説明

電池用電極材の厚さ測定装置、及び厚さ測定方法

【課題】電池用電極材に対して、簡便に評価を行うことができる厚さ測定装置、及び厚さ測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる厚さ測定装置は、集電体21上に活物質23を含む活物質層22が設けられた電池用電極材の厚さ測定装置であって、前記電池用電極材との間にエアギャップを形成するため前記電池用電極材の表面にエアを噴出する測定ヘッド31と、測定ヘッド31に設けられたコイル41と、コイル41に接続された発振器50と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極材の厚さ測定装置、及び厚さ測定方法に関し、特に詳しくは、集電体に活物質層が設けられた電池用電極材の厚さ測定装置、及び厚さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリとして、リチウムイオン電池が開発されている。リチウムイオン電池では、集電体上に活物質が設けられた電極材が用いられる。例えば、正極材では、集電体としてアルミニウム箔(Al)が用いられ、活物質としてマンガン酸リチウム等が用いられる。一方、負極材では、集電体として銅箔(Cu)が用いられ、活物質としてグラファイトが用いられる。
【0003】
電極材の構成について図9を用いて説明する。図9では、一方の電極材20である正極材の断面構成を模式的に示している。電極材20は、集電体21と、集電体21の上に設けられた活物質層22とを有している。集電体21は、例えば約20μmの厚さであり、活物質層22は、約50〜100μmの厚さである。活物質23、バインダ24、及び導電助剤(導電材ともいう)25が混ぜ合わされた状態で、塗布されることで、活物質層22が形成される。
【0004】
正極材の場合、活物質23は、例えば、粒子径1〜10μmのマンガン酸リチウム(LiMn)やコバルト酸リチウム(LiCoO)である。バインダ24は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。導電助剤25は、例えば、粒子径1μm〜サブミクロンの黒鉛微粉、カーボンブラック、炭素繊維である。活物質23、バインダ24、導電助剤25が混ぜ合わされ、集電体21上に塗布される。なお、図示はしていないが、活物質層22は、集電体21の両面に形成される。そして、正極材と負極材が交互に配置され、その間にセパレータを配置する。そして、これらの積層構造が電解液(電解質)に浸漬される。
【0005】
このようなリチウムイオン電池を評価する装置が開示されている。例えば、特許文献1、2では、電極材の厚さを接触式変位センサで測定している。また、特許文献3では、多孔質膜をカラー画像で撮影して、その色調によって膜厚を求めている。しかしながら、特許文献1、2の方法では、電極材全体としての厚みしか測定することができない。さらに、接触式センサを用いているため、表面に損傷を与えてしまうことがある。また、特許文献3では、測定対象が、多孔質膜に限定される。さらに、カラー画像の色調から膜厚を求めているため、正確に測定することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−337859号公報
【特許文献2】特開2001−126719号公報
【特許文献3】特開2007−66821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池性能の向上のために、活物質層22の厚さや活物質層の均質性を測定することが望まれている。例えば、活物質層22の厚さ分布を測定することが望まれている。さらに、活物質層22において、活物質23、バインダ24、導電助剤25が均一に分布していることを測定することが望まれている。これらを測定することで、電池用電極材を様々な観点から評価することができるようになる。例えば、活物質層22の厚さ分布を測定することで、活物質層22の塗布ムラなどを評価することができる。さらに、図10に示すように、活物質層22において、導電助剤25が密集したり、金属異物が混入したりすることがある。あるいは、図11に示すように、活物質層22にボイドや欠けが生じることもある。このような不均質箇所があると、電流密度が不均一、又は集中してしまい、電池性能の低下や劣化の原因となる。よって、活物質層の膜圧分布や均質性を測定して、電池用電極材を評価することで、電池性能の向上に寄与することができる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡便に電池用電極材の厚さを測定することができるため、電池性能の向上に寄与することができる厚さ測定装置、及び厚さ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る厚さ測定装置は、集電体上に活物質を含む活物質層が設けられた電池用電極材の厚さ測定装置であって、前記電池用電極材との間にエアギャップを形成するため、前記電池用電極材の表面にエアを噴出するヘッドと、前記ヘッドに設けられたコイルと、前記コイルに接続された発振器と、を備えるものである。これにより、簡便に電池用電極材の厚さを測定することができるため、電池性能の向上に寄与することができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る厚さ測定装置は、上記の厚さ測定装置であって、前記発振器と前記コイルを接続したときの発振周波数に応じて、前記活物質を含む活物質層の厚さを測定するものである。これにより、簡便に活物質層の厚さを測定することができ、電池性能の向上に寄与することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る厚さ測定装置は、上記の厚さ測定装置であって、前記ヘッドに設けられ、前記電池用電極材と容量を構成する容量電極と、前記発振器の出力を前記コイルから前記容量電極に切り替えるスイッチと、を備えるものである。これにより、活物質層の均質性を測定することができるため、様々な観点からの評価が可能になる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る厚さ測定装置は、上記の厚さ測定装置であって、前記ヘッドを支持するアームを備え、前記アームに、前記ヘッドの高さを調整する高さ調整機構が設けられているものである。これにより、様々な厚さの電池用電極材について、厚さ測定を行うことができる。
【0013】
本発明の第5の態様に係る厚さ測定装置は、上記の厚さ測定装置であって、前記ヘッドが板バネ式平行リンク機構を介して、前記アームに支持されているものである。これにより、一定のエアギャップを安定して得ることができる。
【0014】
本発明の第6の態様に係る厚さ測定装置は、上記の厚さ測定装置であって、前記電池用電極材の下側に、前記電池用電極材を吸着固定する板状部材が設けられているものである。これにより、安定して測定することができる。
【0015】
本発明の第7の態様に係る厚さ測定方法は、集電体上に活物質を含む活物質層が設けられた電池用電極材の厚さ測定方法であって、前記電池用電極材との間にエアギャップを形成するため前記電池用電極材の表面にエアを噴出するステップと、発振器によって、前記ヘッドに設けられたコイルに交流磁界を発生させるステップと、前記発振器の発振周波数を求めるステップと、を備えるものである。これにより、簡便に電池用電極材の厚さを測定することができ、電池性能の向上に寄与することができる。
【0016】
本発明の第8の態様に係る厚さ測定方法は、上記の厚さ測定方法であって、前記測定ヘッドと前記電極を相対移動したときの前記発振器の発振周波数分布に応じて、活物質層の厚さ分布を測定するものである。これにより、簡便に活物質層の厚さを測定することができ、電池性能の向上に寄与することができる。
【0017】
本発明の第9の態様に係る厚さ測定方法は、上記の厚さ測定方法であって、前記ヘッドに、前記電池用電極材と容量を構成する容量電極が設けられ、前記発振器の出力を前記コイルから前記容量電極に切り替えるものである。これにより、活物質層の均質性を測定することができるため、様々な観点からの評価が可能になる。
【0018】
本発明の第10の態様に係る厚さ測定方法は、上記の厚さ測定方法であって、前記ヘッドがアームによって指示され、前記アームに、前記ヘッドの高さを調整する高さ調整機構が設けられているものである。これにより、様々な厚さの電池用電極材について、厚さを測定することができる。
【0019】
本発明の第11の態様に係る厚さ測定方法は、上記の厚さ測定方法であって、前記ヘッドが板バネ式平行リンク機構を介して、前記アームに支持されているものである。これにより、一定のエアギャップを安定して得ることができる。
【0020】
本発明の第12の態様に係る厚さ測定方法は、上記の厚さ測定方法であって、前記集電体の比抵抗が、前記活物質層の比抵抗よりも高いことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第13の態様に係る厚さ測定方法は、上記の厚さ測定方法であって、前記電池用電極材の下側に、前記電池用電極材を吸着固定する板状部材が設けられているものである。これにより、安定して測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡便に電池用電極材を評価することができ、電池性能の向上に寄与することができる厚さ測定装置、及び厚さ測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態にかかる厚さ測定装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】厚さ測定装置の測定アームの構成を模式的に示す図である。
【図3】厚さ測定装置の測定ヘッドを模式的に示す側面図である。
【図4】厚さ測定装置の測定ヘッドを模式的に示す下面図である。
【図5】厚さ測定装置の測定手法を説明する図である。
【図6】厚さ測定装置の測定回路を模式的に示す側面図である。
【図7】厚さ測定装置において、表面距離と発振周波数の関係を示す図である。
【図8】板状部材が設けられた厚さ測定装置の構成を示す側面断面図である。
【図9】電池用電極材の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】電池用電極材の活物質層に異常が発生した例を示す断面図である。
【図11】電池用電極材の活物質層に異常が発生した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0025】
本実施形態に係る厚さ測定装置において、測定対象物である電極材20は、例えば、リチウムイオン電池用の電極材である。従って、図9に示したように、電極材20は、集電体21と活物質層22とを備えている。集電体21としては、正極材の場合、アルミニウム箔、負極材の場合、銅箔が用いられている。また、活物質層22には、上記したように、活物質23、バインダ24、導電助剤25が設けられている。集電体としてアルミニウム箔(Al)が用いられ、活物質としてマンガン酸リチウム等が用いられる。一方、負極材では、集電体として銅箔(Cu)が用いられ、活物質23としてグラファイトが用いられる。バインダ24は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。導電助剤25は、例えば、粒子径1μm〜サブミクロンの黒鉛微粉、カーボンブラック、炭素繊維である。活物質23、バインダ24、導電助剤25が混ぜ合わされ、集電体21上に塗布される。厚さ測定装置は、活物質層22の厚さ分布を測定する。厚さ分布を測定することで、厚さムラを低減することができる。よって、電池の容量低下を防ぎ、電池性能の向上に寄与することができる。さらに、厚さ測定装置は、活物質層の導電率のムラやボイド等を測定することができる。よって、電池の容量低下を防ぎ、電池性能の向上に寄与することができる。
【0026】
まず、厚さ測定装置の全体構成に付いて図1を用いて説明する。図1は、厚さ測定装置の全体構成を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、厚さ測定装置は、ステージ11とカバー12と可動部13とクランプ14と測定アーム30とを備えている。ステージ11上には、電池用の電極材20が載置される。カバー12はステージ11に対して開閉可能に設けられている。電極材20に対して測定を行う際は、カバー12が閉じられる。一方、電極材20を取り出す、又は設置する際には、カバー12が開けられる。ステージ11には、噴出口15が設けられている。そして、噴出口15は、気体(空気)を噴出する。これにより、測定対象である電極材20が浮上する。噴出口15を用いることで、電極材20をステージ面に対して非接触にすることができる。よって、電極材20の損傷等を防ぐことができる。
【0027】
電極材20は、クランプ14に把持される。すなわち、クランプ14は、電極材20の一端を把持する。クランプ14は、可動部13に、スライド可能に取り付けられている。クランプ14は、可動部13に対して、Y方向に移動する。また、可動部13は、ステージ11にスライド可能に取り付けられている。可動部13は、ステージ11上をX方向に移動する。クランプ14をY方向、可動部13をX方向に駆動することで、電極材20がXY方向に自在に移動する。なお、コンピュータ等によってクランプ14と可動部13を制御して、電極材20の移動を自動制御にしてもよい。これにより、電極材20の全面測定を自動で行うことができる。
【0028】
さらに、ステージ11には、測定アーム30が取り付けられている。測定アーム30は、ステージ11の奥側(−Y側)の端から、ステージ11の中央まで延設している。測定アーム30の先端部分は、電極材20の上に配置される。すなわち、測定アーム30に先端に設けられた測定ヘッドの直下に電極材20が配置される。測定ヘッドが電極材20に対して測定を行う。そして、クランプ14と可動部13によって電極材20をXY方向に移動することで、測定ヘッドと電極材20の相対位置が変化する。電極材20の任意の位置を測定することができる。測定ヘッドと電極材20を徐々にずらしていくことで、電極材20の全面を測定することができる。
【0029】
次に、測定アーム30の構成に付いて、図2を用いて説明する。図2は、測定アーム30の構成を模式的に示す側面図である。測定部となる測定アーム30は、測定ヘッド31、板バネ32、ベース33、先端アーム34、ベースアーム35、高さ調整機構38、差動トランス60を備えている。
【0030】
ステージ11の端には、ベース33が立設されている。ベース33には、ベースアーム35が取り付けられている。すなわち、ベース33は、ベースアーム35を支持している。ベースアーム35は、ベース33からY方向に延びている。ベースアーム35よりも先端側には、Y方向に延びる先端アーム34が配置されている。そして、先端アーム34とベースアーム35は、一対の板バネ32によって連結されている。すなわち、ベースアーム35は、板バネ32を介して、先端アーム34を支持している。
【0031】
一対の板バネ32は、上下に離間して配置されている。そして、板バネ32は、先端アーム34の上面と下面に取り付けられている。一対の板バネ32は、板バネ式平行リンク機構を構成している。これにより、測定ヘッド31が略一定の力で電極材20に押し付けられる。板バネ32が撓むことで、先端アーム34が、ベースアーム35に対して、上下に変位する。先端アーム34の先端には、測定ヘッド31が取り付けられている。板バネ32は、先端アーム34と測定ヘッド31の重量等に応じて撓んでいる。もちろん、板バネ式平行リンクに限らず、電極材20の表面高さに応じて測定ヘッド31を上下に変位させる構造であればよい。
【0032】
測定ヘッド31には、測定を行うための回路が設けられている。また、測定ヘッド31には、噴出口が設けられている。噴出口からは、電極材20に対してエアが噴出する。エアが電極材20の表面に沿って流れることによって、測定ヘッド31と電極材20の表面との間に、エアギャップ(隙間)が形成される。エアギャップは、エア圧力によって変化する。また、エア圧力を一定の状態とし、電極材20の表面高さが変化すると、エアギャップが一定になるように、測定ヘッド31が上下する。電極材20の表面高さやエアギャップ長に応じて、板バネ32の撓み量が変化する。例えば、エアを停止した状態で、板バネ32の撓み量が最も大きくなる。エアの圧力を高くして、エアギャップが大きくなると、板バネ32の撓み量が小さくなる。一対の板バネ32は、平行板バネリンク機構を構成している。エア圧力を一定にすると、板バネ32が下方向(−Z方向)に向かって、略一定の弾性力を発生する。この弾性力によって測定ヘッド31が電極材20に押し付けられ、エアギャップが一定となる。一定のエアギャップを安定して得ることができる。さらにに、エア圧力を調整することで、所望のエアギャップ長を得ることができる。従って、適当なエアギャップを保った状態で、測定ヘッド31をエア浮上させることができる。なお、測定ヘッド31の詳細な構成については、後述する。
【0033】
ベースアーム35には、高さ調整機構38が取り付けられている。高さ調整機構38は、例えば、マイクロメータであり、ベースアーム35を上下方向(Z方向)に送り出すことができる。あるいは、高さ調整機構38としてリニアガイド機構とモータを用い、ベースアーム35を自動送りするようにしてもよい。ベース33に対して、ベースアーム35がZ方向に移動する。高さ調整機構38によって、測定ヘッド31と電極材20との距離が変化する。電極材20に応じて高さを調整することで、様々な厚さの電極材20を評価することができる。なお、高さ調整機構38の取り付け位置は、ベースアーム35に限られるものではない。例えば、先端アーム34や測定ヘッド31に高さ調整機構38を取り付けても良い。
【0034】
ベースアーム35には、エアによる浮上量を測定する差動トランス60の主要部分が設けられている。具体的には、ベースアーム35には、1次コイル63と2次コイル62が取り付けられている。1次コイル63の上下両側には2次コイル62が配置されている。2次コイル62は、1次コイル63を挟んで、対称に配置されている。また、先端アーム34には、樹脂サポート39が設けられている。樹脂サポート39は、差動トランス60のコア61を支持している。コア61は、先端アーム34と連動する。高周波用差動トランスを実現するため、コア61には、例えば、フェライトコアが用いられる。コア61は、1次コイル63の内部に配置されている。同様に、コア61は、2次コイル62の内部に配置されている。コア61が基準となる高さにある場合、1次コイル63の上下両側に設けられた2次コイル62に対して、コア61が対称に配置される。
【0035】
1次コイル63には、励磁用のケーブル66が接続されている。なお、後述するようにケーブル66には、発振器が接続されている。2次コイル62には、検出用のケーブル67が接続されている。ケーブル66、及びケーブル67は、例えば、同軸ケーブルである。ケーブル66を介して、交流電圧を供給することで、1次コイル63が励磁される。先端アーム34がベースアーム35に対して上下すると、2次コイル61に対して、コア61が上下する。コア61が基準となる高さにある場合、上下の2次コイル62に誘起される交流電圧(誘起電圧)は等しくなる。よって、差動電圧が0となる。コア61が基準高さから上下にずれると、2次コイル63に対するコア61の位置が対称でなくなる。よって、上下の2次コイル62の誘起電圧に差が生じ、その差に応じた交流電圧(差動電圧)が現れる。ケーブル67を介して差動電圧を検出することで、コア61の高さ変化を測定することができる。すなわち、ベースアーム35に対する先端アーム34の位置変化を測定することができる。
【0036】
差動トランス60によって、エアによる浮上量を測定することができる。例えば、エアの圧力が変化すると、測定ヘッド31と電極材20との間のエアギャップが変化する。よって、ベースアーム35に対する測定ヘッド31及び測定ヘッド31を支持する先端アーム34の位置が上下に変化する。すなわち、先端アーム34を支持する板バネ32の撓み量が変化する。従って、2次コイル61に対するコア61の位置が、上下に変化する。コア61の位置変化を2次コイル61の差動電圧によって測定する。このようにすることで、エア圧力とエアによる浮上量の関係を求めることができる。
【0037】
例えば、エアの噴出を停止させて、電極材20と測定ヘッド31を接触させた状態として、差動トランス60での測定を行う。さらに、所定の圧力のエアを噴出させてエア浮上させた状態で、差動トランス60で測定を行う。この2つの測定値を比較することで、あるエア圧力におけるエア浮上量を測定することができる。このエア浮上量が、電極材20と測定ヘッド31とのエアギャップ長となる。さらには、エア圧力を徐々に変えていくことで、エア圧力と、エア浮上量との関係を求めることができる。差動トランス60では、先端アーム34側のコア61と、ベースアーム側45のコイルが接触していない。すなわち、差動トランス60は、測定対象に非接触で測定することができる非接触式のセンサである。非接触式のセンサを用いることで、エアギャップに対する影響を抑制することができる。すなわち、非接触式センサである差動トランス60を用いているため、差動トランス側から、板バネ32に力が加わらない。板バネ32を柔らかくすることができ、動作をしなやかにすることができる。よって、エアギャップを一定に保つことができる。もちろん、差動トランス60以外のセンサで、ベースアーム35に対する測定ヘッド31の上下位置を測定しても良い。
【0038】
さらに、測定対象の電極材20をステージ11上に載置した場合、高さ調整機構38で測定ヘッド31を下げていく。測定ヘッド31が電極材20の表面に対して十分離れた状態では、エア浮上していない。そして、測定ヘッド31を下げていき、測定ヘッド31が電極材20に対してある距離まで近づくと、エア浮上する。すると、ベースアーム35に対する測定ヘッド31の高さが変化する。従って、差動トランス60によって、エア浮上する高さを確認することができる。なお、モータ等で高さを自動制御する場合、接点などで、エア浮上する高さを検知しても良い。例えば、先端アーム34やベースアーム35に接点などを設ける。こうすることで、エア浮上したことを検知することができる。そして、エア浮上を検知した時点から、所定量だけ測定ヘッド31を下降させる。こうすることで、板バネ32の平行リンクによるエアギャップへの圧力を一定にし、エアギャップ長を正確に制御することができる。
【0039】
測定ヘッド31が、電極材20に対する測定を行う。測定ヘッド31の直下の位置で、電極材20に対する測定を行うことができる。その位置での測定が終了したら、電極材20を所定量だけ、XY方向に変位させる。すなわち、図1で示したように、電極材20をXY方向に移動する。そして、移動後の位置で、同様に測定を行う。これを繰り返すことで、電極材20の全体に対して測定を行うことができる。
【0040】
次に、測定ヘッド31の構成について、図3と図4を用いて説明する。図3は、測定ヘッド31の構成を模式的に示す側面図であり、図4は下面図である。
【0041】
測定ヘッド31は、本体部40とコイル41と噴出口42と容量電極43とを有している。本体部40は、例えば、略円筒状の部材であり、プラスチック材料によって形成されている。本体部40の下側には、円筒状の凸部44が設けられている。凸部44は、下側に突出しており、その突出量は、0.5mm程度である。XY平面において、凸部44は、本体部40の中央に配置されている。凸部44は直径3mm〜5mm程度の円筒状となっている。
【0042】
さらに、凸部44には、容量電極43が設けられている。容量電極43は、凸部44の下面に露出している。容量電極43の下面は平面になっており、電極材20と対向する。容量電極43は、円形の薄板となっている。容量電極43と電極材20とで容量(キャパシタ)が形成される。また、XY平面において、本体部40と凸部44と容量電極43は同心円状に配置されている。容量電極43、又は容量電極43の先端部をグラファイトで製作しても良い。グラファイトを用いることで、容量電極43が電極材20と接触した場合の金属汚染を防ぐことができる。エアギャップを測定する時、発振器50の発振停止によって、容量電極43が電極材20に接触していることを容易に測定することができる。
【0043】
さらに、測定ヘッド31には、エアの噴出口42が設けられている。容量電極43に設けられた貫通孔がエアの噴出口42となる。噴出口42は、容量電極43の中心を通っている。噴出口42から下方にエア(空気)が噴出される。すなわち、図3の矢印方向にエアが噴出される。このエアは、電極材20の表面に沿って、外側に流れていく。これにより、測定ヘッド31の凸部44と、電極材20との間に、エアギャップが形成される。すなわち、測定ヘッド31が電極材20の上でエア浮上する。例えば、エアギャップが10μmとなるような、圧力でエアを噴出する。なお、噴出口42から噴出する気体は、エア(空気)に限らず、窒素などの他の気体であってもよい。
【0044】
円筒状の本体部40の外周には、コイル41が巻き付けられている。例えば、コイルは30〜40ターンで巻かれている。後述するように、コイル41には、発振器からの高周波電圧が供給されている。よって、コイル41は、交流磁界を生成する。コイル41に電流が流れると、コイル41の中心ではZ方向に磁力線が発生する。すなわち、XY面における測定ヘッド31の中心では、電極材20に向かっていく方向、又はその反対方向に磁力線が発生する。
【0045】
次に、測定ヘッド31の回路構成に付いて図5を用いて説明する。図5は、測定ヘッド31の回路構成を示す回路図である。測定ヘッド31には、上述のように、コイル41と容量電極43が設けられている。さらに、コイル41の一端は、スイッチ47に接続され、他端はグランドに接続されている。また、容量電極43もスイッチ47に接続されている。容量電極43と対向する集電体21はグランドに接続されている。よって、容量電極43と集電体21が容量(キャパシタ)を形成する。すなわち、集電体21が容量を構成する他方の容量電極となる。スイッチ47は、導電線であるケーブル51を介して、発振器50に接続されている。すなわち、発振器50で生成される高周波電圧は、ケーブル51を介して、スイッチ47に供給される。スイッチ47は、発振器50の出力先を切り替える。すなわち、スイッチ47は、発振器50の接続先をコイル41から容量電極43、又は容量電極43からコイル41に切り替える。スイッチ47によって、コイル41、及び容量電極43の一方に、発振器50からの高周波電圧が印加される。
【0046】
例えば、活物質層22の厚さを測定する場合、スイッチ47は、発振器50をコイル41に接続する。これにより、コイル41が、交流磁界を発生する。電極材20には、アルミニウム箔等からなる集電体21が設けられている。反磁性体であるアルミニウム箔の近傍で交流磁界が発生する。すなわち、シート状の集電体21と直交する方向に磁力線が発生する。すると、集電体21の表面に渦電流が生じて、磁力線が減る。すなわち、コイル磁界の変化を打ち消す方向に、渦電流が発生する。磁力線の数が減るので、インダクタンスが小さくなる。そして、インダクタンスの減少量は、集電体21とコイル41の距離に応じて変化する。すなわち、集電体21とコイル41が設けられた測定ヘッド31とが近づくほど、インダクタンスが大きく減少する。一方、噴出口42から噴出するエアを一定圧力とすることで、エアギャップ長は略一定になっている。すなわち、電極材20の表面と測定ヘッド31との距離は略一定になっている。従って、活物質層22が薄くなると、集電体21と測定ヘッド31との距離が小さくなり、活物質層22が厚くなると集電体21と測定ヘッド31との距離が大きくなる。このように、活物質層22の厚さに応じて、集電体21と測定ヘッド31との距離が変化する。
【0047】
また、活物質層22の比抵抗は1×10−2Ω・cm〜1Ω・cmであり、アルミニウムや銅の比抵抗は、約2×10−6Ω・cmである。よって、活物質層22の比抵抗は集電体21よりも10〜10程度高い。活物質層22には、反磁性の性質がほとんどない。活物質層22によるインダクタンスへの影響はほとんどない。活物質層22の厚さが変化しても、インダクタンスはほとんど変化しない。なお、活物質層22に含まれるマンガンMnやコバルトCoは強磁性体であり、磁力線を増加させる性質がある。しかしながら、集電体21となるアルミニウム箔や銅箔の反磁性の強さと比較すると、ほとんど無視できる程度である。活物質層22によるインダクタンスへの影響はほとんどない。
【0048】
コイル41と集電体21との距離、すなわち測定ヘッド31と集電体21との距離に応じて、インダクタンスが変化する。従って、発振器50の発振周波数を求めることで、コイル41と集電体21との距離を測定することができる。発振器50の発振周波数によって、インダクタンスの変化を求めることができる。コイル41と集電体21との距離からエアギャップを減算することで、活物質層22の厚さを測定することができる。例えば、エアギャップが一定となる条件下で、活物質層22が薄くなると、測定ヘッド31と集電体21との距離が小さくなる。一方、エアギャップが一定となる条件下で、活物質層22の厚くなると、測定ヘッド31と集電体21との距離が大きくなる。よって、発振器50の発振周波数分布を求めることで、活物質層22の厚さの面内分布を測定することができる。さらに、非接触、かつ高速で厚さ分布を測定することができる。
【0049】
一方、活物質層22のムラを測定する場合、スイッチ47を切り替えて、発振器50を容量電極43に接続する。これにより、容量電極43と電極材20とで容量(キャパシタ)が形成される。キャパシタンスは、容量電極間の誘電率や容量電極間距離によって変化する。従って、集電体21と容量電極43との間に配置された活物質層22の材料や状態に応じて、キャパシタンスが変化する。例えば、活物質層22において導電助剤25が密集している箇所では、導電率が高くなる。よって、実効的な電極間距離が小さくなり、キャパシタンスが大きくなる。
【0050】
エアギャップが一定となる条件下で、発振器50の発振周波数の面内分布を求める。こうすることで、活物質層22のムラや均質性を測定することができる。例えば、図10、及び図11に示した、導電助剤密集箇所、金属異物混入箇所、ボイド発生箇所、欠け発生箇所などの異常個所では、正常箇所と比してキャパシタンスが大きく異なる。さらには、活物質層22における活物質23、バインダ24、及び導電助剤25の混ぜ合わせムラを測定することもできる。発振周波数分布を求めることで、活物質層22の均質性を測定することができる。
【0051】
上記の測定を繰り返すことで、活物質層22の膜厚分布と均質性とを測定することができる。例えば、コイル41と発振器50を接続して、発振器50の発振周波数から活物質層22の厚さを測定する。その後、スイッチ47を切り替えて、発振器50と容量電極43を接続する。発振器50の発振周波数から、活物質層22の均質性を測定する。これにより、電極材20のある位置における測定が終了する。この位置での測定が終了したら、電極材20を移動して、測定ヘッド31と電極材20の位置をずらす。そして、電極材20の別の位置において、スイッチ47を切り替えて、発振周波数の測定を行う。これを繰り返すことで、電極材20全体に対する測定がおこなわれる。このようにすることで、非接触かつ高速での測定が可能になる。なお、スイッチ47をコイル41に接続して、発振周波数の面内分布を測定した後、スイッチ47を容量電極43に接続して、発振周波数の面内分布を測定しても良い。もちろん、反対に、スイッチ47を容量電極43に接続して、発振周波数の面内分布を測定した後、スイッチ47をコイル41に接続して、発振周波数の面内分布を測定してもよい。
【0052】
次に、具体的な測定回路の構成に付いて図6を用いて説明する。図6は、測定回路の一例を示す回路図である。発振器50は、LC発振回路であり、具体的には、コルピッツ型発振回路である。発振器50は、コイル52、コンデンサ53、抵抗54、トランジスタ55等を有している。発振器50の出力とグランドの間には、2つのコンデンサ53が直列に接続されている。また、コイル52は、2つのコンデンサ53と並列に接続されている。発振周波数を求めるため、発振器50の出力側では、発振器50のトランジスタ55が周波数カウンタに接続される。
【0053】
また、発振器50の出力端子は、ケーブル51を介してスイッチ47と接続されている。発振器50のコイル52は、グランドとケーブル51間に接続される。なお、コイル41の一端はスイッチ47を介して、発振器50の出力端子と接続され、他端はケーブル51である同軸ケーブルの被覆線を介して、グランドに接続されている。よって、発振器50のコイル52と測定ヘッド31のコイル41とは並列に接続されている。
【0054】
また、発振器50の周波数カウンタへの出力は、分岐されて、バッファアンプ56、及び同期検波回路57に接続される。バッファアンプ56の出力は、ケーブル66を介して、差動トランス60に接続される。バッファアンプ56は、発振器50の出力をバッファリングして、差動トランス60に出力する。従って、発振器50からの高周波によって、差動トランス60の1次コイル63が励磁される。さらに、発振器50の周波数カウンタへの出力は、同期検波回路57に供給される。また、同期検波回路57には、ケーブル67を介して、差動トランス60の2次コイル62からの差動電圧が入力される。同期検波回路57は、この2つの信号について同期検波を行う。これにより、測定ヘッド31の位置変位、すなわち、高さを測定することができる。同期検波回路57が測定した位置変位が位置出力となって、制御PCに入力される。このように、発振器50の出力を差動トランス60に用いることで、高周波の干渉による影響を防ぐことができる。すなわち、コイル41への出力と差動トランス60への出力を別個とした場合、これらが干渉してしまうおそれがある。しかしながら、コイル41への出力と差動トランス60への出力を共用することで、干渉による影響を防ぐことができる。よって、厚さを正確に測定することができる。
【0055】
発振器50のインダクタンスをLosc、キャパシタンスをCoscとする。ここでは、Losc=3.99μH、Cosc=110pFとしている。ケーブル51は、同軸ケーブルである。ケーブル51のインダクタンスLcableを、キャパシタンスをCcableとする。なお、Ccable=17.25pFである。
【0056】
測定回路全体の合成インダクタンスをL、測定ヘッド31のコイル41のインダクタンスをLgapとする。Lgapはエアギャップによって変化する。スイッチ47が発振器50をコイル41に接続したときの、合成インダクタンスLは以下の式(1)で表される。
1/L=1/Losc+1/(Lcable+Lgap)・・・(1)
【0057】
また、スイッチ47が発振器50を容量電極43に接続したときの、合成インダクタンスLは以下の(2)式で表される。
1/L=1/Losc+1/Lcable ・・・(2)
【0058】
容量電極43と電極材20の容量をCgapとする。Cgapは活物質層22の状態によって変化する。スイッチ47をコイル41に接続したときの合成容量Cは式(3)のようになる。
=Cosc+Ccable ・・・(3)
【0059】
スイッチ47を容量電極43に接続したときの合成容量Cは式(4)のようになる。
=Cosc+Ccable+Cgap ・・・(4)
【0060】
ここで、発振周波数fは以下の式(5)で表される。
f=1/(2π(LC)1/2)・・・(5)
【0061】
従って、式(5)にC、Lを代入すると、発振器50がコイル41に接続された時の発振周波数fが得られる。ここで、コイル41のインダクタンスLgapは、上記の通り、活物質層22の厚さに依存する。発振器50とコイル41が接続された状態で、発振器50の周波数カウンタで発振周波数fを求める。これにより、活物質層22の厚さを測定することができる。
【0062】
一方、式(5)にC、Lを代入すると、発振器50が容量電極43に接続された時の発振周波数fが得られる。ここで、容量電極43の容量は、活物質層22における活物質23と導電助剤25等の密度やムラに依存する。発振器50と容量電極43が接続された状態で、発振器50の周波数カウンタで発振周波数fを求める。これにより、活物質層22における活物質23と導電助剤25等の密度やムラを測定することができる。例えば、図10、及び図11で示したように、導電助剤密集箇所、金属異物混入箇所、ボイド発生箇所、欠け発生箇所では、正常箇所に比べて、発振周波数fが大きく変化する。よって、これらの異常箇所を検出することができる。また、活物質層22において、活物質23、バインダ24、導電助剤25の混ぜ合わせムラを評価することができる。コイル41を接続した状態における測定結果と、容量電極43を接続した状態における測定結果を比較することで、厚さ分布を考慮した活物質層22の均質性を総合的に評価することができる。よって、電池用電極材を様々な観点から評価することができる。
【0063】
次に、図7を用いて実際の測定結果を示す。図7は、コイル41を接続した状態における発振周波数fの測定結果である。図7は、厚さ15μmの銅箔を集電体21として用いた負極材の測定結果を示す図である。ここでは、銅箔の一方の面に70μmの活物質層22が設けられ、他方の面に120μmの活物質層22が設けられた負極材を測定している。また、活物質層22が設けられていない厚さ17μmの銅箔を参照用として測定している。図7において、横軸は、測定ヘッド31と電極材20の表面との表面距離(エアギャップ)であり、縦軸は、発振周波数fを示している。
【0064】
測定ヘッド31のエア圧力を変えることで、表面距離を変えることができる。そして、表面距離を変えて、発振周波数fを測定する。図7から、表面距離が大きくなるにつれて、発振周波数が低くなるのが分かる。すなわち、(1)式のように、コイル41のインダクタンスLgapに応じて、合成インダクタンスLが変化する。よって、コイル41のインダクタンスLgapに応じて、発振周波数fが変化している。
【0065】
活物質層22が設けられていない参照用銅箔の測定では、表面距離が0の状態、すなわち、銅箔と測定ヘッド31が接触している状態において、発振周波数が約7.47MHzとなって、表面距離が大きくなるにつれて発振周波数が下がっている。負極材の測定では、いずれの面も、銅箔の測定と略同じ傾きになっている。すなわち、各曲線を活物質層22の厚さ分だけ、右側に平行移動すると、曲線がほぼ一致する。このように、活物質層22の厚さに応じて、発振周波数が変化するのが分かる。よって、活物質層22の厚さ分布を測定することが可能となる。なお、発振周波数と表面距離の関係の傾きに付いては、コイルの巻き数で調整することができる。
【0066】
もちろん、本実施形態にかかる厚さ測定装置を用いることで、正極材、及び負極材の両方を評価することができる。上記の説明では、正極材を、アルミニウム箔を集電体21とし、マンガン酸リチウムを活物質とするものとして説明したが、これ以外の材料を用いた正極材に対して測定を行っても良い。例えば、活物質として、コバルト酸リチウムを用いた正極材を評価してもよい。同様に、負極材についても、銅箔以外の集電体21や、グラファイト以外の活物質を有するものであってもよい。例えば、負極材の活物質としてシリコンを用いたものであってもよい。非接触で測定しているので、シリコンの欠け等を防ぐことができる。さらに、集電体21がアルミニウムや銅などの反磁性体である電池用電極材に好適である。もちろん、アルミニウム箔や銅箔以外の集電体を用いたものでもよい。本実施形態に係る厚さ測定装置は、反磁性材料の集電体を有する電極材の評価に好適である。なお、上記の説明では、コイル41への出力と差動トランス60への出力を共用したが、コイル41への出力と差動トランス60への出力を別個にしてもよい。すなわち、発振器50から出力される高周波とは別の交流電圧を、差動トランス60に入力しても良い。
【0067】
さらに、集電体21と活物質層22との間に粘着シートが設けられている構成であってもよい。この場合、粘着シートと活物質層22の合計厚さを測定することができる。さらに、活物質層22を粘着シートに粘着させる前であれば、粘着シートの厚さ分布を測定することができる。もちろん、リチウムイオン電池以外の電池に用いても良い。すなわち、本実施形態に係る厚さ測定装置を用いることで、集電体21に活物質層22が設けられている電池用電極材に対して評価を行うことができる。特に、集電体21上に、活物質22を含む活物質層20が設けられた2次電池の評価に好適である。
【0068】
本実施形態に係る厚さ測定装置は、集電体21等の金属シートが設けられていない構成についても適用可能である。この場合、真空吸着で、金属板等に測定対象のシートを貼り付ければよい。これにより、セパレータ、活物質層シート、絶縁シート等の測定も可能である。
【0069】
また、電極材20の両面に測定ヘッド31を配置してもよい。これにより、集電体21の両面に設けられた活物質層22を同時に測定することができる。よって、測定時間を短縮することができる。なお、両面の測定ヘッド31をずらして配置してもよい。この場合、2つの測定ヘッド31が異なる位置で両面同時測定を行う。
【0070】
なお、電極材20を片面測定する場合、電極材20の下に、プラスチックや金属等からなる板状部材を設けても良い。この構成について、図8を用いて説明する。図8(a)は、板状部材がない状態を示す側面断面図であり、図8(b)は、プラスチック製の板状部材17が設けられた状態を示す側面断面図であり、図8(c)は、金属製の板状部材18が設けられた状態を示す側面断面図である。
【0071】
図8(a)に示す板状部材を設けない構成では、クランプ14が電極材20をクランプしている。そして、ステージ11に設けられた噴出口15から矢印方向にエアが噴出している。これにより、クランプ14にクランプされた電極材20がエア浮上する。よって、電極材20とステージ11とが接触するのを防ぐことができる。また、電極材20の端部には、集電体20である金属箔に突出している部分がある。この突出部分を金属製のクランプ14で挟んで固定している。そして、クランプ14を発振器50のGNDに接続している。これにより、集電体20を接地することができる。
【0072】
また、電極材20にしわのある場合、図8(b)に示すように、板状部材17を用いることで、しわを伸ばすことができる。図8(b)に示す構成では、電極材20の下に、プラスチック製の板状部材17が配置されている。そして、電極材20と板状部材17がクランプ14でクランプされ、保持される。板状部材17の上面には吸着溝19が設けられている。吸着溝19は、電極材20の周縁部を真空吸着できるように形成されている。吸着溝19が電極材20を吸着固定することで、電極材20のしわを伸ばすことができる。そして、板状部材17に噴出口15からのエアが噴出され、板状部材17がエア浮上する。このように、プラスチック製の板状部材17を張り付けるモードを設けることで、電極材20のしわを伸ばすことができる。もちろん、プラスチック製以外の材料で板状部材17を構成しても良い。
【0073】
図8(c)に示す構成では、図8(b)に示す構成の板状部材17が金属製の板状部材18に代わっている。さらに、測定対象である電極材20が導電シートや絶縁体シート等のシート26に代わっている。従って、シート26の下側に、金属製の板状部材18が配置されている。板状部材18に設けられた吸着溝19によって、シート26が吸着固定されている。このように、金属製の板状部材18を張り付けるモードを設けることで、電極材以外の、導電シートや、絶縁シートの測定が可能となる。例えば、反磁性体の板状部材18を用いることで、電極材20の集電体21と同様の機能を得ることができる。発振器50の発振周波数を測定することで、板状部材18の上の絶縁シート等を測定することができる。コイルを接続することで、シート26の厚さ分布を測定することができる。
【0074】
さらに、両面同時測定の場合、測定ヘッド31に周波数を大きくずらした発振器50を接続することが好ましい。すなわち、発振器を別個に用意して、同時に出力する高周波の周波数を大きくずらす。これにより、高周波の干渉によって、発振周波数がずれるのを防ぐことができる。また、両面において、同じXY位置に測定ヘッド31を配置した場合、集電体21等の導電シートが設けられていない測定対象の厚さを測定することも可能となる。この場合、一方の測定ヘッド31に設けられた容量電極が集電体21の代わりとなる。すなわち、対向する測定ヘッド31の容量電極32で容量が形成される。そして、他方の測定ヘッド31のコイル41と発振器50を測定して、発振周波数を求める。こうすることで、測定対象の厚み測定が可能になる。電池用の電極材20以外に対して、非接触での測定が可能となる。よって、測定対象が損傷するのを防ぐことができる。
【0075】
なお、上記の説明では、電極材20を移動することで、測定位置を変えたが、測定ヘッド31を移動することで測定位置を変えても良い。さらには、電極材20と測定ヘッド31の両方を移動して、測定位置を変えても良い。
【符号の説明】
【0076】
11 ステージ
12 カバー
13 可動部
14 クランプ
15 吸着口
17 板状部材
18 板状部材
20 電極材
21 集電体
22 活物質層
23 バインダ
24 導電助剤
26 シート
30 測定アーム
31 測定ヘッド
32 板バネ
33 ベース
34 ベースアーム
35 先端アーム
40 本体
41 コイル
42 噴出口
43 容量電極
44 凸部
50 発振器
51 ケーブル
52 コイル
53 コンデンサ
54 抵抗
55 トランジスタ
56 バッファアンプ
57 同期検波回路
60 差動トランス
61 コア
62 2次コイル
63 1次コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に活物質を含む活物質層が設けられた電池用電極材の厚さ測定装置であって、
前記電池用電極材との間にエアギャップを形成するため、前記電池用電極材の表面にエアを噴出するヘッドと、
前記ヘッドに設けられたコイルと、
前記コイルに接続された発振器と、を備える厚さ測定装置。
【請求項2】
前記発振器と前記コイルを接続したときの発振周波数に応じて、前記活物質を含む活物質層の厚さを測定する厚さ測定装置。
【請求項3】
前記ヘッドに設けられ、前記電池用電極材と容量を構成する容量電極と、
前記発振器の出力を前記コイルから前記容量電極に切り替えるスイッチと、を備える請求項1、又は2に記載の厚さ測定装置。
【請求項4】
前記ヘッドを支持するアームを備え、
前記アームに、前記ヘッドの高さを調整する高さ調整機構が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の厚さ測定装置。
【請求項5】
前記ヘッドが板バネ式平行リンク機構を介して、前記アームに支持されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の厚さ測定装置。
【請求項6】
前記電池用電極材の下側に、前記電池用電極材を吸着固定する板状部材が設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の厚さ測定装置。
【請求項7】
集電体上に活物質を含む活物質層が設けられた電池用電極材の厚さ測定方法であって、
前記電池用電極材との間にエアギャップを形成するため前記電池用電極材の表面にエアを噴出するステップと、
発振器によって、前記ヘッドに設けられたコイルに交流磁界を発生させるステップと、
前記発振器の発振周波数を求めるステップと、を備える厚さ測定方法。
【請求項8】
前記測定ヘッドと前記電極を相対移動したときの前記発振器の発振周波数分布に応じて、活物質層の厚さ分布を測定する請求項7に記載の厚さ測定方法。
【請求項9】
前記ヘッドに、前記電池用電極材と容量を構成する容量電極が設けられ、
前記発振器の出力を前記コイルから前記容量電極に切り替える請求項7、又は8に記載の厚さ測定方法。
【請求項10】
前記ヘッドがアームによって指示され、
前記アームに、前記ヘッドの高さを調整する高さ調整機構が設けられている請求項7乃至9のいずれか1項に記載の厚さ測定方法。
【請求項11】
前記ヘッドが板バネ式平行リンク機構を介して、前記アームに支持されている請求項7乃至10のいずれか1項に記載の厚さ測定方法。
【請求項12】
前記集電体の比抵抗が、前記活物質層の比抵抗よりも高いことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の厚さ測定方法。
【請求項13】
前記電池用電極材の下側に、前記電池用電極材を吸着固定する板状部材が設けられている請求項7乃至12のいずれか1項に記載の厚さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−122834(P2012−122834A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273538(P2010−273538)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】