説明

電池モジュール

【課題】熱交換効率の低下を抑制することのできる電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池モジュール1は、複数の電池セル2を配列してなる組電池3と、各電池セル2の温度調節を行う温度調節機構5とを備えた。温度調節機構5は、電池セル2間に挟まれる長方形板状の熱交換部材21、及び熱交換部材21に対して熱的に結合される熱媒配管22を有し、組電池3を拘束バンド15によって配列方向両側から加圧された状態で組み付けるようにした。そして、熱交換部材21に、各電池セル2と熱媒配管22との相対変位によって変形する変位吸収部31を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池は、充電して繰り返し使用可能であることから種々の電源として広く利用されている。そして、高い出力電圧が要求される用途では、複数の電池セルを配列してなる組電池として利用されている。
【0003】
ここで、二次電池では、その温度環境が性能や寿命に大きな影響を与えるため、組電池に各電池セルの温度調節を行うための温度調節機構を組み合わせてなる電池モジュールが従来から提案されている(例えば、特許文献1,2)。こうした電池モジュールの温度調節機構は、多くの場合、各電池セル間に配置される板状の熱交換部材に対して熱媒体が流通する配管(温調部材)を熱的に結合することにより構成されており、熱交換部材を介して電池セルと熱媒体との間で熱交換を行うことで当該電池セルの温度を調節している。なお、熱交換部材としては、熱伝導率の高い金属板からなるもの(例えば、特許文献1)や、熱媒体が流通する熱媒体通路を有するもの(例えば、特許文献2)がある。
【0004】
また、二次電池は、充放電する際に内部でガスが発生することにより膨張する。そして、こうした膨張により電池の内部抵抗等が変化することで発熱量が増え、二次電池の寿命が低下する虞がある。そこで、一般に、組電池は拘束バンド等により各電池セルの配列方向両側から加圧された状態で組み付けられており、各電池セルが膨張することを抑制している(特許文献2、第1図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−9889号公報
【特許文献2】特開2007−66647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、各電池セルは、上記拘束バンド等によって組電池が配列方向両側から加圧されることにより僅かに変形する。一方、配管は、熱交換部材に溶接されたり、同熱交換部材の外縁に形成された結合孔に圧入されたりすることで熱交換部材に固定される。そして、組電池は、熱交換部材に配管を固定した後に加圧されるため、当該加圧によって各電池セルが僅かに変形することで、これら各電池セルと配管との相対位置がずれることがある。その結果、例えば熱交換部材と配管との結合箇所に過度な負荷が作用することで、これら熱交換部材と配管との結合が弱まって熱交換効率が低下する虞があり、この点においてなお改善の余地があった。
【0007】
なお、このような問題は、組電池を電池セルの配列方向両側から加圧する際に限らず、例えば組電池や配管等に外力が作用した際にも同様に生じ得る。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、熱交換効率の低下を抑制することのできる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数の電池セルを配列してなる組電池と、前記各電池セルの温度調節を行う温度調節機構とを備え、前記温度調節機構は、前記電池セル間に挟まれる熱交換部材、及び前記熱交換部材に対して熱的に結合される温調部材を有し、前記組電池は、加圧手段によって前記電池セルの配列方向両側から加圧された状態で組み付けられる電池モジュールにおいて、前記熱交換部材には、前記各電池セルと前記温調部材との相対位置によって変形する変位吸収部が設けられたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、各電池セル(組電池)と温調部材とは、変位吸収部を変形させることで、相対変位できるようになる。そのため、熱交換部材に温調部材を固定した状態で、各電池セルと温調部材との相対位置がずれても、例えば熱交換部材と温調部材との結合箇所に過度な負荷が作用することを抑制でき、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記変位吸収部は、前記加圧手段によって前記組電池が加圧されることにより変形するものであってもよい。上記構成によれば、組電池が電池セルの配列方向両側から加圧されることに起因して熱交換効率が低下することを好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換効率の低下を抑制することのできる電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電池モジュールの概略構成を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す電池モジュール1は、電気自動車やハイブリッド車に搭載された走行用モータの電源として用いられるものである。同図に示すように、電池モジュール1は、充電可能な二次電池として構成された複数の電池セル2を配列してなる組電池3と、各電池セル2の温度調節を行う温度調節機構5とを備えている。
【0014】
本実施形態の電池セル2には、長方形板状に形成された角型セルが採用されている。そして、組電池3は、複数の電池セル2をその板厚方向に沿って配列することにより構成されている。なお、以下の説明では、電池セル2が配列された方向を配列方向、電池セル2の正面視における長辺に沿った方向を幅方向、電池セル2の短辺に沿った方向を高さ方向とする。
【0015】
各電池セル2における高さ方向上側(図1における上側)の側面には、同方向に突出する正極端子11及び負極端子12が幅方向に間隔を空けて設けられている。また、組電池3の配列方向両端には、それぞれ長方形板状のエンドプレート13が設けられている。そして、組電池3は、各エンドプレート13に加圧手段としての拘束バンド15が装着されることにより、電池セル2に配列方向両側から加圧された状態で組み付けられている。
【0016】
温度調節機構5は、各電池セル2間、及び配列方向両端に設けられた電池セル2と各エンドプレート13との間で挟持される複数の熱交換部材21と、各熱交換部材21の外縁に対して熱的に(熱伝達可能に)結合される温調部材としての熱媒配管22とを備えている。なお、熱交換部材21及び熱媒配管22は、アルミ合金やカーボン等の熱伝導率の高い材料により構成されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、各熱交換部材21は、その幅方向長さが電池セル2の幅方向長さと略等しく、その高さ方向長さが電池セル2の高さ方向長さよりも長い略長方形板状に形成されている。そして、各熱交換部材21は、各電池セル2の下端から高さ方向下側に突出した状態で各電池セル2間に配置されている。各熱交換部材21の下部には、配列方向に貫通する丸孔状の結合孔24が幅方向に間隔を空けて2つ形成されている。なお、図3に示すように、熱交換部材21における電池セル2又はエンドプレート13によって挟持される挟持部25の表面は、シート状の絶縁シート26(説明の便宜上、図1では省略)により被覆されている。
【0018】
図1〜図3に示すように、熱媒配管22は、略U字状に形成されており、組電池3の高さ方向下側に配置されている。また、熱媒配管22の断面形状は、円形状に形成されている。そして、熱媒配管22における配列方向に延びた一対の直線部分が結合孔24にそれぞれ圧入されることにより、熱媒配管22は各熱交換部材21に対して熱的に結合されている。
【0019】
また、熱媒配管22は、配管内部を流通する熱媒体(例えば、水や空気等)を冷却又は加熱するための熱源機構27に接続されている。そして、熱媒体が熱媒配管22と熱源機構27との間で循環することにより、熱交換部材21及び熱媒配管22を介して電池セル2と熱媒体との間で熱交換が行われて電池セル2の温度が調節される。なお、本実施形態の熱源機構27は、熱媒体を冷却する冷却器、熱媒体を加熱する加熱器及びポンプ(いずれも図示略)を有しており、同ポンプによって熱媒体が熱源機構27と熱媒配管22との間を強制的に循環するようになっている。
【0020】
ここで、上記拘束バンド15は、熱交換部材21に熱媒配管22を固定した後に装着される。そして、各電池セル2は、拘束バンド15によって組電池3が配列方向両側から加圧されることにより僅かに変形するため、拘束バンド15を装着することで各電池セル2と熱媒配管22との相対位置がずれることがある。
【0021】
この点を踏まえ、熱交換部材21には、各電池セル2と熱媒配管22との相対変位によって変形する変位吸収部31が設けられている。詳しくは、変位吸収部31は、熱交換部材21における結合孔24と挟持部25の間に形成されている。そして、変位吸収部31は、挟持部25の下端から高さ方向下側に向かうにつれて配列方向に繰り返し折り返された波状に形成されており、電池セル2の配列方向及び高さ方向に弾性変形(伸縮)可能となっている。すなわち、変位吸収部31は、電池セル2の配列方向、及び各電池セル2と熱媒配管22とを接離させる方向に弾性変形可能となっている。なお、本実施形態の変位吸収部31は、熱交換部材21の一部を曲折することにより形成されている。
【0022】
このように構成された電池モジュール1では、各電池セル2と熱媒配管22とは、変位吸収部31を変形させることで、互いに相対変位することが可能になる。したがって、組電池3が拘束バンド15によって加圧される際に各電池セル2と熱媒配管22との相対位置がずれても、変位吸収部31が変形することで、熱交換部材21と熱媒配管22との結合箇所である結合孔24に過度な負荷が作用することが抑制される。なお、例えば車両の走行時の振動に起因する外力が組電池3や熱媒配管22に作用した場合にも、同様に熱交換部材21と熱媒配管22との結合箇所に過度な負荷が作用することが抑制される。
【0023】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)熱交換部材21に、拘束バンド15の加圧によって生じる各電池セル2と熱媒配管22との相対変位によって変形する変位吸収部31を設けた。そのため、熱交換部材21に熱媒配管22を固定した後に拘束バンド15を装着しても、例えば熱交換部材21の結合孔24近傍に過度な負荷が作用することを抑制でき、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0024】
(2)変位吸収部31を配列方向及び高さ方向に変形可能に形成したため、各電池セル2と熱媒配管22との相対位置がずれる際に、熱交換部材21の結合孔24近傍に過度な負荷が作用することをより一層抑制できるようになる。
【0025】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
○上記実施形態では、変位吸収部31を波状に形成したが、これに限らず、例えば円弧状等の他の形状としてもよい。また、変位吸収部31を配列方向にのみ変形可能に形成してもよい。
【0026】
○上記実施形態では、温調部材として熱媒体が流通する熱媒配管22を用いた。しかし、電池セル2の冷却のみ行う場合には、熱交換部材21に、組電池3を収容する筐体やヒートシンクを熱的に結合させてもよい。
【0027】
○上記実施形態では、拘束バンド15によって組電池3を配列方向両側から加圧するようにしたが、これに限らず、各エンドプレート13をボルトやロッド等により連結することで組電池3を加圧するようにしてもよい。
【0028】
○上記実施形態では、熱媒配管22を結合孔24に圧入することにより熱交換部材21に熱的に結合したが、これに限らず、例えばロウ付け等により熱媒配管22を熱交換部材21に結合させてもよい。
【0029】
○上記実施形態では、挟持部25の表面を絶縁シート26により被覆したが、これに限らず、例えば絶縁性を有する塗料や接着剤等により挟持部25の表面を被覆してもよい。
○上記実施形態では、熱交換部材21を長方形板状に形成したが、これに限らず、例えば円板形状にしてもよく、また、電池セル2との間で熱交換を行うことができれば、板状以外の他の形状としてもよい。
【0030】
○上記実施形態において、熱交換部材21に熱媒配管22との間で熱媒体を循環させる流路を形成してもよい。
○上記実施形態では、電池セル2を角型セルとして構成したが、これに限らず、例えば円筒型セルやラミネート型セルとして構成してもよい。
【0031】
○上記実施形態では、熱源機構27が熱媒体を加熱及び冷却可能な構成としたが、これに限らず、熱源機構27が加熱のみ又は冷却のみ可能な構成としてもよい。
○上記実施形態では、本発明を電気自動車やハイブリッド車に搭載された走行用モータの電源として用いられる電池モジュール1に適用したが、他の用途に用いられる電源に適用してもよい。
【0032】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)前記変位吸収部は、前記電池セルの配列方向、及び前記各電池セルと前記温調部材とを接離させる方向に変形可能に形成されたことを特徴とする電池モジュール。上記構成によれば、変位吸収部が配列方向及び各電池セルと温調部材とを接離させる方向に変形可能であるため、各電池セルと温調部材との相対位置がずれる際に、例えば熱交換部材と温調部材との結合箇所に過度な負荷が作用することをより一層抑制できる。
【符号の説明】
【0033】
1…電池モジュール、2…電池セル、3…組電池、5…温度調節機構、13…エンドプレート、21…熱交換部材、22…熱媒配管、24…結合孔、25…接触部、31…変位吸収部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを配列してなる組電池と、前記各電池セルの温度調節を行う温度調節機構とを備え、
前記温度調節機構は、前記電池セル間に挟まれる熱交換部材、及び前記熱交換部材に対して熱的に結合される温調部材を有し、前記組電池は、加圧手段によって前記電池セルの配列方向両側から加圧された状態で組み付けられる電池モジュールにおいて、
前記熱交換部材には、前記各電池セルと前記温調部材との相対変位によって変形する変位吸収部が設けられたことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールにおいて、
前記変位吸収部は、前記加圧手段によって前記組電池が加圧されることにより変形するものであることを特徴とする電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−89566(P2013−89566A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231962(P2011−231962)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】