説明

電池温調システムおよび電池充電システム

【課題】結露なく電池を加温することを実現して、効率よく電池に充電することができる電池温調システムを提供すること。
【解決手段】車両に搭載されて繰り返し充電可能な電池パックの温度を検出する電池温度センサ16bと、電池パックに向けて温風を吹き出すダクトと、電池温度センサが検出する電池温度に応じて温風を電池パック周りにダクトを介して流入させることにより該電池パックを加温する制御装置15と、を備える電池温調システムであって、温風の流入により電池パックに結露が発生するか否かを判定する結露判定部15aと、電池パック周りに流入させる温風を除湿する冷却部33のエバポレータ35と、を有して、制御装置は、結露判定部が電池パックに結露発生と判定するときに、電池パック周りに流入させる温風を冷却部のエバポレータにより除湿させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池温調システムおよび電池充電システムに関し、詳しくは、外的環境に影響されることなく、車両搭載の電池への効率のよい充電を実現するものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両には、各種電気部品に供給する電気エネルギを蓄電する電池が搭載されており、例えば、電動モータのみで走行する電気自動車は、大容量の電池を搭載して外部の充電器から充電することにより繰り返し走行することが実現されている。この種の車両用電池の充電は、電気自動車だけでなく、例えば、電動モータと内燃機関を併用して走行するハイブリッド自動車でも、走行中に電気エネルギを回生エネルギとして回収して電池に充電するのに加えて、外部の充電器から充電可能にする場合もある。また、燃料電池自動車では、各種燃料を電気エネルギに変換して走行することから、その変換した電気エネルギを蓄電する電池に、外部の充電器から充電可能にすることも考えられる。
【0003】
この種の車両用電池は、外気温など外的な環境の影響を受ける場合があり、例えば、充電時に電池の温度が低いと、充電効率が低下してしまうことから、その電池を効率よく充電可能な温度範囲内に加温するように、車両の空調装置を流用して、温風を電池側に流入させることが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
近年には、車両用電池に急速充電することを可能にして普及させることが行われており、特に、氷点下の低温状態では充電効率が低下して急速充電不能になってしまうことから、電池を素早く最適な温度範囲内に加温することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−262144号公報
【特許文献2】特開平8−40088号公報
【特許文献3】特開2006−172931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような電池の加温にあっては、単純に温風を電池側に流入させて加温するだけであることから、その温度と湿度の関係(条件)によっては、電池表面に結露が発生して絶縁不良となってしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、結露なく電池を加温することを実現して、効率よく、かつ、問題の発生なく、電池に充電することができる電池温調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する電池温調システムに係る本発明の第1の態様は、車両に搭載されて繰り返し充電可能な電池の温度を検出する電池温度検出部と、前記電池に向けて温風を吹き出す温風吹出部と、前記電池温度検出部が検出する電池温度に応じて前記温風吹出部に温風を吹き出させて前記電池周りに流入させることにより該電池を加温する温調制御部と、を備える電池温調システムであって、前記温風の流入により前記電池に結露が発生するか否かを判定する結露判定部と、前記電池の少なくとも前記温風の流入箇所周辺を除湿する除湿部と、を有して、前記温調制御部は、前記結露判定部が前記電池に結露発生と判定するときに、前記除湿部に前記電池周りを除湿させることを特徴とするものである。
【0009】
上記課題を解決する電池温調システムに係る本発明の第2の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記除湿部は、前記温風吹出部が吹き出す温風を除湿して、当該温風を前記電池周りに流入させることにより前記温風の流入箇所周辺を除湿することを特徴とするものである。
【0010】
上記課題を解決する電池温調システムに係る本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様の特定事項に加え、前記温風吹出部は、前記車両の車室内に流路を介して温風を供給するように前記車両側に搭載される空調装置を流用して、前記温風を前記電池に向けて吹き出すように前記流路を切り換える流路切換部を備えることにより構成され、前記除湿部は、前記空調装置が備える除湿機能により構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
上記課題を解決する電池充電システムに係る本発明の第4の態様は、車両に搭載されて繰り返し充電可能な電池に車両外部の充電器から電力供給させて当該電池の充電を行う電池充電システムであって、上記第3の態様の電池温調システムと、前記電池に充電する際に前記除湿部に前記電池周りを除湿させるときには前記空調装置が備える電動コンプレッサの駆動電力を前記充電器から供給させる制御を実行する電力制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
上記課題を解決する電池充電システムに係る本発明の第5の態様は、上記第4の態様の特定事項に加え、前記電力制御部は、前記充電器の供給可能な電力から前記電池の充電可能な電力と前記電動コンプレッサ駆動電力とを減算して温風供給に可能な電力を算出し電力供給させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明の上記の第1の態様によれば、車両搭載の電池の温度が低い場合(効率よく充電するためには温風により加温する必要がある場合)に、温風の流入により結露が発生すると判定されたときには、少なくとも電池周りに結露が発生しないように除湿することができる。したがって、外部環境が電池の充電に適さない低温時にも、結露なく電池を加温することができ、問題なく電池を急速充電することができる。
【0014】
また、本発明の上記の第2の態様によれば、除湿されている温風を電池側に流入させてその電池周りを加温することができ、電池周りを除湿する特別な機構を必要とすることなく、結露が発生しないように除湿して、簡易かつ容易に結露なく電池を急速充電することができる。
【0015】
また、本発明の上記の第3の態様によれば、車両が備える空調装置から吹き出される温風の流路を切り換えて、その空調装置の除湿機能で除湿した温風を電池周りに流入させることができ、より簡易かつ容易に電池周りを結露が発生しないように除湿して急速充電することができる。
【0016】
また、本発明の上記の第4の態様によれば、車両外部の充電器で車載の電池を充電するシステムでも、その車両搭載の空調装置を流用して除湿した温風で電池を加温することができ、簡易かつ容易に結露なく電池を急速充電することができる。また、充電器から電動コンプレッサを駆動するのに必要な電力を供給するため、車両に搭載された電池に充電された電力を減少させないようにすることができる。
【0017】
また、本発明の上記の第5の態様によれば、車両外部の充電器が電池に急速充電する際の余剰電力で空調装置を稼働させて加温することができ、加温するために電力消費されて充電時間が長くなってしまうことを回避しつつ電池を迅速に急速充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電池温調システムおよび電池充電システムの一実施形態を示す図であり、その適用対象の車両の概略構成を示す透視側面図である。
【図2】その全体構成を示すブロック図である。
【図3】その要部構成を示す概念図である。
【図4】その結露条件マップを示す一覧表である。
【図5】その急速充電時の温調制御を示すフローチャートである。
【図6】その送風なし時の電力供給の配分を示すブロック図である。
【図7】その冷房時の流路を示す概念図である。
【図8】その冷房時の電力供給の配分を示すブロック図である。
【図9】その暖房時および除湿暖房時の流路を示す概念図である。
【図10】その暖房時のサブルーチン制御を示すフローチャートである。
【図11】その暖房時の電力供給の配分を示すブロック図である。
【図12】その除湿暖房時のサブルーチン制御を示すフローチャートである。
【図13】その除湿暖房時の電力供給の配分を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図13は本発明に係る電池温調システムおよび電池充電システムの一実施形態を示す図である。
【0020】
図1および図2において、電気自動車(車両)10は、駆動輪11を転動させる駆動源となる不図示の電動モータと、この電動モータに電力供給する電気エネルギを蓄電する大容量の電池パック12と、を搭載して走行するようになっている。この電気自動車10は、例えば、車室10a内の暖房・換気・空調を行う空調装置(HVAC(Heating,Ventilating,andAirConditioning)システム)13、後述する制御装置15および各種センサ16などの車両搭載の各種電装装置や電気部品にも、走行中だけでなく停止中も含めて原則として、電池パック12から電力供給されるようになっている。
【0021】
ここで、空調装置13は、図3に示すように、ダクト(流路)21内に上流側から強制的に空気を引き込んで下流側に向かって吹き出させる空気の流れを形成する送風ファン31と、ダクト21内を通過する空気を加熱する加熱部32と、ダクト21内を通過する空気を冷却する冷却部33と、を備えている。
【0022】
加熱部32は、ダクト21内を流れる空気を加熱するヒータコア32aと、ダクト21内を流れる空気がヒータコア32a内を通過する流路または通過しない流路のいずれかに切り換える切換ダンパ32bと、がそのダクト21内に配設されて構成されている。この加熱部32は、ヒータコア32aに電池パック12から電力供給して通電することにより発熱させて通過時に触れさせる流路が選択されたときに空気(温調風)を加熱する。
【0023】
冷却部33は、ダクト21内に配設されて冷媒の蒸発による気化熱を利用して冷却するエバポレータ(冷却・除湿部)35と、このエバポレータ35を介するように冷媒を循環させる電動の冷房コンプレッサ36と、この冷房コンプレッサ36により冷媒を押し込まれて冷媒を液化するコンデンサ(復水器)37と、このコンデンサ37で液化された冷媒をエバポレータ35内に導入される前に膨張させて気化させる膨張弁38と、を備えている。この冷却部33は、冷房コンプレッサ36に電池パック12から電力供給して通電することによりコンデンサ37と膨張弁38を介するように冷媒を循環させてエバポレータ35を気化熱により冷却させることによって通過時に触れる空気(温調風)を除湿しつつ冷却する。
【0024】
ダクト21は、空調装置13本体の上流側に外内ダクト22が連結されており、空調装置13本体の下流側には内々ダクト23が連結されている。外内ダクト22は、外部に連通する外気連通部22aと、車室10a内に連通する内気連通部22bと、この連通部22a、22bの連通量を調整する外内ダンパ22cとを備えている。この外内ダクト22は、外内ダンパ22cを不図示の駆動モータで動作させることによりダクト21内に引き込む流入元として外気連通部22aを介する外気または内気連通部22bを介する車室10a内の内気の一方に切換または配分調整することができる。
【0025】
また、制御装置15は、予め準備されている制御プログラムに従って各種パラメータや後述する各種情報に基づいて電気自動車10を統括制御するようになっている。この制御装置15は、例えば、ドライバによる不図示の操作パネルへの入力操作や不図示の車室温度センサが検出する車室10a内の室温(センサ情報)に基づいて外内ダクト22のダンパ22cの開閉動作を制御してダクト21の空気の取り込み口を外気連通部22aまたは内気連通部22bの一方に切り換えるとともに空調装置13の駆動を制御する。ここで、制御装置(温調制御部・電力制御部)15は、CPUやメモリなどにより各種制御を実行して空調装置13などの装置各部に制御信号を送出し駆動させるようになっており、ヒータ制御器、送風ファン制御器、冷房コンプレッサ制御器、ダンパ制御器などとして機能するようになっている。なお、この制御装置15は、全体を統括制御するように構成するだけでなく、装置各部毎の各種駆動を分散制御するように構成してもよい。
【0026】
これにより、空調装置13は、加熱部32や冷却部33を機能させることなく、あるいは、加熱部32や冷却部33を機能させつつ、送風ファン31を駆動させることにより、ダクト21を介して外気を車室10a内に流入させ、または、ダクト21を介して車室10a内の内気を循環させることができ、車室10a内の空気を清浄にしたり、加熱部32や冷却部33により加熱または冷却して快適な温度に調節することができる。なお、加熱部32は、内燃機関(エンジン)を備えるハイブリッド自動車などのように発熱箇所を有する場合には、例えば、熱交換器を介して内燃機関を冷却する冷却水の熱を取り出してダクト21内の空気を加熱するようにしてもよい。
【0027】
そして、電池パック12は、一般的に、走行中に電動モータを発電機として機能させることにより発生(発電)する回生電気エネルギを充電するのに加えて、車両外部の自宅や各種施設に準備されている充電設備の充電器100に接続部17を介して接続して充電する必要がある。
【0028】
この電池パック12は、Liイオン電池により急速充電可能に作製されて収容空間S内に設置されており、このLiイオン電池は、氷点下などの低温状態(環境)では充電効率が低下して急速充電することが難しく、充電電流の流入による発熱だけでは十分に加温することができない。このことから、電気自動車10は、空調装置13が吹き出す温風を収容空間S内に導入(流入)可能にダクト21が準備されている。また、電池パック12は、夏場などには充電中の大電流の流入により過熱してしまう場合があることから、その空調装置13が吹き出す冷風を収容空間S内にダクト21を介して導入して冷却することもできるようになっている。
【0029】
具体的には、ダクト21は、図3に示すように、外内ダクト22の連通部22a、22bおよび外内ダンパ22cと同様に、内々ダクト23が、車室10a内に連通する車室連通部23aと、電池パック12の収容空間S内に連通する電池連通部(温風吹出部)23bと、この連通部23a、23bの連通量を調整する内々ダンパ(流路切換部)23cとを備えている。この内々ダクト23は、内々ダンパ23cを不図示の駆動モータで動作させることにより空調装置13の温調風の吹き出し先を車室連通部23aを介する車室10a内または電池連通部23bを介する電池パック12の収容空間S内の一方に切換調整することができる。
【0030】
また、制御装置15は、各種センサ16として、ダクト21内の外内ダクト22側(空調装置13の下流側)の温度を検出する送風温度センサ(温風温度検出部)16aと、電池パック12の表面温度を検出する電池温度センサ(電池温度検出部)16bと、ダクト21内の外内ダクト22側の湿度を検出する湿度センサ(湿度検出部)16cと、が接続されている。この制御装置15は、接続部17を介して充電器100を電池パック12に接続して充電する際に、各種センサ16a〜16cが検出するセンサ情報や充電器100側から受け取る充電情報に基づいて、空調装置13による電池パック12の温度調節が必要と判断した場合に、ダクト21のダンパ22c、23cの開閉動作を制御するとともに、空調装置13の駆動を制御して、電池パック12に効率よくかつ十分な充電を快適に行い得るように調整する。
【0031】
特に、本実施形態の制御装置15は、充電器100が接続部17を介して供給する電力を、電池パック12だけでなく、空調装置13やその他負荷側にも振り分けるようにして、充電器100の電力供給能力を十分に有効活用しつつ電池パック12の充電を迅速かつ効率よく完了することができるようになっている。
【0032】
また、この制御装置15は、送風温度センサ16a、電池温度センサ16bおよび湿度センサ16cが検出するセンサ情報に基づいて電池パック12表面に結露が生じるか否かを判定する結露判定部15aを上記制御プログラム等で構成するように設定されている。この制御装置15(結露判定部15a)は、送風温度センサ16aが検出する電池パック12の収容空間S内に吹き込まれる空調風の送風温度Tと、電池温度センサ16bが検出する収容空間S内の電池パック12表面の電池温度TBATと、湿度センサ16cが検出する収容空間S内に吹き込まれる温調風の送風湿度Hとを取得して、予め格納されている図4に示す結露マップに基づいて、その送風温度Tと送風湿度Hに応じた結露温度TDEWを導出(算出)する。そして、この制御装置15は、電池パック12の電池温度TBATがその結露温度TDEWを下回っている(TBAT<TDEW(T、H))場合に、電池パック12表面に結露が発生すると判定し、この結露判定部15aの判定結果に基づいて後述する暖房モードまたは除湿暖房モードのいずれかを実行して、電池パック12に効率よくかつ十分な充電を快適に行い得るように調整する。なお、図4の結露マップは、縦欄に送風温度T、横欄に送風湿度Hが配列されており、その一覧表内に送風温度Tと送風湿度Hに対応する結露温度TDEWが表示されている。
【0033】
詳細には、制御装置15は、接続部17に充電器100が接続されて急速充電が選択指示されたときに、充電制御プログラムに従う図5のフローチャートに示す処理手順(充電手順方法)により電池パック12への急速充電を実行するようになっている。
【0034】
(温調処理手順:送風なしモード)
まず、接続部17に充電器100が接続されたことを検知すると、一時的に記憶保持する後述のフラグをリセット(Fstp=0)するなどの初期化処理を行った後に(ステップS100)、電池温度センサ16bが検出する電池パック12表面の電池温度TBATと、予め設定されている冷却が必要と判断する冷却要温度閾値Tとを比較する(ステップS11)。電池温度TBATが冷却要温度閾値Tよりも低く冷却するまでもないと判断した場合には、続けて、その電池温度TBATと、予め設定されている加温が必要と判断する加温要温度閾値Tとを比較する(ステップS12)。電池温度TBATが加温要温度閾値T以上で(低くなく)加温するまでもないと判断した場合には、空調装置13による電池パック12の温調は不要として、電池パック12の収容空間S内に送風することなく電池パック12に急速充電する送風なしモードを実行開始する(ステップS200)。
【0035】
このモード実行中には、何らかの故障(フェール)が発生したか否かを確認して(ステップS15)、故障発生が確認された場合には、その故障に応じたフェール処理を実行して(ステップS600)、この急速充電制御を終了(中断)する。
【0036】
ステップS15で何等の故障発生も確認されない場合には、電池パック12への急速充電を中断する指示が不図示の操作パネルから入力操作された場合や、急速充電が完了した場合の停止要求の有無を確認して(ステップS16)、その停止要求があった場合にはこの急速充電制御を終了する一方、電池パック12への急速充電の停止要求がなく、急速充電が完了する前には、ステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。
【0037】
これにより、電池パック12が十分な容量に急速充電可能な温度範囲(T≦TBAT<T)である場合には、図6に示すように、空調装置13に電力供給することなく、言い換えると、DC/DCコンバータ41で変換した低電圧(DC12V)の直流電流を必要最低限の電気部品(負荷)42に供給しつつ、充電器100の供給能力を十分に有効活用する急速充電制御を実行することができ、十分な容量の電気エネルギを電池パック12に迅速に蓄電させることができる。
【0038】
(冷房モード)
また、ステップS11において、電池温度TBATが冷却要温度閾値T以上で空調装置13による電池パック12の冷却が必要と判断した場合には、図7に示すように、ダクト21の流路を切り換えて、上記各種制御器から制御信号を送出して収容空間S内に冷風を導入(送風)させつつ電池パック12を急速充電する冷房モードを実行する(ステップS300)。
【0039】
この冷房モードでは、ダンパ22c、23cによる送風流路の切換を行った後に、送風ファン31や空調装置13を駆動させて電池パック12の冷却処理を実行する。具体的には、まずは、外内ダクト22の外内ダンパ22cが内気連通部22bを閉止して外気連通部22aから外気を取り込み可能に開放する流路を形成するとともに、内々ダクト23の内々ダンパ23cが車室連通部23aを閉止して電池連通部23bから空調装置13による空調風を電池パック12の収容空間S内に吹き込み可能に開放する流路を形成する。また、加熱部32は切換ダンパ32bをヒータコア32aの上流側に位置させて(加温時の流路を遮蔽して)余熱などが影響しない流路を形成する。この送風ダンパの切換状態で、送風ファン31が回転駆動することにより、ダクト21の外内ダクト22(外気連通部22a)から外気を取り込んで内々ダクト23(電池連通部23b)から電池パック12の収容空間S内に吹き込む。同時に、空調装置13は、冷却部33の冷房コンプレッサ36を駆動させてコンデンサ37や膨張弁38を介することにより冷却されるエバポレータ35表面に、ダクト21内の送風を触れさせて冷やした冷風(空調風)を収容空間S内に流入させて電池パック12を冷却する。
【0040】
これにより、電池パック12が高温状態にあって効率よく急速充電することができない温度範囲(T≦TBAT)である場合には、図8に示すように、電池パック12への急速充電に必要な電力を確保しつつ、空調装置13の冷房コンプレッサ36、送風ファン31および電気部品(負荷)42にも電力供給することにより、充電器100の供給能力を十分に有効活用して急速充電制御を実行することができ、十分な容量の電気エネルギを電池パック12に迅速に蓄電させることができる。
【0041】
(モード判定)
また、ステップS11、S12において、電池温度TBATが加温要温度閾値T(<冷却要温度閾値T)よりも低く加温する必要があると判断した場合には、先の処理で空調停止(暖房停止)が指示されている(フラグFstp=1)か否か確認して(ステップS13)、先の暖房モードの実行処理時の空調停止指示によるフラグFstp=1が確認された場合には、既に電池パック12が温度調整することなく効率よく急速充電可能な状態に加温済みであることから、そのままステップS200に進んで送風なしモードを実行して、以下同様の処理を繰り返す。ここで、本実施形態では、後述するように、電池温度TBATが加温要温度閾値Tよりも低い場合に空調装置13の温風で電池パック12を加温しつつ急速充電を開始して十分な電力容量による急速充電を確保した後には、その電池パック12の温度は上昇傾向になることから空調停止(フラグFstp=1)にする。しかしながら、極寒冷地などのように再度電池パック12の加温が必要になることが想定される場合には、一定時間経過後にも電池温度TBATが加温要温度閾値Tを下回って再度加温することが必要と判断される場合に、再度、暖房モードや除湿暖房モードの要否を判断して実行するようにしてもよい。
【0042】
一方、ステップS13において、フラグFstp=1でないこと(Fstp=0)が確認されて空調停止が指示されていない場合には、電池パック12が温度調整されることなく(効率のよい急速充電可能な温度範囲になく)加温が必要な状態にあることから、収容空間S内に空調装置13が加熱した温風を吹き込んでも結露が発生することなく快適に電池パック12を加温することができるか否か確認する(ステップS14)。
【0043】
詳細には、ダクト21内の空調風の送風先を電池パック12の収容空間S内に切り換える前に、各種センサ16a〜16cにダクト21内の温風の温湿度や電池パック12の温度を検出させてセンサ情報を取得する。次いで、電池パック12の電池温度TBATが収容空間S内に吹き込まれる温風の送風温度Tと送風湿度Hに基づいて結露有無マップ(図4)から算出した結露温度TDEW以上であるか否かで結露発生の有無を判定する。電池パック12の電池温度TBATが結露温度TDEW以上である場合には、電池パック12表面に結露は生じないと判定して、図9に示すように、ダクト21の流路を切り換えて、上記各種制御器から制御信号を送出して収容空間S内に温風を導入(送風)させ電池パック12を急速充電する単なる暖房モードを実行する(ステップS400)。一方、電池パック12の電池温度TBATが結露温度TDEW未満である場合には、電池パック12表面に結露が生じると判定して、暖房モードと同様のダクト21の流路に切り換えて、上記各種制御器から制御信号を送出して収容空間S内に除湿した温風を導入(送風)させて電池パック12を急速充電する除湿暖房モードを実行する(ステップS500)。
【0044】
(暖房モード)
まず、暖房モードでは、図10のフローチャートに示すように、まずは、送風ダンパの切換を行う(ステップS410)。この送風ダンパの切換では、冷房モードと同様に、外内ダクト22の外内ダンパ22cにより外気連通部22aから外気を取り込む流路を形成するとともに、内々ダクト23の内々ダンパ23cにより電池連通部23bから空調装置13による空調風を電池パック12の収容空間S内に吹き込む流路を形成する。また、加熱部32はヒータコア32aを迂回する流路(ヒータコア32aの上流側)を閉止するように切換ダンパ32bを位置させて(加温する流路のみを開放して)電池パック12の収容空間S内に吹き込む空調風を加熱する流路を形成する。
【0045】
次いで、充電器100側から受け取る電池パック12の受電可能な最大充電電力PBATと、予め設定されている加温不要と判断する暖房停止電力閾値Pthとを比較する(ステップS420)。最大充電電力PBATが暖房停止電力閾値Pthを超えていて既に電池パック12が温度調整することなく十分に急速充電可能な状態になっている場合には、フラグFstpに「1」を設定して(ステップS431)、ヒータ制御器から空調装置13に空調停止(暖房停止)信号を送信する(ステップS461)。ここで、本実施形態では、電池パック12に充電する充電器100側から最大充電電力PBATを受け取る場合を一例にして説明するが、制御装置15側自身で検出するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0046】
一方、ステップS420において、電池パック12の加温が十分でないために最大充電電力PBATが暖房停止電力閾値Pth以下で急速充電可能な状態にまで達していないことが確認された場合には、充電器100から供給可能な電力Pから電池パック12に充電する最大充電電力PBATを減算した余剰電力と、加熱部32のヒータコア32aに通電可能な最大電力PHmaxとを比較する(ステップS440)。充電器100の供給可能電力Pから電池パック12の最大充電電力PBATを減算した余剰電力がヒータコア32aの最大電力PHmaxよりも大きく十分に供給可能である場合には、ヒータコア32aに供給するヒータ駆動電力PHOTとしてヒータ最大電力PHmaxを設定する(ステップS450)。一方、充電器100の供給可能電力Pから電池パック12の最大充電電力PBATを減算した余剰電力がヒータコア32aの最大電力PHmaxに満たない場合には、ヒータコア32aのヒータ駆動電力PHOTとして充電器100の供給可能電力Pから電池パック12の最大充電電力PBATを減算した電力値(余剰電力)を設定する(ステップS451)。この後には、ヒータ制御器から空調装置13にヒータ駆動電力PHOTでの動作要求信号を送信し(ステップS460)、送風ファン31が回転駆動してダクト21の外内ダクト22(外気連通部22a)から取り込む外気を加熱部32のヒータコア32aで加熱して温風(空調風)にしつつ内々ダクト23(電池連通部23b)から電池パック12の収容空間S内に吹き込んで収容空間S内の電池パック12を加温する。
【0047】
これにより、電池パック12が低温状態にあって効率よく急速充電することができない温度範囲(TBAT<T)である場合には、図11に示すように、電池パック12への急速充電に必要な電力を確保しつつ、空調装置13のヒータコア32a、送風ファン31および電気部品(負荷)42にも電力供給することにより、充電器100の供給能力を十分に有効活用して急速充電制御を実行することができ、十分な容量の電気エネルギを電池パック12に迅速に蓄電させることができる。
【0048】
(除湿暖房モード)
また、除湿暖房モードでは、図12のフローチャートに示すように、まずは、暖房モードと同様に送風ダンパの切換を行う(ステップS510)。この送風ダンパの切換では、暖房モードと同様に、外内ダクト22の外気連通部22aから外気を取り込む流路を形成するとともに、内々ダクト23の電池連通部23bから空調装置13による空調風を電池パック12の収容空間S内に吹き込む流路を形成する。また、加熱部32はヒータコア32aの迂回流路を切換ダンパ32bにより閉止して電池パック12の収容空間S内に吹き込む空調風を加熱する流路を形成する。
【0049】
次いで、電池パック12の最大充電電力PBATと、暖房停止電力閾値Pthとを比較する(ステップS520)。最大充電電力PBATが暖房停止電力閾値Pthを超えていて十分に急速充電可能な状態になっている場合には、フラグFstpに「1」を設定して(ステップS531)、冷房コンプレッサ制御器とヒータ制御器から空調装置13に空調停止信号を送信する(ステップS561、571)。
【0050】
一方、ステップS520において、電池パック12の加温が不十分で最大充電電力PBATが暖房停止電力閾値Pth以下の急速充電可能な状態にないことが確認された場合には、充電器100から供給可能な電力Pから電池パック12に充電する最大充電電力PBATおよび除湿機能を有する空調装置13の冷房コンプレッサ36を稼働させるのに必要な駆動電力Pcompを減算した余剰電力と、加熱部32のヒータコア32aの最大電力PHmaxとを比較する(ステップS540)。充電器100の供給可能電力Pから電池パック12の最大充電電力PBATや冷房コンプレッサ36の駆動電力Pcompを減算した余剰電力がヒータコア32aの最大電力PHmaxよりも大きく十分に供給可能である場合には、ヒータコア32aに供給するヒータ駆動電力PHOTとしてヒータ最大電力PHmaxを設定する(ステップS550)。一方、充電器100の供給可能電力Pから電池パック12の最大充電電力PBATや冷房コンプレッサ36の駆動電力Pcompを減算した余剰電力がヒータコア32aの最大電力PHmaxに満たない場合には、ヒータコア32aのヒータ駆動電力PHOTとして充電器100の供給可能電力Pから電池パック12の最大充電電力PBATと冷房コンプレッサ36の駆動電力Pcompを減算した電力値(余剰電力)を設定する(ステップS551)。この後には、ヒータ制御器やコンプレッサ制御器から空調装置13にそのコンプレッサ駆動電力Pcompやヒータ駆動電力PHOTでの動作要求信号を送信し(ステップS560、S570)、送風ファン31が回転駆動してダクト21の外内ダクト22(外気連通部22a)から取り込む外気を空調装置13のエバポレータ35に触れさせて除湿した後に加熱部32のヒータコア32aで加熱して温風(空調風)にしつつ内々ダクト23(電池連通部23b)から電池パック12の収容空間S内に吹き込んで収容空間S内の電池パック12を加温する。
【0051】
これにより、電池パック12が低温状態にあって効率よく急速充電することができない温度範囲(TBAT<T)で、そのまま温風を吹き付けると結露が生じるような温湿度環境にあっても、図13に示すように、電池パック12への急速充電に必要な電力を確保しつつ、空調装置13のヒータコア32a、冷房コンプレッサ36、送風ファン31および電気部品(負荷)42にも電力供給することにより、充電器100の供給能力を十分に有効活用して急速充電制御を実行することができ、十分な容量の電気エネルギを電池パック12に迅速に蓄電させることができる。
【0052】
このように本実施形態においては、電池パック12を加温して急速充電する際に、その電池パック12の表面温度がダクト21から収容空間S内に流入させる温風により結露が生じる温湿度条件になってしまっている場合でも、そのダクト21内の温風を除湿することにより、結露なく電池パック12を急速充電することができる。したがって、効率よく快適に電池パック12に急速充電することができる。
【0053】
ここで、本実施形態の他の態様としては、上述実施形態では車載の空調装置13を流用する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、除湿機能を備える加熱装置を充電専用に準備するようにしてもよい。
【0054】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10 電気自動車
10a 車室
12 電池パック
13 空調装置
15 制御装置
15a 結露判定部
16a 送風温度センサ
16b 電池温度センサ
16c 湿度センサ
17 接続部
21 ダクト
22a 外気連通部
22b 内気連通部
22c 外内ダンパ
23a 車室連通部
23b 電池連通部
23c 内々ダンパ
31 送風ファン
32 加熱部
32a ヒータコア
32b 切換ダンパ
33 冷却部
35 エバポレータ
36 冷房コンプレッサ
37 コンデンサ
38 膨張弁
100 充電器
S 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて繰り返し充電可能な電池の温度を検出する電池温度検出部と、前記電池に向けて温風を吹き出す温風吹出部と、前記電池温度検出部が検出する電池温度に応じて前記温風吹出部に温風を吹き出させて前記電池周りに流入させることにより該電池を加温する温調制御部と、を備える電池温調システムであって、
前記温風の流入により前記電池に結露が発生するか否かを判定する結露判定部と、前記電池の少なくとも前記温風の流入箇所周辺を除湿する除湿部と、を有して、
前記温調制御部は、前記結露判定部が前記電池に結露発生と判定するときに、前記除湿部に前記電池周りを除湿させることを特徴とする電池温調システム。
【請求項2】
前記除湿部は、前記温風吹出部が吹き出す温風を除湿して、当該温風を前記電池周りに流入させることにより前記温風の流入箇所周辺を除湿することを特徴とする請求項1に記載の電池温調システム。
【請求項3】
前記温風吹出部は、前記車両の車室内に流路を介して温風を供給するように前記車両側に搭載される空調装置を流用して、前記温風を前記電池に向けて吹き出すように前記流路を切り換える流路切換部を備えることにより構成され、
前記除湿部は、前記空調装置が備える除湿機能により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池温調システム。
【請求項4】
車両に搭載されて繰り返し充電可能な電池に車両外部の充電器から電力供給させて当該電池の充電を行う電池充電システムであって、
上記請求項3に記載の電池温調システムと、前記電池に充電する際に前記除湿部に前記電池周りを除湿させるときには前記空調装置が備える電動コンプレッサの駆動電力を前記充電器から供給させる制御を実行する電力制御部と、を備えることを特徴とする電池充電システム。
【請求項5】
前記電力制御部は、前記充電器の供給可能な電力から前記電池の充電可能な電力と前記電動コンプレッサ駆動電力とを減算して温風供給に可能な電力を算出し電力供給させることを特徴とする請求項4に記載の電池充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−248452(P2012−248452A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120138(P2011−120138)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】