説明

電池用電極の製造方法及び電池の製造方法

【課題】生産性良く電池用電極を製造することができる電池用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】正極集電体上に正極活物質膜が形成された電池用電極の製造方法にかかわる。正極活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた機能液を製造する調合工程と、機能液を液滴にして吐出し、正極集電体に塗布する塗布工程と、塗布された機能液を正極集電体に押圧しながら加熱することにより、機能液に含まれる樹脂材料を重合させて正極活物質膜を形成する固化工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極の製造方法及び電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末や自動車等に小型軽量で電力効率が良い電池が用いられている。そして、電解液を用いた電池における洩液や電極間短絡による発煙防止の観点からポリマー電解質を用いた安全性の高い電池が特許文献1に開示されている。これによると電池は固体電解質フィルムの一面に正極活物質を含む正極合剤層を形成し、正極合剤層と積層して正極集電層を配置している。そして、固体電解質フィルムの他面に負極活物質を含む負極合剤層を形成し、負極合剤層と積層して負極集電層を配置している。正極活物質には金属硫化物、金属酸化物、リチウム複合酸化物が用いられ、負極活物質にはリチウム合金と炭素等が用いられている。正極集電層及び負極集電層にはアルミニウムの層が配置されていた。以下、正極合剤層を正極活物質膜、正極集電層を正極集電体、負極合剤層を負極活物質膜、負極集電層を負極集電体、固体電解質フィルムを電解質膜とそれぞれ称す。
【0003】
活物質を塗布して活物質膜を形成する方法が特許文献2に開示されている。これによると活物質膜の材料を有機溶媒に分散させた分散液(以下、機能液と称す)を製造する。そして、機能液を塗布した後乾燥することにより有機溶媒を除去している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−100350号公報
【特許文献2】特開2007−307547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
活物質膜の材料を有機溶媒に分散させた機能液を塗布するとき、有機溶媒を乾燥して除去する工程が必要となる。そこで、電力効率が良い電池をさらに生産性良く製造する方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる電池用電極の製造方法は、集電体上に活物質膜が形成された電池用電極の製造方法であって、活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた機能液を製造する調合工程と、前記機能液を前記集電体に塗布する塗布工程と、前記機能液に含まれる前記樹脂材料を重合させて前記活物質膜を形成する固化工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この電池用電極の製造方法によれば、液状の樹脂材料に活物質を含む材料を分散して機能液を製造している。そして、機能液に含まれる樹脂材料を重合させて活物質膜を形成する。活物質を含む材料及び樹脂材料を分散媒に分散させた機能液を用いるとき、塗布工程と固化工程との間に乾燥工程が必要となる。この乾燥工程にて分散媒を乾燥して除去することにより樹脂材料を重合させる準備が完了する。本適用例では、分散媒を用いないので、機能液を乾燥する工程が不用となる。従って、生産性良く電池用電極を製造することができる。
【0009】
[適用例2]
上記適用例にかかる電池用電極の製造方法において、前記塗布工程では、前記機能液を液滴にして前記集電体に吐出して塗布することを特徴とする。
【0010】
この電池用電極の製造方法によれば、機能液を液滴にして吐出している。従って、液滴の量と吐出する液滴の個数を制御することにより、精度良く機能液の量を制御して塗布することができる。その結果、活物質膜の膜厚を精度良く制御することができる。
【0011】
[適用例3]
上記適用例にかかる電池用電極の製造方法において、液状の前記樹脂材料はモノマーであることを特徴とする。
【0012】
この電池用電極の製造方法によれば、樹脂材料がモノマーであることから、樹脂材料は分子量の小さい分子により構成されている。従って、樹脂材料は流動し易いので、樹脂材料を含む機能液の粘度を低くすることができる。その結果、機能液を液滴にして吐出し易くすることができる。
【0013】
[適用例4]
上記適用例にかかる電池用電極の製造方法において、前記固化工程では、前記機能液を前記集電体に押圧しながら加熱して固化することを特徴とする。
【0014】
この電池用電極の製造方法によれば、機能液を集電体に押圧した状態で固化している。従って、機能液により形成される活物質膜は集電体と密着して形成される。その結果、集電体と活物質膜との間で電子を伝導し易くすることができる。
【0015】
[適用例5]
上記適用例にかかる電池用電極の製造方法において、前記調合工程では、活物質を含む前記材料の濃度が異なる複数の前記機能液を製造し、前記塗布工程では、前記集電体に濃度の濃い前記機能液から順に前記集電体に塗布することを特徴とする。
【0016】
この電池用電極の製造方法によれば、集電体に近い場所では活物質の濃度が高く、集電体と離れた場所では活物質の濃度が低く形成される。従って、活物質膜の集電体に近い領域において反応速度が速まる為、高出力時における充放電性能を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]
本適用例にかかる電池の製造方法は、活物質膜を一対の集電体で挟んで配置された電池の製造方法であって、前記活物質膜は正極活物質膜及び負極活物質膜を有し、正極用活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた正極用機能液と負極用活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた負極用機能液とを製造する調合工程と、前記正極用機能液と前記負極用機能液とを塗布する塗布工程と、前記正極用機能液と前記負極用機能液とに含まれる前記樹脂材料を重合させて前記正極活物質膜及び前記負極活物質膜を形成する固化工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
この電池の製造方法によれば、正極用機能液は液状の樹脂材料に正極活物質を含む材料を分散して製造されている。また、負極用機能液は液状の樹脂材料に負極活物質を含む材料を分散して製造されている。本適用例では、分散媒を用いないので、正極用機能液及び負極用機能液を塗布した後で乾燥する工程が不用となる。従って、生産性良く電池を製造することができる。
【0019】
[適用例7]
上記適用例にかかる電池の製造方法において、前記電池は前記正極活物質膜と前記負極活物質膜との間に電解質膜を有し、前記固化工程では前記正極用機能液と前記負極用機能液との少なくとも一方を前記電解質膜に押圧しながら加熱して前記樹脂材料を重合させることを特徴とする。
【0020】
この電池の製造方法によれば、正極用機能液及び負極用機能液の少なくとも一方の機能液を電解質膜に押圧した状態で固化している。従って、機能液により形成される正極活物質膜及び負極活物質膜は電解質膜と密着して形成される。その結果、電解質膜と正極活物質膜及び負極活物質膜との間でイオン化物質を伝導し易くすることができる。
【0021】
[適用例8]
上記適用例にかかる電池の製造方法において、前記電池は前記正極活物質膜と前記負極活物質膜との間に電解質膜を有し、前記調合工程では前記電解質膜の材料を液状の前記樹脂材料に分散させた電解質膜用機能液をさらに製造し、前記塗布工程では前記正極用機能液と前記負極用機能液との少なくとも一方と重ねて前記電解質膜用機能液を塗布し、前記固化工程では前記負極用機能液と重ねて塗布した前記正極用機能液もしくは前記負極用機能液と前記電解質膜用機能液とに含まれる前記樹脂材料を同時に重合させることを特徴とする。
【0022】
この電池の製造方法によれば、正極用機能液と負極用機能液との少なくとも一方と電解質膜用機能液とを重ねて塗布した後、機能液に含まれる樹脂材料を同時に重合させている。従って、正極活物質膜もしくは負極活物質膜と電解質膜との間で樹脂材料が密着して形成される。その結果、正極活物質膜と電解質膜との間もしくは負極活物質膜と電解質膜との間でイオン化物質が伝導し易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、具体化した実施形態について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0024】
(第1の実施形態)
本実施形態における電池と特徴的な製造方法を用いてこの電池を製造する場合の例について図1〜図8に従って説明する。
【0025】
(電池)
最初に、電池1について図1を用いて説明する。図1(a)は、電池を示す概略斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の電池のA−A’線に沿う模式断面図である。電池1は矩形のシート状の上外装2及び下外装3を備え、上外装2と下外装3とが外周において密着して配置されている。そして、電池1の一端において上外装2と下外装3との間から負極集電体4が突出して配置され、負極集電体4と逆側の端に正極集電体5が突出して配置されている。負極集電体4と正極集電体5とが配置されている方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。そして、電池1の厚み方向をZ方向とする。
【0026】
上外装2及び下外装3の材料は絶縁性に優れ、引張り強度や耐衝撃性があり破れ難く、さらには熱伝導性の良い材料が好ましい。上外装2及び下外装3の材料には、例えば、金属箔と樹脂フィルムとが積層された高分子金属複合フィルム、アルミラミネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系材料等からなるフィルム等を用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミラミネートフィルムを採用している。
【0027】
負極集電体4及び正極集電体5は、導電性を有する素材からなるシート状の材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル、銀等の金属を、金属箔、電解箔、圧延箔、エンボス加工品、発泡シート等に加工したものやこれらの材料を積層したものを用いることができる。本実施形態では、例えば、負極集電体4にアルミ箔を採用し、正極集電体5に銅箔を採用している。集電体の厚みは、特に制約はないが、集電体の強度が保てる厚みが良い。本実施形態では、例えば、厚みは通常5〜30μmを採用している。
【0028】
図1(b)に示すように、負極集電体4と正極集電体5との間には電解質層6が配置され、電解質層6は正極集電体5側から順に正極活物質膜7、電解質膜8、負極活物質膜9が積層されている。正極集電体5と正極活物質膜7とを合わせて正電極10とし、負極集電体4と負極活物質膜9とを合わせて負電極11とする。
【0029】
正極活物質膜7は正極活物質、導電助剤、金属粒子、結着材、電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤等から構成されている。正極活物質は遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)を用いることができる。例えば、LiMnO2、LiMn24、Li2MnO4等のLi−Mn系複合酸化物、LiCoO2等のLi−Co系複合酸化物、Li2Cr27、Li2CrO4等のLi−Cr系複合酸化物、LiNiO2等のLi−Ni系複合酸化物を用いることができる。他にも、LiNi1・xCoxO2等のLi−Ni−Co系複合酸化物、LiNi1/2Mn1/2O2等のLi−Ni−Mn系複合酸化物、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のLi−Ni−Mn−Co系複合酸化物、Li4Ti512等のLi−Ti系酸化物を用いることができる。他にも、LixFeOy、LiFeO2等のLi−Fe系複合酸化物、LiFePO4等の燐酸鉄リチウム系化合物等やLi2S等のリチウム硫化物等から選択することが可能である。また、これらの材料に限定されるものではなく各種の材料から選択することが可能である。本実施形態においては、例えば、正極活物質にLi2MnO4を採用している。
【0030】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができる。また、これらの材料に限定されるものではなく各種の材料から選択することが可能である。本実施形態においては、例えば、導電助剤にアセチレンブラックを採用している。金属粒子は金属を微細な粒子にしたものであり、負極集電体4と同じ金属が好ましい。本実施形態においては、例えば、金属粒子に銅粒子を採用している。
【0031】
結着材としては、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド等を用いることができる。ただし、これらに限られるわけではなく、公知の結着材を用いることができる。また、結着材がなくとも電解質ポリマーが正極活物質の微粒子同士を結びつける場合には必ずしも必要でない。本実施形態においては、例えば、結着材を用いずに実施している。
【0032】
電解質支持塩には公知のリチウム塩が用いられ、例えば、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(C25SO22Nとも記載)を用いることができる。他にも、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)及びこれらの混合物等を用いることができる。これらの材料に限定されるものではなく各種の材料から選択することが可能である。本実施形態においては、例えば、電解質支持塩にリチウムビスを採用している。
【0033】
電解質ポリマーの材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルを用いることができる。
【0034】
他にもエポキシ環(オキシラン)を含有する物質を用いることができる。例えば、ジエチレングリコールグリシジルメチルエーテル、ジプロピレングリコールグリシジルメチルエーテルを用いることができる。他にも、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテルを用いることができる。さらに、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキセノエート等を用いることができる。さらに、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルアリルエーテル、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、シクロへキセンオキシド等を用いることができる。
【0035】
他にも、架橋性オキシラン単量体としては、ハロゲン置換オキシラン単量体や、エチレン性不飽和エポキシド等を用いることができる。ハロゲン置換オキシラン単量体としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンや、p−クロロスチレンオキシド、ジブロモフェニルグリシジルエーテル等を用いることができる。
【0036】
また、エチレン性不飽和エポキシドとしては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン等のジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセンを用いることができる。他にも、1,2−エポキシ−9−デセン等のアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル等エチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;等を用いることができる。
【0037】
他にも、エチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体として、非架橋性のオキシラン単量体を用いてもよい。具体的には、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−イソブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカン等のアルキレンオキシド;シクロヘキセンオキシド等の環式脂肪酸エポキシドを用いることができる。他にも、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル;スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル等の非エチレン性不飽和エポキシド等を用いることができる。これらは2種以上を併用してもよい。中でも、重合反応性の高いプロピレンオキシド、1,2エポキシブタンが好ましい。
【0038】
他にも、オキセタン環を有する物質を用いることができる。オキセタン環含有モノマーにおいて、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。例えば、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、(3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−ブチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−ヘキシル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート等を用いることができる。本実施形態においては、例えば、アクリロニトリルを採用している。
【0039】
添加剤は、例えば、電池の性能や寿命を高めるためのトリフルオロプロピレンカーボネートや、補強材として各種フィラー等を適宜用いてもよい。添加剤がなくとも電池の性能が得られる場合には添加剤は必ずしも必要ではない。さらに、電解質ポリマーを重合させるために重合開始剤を用いても良い。重合開始剤は電解質ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させ、重合方法(熱重合法、光重合法、放射線重合法、電子線重合法等)や重合させる化合物に応じて適宜選択する必要がある。例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル等を用いることができるが、これらに制限されるべきものではない。本実施形態においては、例えば、重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルを採用している。
【0040】
電解質膜8は電解質フィルムであり、イオン化物質を伝導する機能を備える。一方、電解質膜8は電子が伝導し難い機能を有し、電子の流動にともない電池1が過剰に発熱することを防止している。以上の機能を備えたフィルムであれば特に限定されない。電解質膜8は、例えば、ホウ酸エステル系、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系、ポリエチレンオキシド(PEO)系、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)系、ポリビニルピロリドン(PVP)系、シロキサン系等からなる膜を用いることができる。そして、電解質ポリマーと同様にイオンを伝導する機能を備え、上述のリチウム塩をよく溶解する特徴がある。熱可塑性である方が好ましいが、必ずしも熱可塑性である必要はない。本実施形態においては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系のフィルムを採用している。
【0041】
負極活物質膜9は負極活物質、導電助剤、結着材、電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤等から構成されている。負極活物質は各種の黒鉛類、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン等、公知の黒鉛類を用いることができる。他にも公知の金属化合物、金属酸化物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素、Li4Ti512等のリチウム−チタン複合酸化物、Li22Si5等のシリコン化合物、LiC6等の炭素化合物、リチウム金属等を用いることができ、これらの材料を単独で使用しても良いし、複合して用いても良い。負極活物質はこれらに制限されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。本実施形態においては、例えば、負極活物質にLi4Ti512を採用している。
【0042】
導電助剤、結着材、電解質材料は正極活物質膜7と同様な材料をそれぞれ用いることができる。負極活物質に黒鉛を用いる場合には導電助剤は必ずしも必要ではない。本実施形態においては、例えば、導電助剤にアセチレンブラックを採用し、結着材にポリフッ化ビニリデンを採用している。さらに、電解質ポリマーにアクリロニトリルを採用し、電解質支持塩にはリチウムビスを採用している。
【0043】
正極活物質膜7、電解質膜8、負極活物質膜9の厚さはそれぞれ5〜30μmであり、各層の厚さは薄い方が厚い場合に比べて、イオン化物質の伝導距離を短くできるため、効率の良い電池にすることができる。
【0044】
(液滴吐出装置)
図2は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置14により、膜を構成する材料を含む機能液が吐出されて塗布される。図2に示すように、液滴吐出装置14には、直方体形状に形成される基台15が備えられている。本実施形態では、この基台15の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0045】
基台15の上面15aには、Y方向に延びる一対の案内レール16a,16bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台15の上側には、一対の案内レール16a,16bに対応する図示しない直動機構を備えたステージ17が取付けられている。
【0046】
さらに、基台15の上面15aには、案内レール16a,16bと平行に主走査位置検出器18が配置され、ステージ17の位置が計測できるようになっている。そのステージ17の上面には、載置面19が形成され、その載置面19には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。操作者が載置面19に基板20を載置して所定の位置に位置決めする。その後、基板チャック機構により基板20は載置面19に固定される。
【0047】
基台15のX方向両側には、一対の支持台21a,21bが立設され、その一対の支持台21a,21bには、X方向に延びる案内部材22が架設されている。案内部材22は、その長手方向の幅がステージ17のX方向よりも長く形成され、その一端が支持台21a側に張り出すように配置されている。案内部材22の上側には、吐出する液体を供給可能に収容する収容タンク23が配設されている。一方、その案内部材22の下側には、X方向に延びる案内レール24がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0048】
案内レール24に沿って移動可能に配置されるキャリッジ25は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ25はステージ17と同様に直動機構を備えている。案内部材22とキャリッジ25との間には、副走査位置検出装置26が配置され、キャリッジ25の位置が計測できるようになっている。そして、キャリッジ25のステージ17側に向いている下面25aには、液滴吐出ヘッド27が凸設されている。
【0049】
X方向と逆の基台15側面であってキャリッジ25の移動範囲と対向する場所には、保守装置28が配置され、液滴吐出ヘッド27をクリーニングする機構が配置されている。そして、液滴吐出ヘッド27をクリーニングすることにより、液滴吐出ヘッド27を正常に吐出可能な状態に保つことが可能となっている。
【0050】
図3(a)は、キャリッジを示す模式平面図である。図3に示すようにキャリッジ25には9個の液滴吐出ヘッド27が配置され、液滴吐出ヘッド27の下面には、それぞれノズルプレート29が備えられている。そのノズルプレート29には、それぞれ複数のノズル30がX方向に所定の間隔で配列されている。
【0051】
図3(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図3(b)に示すように、ノズルプレート29の上側であってノズル30と相対する位置には、キャビティ31が形成されている。そして、キャビティ31には収容タンク23に貯留されている機能液32が供給される。キャビティ31の上側には、上下方向に振動して、キャビティ31内の容積を拡大縮小する振動板33と、上下方向に伸縮して振動板33を振動させる圧電素子34が配設されている。圧電素子34が上下方向に伸縮して振動板33を振動し、振動板33がキャビティ31内の容積を拡大縮小する。それにより、キャビティ31内に供給された機能液32はノズル30を通って吐出されるようになっている。液滴吐出装置14はステージ17とキャリッジ25とを走査してノズル30が所定の場所に位置するときに液滴35を吐出することにより、所望のパターンを描画することができる。
【0052】
液滴吐出ヘッド27は、機能液32を液滴35にして吐出する。そして、液滴吐出ヘッド27が圧電素子34を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子34が伸張して、振動板33がキャビティ31内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド27のノズル30からは、縮小した容積分の機能液32が液滴35となって吐出される。
【0053】
(電池の製造方法)
次に、上述した液滴吐出装置14を用いて、電池1を製造する方法について図4〜図8にて説明する。図4は、電池を製造する製造工程を示すフローチャートである。図5〜図8は、電池の製造方法を説明する図である。
【0054】
図4に示したフローチャートにおいて、ステップS1は、調合工程に相当し、正極活物質膜の材料からなる機能液と負極活物質膜の材料からなる機能液とを製造する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、電解質膜配置工程に相当し、電解質膜を液滴吐出装置に配置する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は、正極活物質塗布工程に相当し、電解質膜に正極活物質膜の材料からなる機能液を塗布する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は、正極集電体配置工程に相当し、電解質膜に塗布された機能液と重ねて正極集電体を配置する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は、負極活物質塗布工程に相当し、電解質膜に負極活物質膜の材料からなる機能液を塗布する工程である。ステップS3及びステップS5がステップS9の塗布工程であり、活物質を塗布する工程となっている。次にステップS6に移行する。ステップS6は、負極集電体配置工程に相当し、電解質膜に塗布された機能液と重ねて負極集電体を配置する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は、固化工程に相当し、電解質フィルムに負極集電体と正極集電体とを加熱しながら圧着することにより、電解質ポリマーを重合させる工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は、外装配置工程に相当し、外装部品を配置する工程である。以上の工程により電池の製造工程を終了する。
【0055】
次に、図5〜図8を用いて、図4に示したステップと対応させて、電池の製造方法を詳細に説明する。図5(a)はステップS1の調合工程に対応する図である。図5(a)に示すように、ステップS1において、攪拌装置38を用いる。攪拌装置38は容器39を備えている。容器39の中には機能液32が貯留されている。攪拌装置38は羽根車40を備え、羽根車40は中心に軸40aを有している。軸40aの一端にはモーター41が配置されている。このモーター41を回転させることにより羽根車40を回転させる。そして、羽根車40が機能液32を攪拌する。容器39の下には加熱部42が配置され、加熱部42は容器39を加熱する。加熱部42は温度検出部を有し、容器39の温度を検出する。そして、加熱部42は加熱する熱量を制御して、容器39の温度を一定にすることが可能になっている。
【0056】
まず、正極用機能液としての正極活物質機能液32aを製造する。容器39に正極活物質膜の材料を調合して投入する。正極活物質膜の材料の1部である電解質ポリマーの材料は液状であり、溶媒もしくは分散媒は投入しない。次に、加熱部42を駆動して容器39を所定の温度にする。加熱部42は、正極活物質機能液32aが固化しない温度に容器39の温度を維持する。同時に羽根車40を回転して機能液32を攪拌する。その結果、液状の電解質ポリマーの材料に各種材料が溶解もしくは分散することにより正極活物質機能液32aが製造される。
【0057】
同様の方法により負極用機能液としての負極活物質機能液32bを製造する。容器39に負極活物質膜の材料を調合して投入する。このときにも、負極活物質膜の材料の1部である電解質ポリマーの材料は液状であり、溶媒もしくは分散媒は投入しない。次に、加熱部42を駆動して容器39を所定の温度にする。加熱部42は、負極活物質機能液32bが固化しない温度に容器39の温度を維持する。同時に羽根車40を回転して機能液32を攪拌する。その結果、液状の電解質ポリマーの材料に各種材料が溶解もしくは分散することにより負極活物質機能液32bが製造される。
【0058】
図5(b)はステップS2の電解質膜配置工程に対応する図である。図5(b)に示すようにステップS2において、液滴吐出装置14のステージ17上に形成された載置面19に操作者が電解質膜8を載置する。そして、操作者が電解質膜8を位置決めする。次に、操作者は基板チャック機構を駆動して電解質膜8を固定する。
【0059】
図5(c)及び図5(d)はステップS3の正極活物質塗布工程に対応する図である。液滴吐出装置14の収容タンク23に予め正極活物質機能液32aを収納する。そして、正極活物質機能液32aを液滴吐出ヘッド27に供給する。図5(c)に示すように、ステップS3において、ステージ17及びキャリッジ25を走査しながら液滴吐出ヘッド27のノズル30から電解質膜8に液滴35を吐出する。その結果、図5(d)に示すように、電解質膜8に正極活物質機能液32aが塗布される。
【0060】
図6(a)及び図6(b)はステップS4の正極集電体配置工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS4において、正極集電体5を用意する。そして、電解質膜8の正極活物質機能液32aが塗布されている面に正極集電体5を重ねて配置する。このとき、正極集電体5と正極活物質機能液32aとの間に空気等が入って気泡ができないように減圧した環境にて配置するのが好ましい。その結果、図6(b)に示すように、正極活物質機能液32aを挟んで正極集電体5と電解質膜8とが積層される。
【0061】
図6(c)及び図6(d)はステップS5の負極活物質塗布工程に対応する図である。液滴吐出装置14の収容タンク23に予め負極活物質機能液32bを収納する。そして、負極活物質機能液32bを液滴吐出ヘッド27に供給する。図6(c)に示すように、ステップS5において正極集電体5をステージ17の載置面19と接するように載置する。このとき、電解質膜8は液滴吐出ヘッド27と対向する。そして、操作者が電解質膜8を位置決めする。次に、操作者は基板チャック機構を駆動して電解質膜8を固定する。続いて、ステージ17及びキャリッジ25を走査しながら液滴吐出ヘッド27のノズル30から電解質膜8に液滴35を吐出する。その結果、図6(d)に示すように、電解質膜8に負極活物質機能液32bが塗布される。
【0062】
図7(a)はステップS6の負極集電体配置工程に対応する図である。図7(a)に示すように、ステップS6において、負極集電体4を用意する。そして、電解質膜8の負極活物質機能液32bが塗布されている面に負極集電体4を重ねて配置する。このとき、負極集電体4と負極活物質機能液32bの間に空気等が入って気泡ができないように減圧した環境にて配置するのが好ましい。その結果、図7(a)に示すように、負極活物質機能液32bを挟んで負極集電体4と電解質膜8とが積層される。この積層されたシートを中間電池基板43と称す。
【0063】
図7(b)〜図8(a)はステップS7の固化工程に対応する図である。図7(b)に示すように、ステップS7において、複数の中間電池基板43を重ねて加熱圧着装置44の内部に配置する。加熱圧着装置44は加熱室45を備えている。加熱室45は載置台46を備え、載置台46上には加圧装置47が配置されている。加圧装置47は土台48を備え、土台48の両端には2本の案内棒49が立設されている。土台48の上には複数の中間電池基板43が重ねて配置され、中間電池基板43の上には抑え板50が配置されている。抑え板50の両端にはガイド孔が形成され、このガイド孔に案内棒49が貫通するように抑え板50が配置される。そして、案内棒49により土台48と抑え板50との位置合わせが行われ、土台48と抑え板50とにより確実に中間電池基板43を挟むことが可能になっている。抑え板50の上には重石51が配置される。重石51は複数に分割可能に形成されることにより、重量を変更することができる。そして、中間電池基板43に所望の荷重を加えることが可能になっている。
【0064】
加熱室45の上部には不活性ガス供給装置52が配置され、加熱室45内の空気を除去して窒素ガスを充填する機能を備えている。不活性ガス供給装置52が供給する気体は窒素ガスに限らずアルゴンガス等の不活性雰囲気が形成可能な気体であれば良い。さらに、加熱室45の上部には加熱装置53を備え、加熱装置53は加熱室45内の気体を加熱装置53内に吸入および排出する循環装置とヒーター等の加熱部を備えている。そして、加熱装置53は加熱室45内の気体を吸入して加熱した後、加熱室45に排出する機能を備えている。加熱室45の側面には攪拌装置54を備えている。攪拌装置54はプロペラファン54a及びプロペラファン54aを回転させるモーター54b等から構成されている。そして、プロペラファン54aを回転させることにより、加熱室45内の気体が循環するようになっている。
【0065】
操作者は複数の中間電池基板43を重ねて土台48上に配置する。そして、中間電池基板43に重ねて抑え板50を配置し、抑え板50の上に重石51を配置する。そして、操作者が加熱室45を密閉した後、不活性ガス供給装置52を駆動することにより、加熱室45の空気を除去して窒素ガスを充填する。加熱室45内を窒素ガスにすることにより、中間電池基板43が酸化することを防止することができる。
【0066】
続いて、加熱装置53及び攪拌装置54を駆動することにより、加熱室45内の温度を均等に上昇させる。そして、加熱室45内の温度を所定の温度にて、所定の時間維持した後、徐冷する。
【0067】
その結果、図8(a)に示すように電池基板55が形成される。正極集電体5の上に正極活物質膜7が形成されている。正極活物質膜7は正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤等が電解質ポリマーに混在している膜である。この電解質ポリマーは重合することによりゲル化又は固化している。正極活物質膜7の上には電解質膜8が積層されている。そして、電池基板55が押圧しながら加熱されている為、正極活物質膜7と電解質膜8とは密着して形成される。電解質膜8と密着した状態で正極活物質膜7の電解質ポリマーを重合させることにより、正極活物質膜7と電解質膜8との間が密着した状態でゲル化又は固化される。同様に、正極活物質膜7と正極集電体5との間も密着した状態でゲル化又は固化される。
【0068】
電解質膜8の上には負極活物質膜9が積層されている。そして、電池基板55が押圧しながら加熱されている為、電解質膜8と負極活物質膜9とは密着して形成される。電解質膜8と密着した状態で負極活物質膜9の電解質ポリマーを重合させることにより、負極活物質膜9と電解質膜8との間が密着した状態で固化される。そして、負極活物質膜9の上には負極集電体4が積層されている。同様に、負極活物質膜9と負極集電体4との間も密着した状態でゲル化又は固化される。
【0069】
図8(b)及び図8(c)はステップS8の外装配置工程に対応する図である。図8(b)に示すように、ステップS8において、電池基板55を囲んで上外装2及び下外装3を配置する。予め、上外装2と下外装3とはX方向の両端が接続されて筒状に形成されている。そして、上外装2及び下外装3の中に電池基板55を挿入する。このとき、負極集電体4及び正極集電体5の一部が上外装2及び下外装3から突出するように配置する。次に、上外装2のY方向両端の端部2aと下外装3のY方向両端の端部3aに接着剤を塗布する。そして、接着剤を塗布した上外装2と下外装3とをそれぞれ負極集電体4及び正極集電体5に押圧して、接着剤を固化することにより、上外装2と下外装3とで覆われた電池基板55を密閉する。その結果、図8(c)に示すように電池1が完成する。
【0070】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、電解質ポリマーの材料である液状の樹脂材料に活物質を含む材料を分散して機能液32を製造している。そして、機能液32に含まれる樹脂材料を重合させて正極活物質膜7及び負極活物質膜9を形成する。活物質を含む材料及び樹脂材料を分散媒に分散させた機能液を用いるとき、塗布工程と固化工程との間に乾燥工程が必要となる。この乾燥工程にて分散媒を乾燥して除去することにより樹脂材料を重合させる準備が完了する。本実施形態では、分散媒を用いないので、機能液32を乾燥する工程が不用となる。従って、生産性良く電池を製造することができる。
【0071】
(2)本実施形態によれば、機能液32を液滴35にして吐出している。従って、液滴35の量と吐出する液滴35の個数を制御することにより、精度良く機能液32の量を制御して塗布することができる。その結果、正極活物質膜7及び負極活物質膜9の膜厚を精度良く制御することができる。さらに、正極活物質膜7及び負極活物質膜9の膜厚を薄くできるので、電解質層6の間を伝導するイオン化物質の伝導距離を短くすることができる。その結果、高出力な電池1にすることができる。
【0072】
(3)本実施形態によれば、樹脂材料にモノマーを用いるとき、樹脂材料は分子量を小さい分子により構成される。従って、樹脂材料は流動し易いので、樹脂材料を含む機能液の粘度を低くすることができる。その結果、機能液32を液滴35にして吐出し易くすることができる。
【0073】
(4)本実施形態によれば、正極活物質機能液32aを正極集電体5に押圧した状態でゲル化又は固化している。従って、正極活物質機能液32aにより形成される正極活物質膜7は正極集電体5と密着して形成される。その結果、電池1は正極集電体5と正極活物質膜7との間で電子を移動し易くすることができる。同様に、負極活物質機能液32bを負極集電体4に押圧した状態でゲル化又は固化している。従って、負極活物質機能液32bにより形成される負極活物質膜9は負極集電体4と密着して形成される。その結果、電池1は負極集電体4と負極活物質膜9との間で電子を移動し易くすることができる。
【0074】
(5)本実施形態によれば、正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bを電解質膜8に押圧した状態でゲル化又は固化している。従って、機能液32により形成される正極活物質膜7及び負極活物質膜9は電解質膜8と密着して形成される。その結果、電池1は電解質膜8と正極活物質膜7及び負極活物質膜9との間でイオン化物質を伝導し易くすることができる。
【0075】
(6)本実施形態によれば、ステップS1の調合工程にて正極活物質と電解質ポリマーの材料とを調合して正極活物質機能液32aを製造している。そして、正極活物質機能液32aを攪拌している。その後、ステップS3の正極活物質塗布工程にて正極活物質機能液32aを塗布している。次にステップS7の固化工程で正極活物質機能液32aをゲル化又は固化して正極活物質膜7を形成している。従って、正極活物質膜7は正極活物質と電解質ポリマーとが良く混合された膜になっている。その結果、正極活物質膜7はイオン化物質が流動し易く化学反応を生じ易くなっている。以上の内容は負極活物質膜9にも適用することができる。
【0076】
(7)本実施形態によれば、電池1は可撓性がある材料を積層して形成している。従って、電池1を捻って、電池1の形状を変形することができる。そして、電池1に振動を加えても電池基板55は分断し難いので、電池1は優れた耐振動性を備えることができる。
【0077】
(8)本実施形態によれば、液滴吐出装置14を用いて、必要な量の機能液32を塗布している。従って、無駄に消費する機能液32の量が少ない為、省資源な方法で塗布することができる。
【0078】
(9)本実施形態によれば、ステップS7の固化工程にて正極活物質機能液32aと負極活物質機能液32bとを同時にゲル化又は固化している。従って、正極活物質機能液32aと負極活物質機能液32bとを各々別の工程でゲル化又は固化する方法に比べて、生産性良く製造することができる。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、電池と電池を製造する一実施形態について図9〜図12を用いて説明する。図9は電池を示す模式断面図であり、図10は電池を製造する製造工程を示すフローチャートである。図11及び図12は電池の製造方法を説明する図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、電解質膜8を電解質フィルムでなく電解質ポリマーの材料をゲル化又は固化して形成した点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0080】
すなわち、本実施形態では、図9に示したように電池58は負極集電体4と正極集電体5との間に電解質層59が配置されている。そして、電解質層59は正極活物質膜7と電解質膜60と負極活物質膜9とから構成されている。正極活物質膜7は正極活物質、導電助剤、金属粒子、結着材、電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤、等から構成されている。そして、負極活物質膜9は負極活物質、導電助剤、結着材、電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤、等から構成されている。電解質膜60は電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)等から構成されている。電解質膜60は正極活物質膜7及び負極活物質膜9と比較して薄く形成されている。そして、イオン化物質が正極活物質膜7と負極活物質膜9との間を伝導し易くしている。
【0081】
続いて、電池58の製造方法を説明する。図10に示したフローチャートにおいて、ステップS11は調合工程に相当する。第1の実施形態における正極活物質機能液及び負極活物質機能液に加え、中間電解質膜の材料からなる機能液を製造する工程である。次にステップS12に移行するステップS12は、正極集電体配置工程に相当し、正極集電体を液滴吐出装置に配置する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は、正極活物質塗布工程に相当し、正極集電体に正極活物質機能液を塗布する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14は、電解質塗布工程に相当し、塗布された正極活物質機能液と重ねて中間電解質膜の材料からなる機能液を塗布する工程である。次にステップS15に移行する。ステップS15は、負極活物質塗布工程に相当し、塗布された中間電解質膜の材料からなる機能液と重ねて負極活物質機能液を塗布する工程である。ステップS13からステップS15までの工程がステップS19の塗布工程に相当し、各種機能液を塗布する工程である。次にステップS16に移行する。ステップS16は、負極集電体配置工程に相当し、塗布された負極活物質機能液と重ねて負極集電体を配置する工程である。次にステップS17に移行する。ステップS17は、固化工程に相当し、負極集電体と正極集電体と塗布された機能液とを押圧しながら加熱することにより、電解質ポリマーを重合させる工程である。次にステップS18に移行する。ステップS18は、外装配置工程に相当し、外装部品を配置する工程である。以上の工程により電池の製造工程を終了する。
【0082】
次に、図11及び図12を用いて、図10に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。ステップS11の調合工程にて正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bを製造する。この方法は第1の実施形態と同様の内容であり、説明を省略する。さらに、中間電解質膜の材料からなる電解質膜用機能液を製造する。電解質ポリマーの材料、電解質支持塩、重合開始剤等を調合して攪拌する。各材料は正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bに用いた材料と同様の材料を用いることができる。本実施形態においては、例えば、電解質ポリマーの材料にアクリロニトリル、電解質支持塩にリチウムビス、重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルを採用している。そして、攪拌方法も第1の実施形態のステップS1と同様の方法を用いて攪拌する。
【0083】
図11(a)はステップS12の正極集電体配置工程に対応する図である。図11(a)に示すように、ステップS12において、液滴吐出装置14のステージ17上に形成された載置面19に操作者が正極集電体5を載置する。そして、操作者は正極集電体5を位置決めする。次に、基板チャック機構を駆動して正極集電体5を載置面19に固定する。
【0084】
図11(b)及び図11(c)はステップS13の正極活物質塗布工程に対応する図である。液滴吐出装置14の収容タンク23に予め正極活物質機能液32aを収納する。そして、正極活物質機能液32aを液滴吐出ヘッド27に供給する。図11(b)に示すように、ステップS13において、ステージ17及びキャリッジ25を走査しながら液滴吐出ヘッド27のノズル30から正極集電体5に液滴35を吐出する。その結果、図11(c)に示すように、正極集電体5に正極活物質機能液32aが塗布される。
【0085】
図11(d)及び図11(e)はステップS14の電解質塗布工程に対応する図である。液滴吐出装置14の収容タンク23に予め電解質膜用機能液32cを収納する。そして、電解質膜用機能液32cを液滴吐出ヘッド27に供給する。図11(d)に示すように、ステップS14において、ステージ17及びキャリッジ25を走査しながら液滴吐出ヘッド27のノズル30から正極活物質機能液32aの液状の膜に液滴35を吐出する。その結果、図11(e)に示すように、正極活物質機能液32aの液状の膜に重ねて電解質膜用機能液32cが塗布される。
【0086】
図12(a)及び図12(b)はステップS15の負極活物質塗布工程に対応する図である。液滴吐出装置14の収容タンク23に予め負極活物質機能液32bを収納する。そして、負極活物質機能液32bを液滴吐出ヘッド27に供給する。図12(a)に示すように、ステップS15において、ステージ17及びキャリッジ25を走査しながら液滴吐出ヘッド27のノズル30から電解質膜用機能液32cの液状の膜に液滴35を吐出する。その結果、図12(b)に示すように、電解質膜用機能液32cの液状の膜に重ねて負極活物質機能液32bが塗布される。
【0087】
図12(c)はステップS16の負極集電体配置工程に対応する図である。図12(c)に示すように、ステップS16において、負極集電体4を用意する。そして、負極活物質機能液32bが塗布されている面に負極集電体4を重ねて配置する。この積層されたシートを中間電池基板61と称す。
【0088】
ステップS17の固化工程において、中間電池基板61を加熱することにより電解質ポリマーを重合させる。このとき、第1の実施形態と同様の方法を用いて加圧しながら加熱する。詳細は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。その結果、図12(d)に示す電池基板62が形成される。その後、ステップS18の外装配置工程において上外装2及び下外装3を配置する。この方法は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。以上で電池58が完成する。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、正極活物質機能液32a、電解質膜用機能液32c、負極活物質機能液32bを同時に重合している。従って、正極活物質膜7、電解質膜60、負極活物質膜9の各膜間で樹脂材料が密着して形成される。その結果、各膜間をイオン化物質が伝導し易くすることができる。
【0090】
(2)本実施形態によれば、正極活物質機能液32a、電解質膜用機能液32c、負極活物質機能液32bを同時に重合している。従って、各機能液32を別々の工程にて重合する方法に比べて少ない工程で電池58を製造することができる。その結果、生産性良く電池58を製造することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、電池を製造する一実施形態について図13を用いて説明する。図13は電池を製造する製造工程を示すフローチャートである。本実施形態において製造する電池は第2の実施形態と同じ電池である。本実施形態が第2の実施形態と異なるところは、負極集電体4から順に正極集電体5まで積層した点にある。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0092】
すなわち、本実施形態では図13に示すフローチャートの製造工程の順に製造する。図13に示したフローチャートにおいて、ステップS11は調合工程に相当する。第2の実施形態における調合工程と同様の工程である。次にステップS21に移行するステップS21は、負極集電体配置工程に相当し、負極集電体を液滴吐出装置に配置する工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は、負極活物質塗布工程に相当し、負極集電体に負極活物質機能液を塗布する工程である。次にステップS23に移行する。ステップS23は、電解質塗布工程に相当し、塗布された負極活物質機能液と重ねて中間電解質膜の材料からなる機能液を塗布する工程である。次にステップS24に移行する。ステップS24は、正極活物質塗布工程に相当し、塗布された中間電解質膜の材料からなる機能液と重ねて正極活物質機能液を塗布する工程である。ステップS22からステップS24までの工程がステップS26の塗布工程に相当し、各種機能液を塗布する工程である。次にステップS25に移行する。ステップS25は、正極集電体配置工程に相当し、塗布された正極活物質機能液と重ねて正極集電体を配置する工程である。次にステップS17に移行する。ステップS17は、固化工程に相当し、負極集電体と正極集電体との間に積層して塗布された機能液を押圧しながら加熱することにより、電解質ポリマーを重合させてゲル化又は固化する工程である。次にステップS18に移行する。ステップS18は、外装配置工程に相当し、外装部品を配置する工程である。以上の工程により電池の製造工程を終了する。
【0093】
上述したように、負極集電体4から順に正極集電体5まで積層して電池58を形成する。このときにも、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を有する。
【0094】
(第4の実施形態)
次に、電池と電池を製造する一実施形態について図14及び図4を用いて説明する。図14は電池を示す模式断面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、正極活物質膜7及び負極活物質膜9の各膜が2つの膜から構成されている点にある。そして、各膜は活物質の濃度が異なっている。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0095】
すなわち、本実施形態では、図14に示すように、電池65は正極活物質膜66及び負極活物質膜67を有している。そして、正極活物質膜66が第1正極活物質膜66aと第2正極活物質膜66bとから構成されている。第1正極活物質膜66aと第2正極活物質膜66bとは同じ種類の材料により調合されている。そして、第1正極活物質膜66aは第2正極活物質膜66bより正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度が濃い材料から形成されている。正極集電体5に隣接して第1正極活物質膜66aが配置され、第1正極活物質膜66aと隣接して第2正極活物質膜66bが配置されている。そして、正極活物質膜66と正極集電体5とから正電極68が構成されている。
【0096】
同様に、負極活物質膜67が第1負極活物質膜67aと第2負極活物質膜67bとから構成されている。第1負極活物質膜67aと第2負極活物質膜67bとは同じ種類の材料により調合されている。そして、第1負極活物質膜67aは第2負極活物質膜67bより負極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度が濃い材料から形成されている。負極集電体4に隣接して第1負極活物質膜67aが配置され、第1負極活物質膜67aと隣接して第2負極活物質膜67bが配置されている。そして、負極活物質膜67と負極集電体4から負電極69が構成されている。
【0097】
次に、電池65を製造する方法について図4を用いて説明する。図4に示したフローチャートにおいて、ステップS1の調合工程では第1正極活物質機能液、第2正極活物質機能液、第1負極活物質機能液、第2負極活物質機能液、電解質膜用機能液32cを製造する。第1正極活物質機能液及び第2正極活物質機能液は正極活物質機能液32aと同じ種類の材料を用いる。そして、第1正極活物質機能液は第2正極活物質機能液より正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度を濃くして調合する。同様に、第1負極活物質機能液及び第2負極活物質機能液は負極活物質機能液32bと同じ種類の材料を用いる。そして、第1負極活物質機能液は第2負極活物質機能液より負極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度を濃くして調合する。次に、ステップS2に移行する。
【0098】
ステップS2の電解質膜配置工程は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。次に、ステップS3に移行する。ステップS3の正極活物質塗布工程において、まず電解質膜8に第2正極活物質機能液を塗布する。その結果、電解質膜8上に第2正極活物質機能液の液状膜が配置される。続いて、第2正極活物質機能液の液状膜の上に第1正極活物質機能液を塗布する。その結果、第2正極活物質機能液の液状膜の上に第1正極活物質機能液の液状膜が配置される。次に、ステップS4に移行する。ステップS4の正極集電体配置工程において、第1正極活物質機能液の液状膜の上に正極集電体5を配置する。次に、ステップS5に移行する。
【0099】
ステップS5の負極活物質塗布工程において、まず電解質膜8に第2負極活物質機能液を塗布する。その結果、電解質膜8上に第2負極活物質機能液の液状膜が配置される。続いて、第2負極活物質機能液の液状膜の上に第1負極活物質機能液を塗布する。その結果、第2負極活物質機能液の液状膜の上に第1負極活物質機能液の液状膜が配置される。次に、ステップS6に移行する。ステップS6の負極集電体配置工程において、第1負極活物質機能液の液状膜の上に負極集電体4を配置する。次に、ステップS7に移行する。ステップS7の固化工程において、電解質膜8に負極集電体4と正極集電体5とを押圧しながら加熱することにより、電解質ポリマーを重合させてゲル化又は固化させる。このとき、第1正極活物質機能液、第2正極活物質機能液、第1負極活物質機能液、第2負極活物質機能液を同時に加熱して電解質ポリマーを重合させる。その結果、第1正極活物質膜66a、第2正極活物質膜66b、第1負極活物質膜67a、第2負極活物質膜67bが形成される。次にステップS8に移行する。ステップS8の外装配置工程は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。以上の工程により電池65の製造工程を終了する。
【0100】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、負極集電体4及び正極集電体5に近い場所では活物質の濃度が高く、負極集電体4及び正極集電体5と離れた場所では活物質の濃度が低く形成される。従って、活物質膜の負極集電体4及び正極集電体5に近い領域において反応速度が速まる為、高出力時における充放電性能を向上させることができる。
【0101】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、負極集電体4と正極集電体5との間に電解質層6を1層配置したが、電解質層6を複数配置しても良い。図15は電池の模式断面図である。すなわち、図15の電池71に示すように、中間集電体72を電解質層6で挟んで積層するように配置しても良い。このように負極集電体4、正極集電体5、電解質層6を積層して配置することによりバイポーラ型電池にしても良い。複数の電池が直列接続されるので、高い電圧を得ることができる。
【0102】
(変形例2)
前記第2の実施形態では、電池58を完成したが、正電極10まで製造しても良い。このとき、図10におけるステップS11の調合工程、ステップS12の正極集電体配置工程、ステップS13の正極活物質塗布工程、ステップS17の固化工程を実施することにより正電極10が完成する。同様に、前記第3の実施形態では、電池65を完成したが、負電極11まで製造しても良い。このとき、図13におけるステップS11の調合工程、ステップS21の負極集電体配置工程、ステップS22の負極活物質塗布工程、ステップS17の固化工程を実施することにより負電極11が完成する。その後、図8(a)に示すように電解質膜8を正電極10及び負電極11で挟んで押圧しながら加熱することにより電池基板55を形成しても良い。正電極10と負電極11とを並行して同時に製造することができるので、製造にかかる時間を短縮することができる。
【0103】
さらに、検査工程を追加する。検査工程では正電極10と負電極11とを検査して良品を選別する。その後、電解質膜8を正電極10及び負電極11で挟んで押圧しながら加熱することにより電池基板55の歩留まりを向上させることができる。
【0104】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、図4に示すように、ステップS3の正極活物質塗布工程及びステップS4の正極集電体配置工程を実施した。その後ステップS5の負極活物質塗布工程及びステップS6の負極集電体配置工程を実施した。この工程順は逆でも良い。ステップS5及びステップS6を実施して負極活物質機能液32bを塗布する。その後、ステップS3及びステップS4を実施して正極活物質機能液32aを塗布しても良い。つまり、正極側から塗布しても負極側から塗布しても良い。この場合にも同様な効果を得ることができる。この内容は第4の実施形態にも適用することができる。
【0105】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、正極活物質機能液32aと負極活物質機能液32bとを塗布した後、機能液32に含まれる樹脂を同時に重合した。正極活物質機能液32aと負極活物質機能液32bとを個別に重合しても良い。そして、形成された正極活物質膜7と負極活物質膜9とで電解質膜8を挟んで熱圧着しても良い。時間の経過とともに機能液32が酸化により変質することを防止することができる。
【0106】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、液滴吐出装置14を用いて機能液32を塗布したが、他の方法を用いても良い。例えば、ロールコータ、スピンコータ等の塗布装置を用いて塗布しても良い。
【0107】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、ステップS3の正極活物質塗布工程の後にステップS4の正極集電体配置工程を実施したが、これに限らない。ステップS3の正極活物質塗布工程の後に固化工程を実施して、塗布工程と固化工程とを繰り返しても良い。そして、正極活物質膜7を所望の厚さにした後、正極活物質機能液32aを塗布してステップS4の正極集電体配置工程を実施しても良い。正極活物質膜7の厚さを厚くすることができる。このことは負極活物質膜9にも適用することができる。
【0108】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、キャビティ31を加圧する加圧手段に、圧電素子34を用いたが、他の方法でも良い。例えば、コイルと磁石とを用いて振動板33を変形させて、加圧しても良い。他に、キャビティ31内にヒーター配線を配置して、ヒーター配線を加熱することにより、機能液32を気化させたり、機能液32に含む気体を膨張させたりして加圧しても良い。他にも、静電気の引力及び斥力を用いて振動板33を変形させて、加圧しても良い。前記第1の実施形態と同様に機能液32を塗布することができる。この内容は第2の実施形態〜第4の実施形態にも適用することができる。
【0109】
(変形例8)
前記第1の実施形態では、電解質膜8に正極活物質機能液32aを塗布した後、正極集電体5を重ねて配置した。さらに、電解質膜8に負極活物質機能液32bを塗布した後負極集電体4を重ねて配置した。機能液32の塗布と集電体を配置する工程順番はこれに限らない。電解質膜8の一面に正極活物質機能液32aを塗布した後、電解質膜8の他面に負極活物質機能液32bを塗布しても良い。その後、負極集電体4及び正極集電体5を配置しても良い。
【0110】
(変形例9)
前記第1の実施形態では、電解質膜8に正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bを塗布した。前記第2の実施形態では正極集電体5に機能液32を順次塗布した。前記第3の実施形態では負極集電体4に機能液32を順次塗布した。塗布する対象と順序はこれに限らない。例えば、電解質膜8に正極活物質機能液32aを塗布する。そして、正極活物質機能液32aの液状の膜に重ねて正極集電体5を配置する。次に、負極集電体4に負極活物質機能液32bを塗布する。そして、塗布された負極活物質機能液32bの液状の膜に重ねて電解質膜8を配置しても良い。
【0111】
他にも、例えば、電解質膜8に負極活物質機能液32bを塗布する。そして、負極活物質機能液32bの液状の膜に重ねて負極集電体4を配置する。次に、正極集電体5に正極活物質機能液32aを塗布する。そして、塗布された正極活物質機能液32aの液状の膜に重ねて電解質膜8を配置しても良い。
【0112】
(変形例10)
前記第4の実施形態では、正極活物質膜66は正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度が異なる機能液32を2種類製造した。そして、この機能液32を用いて第1正極活物質膜66a及び第2正極活物質膜66bを形成した。正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度が異なる膜の種類は2種類に限らず3種類以上でも良い。濃度の水準が多い方が所望の出力に合わせた電池を製造することができる。この内容については負極活物質膜67についても適用することができる。
【0113】
(変形例11)
前記第4の実施形態では、正極活物質膜66は正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度が異なる機能液32を2種類製造した。機能液32の濃度の変える材料はこれらの組合せに限らない。正極活物質の濃度のみ変えても良く、正極活物質及び導電助剤の濃度を変えても良い。その他の材料の組合せにおける濃度を変えても良い。電池の性能に合わせて設定しても良い。この内容については負極活物質膜67についても適用することができる。
【0114】
(変形例12)
前記第4の実施形態では、正極活物質膜66は正極活物質、導電助剤、結着材、電解質支持塩、添加剤、の濃度が異なる機能液32を2種類製造した。そして、この機能液32を用いて第1正極活物質膜66a及び第2正極活物質膜66bを形成した。この内容は、第2の実施形態及び第3の実施形態にも適用することができる。この場合にも、同様な効果を得ることができる。
【0115】
(変形例13)
前記第1の実施形態において、電解質膜8は電解液を含まない層であったが、電解液を含めた層にしても良い。ステップS2の電解質膜配置工程の前で電解質膜8に電解液を含浸させても良い。電解質膜8がゲル電解質になり、イオン化物質を伝導し易くすることができる。
【0116】
(変形例14)
前記第2の実施形態において、電解質膜60は電解液を含まない層であったが、電解液を含めた層にしても良い。ステップS11の調合工程において、電解質膜用機能液32cに電解液を加えることにより、電解質膜60は電解液を含む層にできる。他にも、ステップS14の電解質塗布工程にて電解質膜用機能液32cを塗布した後、電解質膜用機能液32cの液状の膜に重ねて電解液を配置しても良い。他にも、ステップS17の固化工程にて電解質ポリマーを重合させた後、電解液を含浸させても良い。電解質膜60がゲル電解質になり、イオン化物質を伝導し易くすることができる。
【0117】
(変形例15)
前記第1の実施形態において、正極活物質膜7及び負極活物質膜9は電解液を含まない層であったが、電解液を含めた層にしても良い。ステップS1の調合工程において、正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bに電解液を加えることにより、正極活物質膜7及び負極活物質膜9は電解液を含む層にできる。他にも、ステップS9の塗布工程にて正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bを塗布した後、正極活物質機能液32a及び負極活物質機能液32bの液状の膜に重ねて電解液を配置しても良い。他にも、ステップS7の固化工程にて電解質ポリマーを重合させた後、電解液を含浸させても良い。正極活物質膜7及び負極活物質膜9がゲル電解質になり、イオン化物質を伝導し易くすることができる。尚、この内容は第2の実施形態〜第4の実施形態にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、電池を示す概略斜視図、(b)は、電池の模式断面図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図3】(a)は、キャリッジを示す模式平面図、(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図4】電池を製造する製造工程を示すフローチャート。
【図5】電池の製造方法を説明する図。
【図6】電池の製造方法を説明する図。
【図7】電池の製造方法を説明する図。
【図8】電池の製造方法を説明する図。
【図9】第2の実施形態にかかわる電池を示す模式断面図。
【図10】電池を製造する製造工程を示すフローチャート。
【図11】電池の製造方法を説明する図。
【図12】電池の製造方法を説明する図。
【図13】第3の実施形態にかかわる電池を製造する製造工程を示すフローチャート。
【図14】第4の実施形態にかかわる電池を示す模式断面図。
【図15】変形例にかかわる電池の模式断面図。
【符号の説明】
【0119】
4…集電体としての負極集電体、5…集電体としての正極集電体、7…活物質膜としての正極活物質膜、66a…活物質膜としての第1正極活物質膜、66b…活物質膜としての第2正極活物質膜、8…電解質膜、67a…活物質膜としての第1負極活物質膜、67b…活物質膜としての第2負極活物質膜、9…活物質膜としての負極活物質膜、10,68…電極としての正電極、11,69…電極としての負電極、32…機能液、32a…正極用機能液としての正極活物質機能液、32b…負極用機能液としての負極活物質機能液、32c…電解質膜用機能液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に活物質膜が形成された電池用電極の製造方法であって、
活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた機能液を製造する調合工程と、
前記機能液を前記集電体に塗布する塗布工程と、
前記機能液に含まれる前記樹脂材料を重合させて前記活物質膜を形成する固化工程と、を有することを特徴とする電池用電極の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用電極の製造方法であって、
前記塗布工程では、前記機能液を液滴にして前記集電体に吐出して塗布することを特徴とする電池用電極の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電池用電極の製造方法であって、
液状の前記樹脂材料はモノマーであることを特徴とする電池用電極の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電池用電極の製造方法であって、
前記固化工程では、前記機能液を前記集電体に押圧しながら加熱して固化することを特徴とする電池用電極の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電池用電極の製造方法であって、
前記調合工程では、活物質を含む前記材料の濃度が異なる複数の前記機能液を製造し、
前記塗布工程では、前記集電体に濃度の濃い前記機能液から順に前記集電体に塗布することを特徴とする電池用電極の製造方法。
【請求項6】
活物質膜を一対の集電体で挟んで配置された電池の製造方法であって、
前記活物質膜は正極活物質膜及び負極活物質膜を有し、
正極用活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた正極用機能液と負極用活物質を含む材料を液状の樹脂材料に分散させた負極用機能液とを製造する調合工程と、
前記正極用機能液と前記負極用機能液とを塗布する塗布工程と、
前記正極用機能液と前記負極用機能液とに含まれる前記樹脂材料を重合させて前記正極活物質膜及び前記負極活物質膜を形成する固化工程と、を有することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電池の製造方法であって、
前記電池は前記正極活物質膜と前記負極活物質膜との間に電解質膜を有し、
前記固化工程では前記正極用機能液と前記負極用機能液との少なくとも一方を前記電解質膜に押圧しながら加熱して前記樹脂材料を重合させることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の電池の製造方法であって、
前記電池は前記正極活物質膜と前記負極活物質膜との間に電解質膜を有し、
前記調合工程では前記電解質膜の材料を液状の前記樹脂材料に分散させた電解質膜用機能液をさらに製造し、
前記塗布工程では前記正極用機能液と前記負極用機能液との少なくとも一方と重ねて前記電解質膜用機能液を塗布し、
前記固化工程では前記負極用機能液と重ねて塗布した前記正極用機能液もしくは前記負極用機能液と前記電解質膜用機能液とに含まれる前記樹脂材料を同時に重合させることを特徴とする電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−62008(P2010−62008A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226733(P2008−226733)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】