説明

電池セル

【課題】電極タブにおける電流の集中を緩和する。
【解決手段】本発明の電池セルは、正極板10と負極板11とが互いに積層された積層電極体3と、正極板10と負極板11の一方の電極板10の外周の周囲に配置され、一方の電極板10と電気的に接続された第1導電部材6と、第1導電部材6と電気的に接続された第1電極端子と、を備える。一方の電極板10は、電極活物質層が設けられた本体部19と、積層電極体3の積層方向と交差する方向の片側に本体部19から延びて第1導電部材6と接触する複数の電極タブ、及び上記片側の反対側に本体部19から延びて第1導電部材6と接触する複数の電極タブを含んだ複数の第1電極タブ20〜27と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルは、電気自動車や定置用電源装置、発電装置などの各種の電気システムに用いられている。電池セルは、セパレータを介して互いに積層された正極板及び負極板からなる積層電極体が、電解液とともに電池容器に収容された構造である。積層電極体は、正極板及び負極板がロール状に捲回された捲回型(特許文献1参照)や、複数の正極板及び複数の負極板が交互に積層された積層型(特許文献2参照)などの形態がある。
【0003】
一般に、電極板(正極板又は負極板)は、電極活物質が塗工された本体部と、積層電極体の積層方向に交差する方向に本体部から延びる帯状の電極タブを有している。電極タブは、通常は電極板の本体部の一箇所に設けられており、外部接続用の電極端子と電気的に接続されている。電池セルの充放電時の電流は、電極端子及び電極タブを介して、電池セルの内部と外部との間で流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−85674号公報
【特許文献2】特開2005−71784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の電池セルは、電極板の本体部と電極端子との間に流れる電流が電極タブに集中することによって、電極板のうちで電極タブに近い部分が局所的に発熱することがある。結果として、電極板が発熱によって局所的に劣化し、寿命が短くなるという問題点がある。また、電極板のうちで電極タブから離れた部分であるほど、蓄えられた電荷が電極タブに流れにくくなり、性能が低下するという問題点もある。これらの問題点は、大電流を利用する電気システムであるほど、影響が大きい。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑み成されたものであって、電極タブへの電流の集中による短寿命化及び性能低下を抑制することができる電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池セルは、正極板と負極板とが交互に積層された積層電極体と、前記正極板と前記負極板の一方の電極板の外周の周囲に配置され、該一方の電極板と電気的に接続された第1導電部材と、前記第1導電部材と電気的に接続された第1電極端子と、を備え、前記一方の電極板は、電極活物質層が設けられた本体部と、前記積層電極体の積層方向と交差する方向に前記本体部片側から延びて前記第1導電部材と接触する複数の電極タブ、及び前記片側の反対側に前記本体部から延びて前記第1導電部材と接触する複数の電極タブを含んだ複数の第1電極タブと、を有する。
【0008】
上記の電池セルにおいて、一方の電極板と電極端子との間を流れる電流は、複数の第1電極タブと複数の第2電極タブとに分散して、本体部と第1導電部との間を流れることになる。したがって、一方の電極板の本体部と電極端子との間に流れる電流の集中が緩和され、一方の電極板の電流の集中による発熱が抑制される。よって、一方の電極板の発熱による劣化が抑制され、電池セルの短寿命化を抑制することができる。また、一方の電極板の発熱が抑制されるので、発熱による電池セルの性能低下を抑制することができる。また、本体部の片側に延びる第1電極タブから離れた部分の本体部に蓄えられた電荷を、片側の反対側に延びる第1電極タブから取出すことができるので、電荷の取り出し効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極タブへの電流の集中による短寿命化及び性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の電池セルの概略構成図である。
【図2】積層電極体を積層方向から見た平面図である。
【図3】積層電極体の積層方向に平行な断面の構造を模式的に示す図である。
【図4】第2実施形態における積層電極体、第1導電部材及び第2導電部材を積層方向から見た平面図である。
【図5】第3実施形態における積層電極体、第1導電部材及び第2導電部材を積層方向の正極板側から見た平面図である。
【図6】第3実施形態における積層電極体、第1導電部材及び第2導電部材を積層方向の負極板側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、各種構造の寸法や縮尺を実際と異ならせていることがある。下記の実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、重複する説明を省略することがある。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電池セルの概略構成図である。図2は、積層電極体を積層方向から見た平面図である。図3は、積層電極体の積層方向に平行な断面の構造を模式的に示す図であり、図2のA−A’線における断面図に相当する。図1〜図3に示すXYZ直交座標系は、いずれも、電池セルとの位置関係が同一である。
【0013】
本実施形態の電池セル1は、積層型のリチウムイオン二次電池である。電池セル1は、箱状の電池容器2と、電池容器2に収容された積層電極体3と、電池容器2に取付けられた第1電極端子4及び第2電極端子5と、電池容器2の内部で積層電極体3と電極端子とを電気的に接続する第1導電部材6及び第2導電部材7と を備える。
【0014】
電池容器2は、開口8aを有する容器本体8と、開口8aを塞いで容器本体8と溶接等で接合された蓋9とを有する。電池容器2は、例えばアルミニウム製である。電池容器2が導電材料で形成されている場合に、電池容器2と積層電極体3の短絡を防止するために、電池容器2と積層電極体3との間にポリプロピレン板等の絶縁性のスペーサが設けられることや、電池容器2の内壁に塗膜等の絶縁膜が設けられることがある。
【0015】
第1電極端子4及び第2電極端子5は、蓋9に取り付けられている。第1電極端子4及び第2電極端子5は、それぞれ、一部が電池容器2の外側に配置されており、他の一部が電池容器2の内部に配置されている。以下、第1電極端子4は正極端子であって第2電極端子5は負極端子であるとして説明するが、第1電極端子4が負極端子であって第2電極端子が正極端子であっても構わない。
【0016】
図2及び図3に示すように、積層電極体3は、一方の電極板10及び他方の電極板11がセパレータ12を介して互いに積層された構造である。以下、一方の電極板10が正極板であって他方の電極板が負極板であるとして説明するが、一方の電極板10が負極板であって他方の電極板が正極板であっても構わない。積層電極体3は、複数の正極板10及び複数の負極板11を有しており、正極板10及び負極板11は交互に繰り返し配置されている。
【0017】
第1導電部材6は、積層電極体3の積層方向の片側(+Y側)に配置されており、第2導電部材7は、積層方向で第1導電部材6とは反対側(−Y側)に配置されている。第1導電部材6は、正極板10の外周の周囲に配置されている。第1導電部材6は、正極板10の外周を環状に囲む枠部13と、枠部13から帯状に延びて正極端子4に接合されたリード部14とを有する。第2導電部材7は、負極板11の外周の周囲に配置されている。第2導電部材7は、負極板11の外周を環状に囲む枠部15と、枠部15から帯状に延びて負極端子5に接合されたリード部16とを有する。
【0018】
正極板10は、アルミニウム等からなるシート状の集電材17を基材として形成されている。正極板10は、コバルト酸リチウムや3元系活物質等からなる電極活物質層18が設けられた本体部19と、本体部19から積層電極体3の積層方向(Y方向)と交差する方向に延びる複数の第1電極タブ20〜27とを有する。複数の正極板10は、いずれも同様の形状及び寸法である。複数の正極板10は、積層方向に重なり合う第1電極タブが束ねられて、第1導電部材6に接合されている。
【0019】
正極板10の本体部19は、その外形が略矩形であり、その両面のほぼ全域に電極活物質層18が設けられている。本体部19は、2組の対辺を有している。第1の対辺は、互いに平行な辺28及び辺29であり、第2の対辺は第1の対辺に直交して互いに平行な辺30及び辺31である。
【0020】
複数の第1電極タブ20〜27は、本体部19における集電材17と一体的に形成されている。複数の第1電極タブ20〜27は、本体部19の外周の各辺から外側に向って延びて、それぞれの先端部が第1導電部材6の枠部13と溶接等で接合されている。なお、図3には、第1電極タブ21及び第1電極タブ23について、第1導電部材6との接合部が図示されているが、他の第1電極タブについても同様である。
【0021】
詳しくは、第1電極タブ20及び第1電極タブ21は、本体部19の辺28から+Z側に延びており、第1電極タブ22及び第1電極タブ23は辺29から−Z側に延びている。第1電極タブ24及び第1電極タブ25は、本体部19の辺30から+X側に延びており、第1電極タブ26及び第1電極タブ27は辺31から−X側に延びている。
【0022】
各第1電極タブの幅は、各第1電極タブを経由して本体部19から正極端子4に至る導電経路の抵抗値が複数の第1電極タブ20〜27に関して均一になるように、複数の第1電極タブ20〜27で異なっている。詳しくは、第1導電部材6の枠部13は、矩形枠状であり、その−X側かつ+Z側の角部32からリード部14が延びている。複数の第1電極タブ20〜27のそれぞれの幅は、第1導電部材6の角部32から離れた位置で枠部13と接合されている電極タブであるほど、各電極タブの延在方向に直交する方向の寸法すなわち幅が太くなっている。
【0023】
負極板11は、銅等からなるシート状の集電材33を基材として形成されている。負極板11は、カーボン等からなる電極活物質層34が設けられた本体部35と、Y方向に交差する方向に本体部35から延びる複数の第2電極タブ36〜43とを有する。複数の負極板11は、いずれも同様の形状及び寸法である。複数の負極板11は、積層方向に重なり合う第2電極タブが束ねられて、第2導電部材7に接合されている。なお、図3には、第2電極タブ37及び第2電極タブ39について、第2導電部材7との接合部が図示されているが、他の第2電極タブについても同様である。
【0024】
本体部35は、その外形が略矩形であり、その両面のほぼ全域に電極活物質層34が設けられている。本体部35は、2組の対辺を有している。第1の対辺は、互いに平行な辺44及び辺45であり、第2の対辺は第1の対辺に直交して互いに平行な辺46及び辺47である。
【0025】
複数の第2電極タブ36〜43は、本体部35における集電材33と一体的に形成されている。複数の第2電極タブ36〜43のそれぞれは、正極板10の複数の第1電極タブ20〜27のいずれとも積層方向(Y方向)にて重なり合わないように配置されており、本体部35の外周の各辺から外側に向って延びている。詳しくは、第2電極タブ36及び第2電極タブ37は、本体部35の辺44から+Z側に延びており、第2電極タブ38及び第2電極タブ39は辺45から−Z側に延びている。第2電極タブ40及び第2電極タブ41は、本体部35の辺46から+X側に延びており、第2電極タブ42及び第2電極タブ43は辺47から−X側に延びている。
【0026】
各第2電極タブの幅は、各第2電極タブを経由して本体部35から負極端子5に至る導電経路の抵抗値が複数の第2電極タブ36〜43に関して均一になるように、複数の第2電極タブ36〜43で異なっている。詳しくは、第2導電部材7の枠部15は、矩形枠状であり、その+X側かつ+Z側の角部48からリード部16が延びている。複数の第2電極タブ36〜43のそれぞれの幅は、第2導電部材7の角部48から離れた位置で枠部15と接合されている電極タブであるほど、各電極タブの延在方向に直交する方向の寸法すなわち幅が太くなっている。
【0027】
以上のような構成の電池セル1において、正極端子4と正極板10の本体部19との間で流れる電流は、本体部19と第1導電部材6との間で複数の第1電極タブ20〜27に分散して流れることになる。したがって、1箇所のみに電極タブが設けられた電極板と比較して、電極タブあたりの電流の集中が緩和され、正極板10が局所的に発熱することが抑制される。よって、正極板10の発熱による正極板10の劣化が抑制され、電池セル1の短寿命化が抑制される。また、負極端子5と負極板11の本体部35との間を流れる電流についても同様に、複数の第2電極タブ36〜43に分散するので、負極板11の局所的な発熱による負極板11の劣化が抑制され、電池セル1の短寿命化がさらに抑制される。
【0028】
ところで、矩形状の本体部の一辺のみに電極タブが設けられた電極板では、この一辺と対辺になる反対側の辺の縁端が、電極板の本体部内で電極タブから最も離れた部位になる。このような部位では、電極タブへの電荷が流れにくくなり、本体部からの電荷の取り出し効率や、本体部への電荷の蓄積の効率が低下する。
【0029】
これに対して、本実施形態では、第1電極タブ20〜27が本体部19の各辺からそれぞれ延びて第1導電部材6と接合されており、また、導電経路の抵抗値が均一になるように第1電極タブ20〜27の幅が設定されている。したがって、対辺の片方の辺のみから電極タブが延びる構成と比較して、電極タブから本体部で最も離れている部位までの距離が半分程度になり、電荷の取り出しや蓄積の効率が改善されるので、電池性能を改善することができる。また、負極板11についても同様に、電荷の取り出しや蓄積の効率が改善されるので、電池性能を格段に改善することができる。
【0030】
また、正極板10における各第1電極タブの幅は、各第1電極タブを経由して本体部19から正極端子4に至る導電経路の抵抗値が複数の第1電極タブ20〜27に関して均一になるように設定されているので、各第1電極タブを流れる電流が複数の第1電極タブ20〜27で均一になる。したがって、電極タブへの電流の集中が格段に緩和される。負極板11についても同様に、各第2電極タブを流れる電流が複数の第2電極タブ36〜43で均一になるので、電極タブへの電流の集中が格段に緩和される。
【0031】
また、複数の第1電極タブ20〜27と複数の第2電極タブ36〜43とが、積層電極体3の積層方向にて重なり合わないように配置されているので、第1電極タブと第2電極タブとに短絡を生じることなく、電極タブを束ねて第1導電部材6又は第2導電部材7に接合することができる。したがって、積層型の電池セルにおいて、複数の第1電極タブと複数の第2電極タブが互いに重なる構成と比較して、複数の第1電極タブ20〜27と第1導電部材6との接続構造や複数の第2電極タブ36〜43と第2導電部材7との接続構造をシンプルにすることができ、複数の電極タブを設けることによる製造効率の低下や短絡による歩留まりの低下を抑制することができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態における積層電極体、第1導電部材及び第2導電部材を積層方向から見た平面図である。図4に示す積層電極体3の正極板10において、第1電極タブ20及び第1電極タブ21は、Z方向にて互いに対向する第1の対辺(辺28及び辺29)のうちの辺28から+Z側に延びている。また、第1電極タブ22及び第1電極タブ23は、辺28に対して対辺になる辺29から−Z側に延びている。すなわち、複数の第1電極タブ20〜23は、2組の対辺のうちで片方の組の対辺のみから、Z方向に延びている。
【0033】
一方で、負極板11の第2電極タブ40及び第2電極タブ41は、X方向にて互いに対向する第2の対辺(辺46及び辺47)のうちの辺46から+X側に延びている。また、第2電極タブ42及び第2電極タブ43は、辺46に対して対辺となる辺47から−X側に延びている。すなわち、複数の第2電極タブ40〜43は、正極板10の本体部19の第1の対辺とは交差する方向にて互いに対向する、負極板11の本体部35の第2の対辺のみからX方向に延びている。
【0034】
第2実施形態の電池セルは、第1実施形態と同様に、一方の電極板の本体部と電極端子との間に流れる電流の集中が緩和され、一方の電極板の電流の集中による発熱が抑制されるため、短寿命化を抑制することができるとともに電池性能を改善することができる。また、本実施形態において、複数の第1電極タブ20〜23が第1の対辺及び第2の対辺のうちの第1の対辺のみから延びており、複数の第2電極タブ40〜43が第1の対辺及び第2の対辺のうちの第2の対辺のみから延びている。したがって、例えば正極板10と負極板11との積層ずれを生じた場合でも、複数の第1電極タブ20〜23と複数の第2電極タブ40〜43とが短絡することがなく、短絡による歩留まりの低下を抑制することができる。
【0035】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図5は、第3実施形態における積層電極体、第1導電部材及び第2導電部材を積層方向の正極板側から見た平面図である。図6は、第3実施形態における積層電極体、第1導電部材及び第2導電部材を積層方向の負極板側から見た平面図である。
【0036】
図5に示す正極板10の本体部19は、積層方向に交差する2方向(X方向及びZ方向)に所定の間隔でストライプ状に形成された電極活物質層18を有している。以下、本体部19で電極活物質が形成された領域を形成領域49とし、本体部19で電極活物質が形成されていない領域を非形成領域50とする。本体部19において、電極活物質層18(形成領域49)の間には、集電材17が露出している。すなわち、本体部19の表面における形成領域49の間は、離散的に配置された非形成領域50になっている。非形成領域50の一部は、本体部19の外周に接している。複数の第1電極タブ51は、本体部19の外周に接している非形成領域50から本体部19の外側に延びて、第1導電部材6と接合されている。なお、正極活物質が形成されていない部位(非形成領域50)は、リチウム電析がされないように絶縁処理(アルミナコート)等がなされている。
【0037】
図6に示す負極板11の本体部35は、積層方向に交差する2方向(X方向及びZ方向)に所定の間隔でストライプ状に形成された電極活物質層18を有している。以下、本体部35で電極活物質が形成された領域を形成領域53とし、本体部35で電極活物質が形成されていない領域を非形成領域54とする。本体部35において、電極活物質層34(形成領域53)の間には、集電材33が露出している。すなわち、本体部35の表面における形成領域53の間は、離散的に配置された非形成領域54になっている。非形成領域54の一部は、本体部35の外周に接している。複数の第2電極タブ52は、本体部35の外周に接している非形成領域54から本体部35の外側に延びて、第2導電部材7と接合されている。負極板11の電極タブ52は、積層方向から見て正極板10の電極タブ51と重ならないように、配置されている。なお、負極活物質が形成されていない部位(非形成領域54)は、リチウム電析がされないように絶縁処理(アルミナコート)等がなされている。
【0038】
第3実施形態において、非形成領域50には電極活物質層18が設けられていないので、非形成領域50では集電材17と電極活物質層18の間の直接的な電荷の移動がなく、複数の第1電極タブ51が非形成領域50から延びているので、複数の第1電極タブ51における電流の集中が格段に緩和される。したがって、第3実施形態の電池セルは、短寿命化を格段に抑制することができるとともに電池性能を改善することができる。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えばリチウムイオン二次電池以外の電池にも適用可能である。また、電極活物質の組成や集電材の材質、電池容器の材質等については、電解液の種類に応じて、適宜変更される。また、積層電極体は、セパレータを介して互いに積層された正極板及び負極板を捲回した形態であって、電池セルがいわゆる捲回型であっても構わない。電池容器の形状については、電池容器に収容される積層電極体の形状等に応じて、適宜変更される。
【0040】
第1実施形態では、本体部19の各辺に第1電極タブが2本ずつ配置されている例を説明したが、第1電極タブの数と第2電極タブの数に限定はない。第2、第3実施形態についても同様に、第1電極タブの数と第2電極タブの数に限定はない。また、第1電極タブ及び第1導電部材は、溶接以外の各種の手法で互いに接合されていてもよい。例えば、第1導電部材が一対の導電板で構成されており、複数の正極板について積層方向に重なる第1電極タブを束ねた電極タブが上記の一対の導電板に挟みこまれて、一対の導電板と接合されていてもよい。
【0041】
第1実施形態では、第1電極タブの幅を複数の第1電極タブで異ならせることによって、各第1電極タブを経由する導電経路の抵抗値を複数の第1電極タブに関して均一にしているが、第1電極タブの長さと厚みの少なくとも一方を複数の第1電極タブで異ならせることによって、導電経路の抵抗値を均一に近づけるようにしてもよい。
【0042】
第2、第3実施形態において、複数の第1電極タブの幅が均一である例を図示しているが、このような構成においても電極タブの電流の集中を緩和する効果は得られる。また、上記の実施形態で説明した各要件は、適宜組み合わせることができる。例えば、第2、第3実施形態において、第1実施形態のように、各第1電極タブの抵抗値を複数の第1電極タブで異ならせて、電極板の本体部と第1電極端子との間の複数の導電経路の抵抗値を均一に近づけるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・電池セル、2・・・電池容器、3・・・積層電極体、4・・・正極端子(第1電極端子)、
5・・・負極端子(第2電極端子)、6・・・第1導電部材、7・・・第2導電部材、
10・・・正極板(一方の電極板)、11・・・負極板(他方の電極板)、18・・・電極活物質層、
20〜27、51・・・第1電極タブ、28、29・・・辺(第1の対辺)、
30、31・・・辺(第2の対辺)、34・・・電極活物質層、36〜43・・・第2電極タブ、
44、45・・・辺(第1の対辺)、46、47・・・辺(第2の対辺)、49・・・形成領域、
50・・・非形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とが互いに積層された積層電極体と、
前記正極板と前記負極板の一方の電極板の外周の周囲に配置され、該一方の電極板と電気的に接続された第1導電部材と、
前記第1導電部材と電気的に接続された第1電極端子と、を備え、
前記一方の電極板は、
電極活物質層が設けられた本体部と、
前記積層電極体の積層方向と交差する方向に前記本体部の片側から延びて前記第1導電部材と接触する複数の電極タブ、及び前記片側の反対側に前記本体部から延びて前記第1導電部材と接触する複数の電極タブを含んだ複数の第1電極タブと、を有することを特徴とする電池セル。
【請求項2】
前記第1電極タブのそれぞれを経由して前記一方の電極板の本体部から前記第1電極端子に至る導電経路の抵抗値が前記複数の第1電極タブに関して均一になるように、各第1電極タブの抵抗値が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記正極板と前記負極板の他方の電極板の外周の周囲に配置され、該他方の電極板と電気的に接続された第2導電部材と、
前記第2導電部材と電気的に接続された第2電極端子と、を備え、
前記他方の電極板は、
電極活物質層が設けられた本体部と、
前記第1電極タブとは前記積層方向で重ならないように配置され、前記積層電極体の積層方向と交差する方向に前記他方の電極板の本体部の片側から延びて前記第2導電部材と接触する複数の電極タブ、及び該片側の反対側に前記本体部から延びて前記第2導電部材と接触する複数の電極タブを含んだ第2電極タブと、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記一方の電極板の本体部と前記他方の電極板の本体部は、それぞれ、一方向に互いに対向する第1の対辺と、前記一方向と交差する方向に互いに対向する第2の対辺を有し、前記複数の第1電極タブは、前記第1の対辺及び前記第2の対辺のうちの前記第1の対辺のみから延びており、前記複数の第2電極タブは、前記第1の対辺及び前記第2の対辺のうちの前記第2の対辺のみから延びていることを特徴とする請求項3に記載の電池セル。
【請求項5】
前記一方の電極板の本体部は、前記電極活物質層が形成された形成領域及び前記電極活物質が形成されない非形成領域からなり、
前記複数の第1電極タブは、前記非形成領域から延びていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204305(P2012−204305A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70766(P2011−70766)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】