説明

電池装置

【課題】より簡素な構成で、電池モジュールが備える複数の電池における電圧バランスの均等化を効率よく行う。
【解決手段】複数の電池1のうち、基準温度における容量が相対的に小さなものが冷却通路の上流側に配置され、基準温度における容量が相対的に大きなものが冷却通路の下流側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池を有する電池装置においては、複数の電池から構成される電池モジュールごとに、接続された電池の電圧を検出するための電圧検出装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−42970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているように、各電池モジュールにおいては、装置構成の簡略化等のために、電池の電圧バランスが均等化されていることが好ましい。
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、電池の配置により、電池の容量(SOC)がばらつくため、電池を効率よく均等化できない、また、制御が複雑化する恐れがあった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、より簡素な構成で、電池モジュールが備える複数の電池における電圧バランスの均等化を効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための構成として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、複数の電池と当該電池の電圧を検出する電圧検出装置とを有する電池装置であって、上記電池が冷却通路内に配置され、単一の上記電圧検出装置に接続された複数の上記電池のうち、基準温度における容量が相対的に小さなものが上記冷却通路の上流側に配置され、上記基準温度における容量が相対的に大きなものが上記冷却通路の下流側に配置されているという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、複数の電池と当該電池の電圧を検出する電圧検出装置とを有する電池装置であって、上記電池が冷却通路内に配置され、単一の上記電圧検出装置に接続された複数の上記電池が、上記冷却通路の上流から下流に向かって配置されているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1の発明において、上記基準温度における容量が、基準温度における最大容量であるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0007】
電池は、温度が高くなるに連れて電池の容量(SOC:State of Charge)が低下するという特性を有している。
このため、電池が冷却風流れに晒される領域に配置される場合に、その配置位置が冷却風流れの上流側(すなわち冷却効率が相対的に高い位置)である場合には電池の温度が低くなって電池の容量が相対的に高くなり、その配置位置が冷却風流れの下流側(すなわち冷却効率が相対的に低い位置)である場合には電池の温度が高くなって電池の容量が相対的に低くなる。
【0008】
一方で、電池は予め設定される基準温度における容量に固体差がある。このため、単一の電池モジュールを構成する複数の電池においても基準温度における容量に固体差がある。
さて、上述のように、電池の容量は、電池の温度が高くなるに連れて低下する。このため、基準温度における容量の小さな電池を冷却風流れの上流側に配置し、基準温度における容量の大きな電池を冷却風流れの下流側に配置することによって、基準温度における容量の小さな電池の容量を相対的に大きくし、基準温度における容量の大きな電池の容量を小さくすることができる。この結果、電池装置に組み込まれた際における各電池の容量差を小さくすることができ、電池の電圧バランスを均等化することができる。
【0009】
そして、第1の発明においては、電池が冷却通路内に配置され、単一の電圧検出装置に接続された複数の電池のうち、基準温度における容量が相対的に小さなものが冷却通路の上流側に配置され、基準温度における容量が相対的に大きなものが冷却通路の下流側に配置されている。
このため、本発明によれば、各電池の基準温度における容量差が大きい場合であっても電気の容量差を小さくすることができ、電池の電圧バランスを均等化することができる。
このように本発明によれば、電圧バランス補正回路等を備えることなく電池の電圧バランスを均等化することができるため、より簡素な構成で電池モジュールが備える複数の電池における電圧バランスの均等化を効率よく行うことが可能となる。
【0010】
なお、もともと電池の基準温度における容量差が小さい場合には、わざわざ上述のように基準温度における容量の大きさの順に配置しなくとも、電池を冷却流路の上流から下流に向かって配列するのみでも良い。
このような場合には、もともとの電池の基準温度における容量差が小さいことから、実際の電池の容量は、配置位置の冷却効率に準じることとなる。このため、電池を冷却流路の上流から下流に向かって配列することによって、上流から下流に向かって電池の容量が低くなり、電池の容量を把握できるため、電池の電圧バランスの均等化を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における電池装置の要部構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第2実施形態における電池装置の要部構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る電池装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の電池装置の要部構成を模式的に示す平面図である。
本実施形態の電池装置は、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)に搭載され、必要に応じて充放電を繰り返すものである。
そして、本実施形態の電池装置は、図1に示すように、冷却風が一方側(図1における左側:以下左側と称する)から他方側(図1における右側:以下右側と称する)に直線状に抜ける収容領域Rを有しており、さらに、この収容領域R(冷却通路)に複数設置される電池1を有している。
【0014】
電池1は、単位個数(本実施形態においては12個)ごとにグルーピングされて電池モジュール2を形成している。
そして、本実施形態においては、図1に示すように、3つの電池モジュール2が収容領域Rに設置されている。
【0015】
各電池モジュール2を形成する電池1は、直列接続されている。このように、複数の電池1が直列接続されて形成される電池モジュール2ごとに電圧検出装置3が設置されている。
【0016】
本実施形態の電池装置においては、上述のように、収容領域Rに対して、左側から右側に向けて冷却風が流れている。つまり、収容領域Rには、左側から右側に向かう冷却風流れNが形成されている。
【0017】
また、電池1は、上述のように、このような冷却風流れNが形成された収容領域Rに設置されている。つまり、本実施形態において電池1は、冷却風流れNに晒されて配置されている。
【0018】
このように電池1が冷却風流れNに晒されて配置される収容領域Rでは、冷却風が電池1の熱を奪うことによって徐々に昇温する。
このため、収容領域Rの左側(すなわち冷却風流れNの上流側)での冷却風の温度が相対的に低く、収容領域Rの右側(すなわち冷却風流れNの下流側)での冷却風の温度が相対的に高くなる。
この結果、収容領域Rでは、左側に向かうほど冷却効率が高く、右側に向かうほど冷却効率が低くなる。
【0019】
そして、本実施形態の電池装置においては、各電池モジュール2において、複数の電池1のうち、基準温度における最大容量が相対的に小さなものが冷却風流れNの上流側に配置され、基準温度における最大容量が相対的に大きなものが冷却風流れNの下流側に配置されている。
つまり、本実施形態においては、単一の電圧検出装置3に接続された複数の電池1のうち、基準温度における最大容量が相対的に小さなものが冷却風流れNの上流側に配置され、基準温度における最大容量が相対的に大きなものが冷却風流れNの下流側に配置されている。
【0020】
なお、各電池1の最大容量は、当該電池1を電池装置(あるいは電池モジュール2)に組み込む前に基準温度にて実測される。そして、電池装置(あるいは電池モジュール2)を組み立てる際に、当該実測値に基づいて、電池1を配置する。
【0021】
上述のように、電池は、温度が高くなるに連れて電池の容量が低下するという特性を有している。
そして、本実施形態の電池装置においては、電池1が冷却風流れNに晒されて配置され、単一の電圧検出装置3に接続された複数の電池1のうち、基準温度における最大容量が相対的に小さなものが冷却風流れの上流側に配置され、基準温度における最大容量が相対的に大きなものが冷却風流れの下流側に配置されている。
このため、本実施形態の電池装置によれば、最大容量の小さな電池1の容量を相対的に大きくし、最大容量の大きな電池1の容量を小さくすることができる。したがって、各電池1の容量差を小さくすることができ、電池1の電圧バランスを均等化することができる。
このように、本実施形態の電池装置によれば、電圧バランス補正回路等を備えることなく電池1の電圧バランスを均等化することができるため、より簡素な構成で電池モジュールが備える複数の電池1における電圧バランスの均等化を効率よく行うことが可能となる。
【0022】
電圧検出装置3は、1つの電池モジュール2に対して1つ設置されており、接続された電池モジュール2を形成する電池1の電圧を検出すると共に、この検出値を出力するものである。
【0023】
そして、本実施形態の電池装置においては、電圧検出装置3は、図1に示すように、接続された電池モジュール2が有する複数の電池1のうち、冷却風流れNの最下流に位置する電池1の下流側に隣接配置されている。
つまり、本実施形態の電池装置において電圧検出装置3は、電池モジュール2の下流側に隣接配置されている。
【0024】
電圧検出装置3は、不図示のマクロコンピュータ等の電子部品を備えており、動作により発熱する。このため、電圧検出装置3はその周囲を加熱する。
ここで、本実施形態の電池装置においては、電池モジュール2の下流側に隣接配置されており、収容領域Rの右側に配置されている。つまり、収容領域Rの右側は、電圧検出装置3によって加熱される。この結果、収容領域Rの右側は、さらに冷却効率が低下する。
したがって、収容領域Rの右側に配置された、最大容量の大きな電池1の充電効率をより低下させて、電池モジュールが備える複数の電池1における電圧バランスをより均等化させることが可能となる。
【0025】
なお、もともと電池1の基準温度における最大容量差が小さい場合には、わざわざ上述のように最大容量の大きさの順に配置しなくとも、電池1を収容領域Rの上流から下流に向かって配列するのみでも良い。
このような場合には、もともとの電池1の基準温度における最大容量差が小さいことから、実際の電池の容量は、配置位置の冷却効率に準じることとなる。このため、電池1を収容領域Rの上流から下流に向かって配列することによって、上流から下流に向かって電池の容量が低くなり、電池1の容量を把握できるため、電池1の電圧バランスの均等化を効率よく行うことが可能となる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0027】
図2は、本実施形態の電池装置の要部構成を模式的に示す側面図である。
この図に示すように、本実施形態の電池装置における収容領域R1は、下部側方から冷却風が流れ込み、上部から冷却風が抜ける構造とされている。つまり、本実施形態の電池装置における収容領域R1では、冷却風流れNが下方から上方に向けて形成されている。
【0028】
そして、本実施形態の電池装置では、各電池モジュール2において、複数の電池1のうち、基準温度における最大容量が相対的に小さなものが収容領域R1の下方に配置され、基準温度における最大容量が相対的に大きなものが冷却風流れNの上方に配置されている。
つまり、本実施形態の電池装置も、上記第1実施形態の電池装置と同様に、各電池モジュール2において、複数の電池1のうち、基準温度における最大容量が相対的に小さなものが冷却風流れNの上流側に配置され、基準温度における最大容量が相対的に大きなものが冷却風流れNの下流側に配置されている。
したがって、本実施形態の電池装置も、電圧バランス補正回路等を備えることなく電池1の電圧バランスを均等化することができ、より簡素な構成で電池モジュールが備える複数の電池1における電圧バランスの均等化を図ることが可能となる。
【0029】
また、本実施形態の電池装置では、電池モジュール2の上方に電圧検出装置3が隣接配置されている。
したがって、収容領域R1の上方に配置された、最大容量の大きな電池1の充電効率をより低下させて、電池モジュールが備える複数の電池1における電圧バランスをより均等化させることが可能となる。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0031】
例えば、上記実施形態においては、収容領域R,R1に3つの電池モジュール2を配置する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、収容領域R,R1にさらに複数の電池モジュール2を配置する構成を作用することも可能である。
【0032】
また、上記実施形態においては、1つの電池モジュール2が12個の電池1を備える構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、電池モジュール2を形成する電池1の個数は変更可能である。
【0033】
また、上記実施形態における収容領域R,R1の形状は一例であり、収容領域の形状を他の形状に変更しても良い。
【符号の説明】
【0034】
1……電池、2……電池モジュール、3……電圧検出装置、R,R1……収容領域、N……冷却風流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池と当該電池の電圧を検出する電圧検出装置とを有する電池装置であって、
前記電池が冷却通路内に配置され、
単一の前記電圧検出装置に接続された複数の前記電池のうち、基準温度における容量が相対的に小さなものが前記冷却通路の上流側に配置され、前記基準温度における容量が相対的に大きなものが前記冷却通路の下流側に配置されている
ことを特徴とする電池装置。
【請求項2】
複数の電池と当該電池の電圧を検出する電圧検出装置とを有する電池装置であって、
前記電池が冷却通路内に配置され、
単一の前記電圧検出装置に接続された複数の前記電池は、前記冷却通路の上流から下流に向かって配置されていることを特徴とする電池装置。
【請求項3】
前記基準温度における容量は、基準温度における最大容量であることを特徴とする請求項1記載の電池装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−204141(P2012−204141A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67626(P2011−67626)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】