説明

電池試験方法、及び電池試験装置

【課題】電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる電池試験方法及び電池試験装置を提供する。
【解決手段】本発明の電池試験装置は、直方体あるいは略直方体の電池4の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、電池4の第1の側面に衝突力を与える場合、電池4の第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、電池4の両主面側から挟持部材7を用いて挟持する接地工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池試験方法及び電池試験装置に関し、特に、直方体あるいは略直方体の側面に衝突力を与える縦圧壊試験に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの普及により、より大容量・高密度な電池の開発が強く望まれている。更には電動アシスト自転車やハイブリッド型自動車も普及してきており、全て電気で駆動する電気自動車も徐々に見受けられるようになってきた。そのため、大容量化、高密度化に加えて電池の大出力化も要求されるようになってきた。しかし、それに伴って発熱や発火などの事故が発生しないよう、安全性に関しても強く求められるようになってきている。特に自動車に搭載されるような大型の電池ならば、1つの事故でも重大な被害をもたらすことになるし、1つの素電池を複数個組み合わせて使用する組電池ならば、1つの素電池での発熱・発火はたとえ小さくても、その影響が組電池全体に及ぼすことになるので安全性に関しては特に重要となってきている。
【0003】
電池の安全性を脅かす外的要因としては、衝突、振動、温度変化、気圧変化などが挙げられる。例えば、ある物体が電池に衝突した場合、電池は衝突部分で陥没し、これに伴って電池内部ではセパレータを挟持して対峙していた正極と負極とが押し潰され、最悪の場合にはセパレータを突き破って正極と負極とが接触して短絡してしまう。短絡が発生すると急激に放電が開始され、温度が急激に上昇し、最悪の場合には電池が熱暴走を引き起こして発火・発煙・破裂などを生ずる虞がある。
【0004】
このような発火・発煙・破裂などを生じさせないため、電池の製造メーカでは日々、安全性を高めるための設計・開発を進め、試験を実施してそれを確認している。また、各方面において安全性に関する法律・規格も制定され、事故が起きないように管理・監視されている。
【0005】
電池の中でも特に発火・発煙・破裂などの危険性の高いリチウム電池の場合、輸送中の事故を防ぐために、国際連合による「危険物輸送に関する勧告」の中で輸送の方法が規定されている。同時に輸送に関する試験(以下、輸送試験)も規定されており、少なくとも航空機で輸送するにはこの試験を満足しておく必要がある。
【0006】
ここで、輸送試験の中で規定されている衝突試験(T6)について説明する。衝突試験とは、図8に示すように、試験対象物(電池)1上に直径15.8mmの丸棒3を水平に置き、この丸棒3に対して重さ9.1kgの錘2を高さ61±2.5cmから落下させることにより、衝突力を試験対象物1に間接的に与えて試験対象物1を部分的に圧壊し、部分的に圧壊した試験対象物1の破裂や発火の有無を調べ、電池温度の変化を測定することにより、電池の安全性を確認する試験である。この衝突試験は、試験対象物1が角型の場合、図8に示すように、試験対象物1の主面に対してだけでなく、図9に示すように、試験対象物1の側面に対しても行わなければならない。以下、図9の試験対象物1の側面に対する衝突試験を、縦圧壊試験ともいう。
【0007】
ところで、図9に示す縦圧壊試験の場合、角型の試験対象物1の側面は非常に面積が狭いため、何らかの支持体を用いることなく、丸棒3を水平に置くことは難しい。そこで、丸棒3を水平に置く方法として、例えば、図11に示すような、上面(丸棒を支える面)に丸棒3と嵌合可能な穴10aを有するスポンジ10を2つ用意し、図12に示すように、2つのスポンジ10により丸棒3を支え、角型の試験対象物1の側面(上面)上に丸棒3を水平に置く方法が考えられる。ただし、スポンジ10としては、丸棒3の重さによっては形状が変化せず、かつ、錘2の落下による衝突力を試験対象物1に伝えることが可能な剛性を有するものを用いる。スポンジ10の剛性が強すぎると、縦圧壊試験の際にスポンジ10自身が障害となって、衝突力による電池の変形・陥没を妨げてしまい、正確な衝突試験を実施できなくなってしまう虞がある。逆に、スポンジ10の剛性が弱すぎると、丸棒3の重さに耐えられずに屈曲してしまい、丸棒3を所定の高さに維持できず、丸棒3が落下してしまう虞があるからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】リチウム金属電池およびリチウムイオン電池の輸送に関する手引書(第4版)2009年4月(社団法人 電池工業会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図9の縦圧壊試験の場合、試験対象物の側面を接地面に接地させて試験対象物を立てる必要があるが、試験対象物の側面の面積が小さいほど、試験対象物を立てるのは難しくなる。特に、試験対象物が、図10に示すような、電極、セパレータおよび電解液がフィルム状の外装体6内に収容された直方体あるいは略直方体の電池(以下、フィルム外装電池という。)4の場合、縦圧壊試験を実施するのは簡単ではない。その理由を以下に詳述する。
【0010】
一般的なフィルム外装電池4は、図10に示すように、正極集電部及び負極集電部を有する電池要素(図示していない)と、電池要素を内部に収容する外装体6と、正極集電部に接続された正極リード端子5aと、負極集電部に接続された負極リード端子5bとを備えている。外装体6は、2枚のフィルムからなり、このフィルムの外縁部6aを溶着させることで、外装体6の内部に電池要素が封止される。このような構成のフィルム外装電池4の外縁部6aは、2枚のフィルムを重ね合わせただけの構成であるため、その厚さは薄く、しかも電極、セパレータおよび電解液などが収容されている中央部と、2枚のフィルムが重ね合わせただけの外縁部6aとの境界は剛性的に非常に弱い。このような構成のフィルム外装電池4の場合、電池の側面を接地させて電池を立てる必要のある縦圧壊試験は非常に実施しずらく、たとえうまく電池を立てられたとしても、衝突によって電池が倒れたりするため、安定した試験結果が得られない。これを回避するために、粘土などの粘性柔軟体で電池を固定する方法も利用されているが、粘土の剛性では不充分で、電池を安定に立たせるまでには至らない。
【0011】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる電池試験方法及び電池試験装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の電池試験方法は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、上記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、上記電池の上記第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、上記電池の両主面側から挟持部材を用いて挟持する接地工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の電池試験方法は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、上記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、上記電池の上記第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、上記電池を吊下部材を用いて吊り下げる接地工程を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の電池試験方法は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、上記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、上記電池の上記第1の側面とは反対側の第2の側面を、接着剤を用いて接地面に接着する接地工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の電池試験装置は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験装置であって、上記本発明の電池試験方法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる電池試験方法及び電池試験装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電池試験装置で用いられる挟持部材の一例を示す図である。
【図2】本発明の電池試験装置の一例を示す図である。
【図3】本発明の電池試験装置の他の例を示す図である。
【図4】本発明の電池試験装置の他の例を示す図である。
【図5】本発明の電池試験装置で用いられる吊下部材の一例を示す図である。
【図6】本発明の電池試験装置で用いられる干渉部材を電池側面上に水平に置く方法の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の電池試験装置で用いられる干渉部材を電池側面上に水平に置く方法の他の例を説明するための図である。
【図8】角型の試験対象物の一主面に対する衝突試験の一例を説明するための斜視図である。
【図9】角型の試験対象物の一側面に対する衝突試験の他の例を説明するための斜視図である。
【図10】フィルム外装電池の一例を示す斜視図である。
【図11】干渉部材を支持するためのスポンジの一例を示す斜視図である。
【図12】干渉部材を角型の試験対象物の側面上に水平に置く方法の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の電池試験方法は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、上記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、上記電池の上記第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、上記電池の両主面側から挟持部材を用いて挟持する接地工程を含むことを特徴とする。これにより、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる。
【0019】
上記挟持部材として、万力またはバイスを用いることができる。
【0020】
本発明の第2の電池試験方法は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、上記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、上記電池の上記第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、上記電池を吊下部材を用いて吊り下げる接地工程を含むことを特徴とする。これにより、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる。
【0021】
上記吊下部材として、上記電池を挟むクリップと、上記クリップに接続された紐、糸またはゴム紐とを用いることができる。
【0022】
本発明の第3の電池試験方法は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、上記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、上記電池の上記第1の側面とは反対側の第2の側面を、接着剤を用いて接地面に接着する接地工程を含むことを特徴とする。これにより、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる。
【0023】
上記接着剤としては、衝突力を受けても剥離しない程度の充分な接着力があれば、セメダインなどの接着剤を使用することができる。ただし、試験対象物が図10に示すフィルム外装電池4のように側面の面積が非常に狭い場合、フィルム外装電池4の外縁部6aを折り曲げて接着面を拡張するなどの何らかの別途方策が必要となる場合が多い。接着剤以外にも、両面に粘着性を有する両面粘着テープを使用することもでき、接着剤を用いた場合よりも作業性は簡便である場合もある。
【0024】
上記本発明の第1〜第3の電池試験方法において、上記接地工程の後、上記電池の上記第1の側面上に干渉部材を水平に置き、上記干渉部材に衝突物を衝突させることにより、上記電池に間接的に衝突力を与える衝突工程を含む。
【0025】
上記干渉部材としては、丸棒を用いる。上記干渉部材は、柔軟性を有する支持体により、上記電池の上記第1の側面に当接した状態で水平に支持することができる。柔軟性を有する支持体としては、海綿体、繊維体、発泡体などが挙げられる。また、上記干渉部材は、上記柔軟性を有する支持体ではなく、紐、糸または針金により、上記電池の上記第1の側面に当接した状態で水平に支持することもできる。
【0026】
本発明の電池試験装置は、直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験装置であって、上記本発明の電池試験方法を用いることを特徴とする。これにより、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる。
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0028】
(実施形態1)
本実施形態1では、本発明の電池試験装置の一例について図10、図11、図12を参照しながら図1、図2を用いて説明する。図1は、本実施形態の電池試験装置で用いられる挟持部材の一例を示す図である。図2は、本実施形態の電池試験装置を示す図である。図1及び図2において、図10、図11、図12と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明は上述したので省略する。
【0029】
本実施形態の電池試験装置は、直方体または略直方体の試験対象物の側面に対して衝突力を与えて電池の安全性を確認する装置である。本実施形態において、試験対象物としては、フィルム外装電池4を用いる。フィルム外装電池4は、図10に示すように、正極集電部及び負極集電部を有する電池要素(図示していない)と、電池要素を内部に収容する外装体6と、正極集電部に接続された正極リード端子5aと、負極集電部に接続された負極リード端子5bとを備えている。外装体6は、2枚のフィルムからなり、このフィルムの外縁部6aを溶着させることで、外装体6の内部に電池要素が封止されている。
【0030】
この本実施形態の電池試験装置は、図1に示すように、フィルム外装電池4の衝突力が与えられる側面(第1の側面)とは反対側の側面(第2の側面)を接地させた状態で、フィルム外装電池4の両主面側から挟持する挟持部材として、万力7を備える。この万力7は、電池挟持部8aを有する押圧部8と、凹部を有する筐体9とを有し、筐体9の凹部側面と電池挟持部8aとの間に試験対象物を挟持可能である。これにより、フィルム外装電池4のように、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい試験対象物であっても、縦圧壊試験を安定して確実に行うことができる。ここでは、万力7の電池挟持部8aの高さh1は、フィルム外装電池4の外縁部6a(図10)の幅h2に対する比率が1より大きく、5以下の範囲で設定した。上記比率に設定することで、剛性の高いフィルム外装電池4の中央部(電極、セパレータ、電解液が収容されている部分)を挟持できるため、フィルム外装電池4を安定して立てることが可能となる。逆に、上記比率が1以下の場合、万力7により剛性の弱いフィルム外装電池4の外縁部6a(図10)を挟持することになるため、フィルム外装電池4が厚さ方向に倒れやすく、安定した試験を実行できない。上記比率が5を超えると、万力7自身が障害となって、衝突力を受けることによるフィルム外装電池4の上面(側面)の変形・陥没を妨げてしまい、正確な縦圧壊試験を行うことができない。
【0031】
さらに、本実施形態の電池試験装置は、図2に示すように、試験対象物であるフィルム外装電池4に対し、衝突力を間接的に与える丸棒3と、丸棒3を所定の高さに水平に支持する支持体としてのスポンジ10とを備える。スポンジ10は、図11に示すように、丸棒3を載せる面に、丸棒3を嵌合可能な穴10aを有する。ここで、スポンジ10の柔軟性には注意しなければならない。硬過ぎるとスポンジ10自身が障害となって電池4の変形・陥没を妨げてしまい、正確な縦圧壊試験が実施できなくなってしまう。逆に、柔らか過ぎても丸棒3の重さに耐えられずに屈曲してしまい、丸棒3を水平に支持することができずに、場合によっては丸棒3が落下してしまう。
【0032】
次に、本実施形態の電池試験方法について図1、図2を用いて説明する。
【0033】
まず、図1に示すように、万力7を用いてフィルム外装電池4を挟持し、フィルム外装電池4の一側面が上になるようにフィルム外装電池4を立てる。
【0034】
そして、図11に示す形状のスポンジを2個用意し、図2に示すように、万力7を間に挟むようにして設置し、スポンジ10の上面に丸棒3を載せる。このときのスポンジ10の高さは、フィルム外装電池4の上面上に丸棒3を水平に置くことができる高さである。
【0035】
そして、丸棒3に対して重さ9.1kgの錘(図示せず)を衝突させることにより、衝突力をフィルム外装電池4の上面に間接的に与える。これにより、フィルム外装電池4は部分的に圧壊(変形・陥没)する。その後、必要に応じて部分的に圧壊したフィルム外装電池4の破裂、発火などの外観変化を調べ、電池温度の変化を測定することにより、電池の安全性を確認することができる。
【0036】
本実施形態では、万力7を挟むようにして一対のスポンジ10を設置する場合について説明したが、図3に示すように、万力7の上にスポンジ10を設置しても良い。この場合、縦圧壊試験に要するスペースを狭めることができる。また、図4に示すように、スポンジ10を少し斜めに立てておいても良い。この場合、錘が丸棒3に衝突すると同時にスポンジ10が速やかに倒れやすくなり、スポンジ10自身が電池への衝突力を妨げるのを防止できる。
【0037】
(実施形態2)
本実施形態2では、本発明の電池試験装置の他の例について説明する。本実施形態において、上記実施形態1と異なる点は、フィルム外装電池を万力を用いて立てるのではなく、吊下部材を用いて立てるようにした点である。図5は、本実施形態の電池試験装置で用いられる吊下部材の一例を示す図である。図6は、本実施形態の電池試験装置で用いられる干渉部材を電池側面上に水平に置く方法の一例を説明するための図である。図5及び図6において、図2と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態の電池試験装置は、図5に示すように、吊下部材としての紐11及びクリップ13を備える。具体的には、試験対象物であるフィルム外装電池4の衝突力が与えられる面が上側になるように、一対のクリップ13を用いてフィルム外装電池4を挟み、クリップ13に接続されている紐11を、壁に取り付けてあるフック12に掛けることにより、フィルム外装電池4を吊り下げる。このとき、フィルム外装電池4の衝突力が与えられる側面とは反対側の側面は接地面に接地させておく。このようにして、フィルム外装電池4を立てることができる。ただし、クリップ13の挟持力は、フィルム外装電池4に衝突力を与えたときにクリップ13からフィルム外装電池4が簡単に外れる大きさである。衝突時にフィルム外装電池4が簡単に外れることにより、丸棒3は錘からの衝突力を確実にフィルム外装電池4に伝えることができ、衝突力を間接的に受けたフィルム外装電池4は部分的に変形・陥没するため、正確な縦圧壊試験を実現可能となる。ここで、クリップ13の挟持力には注意しなければならない。クリップ13の挟持力が強すぎると、衝突してもクリップ13から電池4が外れなくなり、正確な縦圧壊試験が実施できない。なお、クリップ13を使わずにクリップ以外の何らかの治具を使用しても構わない。例えば、直接試験対象物に紐11を取り付けても良い。ただしこの場合は、適度な引張り強度の紐11を選び、試験対象物が衝突力を受けると同時に紐11が断裂するようにしなければならない。また、上記紐11の代わりに、ゴムなどの伸縮可能な材料を用いることもできる。
【0039】
また、本実施形態の電池試験装置は、図6に示すように、試験対象物であるフィルム外装電池4に対し、衝突力を間接的に与える丸棒3を備え、丸棒3は、紐14を用いて、フィルム外装電池4の上面に当接した状態で水平に支持されている。図6では、丸棒3の両端部に結びつけられた紐14は、壁に取り付けられたフック12に掛けられている。ただし、紐14としては、適度な引っ張り強度を有し、錘と衝突したときに断裂可能なものを選ぶ必要がある。ここでは、紐14を用いた場合について説明したが、図7のように、針金15の一方の端部を半環状に曲げて丸棒3を掛けるように設置しても良い。図7は、丸棒3と針金15との関係を説明するための図であり、丸棒3を端面側から見た図である。図7のような針金15を用いる場合、針金15としては、適度な剛性を有するものを選び、錘と衝突したときに針金15の半環状部が変形し(伸びて)丸棒3が針金15から開放されるようにしなければならない。また、上記紐14の代わりに、ゴムなどの伸縮可能な材料を用いることもできる。なお、図6におけるフィルム外装電池4は、図面上には表していないが、図1に示す挟持部材、図5に示す吊下部材、あるいは接着剤などを用いて立っている。
【0040】
次に、本実施形態の電池試験方法について図5、図6を用いて説明する。
【0041】
まず、図5に示すように、クリップ13及び紐11を用いてフィルム外装電池4の一側面が上になるようにフィルム外装電池4を立てる。
【0042】
そして、図6に示すように、丸棒3を、紐14を用いてフィルム外装電池4の上面に水平に置く。このとき、丸棒3は、フィルム外装電池4の上面の長手方向に対して垂直になるように置く。これは、丸棒3が、フィルム外装電池4の紐11やクリップ13に当たらないようにするためである。
【0043】
そして、丸棒3に対して重さ9.1kgの錘(図示せず)を衝突させることにより、衝突力をフィルム外装電池4の上面に間接的に与える。これにより、フィルム外装電池4は、部分的に圧壊する。その後、部分的に圧壊したフィルム外装電池4の外観変化を調べ、電池温度の変化を測定することにより、電池の耐衝撃性を確認することができる。
【0044】
なお、電池への衝突から発火・発煙・破裂などを防止する方法としては、上記実施形態1、2のような縦圧壊試験を実施して、電池の安全性を常時確認しておくだけでなく、電池自身の安全性を高めるとさらに良い。電池自身の安全性を高めるためには、衝突によって電池自身が変形・陥没しても、電池の内部で正極と負極とが接触しないように設計するのが肝要である。
【0045】
その1つの手段としては、正極と負極との間に存在して両者を絶縁する役割のセパレータを厚くする方法が挙げられる。厚くすればセパレータを突き破って正負極同士が接触する確率は当然低くなる。
【0046】
また、正極及び負極を切り出して端部をフィルムなどで覆い、切り出した端面を覆う方法も挙げられる。切り出した端面は破断面であるため、場合によっては周囲に存在する他材を傷付けてしまう場合もあり、特にその他材がセパレータであると、セパレータが傷付けられることによって正極と負極とが接触し、電池からの発火・発煙・破裂などの発生確率が高まってしまう。
【0047】
多くのリチウムイオン電池の場合、正極での過剰なイオン受入を防止するために、正極よりも負極の方を大きく作っておく場合が多い。このため、負極の方の面積が広い場合が多く、正極端と負極端には自ずとギャップが生じる。正極と負極との接触を防止するためにはこのギャップが大きい方が良い。従って、電池からの発火・発煙・破裂などの防止のためには、このギャップをできるだけ広くするのも1つの方法である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電池の側面の面積が非常に小さく、電池の側面を接地面に接地させて電池を立てることが難しい電池であっても、縦圧壊試験を安定して正確に行うことができる電池試験方法及び電池試験装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 試験対象物
2 錘
3 丸棒
4 フィルム外装電池
5a 正極リード端子
5b 負極リード端子
6 外装体
6a 外縁部
7 万力
8 押圧部
8a 電池挟持部
9 筐体
10 スポンジ
11 紐
12 フック
13 クリップ
14 紐
15 針金


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、
前記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、前記電池の前記第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、前記電池の両主面側から挟持部材を用いて挟持する接地工程を含むことを特徴とする電池試験方法。
【請求項2】
前記挟持部材として、万力またはバイスを用いた請求項1に記載の電池試験方法。
【請求項3】
直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、
前記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、前記電池の前記第1の側面とは反対側の第2の側面が接地面に接地するように、前記電池を吊下部材を用いて吊り下げる接地工程を含むことを特徴とする電池試験方法。
【請求項4】
前記吊下部材として、前記電池を挟むクリップと、前記クリップに接続された紐、糸またはゴム紐とを用いた請求項3に記載の電池試験方法。
【請求項5】
直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験方法であって、
前記電池の第1の側面に衝突力を与える場合、前記電池の前記第1の側面とは反対側の第2の側面を、接着剤を用いて接地面に接着する接地工程を含むことを特徴とする電池試験方法。
【請求項6】
前記接地工程の後、前記電池の前記第1の側面上に干渉部材を水平に置き、前記干渉部材に衝突物を衝突させることにより、前記電池に間接的に衝突力を与える衝突工程を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池試験方法。
【請求項7】
前記干渉部材は、丸棒である請求項6に記載の電池試験方法。
【請求項8】
前記干渉部材は、柔軟性を有する支持体により、前記電池の前記第1の側面に当接した状態で水平に支持されている請求項6または7に記載の電池試験方法。
【請求項9】
前記干渉部材は、紐、糸または針金により、前記電池の前記第1の側面に当接した状態で水平に支持されている請求項6または7に記載の電池試験方法。
【請求項10】
前記電池は、少なくとも電極、セパレータ及び電解液がフィルム状の外装体に収容されたフィルム外装電池である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電池試験方法。
【請求項11】
直方体あるいは略直方体の電池の側面に対し、衝突力を与えて電池の安全性を確認する電池試験装置であって、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の電池試験方法を用いることを特徴とする電池試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−64508(P2012−64508A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209377(P2010−209377)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】