説明

電池使用機器

【課題】低温環境下において1次電池を使用する際に、電池の残量を正確に判断し、電池の長寿命化を図ることができる電池使用機器を提供する。
【解決手段】アルカリ電池1の電圧を測定することによって、アルカリ電池1の残量を判断し、アルカリ電池1の電圧が閾値電圧VTH以下になるとアルカリ電池1の放電を停止する電池使用機器100において、アルカリ電池1の温度が低下すると、閾値電圧VTHを低下させる。電池使用機器100の起動処理時のみ閾値電圧VTHの低下が行なわれ、起動処理時のアルカリ電池1の電圧測定が、ダミーロード8により負荷をかけた状態で行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池使用機器に関し、より詳細には、低温環境下におけるアルカリ電池の長寿命化ができる電池使用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池使用機器では、電池の残量と電池電圧との関連性を利用して、電池残量を電池電圧に基づいて判断することが行なわれている。
電池残量を正確に計測するために、ダミーロードによる負荷をかけた状態で、電池電圧を検出する場合がある。これは、電池の内部抵抗に電流が流れた場合の当該内部抵抗による電圧降下を考慮して、正確に残量を検出するためである。特に、アルカリ電池は内部抵抗が大きいので、内部抵抗による電池電圧降下が大きくなる。したがって、負荷を開放した状態で電池電圧を検出すると、正確に残量を判断できない。
【0003】
このように実際にモータ等の負荷をかける前に、ダミーロードによる負荷をかけて正確に残量を判断するのは、大きな電流を必要とする起動処理、例えば、ハードディスクなどに内蔵されているモータの駆動などの機械的動作が発生する際は、電池に大きな電流が流れるので内部抵抗による電圧降下が大きく、電池電圧が低下するからである。電池電圧が低下して、急に電源が遮断されると、故障などが生じる虞もある。
【0004】
また、電池はその化学的特性のため、低温環境下での電圧低下が著しく大きく、放電特性が悪くなる。このような低温環境下での放電特性の低下は、1次電池、2次電池に関わらず発生するが、1次電池、特にアルカリ電池は、低温環境下における内部抵抗の上昇が大きい。したがって、アルカリ電池を低温環境下で使用すると、大電流放電時に電池電圧が著しく低下する。
【0005】
このように低温環境下においてアルカリ電池の内部抵抗が常温時よりもさらに大きくなった状態で、ダミーロードによる負荷をかけてアルカリ電池の残量を検出すると、アルカリ電池、すなわち内部抵抗に大きな電流が流れるので、この内部抵抗による電圧降下が大きく、残量が極めて低く検出される。
【0006】
一方で、低温環境下であっても、アルカリ電池に電流が流れると内部抵抗でジュール熱が発生することによって、電池温度が上昇し、電池内部が活性化する。
【0007】
したがって、初期状態のみ内部抵抗による電池の電圧降下が大きく、その後、使用中は電池が活性化されるので、実際には相当程度使用できるにも関わらず、低温環境下の内部抵抗が大きい状態で、ダミーロードに負荷をかけて電流を流し、電池電圧を検出すると、電池が使用できないと判定される。
また、1次電池は、2次電池と異なり、充電し再使用されることがないので、過放電による電池の劣化は考慮する必要がない。そのため、全容量を使い切るほうがよい。
【0008】
また、一次電池は、ユーザが一旦使用できないと判断すると、通常は再び使用されることはない。したがって、低温環境下で、内部抵抗が大きいために、容量が残っている状態で使用済みと判断されると、その後、常温に戻り電池内部が活性化し、電池が使用できるようになっても、使用されずに、電池が本来有する容量が使われないことになる。
【0009】
特許文献1には、電池パック又は電子装置内に内蔵した温度検出素子で電池の温度を検出し、当該検出温度に応じて電池残量の警告表示が出力される電池電圧の設定値を変化させる電池駆動式電子装置が提案されている。
この電池駆動式電子装置では、例えば、常温と判断した場合には、残量警告表示電圧を6.5Vに設定し、低温と判断した場合には、6.1Vとしている。そして、電源シャットオフ電圧は常温、低温いずれの場合も6.0Vである。
【0010】
特許文献2には、電池が使用される電子機器の消費電流が変化する場合や、電池の周囲温度が変化する場合に、電池残量表示の補正を行なう電池残量判定装置が提案されている。
【0011】
特許文献3には、接続された電池の種類の判別を行ない、電池の種類に応じてバッテリチェック動作のパラメータを切り換えて、電池の放電停止の電圧を変化させるカメラが提案されている。このパラメータは、ダミーロード電流の大きさ、ダミーロード抵抗、電池残量の判定電圧等である。
【0012】
特許文献4には、温度センサが検出した温度を、所定の閾値と比較することで、検出温度が閾値よりも高いときは通常動作モードとし、検出温度が閾値よりも低いときは省電力動作モードとするディジタルカメラが提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開平10−23309号公報
【特許文献2】特開2001−126778号公報
【特許文献3】特開平8−62663号公報
【特許文献4】特開2004−7468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の電池駆動式電子装置では、警告表示段階の温度を対象としており、電池の放電停止電圧は変化させていない。したがって、残り時間の警告は正しく表示されるが、放電停止電圧は同じであり、実質的な使用時間は何ら変化してない。
このため、実際には使用できるにも関わらず、電池が放電停止となる。この現象は、低温環境下で、消費電流が大きい起動処理時に、特に著しくなる。
【0015】
また、特許文献2に記載の電池残量判定装置では、消費電流や電池の環境温度に応じて、残量表示を変化させているが、放電停止電圧についてはなんら考慮されていない。この場合、2次電池では、放電停止電圧を低くすると電池の劣化を招く場合がある。一方、放電停止電圧が高い状態のままでは、使用できるにも関わらず放電停止となる。しかし、1次電池では、充電し再使用することは考えられないので、放電停止電圧は低くするほうがよい。
【0016】
また、1次電池、特にアルカリ電池では、ニッケル水素電池等の2次電池と比較して低温環境下ではさらに内部抵抗が大きくなる。このため、低温環境下で、起動時に大きな電流が流れると、電池が活性化されるとともに、モータの駆動等、大きな電流が必要な起動処理が終わると消費電流が小さくなり、相当程度使用できるようになる。この場合、起動処理時に放電停止電圧を下げればよいが、特許文献2では起動処理時に残量表示を変化させてはいない。また、ダミーロードによって電池の残量の正確に検出することは行なっていない。
【0017】
特許文献3に記載のバッテリチェックを行なうカメラでは、電池種別を判断するために、温度を検出した状態で、バッテリチェックの電圧レベルを検出しているが、電池の放電停止電圧の閾値は変更していない。
したがって、ダミーロードによる負荷がかかった状態で大きな消費電流が流れた場合には、放電停止がされる。
【0018】
特許文献4に記載のディジタルカメラでは、電池の温度が低温になるとディジタルカメラを省電力モードに移行することで、消費電流を小さくしているが、電池の放電停止電圧を下げてはいない。したがって、モータの駆動等、比較的大きな電流が必要な動作の場合は、放電が停止される場合がある。また、省電力モードである場合は、これらモータの駆動等の動作を行なうことができない。
【0019】
本発明は、このような事情に鑑み、低温環境下において1次電池を使用する際に、電池の残量を正確に判断し、電池の長寿命化を図ることができる電池使用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成すべく本発明は次の技術的手段を講じた。
本発明に係る電池使用機器では、1次電池の電圧を測定することによって、1次電池の残量を判断し、1次電池の電圧が、閾値電圧以下になると1次電池の放電を停止する電池使用機器において、1次電池の温度が低下すると、この閾値電圧を低下させる。
このようにすると、低温環境下で、1次電池の電圧が低く検出される場合であっても、放電停止の閾値電圧が低くなっているので、電池容量が残っているにも関わらず、放電停止となることが低減される。
また、この電池使用機器のユーザが1次電池を使用できないと判断すると、通常はその後使用されないが、このように閾値電圧を下げると、電池の容量がなくなり使用済みであると誤って判断されることも少なくできる。
【0021】
本発明に係る電池使用機器では、閾値電圧の低下が、この電池使用機器の起動処理時に行なわれることが好ましい。
電池使用機器の起動処理時は、モータの駆動電流のような比較的大きな電流が流れることがある。このように大電流が流れると、例えば、ハードディスクの起動の途中で、電池容量がなくなり電源が突然遮断される等、電池使用機器に不都合が生じる。その一方で、起動処理後は、電池が活性化されるので、十分に使用できるようになる。
また、電池使用機器の起動処理が行なわれないと、つまり、電源をオンさせても、何も動作しない状態であると、この電池使用機器のユーザは、誤って電池使用機器に使われている電池を使用済み電池であると判断したり、当該電池使用機器の故障であると判断したりする可能性もある。したがって、このように起動処理時に放電停止の閾値電圧を低下させて、起動処理を正確に行なうと、使用済みであると判断したり、電池使用機器の故障であると判断したりすることが低減される。
【0022】
本発明に係る電池使用機器では、起動処理時の1次電池の電圧測定が、ダミーロードによる負荷をかけた状態で行なわれることが好ましい。
電池の内部抵抗は、電池の種類や電池の温度によっても大きく異なる。また、同じ環境温度での同種類の電池でも使用状態等によって内部抵抗は異なる。
このため、負荷を開放した状態での電池電圧と、実際に使用されている状態の電池電圧すなわち負荷をかけた状態の電池電圧とは、電池種類、電池温度、使用状態によって異なる。
ダミーロードによって実際に負荷をかけた状態と同じ状態を仮想的に作り、内部抵抗による電圧降下を考慮して電池電圧を測定すると、正確に電池残量を測定することができる。
【0023】
本発明は、1次電池がアルカリ電池である場合に特に有意義である。
アルカリ電池は、低温時に内部抵抗が極めて大きく、この内部抵抗による電圧降下で放電電圧が著しく低下するため、誤った残量判断が行なわれ、電池の残量が十分にあるにも関わらず、電池が低温であるために電池使用機器が動作しなくなる場合が多い。
しかし、電池使用開始時には電池電圧が低くても、電池の使用を続けると、電池が使用されることによってジュール熱が発生し電池の温度が上昇すると共に、電池内部が活性化するので、その後は、相当程度使用できる。
したがって、アルカリ電池が低温の場合に、放電停止電圧を下げると、電池寿命の長寿命化を図ることができ、電池使用機器が十分に使えるようになる。
【0024】
本発明の典型的な実施形態に係る電池使用機器では、アルカリ電池の電圧を測定することによって、このアルカリ電池の残量を判断し、アルカリ電池の電圧が閾値電圧以下になるとアルカリ電池の放電を停止する電池使用機器において、アルカリ電池の温度を検出する温度検出素子と、このアルカリ電池の電圧を検出し、電池の残量判断をするマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータにより制御されるスイッチング素子とが設けられる。マイクロコンピュータは、温度検出素子で検出されたアルカリ電池の温度が低下すると、電池使用機器の起動処理時に、閾値電圧を低下させるとともに、スイッチング素子をオンにしてアルカリ電池にダミーロードを接続する。そして、起動処理時のアルカリ電池の電圧測定が、ダミーロードにより負荷をかけた状態で行なわれる。
このようにすると、温度検出素子で電池の温度が検出でき、この検出された電池温度に応じて、マイクロコンピュータによって放電停止の閾値電圧を変化させることができる。
起動処理時に、電池の放電停止電圧を低下させておくと、その後は、電池が活性化されて、電池電圧が上昇する。また、起動処理時には、モータの駆動電流のような比較的大きな電流が必要とされる場合が多いので、起動処理時にこの放電停止の閾値電圧を下げておくと、その後は、消費電流が小さくなって相当程度使用できる。
そして、電池の残量がなくなって電池電圧が低下した場合と、単に低温で電池電圧が低下した場合とを区別しつつ、電池の長寿命化を図ることができる。
また、低温時に特に内部抵抗が高くなり、電池電圧が低くなるアルカリ電池の残量が、ダミーロードにより、正確に検出される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低温環境下において1次電池を使用する際に、電池の残量を正確に判断し、電池の長寿命化を図ることができる電池使用機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電池使用機器の放電制御回路を示す図である。図1に示すように、この電池使用機器100の電池には1次電池が使用され、本実施形態では、2つのアルカリ電池1が直列に接続されている。なお、分かり易くするために、内部抵抗2を図示している。
アルカリ電池1は内部抵抗2が大きく、電流が流れるとこの内部抵抗2で大きな電圧降下が発生し、電池電圧が低下する。
【0027】
直列に接続されたアルカリ電池1の電池電圧検出は、電池電圧検出用ADC(Analog-Digital Converter)3で行なっており、この電池電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換した後、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)4に入力している。
マイコン4は、直列に接続されたアルカリ電池1の電圧が所定の閾値電圧VTH以下、例えば、常温時(20℃)には2.1V以下になると放電制御スイッチ5をオフにして、アルカリ電池1の放電を停止させる。この放電制御スイッチ5には、MOSFETが使用されている。このMOSFETは、トランジスタやリレー等の他のスイッチング素子であってもよい。
【0028】
アルカリ電池1の温度検出は、サーミスタ6によって、アルカリ電池1の環境温度を検出することで行なっている。このため、サーミスタ6は、電池使用機器100の電池ボックス内部における電池の近傍に配置される。サーミスタ6で検出された温度(アナログ信号)は温度検出用ADC7に入力され、デジタル信号に変換された後、マイコン4に入力される。このサーミスタ6は、温度センサ等、他の温度検出素子であってもよい。
【0029】
アルカリ電池1は、ニッケル水素電池と互換性が高く、この電池使用機器100も、アルカリ電池1とニッケル水素電池を併用できる。
しかし、アルカリ電池1はニッケル水素電池と比較し、内部抵抗2が大きい。このため、負荷をかけて内部抵抗2に電流を流した状態で電池電圧を検出すると、負荷を開放し内部抵抗2に電流が流れない状態で電池電圧を検出する場合よりも、電圧降下が大きいので、電池電圧検出用ADC3で検出される電池電圧は、低くなる。さらに、アルカリ電池1の内部抵抗2は、低温環境下で著しく大きくなるので、低温環境下においては、アルカリ電池1に負荷をかけて電池電圧を検出すると、電圧が極めて低く検出される。
【0030】
例えばPDAや携帯電話等の電池使用機器100の起動処理時には、モータが駆動される場合など、大電流が流れることも多く、この場合の電圧降下が著しい。そして、起動処理時に電圧降下が大きいと、電源が急に遮断され、故障等が発生する場合もある。
【0031】
このため、起動処理時には、負荷がかかった状態のアルカリ電池1の電圧を検出するために、スイッチング素子としてのトランジスタ9をオンさせて、ダミーロード8による負荷をかけてマイコン4で電池電圧を検出する。ダミーロード8には、例えば4Ωの比較的小さな抵抗が使用され、これに大きな電流を流す。このトランジスタ9もFETやリレー等の他のスイッチング素子であってもよい。
【0032】
アルカリ電池1の場合は、起動処理時に、ダミーロード8により負荷をかけた状態で、電池電圧を検出し、その後は、電源回路10を介して、実際にかかる負荷によって、電池の消費電流が決まるので、ダミーロード8に接続されているトランジスタ9はオフされる。
電源回路10からは、例えば直流5V、3.3V等の定電圧が出力され、この定電圧出力は、電池使用機器100の例えばモータ、液晶等の電源として使用される。
【0033】
図2は、本実施形態に係る放電のタイムチャートを示す図である。まず、起動処理について説明する。起動処理では、ユーザが電源をオンする(S1)と、マイコン4が電池の種類を判別する(S2)。ここでは、ニッケル水素電池であるか、アルカリ電池1かを判別する。この電池種類を判別するには、負荷をかけるので電池電圧が若干低下する。
【0034】
次に、マイコン4は電池の残量を判断する(S3)。残量判断は、電池ボックスに入れられている電池がニッケル水素電池であるか、アルカリ電池1であるかによって異なる。
ニッケル水素電池は、内部抵抗が小さいために、ダミーロード8による負荷をかけた状態で行なう必要はない(S3A)。したがって、このステップS3Aは、ニッケル水素電池の場合の残量判断である。
その後、マイコン4はトランジスタ9をオンさせて、ダミーロード8による負荷をかけた状態で、アルカリ電池1の残量を判断する(S3B)。
【0035】
アルカリ電池1の内部抵抗2は大きいので、ダミーロード8に電流が流れると、内部抵抗2における電圧降下によって、マイコン4で検出される電池電圧が大きく低下する。したがって、放電停止の閾値電圧VTHを、電池の環境温度が下がるにつれて、表1のように低下させる。
【表1】

この場合、ステップS3Bでは、アルカリ電池1の環境温度が10℃以下になると閾値電圧VTHを2.10Vから2.05Vに低下させ、0℃以下になると閾値電圧VTHを2.05Vから2.00Vに低下させる。
【0036】
アルカリ電池1の内部抵抗2は、ニッケル水素電池と比較して大きい。特に、低温環境下では、内部抵抗2が大きくなり、この内部抵抗2による電圧降下のため、ダミーロード8による負荷をかけると電池が使えないと判断されるが、実際には、その後、モータの駆動、液晶の点灯(S4)がされると、アルカリ電池1に電流が流れることによってジュール熱が発生し、電池温度が上昇すると共に、アルカリ電池1内部が活性化され、電池電圧が上昇する。
このように放電停止の閾値電圧VTHを下げると、ダミーロード8による負荷がかかったときに、電池残量が残っているにも関わらず、残量がないと判断され放電が停止されることが低減される。
【0037】
モータの駆動、液晶の点灯(S4)がされた後は、大きな消費電流が流れない通常モード(S5)に移り、アルカリ電池1の電圧が比較的高い状態に維持される。
また、通常処理の期間中にもマイコン4は電池の残量判断をしており(S5)、所定の放電停止電圧以下に達した場合には、別の検出方法により放電が停止される。
【0038】
図3は、本実施形態に係る電池使用機器100におけるアルカリ電池1の温度特性の実験結果を示す図である。
図3は、アルカリ電池1の起動処理と一定の通常処理とを繰り返した場合の実験結果である。つまり、表1に従い、放電停止の閾値電圧VTHを変更した状態で、電源をオンして起動処理を行ない、所定の通常処理後に、電源をオフし、再度、電源をオンして起動処理を行なうことを繰り返した場合の起動回数(回)と環境温度(℃)との関係を示している。
【0039】
図3に示すように、環境温度、すなわちアルカリ電池1の温度が10℃の場合は放電停止閾値電圧を低下させない場合よりも、起動回数が1割程度増加し、0℃の場合には、放電停止閾値電圧を低下させない場合よりも起動回数が7割程度増加し、非常に良好な結果が得られた。このように、起動回数が多くなると、ユーザが誤って電池を使いきったと判断することも少なくなる。
以上のように、本実施形態では、電池の放電停止の閾値電圧VTHを低温環境下で低下させることによって、電池の長寿命化を図ることができる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限られない。図1の回路構成は本発明の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、図1では2つのアルカリ電池1の電池電圧を直列状態で検出しているが、各電池の電圧を個別に検出してもよい。
また、アルカリ電池1は1つでもよく、あるいは3個以上でもよい。
さらに、閾値を示す表1は、例示であり、アルカリ電池1の放電停止の閾値電圧VTHに若干の変更を加えてもよく、その他、1次電池の種類によって、閾値電圧VTHを適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】電池使用機器の放電制御回路を示す図である。
【図2】放電のタイムチャートを示す図である。
【図3】電池使用機器におけるアルカリ電池の温度特性の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 アルカリ電池
4 マイクロコンピュータ
6 サーミスタ
8 ダミーロード
9 トランジスタ(スイッチング素子)
100 電池使用機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次電池の電圧を測定することによって、前記1次電池の残量を判断し、前記1次電池の電圧が、閾値電圧以下になると前記1次電池の放電を停止する電池使用機器において、
前記1次電池の温度が低下すると、前記閾値電圧を低下させることを特徴とする電池使用機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電池使用機器おいて、
前記閾値電圧の低下が、前記電池使用機器の起動処理時に行なわれることを特徴とする電池使用機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電池使用機器おいて、
前記起動処理時の1次電池の電圧測定が、ダミーロードによる負荷をかけた状態で行なわれることを特徴とする電池使用機器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電池使用機器おいて、
前記1次電池がアルカリ電池であることを特徴とする電池使用機器。
【請求項5】
アルカリ電池の電圧を測定することによって、前記アルカリ電池の残量を判断し、前記アルカリ電池の電圧が閾値電圧以下になると前記アルカリ電池の放電を停止する電池使用機器において、
前記アルカリ電池の温度を検出する温度検出素子と、
前記アルカリ電池の電圧を検出し、電池の残量判断をするマイクロコンピュータと、
前記マイクロコンピュータにより制御されるスイッチング素子と、
を備え、
前記マイクロコンピュータは、前記温度検出素子で検出された前記アルカリ電池の温度が低下すると、前記電池使用機器の起動処理時に、前記閾値電圧を低下させるとともに、前記スイッチング素子をオンにして前記アルカリ電池にダミーロードを接続し、
前記起動処理時のアルカリ電池の電圧測定が、前記ダミーロードにより負荷をかけた状態で行なわれることを特徴とする電池使用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−262815(P2008−262815A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104964(P2007−104964)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】