説明

電池パック

【課題】外装体を工夫することにより外観寸法精度の向上を図るとともに、外装体に機械的強度を付与することで耐衝撃性を向上させ、高い信頼性の発揮を期待できる電池パックを提供する。
【解決手段】円筒型素電池10にリード板14、150aを用いて保護回路基板16およびPTC素子本体150bを電気的に接続する。ホルダーとして、剛性を持つ一対のケース部材(第一部材19aおよび第二部材19b)を用い、素電池10の長手方向両端側から素電池10と保護回路基板16を内包する。このとき側面部194、196に配された嵌合爪195a、195b、嵌合溝193a、193b同士を互いに嵌合させる。ホルダーの外表面に、素電池の長手より短い外装ラベル20を巻回し、電池パック1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池パックに関し、特に機械的強度および寸法精度の向上を図るための改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PDAや車載盗難防止装置等の小型電子機器の電源として、繰り返し充電が可能な二次電池、特に高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が電源として幅広く用いられている。リチウムイオン二次電池は、充放電および電流などを制御・管理し、安全性を確保するため、保護回路基板および安全素子などと組み合わされて電池パックとして用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来例の電池パックの構成を図7に示す。図7(a)の電池パック1Xは、いわゆる1直1並接続型であり、当図(b)に示す如く、1本の円筒型リチウムイオン二次電池10に保護回路基板16が接続される。素電池10の長手方向両端には絶縁板12a、12bが配設され、保護回路基板16が板状ホルダー23の上面に載置された状態で、ホルダー23が素電池10の側面に配設される。これらの構成要素が、保護回路基板16に接続したリード線17a、17b、17c、外部コネクター18を露出させつつ、熱収縮材料からなる外装チューブ21で被覆される。外装チューブ21は電池パック1Xの外装体であるため、素電池10および絶縁板12a、12bの全体を覆うように被覆させる。外装チューブ21の表面には表示用ラベル22が貼られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−269193号公報
【特許文献2】特開2010−140783号公報
【特許文献3】特開2005−135769号公報
【特許文献4】特開平7−25188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例の電池パック1Xでは、外装体が柔軟な外装チューブ21であるため、素電池10および保護回路基板16を保護する機能が低く、機械的強度が十分でない。特に保護回路基板16の上面付近は、外装チューブ21を介して外部からの衝撃が加わった際、外装チューブ21越しに保護回路基板16に大きな衝撃が伝達され、比較的容易に損傷したり、短絡等を発生するおそれがある。
【0006】
また電池パック1Xでは図7(b)のように、通常、素電池10の長手方向両端部に外装チューブ21の部分が突出して熱収縮した部分(突出部21a、21b)が発生する。このような突出部21a、21bはサイズもまちまちであり、電池パック1Xの外形寸法の精度を下げる原因となり、給電対象機器側の電池パックの収納スペースを正確に設計できない。このため現状では、電池パック10Xに対して広めの収納スペースを機器内に確保し、スポンジ等のクッション部材を介して電池パック1Xを収納・位置決めする対策がなされているが、スペース効率化を図る上で制約が大きいため改善が求められている。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、外装体を工夫することにより電池パックの外観寸法の精度向上を図るとともに、外装体に機械的強度を付与して耐衝撃性を向上させ、高い信頼性を期待できる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、円筒型の素電池と当該素電池に電気的に接続された回路基板とがホルダーに内包された電池パックであって、前記ホルダーは、前記素電池の第一極性端子周辺を覆う端部及び当該端部に連接されて前記素電池周面を部分的に覆う前記側面部とを有する第一部材と、前記素電池の第二極性端子周辺を覆う端部及び当該端部に連接されて前記素電池周面を部分的に覆う前記側面部とを有する第二部材とからなり、前記第一部材及び前記第二部材の各側面部には、当該両部材同士で嵌合可能な嵌合部が形成され、前記回路基板が、前記素電池の周面といずれかの前記部材の前記側面部の間に挟まれた状態で、前記第一部材及び前記第二部材における前記嵌合部同士が互いに嵌合し、前記素電池の周面には前記ホルダーを介して外装ラベルが配され、前記素電池の長手方向両端部に対応する前記各部材の前記端部の領域が外部露出されている構成とした。
【0009】
ここで、前記第一部材の前記嵌合部は嵌合溝であり、前記第二部材の前記嵌合部は嵌合爪である構成とすることもできる。
また、前記第一部材及び前記第二部材は射出成形されたものであり、前記第一部材及び前記第二部材の成形に用いる射出成形金型の抜き方向が、前記第一部材の前記嵌合溝の凹入方向及び前記第二部材の前記嵌合爪の突出方向の両方に対してそれぞれ垂直方向である構成とすれば、生産コストや生産効率等の面において有利である。
【0010】
また、前記回路基板にはリード線が接続され、前記素電池の各極性端子と前記回路基板とはそれぞれリード板で接続され、前記第一部材には、前記側面部からさらに前記素電池の長手方向周面に沿って平板部が延設され、前記嵌合部同士が互いに嵌合された状態において、前記リード線は前記平板部の内表面と第二部材の前記側面部の外表面に挟設されるとともに、前記各リード板が前記各部材の前記端部及び前記側面部に被覆されることで、前記リード板と前記リード線の絶縁が図られる構成とすることもできる。
【0011】
また、前記平板部の前記延設方向端部には、少なくとも前記リード線の外径以上の高さを有する立壁部が設けられ、当該立壁部には、前記リード線を外部に露出させるための切欠部が設けられている構成とすることもできる。
また、前記第一部材及び前記第二部材はポリカーボネート系樹脂材料で構成することもできる。この場合、電池パックの機械的強度を飛躍的に向上させることを期待できる。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成を有する本発明の電池パックでは、ホルダーを構成する一対のケース部材により、素電池と回路基板が被覆される。また、回路基板は素電池周面と第一部材または第二部材の側面部との間に挟設される。このため前記電池パックでは、単に熱収縮チューブ等の外装体とする従来の電池パックに比べて格段に外装体の強度が向上しており、外部から衝撃が加わった場合でも、素電池および回路基板が適切に保護される。従って、短絡等の問題や基板損傷の発生を防いで、高い信頼性の電池特性を維持できる。
【0013】
また、本発明の電池パックでは、円筒型素電池の両端部付近においてホルダー(被覆部の端面領域)が露出している。このため、熱収縮材料からなる外装チューブを用いた従来の電池パックと異なり、熱収縮材料で素電池の端面上を被覆する必要がないので、当該材料特有の突出部も形成されない。従って、本発明の電池パックでは外観寸法の精度向上を図ることができる。また、これにより給電対象機器側における電池パック収納部分のスペース設計を適切に図ることが可能である。
【0014】
さらに給電対象機器においてはスポンジ等の緩衝材を電池パック収納部分に配設する必要がないため、例えば電池パックの収納部分に所定のリブを形成し、電池パックを直接リブ間に収納することも可能であり、給電対象機器の内部スペース効率の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る電池パック1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】電池パック1の内部構成と配置関係を示す組図である。
【図3】素電池周辺の構成を示す図である。
【図4】電池パックの組立工程を示す図である。
【図5】電池パックの組立工程を示す図である。
【図6】電池パックの組立工程を示す図である。
【図7】従来の電池パックの全体構成と内部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、当然ながら本発明は以下の各構成に限定されず、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
<実施の形態>
(電池パック1の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る電池パック1の構成を示す外観図である。図2は、電池パック1の内部構成と配置関係を示す組図である。
【0017】
電池パック1は、一本の円筒型素電池10を内蔵する、いわゆる1直1並(1S1P)型である。外観的には図1のように、一対のケース部材である第一部材19aおよび第二部材19bの組み合わせからなる円柱状のホルダーを有する。素電池10の周囲には第一部材19aおよび第二部材19bを介して外装ラベル20が巻回されている。ここで第一部材19aには、後述するように平板部の延設(Y)方向端部に立壁部197aが設けられている。この立壁部197aの中央を切り欠いてなる切欠部191aから、リード線17a、17b、17cおよび接続コネクター18が外部露出するように配されている。
(電池パック1の内部構成)
電池パック1は図2に示すように、円筒型素電池10、ポリエステルテープ11、PTC素子15、保護回路基板16、および保護回路基板16等の構成要素が組み合わされ、第一部材19aおよび第二部材19bに被覆される。
【0018】
円筒型電池10は二次電池であり、ここでは一例としてリチウムイオン二次電池を用いている。サイズ例としては、直径18.1mm、長さ64.8mmであるが、当然ながらこのサイズに限定されない。なお素電池10についてもリチウムイオンに限定されず、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等、その他の種類の円筒型二次電池を使用できる。
【0019】
ポリエステルテープ11は、素電池10の側面に貼着される絶縁テープであって、保護回路基板16、PTC素子15等と素電池10との絶縁を図る目的で設けられる。
保護回路基板16は、ガラスやエポキシ樹脂等を含むコンポジット材料からなる短冊状の基板本体に各種電気素子が実装されて構成される。電池パック1において、保護回路基板16は素電池10の周面と側面部194との間に挟設されている。
【0020】
保護回路基板16には、給電対象機器に電力供給を行うとともに、外部から充電を受けるためのリード線17a、17b、17cが延出される。当該各リード線17a、17b、17cの先端には給電対象機器側と接続を図るための接続コネクター18が配設されている。
PTC素子15は、PTC素子本体150bがリード板150a、150cに接続されて構成される。電池パック1において、PTC素子15は保護回路基板16および負極端子10bに接続され、電池パック1の充放電時において、万一、素電池10が過度に温度上昇した際に、電池パック1と給電対象機器間の通電を遮断する。
【0021】
リード板14、150a、150cは、通電性及び溶接特性に優れる板状の金属材料(NiPまたはNi−Fe−Niクラッド材)からなる。図3は素電池10およびリード板14、150a、150c、保護回路基板16等の各配置を示す図である。リード板14、150aは、図2、図3(a)に示すように、素電池10の形状に合わせてL字型に曲げ加工された長尺部材である。図3(b)、(c)に示すように、リード板14、150aは、それぞれ素電池10の正極端子10a、10bに対してスポット溶接することで電気的に接続される(140、151はスポット溶接部を示す)。
【0022】
ホルダーは、機械的強度(特に剛性)に優れる材料を用いてなる、一対のケース部材(第一部材19a、第二部材19b)で構成される。これら第一部材19a、第二部材19bは、ここではエンジニアリングプラスチックの一つであるポリカーボネート(PC)材料を射出成形したものである。
図4を用いて第一部材19aの構成を具体的にみると、円筒型素電池10の第一極性(負極)端子10b周辺を被覆する端部192aと、端部192aから素電池10の長手(Y)方向に沿って連接され、且つ素電池10のほぼ半周方向の周面を部分的に被覆する側面部194、並びに側面部194よりさらに素電池10の長手(Y)方向に延設され、側面部194よりも幅狭の短冊状の平板部190aとをそれぞれ備えている。
【0023】
端部192aは素電池10の一端部(ここでは負極端子10b)及びその近接部位、リード板150a等を良好に被覆できる形状として、浅底の円形カップ状に形成されている。
側面部194は素電池10の長手(Y)方向の約半分を占める領域において、その周面を部分的に被覆する。ここで図5に示すように、素電池10に面する側面部194の内表面は、素電池10を良好に保持するため、その一部が当該素電池10の周面に合った曲面をなしている。さらに素電池10の正極端子10aに近接する側面部194の内面には、当該側面部194を構成する厚み部分をX方向に凹入させてなる、2つの嵌合部(嵌合溝193a、193b)が距離を置いて形成されている。なお、側面部194の内表面のうち、Z方向の底面部198aは、素電池10の周面との間で保護回路基板16を被覆して保持し、外部からこれを保護する役目で用いられる。この目的で底面部198aは平面状に形成されている。なお、底面部198aは必ずしも保護回路基板16と接する必要はなく、若干の間隙をおいて対向していてもよい。底面部198aに対応する位置の第一部材19aの外表面199bは、平板部190aと連続した平面状に形成されている(図4参照)。
【0024】
図4に戻って、平板部190aは、正極端子10aに近接する側面部194からさらにY方向に延設されてなる、短冊状部である。当該平板部190aのY方向長さは、第二部材19bの側面部196の平面部198bのY方向長さとほぼ同じに設定されている。また、そのX方向幅についても、平面部198bのX方向幅に合わせて設定されている。
この平板部190aの周囲には、素電池10の周面及び平面部198bの各形状に合わせて立壁部197a、199aが連続的に形成されている(図5参照)。このうち少なくとも、Y方向端部に設けられた立壁部197aは、リード線17a、17b、17cの外径寸法以上のZ方向高さで設定されている。これは後述するように、平面部198b及び平板部190aとの間でリード線17a、17b、17cを適切に挟設する目的で設定されたものである。立壁部197aの中央には、これを切り欠いてなる切欠部191aが設けられ、当該切欠部191aを通じてリード線17a、17b、17cが外部に露出可能とされている。
【0025】
一方、第二部材19bは図4に示すように、第一部材19aの端部192a、側面部194とそれぞれ略同様の形状を持つ端部192b、側面部196を有してなる。
具体的に、端部192bは第二極性(正極)端子10a及びリード板14等を良好に被覆する形状として、浅底の円形カップ状に形成されている。側面部196は端部192bからY方向に連接され、素電池10の正極端子10a周辺を部分的に被覆する。側面部196のうち、Z方向の底面部190b(図5参照)に対応する外表面は平面部198bであり、第一部材19aの平板部190aの形状に合わせて平面状に形成されている。
【0026】
さらに側面部196には、第一部材19a側と対向する端部において、Y方向に延出され、X方向または逆X方向に爪が突出するように、2つの嵌合部(嵌合爪195a、195b)が設けられている(図2、4参照)。この嵌合爪195a、195bは、前述した嵌合溝193a、193bと互いに嵌合可能に形成されたものである。
なお平面部198bには、Y方向を長手とする一対のリブ193b、194bが立設されている(図2、4参照)。電池パック1においては、リブ193b、194bのZ方向頂部は平板部190aの内表面が当接する配置となる。
【0027】
外装ラベル20はPET等の薄い樹脂フィルムからなり、電池パック1の定格等の表示が記載されている。なお、電池パック1では外装体が一対のケース部材(第一部材19aおよび第二部材19b)で構成されているため、外装ラベル20は図7に示す従来構成の電池パック1Xのように素電池10の両端部を覆う必要がない。従って、ここでは電池パック1の外観寸法の精度を向上させる目的で、外装ラベル20のY方向長さを電池パック1全体のY方向長さよりも短くし、電池パック1の長手(Y)方向両端では第一部材19aおよび第二部材19bの端面を部分的に外部露出させている。これにより電池パック1のY方向に沿った外観寸法は、第一部材19a、第二部材19bによって精度よく決定される。
【0028】
なお、電池パック1において、外装ラベル20は第一部材19aおよび第二部材19bの周囲に巻回し、当該巻回方向の両端部付近を互いに貼着しているだけであるが、第一部材19aおよび第二部材19bの少なくともいずれかの表面に対して外装ラベル20を貼着することもできる。
(電池パック1におけるホルダーの効果について)
次に、ホルダー(第一部材19aおよび第二部材19b)を用いてなる電池パック1の製造工程と、前記ホルダーによる効果について、図2〜6に基づき説明する。
【0029】
まず素電池10の周面に対し、その長手(Y)方向に沿って一定幅のポリエステルテープ11を配設する(図2)。各リード板14、150aを曲げ加工し、それぞれ素電池10の正極端子10a、負極端子10bにスポット溶接で電気的に接続する。ポリエステルテープ11上の所定位置に保護回路基板16およびPTC素子15を載置する(図3)。
そして図4のように、素電池10の正極端子10a及びリード板14に第一部材19bの端部192bを被せる。また、側面部196を保護回路基板16の手前の位置まで素電池10の側面に沿わせ、且つ、平面部198bの主面を保護回路基板16の主面と平行にする。このとき、保護回路基板16から延長されたリード線17a、17b、17cを揃え、平面部198b上の一対のリブ193a、193bの間に挟設させて位置決めする。このようにリード線17a、17b、17cを平面部198bの上に位置決めし、リード板14を端部192bで被覆することで、リード線17a、17b、17cとリード板14との短絡発生を確実に回避することができる。
【0030】
続いて、素電池10の負極端子10b及びリード板150aに対し、第一部材19aの端部192aを被せる。また、保護回路基板16及び素電池10の周面を被覆し、且つ、外表面199bを保護回路基板16の主面と平行にさせつつ側面部194を配設する。さらに第二部材19aの平面部190aを第一部材19bの平面部198b上に重ねる(図4)。このとき、平板部190aの立壁部199aを平面部198bのY方向に沿った周縁に合わせ、立壁部197aを端部192bのY方向端面の位置に合わせる。そしてこのとき、リード線17a、17b、17cを平面部198b及び平板部190aの間で挟設するとともに、リード線17a、17b、17cの下流側を立壁部197aに設けた切欠部191aを通して外部露出させる。これにより、電池パック1では剛性を持つ第一部材19a及び第二部材19bを組み合わせても、前述のようにリード線17a、17b、17cとリード板14との短絡発生防止を図りつつ、且つリード線17a、17b、17cを問題なく外部に良好に取り出せる。
【0031】
次に第一部材19a及び第二部材19bを嵌合させる。図5、6に順次示すように、第一部材19bの底面部190bを平板部190aの内表面と平行にY方向にスライドさせる。これにより第二部材19bの嵌合爪195a、195bが第一部材19aの側面部194の内側に無理ばめされ、最終的に嵌合溝193a、193bと嵌合する。この嵌合後、第一部材19a及び第二部材19bは容易に外れることはない。よって、第一部材19a及び第二部材19bがそれぞれ剛性を発揮するとともに、嵌合後はホルダー全体としての機械的強度も良好に発揮される。
【0032】
その後は、第一部材19aおよび第二部材19bの外周面(素電池10の両端部に相当する端面領域を除く部分)に外装ラベル20を巻回して固定する。これで電池パック1が完成する。
電池パック1では、前述した嵌合爪195a、195bと嵌合溝193a、193bの嵌合機構によって、素電池10および保護回路基板16は、ホルダーを構成する一対のケース部材(第一部材19aおよび第二部材19b)の内部に被覆かつ保持される。よって電池パック1の完成後は、このホルダーの良好な機械的強度が発揮されることで、素電池10および保護回路基板16は外部からの衝撃・振動に対して適切に保護される。また、電池パック1に巻回された外装ラベル20のY方向長さがホルダーの同方向長さより短く、第一部材19aおよび第二部材19bの端面領域が外部露出しているため、少なくとも電池パック1のY方向の外観寸法は高い精度で定まる。よって、給電対象機器側における電池パック1の収納スペースの寸法も適切に設計でき、給電対象機器のスペース効率の改善を期待できる。
【0033】
さらに電池パック1では、外表面199bが平坦且つ精度よく形成されているので、給電対象機器に装着する際は、この外表面199bを給電対象機器側に当接させると電池パック1の位置決めを良好にでき、且つ、スポンジ等の緩衝材を用いなくても確実に保持できる。
また、図4のように第二部材19bの平面部198bと第一部材19aの平板部190aとの間でリード線17a、17b、17cを挟設することで、正極端子10aに接続されたリード板14とリード線17a、17b、17cを確実に絶縁でき、絶縁性のさらなる向上を図れ、良好な電池信頼性を期待できる。
【0034】
また、立壁部197a、199aの配設により、平板部190aと平面部198aとの間には、少なくともリード線17a、17b、17cの外径に合わせた適切な高さの空間が形成されるため、リード線17a、17b、17cが平板部190aによって押し潰されることもない。
なお、第二部材の嵌合爪195a、195bの突出方向と、第一部材の嵌合溝193a、193bの凹入方向は、いずれもX軸方向に沿っており(X方向または逆X方向)、且つ、嵌合爪195a、195bおよび嵌合溝193a、193bの形状はZ軸方向に沿って一定である。従って、第一部材19aおよび第二部材19bを樹脂材料を用いて射出成形法で製造する際には、いわゆるスライド金型を用いなくても通常の可動側金型を固定側金型に対してZ軸方向に往復移動させて製造することが可能である。よって生産コストの低減を図ることができ、実現性の面においても優れた効果が発揮される。
<その他の事項>
上記実施の形態では、第一部材および第二部材の各側面部により素電池を部分的に覆う構成としたが、側面部をそれぞれ筒状に形成し、第一部材および第二部材を嵌合させた後は完全に素電池を外部から見えなくすることもできる。
【0035】
また、第一部材および第二部材の嵌合機構は、半円状の突起部を持つ嵌合爪195a、195bとこれに嵌合可能な嵌合溝の組み合わせに限定されない。例えば楔形の突起部を持つ嵌合爪と、これに嵌合可能な嵌合溝の組み合わせであってもよい。
また嵌合機構については、例えば第一部材側にリブ状の嵌合部を形成し、第二部材側にスリット状の嵌合部を形成し、前記リブを前記スリットに挿入した後、両者を超音波溶着等により強固に接合することもできる。このように本発明の嵌合部は、厳密に嵌合機構を有するものに限定されず、溶着により接合される構成も含むものとする。
【0036】
また、上記実施の形態では、安全素子の一例としてPTC素子を採用したが、本発明は、これに限定されない。例えば、NTC(Negative Temperature Coefficient)素子や温度ヒューズ素子などを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ハンディターミナルなどのモバイル機器やPDA、車載盗難装置等の電源として用いることができ、その産業上の利用可能性は極めて広いと言える。
【符号の説明】
【0038】
1、10X 電池パック
10 素電池
11 ポリエステルテープ
15 PTC素子
16 保護回路基板
17a、17b、17c リード線
18 接続コネクター
19a 第一部材
19b 第二部材
20 外装ラベル
21 外装チューブ
21a、21b 突出部(チューブ爪)
190a 平板部
190b、198a 底面部
191a 切欠部
192a、192b 端部
193a、193b 嵌合溝
194、196 側面部
195a、195b 嵌合爪
197a、199a 立壁部
198b 平面部
199b 外表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型の素電池と当該素電池に電気的に接続された回路基板とがホルダーに内包された電池パックであって、
前記ホルダーは、
前記素電池の第一極性端子周辺を覆う端部及び当該端部に連接されて前記素電池周面を部分的に覆う側面部とを有する第一部材と、
前記素電池の第二極性端子周辺を覆う端部及び当該端部に連接されて前記素電池周面を部分的に覆う側面部とを有する第二部材とからなり、
前記第一部材及び前記第二部材の各側面部には、当該両部材同士で嵌合可能な嵌合部が形成され、
前記回路基板が、前記素電池の周面といずれかの前記部材の前記側面部の間に挟まれた状態で、前記第一部材及び前記第二部材における前記嵌合部同士が互いに嵌合し、
前記素電池の周面には前記ホルダーを介して外装ラベルが配され、
前記素電池の長手方向両端部に対応する前記各部材の前記端部の領域が外部露出されている
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記第一部材の前記嵌合部は嵌合溝であり、
前記第二部材の前記嵌合部は嵌合爪である
ことを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記第一部材及び前記第二部材は射出成形されたものであり、
前記第一部材及び前記第二部材の成形に用いる射出成形金型の抜き方向が、前記第一部材の前記嵌合溝の凹入方向及び前記第二部材の前記嵌合爪の突出方向の両方に対してそれぞれ垂直方向である
ことを特徴とする、請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記回路基板にはリード線が接続され、前記素電池の各極性端子と前記回路基板とはそれぞれリード板で接続され、
前記第一部材には、前記側面部からさらに前記素電池の長手方向周面に沿って平板部が延設され、
前記嵌合部同士が互いに嵌合された状態において、前記リード線は前記平板部の内表面と第二部材の前記側面部の外表面に挟設されるとともに、前記各リード板が前記各部材の前記端部及び前記側面部に被覆されることで、前記リード板と前記リード線の絶縁が図られる構成である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記平板部の前記延設方向端部には、少なくとも前記リード線の外径以上の高さを有する立壁部が設けられ、
当該立壁部には、前記リード線を外部に露出させるための切欠部が設けられている
ことを特徴とする、請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
前記第一部材及び前記第二部材はポリカーボネート系樹脂材料からなる
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109050(P2012−109050A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255186(P2010−255186)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】