説明

電池モジュール

【課題】異常温度に達した組電池を特定する温度管理を従来に比べて確実に行い、断線異常を発見して良好に安全機構を作動させることの可能な電池モジュールを提供する。
【解決手段】2個以上の素電池または組電池に跨って這設され感熱体は、相互に接近する方向に付勢されて同じ方向に延在する2本の導電線の間に熱可溶性部材を介在させて各導電線を離間させた構造を有し、2本の導電線は先端で連結されており、2本の導電線の少なくとも1本は所定の間隔に所定の抵抗値を有し、素電池または組電池が異常温度に達すると、熱可溶性部材の溶融に伴って導電線同士が近接接触し、当該感熱体が近接接触を導電線同士の短絡として検知する構成とすることにより、断線異常の発見と、異常温度に達した素電池または組電池の特定を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池または複数の素電池を有する組電池の異常温度上昇時に素電池からの入出力を遮断する電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電池モジュールは、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、電動工具、電気自動車などの電源として広く用いられている。
【0003】
電池モジュールは、直列または並列に電気接続された複数の素電池、特にリチウムイオン電池などの二次電池を主として構成されるが、素電池の種類や使用条件等によって、素電池を管理する必要が生じることがある。このため電池モジュールは、場合によっては素電池に加え、温度ヒューズ、温度センサや保護回路を電気的に接続した状態で、これをプラスチックケースや樹脂フィルム等の絶縁素材で被覆して構成される。
【0004】
保護回路は、例えばリチウムイオン電池等の過充電・過放電を防止するための電圧管理等の目的で用いられる。
【0005】
温度ヒューズや温度センサは、素電池の温度管理を行うためのものであって、異常温度上昇時における安全機構動作を目的として、電池モジュールのメイン回路における外部入力経路や外部出力経路を遮断するように配設される。例えば特許文献1において、複数の二次電池を薄板テープ状の熱伝導体で共通に熱結合させ、当該熱伝導体の一部領域に温度センサ(サーミスタ素子)を設け、電池の温度管理を行う技術が開示されている。
【0006】
なお温度ヒューズの種類としては、いわゆるPTC素子(Positive Temperature Coefficient)やNTC素子(Negative Temperature Coefficient)、サーミスタ素子の他、特許文献2に開示されているように、容器内に温度ペレットとリード線、電極線を配した構成を持ち、温度上昇に伴い温度ペレットが昇華することで、リード線と電極線の通電が解かれるようにする技術が考案されている。
【0007】
また、特許文献3のように、2本の金属線の間に可溶体を介在させ、金属線を離間させて構成される感熱体を、複数の素電池に対して少なくとも2個以上の素電池にわたって熱結合するように配して、各素電池のいずれが異常温度に達しても、バラツキ無く検知できる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−307171号公報
【特許文献2】特開平9−63441号公報
【特許文献3】特開2008−288046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら前記従来の構成では、これに含まれる各素電池について、良好な温度管理がなされているとは言い難い現状にある。
【0010】
例えば特許文献1の技術では、各素電池を熱導電体で熱結合させ、これを温度センサで間接的に熱管理する構成であるため、センサが設けられる位置から遠ざかるにつれて、その素電池の温度管理にずれが生じやすくなる。
【0011】
このような温度管理の不備を改善するためには、各素電池のそれぞれに対して、特許文献2に示す温度ヒューズやPTC素子を熱結合させて、個別管理することが考えられるが、素電池の数に比例して素子が必要となるのでコストの問題も生じるほか、回路構成もその分複雑になる。
【0012】
また、特許文献3では、素電池のいずれかが異常温度に達したことは検知できるが、異常温度に達した素電池を特定することは困難である。さらに、2本の金属線が同じ方向に延在しているだけであるため、金属線が正常である場合と断線している場合との区別ができず、金属線が断線したとき異常温度になった素電池が発生しても検知することができないことがある。
【0013】
また、数本の素電池から高温異常になった素電池を素電池の外観から探すことが可能であったとしても、アルミ製の金属ブロックなどに収納された複数の素電池を有する数十個の組電池から高温異常になった素電池及び組電池を探すことは非常に困難である。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、比較的低コストでありながら、異常温度に達した素電池、或いは、異常温度に達した素電池を有する組電池を特定して温度管理を従来に比べて確実に行い、断線異常を発見して良好に安全機構を作動させることの可能な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電池モジュールは、電気的に接続された複数の素電池または組電池を有する電池モジュールであって、長手方向の略全域が感熱域とされ、当該感熱域の任意の部位での異常温度検知を電気信号として取得することのできる長尺状の感熱体が、素電池または組電池の2個以上に跨ってその周面に這設され、素電池または組電池から負荷装置への電流路の開閉を制御する制御部に対し、感熱体から取得される電気信号を制御信号として入力されており、感熱体の感熱域の任意の部位において、素電池または組電池が異常温度に達したときに、当該異常温度検知にかかる電気信号を感熱体より受けた制御部が電流路を遮断する構成であり、感熱体は、相互に接近する方向に付勢されて同じ方向に延在する2本の導電線の間に熱可溶性部材を介在させて各導電線を離間させた構造を有し、2本の導電線は先端で連結されており、2本の導電線の少なくとも1本は所定の間隔に所定の抵抗値を有し、素電池または組電池が異常温度に達すると、熱可溶性部材の溶融に伴って導電線同士が近接接触し、当該感熱体が近接接触を導電線同士の短絡として検知する構成とした。
【0016】
本構成によって、断線異常の発見と、異常温度に達した素電池または組電池の特定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電池モジュールによれば、比較的低コストでありながら、異常温度に達した素電池または組電池を特定して温度管理を従来に比べて確実に行い、断線異常を発見して良好に安全機構を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における電池モジュールの構成図
【図2】本発明の実施の形態1における感熱体の概要図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における感熱体の通常時の概要図、(b)感熱体の高温異常時の概要図
【図4】本発明の実施の形態1における制御回路の構成図
【図5】(a)本発明の実施の形態1における螺旋状の感熱体を示す図、(b)帯状の感熱体を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の電池モジュールの構成について説明する。
【0020】
図1は本実施の形態1の電池モジュール100の構成を示す図である。
【0021】
電池モジュール100は、複数の素電池111を有する組電池110、感熱体120、抵抗体130、リード線140、グラステープ150、等から構成される。本実施の形態1の電池モジュール100は、組電池110毎に感熱体120と抵抗体130が配されている点に主な特徴を有するものである。
【0022】
複数の素電池111は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池などの二次電池である。各素電池の内部には所定の発電要素が収納されている。そして、図1に示すように、複数の素電池111は、例えば、組電池110内で全て同一の方向を向いて配置され並列接続されている。
【0023】
組電池110は、アルミ製の金属ブロック112を有し、その金属ブロック112の内部に配置された複数個(図1では20個)の素電池111が同じ方向を向いて並列接続されている。
【0024】
このうち、素電池111が並列接続された組電池110の負極から隣接する組電池110の正極にそれぞれリード線140が接続されている。そして、最端の組電池110のリード線140は、電池モジュール100の外部にある負荷装置300と接続されている。
【0025】
また、組電池110毎に組電池110の一つの面に感熱体120が配置され、感熱体120と感熱体120との間には抵抗体130が配置されている。つまり、複数個の感熱体120が間に抵抗体130を有しながら電気的にはU字に直列接続されている。
【0026】
ここで、電池モジュール100の特徴は、複数の組電池110の異常温度上昇時における安全機構として、感熱体120、抵抗体130および制御回路200等が設けられていることにある。
【0027】
次に、感熱体120について詳細に説明する。図2は本発明の実施の形態1における感熱体の概要図で、図1のA部拡大図である。図2に示すように感熱体120は、複数の組電池110の異常温度検知線として作動するものであって、全体として並行に配された金属線(A線)121、金属線(B線)122の間に可溶体123を介在させ、前記金属線121、122を離間させて構成される。
【0028】
金属線121、122としては、例えば直径0.5mm程度の単線を用いる。ここでは金属線(A線)121と金属線(B線)122を縒り線状にしている。これらの金属線121、122は、両者とも直線状のまま用いてもよいが、片方を直線、他方を螺旋状にした形態としてもよく、その形態に限定されない。材料としては、ともに導電性に優れる銅線などを用いるのが望ましい。
【0029】
可溶体123は、通常は固体を維持しているが、所定の高温時に可溶性を呈する材料で構成されている。ここでは、組電池の一般的な異常温度を90±10℃とし、この温度域で可溶性を有する材料として、ポリエチレン或いはPET(Polyethylene terephthalate)等の樹脂を使用している。また、可溶体123としては昇華性の温度ペレットを用いることもできる。この構成によって、感熱体120の感熱域は、その長さ方向のほぼ全域にわたる。
【0030】
なお、複数の組電池110に用いる素電池111として二次電池を使用するので、通常の駆動でも大電流放電時には60℃付近にまで温度上昇することがあるので、駆動時の正常な温度上昇を考慮して、これより高い温度範囲を異常温度として感熱体120が検知できるように設定しておく必要がある。
【0031】
感熱体120における可溶体123は、金属線121、122のみ樹脂を被覆したり、金属線121、122の全体を樹脂で被覆したりすることにより形成することができる。
【0032】
金属線121、122は、一方の先端で連結されており、金属線121、122の少なくとも一方に所定の間隔毎に所定の抵抗値の抵抗体130が配置されている。このとき、例えば、n個の組電池110を並べた電池モジュール100において、金属線(A線)121に組電池間距離毎にA(kΩ)の抵抗体130が電池の個数と同じn個数配置されている。このとき、金属線121、122の連結されていない他方の先端間、つまり、制御回路200に接続される抵抗体130の抵抗値は、n×A(kΩ)となっている。
【0033】
図3は本発明の実施の形態1における感熱体の概要図で。図3(a)は感熱体の通常時の概要図で、図3(b)は感熱体の高温異常時の概要図である。
【0034】
図3(a)に示す具体例においては、金属線121、122は可溶体123の表面に対して適度な巻き付け強度で螺旋状に巻回されている。このとき金属線121、122の端部を延伸方向に付勢しておくことが望ましい。金属線121、122は、可溶体123が介設されていることで、通常は絶縁状態に保たれる。
【0035】
なお、図3では構造の説明上、感熱体120の内部構造が見えるように模式的に描いているが、実際は感熱体120の全体にわたり可溶体123および金属線121、122が配設されている。
【0036】
この金属線121、122の端部は、制御回路200に接続されている。
【0037】
以上の構成を持つ感熱体120は、全体としてワイヤー状に形成され、図1に示すように、複数の組電池110の外周面にわたり共通して配置するように配される。感熱体120は組電池110の一つの面のほぼ全面に貼着されていればよい。このとき、感熱体120の全体が複数の組電池110に対して接触し、且つ適度なテンションを保つように貼着される必要がある。
【0038】
このように複数の組電池110に対して配設された感熱体120は、これを被覆し、且つ複数の組電池110に対して押圧するように、グラステープ150(ここでは強度及び耐性に優れるグラステープを用いている)で複数の組電池110表面に貼着され、熱結合される。
【0039】
そして、複数の組電池110の少なくともいずれかが高温異常になった素電池111を有し、組電池110の温度に異常上昇が生じたときは、図3(b)に示すように、感熱体120は当該異常温度の発生した複数の組電池110に対し、熱結合するように巻回された任意の部分で溶融する。このように可溶体123が溶解して状態変化を起こせば、金属線121、122はグラステープ150からの押圧力により近接接触し、短絡して金属線121、122の連結されていない他方の先端間、つまり、制御回路200側の抵抗値が、n×A(kΩ)よりも低い値になる。ここで、金属線121、122自体が互いに短絡する方向に十分に付勢されているときは、グラステープ150が必須でなくても短絡させることが可能である。
【0040】
このように短絡が生じると、図1における感熱体120の両端の抵抗値が短絡したm番目(m=1〜n)の電池までの抵抗体の個数(m−1個)になるので、抵抗値はn×A(kΩ)から(m−1)×A(kΩ)に低い値になる。
【0041】
次に、本発明の電池モジュールの制御回路200について説明する。
【0042】
図4は、感熱体120、複数の組電池110に接続された制御回路200の構成を模式的に示す回路図である。制御回路200は、電池モジュール100の各々に接続された計測ECU210、複数の計測ECU210から計測データを受信する制御ECU220、制御ECU220に対して指示を行う上位ECU230から構成されている。
【0043】
制御回路200の中に配置されている構成を電気自動車に例えると、複数の計測ECU210と制御ECU220は電池パック内に配置され、上位ECU230は自動車の制御コンピュータに配置されている。
【0044】
計測ECU210は、電池モジュール100の各々に対して1つずつ配置されている。そして、計測ECU210は電池モジュール100の感熱体120の抵抗値を計測部211で測定し、測定した抵抗値を通信部212から制御ECU220に送信する。
【0045】
計測部211は、実際には制御電源から接続された複数個の抵抗体130の電圧を測定することになるが、本文では便宜上「抵抗値を測定する」と述べる。
【0046】
例えば、n個の組電池110を持った電池モジュール100の感熱体120が、n個の抵抗値A(kΩ)の抵抗体を有しているとする。計測ECU210は、電池モジュール100が正常であれば、n×A(kΩ)の抵抗値を測定する。電池モジュール100のm番目(m=1〜n)の組電池110に高温異常が発生したとき、感熱体120の金属線121、122が近接接触し、抵抗値が(m−1)×A(kΩ)となる。
【0047】
また、電池モジュール100の感熱体120の金属線121、122がどこかで断線しているとき、抵抗値は無限大と測定する。
【0048】
制御ECU220は複数の計測ECU210から送信された抵抗値を各々受信し、高温異常判定部221が受信した複数の電池モジュール100の抵抗値が所定の抵抗値であるかどうかを判定する。
【0049】
上記の例で言うと、制御ECU220はn×A(kΩ)の抵抗値を受信したとき、所定の抵抗値であると判定し、(n−1)×A(kΩ)以下の抵抗値を受信したとき、所定の抵抗値でないと判定する。また、無限大の抵抗値を受信したとき、感熱体120の金属線121、122がどこかで断線していると判定する。
【0050】
上位ECU230は、制御ECU220から高温異常判定の結果を受信し、その判定結果を用いてシステム全体の充放電の許可判定を行う。つまり、電池モジュール100を負荷装置300からスイッチ310で切離すかどうかを判定する。そして、上位ECU230は、充放電を許可すべきと判断した場合、スイッチ310をオンのままにして、システムを稼動状態にし、充放電を停止すべきと判断した場合、スイッチ310をオフにし、システムを停止する。
【0051】
最後に、本発明の効果について説明する。
【0052】
以上の構成を持つ本実施の形態1の電池モジュール100によれば、通常は感熱体120の金属線121、122が計測ECU210の反対側の先端で接続されているため、感熱体120からのデジタル信号は所定の抵抗値であるn×A(kΩ)が入力される。このとき、上位ECU230は、充放電許可判定部231で充放電を許可し、スイッチ310をオンにする。したがって、複数の組電池110は、負荷装置300と通電状態にあり、複数の組電池110に対して普通に充電あるいは放電がなされる。
【0053】
そして、複数の組電池110のm番目(m=1〜n)の組電池110に故障が発生し、その温度に異常上昇が生じたときは、感熱体120からのデジタル信号は所定の抵抗値であるn×A(kΩ)より小さい(m−1)×A(kΩ)が入力される。このとき、上位ECU230は、充放電許可判定部231で充放電を許可し、スイッチ310をオフにする。したがって、複数の組電池110は、負荷装置300と不通状態にあり、複数の組電池110に対して充電あるいは放電がなされない。そして、高温異常になった組電池110をm番目の組電池110であることを特定することができる。
【0054】
また、感熱体120の金属線121、122に断線異常が発生したときは、感熱体120からのデジタル信号は無限大の抵抗値が入力される。このとき、上位ECU230は、感熱体120に断線異常が発生していることを検知し、システムの使用者にシステムの停止指示や感熱体120の交換の警告を促すことができる。
【0055】
本実施の形態1ではこのような検知作動を行うことにより、各素電池の配設位置に関係なく、複数の組電池110の各々に個別に感熱素子を配した場合と同等の高精度で、組電池110の各々の異常温度上昇を検知することができる。高温異常が発生したときはそれ以上の通電(本実施形態では充電/放電の両方)が遮断されるので、ユーザーに速やかに後処理を行うよう促す。さらに、高温異常を発生した組電池110を特定して修理・交換などを促すことができる。
【0056】
このように感熱体120は、組電池110に対して熱結合するように配設されていれば、組電池110の配置位置に関係なく、すべての組電池110に対して同じ精度でその異常温度上昇を検知することが可能な特徴を有する。したがって、従来のように局所的に感熱素子を設ける技術や、伝熱体を介して検温する構成に比べ、飛躍的に良好な作動が期待できるものである。
【0057】
さらに、感熱体120の断線についても検知することが可能で、より良好に安全機構を作動させることできる。
【0058】
なお、感熱体120の作動にかかる溶解樹脂量は極微量であるため、電池モジュール100の内部に広く拡散したり、当該パック外に漏れ出すなどの問題を生じる恐れは小さい。
【0059】
また、感熱体120のバリエーションについて説明する。
【0060】
本発明で用いられる感熱体120は、上記図3(a)に示したワイヤー状の構成に限定するものではなく、以下に示すように、これ以外の形態で2個以上の組電池110に共通して這設できる程度に長尺状に形成されていればよい。
【0061】
図5は、感熱体120のその他の構成例について、具体的なバリエーションを示す部分拡大図である。
【0062】
図5(a)は、直線と螺旋状に形成された金属線(A線)121と金属線(B線)122が互いに近接且つ可溶体で絶縁した状態で、可溶体123中に両線を保持されてなる感熱体の構成を示す。
【0063】
金属線121、122としては、例えば直径0.5mm程度の単線を用いる。ここでは金属線(A線)121を直線、金属線(B線)122を螺旋状にしている。
【0064】
感熱体120における可溶体123は、金属線(A線)121を芯体とし、例えばインサート成形により形成することができる。或いは先に線状の可溶体123を形成しておき、長手方向に沿って径方向に切れ込みを入れ、後からその切れ込み部分に金属線(A線)121を挿入して構成することもできる。可溶体123のサイズ例としては、直径1.2mm(金属線(A線)121の直径を含む)である。また、可溶体123はこれ以外のサイズに設定してもよいが、組電池110との密着性を得るために細く、且つ、金属線121、122との絶縁距離が小さいサイズであることが、感熱体120の良好な作動を得るために望ましい。
【0065】
図5(b)は、帯状の金属線(A部材)121および金属線(B部材)122を、同様に帯状の可溶体123を挟むように配した構成を示す。このような構成を持つ感熱体120は、金属線(A部材)121または金属線(B部材)122のいずれかの表面を組電池110に接触させた状態で、実施の形態1と同様に、グラステープ150により押圧して保持させることができる。
【0066】
当該構成によれば、接触面積が確保されるので、より組電池110に対する熱結合性を高めることが可能である。さらに、グラステープ150の厚みを薄くすることによって、ワイヤー状の可溶体に比べ、電池モジュール100に対してよりスリムに配設することが可能である。このため、この形態の感熱体120を利用すれば、電池モジュール100の薄型化に貢献できる。
【0067】
また、可溶体123の帯の幅を広げることで検知可能な面積を増大できるため、より高い検知精度を期待することができる。
【0068】
なお、本実施例において、抵抗体130を感熱体120の金属線(A線)121にのみ配置するとしたが、金属線(A線)121と金属線(B線)122の両方共に配置するとしてもよい。その場合は、高温異常判定部221で入力される所定の抵抗値が二倍になることを予め入力しておいたり、抵抗体130の抵抗値を半分にしたりする。こうすることで、金属線(A線)121と金属線(B線)122が近接接触したことが判断できる。
【0069】
なお、本実施例において、組電池110毎に抵抗体130を配置するとしたが、抵抗体130を使用する代わりに、金属線(A線)121と金属線(B線)122を計測部211で計測可能な高抵抗材質としてもよい。この場合、金属線121、122だけで組電池110の間隔毎に所定の抵抗値を有し、かつ、組電池110毎に抵抗体130を配置する必要がないので、感熱体120を一体物で容易に作成することができる。
【0070】
なお、本実施例において、電池モジュール100は複数の組電池110に感熱体120や抵抗体130などを配置するとしたが、並列に整列された複数の素電池111に感熱体120や抵抗体130などを配置するとしてもよい。この場合は、高温異常を起こした素電池を特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明にかかる電池モジュールは、異常温度に達した素電池を特定して温度管理を従来に比べて確実に行い、断線異常との区別を行い良好に安全機構を作動させることが可能になるので、素電池の異常温度上昇時に素電池からの入出力を遮断する電池モジュール等として有用である。
【符号の説明】
【0072】
100 電池モジュール
110 組電池
111 素電池
112 金属ブロック
120 感熱体
121 金属線(A線)
122 金属線(B線)
123 可溶体
130 抵抗体
140 リード線
150 グラステープ
200 制御回路
210 計測ECU
211 計測部
212 通信部
220 制御ECU
221 高温異常判定部
230 上位ECU
231 充放電許可判定部
300 負荷装置
310 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に接続された複数の素電池または組電池を有する電池モジュールであって、
長手方向の略全域が感熱域とされ、当該感熱域の任意の部位での異常温度検知を電気信号として取得することのできる長尺状の感熱体が、前記素電池または組電池の2個以上に跨ってその周面に這設され、
前記素電池または組電池から負荷装置への電流路の開閉を制御する制御部に対し、前記感熱体から取得される電気信号を制御信号として入力されており、
前記感熱体の感熱域の任意の部位において、素電池または組電池が異常温度に達したときに、当該異常温度検知にかかる電気信号を前記感熱体より受けた制御部が前記電流路を遮断する構成であり、
前記感熱体は、
相互に接近する方向に付勢されて同じ方向に延在する2本の導電線の間に熱可溶性部材を介在させて各導電線を離間させた構造を有し、
前記2本の導電線は先端で連結されており、前記2本の導電線の少なくとも1本は所定の間隔に所定の抵抗値を有し、
素電池または組電池が異常温度に達すると、前記熱可溶性部材の溶融に伴って導電線同士が近接接触し、当該感熱体が前記近接接触を導電線同士の短絡として検知する構成であることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記2本の導電線の少なくとも1本は、所定の間隔に所定の抵抗値の抵抗体を有することを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記所定の間隔は、前記組電池の間隔であることを特徴とする請求項1または2に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77433(P2013−77433A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216353(P2011−216353)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】