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、PET不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0089】
比較例2
ポリプロピレン多孔質構造材料を、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、ポリプロピレン溶液に電荷誘発され、荷電ポリプロピレン溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケール繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、ポリプロピレン不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0090】
比較例3
ポリアニリン多孔質構造材料をN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、ポリアニリン溶液に電荷が誘発され、荷電ポリアニリン溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケールの繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、ポリアニリン不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0091】
比較例4
ポリエチレン多孔質構造材料をN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、ポリエチレン溶液に電荷が誘発され、荷電ポリエチレン溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケール繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、ポリエチレン不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0092】
実施例2
PET多孔質構造材料膜を形成し、加圧成形プロセスを行った。その後、PET膜を、高分岐ポリマーを含む溶液中に入れた。溶液の温度を調節し(室温〜100℃)、10分〜6時間反応させた。その後、セパレーターを溶液から取り出して、アセトン、又は、アセトン/メタノール(1:1;容量)により洗浄した。その後、セパレーターを、温度40℃〜80℃で、IRヒーターにより乾燥させた。高分岐ポリマーを有する多孔質構造の不織布のセパレーターが形成された。セパレーターの厚さは、約10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0093】
高分岐ポリマーの分子は、互いの間の親和性に乏しいので、気孔が構造中に自然に形成された。細孔径は、従来公知のセパレーターの細孔径よりも比較的小さく、厚さも薄かった。これにより、電解液中のイオン輸送の抵抗が減少し、充放電速度が改善された。
【0094】
実施例3
ポリプロピレン多孔質構造材料膜を形成し、加圧成形プロセスを実行した。その後、PET膜を、高分岐ポリマーを含む溶液中に入れた。溶液の温度を調節し(室温〜100℃)、10分〜6時間反応させた。その後、セパレーターを溶液から取り出して、アセトン、又は、アセトン/メタノール(1:1;容量)により洗浄した。その後、セパレーターを、温度40℃〜80℃で、IRヒーターにより乾燥させた。高分岐ポリマーを有する多孔質構造の不織布のセパレーターが形成された。セパレーターの厚さは、約10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0095】
実施例4
高分岐ポリマー単量体セットを、ポリアニリンとセルロースとを含む多孔質構造材料溶液に加えた。混合物をリアクターに入れて、溶液の温度を調節した(室温〜150℃)。混合物は、その場で、混合反応を受け、多孔質構造材料及び高分岐ポリマーを均一に混ぜて、溶剤中で、半IPN構造を形成した。静電紡糸により、繊維状の改善されたセパレーターが提供された。セパレーターの細孔径は、約0.2nm〜500nmであり、最適細孔径は、0.3nm〜300nmであった。セパレーターの空隙率は、10%〜80%であり、最適な空隙率は、30%〜60%であった。
【0096】
加圧成形プロセス前後、比較例3の膜の厚さが大幅に変化した。図7Bで示されるように、加熱加圧成形プロセス及び圧延加圧成形プロセスの後、PAN構造が緊密に結合し、溶媒和リチウムイオン輸送に好ましくなかった。一方、図8Bで示される高分岐ポリマーにより改質されるPAN構造に関し、高分岐ポリマー間の反発のため、分子構造間の距離が固定された。これにより、従来公知のセパレーターと比較すると、加圧成形プロセス前後のセパレーターの厚さは、それほど違わない。加圧成形プロセス後、細孔径は小さくなり、空隙率は増加した。また、セパレーター中における気孔のサイズ及び分布は、従来公知のセパレーターの気孔より均一であった。
【0097】
更に、比較例のセパレーターと比較すると、この実施例のセパレーターは、細孔径が小さかった。これにより、電池温度が上昇し始めると、セパレーターの自由体積が縮小し始め、電池のイオン束が減少し始めた。電池温度の上昇が停止し、電池の安全性が改善された。
【0098】
実施例5
ポリプロピレンで形成された多孔質構造膜を、高分岐ポリマー単量体セット溶液に入れた。反応溶液の温度を調節した(室温〜150℃)。表面改質を、その場で、膜表面で実行し、セパレーターの性能を改善した。膜の厚さは、約10μm〜50μmであり、細孔径は、約0.5μm〜2μmであった。
【0099】
比較例1〜4及び実施例2〜5の結果を表1に示す。平均厚さは、ASTM D5947−96に従って測定された。伸張強度は、ASTM D882に従って測定された。ガーレー値は、ASTM D726に従って測定された。最大細孔径及び平均細孔径は、ASTM E128−99に従って測定された。熱収縮は、ASTM D1204に従って測定された。温度安定性は、ASTM D1204に従って測定された。
【0100】
表1を参照すると、高分岐ポリマーを有する電池セパレーターは、優れた伸張強度、熱収縮、及び/又は、温度安定性を有していた。実施例4では、加熱加圧加工後、高分岐ポリマーを有する電池セパレーターは、繊維が細く、セパレーターの空隙率が高くなった。また、溶剤に対するセパレーターのガーレー値及び湿潤性も、従来公知のものより良好であった。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例6
多孔質構造セパレーターを、それぞれ、不織布/PET(表面改質)、不織布/PET(三菱製紙)、又は、不織布/PP(15mg/cm2)から製造した。各多孔質構造膜を加圧し、高分岐ポリマー溶液中に入れた。溶液温度を調節した(室温〜100℃)。表面改質を実行し、セパレーターの性能を改善した。表面改質は、多孔質構造膜の表面をアルカリ化することにより実行した。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応は、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行した。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、多孔質構造材料の表面上にグラフトさせた。その後、単量体セットをNMPに加え、温度40℃〜80℃のNMP中で、反応を続行し、高分岐ポリマーを、その場で、多孔質構造材料の表面に形成した。また、表面改質を、プラズマプロセスにより実行した。多孔質構造材料の表面は、プラズマにより帯電して、その場で、単量体セットの重合反応を誘発した。
【0103】
高分岐ポリマーは、(表面改質した)PETに対して良好な被覆力を有していた。不織布/PET(三菱製紙)に対する高分岐ポリマーの被覆力は、(表面改質した)PETよりも不良であるが、不織布/PP(15mg/cm2)よりは良好であった。
【0104】
また、ポリアニリン−高分岐ポリマーを有するセパレーターの繊維は、ポリアニリンだけを有するセパレーターの繊維より細かった。また、その空隙率及び均一性も、ポリアニリンだけを有するセパレーターより良好であった。表面改質したセパレーターをSEM−EDXにより分析したところ、窒素含有信号が検出された。この結果は、窒素含有ポリマーが不織布セパレーターの表面にコートされていることを示した。
【0105】
実施例7
比較例及び実施例で形成されたセパレーターを、異なる種類の溶剤に対する湿潤性について試験した。溶剤は、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチレンカーボネート(DMC)、ジエチレンカーボネート(DEC)、EC/PC/DEC(3:2:5;容量)、及び、EC/PC/DEC(2:1:2;容量)を含む。各セパレーターは、異なる溶媒系で、異なる湿潤性を示した。
【0106】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とするセパレーターは、極性溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、及び、プロピレンカーボネート(PC)に対する湿潤性が不良であったが、非極性溶媒、例えば、ジメチレンカーボネート(DMC)及びジエチレンカーボネート(DEC)に対する湿潤性が良好であった。
【0107】
しかし、高分岐ポリマーは、極性溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、及び、プロピレンカーボネート(PC)に対する湿潤性が良好であった。これにより、高分岐ポリマーにより改質されたPE、PP、又は、PETのセパレーターは、溶媒系、例えば、EC/PC/DEC(3:2:5;容量)及びEC/PC/DEC(2:1:2;容量)に対する湿潤性が良好であった。
【0108】
DECに対する高分岐ポリマーの反発により、リチウムイオンが駆動されて、セパレーターを通過する際に、リチウムイオンを囲むDEC分子は、セパレーターの通過を拒否された。これにより、溶媒和リチウムイオンの総容量は小さくなり、イオン輸送の抵抗が減少した。電池におけるイオン輸送が改善された。この結果、高分岐ポリマーを有するセパレーターを含む二次電池は、充放電速度が速かった。
【0109】
実施例8
リチウムニッケルコバルトマンガン陽極板、市販のグラファイト陰極板MCMB2528(大阪ガス)、及び、実施例5で形成された高分岐ポリマーを含む改質された多孔質セパレーターを圧延して、ゼリーロールを形成した。ゼリーロールは、アルミニウムシェルと組み合わせて、503759電池(厚さ:0.5cm;幅:3.7cm;長さ:5.0cm)を形成した。電池の三方を密封し(シーリング条件:約0.4MPa(4.0kgf/cm2),180℃/3sec)、一方は開いたまま維持した。標準的なリチウム電池の電解液(1.1M LiPF6/EC+PC+DEC、EC:PC:DEC=3:2:5(容量))を、開口側から電池に流入させた。その後、空気を電池から排出した後、開口側を密封した(シーリング条件:約0.4MPa(4.0kgf/cm2),180℃/3sec)。電池の電解液量は4.2g/電池であった。最後に、標準生成工程を実行して、リチウム電池を活性化し、リチウム電池試料を提供した。
【0110】
このリチウム電池について、6C/30V電圧放電試験を行った。試験後、陽極板を取り出し、SEM/EDX組成解析を行った。結果を以下に示す。高分岐ポリマーを含むセパレーターを有する陽極板は、陽極材料の酸素の生成及び放出を抑制した。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例9
材料の自由体積を、様々な温度で、陽電子消滅寿命測定装置(PALS)により測定した。実施例1の高分岐ポリマー−a溶液を、アセトン/メタノール(1:1;容量)の溶媒系に徐々に注入し、高分岐ポリマーの微粒子を形成した。0.2μm PTFTのフィルター膜を用いて、溶液をろ過し、フィルター膜上の残りの固形物を、真空オーブン中、60℃で乾燥させた。得られた固形物粉末は、高分岐ポリマーである。
【0113】
高分岐ポリマー、その単量体セットBMI(N,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド;アルドリッチ(Aldrich))、市販のデュポン(DuPont)PI膜(デュポン(DuPont)のカプトン(Kapton)膜、厚さ25μm)、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVDF;アトフィナ(Atofina))膜を、それぞれ、様々な温度で、PALS(放射線源:22Na)により測定した。検出温度は、30℃、70℃、110℃、150℃、190℃、及び、230℃であった。上記材料の自由体積を異なる温度で検出した。その結果を図4に示す。
【0114】
図4は、異なる温度での高分岐ポリマーの自由体積半径を示す。図4に示されるように、高分岐ポリマーの自由体積半径は、室温で、約2.63Åであった。温度が約70℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約3.14Åであった。温度が約150℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約2.97Åであった。温度が約190℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約2.78Åであった。温度が約230℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約1.73Åであった。
【0115】
ポリイミド(PI)は、線形ポリマーで、温度が上昇すると、その自由体積が、予想通りに、上昇する。PVDFは、通常、多孔質構造材料として用いられ、電極と導電材料とのバインダーとなる。PVDFは、通常、長時間、温度150℃で機能する。図4に示されるように、PVDFは、110℃〜150℃でのアニーリング工程の後、150℃で用いられる。しかし、PVDFの自由体積が温度110℃〜230℃で縮小しても、PVDF膜の気孔は、溶媒和リチウムイオン輸送を阻止するほど小さすぎなかった。これにより、PVDFと比較すると、高分岐ポリマーは、安全で、リチウム電池にとって更に有利な熱的メカニズムを生成する。
【0116】
図4に示されるように、温度が上昇すると、分子鎖の混乱のために、一般のポリマー材料の自由体積も増加した。これは、高分岐ポリマーと同じであり、温度が上昇すると、高分岐ポリマーの自由体積は増加した。しかし、温度が室温から70℃に上昇すると、高分岐ポリマーの自由体積は、最大サイズに達した。温度が150℃に上昇すると、高分岐ポリマーの自由体積は縮小した。つまり、高分岐ポリマーは、その気孔を閉じ始めるので、これにより、電池中のイオン輸送が減少した。温度が230℃に達すると、高分岐ポリマーの自由体積は、溶媒和リチウムイオンが通過できないほど小さくなった。これにより、反応が続行するのを効果的に停止した。
【0117】
従来公知のセパレーター材料、例えば、PI、PVDF、又は、BMIの自由体積は、温度が上昇すると、増加した。これにより、これらの材料は、温度が上昇すると、閉鎖気孔構造を形成しなかった。
【0118】
実施例10
実施例1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸で形成される高分岐ポリマー−aが、様々なモル比で合成された。特定のモル比の単量体セットを、PC溶剤に入れ、完全に溶解するまで攪拌した。PCは、20wt%の固形分を有していた。混合物を130℃まで加熱して、6時間連続で攪拌した。得られた溶液は、高分岐ポリマー溶液であった。
【0119】
純粋なN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミドから形成されたポリマーは、分岐度が0%であった。モル比が10:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が32%であった。モル比が5:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が67%であった。モル比が2:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が84%であった。モル比が1:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が98%であった。
【0120】
上記の高分岐ポリマーと、N,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミドの単量体セットとを、熱重量分析(TGA)法で試験した。試験温度は、窒素下(20mL/min)、室温から800℃であり、温度上昇速度は10℃/分であった。ポリマーが更に小さい分子、例えば、水、又は、溶剤を保持する場合、TGAスペクトルは、ポリマーの重量損失が少ないことを示した。つまり、ポリマーは好ましい電解液保持力を有していた。TGAスペクトルは、高分岐ポリマーの電解液保持力を示し、分岐度が増加すると、電解液保持力も増加した。分岐度が0%のポリマー(図9A)は、電解液保持力が0%であった。分岐度が32%のポリマー(図9B)は、電解液保持力がたった0.72%であった。分岐度が67%のポリマー(図9C)は、電解液保持力が1.66%であった。上記のポリマーは2%より低い電解液保持力を有していた。しかし、ポリマーの分岐度が67%から84%に増加すると(図9D)、その電解液保持力は、1.66%から3.43%に増加した。ポリマーの分岐度が98%に達すると(図9E)、その電解液保持力は4.93%に増加した。
【0121】
本発明では、好ましい実施例を上記の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0122】
102,104,106,202,204,206 ステップ;
302 陽極板;
304 陰極板;
306 セパレーター;
502,602 セパレーター分注リール;
504 高分岐ポリマー溶液;
506,606 赤外線加熱板;
508,608 オーブン;
510,610 セパレーター回収リール;
512,612 ローラー;
604 高分岐ポリマー単量体セット溶液
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セパレーターおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子産業の発展に伴い、電池は、幅広く、各種製品、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップコンピューター、又は、電気自動車に応用される。これにより、電池の要求は、絶えず増大する。しかし、電池性能の向上を追及すると同時に、電池の安全性も、大いに注目を集めている。
【0003】
一般の電池は、主に、電極、電解液、及び、セパレーターを含む。電極で生成されるイオンが電解液中で運ばれて、電流を形成し、化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。リチウム電池は、その高いエネルギー密度のため、電気自動車の主電源の一つになっている。しかし、電池のエネルギー密度が増加するにつれて、出力電力と電池サイズも増加して、操作時に、大量の熱を生成する。効果的な方法で散熱しないと、電池温度が上昇し、爆発する。よって、電池の安全性の確保が、ますます重要になっている。
【0004】
電池セパレーターは、リチウム電池中で、重要な役割を担う。電池セパレーターが二個の電極間に設置されて、二個の電極間の物理的な接触を回避し、電池の安全性を向上させている。よって、高空隙率、良好な耐熱性、及び、電界効果メカニズムを有する電池セパレーターを提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中華民国特許公報第201024343号
【特許文献2】米国特許出願公開第20100167101号
【特許文献3】米国特許出願公開第20100143767号
【特許文献4】中華民国特許公報第201025697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電池セパレーターおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電池セパレーターを提供する。この電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーと、多孔質構造材料と、を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、電池セパレーターの製造方法を提供する。この製造方法は、多孔質構造膜を提供するステップと、多孔質構造膜上に、多孔質高分岐ポリマーをコートして、電池セパレーターを形成ステップと、を含み、電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、電池セパレーターの製造方法を提供する。この製造方法は、多孔質構造材料と多孔質高分岐ポリマーを混合して、混合物を形成するステップと、混合物に、ドライ、又は、ウェットプロセスを実行して、電池セパレーターを形成するステップと、を含み、電池セパレーターは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、二次電池を提供する。この二次電池は、陰極と陽極と、陰極と陽極との間の電解液と、陰極と陽極との間に設置され、陰極と陽極とを分離する上記の電池セパレーターと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池セパレーターは、高空隙率、良好な耐熱性、及び、電界効果メカニズムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のある態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の別の態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートである。
【図3】本発明のある態様で形成される二次電池を示す図である。
【図4】ある実施例による様々な温度下の高分岐ポリマーの自由体積を示す図である。
【図5】ある実施例による浸漬で実行されるコーティングプロセスを示す図である。
【図6】ある実施例による、その場での合成により実行されるコーティングプロセスを示す図である。
【図7A】比較例によるセパレーターのSEM図である。
【図7B】比較例によるセパレーターのSEM図である。
【図8A】ある実施例による加圧成形プロセス前のセパレーターのSEM図である。
【図8B】ある実施例による加圧成形プロセス後のセパレーターのSEM図である。
【図9A】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9B】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9C】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9D】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【図9E】ある実施例による形成ポリマーのTGA図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のある態様では、多孔質高分岐ポリマーが提供される。多孔質高分岐ポリマーは、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する。これにより、多孔質高分岐ポリマーが電池セパレーターに応用される。多孔質高分岐ポリマーにより形成される電池セパレーターは、細孔径が約0.2nm〜500nm、好ましくは、約0.3nm〜300nmである。電池セパレーターは、空隙率が約10%〜80%、好ましくは、約30%〜60%である。細孔径が原寸の約35%〜70%に縮小すると、セパレーターは閉鎖気孔構造に変わるとみなされる。この場合、セパレーターは、約0.15nm〜200nmの細孔径を有し、セパレーター上の気孔の50%〜100%は閉鎖気孔構造であり、よって、電池中のイオン輸送を停止させることができる。
【0014】
本発明の高分岐ポリマーは0.5以上の「分岐度(DB)」を有する。分岐度(DB)は以下のように定義される:
DB=(ΣD+ΣT)/(ΣD+ΣL+ΣT)
【0015】
上記式中、DBは分岐度を示し、Dは樹枝状ユニット数(少なくとも3個のリンク結合を含み、反応性官能基を有しない)を示し、Lは直鎖状ユニット数(ユニットの両末端は延伸可能な接続結合である)を示し、Tは末端ユニット数(少なくとも一つの末端接続結合と少なくとも一つの反応性官能基とを含む)を示す。
【0016】
多孔質高分岐ポリマーは、窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成される。(A)窒素含有ポリマーは、(A1)アミン、(A2)アミド、(A3)イミド、(A4)マレイミド、(A5)イミン、又は、それらの組み合わせを含むジケトン含有化合物は、バルビツール酸(BTA)を含む。注意すべきことは、窒素含有ポリマーは、数平均分子量が1500以上の窒素含有化合物だけでなく、数平均分子量が200〜1500の窒素含有オリゴマーを含むことである。
【0017】
(A1)アミンは、以下の一般式で示される:
【0018】
【化1】
【0019】
上記式中、R1、R2、及び、R3は、同一又は相異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、及び、芳香族基を示す。第1級アミン(R2及びR3は共に水素)が特に好ましい。アミン(A1)の具体例は、1,1’−ビス(メトキシカルボニル)ジビニルアミン(BDA)、N−メチル−N,N−ジビニルアミン、及び、ジビニルフェニルアミンを含む。
【0020】
(A2)アミドは、以下の一般式で示される:
【0021】
【化2】
【0022】
上記式中、R、R’、及び、R”は、同一又は相異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、又は、芳香族基を示す。第1級アミド(R’およびR”は共に水素)が特に好ましい。アミド(A2)の具体例は、N−ビニルアミド、ジビニルアミド、シリル(ビニル)アミド、及び、グリオキシル化ビニルアミドを含む。
【0023】
(A3)イミドは、以下の一般式により示される:
【0024】
【化3】
【0025】
上記式中、R1、R2、及び、R3は同じか、異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、又は、芳香族基を示す。イミド(A3)の具体例は、ジビニルイミド、例えば、N−ビニルイミド、N−ビニルフタルイミド、及び、ビニルアセトアミドを含む。
【0026】
(A4)マレイミドは、モノマレイミド、ビスマレイミド、トリスマレイミド、及び、ポリマレイミドを含み、ビスマレイミドは、一般式(I)又は(II)を有する:
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
上記式中、R1は、−RCH2R−,−RNH2R−,−C(O)CH2−,−CH2OCH2−,−C(O)−,−O−,−O−O−,−S−,−S−S−,−S(O)−,−CH2S(O)CH2−,−(O)S(O)−,−C6H5−,−CH2(C6H5)CH2−,−CH2(C6H5)(O)−,フェニレン、ジフェニレン、置換フェニレン、又は、置換ジフェニレンであり、R2は、−RCH2−,−C(O)−,−C(CH3)2−,−O−,−O−O−,−S−,−S−S−,−(O)S(O)−、又は、−S(O)−であり、RはC1−6アルキルである。ビスマレイミドの代表例は、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタン,1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド,N,N’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド,N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド,1,1’−(3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド,N,N’−エチレンジマレイミド,N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド,N,N’−(1,3−フェニレン)ジマレイミド,N,N’−チオジマレイミド,N,N’−ジチオジマレイミド,N,N’−ケトンジマレイミド,N,N’−メチレン−ビス−マレイミド,ビス−マレイミドメチル−エーテル,2−ビス−(マレイミド)−1,2−エタンジオール,N,N’−4,4’−ジフェニルエーテル−ビス−マレイミド,4,4’−ビス(マレイミド)−ジフェニルスルホン等である。
【0030】
(A5)イミンは、以下の一般式で示される:
【0031】
【化6】
【0032】
上記式中、R1、R2、及び、R3は、同一又は相異なり、それぞれ、水素、脂肪族基、又は、芳香族基を示す。イミン(A5)の具体例は、ジビニルイミン、及び、アリルイミンを含む。
【0033】
(B)ジオンは、(B1)バルビツール酸及びその誘導体;及び(B2)アセチルアセトン及びその誘導体を含む。
【0034】
(B1)バルビツール酸及びその誘導体は、以下の一般式で示される:
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
上記式中、R1〜R8は、それぞれ独立して、H,CH3,C2H5,C6H5,CH(CH3)2,CH2CH(CH3)2,CH2CH2CH(CH3)2,又は、
【0040】
【化11】
を示す。
【0041】
R1及びR2が共に水素の場合、ジオンはバルビツール酸である。
【0042】
(B2)アセチルアセトン及びその誘導体は、以下の一般式で示される:
【0043】
【化12】
【0044】
上記式中、R及びR’は、同一又は相異なり、それぞれ、脂肪族基、芳香族基、又は、ヘテロアリール基を示す。R及びR’が共にメチルの場合、ジオンはアセチルアセトンである。
【0045】
(B)ジオン対(A)アミン、アミド、イミド、マレイミド、又は、イミンのモル比は、約1:20〜4:1、好ましくは、約1:5〜2:1、更に好ましくは、約1:3〜1:1である。
【0046】
ある態様では、ビスマレイミドオリゴマーを含む高分岐ポリマーが提供される。ビスマレイミドオリゴマーは、超分岐機構、又は、複数の二重結合反応性官能基を有する多機能ビスマレイミドオリゴマーである。超分岐機構において、ビスマレイミドは構造マトリクスとなる。ラジカルとなるバルビツール酸は、ビスマレイミドの二重結合にグラフトされ、ビスマレイミドの二重結合は、片側、又は、両側で壊れ、分岐と秩序化の重合反応を受ける。また、例えば、濃度比率、各ステップの進行順序、反応温度、反応時間、又は、環境条件の調整により、分岐度、重合度、構造配置、及び、分子量を変化させることができ、多機能ビスマレイミドオリゴマーが高純度で形成される。分岐構造は[(ビスマレイミド単量体)−(バルビツール酸)x]mであり、xは0〜4、且つ、m(繰り返しユニットを示す)は20より小さい。
【0047】
上記の高分岐ポリマーは、溶媒系中、ビスマレイミド含有化合物を、バルビツール酸、又は、その誘導体と重合することにより調製することができる。特に、ビスマレイミド含有化合物とバルビツール酸のモル比は、20:1〜1:5、好ましくは、5:1〜1:2である。
【0048】
本発明に用いられる溶剤は、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアミン(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレンカーボネート(PC)、水、イソプロピルアルコール(IPA)、又は、それらの組み合わせである。
【0049】
開始剤は、例えば、過酸化物開始剤、又は、アゾ開始剤であり、活性化により、分解されて遊離ラジカル種を生成する。開始剤は、2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン−1−オール)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−(N)−(1,1)−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオン酸アミド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジラウロイルペルオキシド、t−アミルペルオキシド、t−アミルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、カリウムペルオキシジスルフェート、アンモニウムペルオキシジスルフェート、ジ−t−ブチルペルオキシド、亜硝酸ジ−t−ブチル、亜硝酸ジクミル、又は、それらの組み合わせである。高分岐ポリマーの調製及び特性の詳細に関しては、出願人の関連する特許出願、例えば、特許文献1(中華民国特許公報第201024343号)、特許文献2(米国特許出願公開第20100167101号)、特許文献3(米国特許出願公開第20100143767号)、又は、特許文献4(中華民国特許公報第201025697号)を参照されたい。
【0050】
高分岐ポリマーは、電界効果条件、例えば、電流、電圧、温度、又は、光で、その自由体積が変化する。例えば、温度70°Cで、高分岐ポリマーは最大自由体積を有するので、電解液中のイオン(例えば、リチウムイオン)はポリマーを自由に通過することができ、よって、高分岐ポリマーが電池セパレーターとして機能する。しかし、電池の温度が上昇する時、高分岐ポリマーの自由半径が徐々に縮小する。即ち、高分岐ポリマーの細孔径が小さくなる。これにより、電解液中のイオン輸送速度が遅くなり、電池温度の急激な上昇が回避できる。電池の温度が150℃以上であると、高分岐ポリマーは、徐々に互いに反応して架橋構造を形成し、更に、その自由体積を縮小する。電池の温度が200℃以上であると、高分岐ポリマーの自由体積は小さすぎて、電解液中の溶媒和リチウムイオンは、セパレーターを通過できない。これにより、セパレーターは閉鎖気孔構造となり、電池中のイオン輸送の速度が落ちるか、又は、停止し、電池の温度の上昇を停止することができる。更に、高分岐ポリマーは、優れた絶縁能力、耐熱性、化学安定性、及び、電解液保持力を有する。よって、電池の電気特性及び安全性が改善される。
【0051】
図1は、本発明のある態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートを示す図である。ステップ102で、多孔質構造膜が提供される。高分岐ポリマーが多孔質構造膜上にコートされて(ステップ104)、電池セパレーターを形成する(ステップ106)。
【0052】
ステップ102で、多孔質構造膜は、ドライプロセス、又は、ウェットプロセスにより提供される。ドライプロセスは、例えば、多孔質構造材料を溶解して薄膜状に押し出すことを含む。次に、アニール工程が実行され、膜が比較的低い温度で延伸され、気孔を形成する。その後、膜が比較的高い温度で再度延伸され、ミクロ多孔質構造膜を形成する。一方、ウェットプロセスは、例えば、高温で、多孔質構造材料と希釈剤とを混合し、溶融して、混合物を形成する。次に、混合物はシート状に加工され、延伸されて、膜を形成する。その後、希釈剤は、揮発性溶剤(例えば、トリクロロエチレン)を用いることにより、膜から抽出される。希釈剤により占有される空間は、多孔質構造膜中の気孔となる。希釈剤は、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアミン(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレンカーボネート(PC)、イソプロピルアルコール(IPA)、又は、それらの組み合わせを含む。
【0053】
多孔質構造材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアニリン、ポリイミド(PI)、不織布、ポリエチレンフタフタレート、ポリスチレン(PS)、セルロース、又は、それらの組み合わせを含む。
【0054】
ある態様では、ステップ104の前に、表面改質が実行される。表面改質は、多孔質構造膜の表面をアルカリ化することにより実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応が、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、多孔質構造材料の表面にグラフトされる。その後、単量体セットがNMPに加えられ、温度40℃〜80℃のNMP中で、反応を続行する。高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面に形成される。また、表面改質は、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電し、単量体セットのその場での重合反応を誘発する。
【0055】
ステップ104で、高分岐ポリマーが多孔質構造膜上にコートされ、ステップ106で、電池セパレーターを形成する。高分岐ポリマーは、スピンコーティング、キャスティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、ワイヤーバーコーティング、浸漬コーティング等によりコーティングされる。
【0056】
ある態様では、高分岐ポリマーは、浸漬コーティング工程により、多孔質構造膜上にコートされる。図5を参照すると、未処理の多孔質構造膜は、セパレーター分注リール502のローラー512により、高分岐ポリマー溶液504に入れられる。コーティングで処理される際には、高分岐ポリマー溶液の温度が調節される(室温〜100℃)。その後、セパレーターは、赤外線加熱板506を有するオーブン508で乾燥される。形成された多層セパレーターは、セパレーター回収リール510により収集される。
【0057】
別の態様では、高分岐ポリマーは、その場で、コーティングプロセスにより、多孔質構造膜にコートされる。図6を参照すると、未処理の多孔質構造膜は、セパレーター分注リール602のローラー612により、高分岐ポリマー単量体セット溶液604に入れられる。コーティングで処理される際には、高分岐ポリマー単量体セット溶液の温度が調節される(室温〜100℃)。その後、セパレーターは、赤外線加熱板606を有するオーブン608で乾燥される。多層セパレーターは、セパレーター回収リール610により得られる。
【0058】
ある態様では、高分岐ポリマーが多孔質構造膜にコートされる前に、表面改質プロセスが実行される。表面改質は、高分岐ポリマーの表面のアルカリ化により実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応が、40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、高分岐ポリマーの表面にグラフトされる。その後、アルカリ化表面を有する多孔質構造膜は、改質された高分岐ポリマー溶液に浸漬される。高分岐ポリマーは、温度40℃〜80℃のNMP中、その場で、アルカリ化多孔質構造材料の表面にコートされる。また、表面改質プロセスは、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電され、改質された高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面にコートされる。
【0059】
別の態様では、多孔質構造膜にコートされる前に、高分岐ポリマーはバインダーと予備混合される。バインダーは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又は、それらの組み合わせを含む。
【0060】
ステップ106で、電池セパレーターが提供される。電池セパレーターは、多孔質構造膜及び高分岐ポリマーを含む。高分岐ポリマーは、電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する。多孔質構造膜上の高分岐ポリマーは、0.2nm〜500nmの細孔径で、好ましくは、0.3nm〜300nmである。高分岐ポリマーは、5μm以下の厚さである。
【0061】
図2は、本発明の別の態様による電池セパレーターの製造方法のフローチャートである。ステップ202で、多孔質構造材料と高分岐ポリマーとが混合されて、混合物を形成する。ステップ204で、ドライ、又は、ウェットプロセスが実行され、ステップ206で、電池セパレーターを形成する。この態様では、電池セパレーターは単一膜である。
【0062】
ステップ202で、多孔質構造材料と高分岐ポリマーとが混合されて、混合物を形成する。多孔質構造材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせを含む。多孔質高分岐ポリマーは、窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成される。窒素含有ポリマーは、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含む。ジケトン含有化合物は、バルビツール酸(BTA)を含む。ある態様では、高分岐ポリマー単量体セット溶液が多孔質構造材料溶液に加えられる。その後、混合物は反応タンクに入れられる。混合溶液の温度が調節されて(室温〜150℃)、その場で、混合反応を実行し、多孔質構造材料と高分岐ポリマーとが均一に混合されて、溶媒系中に、半相互貫通型(semi−interpenetrating)ポリマーネットワーク(半IPN)構造を構築する。
【0063】
別の態様では、混合物は、更に、バインダーを含む。バインダーは、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又は、それらの組み合わせを含む。別の態様では、高分岐ポリマーと混合される前に、多孔質構造材料は改質される。改質は、多孔質構造材料の表面のアルカリ化により実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応は、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、多孔質構造材料の表面にグラフトされる。その後、単量体セットがNMPに加えられ、温度40℃〜80℃のNMP中で、反応を続行する。高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面に形成される。また、表面改質は、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電し、単量体セットがその場での重合反応を生成するように誘発する。更に別の態様では、多孔質構造材料と混合される前に、高分岐ポリマーが改質される。改質は、高分岐ポリマーの表面のアルカリ化により実行される。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応は、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行される。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、高分岐ポリマーの表面にグラフトされる。その後、アルカリ化表面を有する多孔質構造膜が、改質された高分岐ポリマー溶液中に浸漬される。高分岐ポリマーが、温度40℃〜80℃のNMP中、その場で、アルカリ化多孔質構造材料の表面にコートされる。また、表面改質は、プラズマプロセスによっても実行される。多孔質構造材料の表面がプラズマにより帯電され、改質された高分岐ポリマーは、その場で、多孔質構造材料の表面にコートされる。
【0064】
ステップ204で、ドライ、又は、ウェットプロセスが混合物に実行されて、ステップ206で、電池セパレーターを形成する。
【0065】
ドライプロセスは、例えば、混合物を溶解して薄膜状に押し出すことを含む。次に、アニール工程が実行され、膜が比較的低い温度で延伸され、気孔を生成する。その後、膜が比較的高い温度で再度延伸され、ミクロ多孔質構造膜を形成する。一方、ウェットプロセスは、例えば、高温で、混合物と希釈剤とを混合し、溶融して、単一シートを形成する。その後、希釈剤は、揮発性溶剤(例えば、トリクロロエチレン)を用いることにより、膜から抽出される。希釈剤により占有される空間は、膜中の気孔になる。ある態様では、紡糸又は静電気紡糸により、繊維状のセパレーターが形成される。
【0066】
ステップ206では、セパレーターが形成される。セパレーターは、多孔質構造材料及び高分岐ポリマーから形成された単一膜を含む。高分岐ポリマーは、電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成し、高分岐ポリマーの細孔径は0.2nm〜500nm、好ましくは、0.3nm〜300nmである。膜の厚さは約5μmより薄い。
【0067】
図3は、本発明のある態様によるリチウム電池の断面図である。電池は、陽極板302及び陰極板304を含む。セパレーター306は、陽極板302と陰極板304との間に設置される。セパレーター306は電解液を含む。また、パッケージが提供されて、陽極板302、陰極板304、セパレーター306、及び、セパレーター内側の電解液(図示しない)を内包する。ある態様では、セパレーターは、多孔質構造材料及び高分岐ポリマーから形成される単一膜である。別の態様では、セパレーターは、多孔質構造膜及び高分岐ポリマーを含む多層膜である。
【0068】
図3を参照すると、二次電池において、高分岐ポリマーを有するセパレーターは、安全性の懸念を生じる過熱から電池を保護することができる。高分岐ポリマーは、電極プレートに対して良好な親和性を有する。組立工程後、高分岐ポリマーは、電極プレートと接触し、充電、放電、エージングプロセスにおいて、その場で、電解液の結合反応を誘発する。セパレーターと電極プレートとが互いにしっかりと取り付けられているので、電池中のリチウムイオンの輸送抵抗が減少する。通常、電池セパレーター中の閉鎖気孔層は、例えば、ポリエチレン(PE)である。電池温度が閉鎖気孔温度(約130℃)に達すると、PE層はセパレーターの気孔を溶融して封鎖する。リチウムイオン輸送は停止される。これは、電池中の連続的な反応を停止し、電池を過熱や爆発から守る。しかし、温度が閉鎖気孔温度になる前に、イオンは、迅速に、電解液中に輸送され続ける。これにより、セパレーター中の気孔がシャットダウンしても、電池の温度は、すぐに増加するのを停止することができない。また、溶解したPE層はセパレーター中の全ての気孔を被覆できないので、反応続行を維持するセパレーター中の気孔がまだ存在する。それゆえ、電池の温度が上昇し続け、セパレーターが過度に溶融し、陽極と陰極とが直接接触する。この短絡が連鎖反応を引き起こして、例えば、熱暴走や爆発等を生じる。
【0069】
しかし、ある態様によると、本発明のセパレーターは、電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成し、更に、シャットダウン構造を形成することができる。例えば、温度を調節することにより、高分岐ポリマーの自由体積は、温度70℃で最大サイズに達する。電池の温度が上昇した後、気孔の自由体積が小さくなる。つまり、電池の温度が約70℃又は80℃に達すると、セパレーターの細孔径が縮小し始め、イオン輸送速度が減速し始める。これにより、電池の温度が200℃に達し、セパレーターのシャットダウン構造を形成する前(例えば、温度約150℃)、電池の反応は、既に、減速している。よって、セパレーターがシャットダウンすると、電池の温度は、効果的に、上昇を停止する。
【0070】
更に、高分岐ポリマーの細孔径は、従来公知のセパレーターより小さい。温度が上昇し始めると、高分岐ポリマーの自由体積がすぐに縮小して、イオン輸送がすぐに妨害される。これにより、イオン輸送速度が減速し、電池の反応速度も遅くなる。しかし、通常、セパレーターの細孔径は、リチウムイオンより大幅に大きい。セパレーター内側の気孔は、大きい割合で、イオン輸送を妨げるのに十分な小さいサイズに縮小される。これにより、セパレーターの気孔が完全に塞がるまで、電池のイオン輸送速度が減速しない。また、従来公知のセパレーターの気孔が大き過ぎるので、大量の多孔質構造膜(例えば、PE)が必要である。通常、セパレーター内側の全ての気孔を封止するのに十分なPEが存在しないので、セパレーターの気孔が部分的にシャットダウンされる。
【0071】
更に、従来公知のポリエチレンセパレーターは、シャットダウン温度で溶融し、電池セパレーターとしての機能を失う。しかし、電池温度がシャットダウン温度に達する前に、本発明の高分岐ポリマーの自由体積は、可逆的に調節される。つまり、温度が約70℃に達すると、電池セパレーターの高分岐ポリマーの自由体積が縮小し、電池の反応速度が制限される。これにより、電池温度がシャットダウン温度に達する可能性が減少し、電池の持続時間が長期になる。また、温度が上昇すると、電池のイオン輸送速度を徐々に制御することにより、電池の電流及び電圧も安定する。
【0072】
従来、電池セパレーターに関連する研究は、セパレーターの耐熱温度を上昇させることに集中している。しかし、電池温度が200℃以上に達すると、電極が分解し始め、高温で電解液と反応する。これにより、まだ、電池爆発のリスクが存在する。よって、電池の安全性は、単に、耐熱温度を上昇させるだけでは、効果的に改善されない。一方、本発明の高分岐ポリマーは耐熱材料である。温度が約70℃又は80℃に達すると、高分岐ポリマーを有する電池のイオン輸送速度が遅くなり始める。温度が150℃に達すると、セパレーターは、シャットダウンメカニズムを受けて、電池中で溶媒和リチウムイオンが輸送されるのを妨げる。これにより、電池温度の上昇を減少させたり、温度上昇を回避したりすることができる。その結果、電池の電極は高温で分解されず、電極と電解液との間の酸化還元反応が回避されるので、熱暴走、又は、爆発が発生しない。
【0073】
しかし、電池温度の上昇が維持されても、高分岐ポリマーは、難燃性化学材料、例えば、CO2、NO2等に分解される。これにより、電池の安全性が改善される。
【0074】
上記の理由に加え、高分岐ポリマーを電池セパレーターとする別の長所は、電池の充放電速度を改善することができることである。
【0075】
高分岐ポリマーの超分岐特性は、その分子間の親和性を悪くし、これにより、構造中の気孔が自然に形成される。相対的に、従来公知のドライフィルムプロセスの機械的延伸により形成される電池セパレーターは、大きい細孔径を有し、製造工程で、大きい膜厚さで、破損を防止することが必要である。
【0076】
本発明のある態様では、電池セパレーターは薄く作られ、イオン輸送抵抗が減少する。これにより、電池の充放電速度が改善される。
【0077】
二次電池に用いられる従来公知の電池セパレーターは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等である。用いられる電解液は、例えば、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等である。PE及びPPは、PC及びECに対する湿潤性が不良であるので、電池中のリチウムイオンは、セパレーターを自由に通過することができない。これにより、従来公知の電解液は、50%以上のDECが必要であり、これは、PE及びPPに対して良好な湿潤性を有する。しかし、リチウムは、DEC中における解離定数が小さく、電池で充分なリチウムイオンを放出するために、大量のリチウム塩が必要である。よって、プロセスのコストが増加する。
【0078】
しかし、本発明のある態様では、高分岐を有する電池セパレーターは、電解液に対する良好な湿潤性を有し、これにより、従来公知の電解液組成が変化する。高分岐ポリマーを有するセパレーターを備える二次電池では、電解液は含有するDECが少ない。例えば、電解液のDECは、10%〜50%、好ましくは、20%〜45%である。一例では、電解液組成は、EC:PC:DEC=3:2:5(v:v:v)、EC:PC:DEC=1:1:1(v:v:v)、又は、EC:PC:DEC=2:1:2(v:v:v)である。高分岐ポリマーは電解液への良好な湿潤性を有するので、リチウムイオン輸送速度が増加し、充放電速度が改善される。更に、電解液中のDEC量を減少させることにより、更に多くのリチウムイオンが電解液中に放出され、電気容量も改善される。また、セパレーターの電解液保持力も、高分岐ポリマーにより改善される。
【実施例】
【0079】
実施例1 高分岐ポリマーの製造
高分岐ポリマー−a
2.55g(0.0071M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び0.45g(0.0036M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、97.00gのNMPをリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、48時間反応させ、固形分3.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が90℃〜260℃、最適熱作動温度が140℃〜200℃であることを示した。
【0080】
高分岐ポリマー−b
16.97g(0.0474M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び3.033g(0.0237M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、80.00gのγ−ブチロラクトン(GBL)をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、6時間反応させ、固形分20.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が100℃〜240℃、最適熱作動温度が120℃〜180℃であることを示した。
【0081】
高分岐ポリマー−c
6.36g(0.0178M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び1.14g(0.0089M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。92.50gのNMP:N’,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)(1:1;質量)の混合物をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で反応させ、固形分7.5wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が90℃〜260℃、最適熱作動温度が140℃〜100℃であることを示した。
【0082】
高分岐ポリマー−d
2.55g(0.0071M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び0.45g(0.0039M)のアセチルアセトンを、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、97.00gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、48時間反応させ、固形分3.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が150℃〜250℃、最適熱作動温度が170℃〜210℃であることを示した。
【0083】
高分岐ポリマー−e
2.55g(0.0071M)のポリマレイミド及び0.45g(0.0029M)の1,3−ジメチルバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。97.00gのプロピレンカーボネート及びジエチルカーボネート(DEC)(4:6;容量)の共溶媒をリアクターに加えて、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、48時間反応させ、固形分3.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が170℃〜280℃、最適熱作動温度が190℃〜240℃であることを示した。
【0084】
高分岐ポリマー−f
1.23g(0.0026M)のポリマレイミド及び3.033g(0.0237M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。窒素下、温度130℃で、30分反応させ、窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が180℃〜250℃、最適熱作動温度が190℃〜230℃であることを示した。
【0085】
高分岐ポリマー−g
2.8g(0.0060M)のポリマレイミド及び0.20g(0.0016M)のバルビツール酸を、機械的に攪拌するリアクターに入れた。固体状態で、窒素下、温度130℃で、30分攪拌し(500rmp)、窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が130℃〜240℃、最適熱作動温度が160℃〜220℃であることを示した。
【0086】
高分岐ポリマー−h
2.55g(0.0071M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド、1.54g(0.0071M)の1,4−マレイミド安息香酸、及び、0.91g(0.0071M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。その後、95.00gのNMPをリアクターに加え、攪拌により、反応物を溶解した。窒素下、温度130℃で、24時間反応させ、固形分5.0wt%の窒素含有ポリマーを得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が90℃〜220℃、最適熱作動温度が130℃〜180℃であることを示した。
【0087】
高分岐ポリマー−i
0.85g(0.0024M)のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及び0.15g(0.0012M)のバルビツール酸を、四つ口のリアクター(250mL)に入れた。9gのNMPをリアクターに加え、60℃に加熱した。その後、全ての化合物が溶解するまで、混合物を攪拌した。100gのポリアクリロニトリル(PAN)/N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)溶液(固形分10.0wt%)を混合物に加えた。窒素下、温度130℃で、24時間反応させ、固形分10.0wt%の(PAN−STOBA)−DMAC/NMP溶液を得た。静電紡糸により、膜を繊維形式で形成し、加圧(7N)後、不織布のセパレーターを更に得た。DSC(10℃/min、N2中)は、熱作動温度が180℃〜300℃、最適熱作動温度が240℃〜280℃であることを示した。
【0088】
比較例1
テレフタル酸ポリエチレン(PET)をN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、PET溶液に電荷が誘発され、荷電PET溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケール繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、PET不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0089】
比較例2
ポリプロピレン多孔質構造材料を、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、ポリプロピレン溶液に電荷誘発され、荷電ポリプロピレン溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケール繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、ポリプロピレン不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0090】
比較例3
ポリアニリン多孔質構造材料をN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、ポリアニリン溶液に電荷が誘発され、荷電ポリアニリン溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケールの繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、ポリアニリン不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0091】
比較例4
ポリエチレン多孔質構造材料をN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解して、固形分10wt%の溶液を形成した。紡糸口金における電圧40kVの電極と接触させることにより、ポリエチレン溶液に電荷が誘発され、荷電ポリエチレン溶液の単一ジェットが放出された。荷電ジェットを電場で加速し、細くした。このプロセスで、溶剤が急速に蒸発し、ナノスケール繊維を含む不織布膜が形成された。最後に、加熱加圧成形プロセス(200kg)及び圧延加圧成形プロセス(20kg)を実行し、ポリエチレン不織布セパレーターを形成して、電池セパレーターとした。セパレーターの厚さは、10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0092】
実施例2
PET多孔質構造材料膜を形成し、加圧成形プロセスを行った。その後、PET膜を、高分岐ポリマーを含む溶液中に入れた。溶液の温度を調節し(室温〜100℃)、10分〜6時間反応させた。その後、セパレーターを溶液から取り出して、アセトン、又は、アセトン/メタノール(1:1;容量)により洗浄した。その後、セパレーターを、温度40℃〜80℃で、IRヒーターにより乾燥させた。高分岐ポリマーを有する多孔質構造の不織布のセパレーターが形成された。セパレーターの厚さは、約10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0093】
高分岐ポリマーの分子は、互いの間の親和性に乏しいので、気孔が構造中に自然に形成された。細孔径は、従来公知のセパレーターの細孔径よりも比較的小さく、厚さも薄かった。これにより、電解液中のイオン輸送の抵抗が減少し、充放電速度が改善された。
【0094】
実施例3
ポリプロピレン多孔質構造材料膜を形成し、加圧成形プロセスを実行した。その後、PET膜を、高分岐ポリマーを含む溶液中に入れた。溶液の温度を調節し(室温〜100℃)、10分〜6時間反応させた。その後、セパレーターを溶液から取り出して、アセトン、又は、アセトン/メタノール(1:1;容量)により洗浄した。その後、セパレーターを、温度40℃〜80℃で、IRヒーターにより乾燥させた。高分岐ポリマーを有する多孔質構造の不織布のセパレーターが形成された。セパレーターの厚さは、約10μm〜50μmであった。セパレーターの細孔径は、0.5μm〜2μmであった。
【0095】
実施例4
高分岐ポリマー単量体セットを、ポリアニリンとセルロースとを含む多孔質構造材料溶液に加えた。混合物をリアクターに入れて、溶液の温度を調節した(室温〜150℃)。混合物は、その場で、混合反応を受け、多孔質構造材料及び高分岐ポリマーを均一に混ぜて、溶剤中で、半IPN構造を形成した。静電紡糸により、繊維状の改善されたセパレーターが提供された。セパレーターの細孔径は、約0.2nm〜500nmであり、最適細孔径は、0.3nm〜300nmであった。セパレーターの空隙率は、10%〜80%であり、最適な空隙率は、30%〜60%であった。
【0096】
加圧成形プロセス前後、比較例3の膜の厚さが大幅に変化した。図7Bで示されるように、加熱加圧成形プロセス及び圧延加圧成形プロセスの後、PAN構造が緊密に結合し、溶媒和リチウムイオン輸送に好ましくなかった。一方、図8Bで示される高分岐ポリマーにより改質されるPAN構造に関し、高分岐ポリマー間の反発のため、分子構造間の距離が固定された。これにより、従来公知のセパレーターと比較すると、加圧成形プロセス前後のセパレーターの厚さは、それほど違わない。加圧成形プロセス後、細孔径は小さくなり、空隙率は増加した。また、セパレーター中における気孔のサイズ及び分布は、従来公知のセパレーターの気孔より均一であった。
【0097】
更に、比較例のセパレーターと比較すると、この実施例のセパレーターは、細孔径が小さかった。これにより、電池温度が上昇し始めると、セパレーターの自由体積が縮小し始め、電池のイオン束が減少し始めた。電池温度の上昇が停止し、電池の安全性が改善された。
【0098】
実施例5
ポリプロピレンで形成された多孔質構造膜を、高分岐ポリマー単量体セット溶液に入れた。反応溶液の温度を調節した(室温〜150℃)。表面改質を、その場で、膜表面で実行し、セパレーターの性能を改善した。膜の厚さは、約10μm〜50μmであり、細孔径は、約0.5μm〜2μmであった。
【0099】
比較例1〜4及び実施例2〜5の結果を表1に示す。平均厚さは、ASTM D5947−96に従って測定された。伸張強度は、ASTM D882に従って測定された。ガーレー値は、ASTM D726に従って測定された。最大細孔径及び平均細孔径は、ASTM E128−99に従って測定された。熱収縮は、ASTM D1204に従って測定された。温度安定性は、ASTM D1204に従って測定された。
【0100】
表1を参照すると、高分岐ポリマーを有する電池セパレーターは、優れた伸張強度、熱収縮、及び/又は、温度安定性を有していた。実施例4では、加熱加圧加工後、高分岐ポリマーを有する電池セパレーターは、繊維が細く、セパレーターの空隙率が高くなった。また、溶剤に対するセパレーターのガーレー値及び湿潤性も、従来公知のものより良好であった。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例6
多孔質構造セパレーターを、それぞれ、不織布/PET(表面改質)、不織布/PET(三菱製紙)、又は、不織布/PP(15mg/cm2)から製造した。各多孔質構造膜を加圧し、高分岐ポリマー溶液中に入れた。溶液温度を調節した(室温〜100℃)。表面改質を実行し、セパレーターの性能を改善した。表面改質は、多孔質構造膜の表面をアルカリ化することにより実行した。マレイミド安息香酸の脱水及びグラフト反応は、温度40℃〜80℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で実行した。マレイミド安息香酸は、適切な材料及び構造設計の選択とマルチレベルのグラフト技術の利用とにより、多孔質構造材料の表面上にグラフトさせた。その後、単量体セットをNMPに加え、温度40℃〜80℃のNMP中で、反応を続行し、高分岐ポリマーを、その場で、多孔質構造材料の表面に形成した。また、表面改質を、プラズマプロセスにより実行した。多孔質構造材料の表面は、プラズマにより帯電して、その場で、単量体セットの重合反応を誘発した。
【0103】
高分岐ポリマーは、(表面改質した)PETに対して良好な被覆力を有していた。不織布/PET(三菱製紙)に対する高分岐ポリマーの被覆力は、(表面改質した)PETよりも不良であるが、不織布/PP(15mg/cm2)よりは良好であった。
【0104】
また、ポリアニリン−高分岐ポリマーを有するセパレーターの繊維は、ポリアニリンだけを有するセパレーターの繊維より細かった。また、その空隙率及び均一性も、ポリアニリンだけを有するセパレーターより良好であった。表面改質したセパレーターをSEM−EDXにより分析したところ、窒素含有信号が検出された。この結果は、窒素含有ポリマーが不織布セパレーターの表面にコートされていることを示した。
【0105】
実施例7
比較例及び実施例で形成されたセパレーターを、異なる種類の溶剤に対する湿潤性について試験した。溶剤は、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチレンカーボネート(DMC)、ジエチレンカーボネート(DEC)、EC/PC/DEC(3:2:5;容量)、及び、EC/PC/DEC(2:1:2;容量)を含む。各セパレーターは、異なる溶媒系で、異なる湿潤性を示した。
【0106】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とするセパレーターは、極性溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、及び、プロピレンカーボネート(PC)に対する湿潤性が不良であったが、非極性溶媒、例えば、ジメチレンカーボネート(DMC)及びジエチレンカーボネート(DEC)に対する湿潤性が良好であった。
【0107】
しかし、高分岐ポリマーは、極性溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、及び、プロピレンカーボネート(PC)に対する湿潤性が良好であった。これにより、高分岐ポリマーにより改質されたPE、PP、又は、PETのセパレーターは、溶媒系、例えば、EC/PC/DEC(3:2:5;容量)及びEC/PC/DEC(2:1:2;容量)に対する湿潤性が良好であった。
【0108】
DECに対する高分岐ポリマーの反発により、リチウムイオンが駆動されて、セパレーターを通過する際に、リチウムイオンを囲むDEC分子は、セパレーターの通過を拒否された。これにより、溶媒和リチウムイオンの総容量は小さくなり、イオン輸送の抵抗が減少した。電池におけるイオン輸送が改善された。この結果、高分岐ポリマーを有するセパレーターを含む二次電池は、充放電速度が速かった。
【0109】
実施例8
リチウムニッケルコバルトマンガン陽極板、市販のグラファイト陰極板MCMB2528(大阪ガス)、及び、実施例5で形成された高分岐ポリマーを含む改質された多孔質セパレーターを圧延して、ゼリーロールを形成した。ゼリーロールは、アルミニウムシェルと組み合わせて、503759電池(厚さ:0.5cm;幅:3.7cm;長さ:5.0cm)を形成した。電池の三方を密封し(シーリング条件:約0.4MPa(4.0kgf/cm2),180℃/3sec)、一方は開いたまま維持した。標準的なリチウム電池の電解液(1.1M LiPF6/EC+PC+DEC、EC:PC:DEC=3:2:5(容量))を、開口側から電池に流入させた。その後、空気を電池から排出した後、開口側を密封した(シーリング条件:約0.4MPa(4.0kgf/cm2),180℃/3sec)。電池の電解液量は4.2g/電池であった。最後に、標準生成工程を実行して、リチウム電池を活性化し、リチウム電池試料を提供した。
【0110】
このリチウム電池について、6C/30V電圧放電試験を行った。試験後、陽極板を取り出し、SEM/EDX組成解析を行った。結果を以下に示す。高分岐ポリマーを含むセパレーターを有する陽極板は、陽極材料の酸素の生成及び放出を抑制した。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例9
材料の自由体積を、様々な温度で、陽電子消滅寿命測定装置(PALS)により測定した。実施例1の高分岐ポリマー−a溶液を、アセトン/メタノール(1:1;容量)の溶媒系に徐々に注入し、高分岐ポリマーの微粒子を形成した。0.2μm PTFTのフィルター膜を用いて、溶液をろ過し、フィルター膜上の残りの固形物を、真空オーブン中、60℃で乾燥させた。得られた固形物粉末は、高分岐ポリマーである。
【0113】
高分岐ポリマー、その単量体セットBMI(N,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド;アルドリッチ(Aldrich))、市販のデュポン(DuPont)PI膜(デュポン(DuPont)のカプトン(Kapton)膜、厚さ25μm)、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVDF;アトフィナ(Atofina))膜を、それぞれ、様々な温度で、PALS(放射線源:22Na)により測定した。検出温度は、30℃、70℃、110℃、150℃、190℃、及び、230℃であった。上記材料の自由体積を異なる温度で検出した。その結果を図4に示す。
【0114】
図4は、異なる温度での高分岐ポリマーの自由体積半径を示す。図4に示されるように、高分岐ポリマーの自由体積半径は、室温で、約2.63Åであった。温度が約70℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約3.14Åであった。温度が約150℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約2.97Åであった。温度が約190℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約2.78Åであった。温度が約230℃の場合、高分岐ポリマーの自由体積半径は、約1.73Åであった。
【0115】
ポリイミド(PI)は、線形ポリマーで、温度が上昇すると、その自由体積が、予想通りに、上昇する。PVDFは、通常、多孔質構造材料として用いられ、電極と導電材料とのバインダーとなる。PVDFは、通常、長時間、温度150℃で機能する。図4に示されるように、PVDFは、110℃〜150℃でのアニーリング工程の後、150℃で用いられる。しかし、PVDFの自由体積が温度110℃〜230℃で縮小しても、PVDF膜の気孔は、溶媒和リチウムイオン輸送を阻止するほど小さすぎなかった。これにより、PVDFと比較すると、高分岐ポリマーは、安全で、リチウム電池にとって更に有利な熱的メカニズムを生成する。
【0116】
図4に示されるように、温度が上昇すると、分子鎖の混乱のために、一般のポリマー材料の自由体積も増加した。これは、高分岐ポリマーと同じであり、温度が上昇すると、高分岐ポリマーの自由体積は増加した。しかし、温度が室温から70℃に上昇すると、高分岐ポリマーの自由体積は、最大サイズに達した。温度が150℃に上昇すると、高分岐ポリマーの自由体積は縮小した。つまり、高分岐ポリマーは、その気孔を閉じ始めるので、これにより、電池中のイオン輸送が減少した。温度が230℃に達すると、高分岐ポリマーの自由体積は、溶媒和リチウムイオンが通過できないほど小さくなった。これにより、反応が続行するのを効果的に停止した。
【0117】
従来公知のセパレーター材料、例えば、PI、PVDF、又は、BMIの自由体積は、温度が上昇すると、増加した。これにより、これらの材料は、温度が上昇すると、閉鎖気孔構造を形成しなかった。
【0118】
実施例10
実施例1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸で形成される高分岐ポリマー−aが、様々なモル比で合成された。特定のモル比の単量体セットを、PC溶剤に入れ、完全に溶解するまで攪拌した。PCは、20wt%の固形分を有していた。混合物を130℃まで加熱して、6時間連続で攪拌した。得られた溶液は、高分岐ポリマー溶液であった。
【0119】
純粋なN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミドから形成されたポリマーは、分岐度が0%であった。モル比が10:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が32%であった。モル比が5:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が67%であった。モル比が2:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が84%であった。モル比が1:1のN,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミド及びバルビツール酸から形成されたポリマーは、分岐度が98%であった。
【0120】
上記の高分岐ポリマーと、N,N’−4,4’−ジフェニルメチルビスマレイミドの単量体セットとを、熱重量分析(TGA)法で試験した。試験温度は、窒素下(20mL/min)、室温から800℃であり、温度上昇速度は10℃/分であった。ポリマーが更に小さい分子、例えば、水、又は、溶剤を保持する場合、TGAスペクトルは、ポリマーの重量損失が少ないことを示した。つまり、ポリマーは好ましい電解液保持力を有していた。TGAスペクトルは、高分岐ポリマーの電解液保持力を示し、分岐度が増加すると、電解液保持力も増加した。分岐度が0%のポリマー(図9A)は、電解液保持力が0%であった。分岐度が32%のポリマー(図9B)は、電解液保持力がたった0.72%であった。分岐度が67%のポリマー(図9C)は、電解液保持力が1.66%であった。上記のポリマーは2%より低い電解液保持力を有していた。しかし、ポリマーの分岐度が67%から84%に増加すると(図9D)、その電解液保持力は、1.66%から3.43%に増加した。ポリマーの分岐度が98%に達すると(図9E)、その電解液保持力は4.93%に増加した。
【0121】
本発明では、好ましい実施例を上記の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0122】
102,104,106,202,204,206 ステップ;
302 陽極板;
304 陰極板;
306 セパレーター;
502,602 セパレーター分注リール;
504 高分岐ポリマー溶液;
506,606 赤外線加熱板;
508,608 オーブン;
510,610 セパレーター回収リール;
512,612 ローラー;
604 高分岐ポリマー単量体セット溶液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーと、
多孔質構造材料と、
を含むことを特徴とする電池セパレーター。
【請求項2】
前記多孔質構造材料と前記多孔質高分岐ポリマーが単一膜として形成される請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項3】
前記多孔質高分岐ポリマーが前記多孔質構造材料上にコートされる膜である請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項4】
前記多孔質構造材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項5】
前記多孔質高分岐ポリマーが窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成され、前記窒素含有ポリマーが、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含み、前記ジケトン含有化合物がバルビツール酸(BTA)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項6】
更に、バインダーを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項7】
前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又は、それらの組み合わせである請求項6に記載の電池セパレーター。
【請求項8】
前記電池セパレーターが、0.2nm〜500nmの細孔径、及び、10%〜80%の空隙率を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項9】
前記多孔質高分岐ポリマーの気孔が、70℃以上の温度で縮小を開始する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項10】
多孔質構造膜を提供するステップと、
多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングして、電池セパレーターを形成するステップと、を含み、
前記電池セパレーターが、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件で閉鎖気孔メカニズムを生成する前記多孔質高分岐ポリマーを含むことを特徴とする電池セパレーターの製造方法。
【請求項11】
前記多孔質構造膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせである請求項10に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項12】
前記多孔質高分岐ポリマーが窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成され、前記窒素含有ポリマーが、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含み、前記ジケトン含有化合物がバルビツール酸(BTA)を含む請求項10または11に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項13】
更に、前記多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングする前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質構造膜を表面改質するステップを含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項14】
更に、前記多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングする前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質高分岐ポリマー膜を表面改質するステップを含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項15】
前記多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングする前に、前記高分岐ポリマーとバインダーとを混合するステップを含む請求項10〜14のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項16】
多孔質構造材料と多孔質高分岐ポリマーとを混合し、混合物を形成するステップと、
前記混合物にドライ、又は、ウェットプロセスを実行して、電池セパレーターを形成し、前記電池セパレーターが、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件で閉鎖気孔メカニズムを生成する前記多孔質高分岐ポリマーを含むことを特徴とする電池セパレーターの製造方法。
【請求項17】
前記多孔質構造材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせである請求項16に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項18】
前記多孔質高分岐ポリマーが窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成され、前記窒素含有ポリマーが、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含み、前記ジケトン含有化合物がバルビツール酸(BTA)を含む請求項16または17に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項19】
更に、前記多孔質構造材料と前記多孔質高分岐ポリマーを混合する前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質構造材料を表面改質するステップを含む請求項16〜18のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項20】
更に、前記多孔質構造材料と前記多孔質高分岐ポリマーとを混合する前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質高分岐ポリマーを表面改質するステップを含む請求項16〜18のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項21】
更に、前記混合物に、前記ドライ、又は、ウェットプロセスを実行する前に、前記多孔質高分岐ポリマー、前記多孔質構造材料、及び、バインダーを混合するステップを含む請求項16〜20のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項22】
陰極と陽極と、
前記陰極と前記陽極との間の電解液と、
前記陰極と前記陽極との間に設置され、前記陰極と前記陽極とを分離する請求項1〜9のいずれか1項に記載の電池セパレーターと、
を含むことを特徴とする二次電池。
【請求項1】
150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件下で閉鎖気孔メカニズムを生成する多孔質高分岐ポリマーと、
多孔質構造材料と、
を含むことを特徴とする電池セパレーター。
【請求項2】
前記多孔質構造材料と前記多孔質高分岐ポリマーが単一膜として形成される請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項3】
前記多孔質高分岐ポリマーが前記多孔質構造材料上にコートされる膜である請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項4】
前記多孔質構造材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項5】
前記多孔質高分岐ポリマーが窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成され、前記窒素含有ポリマーが、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含み、前記ジケトン含有化合物がバルビツール酸(BTA)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項6】
更に、バインダーを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項7】
前記バインダーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又は、それらの組み合わせである請求項6に記載の電池セパレーター。
【請求項8】
前記電池セパレーターが、0.2nm〜500nmの細孔径、及び、10%〜80%の空隙率を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項9】
前記多孔質高分岐ポリマーの気孔が、70℃以上の温度で縮小を開始する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電池セパレーター。
【請求項10】
多孔質構造膜を提供するステップと、
多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングして、電池セパレーターを形成するステップと、を含み、
前記電池セパレーターが、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件で閉鎖気孔メカニズムを生成する前記多孔質高分岐ポリマーを含むことを特徴とする電池セパレーターの製造方法。
【請求項11】
前記多孔質構造膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせである請求項10に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項12】
前記多孔質高分岐ポリマーが窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成され、前記窒素含有ポリマーが、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含み、前記ジケトン含有化合物がバルビツール酸(BTA)を含む請求項10または11に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項13】
更に、前記多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングする前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質構造膜を表面改質するステップを含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項14】
更に、前記多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングする前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質高分岐ポリマー膜を表面改質するステップを含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項15】
前記多孔質高分岐ポリマーを前記多孔質構造膜にコーティングする前に、前記高分岐ポリマーとバインダーとを混合するステップを含む請求項10〜14のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項16】
多孔質構造材料と多孔質高分岐ポリマーとを混合し、混合物を形成するステップと、
前記混合物にドライ、又は、ウェットプロセスを実行して、電池セパレーターを形成し、前記電池セパレーターが、150℃以上の温度、20Vの電圧、又は、6Aの電流の少なくとも一つを含む電界効果条件で閉鎖気孔メカニズムを生成する前記多孔質高分岐ポリマーを含むことを特徴とする電池セパレーターの製造方法。
【請求項17】
前記多孔質構造材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリイミド、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、又は、それらの組み合わせである請求項16に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項18】
前記多孔質高分岐ポリマーが窒素含有ポリマーとジケトン含有化合物との反応により形成され、前記窒素含有ポリマーが、アミン、アミド、イミド、マレイミド、イミン、又は、それらの組み合わせを含み、前記ジケトン含有化合物がバルビツール酸(BTA)を含む請求項16または17に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項19】
更に、前記多孔質構造材料と前記多孔質高分岐ポリマーを混合する前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質構造材料を表面改質するステップを含む請求項16〜18のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項20】
更に、前記多孔質構造材料と前記多孔質高分岐ポリマーとを混合する前に、アルカリ化又はプラズマにより、前記多孔質高分岐ポリマーを表面改質するステップを含む請求項16〜18のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項21】
更に、前記混合物に、前記ドライ、又は、ウェットプロセスを実行する前に、前記多孔質高分岐ポリマー、前記多孔質構造材料、及び、バインダーを混合するステップを含む請求項16〜20のいずれか1項に記載の電池セパレーターの製造方法。
【請求項22】
陰極と陽極と、
前記陰極と前記陽極との間の電解液と、
前記陰極と前記陽極との間に設置され、前記陰極と前記陽極とを分離する請求項1〜9のいずれか1項に記載の電池セパレーターと、
を含むことを特徴とする二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【公開番号】特開2012−134145(P2012−134145A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277103(P2011−277103)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
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