説明

電池パック

【課題】導電性を有するばねにより弾性付勢された可動部品を有しながら、仮に可動部品が損傷した際などにも内部短絡などの発生を抑制できる構成の電池パックを提供する。
【解決手段】電池パックは、外装ケース内に、複数の素電池を含むコアパックが収納されている。外装ケース内には、他にラッチ13bも収納されている。ラッチ13bは、外装ケースの底壁内面から突設されたガイド部のガイド孔にピン部132bが挿通され、ピン部132bにはコイルばね15b取り付けられている。ラッチ13bは、コイルばね15bにより外装ケースに対して弾性付勢されている。コイルばね15bは、金属材料からなり、ラッチ13bにおけるアンカー部133bに固着されている。アンカー部133bは、樹脂からなるラッチ13bの一部が熱を受け、コイルばね15bのばね端部151bを巻き込む状態で溶融変形し形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関し、特に、導電性を有するばねにより弾性付勢された可動部品を有する電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パック、例えば、ノートブック型パーソナルコンピュータ(ノートパソコン)や、電動アシスト自転車、ハイブリッド型電気自動車(HEV)、電気自動車(PEV)、電動バイクなどの車両や、さらには電動工具などの電源として広く用いられている。このような電池パックにおいては、機器への装着に際して外れ防止の目的でラッチ構造が採用されているものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示されている従来技術に係る電池パックについて、図9を用い説明する。
【0003】
図9に示すように、従来技術に係る電池パックでは、第1ケース部材91と第2ケース部材92とが、互いに開口部同士を突き合わせ外装ケースが構成されている。第1ケース部材91および第2ケース部材92の各々には、Y軸方向左手前側の側壁に開口が形成されており、当該開口から外部コネクタ9021が露出している。第1ケース部材91と第2ケース部材92とで構成される外装ケースの内部空間には、6つの素電池901a〜901fと、ラッチ93が収納されている。
【0004】
素電池901a〜901fは、同一サイズを有する角形電池であって、二段積みにされ、X軸方向に並設されている。ラッチ93は、2つの爪部931,932と、2つのピン部934,935と、ノブ部933とが一体形成されてなる。ラッチ93における2つの爪部931,932は、それぞれ第2ケース部材92のY軸方向左手前側の側壁に開けられた窓部92f,92gから出没可能となっている。また、ノブ部933は、第2ケース部材92の底壁92aに開けられた窓部92hから露出するようになっている。
【0005】
外装ケース内におけるラッチ93は、第2ケース部材92の底壁92aの内面に突設されたガイド部92b,92cの各ガイド孔92d,92eに対し、コイルばね95a,95bを介した状態でピン部934,935が挿入されることで弾性付勢されている。
電池パックを機器に挿入した状態では、ラッチ部品93の爪部931,932が第2ケース部材92の窓部92f,92gから突出し、機器側の嵌合凹部などに噛合することで電池パックが機器にロックされる。そして、ユーザは、ノブ部933を操作することにより、爪部931,932を第2ケース部材92の内側へと引込め、機器から電池パックを取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4573564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術に係る電池パックでは、ラッチ93の取り付け不具合や、使用中におけるピン部934,935の破損などを生じた場合、ラッチが機能しなくなるばかりではなく、金属からなるコイルばね95a,95bが素電池901a〜901fの各端子などに接触して内部短絡を生じることも考えられる。このような問題は、ラッチに限らず、導電性を有するばねにより弾性付勢された可動部品についても同様である。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、導電性を有するばねにより弾性付勢された可動部品を有しながら、仮に可動部品が損傷した際などにも内部短絡などの発生を抑制できる構成の電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、次のような構成を採用することとした。
本発明に係る電池パックは、内部に空間を有する外装ケースと、外装ケース内の空間に収納された1または複数の素電池と、外装ケース内の前記空間に収納され、外装ケースの内壁面に対して、導電性を有するばねを以って弾性付勢された可動部品とを備え、ばねが、可動部品におけるアンカー部に対し、その一部が固着されており、可動部品に対するばねの固着が、可動部品の一部に熱を加え、ばねの一部を巻き込む状態で溶融変形してアンカー部を形成することによりなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電池パックでは、ばねの一部が可動部品におけるアンカー部に固着されている。そして、可動部品におけるアンカー部は、可動部品の一部に熱を加え、ばねの一部を巻き込む状態で溶融変形することにより形成されている。このため、本発明に係る電池パックでは、組立不具合や使用中における可動部品の破損などを生じた場合にあっても、ばねは可動部品のアンカー部に固着されているので、導電性のばねが素電池の側に移動することがなく、内部での短絡が効果的に防止できる。
【0011】
従って、本発明に係る電池パックでは、導電性を有するばねにより弾性付勢された可動部品を有しながら、仮に可動部品が損傷した際などにも内部短絡などの発生を抑制できる。
本発明に係る電池パックでは、一例として次のようなバリエーション構成を採用することができる。
【0012】
本発明に係る電池パックでは、上記構成において、外装ケース内の空間が、1または複数の素電池が収納された領域と、可動部品およびばねが収納された領域との間が、ばねの移動を妨げる仕切り壁により仕切られているという構成にすることができる。
このように、素電池が収納される領域と、可動部品およびばねが収納される領域とを、仕切り壁により仕切る構成を採用すれば、仮に可動部品から導電性のばねが外れた場合にあっても、素電池が収納された領域へと移動することが確実に防止でき、更に高い安全性を確保することが可能となる。
【0013】
本発明に係る電池パックでは、上記構成において、外装ケース内の空間に、1または複数の素電池に接続された回路ユニットも収納されており、回路ユニットが、1または複数の素電池が収納された側の領域に収納されているという構成にすることができる。
このように、外装ケース内における素電池が収納された領域に、回路ユニットも収納された構成とすれば、導電性のばねが回路ユニットに接触することも防止でき、確実に内部短絡の防止を図ることができる。
【0014】
本発明に係る電池パックでは、上記構成において、可動部品が、外装ケースの内壁面に沿って配された主壁と、当該主壁の2側辺のそれぞれから外装ケースの内壁面側に向けて立ち上がった2側壁とが一体形成されてなる本体部を有し、ばねが、主壁と2側壁とで囲まれた領域内に配されているという構成にすることができる。
このように、ばねが可動部品における本体部の主壁および2側壁で囲まれた領域内に配置された構成とすれば、仮にばねが可動部品から外れた場合にあっても、可動部品の本体部により素電池が収納された領域へのばねの移動が阻止され、高い安全性を確保することができる。
【0015】
本発明に係る電池パックでは、上記構成において、ばねがコイルばねであって、その一端部が前記アンカー部に固着されているという構成にすることができる。この場合にも、上記のように内部短絡の発生を防止することができ、高い安全性を確保することが可能である。
本発明に係る電池パックでは、上記構成において、ばねが金属材料から構成されており、可動部品が熱可塑性樹脂材料から構成されているという構成にすることができる。
【0016】
本発明に係る電池パックでは、上記構成において、可動部品の一部が、外装ケースに開けられた窓部から出没可能とされたラッチであるという構成にすることができる。なお、本発明における「可動部品」としては、ラッチ以外にも、例えば、スイッチの操作部や、電池搬送用のハンドルのヒンジ、あるいは冷却口の開閉蓋などとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電池パック1の概略構成を示す模式展開斜視図である。
【図2】電池パック1の内部構成を示す模式平面図である。
【図3】電池パック1における第2ケース部材12の裏面12f側を示す模式平面図である。
【図4】第2ケース部材12へのラッチ13a,13bおよびノブ14a,14bの取り付け構造を示す模式展開斜視図である。
【図5】(a)は、ラッチ13bに対しコイルばね15bを取り付けた状態を示す模式斜視図であり、(b)は、その一部拡大図である。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態2に係る電池パックの構成中、第2ケース部材22とラッチ23a,23bとを示す模式斜視図であり、(b)は、第2ケース部材22へのラッチ23a,23bおよびノブ23a,24bの取り付け構造を示す模式展開斜視図である。
【図7】(a)は、第2ケース部材22へ取り付けた状態でのラッチ23aを示す模式平面図であり、(b)は、その模式断面図である。
【図8】(a)は、コイルばね25aを取り付けた状態でのラッチ23aを示す模式平面図であり、(b)は、一部拡大図である。
【図9】従来技術に係る電池パックの構成を示す模式展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明を実施するための形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で示す具体例は、本発明の構成およびその構成から奏される作用・効果を分かりやすく説明するために用いる一例であって、本発明は、発明の本質とする構成部分以外について、以下の具体例に何ら限定を受けるものではない。
[実施の形態1]
1.電池パック1の概略構成
本発明の実施の形態1に係る電池パック1の概略構成について、図1を用い説明する。
【0019】
電池パック1では、第1ケース部材11と第2ケース部材12とが、互いの開口縁同士を向い合せに接合して外装ケースが構成されている。外装ケースの内部には、コアパック10が収納されている。
コアパック10は、6本の素電池101a〜101fと回路ユニット102とを含み構成されている。この内、素電池101a〜101fは、それぞれ円筒形の外観形状を有するリチウムイオン電池であって、軸芯をY軸方向に揃え並設されている。
【0020】
回路ユニット102は、基板1020と、その一方の主面に実装された外部コネクタ1021とを含み構成されている。基板1020には、この他にも、種々の電子部品が実装されており、これらにより、例えば、保護回路が構成されている。
第1ケース部材11および第2ケース部材12における各Y軸方向左手前側の側壁には、窓部11a,12aが開けられており、当該部分から外部コネクタ1021の一部が露出している。
【0021】
2.電池パック1の内部構成
電池パック1の内部構成について、図2を用い、もう少し詳細に説明する。図2は、電池パック1において、第1ケース部材11を外した状態で示す平面図である。
図2に示すように、第2ケース部材12では、6本の素電池101a〜101fおよび回路ユニット102(コアパック10)を収納する領域と、Y軸方向の上側部分に設けられた領域(ラッチ室12b)とが、仕切り壁12eでその間が仕切られた構成となっている。
【0022】
ラッチ室12bには、X軸方向の中央部分に2つのガイド部12c,12dが設けられている。ガイド部12c,12dは、紙面の手前側に向けて突設されており、第2ケース部材12に一体成型されている。各ガイド部12c,12dには、孔が開けられており(図示を省略)、これら孔にはラッチ13a,13bがそれぞれ摺動可能に支持されている。
【0023】
3.第2ケース部材12の裏面12f
第2ケース部材12の裏面12f側の構成について、図3および図4を用い説明する。
図3に示すように、第2ケース部材12の裏面12f側には、ユーザが操作するためのノブ14a,14bが取り付けられている。ノブ14a,14bは、それぞれX軸方向に摺動可能となっており、当該ノブ14a,14bを摺動させることにより、ラッチ13a,13bの先端部分が、第2ケース部材12の側壁窓部から出没する。
【0024】
図4に示すように、第2ケース部材12の裏面12fには、ノブ14a,14bの取り付け箇所に対応して、窓部12g,12hが開けられている。この窓部12g,12hを通してノブ14a,14bの嵌合爪部(図示を省略)が第2ケース部材12の内部へと挿入され、ラッチ13a,13bとそれぞれ嵌合される。
ラッチ13a,13bは、第2ケース部材12のX軸方向の両側壁に開けられた窓部から内部へと挿入され、その先端部分131a,131bが出没可能となる。ノブ14a,14bは、ラッチ13a,13bの本体部130a,130bに対して嵌合される。
【0025】
また、第2ケース部材12におけるガイド部12c,12dの各ガイド孔には、ピン部132a,132bの各一部が摺動可能に挿入される。そして、ピン部132a,132bには、コイルばね15a,15bが取り付けられている。このように、ラッチ13a,13bは、コイルばね15a,15bの取り付けにより、第2ケース部材12に対して弾性付勢される。
【0026】
4.ラッチ13a,13bとコイルばね15a,15b
ラッチ13a,13bへのコイルばね15a,15bの取り付け形態について、図5を用い説明する。なお、図5では、ラッチ13bへのコイルばね15bの取り付け形態を一例として図示しているが、ラッチ13bへのコイルばね15bの取り付け形態についても同様であるので図示を省略している。
【0027】
図5(a)に示すように、コイルばね15bは、ラッチ13bにおけるピン部132bに取り付けられている。即ち、コイルばね15bにおける本体部150bの巻回中央部にピン部132bが挿入されている。
ラッチ13の本体部130bとピン部132bとの境界部分(A部分)には、X軸方向に延在するピン部132bに対し直交するZ軸方向上向きに突出したアンカー部133bが設けられている。図5(b)に示すように、ばね端部151bは、コイルばね15bの延在方向に直交するように折り曲げられた状態で、アンカー部133bに配置される。アンカー部133bは、コイルばね15における該当箇所に熱を加え、コイルばね15bのばね端部151bを巻き込む状態で溶融変形することによって形成されている。このため、コイルばね15bは、ばね端部151bにおいて、アンカー部133bに固着されている。
【0028】
なお、ラッチ13bにおける他端部分(A部分)は、爪部131bであり、テーパ状となっている。
5.優位性
本実施の形態に係る電池パック1では、コイルばね15a,15bのばね端部151b,・・がラッチ13a,13bにおけるアンカー部133b,・・に固着されている。そして、ラッチ13a,13bにおけるアンカー部133b,・・は、上述のように、ラッチ13a,13bの該当部分に熱を加え、コイルばね15a,15bのばね端部151b,・・を巻き込む状態で溶融変形することにより形成されている。このため、電池パック1では、組立不具合や使用中におけるラッチ13a,13bの破損(ピン部132a,132bの欠損)などを生じた場合にあっても、コイルばね15a,15bはラッチ13a,13bのアンカー部133b,・・に固着されているので、金属からなり導電性を有するコイルばね15a,15bが素電池101a〜101fおよび回路ユニット102からなるコアパック10の側に移動することがなく、内部での短絡が効果的に防止できる。
【0029】
また、本実施の形態に係る電池パック1では、素電池101a〜101fおよび回路ユニット102からなるコアパック10が収納される領域と、ラッチ13a,13bおよびコイルばね15a,15bが収納される領域(ラッチ室12b)とが、仕切り壁12eにより仕切られた構成を採用するので、仮にラッチ13a,13bから導電性のコイルばね15a,15bが外れた場合であっても、仕切り壁12eでコイルばね15a,15bの移動が阻止される。なお、図示を省略したが、第1ケース部材11の内側にも同様の仕切り壁が設けられている。よって、電池パック1では、更に高い安全性を確保することが可能となる。
[実施の形態2]
1.第2ケース部材22へのラッチ23a,23bの取り付け形態
本発明に実施の形態2に係る電池パックの構成中、第2ケース部材22へのラッチ23a,23bの取り付け形態について、図6および図7を用い説明する。
【0030】
図6(a)に示すように、第2ケース部材22のY軸方向左上部分に、ラッチ23a,23bが取り付けられている。ラッチ23a,23bは、ともに弾性付勢された状態で、ユーザの操作に応じて爪部231a,231b(爪部231bについては、図6(b)を参照)がX軸方向に出没可能となっている。
第2ケース部材22の内底面22aには、ラッチ23a,23bのそれぞれに対応してストッパ部22c,22dが設けられている。ラッチ23a,23bは、ストッパ部22c,22dにより、これより内側へは後退しないようになっている。
【0031】
次に、図6(b)に示すように、ラッチ23a,23bのそれぞれには、ノブ24a,24bが係止されている。具体的には、ラッチ23a,23bのそれぞれには幅方向の両側部分に係合凹部232a,232bが設けられており、ノブ24a,24bのそれぞれには対応して係合爪部241a,241bが突設されている。
ノブ24a,24bの各係合爪部241a,241bは、第2ケース部材22の内底面22aに開けられた窓部22g,22hのそれぞれから第2ケース部材22の内部へと挿入され、ラッチ23a,23bの各係合凹部232a,232bと係合される。
【0032】
2.ラッチ23a,23bの可動形態
ラッチ23a,23bの可動形態について、図7を用い説明する。なお、図7では、ラッチ23aが配された部分を図示しているが、ラッチ23bについても構成は同一である。
図7(a)および図7(b)に示すように、ラッチ23aの本体部230aは、Y軸方向の幅に比べてX軸方向の長さが長い短冊形の平面形状をしており、そのX軸方向中央部分に係合凹部232aが設けられ(図6(b)を参照)、当該部分にノブ24aの係合爪部241aが係合されている。そして、ユーザが操作しない状態では、爪部231aは、第2ケース部材22の外部へと突出した状態となっており、ユーザによるノブ24aの操作により、爪部231aが第2ケース部材22の側壁外面と面一、あるいは、側壁外面よりも内側へと没するようになっている。即ち、ラッチ23aは、矢印Bの方向へとスライドできるようになっている。
【0033】
なお、上述のように、ラッチ23aの後退限は、ラッチ23aの一端がストッパ部22cに当接する状態の位置である。
3.ラッチ23a,23bの弾性付勢
上述のように、本実施の形態に係る電池パックにおいても、第2ケース部材22に対してラッチ23a,23bが弾性付勢されているが、ラッチ23a,23bの弾性付勢に係る形態について、図8を用い説明する。なお、図8においても、ラッチ23aとその周囲を抜き出して図示しているが、ラッチ23bについても構成は同一である。なお、図8(a)および図8(b)は、ノブ24aを取り外した状態でラッチ23aおよびコイルばね25aを図示している。
【0034】
ラッチ23aは、浅皿状をしており、図8(a)および図8(b)に示すように、その開口を第2ケース部材22の窓部22g側に向けて配されている。そして、図8(a)に示すように、コイルばね25aは、ラッチ23aの周囲を囲まれた内部に収納されている。なお、図8(b)に示すように、ラッチ23aにおけるコイルばね25aが収納された空間は、第2ケース部材22の窓部22gに対して紙面手前側から組み付けられるノブ25aにより外側からは見えない様になる。
【0035】
換言すると、コイルばね25aは、ラッチ23aの本体部230aの主壁とその周囲の辺から起立するように設けられた側壁、さらにはノブ24aにより周りを囲繞された状態となる。
ここで、ラッチ23aに対するコイルばね25aの取り付けは、上記実施の形態1と同様に、ラッチ23aの一部がコイルばね25aのばね端部を巻き込んだ状態で溶融され変形を受けることで形成されたアンカー部に固着されている(図示を省略)。この構成については、図5を参照。また、コイルばね25aの他端は、第2ケース部材22の内底面22aに突設された突起部22iに差し込まれて掛止されている。
【0036】
4.優位性
本実施の形態に係る電池パックでは、第2ケース部材22に仕切壁を備えていないが、ラッチ23a,23bに対してコイルばね25a,・・が固着され、且つ、ラッチ23a,23bの本体部230a,・・の主壁で第2ケース部材22の内部空間との間の仕切りとなっている。このため、本実施の形態に係る電池パックにおいても、電池パック組立時の不具合や、電池パック使用時におけるラッチ23a,23bの損傷などが発生した場合にも、金属製のコイルばね25a,・・が素電池および回路ユニットの側へと移動することが防止される。よって、本実施の形態に係る電池パックにおいても、高い安全性が確保される。
[その他の事項]
上記実施の形態では、「可動部品」の一例としてラッチ13a,13b,23a,23bを採用したが、ばねにより弾性付勢される可動部品であれば、これに限定を受けるものではない。例えば、本発明における「可動部品」としては、スイッチの操作部や、電池搬送用のハンドルのヒンジ、あるいは冷却口の開閉蓋などとすることも可能である。
【0037】
また、上記実施の形態では、ラッチ13a,13b,23a,23bを弾性付勢するためにコイルばね15a,15b,25a,・・を用いたが、ばねの形態はコイル状のものに限らず、例えば、板ばねや、ねじりコイルばね、皿ばね、竹の子ばね、あるいは輪ばねなどを採用することもできる。
また、上記実施の形態では、コイルばね15a,15b,25a,・・のばね端部151b,・・でラッチ13a,13b,23a,23bのアンカー部の固着される構成と一例としたが、必ずしもばね端部で固着されている必要はない。例えば、コイルばねの長手方向中程の部分で固着する構成とすることもでき、ばねがコイルばね以外の場合には、ばね性に影響を与えない箇所であれば固着が可能である。
【0038】
また、上記実施の形態1では、コアパック10に6本の円筒形の素電池101a〜101fが含まれる構成を一例としたが、素電池の構成数および素電池の種類・形態については、これに限定されるものではない。例えば、素電池の構成数については、5本以下であってもよいし、7本以上であってもよい。素電池の種類については、リチウムイオン電池以外にも、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などのアルカリ電池を採用することができる。さらに、素電池の形態については、円筒形に限らず、角形やガム型、さらには、コイン形や金属ラミネート外装を有するものを採用することもできる。
【0039】
なお、素電池としてニッケル水素電池などのアルカリ電池を採用する場合になどにおいては、パッケージ内に回路ユニットが必ずしも含まれる必要はない。この場合には、外装ケース内に収納されるのは、素電池が主となる。
また、上記実施の形態1では、第2ケース部材12に仕切り壁12eを設ける構成を一例として採用したが、逆に、第1ケース部材11に仕切り壁を設ける構成とすることもできる。即ち、ラッチが取り付けられる第2ケース部材とは異なる第1ケース部材に仕切り壁を設けることも可能である。
【0040】
また、上記実施の形態では、金属製のコイルばね15a,15b,25a,・・を採用したが、ばねの材質については、必ずしも金属製である必要はない。導電性を有する材料からなるばねを採用する場合には、これが素電池の端子などと接触すると内部短絡を発生するので、上記のような構成が有効となる。
また、上記実施の形態では、第1ケース部材11や第2ケース部材12,22の材質については特に言及しなかったが、樹脂材料であってもよいし、金属材料であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ノートパソコンや車両用の電源として高い安全性を備える電池パックを実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0042】
1.電池パック
10.コアパック
11.第1ケース部材
12,22.第2ケース部材
12b.ラッチ室
12c,12d.ガイド部
12e.仕切り壁
12f.底壁
12g,12h,22g,22h.窓部
13a,13b,23a,23b.ラッチ
14a,14b,24a,24b.ノブ
15a,15b,25a.コイルばね
22c,22d.ストッパ部
22i.突起部
101a〜101f.素電池
102.回路ユニット
130a,130b,230a.本体部
131a,131b,231a,231b.爪部
132a,132b.ピン部
133b.アンカー部
150b.ばね本体部
151b.ばね端部
232a,232b.係合凹部
241a,241b.係合爪部
1020.基板
1021.外部コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する外装ケースと、
前記外装ケース内の前記空間に収納された1または複数の素電池と、
前記外装ケース内の前記空間に収納され、前記外装ケースの内壁面に対して、導電性を有するばねを以って弾性付勢された可動部品と、
を備え、
前記ばねは、前記可動部品におけるアンカー部に対し、その一部が固着されており、
前記可動部品に対する前記ばねの固着は、前記可動部品の一部に熱を加え、前記ばねの一部を巻き込む状態で溶融変形して前記アンカー部を形成することによりなされる
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記外装ケース内の前記空間は、前記1または複数の素電池が収納された領域と、前記可動部品および前記ばねが収納された領域との間が、前記ばねの移動を妨げる仕切り壁により仕切られている
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記外装ケース内の空間には、前記1または複数の素電池に接続された回路ユニットも収納されており、
前記回路ユニットは、前記1または複数の素電池が収納された側の領域に収納されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記可動部品は、前記外装ケースの内壁面に沿って配された主壁と、当該主壁の2側辺のそれぞれから前記外装ケースの内壁面側に向けて立ち上がった2側壁とが一体形成されてなる本体部を有し、
前記ばねは、前記主壁と前記2側壁とで囲まれた領域内に配されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記ばねは、コイルばねであって、一端部が前記アンカー部に固着されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の電池パック。
【請求項6】
前記ばねは、金属材料から構成されており、
前記可動部品は、熱可塑性樹脂材料から構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の電池パック。
【請求項7】
前記可動部品は、その一部が前記外装ケースに開けられた窓部から出没可能とされたラッチである
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−243537(P2012−243537A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111938(P2011−111938)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】