電池トレイ
【課題】電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる電池トレイを提供する。
【解決手段】複数の電池9を収納する電池トレイであって、第1のトレイ10と、第1のトレイ10に組み合わされる第2のトレイ20、30とを備えており、第2のトレイ30に複数の開口31が形成されており、電池9は、開口31で囲まれた状態で、電池トレイに直立して収納され、第1のトレイ10の底面に、不燃性の保護部材2が固定されており、保護部材2は、複数の電池9の底部に対応するように配置されている。第1のトレイ10と第2のトレイ20、30とが別部品であるため、第1のトレイ10の形状を簡素化でき、第1のトレイ10には保護部材2を取り付けるための平面部を確保し易く、保護部材2の固定が容易になる。
【解決手段】複数の電池9を収納する電池トレイであって、第1のトレイ10と、第1のトレイ10に組み合わされる第2のトレイ20、30とを備えており、第2のトレイ30に複数の開口31が形成されており、電池9は、開口31で囲まれた状態で、電池トレイに直立して収納され、第1のトレイ10の底面に、不燃性の保護部材2が固定されており、保護部材2は、複数の電池9の底部に対応するように配置されている。第1のトレイ10と第2のトレイ20、30とが別部品であるため、第1のトレイ10の形状を簡素化でき、第1のトレイ10には保護部材2を取り付けるための平面部を確保し易く、保護部材2の固定が容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電池の製造工程において、電池を収納する電池トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造工程においては、電池をトレイに収納した状態で、処理を進める工程がある。また、製造工程間の受渡しや、保管にもトレイが用いられる。例えば特許文献1には、一つのトレイで厚さ又は外径の異なる多品種の電池を収納可能な電池トレイが提案されている。
【0003】
電池の製造工程において、通常、電池の発火が生じることはないが、電池トレイを難燃性材料で形成することにより、電池の発火による電池トレイの燃焼を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−133046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池トレイを積み重ねている場合、電池の発火により電池トレイが溶融すると、発火した電池が電池トレイから脱落し下側の電池トレイに落下する可能性がある。電池が落下すると、落下した電池の火が下側の電池トレイに収納されている電池に燃え移り、燃焼が広がって行く可能性があった。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる電池トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の電池トレイは、複数の電池を収納する電池トレイであって、第1のトレイと、前記第1のトレイに組み合わされる第2のトレイとを備えており、前記第2のトレイに複数の開口が形成されており、前記電池は、前記開口で囲まれた状態で、前記電池トレイに直立して収納され、前記第1のトレイの底面に、不燃性の保護部材が固定されており、前記保護部材は、複数の前記電池の底部に対応するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池トレイの構成図。
【図2】本発明の一実施の形態に係る使用状態における電池トレイ1の斜視図。
【図3】(a)図は下トレイ10の平面図、(b)図は下トレイ10の側面図。
【図4】図3のAA線における断面図。
【図5】(a)図は中間トレイ20の平面図、(b)図は中間トレイ20の側面図。
【図6】(a)図は電池収納部21の平面図、(b)図は(a)図のBB線における断面図。
【図7】(a)図は上トレイ30の平面図、(b)図は上トレイ30の側面図。
【図8】(a)図は開口31の拡大図、(b)図は図8(a)のCC線における断面図。
【図9】(a)図は保護部材2の平面図、(b)図は保護部材2の側面図。
【図10】(a)図は使用状態における電池トレイ1の平面図、(b)図は(a)図に示した電池トレイ1の側面図。
【図11】図10(b)の電池トレイ1をA方向から見た図。
【図12】図10(a)における開口31部分の拡大図。
【図13】図12のDD線における断面図であり、(a)図は角形電池9の充電直前の状態を示す図、(b)図は角形電池9の充電状態を示す図。
【図14】図12のEE線における断面図。
【図15】本発明の一実施の形態に係る保護部材2の取付仕様を示す断面図。
【図16】本発明の別の実施の形態に係る保護部材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電池トレイは、複数の電池の底部に対応するように保護部材が配置されているので、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる。このことにより、電池トレイを積み重ねた場合に、発火した電池が下側の電池トレイに落下し、落下した電池の火が下側の電池トレイに収納されている電池に燃え移ることを防止することができる。また、電池トレイを第1のトレイと第2のトレイとで構成しているので、保護部材を取り付ける第1のトレイの形状を簡素化できる。すなわち、第1のトレイには保護部材を取り付けるための平面部を確保し易く、保護部材の固定が容易になる。
【0011】
前記本発明の電池トレイにおいては、前記第2のトレイは、前記電池を収納する収納部と、前記収納部の奥部に設けた傾斜部とを含み、対向する前記傾斜部同士の間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、前記電池は前記開口で囲まれ、かつ前記傾斜部に当接した状態で前記収納部に直立して収納されることが好ましい。この構成によれば、傾斜部における電池の載置位置の高さを変えながら、厚さや外径の異なる多品種の電池を収納可能にすることができる。この構成では、収納部及び傾斜部は第2のトレイに設けているので、この構成においても、第1のトレイの形状を簡素化でき、保護部材の固定が容易になる。
【0012】
また、前記第2のトレイは、前記開口を形成した上トレイと、前記収納部及び前記傾斜部を形成した中間トレイとで構成されていることが好ましい。この構成によれば、上トレイ及び中間トレイを樹脂成形する場合、それぞれに対応した金型の構造が簡単になる。また、上トレイと中間トレイとの組み合わせを、開口形状や傾斜部の形状の異なるものに変えることにより、収納できる電池の厚さや外径の範囲を広範囲にすることができる。
【0013】
また、前記保護部材は、少なくとも一枚の板状又は網状部材であり、前記保護部材の一枚分は、複数の前記電池の底部に対応していることが好ましい。この構成によれば、一部の電池の発火により下トレイが部分的に溶融しても、発火していない電池に対応した部分で保護部材が下トレイに固定されていれば、保護部材の脱落を防止することができる。
【0014】
また、前記第2のトレイは交換可能であることが好ましい。この構成によれば、第2のトレイの開口形状や傾斜部の形状の異なるものに変えることにより、収納できる電池の厚さのや外径の範囲を広範囲にすることができる。
【0015】
また、前記保護部材に絶縁材が被覆されていることが好ましい。この構成によれば、保護部材を鉄板等の金属製とした場合、電池が保護部材に接触した際の短絡を防止することができる。
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電池トレイの構成図を示している。本図は電池トレイ1を分解した状態を示している。電池トレイ1は、第1のトレイである下トレイ10と、第2のトレイである中間トレイ20及び上トレイ30と、保護部材2とを備えている。後に説明するように、第2のトレイは中間トレイ20を省いてもよく、中間トレイ20と上トレイ30とを一体にしたものでもよい。
【0017】
下トレイ10は、保護部材2が取り付けられた状態で使用される。さらに、使用時には、中間トレイ20は下トレイ10内に収納され、中間トレイ20上に上トレイ30が取り付けられる。
【0018】
図2は、使用状態における電池トレイ1の斜視図を示している。下トレイ10の4辺の内壁に囲まれるように、上トレイ30が取り付けられている。本図の状態では、上トレイ30の裏面側に、中間トレイ20(図1)が収納されていることになる。
【0019】
以下、電池トレイ1を電池トレイ1の構成部品毎に説明する。図3(a)は、下トレイ10の平面図を示しており、図3(b)は、下トレイ10の側面図を示している。図4は、図3のAA線における断面図である。図3(b)に示したように、下トレイ10は立設した側壁11を形成している。図3(a)に示したように、下トレイ10の底部12は4つの側壁11で囲まれている。図4に示したように、側壁11の内側には収納空間15を形成している。収納空間15は、中間トレイ20(図1)を収納する空間である。
【0020】
図3(a)、図4に示したように、下トレイ10の底部12には貫通孔13を形成している。貫通孔13は後に説明するように、電池トレイ1に収納した電池を充電するための電極が挿通する孔である。
【0021】
図5(a)は、中間トレイ20の平面図を示しており、図5(b)は、中間トレイ20の側面図を示している。中間トレイ20には、多数の電池収納部21を設けており、各電池収納部21に角形電池を1個ずつ収納することができる。
【0022】
図6は電池収納部21の拡大図を示している。図6(a)は平面図、図6(b)は、図6(a)のBB線における断面図である。図5(a)では、電池収納部21は傾斜して配置されているが、図6(a)では理解を容易にするため、垂直に図示した。また2点鎖線で収納時の角形電池9を示している。
【0023】
図6(a)において、電池収納部21の幅方向(矢印a方向)における両端部には、貫通孔22を挟むように、傾斜部23が形成されている。本実施の形態では、貫通孔22の形成部分には傾斜部23は形成していない。このため、図6(b)の傾斜部23は、図6(a)の図示において、貫通孔22を挟む傾斜部23のうち、上側の傾斜部23が図示されていることになる。
【0024】
なお、図5、6における電池収納部21は一例であり、傾斜部23を分割せず、傾斜部23に貫通孔22を形成した構成でもよい。
【0025】
図6(b)において、傾斜部23は電池収納部21の奥側(底面側)に形成されており、対向する傾斜面23aと傾斜面23bとをV字状に形成したものである。傾斜面23a、23bは、中間トレイ20の上側に向かうにつれて、傾斜面23aと傾斜面23bとの間隔が広がるように形成されている。傾斜部23上に角形電池9の底面が載置され、傾斜部23によって角形電池9の高さ方向(矢印b方向)の位置が決定されることになる。
【0026】
また、前記の通り、図6(b)の傾斜部23は、図6(a)の図示において、貫通孔22を挟む傾斜部23のうち、上側の傾斜部23が図示されていることになる。角形電池9は、上側の傾斜部23においては、傾斜面23aのみに当接し、下側の傾斜部23においては、傾斜面23bのみに当接して立設状態を保つことができるが、図6(b)の図示のように、傾斜面23aと傾斜面23bの両方に当接している方が収納性は良い。
【0027】
また、傾斜部23はV字状の例で図示しているが、角形電池9が当接しない傾斜部23の底部は曲面状になっていてもよく、水平面を含んでいてもよい。また、角形電池9が当接する傾斜面についても、曲面を含んだ構成も考えられる。すなわち、傾斜部23の断面形状は、完全なV字状に限るものではなく、対向する傾斜面3aと傾斜面3bとの間隔が広がるように形成された部分を含んでいればよい。
【0028】
各電池収納部21には、貫通孔22を設けている。図6(b)に示したように、貫通孔22は中間トレイ20の底部を貫通するように形成されている。中間トレイ20を、図4の下トレイ10に収納した状態では、貫通孔22に下トレイ10の貫通孔13が対応する。化成工程においては、貫通孔13及び貫通孔22に電極を通過させ、この電極と上側から下降させた別の電極とで角形電池9を上下から挟み込み、角形電池9を充電することになる。充電の詳細は後に具体的に説明する。
【0029】
図7は、上トレイ30を示す図である。図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。上トレイ30は、平板状部材に多数の開口31を形成したものである。図5の中間トレイ20と図7の上トレイ30とを組み合わせたときは、開口31の1個分は、中間トレイ20の電池収納部21の1個分に対応することになる。
【0030】
図8は、開口31の拡大図を示している。図8(a)は平面図、図8(b)は、図8(a)のCC線における断面図である。図7(a)では、開口31は傾斜して配置されているが、図8(a)では理解を容易にするため、垂直に図示した。また2点鎖線で収納時の角形電池9を示している。
【0031】
図8(b)に示したように、開口31は、上トレイ30を厚さ方向に貫通するように形成したものである。また、図8(a)に示したように、それぞれ一対の垂直面32,33、水平面34,35、及び傾斜面36,37で囲まれた部分が開口31になっており、開口31は多角形状に形成されている。傾斜面36と37は、開口31の一対の対角位置、すなわち収納した角形電池9の一対の対角位置に配置されている。水平面34、35は、電池の幅方向(矢印a方向)の移動を規制する規制面であり、傾斜面36、37は、電池の2方向(矢印c、d方向)の回転移動のうち、1方向(矢印d方向)の回転移動を規制する規制面である。
【0032】
角形電池9を電池収納部21に収納する際には、角形電池9を開口31の上側から開口31を経て電池収納部21に挿入させることになる。この挿入を容易にするため、開口31の上側にテーパ面38を設けている。図8(a)に示したように、角形電池9は、水平面34,35、及び傾斜面36,37で位置が規制されている。このため、テーパ面38は少なくともこれらの各面に設けるとよい。
【0033】
図9(a)は保護部材2の平面図を示しており、図9(b)は保護部材2の側面図を示している。保護部材2は不燃性部材であり、図9では鉄板の例を示している。図9(a)に示したように、保護部材2には多数の孔3が形成されている。孔3は、下トレイ10の貫通孔13(図3(a)、図4)に対応した孔である。保護部材2にはさらに複数の小孔4が形成されている。小孔4は後に説明するように、リベットを用いて、保護部材2を下トレイ10に取り付けるための孔である。
【0034】
図10は使用状態における電池トレイ1を示している。図10(a)は平面図であり、図10(b)は側面図である。図10(a)は、図2に示した電池トレイ1の平面図に相当し、下トレイ10と上トレイ30との間に中間トレイ20(図1)が収納されている。図10(b)では、上トレイ30は中間トレイ20(図1)の上側に載置されていることになる。上トレイ30の固定は、例えば上トレイ30に位置決めピン設け、これを下トレイ10に設けた位置決め孔に嵌合させるようにすればよい。
【0035】
図11は、電池トレイ1の裏面図であり、図10(b)の電池トレイ1をA方向から見た図に相当する。下トレイ10の裏面には、保護部材2がリベット5により取り付けられている。リベット5は保護部材2の小孔4(図9(a))の位置に打たれている。保護部材2の孔3は、下トレイ10の貫通孔13(図3(a)、図4)に対応している。
【0036】
図12は、図10(a)における開口31部分の拡大図を示している。図13(a)、(b)は、図12のDD線における断面図である。図10(a)では、開口31部分は傾斜して配置されているが、図12では理解を容易にするため、垂直に図示した。また、収納時の角形電池9も図示している。
【0037】
図13(a)に示したように、上トレイ30と下トレイ10との間に中間トレイ20が配置されている。上トレイ30の開口31の1個分に、中間トレイ20の電池収納部21の1個分が対応している。開孔31の上側から角形電池9を挿入すると、角形電池9の底面が傾斜部23の傾斜面23a、23bに当接し、角形電池9は、開口31で囲まれた状態で電池収納部21に収納される。
【0038】
角形電池9の下側では、中間トレイ20の貫通孔22と、下トレイ10の貫通孔13が対応している。また、下トレイ10は貫通孔13を囲む突起14を形成しており、この突起14に保護部材2の孔3が係合している。
【0039】
図13(a)に示したように、化成工程においては、角形電池9の上下にそれぞれ上側電極41、下側電極42がある。充電時には上側電極41は下降し、角形電池9に近づくように移動する。下側電極42は上昇し貫通孔13及び22内を通過して角形電池9に近づくように移動する。図13(b)の状態では、上下の電極41、42が角形電池9を挟み込んでいる。この状態で角形電池9は充電され、充電後は上下の電極41、42は、前記とは逆方向に移動し、角形電池9から離れることになる。
【0040】
図14は、図12のEE線における断面図を示している。本図には、中間トレイ20の電池収納部21の傾斜部23における断面図が示されている。中間トレイ20は樹脂成形品であり、樹脂成形品は成形後の形状安定化を図るため、各部の肉厚はできるだけ均一にする必要がある。このため、傾斜部23の下側には、肉抜き部24を形成している。
【0041】
一方、肉抜き部24を形成したことにより、傾斜部23の下側には平面部は確保できなくなる。また、図6(a)、(b)において、傾斜部23以外の部分に平面部の確保は可能であるが、貫通孔22の形成により確保できる平面部の面積は小さくなる。したがって、中間トレイ20の底部に保護部材2を取り付ける仕様とした場合は、保護部材2の取り付け面の確保が困難になる。
【0042】
本実施の形態では、電池トレイ1を下トレイ10と中間トレイ20と上トレイ30とに分割して構成している。この構成では、下トレイ10と中間トレイ20とは別個独立に成形できる。このため、図3(a)、4に示したように、下トレイ10の底部12の表面及び裏面は、貫通孔13の形成部分を除き平面にすることができる。したがって、下トレイ10には、保護部材2を取り付けるための十分な平面部を確保することが可能になる。
【0043】
図15は、保護部材2の取付仕様を示す断面図である。本図は、図10(a)の電池トレイ1の底部の断面図に相当するが、中間トレイ20の図示は省略している。下トレイ10の貫通孔13を形成する突出部14に、保護部材2の貫通孔3が係合している。
【0044】
図3(a)に示したように、下トレイ10には、貫通孔13に加え貫通孔14を形成している。同様に、図9(a)に示したように、保護部材2には、孔3に加え小孔4を形成している。図15に示したように、下トレイ10の貫通孔14の位置に、保護部材2の小孔4が対応している。貫通孔14及び小4を挿通するように、リベット5が打たれている。リベット5は、保護部材2の複数の小孔4の位置に打たれており、このことにより保護部材2が下トレイ10に固定されている。
【0045】
図15のように、リベット5を打つためには、下トレイ10の底部に平面部が必要になる。前記のように、本実施の形態では、電池収納部21を下トレイ10とは別個の中間トレイ20に形成したことにより、下トレイ10に平面部を確保することを容易にしている。
【0046】
ここで、電池の製造工程において、通常、電池の発火が生じることはないが、電池トレイを難燃性材料で形成することにより、電池の発火による電池トレイの燃焼を防止することができる。しかしながら、電池トレイを積み重ねている場合、電池の発火により電池トレイが溶融すると、発火した電池が電池トレイから脱落し下側の電池トレイに落下する可能性がある。電池が落下すると、落下した電池の火が下側の電池トレイに収納されている電池に燃え移り、燃焼が広がって行く可能性がある。本実施の形態は、保護部材2は、電池トレイが溶融した際の電池の脱落防止用として設けている。このため、電池の発火が生じたとしても、別のトイレに収納した電池に燃え移ることは防止されることになる。
【0047】
また、保護部材2を設けたことにより、電池が発火した場合、電池は落下せず電池が一定の位置に留まった状態で燃焼が収まるようにすることができる。例えば、トレイを難燃性部材で形成しておけば、一個のトレイにおける燃焼の広がりを防止することができる。
【0048】
次に、厚さが異なる角形電池の収納について説明する。図12は、電池収納部2に厚さtの角形電池9を収納した状態を示している。この状態では、図14に示したように、角形電池5は断面V字状の傾斜部23の傾斜面23a、23b上に載置されている。すなわち、角形電池5は傾斜部23上にあり、かつ開口21内にあることにより、直立状態を保っている。
【0049】
一方、図14の2点鎖線で示した角形電池5aは厚さt1であり、厚さtの角形電池5より厚さが大きい。このため、角形電池5aの底面は、角形電池5の底面より上側にある。この場合、図12に示したように、開口21においては、角形電池5aは角形電池5の位置から傾斜している。すなわち、開口21内においては、角形電池5aは角形電池5の位置から回転移動した状態で直立状態を保っていることになる。このため、図12のEE断面である図14においては、角形電池5aの底面は傾斜面23bには当接していないが、図12のFF断面の部分では、角形電池5aの底面は、傾斜面23aには当接せず傾斜面23bに当接していることになる。
【0050】
すなわち、本実施の形態の電池トレイ1によれば、傾斜部23上の載置位置の高さを変え、かつ回転移動することにより厚さの異なる角形電池を収納することが可能になる。この場合、傾斜面23a、23bを備えた電池収納部21が必要となるが、前記の通り、本実施の形態では、電池収納部21を下トレイ10とは別個の中間トレイ20に形成している。このため、下トレイ10の平面部確保は容易になり、保護部材2の取り付けも容易になる。したがって、本実施の形態によれば、多品種の電池を収納可能にするために、傾斜面を備えた電池収納部が必要となる電池トレイにおいても、保護部材の取り付けが容易になり、安全性の確保が容易になる。
【0051】
図16は、保護部材の別の例を示す断面図である。図9に示した保護部材2が板状部材に孔3及び4を形成したものであるのに対し、図16に示した保護部材6は網状部材である。開口7の位置に、図15に示した貫通孔13を囲む突起14が対応し、小孔8に図15に示したリベット5が打たれることになる。
【0052】
図9、図16では、保護部材は一枚の板状又は網状部材の例で説明したが、電池トレイ一つ分の保護部材が複数枚であってもよい。この場合、保護部材の一枚分は、複数の電池の底部に対応していることが好ましい。この構成によれば、一部の電池の発火により下トレイ10が部分的に溶融しても、発火していない電池に対応した部分で保護部材が下トレイ10に固定されていれば、保護部材の脱落を防止することができる。
【0053】
また、保護部材は絶縁材で被覆されている好ましい。このことにより、保護部材を鉄板等の金属製とした場合、電池が保護部材に接触した際の短絡を防止することができる。絶縁材はコーティングしてもよく、貼り付けてもよい。
【0054】
なお、前記実施の形態において、保護部材はリベットで下トレイに固定する例で説明したが、これに限るものではなく、ねじ締め等の各種固定手段を用いればよい。
【0055】
また、保護部材は、下トレイの樹脂成形時に金型内に配置して、下トレイと一体に成形してもよい。この構成によれば、保護部材を別途リベット等の固定手段で固定することが不要となる。
【0056】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、中間トレイを備えた例で説明したが、中間トレイを省いた構成であってもよい。この構成においても、上トレイと下トレイとが別部品であるため、下トレイの形状を簡素化できる。このため、下トレイには保護部材を取り付けるための平面部を確保し易く、保護部材の固定が容易になる。この構成は、上トレイの開口が電池を囲んだ状態で、電池を収納することができる。この場合、上トレイの高さを高くして、電池の高さ方向において、上トレイの開口が電池を囲む範囲を広くしてもよい。
【0057】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、図1に示したように、第2のトレイである中間トレイ20及び上トレイ30とを別部品とした例で説明したが、中間トレイ20と上トレイ30とを一体にしたものでもよい。この場合、図14においいて、開口31の内周面と収納部21の内周面とが同一面上にあるようにすれば、樹脂成形する場合の金型の構造が簡単になる。
【0058】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、厚さの異なる角形電池を収納可能であるが、厚さの範囲は、上トレイの開口の形状により制限を受けることになる。より広範囲な角形電池の厚さに対応するために、開口形状の異なる複数種類の上トレイを用意しておいてもよい。このようにすれば、下トレイは共用しつつ、上トレイを交換するだけで、収納できる角形電池の厚さの範囲を広範囲にすることができる。
【0059】
また、同様に広範囲な角形電池の幅寸法に対応するために、幅方向の開口形状の異なる上トレイを用いることにより、収容できる角形電池の幅の範囲を広範囲にすることができる。さらに、厚さ対応、幅対応の上トレイを組み合わせて使用しても良い。
【0060】
また、前記実施の形態は、角形電池の収納用のトレイの例で説明したが、中間トレイの傾斜面の形状及び上トレイの開口の形状を変えることにより、筒状の電池を収納可能にすることができる。具体的には、図7においてトレイ30の開口31を円形とし、図14において中間トレイ20の傾斜部23を円錐面にすることにより、外径の異なる筒状の電池を収納可能にすることが可能になる。
【0061】
この場合、中間トレイの傾斜部は円錐面に限るものではなく、傾斜部23は上トレイ30の開口31に向かうにつれて広がり、かつ電池の底部を少なくとも3点で支持できる形状であればよく、例えば角錐面でもよい。また、中間トレイ20の傾斜部23は面状に限るものではなく、例えば3本以上のリブを傾斜させたものでもよい。同様に、上トレイ30の開口31についても、円形に限るものではなく、例えば3角形以上の多角形としてもよい。
【0062】
したがって、上トレイ及び中間トレイを交換可能とすることにより、下トレイは共用しつつ、上トレイの開口形状を変えたものに交換したり、中間トレイの傾斜部の形状を変えたものに交換することにより、収納できる電池の厚さや外径の範囲を広範囲にすることができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、化成工程で使用する例で説明したが、用途はこれに限るものではない。例えば製造工程間で電池を受渡す際に用いたり、電池の保管用として用いたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明によれば、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができるので、本発明に係る電池トレイは、例えば化成工程で充電する際のトレイ、製造工程間で受渡す際のトレイ、又は電池の保管用とトレイとして有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 電池トレイ
2,6 保護部材
3 孔
4 小孔
5 リベット
9,9a 角形電池
10 下トレイ
20 中間トレイ
21 電池収納部
23 傾斜部
23a,23b 傾斜面
30 上トレイ
31 開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電池の製造工程において、電池を収納する電池トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造工程においては、電池をトレイに収納した状態で、処理を進める工程がある。また、製造工程間の受渡しや、保管にもトレイが用いられる。例えば特許文献1には、一つのトレイで厚さ又は外径の異なる多品種の電池を収納可能な電池トレイが提案されている。
【0003】
電池の製造工程において、通常、電池の発火が生じることはないが、電池トレイを難燃性材料で形成することにより、電池の発火による電池トレイの燃焼を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−133046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池トレイを積み重ねている場合、電池の発火により電池トレイが溶融すると、発火した電池が電池トレイから脱落し下側の電池トレイに落下する可能性がある。電池が落下すると、落下した電池の火が下側の電池トレイに収納されている電池に燃え移り、燃焼が広がって行く可能性があった。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる電池トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の電池トレイは、複数の電池を収納する電池トレイであって、第1のトレイと、前記第1のトレイに組み合わされる第2のトレイとを備えており、前記第2のトレイに複数の開口が形成されており、前記電池は、前記開口で囲まれた状態で、前記電池トレイに直立して収納され、前記第1のトレイの底面に、不燃性の保護部材が固定されており、前記保護部材は、複数の前記電池の底部に対応するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池トレイの構成図。
【図2】本発明の一実施の形態に係る使用状態における電池トレイ1の斜視図。
【図3】(a)図は下トレイ10の平面図、(b)図は下トレイ10の側面図。
【図4】図3のAA線における断面図。
【図5】(a)図は中間トレイ20の平面図、(b)図は中間トレイ20の側面図。
【図6】(a)図は電池収納部21の平面図、(b)図は(a)図のBB線における断面図。
【図7】(a)図は上トレイ30の平面図、(b)図は上トレイ30の側面図。
【図8】(a)図は開口31の拡大図、(b)図は図8(a)のCC線における断面図。
【図9】(a)図は保護部材2の平面図、(b)図は保護部材2の側面図。
【図10】(a)図は使用状態における電池トレイ1の平面図、(b)図は(a)図に示した電池トレイ1の側面図。
【図11】図10(b)の電池トレイ1をA方向から見た図。
【図12】図10(a)における開口31部分の拡大図。
【図13】図12のDD線における断面図であり、(a)図は角形電池9の充電直前の状態を示す図、(b)図は角形電池9の充電状態を示す図。
【図14】図12のEE線における断面図。
【図15】本発明の一実施の形態に係る保護部材2の取付仕様を示す断面図。
【図16】本発明の別の実施の形態に係る保護部材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電池トレイは、複数の電池の底部に対応するように保護部材が配置されているので、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができる。このことにより、電池トレイを積み重ねた場合に、発火した電池が下側の電池トレイに落下し、落下した電池の火が下側の電池トレイに収納されている電池に燃え移ることを防止することができる。また、電池トレイを第1のトレイと第2のトレイとで構成しているので、保護部材を取り付ける第1のトレイの形状を簡素化できる。すなわち、第1のトレイには保護部材を取り付けるための平面部を確保し易く、保護部材の固定が容易になる。
【0011】
前記本発明の電池トレイにおいては、前記第2のトレイは、前記電池を収納する収納部と、前記収納部の奥部に設けた傾斜部とを含み、対向する前記傾斜部同士の間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、前記電池は前記開口で囲まれ、かつ前記傾斜部に当接した状態で前記収納部に直立して収納されることが好ましい。この構成によれば、傾斜部における電池の載置位置の高さを変えながら、厚さや外径の異なる多品種の電池を収納可能にすることができる。この構成では、収納部及び傾斜部は第2のトレイに設けているので、この構成においても、第1のトレイの形状を簡素化でき、保護部材の固定が容易になる。
【0012】
また、前記第2のトレイは、前記開口を形成した上トレイと、前記収納部及び前記傾斜部を形成した中間トレイとで構成されていることが好ましい。この構成によれば、上トレイ及び中間トレイを樹脂成形する場合、それぞれに対応した金型の構造が簡単になる。また、上トレイと中間トレイとの組み合わせを、開口形状や傾斜部の形状の異なるものに変えることにより、収納できる電池の厚さや外径の範囲を広範囲にすることができる。
【0013】
また、前記保護部材は、少なくとも一枚の板状又は網状部材であり、前記保護部材の一枚分は、複数の前記電池の底部に対応していることが好ましい。この構成によれば、一部の電池の発火により下トレイが部分的に溶融しても、発火していない電池に対応した部分で保護部材が下トレイに固定されていれば、保護部材の脱落を防止することができる。
【0014】
また、前記第2のトレイは交換可能であることが好ましい。この構成によれば、第2のトレイの開口形状や傾斜部の形状の異なるものに変えることにより、収納できる電池の厚さのや外径の範囲を広範囲にすることができる。
【0015】
また、前記保護部材に絶縁材が被覆されていることが好ましい。この構成によれば、保護部材を鉄板等の金属製とした場合、電池が保護部材に接触した際の短絡を防止することができる。
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電池トレイの構成図を示している。本図は電池トレイ1を分解した状態を示している。電池トレイ1は、第1のトレイである下トレイ10と、第2のトレイである中間トレイ20及び上トレイ30と、保護部材2とを備えている。後に説明するように、第2のトレイは中間トレイ20を省いてもよく、中間トレイ20と上トレイ30とを一体にしたものでもよい。
【0017】
下トレイ10は、保護部材2が取り付けられた状態で使用される。さらに、使用時には、中間トレイ20は下トレイ10内に収納され、中間トレイ20上に上トレイ30が取り付けられる。
【0018】
図2は、使用状態における電池トレイ1の斜視図を示している。下トレイ10の4辺の内壁に囲まれるように、上トレイ30が取り付けられている。本図の状態では、上トレイ30の裏面側に、中間トレイ20(図1)が収納されていることになる。
【0019】
以下、電池トレイ1を電池トレイ1の構成部品毎に説明する。図3(a)は、下トレイ10の平面図を示しており、図3(b)は、下トレイ10の側面図を示している。図4は、図3のAA線における断面図である。図3(b)に示したように、下トレイ10は立設した側壁11を形成している。図3(a)に示したように、下トレイ10の底部12は4つの側壁11で囲まれている。図4に示したように、側壁11の内側には収納空間15を形成している。収納空間15は、中間トレイ20(図1)を収納する空間である。
【0020】
図3(a)、図4に示したように、下トレイ10の底部12には貫通孔13を形成している。貫通孔13は後に説明するように、電池トレイ1に収納した電池を充電するための電極が挿通する孔である。
【0021】
図5(a)は、中間トレイ20の平面図を示しており、図5(b)は、中間トレイ20の側面図を示している。中間トレイ20には、多数の電池収納部21を設けており、各電池収納部21に角形電池を1個ずつ収納することができる。
【0022】
図6は電池収納部21の拡大図を示している。図6(a)は平面図、図6(b)は、図6(a)のBB線における断面図である。図5(a)では、電池収納部21は傾斜して配置されているが、図6(a)では理解を容易にするため、垂直に図示した。また2点鎖線で収納時の角形電池9を示している。
【0023】
図6(a)において、電池収納部21の幅方向(矢印a方向)における両端部には、貫通孔22を挟むように、傾斜部23が形成されている。本実施の形態では、貫通孔22の形成部分には傾斜部23は形成していない。このため、図6(b)の傾斜部23は、図6(a)の図示において、貫通孔22を挟む傾斜部23のうち、上側の傾斜部23が図示されていることになる。
【0024】
なお、図5、6における電池収納部21は一例であり、傾斜部23を分割せず、傾斜部23に貫通孔22を形成した構成でもよい。
【0025】
図6(b)において、傾斜部23は電池収納部21の奥側(底面側)に形成されており、対向する傾斜面23aと傾斜面23bとをV字状に形成したものである。傾斜面23a、23bは、中間トレイ20の上側に向かうにつれて、傾斜面23aと傾斜面23bとの間隔が広がるように形成されている。傾斜部23上に角形電池9の底面が載置され、傾斜部23によって角形電池9の高さ方向(矢印b方向)の位置が決定されることになる。
【0026】
また、前記の通り、図6(b)の傾斜部23は、図6(a)の図示において、貫通孔22を挟む傾斜部23のうち、上側の傾斜部23が図示されていることになる。角形電池9は、上側の傾斜部23においては、傾斜面23aのみに当接し、下側の傾斜部23においては、傾斜面23bのみに当接して立設状態を保つことができるが、図6(b)の図示のように、傾斜面23aと傾斜面23bの両方に当接している方が収納性は良い。
【0027】
また、傾斜部23はV字状の例で図示しているが、角形電池9が当接しない傾斜部23の底部は曲面状になっていてもよく、水平面を含んでいてもよい。また、角形電池9が当接する傾斜面についても、曲面を含んだ構成も考えられる。すなわち、傾斜部23の断面形状は、完全なV字状に限るものではなく、対向する傾斜面3aと傾斜面3bとの間隔が広がるように形成された部分を含んでいればよい。
【0028】
各電池収納部21には、貫通孔22を設けている。図6(b)に示したように、貫通孔22は中間トレイ20の底部を貫通するように形成されている。中間トレイ20を、図4の下トレイ10に収納した状態では、貫通孔22に下トレイ10の貫通孔13が対応する。化成工程においては、貫通孔13及び貫通孔22に電極を通過させ、この電極と上側から下降させた別の電極とで角形電池9を上下から挟み込み、角形電池9を充電することになる。充電の詳細は後に具体的に説明する。
【0029】
図7は、上トレイ30を示す図である。図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。上トレイ30は、平板状部材に多数の開口31を形成したものである。図5の中間トレイ20と図7の上トレイ30とを組み合わせたときは、開口31の1個分は、中間トレイ20の電池収納部21の1個分に対応することになる。
【0030】
図8は、開口31の拡大図を示している。図8(a)は平面図、図8(b)は、図8(a)のCC線における断面図である。図7(a)では、開口31は傾斜して配置されているが、図8(a)では理解を容易にするため、垂直に図示した。また2点鎖線で収納時の角形電池9を示している。
【0031】
図8(b)に示したように、開口31は、上トレイ30を厚さ方向に貫通するように形成したものである。また、図8(a)に示したように、それぞれ一対の垂直面32,33、水平面34,35、及び傾斜面36,37で囲まれた部分が開口31になっており、開口31は多角形状に形成されている。傾斜面36と37は、開口31の一対の対角位置、すなわち収納した角形電池9の一対の対角位置に配置されている。水平面34、35は、電池の幅方向(矢印a方向)の移動を規制する規制面であり、傾斜面36、37は、電池の2方向(矢印c、d方向)の回転移動のうち、1方向(矢印d方向)の回転移動を規制する規制面である。
【0032】
角形電池9を電池収納部21に収納する際には、角形電池9を開口31の上側から開口31を経て電池収納部21に挿入させることになる。この挿入を容易にするため、開口31の上側にテーパ面38を設けている。図8(a)に示したように、角形電池9は、水平面34,35、及び傾斜面36,37で位置が規制されている。このため、テーパ面38は少なくともこれらの各面に設けるとよい。
【0033】
図9(a)は保護部材2の平面図を示しており、図9(b)は保護部材2の側面図を示している。保護部材2は不燃性部材であり、図9では鉄板の例を示している。図9(a)に示したように、保護部材2には多数の孔3が形成されている。孔3は、下トレイ10の貫通孔13(図3(a)、図4)に対応した孔である。保護部材2にはさらに複数の小孔4が形成されている。小孔4は後に説明するように、リベットを用いて、保護部材2を下トレイ10に取り付けるための孔である。
【0034】
図10は使用状態における電池トレイ1を示している。図10(a)は平面図であり、図10(b)は側面図である。図10(a)は、図2に示した電池トレイ1の平面図に相当し、下トレイ10と上トレイ30との間に中間トレイ20(図1)が収納されている。図10(b)では、上トレイ30は中間トレイ20(図1)の上側に載置されていることになる。上トレイ30の固定は、例えば上トレイ30に位置決めピン設け、これを下トレイ10に設けた位置決め孔に嵌合させるようにすればよい。
【0035】
図11は、電池トレイ1の裏面図であり、図10(b)の電池トレイ1をA方向から見た図に相当する。下トレイ10の裏面には、保護部材2がリベット5により取り付けられている。リベット5は保護部材2の小孔4(図9(a))の位置に打たれている。保護部材2の孔3は、下トレイ10の貫通孔13(図3(a)、図4)に対応している。
【0036】
図12は、図10(a)における開口31部分の拡大図を示している。図13(a)、(b)は、図12のDD線における断面図である。図10(a)では、開口31部分は傾斜して配置されているが、図12では理解を容易にするため、垂直に図示した。また、収納時の角形電池9も図示している。
【0037】
図13(a)に示したように、上トレイ30と下トレイ10との間に中間トレイ20が配置されている。上トレイ30の開口31の1個分に、中間トレイ20の電池収納部21の1個分が対応している。開孔31の上側から角形電池9を挿入すると、角形電池9の底面が傾斜部23の傾斜面23a、23bに当接し、角形電池9は、開口31で囲まれた状態で電池収納部21に収納される。
【0038】
角形電池9の下側では、中間トレイ20の貫通孔22と、下トレイ10の貫通孔13が対応している。また、下トレイ10は貫通孔13を囲む突起14を形成しており、この突起14に保護部材2の孔3が係合している。
【0039】
図13(a)に示したように、化成工程においては、角形電池9の上下にそれぞれ上側電極41、下側電極42がある。充電時には上側電極41は下降し、角形電池9に近づくように移動する。下側電極42は上昇し貫通孔13及び22内を通過して角形電池9に近づくように移動する。図13(b)の状態では、上下の電極41、42が角形電池9を挟み込んでいる。この状態で角形電池9は充電され、充電後は上下の電極41、42は、前記とは逆方向に移動し、角形電池9から離れることになる。
【0040】
図14は、図12のEE線における断面図を示している。本図には、中間トレイ20の電池収納部21の傾斜部23における断面図が示されている。中間トレイ20は樹脂成形品であり、樹脂成形品は成形後の形状安定化を図るため、各部の肉厚はできるだけ均一にする必要がある。このため、傾斜部23の下側には、肉抜き部24を形成している。
【0041】
一方、肉抜き部24を形成したことにより、傾斜部23の下側には平面部は確保できなくなる。また、図6(a)、(b)において、傾斜部23以外の部分に平面部の確保は可能であるが、貫通孔22の形成により確保できる平面部の面積は小さくなる。したがって、中間トレイ20の底部に保護部材2を取り付ける仕様とした場合は、保護部材2の取り付け面の確保が困難になる。
【0042】
本実施の形態では、電池トレイ1を下トレイ10と中間トレイ20と上トレイ30とに分割して構成している。この構成では、下トレイ10と中間トレイ20とは別個独立に成形できる。このため、図3(a)、4に示したように、下トレイ10の底部12の表面及び裏面は、貫通孔13の形成部分を除き平面にすることができる。したがって、下トレイ10には、保護部材2を取り付けるための十分な平面部を確保することが可能になる。
【0043】
図15は、保護部材2の取付仕様を示す断面図である。本図は、図10(a)の電池トレイ1の底部の断面図に相当するが、中間トレイ20の図示は省略している。下トレイ10の貫通孔13を形成する突出部14に、保護部材2の貫通孔3が係合している。
【0044】
図3(a)に示したように、下トレイ10には、貫通孔13に加え貫通孔14を形成している。同様に、図9(a)に示したように、保護部材2には、孔3に加え小孔4を形成している。図15に示したように、下トレイ10の貫通孔14の位置に、保護部材2の小孔4が対応している。貫通孔14及び小4を挿通するように、リベット5が打たれている。リベット5は、保護部材2の複数の小孔4の位置に打たれており、このことにより保護部材2が下トレイ10に固定されている。
【0045】
図15のように、リベット5を打つためには、下トレイ10の底部に平面部が必要になる。前記のように、本実施の形態では、電池収納部21を下トレイ10とは別個の中間トレイ20に形成したことにより、下トレイ10に平面部を確保することを容易にしている。
【0046】
ここで、電池の製造工程において、通常、電池の発火が生じることはないが、電池トレイを難燃性材料で形成することにより、電池の発火による電池トレイの燃焼を防止することができる。しかしながら、電池トレイを積み重ねている場合、電池の発火により電池トレイが溶融すると、発火した電池が電池トレイから脱落し下側の電池トレイに落下する可能性がある。電池が落下すると、落下した電池の火が下側の電池トレイに収納されている電池に燃え移り、燃焼が広がって行く可能性がある。本実施の形態は、保護部材2は、電池トレイが溶融した際の電池の脱落防止用として設けている。このため、電池の発火が生じたとしても、別のトイレに収納した電池に燃え移ることは防止されることになる。
【0047】
また、保護部材2を設けたことにより、電池が発火した場合、電池は落下せず電池が一定の位置に留まった状態で燃焼が収まるようにすることができる。例えば、トレイを難燃性部材で形成しておけば、一個のトレイにおける燃焼の広がりを防止することができる。
【0048】
次に、厚さが異なる角形電池の収納について説明する。図12は、電池収納部2に厚さtの角形電池9を収納した状態を示している。この状態では、図14に示したように、角形電池5は断面V字状の傾斜部23の傾斜面23a、23b上に載置されている。すなわち、角形電池5は傾斜部23上にあり、かつ開口21内にあることにより、直立状態を保っている。
【0049】
一方、図14の2点鎖線で示した角形電池5aは厚さt1であり、厚さtの角形電池5より厚さが大きい。このため、角形電池5aの底面は、角形電池5の底面より上側にある。この場合、図12に示したように、開口21においては、角形電池5aは角形電池5の位置から傾斜している。すなわち、開口21内においては、角形電池5aは角形電池5の位置から回転移動した状態で直立状態を保っていることになる。このため、図12のEE断面である図14においては、角形電池5aの底面は傾斜面23bには当接していないが、図12のFF断面の部分では、角形電池5aの底面は、傾斜面23aには当接せず傾斜面23bに当接していることになる。
【0050】
すなわち、本実施の形態の電池トレイ1によれば、傾斜部23上の載置位置の高さを変え、かつ回転移動することにより厚さの異なる角形電池を収納することが可能になる。この場合、傾斜面23a、23bを備えた電池収納部21が必要となるが、前記の通り、本実施の形態では、電池収納部21を下トレイ10とは別個の中間トレイ20に形成している。このため、下トレイ10の平面部確保は容易になり、保護部材2の取り付けも容易になる。したがって、本実施の形態によれば、多品種の電池を収納可能にするために、傾斜面を備えた電池収納部が必要となる電池トレイにおいても、保護部材の取り付けが容易になり、安全性の確保が容易になる。
【0051】
図16は、保護部材の別の例を示す断面図である。図9に示した保護部材2が板状部材に孔3及び4を形成したものであるのに対し、図16に示した保護部材6は網状部材である。開口7の位置に、図15に示した貫通孔13を囲む突起14が対応し、小孔8に図15に示したリベット5が打たれることになる。
【0052】
図9、図16では、保護部材は一枚の板状又は網状部材の例で説明したが、電池トレイ一つ分の保護部材が複数枚であってもよい。この場合、保護部材の一枚分は、複数の電池の底部に対応していることが好ましい。この構成によれば、一部の電池の発火により下トレイ10が部分的に溶融しても、発火していない電池に対応した部分で保護部材が下トレイ10に固定されていれば、保護部材の脱落を防止することができる。
【0053】
また、保護部材は絶縁材で被覆されている好ましい。このことにより、保護部材を鉄板等の金属製とした場合、電池が保護部材に接触した際の短絡を防止することができる。絶縁材はコーティングしてもよく、貼り付けてもよい。
【0054】
なお、前記実施の形態において、保護部材はリベットで下トレイに固定する例で説明したが、これに限るものではなく、ねじ締め等の各種固定手段を用いればよい。
【0055】
また、保護部材は、下トレイの樹脂成形時に金型内に配置して、下トレイと一体に成形してもよい。この構成によれば、保護部材を別途リベット等の固定手段で固定することが不要となる。
【0056】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、中間トレイを備えた例で説明したが、中間トレイを省いた構成であってもよい。この構成においても、上トレイと下トレイとが別部品であるため、下トレイの形状を簡素化できる。このため、下トレイには保護部材を取り付けるための平面部を確保し易く、保護部材の固定が容易になる。この構成は、上トレイの開口が電池を囲んだ状態で、電池を収納することができる。この場合、上トレイの高さを高くして、電池の高さ方向において、上トレイの開口が電池を囲む範囲を広くしてもよい。
【0057】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、図1に示したように、第2のトレイである中間トレイ20及び上トレイ30とを別部品とした例で説明したが、中間トレイ20と上トレイ30とを一体にしたものでもよい。この場合、図14においいて、開口31の内周面と収納部21の内周面とが同一面上にあるようにすれば、樹脂成形する場合の金型の構造が簡単になる。
【0058】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、厚さの異なる角形電池を収納可能であるが、厚さの範囲は、上トレイの開口の形状により制限を受けることになる。より広範囲な角形電池の厚さに対応するために、開口形状の異なる複数種類の上トレイを用意しておいてもよい。このようにすれば、下トレイは共用しつつ、上トレイを交換するだけで、収納できる角形電池の厚さの範囲を広範囲にすることができる。
【0059】
また、同様に広範囲な角形電池の幅寸法に対応するために、幅方向の開口形状の異なる上トレイを用いることにより、収容できる角形電池の幅の範囲を広範囲にすることができる。さらに、厚さ対応、幅対応の上トレイを組み合わせて使用しても良い。
【0060】
また、前記実施の形態は、角形電池の収納用のトレイの例で説明したが、中間トレイの傾斜面の形状及び上トレイの開口の形状を変えることにより、筒状の電池を収納可能にすることができる。具体的には、図7においてトレイ30の開口31を円形とし、図14において中間トレイ20の傾斜部23を円錐面にすることにより、外径の異なる筒状の電池を収納可能にすることが可能になる。
【0061】
この場合、中間トレイの傾斜部は円錐面に限るものではなく、傾斜部23は上トレイ30の開口31に向かうにつれて広がり、かつ電池の底部を少なくとも3点で支持できる形状であればよく、例えば角錐面でもよい。また、中間トレイ20の傾斜部23は面状に限るものではなく、例えば3本以上のリブを傾斜させたものでもよい。同様に、上トレイ30の開口31についても、円形に限るものではなく、例えば3角形以上の多角形としてもよい。
【0062】
したがって、上トレイ及び中間トレイを交換可能とすることにより、下トレイは共用しつつ、上トレイの開口形状を変えたものに交換したり、中間トレイの傾斜部の形状を変えたものに交換することにより、収納できる電池の厚さや外径の範囲を広範囲にすることができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、化成工程で使用する例で説明したが、用途はこれに限るものではない。例えば製造工程間で電池を受渡す際に用いたり、電池の保管用として用いたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明によれば、電池トレイが溶融した際の電池の脱落を防止することができるので、本発明に係る電池トレイは、例えば化成工程で充電する際のトレイ、製造工程間で受渡す際のトレイ、又は電池の保管用とトレイとして有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 電池トレイ
2,6 保護部材
3 孔
4 小孔
5 リベット
9,9a 角形電池
10 下トレイ
20 中間トレイ
21 電池収納部
23 傾斜部
23a,23b 傾斜面
30 上トレイ
31 開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を収納する電池トレイであって、
第1のトレイと、
前記第1のトレイに組み合わされる第2のトレイとを備えており、
前記第2のトレイに複数の開口が形成されており、
前記電池は、前記開口で囲まれた状態で、前記電池トレイに直立して収納され、
前記第1のトレイの底面に、不燃性の保護部材が固定されており、
前記保護部材は、複数の前記電池の底部に対応するように配置されていることを特徴とする電池トレイ。
【請求項2】
前記第2のトレイは、前記電池を収納する収納部と、前記収納部の奥部に設けた傾斜部とを含み、対向する前記傾斜部同士の間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、前記電池は前記開口で囲まれ、かつ前記傾斜部に当接した状態で前記収納部に直立して収納される請求項1に記載の電池トレイ。
【請求項3】
前記第2のトレイは、前記開口を形成した上トレイと、前記収納部及び前記傾斜部を形成した中間トレイとで構成されている請求項2に記載の電池トレイ。
【請求項4】
前記保護部材は、少なくとも一枚の板状又は網状部材であり、前記保護部材の一枚分は、複数の前記電池の底部に対応している請求項1から3のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項5】
前記第2のトレイは交換可能である請求項1から4のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項6】
前記保護部材に絶縁材が被覆されている請求項1から5のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項1】
複数の電池を収納する電池トレイであって、
第1のトレイと、
前記第1のトレイに組み合わされる第2のトレイとを備えており、
前記第2のトレイに複数の開口が形成されており、
前記電池は、前記開口で囲まれた状態で、前記電池トレイに直立して収納され、
前記第1のトレイの底面に、不燃性の保護部材が固定されており、
前記保護部材は、複数の前記電池の底部に対応するように配置されていることを特徴とする電池トレイ。
【請求項2】
前記第2のトレイは、前記電池を収納する収納部と、前記収納部の奥部に設けた傾斜部とを含み、対向する前記傾斜部同士の間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、前記電池は前記開口で囲まれ、かつ前記傾斜部に当接した状態で前記収納部に直立して収納される請求項1に記載の電池トレイ。
【請求項3】
前記第2のトレイは、前記開口を形成した上トレイと、前記収納部及び前記傾斜部を形成した中間トレイとで構成されている請求項2に記載の電池トレイ。
【請求項4】
前記保護部材は、少なくとも一枚の板状又は網状部材であり、前記保護部材の一枚分は、複数の前記電池の底部に対応している請求項1から3のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項5】
前記第2のトレイは交換可能である請求項1から4のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項6】
前記保護部材に絶縁材が被覆されている請求項1から5のいずれかに記載の電池トレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−148523(P2011−148523A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10984(P2010−10984)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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