説明

電池ボックス及びドア用錠前のエスカチオン

【課題】電池ボックスの厚みが大きくなるのを抑制しつつ、電池製品が外部からの衝撃や振動を受けても電池暴れが発生することなく、電池電圧を安定して二次側に供給することを可能とする。
【解決手段】本発明は、電池22の軸方向一端に設けられた一方の接続端子25に接触する固定電極24と、前記電池22の軸方向他端に設けられた他方の接続端子27との離間位置と接触位置の間で、前記電池22の軸方向に沿ってスライド可能に設けられたスライド電極26と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池式の電気錠その他の電池製品に用いられる電池ボックス及びドア用錠前のエスカチオンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池式の電気錠その他の電池製品に用いられる電池ボックスには、1個の電池又は直列接続された複数個の電池(以下、単に「電池」と称す。)を収納可能な空間が設けられ、この空間の両端にはそれぞれ電極が設けられている。そして、電池の軸方向両端にそれぞれ設けられた接続端子を上記した電極に接触させることで、電池電圧を二次側へ供給できるように構成されている。
【0003】
上記のような構成の電池ボックスを備えた電池製品が外部から衝撃や振動を受けると、電池が電池ボックス内において動いてしまう「電池暴れ」が発生し、電池の接続端子と電池ボックスの電極が離間して、電池電圧の供給が瞬間的に断たれる。このような事態を防止するため、一般的な電池ボックスでは、電極をバネで形成することで、ある程度電池が暴れても電池の接続端子から電極が離間しないようにしている(特許文献1参照)。また、これとは別に、電池ボックス内の電池を上面からゴム等のクッションで抑えることで、電池が暴れるのを防止する構成もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−66009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように電池ボックスの電極をバネで形成すると、電極の耐久性が弱くなり、電池から電解液が少し漏れただけでも電極が錆びて折れてしまうことがある。また、電池の暴れに追従するためにバネを採用しているが、想定以上に電池が暴れた時には、電極が電池の暴れに追従できずに、電池ボックスから電池が飛び出してしまう危険がある。
【0006】
また、上記従来技術のように電池を上面からゴム等のクッションで抑える構成では、電池ボックスの厚みが必然的に大きくなる。そのため、製品構造上スペースに余裕がない場合には、電池を上面から抑えるクッションを設置できず、上記した構成を採用し得ない。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、電池ボックスの厚みが大きくなるのを抑制しつつ、電池製品が外部からの衝撃や振動を受けても電池暴れが発生することなく、電池電圧を安定して二次側に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電池ボックスは、電池の軸方向一端に設けられた一方の接続端子に接触する固定電極と、前記電池の軸方向他端に設けられた他方の接続端子との離間位置と接触位置の間で、前記電池の軸方向に沿ってスライド可能に設けられたスライド電極と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電池ボックスは、前記スライド電極の近傍にカムが設けられ、該カムに押圧されて前記他方の接続端子との離間位置から接触位置まで前記スライド電極がスライドしても良い。
【0010】
更にまた、本発明に係る電池ボックスは、前記電池を収納可能に設けられて前記固定電極を有する収納部材と、該収納部材を挿入可能な空間を有するカバー部材と、前記収納部材に対してスライド可能に設けられて前記カバー部材の挿入開口部を閉止する蓋部材と、を備え、該蓋部材に前記スライド電極が設けられ、前記蓋部材のスライドに伴って前記他方の接続端子との離間位置から接触位置まで前記スライド電極がスライドしても良い。
【0011】
また、本発明に係る電池ボックスは、前記電池を収納可能に設けられて前記固定電極を有する収納部材と、該収納部材に装着されて電極押し込み部が設けられたカバー部材と、を備え、前記スライド電極には、前記カバー部材の前記収納部材への装着方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、前記カバー部材を前記収納部材に装着すると、前記電極押し込み部が前記傾斜面を押圧して、前記他方の接続端子との離間位置から接触位置まで前記スライド電極がスライドしても良い。
【0012】
また、本発明に係るドア用錠前のエスカチオンは、上記したいずれかの電池ボックスを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池ボックスの厚みが大きくなるのを抑制しつつ、電池製品が外部からの衝撃や振動を受けても電池暴れが発生することなく、電池電圧を安定して二次側に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内側エスカチオンの正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電池ボックスにおいて、(a)は、スライド電極が電池の他の接続端子との離間位置にある状態を示す正面図であり、(b)は、スライド電極が電池の他の接続端子との接触位置にある状態を示す正面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る内側エスカチオンの正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電池ボックスにおいて、(a)は、スライド電極が電池の他の接続端子との離間位置にある状態を示す正面図であり、(b)は、スライド電極が電池の他の接続端子との接触位置にある状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る内側エスカチオンの正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る裏板及び電池ボックスの正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電池ボックスにおいて、(a)は、スライド電極が電池の他の接続端子との離間位置にある状態を示す正面図であり、(b)は、スライド電極が電池の他の接続端子との接触位置にある状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する各実施形態では、本発明に係る電池ボックス1を、電池式のカードロックシステムを備えたドア用錠前のエスカチオンに適用する場合について説明する。なお、説明の便のため、上下、左右、前後等の方向を示す語は、図1を基準として用いる。
【0016】
<第1の実施形態>
まず、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示されるように、ホテルの客室用ドア2(以下、「ドア2」と略称する。)の内壁面3には、内側エスカチオン4が設けられている。内側エスカチオン4は、ドア2の内壁面3に取り付けられた縦長形状の室内側装飾板本体5と、室内側装飾板本体5の上下方向中央よりやや上方に設けられた内側ハンドル6と、室内側装飾板本体5の下部に設けられたサムターン7と、室内側装飾板本体5の下部から下端部に挿入された電池ボックス1と、を備えている。
【0017】
室内側装飾板本体5は、左右両縁部が内壁面3側に屈曲されてコ字状を成している。室内側装飾板本体5の上端には上側蓋部材8が取り付けられている。室内側装飾板本体5の上下方向中央よりやや上方には、内側ハンドル取付穴10が水平方向に穿設され、室内側装飾板本体5の下部には、サムターン取付穴11が水平方向に穿設されている。室内側装飾板本体5の下端には挿通穴12が穿設されている。室内側装飾板本体5には、下部から下端部にかけて内壁面3との間に扁平な空間13が設けられ、この空間13の下端に挿入開口部14が形成されている。
【0018】
内側ハンドル6は、ドア2の内壁面3に回転可能に設けられている。内側ハンドル6は、ドア2の内壁面3に対して垂直に設けられたハンドル軸15と、ハンドル軸15の先端から略垂直に屈曲された把手部16と、を備えている。
【0019】
ハンドル軸15は、室内側装飾板本体5の内側ハンドル取付穴10に貫挿されている。図示を省略するが、ハンドル軸15は、ドア2に収納された錠ケース内の進退機構を介して、ドア2の扉木口に設けられたラッチボルトと接続されている。そして、把手部16を操作してハンドル軸15を回転させることで、進退機構を介してラッチボルトが進退し、ラッチボルトがドア2の扉木口から出没するように構成されている。
【0020】
サムターン7は、ドア2の内壁面3に回転可能に設けられている。サムターン7は、ドア2の内壁面3に対して垂直に設けられたサムターン軸17と、このサムターン軸17の先端に接続された板状の摘み部18と、を備えている。
【0021】
サムターン軸17は、室内側装飾板本体5のサムターン取付穴11に貫挿されている。図示を省略するが、サムターン軸17は、ドア2内に収納された錠ケース内のロック機構を介して、ドア2の扉木口に設けられたデッドボルトと接続されている。そして、摘み部18を操作してサムターン軸17を回転させることで、ロック機構を介してデッドボルトが進退し、デッドボルトがドア2の扉木口から出没するように構成されている。
【0022】
図2に示されるように、電池ボックス1は、正面側が開口されて箱型形状を成す収納部材20と、この収納部材20の下端に固定された下側蓋部材21と、を備えている。
【0023】
収納部材20の上部には、電池22(本実施形態では1個の乾電池)を収容可能な電池収納部23が設けられている。この電池収納部23の上端には固定電極24が設けられ、この固定電極24は、電池22の軸方向一端に設けられた一方の接続端子25(本実施形態では正極端子)に接触している。
【0024】
電池収納部23の下端には、スライド電極26が設けられている。スライド電極26は、例えば金属板を折曲して形成され、平面視で台形状を成しており、その先端には平面部29が形成されている。スライド電極26は、例えばガイドレール等の支持部材(図示せず)に支持されており、電池22の軸方向他端に設けられた他方の接続端子27(本実施形態では負極端子)との離間位置と接触位置の間で、電池22の軸方向に沿ってスライド可能となっている。スライド電極26は、例えばコイルスプリング等の付勢部材(図示せず)によって、他方の接続端子27との離間位置側に付勢されている。
【0025】
収納部材20の下部には、スライド電極26の近傍にカム28が設けられている。カム28は、スライド電極26の下方に設けられたカム軸30を介して収納部材20に軸支されている。そして、カム28に設けられた摘み(図示せず)を操作することで、カム28が回転して、他方の接続端子27との離間位置から接触位置までカム28がスライド電極26を押圧するように構成されている。収納部材20の下部には、カム28の近傍に取付ネジ穴32が設けられている。
【0026】
図示を省略するが、ドア2の外壁面には内側エスカチオン4と略同一の高さに外側エスカチオンが設けられている。外側エスカチオンの上部には挿入式のカードリーダが設けられている。そして、このカードリーダにゲストカード(施解錠カード)が挿入されると、このゲストカードの情報をカードリーダが読み取り、正常に認証がされると、ドア2が電気的に解錠されるように構成されている。このようなドアの電気的な解錠及びドアの電気的な施錠(説明省略)は、電池22から供給される電圧(以下、「電池電圧」と称する。)を動力源として行われている。外側エスカチオンの下部には外側ハンドルが設けられ、この外側ハンドルを回転させることで、上記した内側ハンドル6の場合と同様の作用により、ラッチボルトがドア2の扉木口から出没するように構成されている。
【0027】
上記のように構成されたものにおいて、電池ボックス1に電池22を固定するには、図2(a)に示されるように、スライド電極26が他方の接続端子27との非接触位置に配置された状態で、固定電極24に一方の接続端子25を接触させるようにして、電池収納部23に電池22を挿入する。この時、電池22は電池ボックス1に固定されていない。この状態から、カム28の摘み(図示せず)を操作して図面上時計回りにカム28を回転させると、この回転に伴ってカム28がスライド電極26を他方の接続端子27側へ押圧する。これにより、図2(b)に示されるように、他方の接続端子27との離間位置から接触位置までスライド電極26がスライドし、電池22が電池ボックス1に固定される。
【0028】
上記のようにして電池22が固定された電池ボックス1を室内側装飾板本体5に取り付けるには、電池ボックス1の収納部材20を挿入開口部14から室内側装飾板本体5の空間13内に挿入し、挿入開口部14を下側蓋部材21にて閉止する。この状態で、室内側装飾板本体5の挿通穴12に貫挿させた取付ネジ33を収納部材20の取付ネジ穴32に螺合させる。これにより、電池ボックス1が室内側装飾板本体5に取り付けられるとともに、カム28の回転が規制される。
【0029】
また、上記のようにして室内側装飾板本体5に取り付けた電池ボックス1から電池22を取り外すには、取付ネジ33を挿通穴12及び取付ネジ穴32から取り外して、電池ボックス1を室内側装飾板本体5から抜き出した後、図面上反時計回りにカム28を回転させる。このカム28の回転により、カム28によるスライド電極26の押圧が解除される。これに伴って、図2(a)に示されるように、スライド電極26が付勢部材(図示せず)の付勢力により他方の接続端子27との接触位置から離間位置までスライドし、電池ボックス1からの電池22の取り外しが可能となる。
【0030】
本実施形態では上記のように、他方の接続端子27との離間位置と接触位置の間で、電池22の軸方向に沿ってスライド可能なスライド電極26を備えており、固定されたバネにより電極を構成する場合と比較して、電池22を電池ボックス1に強固に固定して電池22の暴れを防止することが可能となる。そのため、ドア2の開閉に伴う衝撃や振動によって電池ボックス1から電池22が飛び出してしまうような不具合を抑制することが可能となり、電池電圧を安定して二次側に供給することができる。また、上記のような構成を採用することで、バネにより電極を構成する場合と比較して、電極の耐久性を向上させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態に係る電池ボックス1が設けられる内側エスカチオン4は、ドア2の内壁面3に固定されるという構成上、極力厚みを小さくすることが求められる。この点、本実施形態のスライド電極26は、電池22と同軸上に設けられており、電池22よりも表面側に突出しない。そのため、電池22の上面をクッションで抑え付ける構成等と比較して、電池ボックス1の厚みを小さくすることが可能となり、内側エスカチオン4の外観を良好に保つことが可能となる。このように、本実施形態に係る電池ボックス1は、ドア2の壁面に取り付けられるエスカチオンに好適なものである。
【0032】
また、本実施形態では、カム28によってスライド電極26を押圧する構成としているため、簡易な構成で、スライド電極26を他方の接続端子27との離間位置から接触位置まで容易にスライドさせることが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、カム28に設けられた摘み(図示せず)を回転させることで手動によりカム28を回転させる構成としたが、他の異なる実施形態では、室内側装飾板本体5の空間13に電池ボックス1が挿入されるのに連動して、電池ボックス1に設けられた押圧部(図示せず)でカム28を押圧して自動的にカム28を回転させる構成としても良い。また、本実施形態では、カム28としていわゆる円板カムを用いたが、他の異なる実施形態では、例えば直動カム等の他の形式のカム28を用いても良い。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、図3、図4を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図3に示されるように、ドア2の内壁面3には、内側エスカチオン4が設けられている。内側エスカチオン4は、ドア2の内壁面3に取り付けられたカバー部材としての縦長形状の室内側装飾板本体5と、室内側装飾板本体5の上下方向中央よりやや上方に設けられた内側ハンドル6と、室内側装飾板本体5の下部に設けられたサムターン7と、室内側装飾板本体5の下部から下端部に挿入された電池ボックス1と、を備えている。室内側装飾板本体5、内側ハンドル6及びサムターン7については、第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0035】
図4に示されるように、電池ボックス1は、正面側が開口されて箱型形状を成す収納部材20と、収納部材20の下端に設けられた下側蓋部材21と、を備えている。
【0036】
収納部材20には、電池22(本実施形態では、直列接続された2個の乾電池)を収納可能な左右一対の電池収納部23が設けられ、各電池収納部23の上端には、固定電極24が設けられている。左側の電池収納部23の固定電極24は、左側の電池22の軸方向一端に設けられた一方の接続端子25(本実施形態では正極端子)と接触し、右側の電池収納部23の固定電極24は、右側の電池22の軸方向一端に設けられた一方の接続端子25(本実施形態では負極端子)と接触している。
【0037】
下側蓋部材21は、収納部材20に対して電池22の軸方向に沿ってスライド可能に設けられている。下側蓋部材21をスライドさせる構成としては、例えば、収納部材20又は下側蓋部材21のいずれか一方にガイドレールを設け、このガイドレールに係合するガイド片を、収納部材20又は下側蓋部材21のいずれか他方に設ける構成を採用することが可能である。下側蓋部材21は、抜け止め機構(図示せず)によって収納部材20に対して分離不能に設けられている。
【0038】
下側蓋部材21には、左右一対のスライド電極26が設けられている。スライド電極26は、例えば金属板を折曲して形成され、平面視で台形状を成しており、その先端には平面部29が形成されている。左側のスライド電極26は、上記した下側蓋部材21のスライドに伴って、左側の電池22の軸方向他端に設けられた他方の接続端子27(本実施形態では負極端子)との離間位置と接触位置の間で、電池22の軸方向に沿ってスライドするように構成されている。右側のスライド電極26は、下側蓋部材21のスライドに伴って、右側の電池22の軸方向他端に設けられた他方の接続端子27(本実施形態では正極端子)との離間位置と接触位置の間で、電池22の軸方向に沿ってスライドするように構成されている。下側蓋部材21には、左右一対のスライド電極26の間に連結板41が上方に向かって突設され、この連結板41には取付ネジ穴32が設けられている。
【0039】
図示を省略するが、ドア2の外壁面には内側エスカチオン4と略同一の高さに外側エスカチオンが設けられている。外側エスカチオンの構成については、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0040】
上記のように構成されたものにおいて、電池ボックス1に電池22を固定するには、図4(a)に示されるように、各スライド電極26が各他方の接続端子27との非接触位置に配置された状態で、各固定電極24に各一方の接続端子25を接触させるようにして、電池収納部23に電池22を挿入する。この時、電池22は電池ボックス1に固定されていない。この状態から、下側蓋部材21を収納部材20に対して図面上において上方にスライドさせると、図4(b)に示されるように、各他方の接続端子27との離間位置から接触位置まで各スライド電極26がスライドし、電池22が電池収納部23に強固に固定される。
【0041】
上記のようにして電池22が固定された電池ボックス1を室内側装飾板本体5に取り付けるには、電池ボックス1の収納部材20を挿入開口部14から室内側装飾板本体5の空間13内に挿入し、挿入開口部14を下側蓋部材21にて閉止する。この状態で、室内側装飾板本体5の挿通穴12に貫挿させた取付ネジ33を連結板41の取付ネジ穴32に螺合させる。これにより、電池ボックス1が室内側装飾板本体5に取り付けられるとともに、収納部材20に対する下側蓋部材21のスライドが規制される。
【0042】
また、上記のようにして室内側装飾板本体5に取り付けた電池ボックス1から電池22を取り外すには、取付ネジ33を挿通穴12及び取付ネジ穴32から取り外して、電池ボックス1を室内側装飾板本体5から抜き出した後、下側蓋部材21を電池ボックス1に対して図面上において下方にスライドさせる。これに伴って、図4(a)に示されるように、各スライド電極26が各他方の接続端子27との接触位置から離間位置までスライドし、電池ボックス1からの電池22の取り外しが可能となる。
【0043】
本実施形態では上記のように、下側蓋部材21を収納部材20に対してスライド可能とし、これに伴って下側蓋部材21に設けられたスライド電極26のスライドを可能としている。このような構成を採用することで、既存の構成部品である収納部材20と、下側蓋部材21と、室内側装飾板本体5と、によって、本発明の電池ボックス1を構成することが可能となる。そのため、部品点数の増加を抑制して、製造工程の簡易化及び製造コストの低廉化を図ることが可能となる。
【0044】
<第3の実施形態>
次に、図5〜図7を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。図5に示されるように、ドア2の内壁面3には、内側エスカチオン4が設けられている。内側エスカチオン4は、ドア2の内壁面3に固定された縦長形状の裏板51と、裏板51に取り付けられたカバー部材としての縦長形状の室内側装飾板本体5と、室内側装飾板本体5の上下方向中央よりやや上方に設けられた内側ハンドル6と、室内側装飾板本体5の下部に設けられたサムターン7と、室内側装飾板本体5の中央部から下部に設けられた電池ボックス1と、を備えている。なお、内側ハンドル6及びサムターン7については、第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。また、図7においては、内側ハンドル6及びサムターン7の記載が省略されている。
【0045】
図6に示されるように、裏板51は、平面視で正方形状の上側裏板52と、この上側裏板52の下端に連結された縦長形状の下側裏板53と、により構成されている。上側裏板52の下端には一方連結穴54が設けられている。上側裏板52の上縁部と両側縁部には、上側フランジ部55が設けられている。
【0046】
下側裏板53は、上方に向かって幅狭となるように形成された固定板56と、固定板56よりも幅広に形成されて固定板56の下端から下方に向かって延ばされた取付板57と、を備えている。
【0047】
固定板56の上端には他方連結穴59が設けられ、この他方連結穴59及び上側裏板52の一方連結穴54に貫挿された連結ネジ58によって、上側裏板52と下側裏板53とが連結されている。他方連結穴59の下方には、取付ネジ穴32が設けられている。固定板56の下部には、ハンドル軸15を貫挿させるためのハンドル挿通穴60が設けられている。固定板56の上縁部及び両側縁部には固定フランジ部61が設けられている。
【0048】
取付板57は、正面視で縦長長方形状を成している。取付板57の上下方向中央には、サムターン軸17を貫挿させるためのサムターン挿通穴62が設けられている。取付板57の下縁部及び両側縁部には下側フランジ部63が設けられており、左側縁部の下側フランジ部63には、上部から上下方向中央にかけて切欠部64が設けられている。
【0049】
室内側装飾板本体5の上部には挿通穴12(図5参照)が穿設され、室内側装飾板本体5の外周には、内壁面3側に屈曲された外周フランジ部65(図7参照)が設けられている。そして、外周フランジ部65を、裏板51の上側フランジ部55及び下側フランジ部63の外周に嵌合させた状態で、挿通穴12及び取付ネジ穴32に取付ネジ33を貫挿させることで、室内側装飾板本体5が裏板51に固定されている。
【0050】
図7に示されるように、左側の外周フランジ部65には、裏板51の下側フランジ部63に設けられた切欠部64と対応する高さに、電極押し込み部66が設けられている。電極押し込み部66は、左側の外周フランジ部65から、室内側装飾板本体5の幅方向(本実施形態では左右方向)内側に向かって突出しており、後方に向かって縮径するテーパ状に形成されている。
【0051】
電池ボックス1は、正面側が開口されて箱型形状を成す収納部材20を備えており、室内側装飾板本体5を裏板51に取り付ける動作に連動して、室内側装飾板本体5が収納部材20に装着されるように構成されている。この収納部材20には、電池22(本実施形態では1個の乾電池)が、上下方向に並列して4個、横置きで収納されている。
【0052】
収納部材20の右側板67には、上下方向に連続して4個の固定電極24が設けられ、各固定電極24は、各電池22の軸方向一端に設けられた一方の接続端子25(上端の電池22と上から3番目の電池22に関しては負極端子、上から2番目の電池22と下端の電池22に関しては正極端子)に接触している。各固定電極24は、配線(図示せず)を介して上側裏板52に固定された基板(図示せず)と接続されている。収納部材20の左側板68と各電池22の軸方向他端に設けられた他方の接続端子27(上端の電池22と上から3番目の電池22に関しては正極端子、上から2番目の電池22と下端の電池22に関しては負極端子)との間には隙間70が設定されている。
【0053】
収納部材20の左側板68には、上下方向に連続して4個の挿入穴71が左右方向に穿設されており、各挿入穴71には、スライド電極26が挿入されている。スライド電極26は、例えば金属板を折曲して形成され、平面視で台形状を成しており、その先端には平面部29が形成されている。スライド電極26は、例えば収納部材20又は裏板51に設けられたガイドレール等の支持部材(図示せず)に支持されており、各電池22の他方の接続端子27との離間位置と接触位置の間で、電池22の軸方向に沿ってスライド可能となっている(図7参照)。各スライド電極26は、各固定電極24と同様に、配線(図示せず)を介して、上側裏板52に固定された基板(図示せず)と接続されている。スライド電極26は、例えばコイルスプリング等の付勢部材(図示せず)によって、他方の接続端子27との離間位置側に付勢されている。
【0054】
各スライド電極26には、各電池22の他方の接続端子27から離間した側の端面(本実施形態では左端面)に、傾斜面72が設けられている。図7(a)に示されるように、傾斜面72は、内側装飾板本体5の電極押し込み部66と平行に設けられるとともに、内側装飾板本体5の収納部材20への装着方向X(本実施形態では前後方向)に対して所定角度傾斜して設けられている。
【0055】
図示を省略するが、ドア2の外壁面には内側エスカチオン4と略同一の高さに外側エスカチオンが設けられている。外側エスカチオンの構成については、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0056】
上記のように構成されたものにおいて、電池ボックス1に電池22を固定するには、図7(a)に示されるように、各スライド電極26が各他方の接続端子27との非接触位置に配置された状態で、各固定電極24に各一方の接続端子25を接触させるようにして、電池収納部23に各電池22を挿入する。この時、各電池22は電池ボックス1に固定されていない。
【0057】
この状態から、室内側装飾板本体5を裏板51に対して取り付けると、この取付に連動して、装着方向Xに沿って室内側装飾板本体5が収納部材20に装着される。これに伴って、図7(b)に示されるように、室内側装飾板本体5の電極押し込み部66がスライド電極26の傾斜面72を押圧し、各他方の接続端子27との離間位置から接触位置まで各スライド電極26がスライドし、電池22が収納部材20に強固に固定される。この状態で、挿通穴12及び取付ネジ穴32に取付ネジ33を貫挿させることで、室内側装飾板本体5が裏板51に固定される(図5参照)。
【0058】
本実施形態ではこのように、室内側装飾板本体5の収納部材20への装着動作に連動して、各スライド電極26が自動的に各他方の接続端子27との離間位置から接触位置までスライドするように構成されている。そのため、電池ボックス1の利用者は、スライド電極26の存在を意識せずに、従来の電池ボックス1と同様の装着動作によりスライド電極26を各電池22の各他方の接続端子27に固定することが可能となり、利用者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0059】
また、上記のようなスライド電極26の自動的なスライドを、機械的構成のみによって実現しているため、例えば電子的な制御により上記したスライド電極26の自動的なスライドを実現する場合と比較して、製造工程の簡易化と製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0060】
本実施形態では、スライド電極26を付勢部材(図示せず)によって他方の接続端子27との離間位置側に付勢する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、スライド電極26を付勢しなくても良い。
【0061】
上記した第1〜第3の実施形態では、本発明に係る電池ボックス1を内側エスカチオン4に適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、外側エスカチオンに本発明に係る電池ボックス1を適用したり、内側エスカチオン4及び外側エスカチオンの両方に本発明に係る電池ボックス1を適用したりすることも可能である。
【0062】
上記した第1〜第3の実施形態では、本発明に係る電池ボックス1を挿入式のカードリーダを備えたドア用錠前のエスカチオンに適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、非接触式のカードリーダを備えたドア用錠前のエスカチオンに本発明を適用したり、カードリーダを有しないドア用錠前のエスカチオンに本発明を適用したりすることも可能である。また、本発明の適用対象は、ドア用錠前のエスカチオンに限定されず、衝撃、振動を受けるような場所に設置される電池製品全般に対して本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 電池ボックス
4 内側エスカチオン(エスカチオン)
5 室内側装飾板本体(カバー部材)
13 空間
14 挿入開口部
20 収納部材
21 下側蓋部材(蓋部材)
22 電池
24 固定電極
25 一方の接続端子
26 スライド電極
27 他方の接続端子
28 カム
66 電極押し込み部
72 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の軸方向一端に設けられた一方の接続端子に接触する固定電極と、
前記電池の軸方向他端に設けられた他方の接続端子との離間位置と接触位置の間で、前記電池の軸方向に沿ってスライド可能に設けられたスライド電極と、
を備えていることを特徴とする電池ボックス。
【請求項2】
前記スライド電極の近傍にカムが設けられ、該カムに押圧されて前記他方の接続端子との離間位置から接触位置まで前記スライド電極がスライドすることを特徴とする請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項3】
前記電池を収納可能に設けられて前記固定電極を有する収納部材と、該収納部材を挿入可能な空間を有するカバー部材と、前記収納部材に対してスライド可能に設けられて前記カバー部材の挿入開口部を閉止する蓋部材と、を備え、
該蓋部材に前記スライド電極が設けられ、前記蓋部材のスライドに伴って前記他方の接続端子との離間位置から接触位置まで前記スライド電極がスライドすることを特徴とする請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項4】
前記電池を収納可能に設けられて前記固定電極を有する収納部材と、該収納部材に装着されて電極押し込み部が設けられたカバー部材と、を備え、
前記スライド電極には、前記カバー部材の前記収納部材への装着方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、
前記カバー部材を前記収納部材に装着すると、前記電極押し込み部が前記傾斜面を押圧して、前記他方の接続端子との離間位置から接触位置まで前記スライド電極がスライドすることを特徴とする請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の電池ボックスを備えていることを特徴とするドア用錠前のエスカチオン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−174491(P2012−174491A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35537(P2011−35537)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】