説明

電池電極の製造方法、この方法によって製造された電極、及び斯かる電極を有する電池

活性ペースト(9)が配置された支持体(8)を備えた少なくとも一個の鉛電池電極(7)の製造方法であって、ペースト表面が、機械的、化学的又は物理的作用によって表面の湿潤度を低下させる目的で、粉末物質と接触していることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主クレームの前提事項部に記載された電池電極の製造方法、この方法によって製造された電極、及び斯かる電極を有する電池に関する。
【先行技術】
【0002】
例えば、車両の始動に用いられる電池は、一般に、二つの向かい合うプレートの形態の正電極と負電極を内部に備えた複数のセルから形成されている。二つの電極の間には、イオンと電荷が自由に移動できるよう、微細孔セパレータとともに、電解質(硫酸)が存在している。これらの電極は、一般的には鉛グリッドである支持体から形成される電流伝導のための内部構造を提供する。支持体グリッドは、例えば、重力鋳造、ドラム上への連続鋳造、鉛ストリップからの延伸又は適当な装置による穿孔など、種々の方法で形成することができる。鉛、酸化鉛、硫酸、水及び幾分かの添加剤からなる活性ペーストを、この支持体グリッドに塗布する。活性ペースト混合物は、好適な密度、湿潤度、多孔性及びコンシステンシー特性を得るため、適当な工業用ミキサーによって調製される。このペーストは、塗布機によって適当にグリッドに塗布され、活性ペーストの特性が、このペーストが適当にグリッドの穴を塞ぎ、グリッドの表面に付着することを可能にしている。
【0003】
塗布作業の後、プレートをプレスして活性ペーストとグリッド表面との間の接触を向上させる。
【0004】
次いで、プレートを速乾オーブンに入れ、活性ペーストの含水量を減少させる。この速乾過程は、他の化合物に加えて酸化鉛及び水酸化鉛の生成を伴う発熱反応も誘発し、この発熱反応は、プレートを加熱し、活性ペーストの塊(mass)の構造における変化を誘発する。
【0005】
次いで、プレートを適当なチャンバー内での硬化作業にかける。この硬化作業の間に、活性ペースト中に存在する鉛の酸化が終了する。この過程の終わりにおいて、この活性ペーストは、固化して活性材料になる。これらのプレートは、硬化を行うため、並べて配置するのが一般的であり、そのため、相互に向き合う面は、互いに付着することがあり得る。この理由で、プレートは、時として、例えば紙の、シートによって隔てられる。
【0006】
鉛の反応は、発熱反応なので、速乾過程の間にひとたび誘発されると、この反応は、鉛の酸化が終了するまで、又は、酸素と、酸素を得る水とが使い果たされるまで、進行する。この反応は、たとえ急速オーブン乾燥がなくても、何れにしろ誘発されるが、混合物中に過剰の水量があると硬化時間があまりにも長くなる。
【0007】
乾燥が早すぎ又は強すぎると、加水分解及び水素が欠乏するため、化学反応が停止し、電池が作動する間のプレートの寿命を決定するグリッドと活性材料との間の付着が弱くなる。温度及び乾燥パターンも、どちらの硫酸鉛が硬化させたプレートに存在するようになるか、及び活性材料の構造と硬さを決定する。水が欠乏して反応が停止する場合には、鉛粒子を取り囲む材料の構造が、不可逆変化を受け、たとえプレートを再び濡らしても反応を再活性化することはできない。
【0008】
強すぎる乾燥は、例えばミキサーにおける休止に起因する過剰なオーブン加熱の結果であることがある。したがって、たとえ製品が同じ混合物を有していても、また、同じ乾燥及び硬化過程を経ても、異なる電極の質になることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点が克服される方法を提供することであり、特に、活性ペーストから過剰の水が失われる危険を排除することにある。
【0010】
もう一つの目的は、より均質な活性ペーストを得ることである。
別の目的は、エネルギーを節約することである。
さらに別の目的は、より廉価な機械類を用いて、より簡易で達成しうる方法を得ることである。
【0011】
本発明の他の目的は、新しい(fresh)プレートにおける温度及び水分の変動を減少させ、電極の質を向上させることであり、これらは、現在製造されている電極よりもよりよく機能する特性をもたらす。本発明の方法によって製造された電極、及び前記電極を備えた電池も、本発明自体の特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的は、特徴が請求の範囲によって定義される方法により、電極により及び電池により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に非限定的な例として図示する以下の本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明によって明らかとなろう。
【0014】
添付図面を参照すると、これらの図面は、(わかり易く表現するために)右の部分のみが活性ペースト9に被覆されたグリッドの形態の支持体8を備えた電極7を示している。この図面から、支持体8は、コネクタ10を備えていることが分かる。活性ペースト9は、コネクタ10を除いて支持体のほぼ全面を覆っている。活性ペースト9は、主として、鉛、酸化鉛、硫酸、水及び他の添加剤からなる。活性ペーストは、混合機によって調製され、塗布機によってグリッド8に塗布される。粉末材料(吸湿性粉末であることが好ましい)を、活性ペーストの表面上に付着させる。粉末材料は、活性ペースト表面上に点を付すことによって図面に表されている。粉末材料の目的は、この材料の機械的、物理的又は化学的作用によって、活性ペーストの表面湿潤度を低下させることである。粉末材料の存在は、早いオーブン乾燥操作を回避し、直接硬化工程へと移行することを可能にする。
【0015】
本方法は、以下の工程を含むものである。
1.活性ペーストを調製し、混合機で混合する工程、
2.通常、鉛のグリッドである支持体8を作成する工程、
3.活性ペースト9を、スプレッダ20によって支持体8に配置し、ペーストを塗布した支持体を形成する工程、
4.粉末材料を、ベルトダスター21によって可動ベルトの表面に配置する工程、
5.支持体8と活性ペースト9とから構成された、ペーストを塗布した支持体を、粉末材料が散布された可動ベルトに沿ってスライドさせる工程、
6.粉末材料を、ペーストを塗布した支持体に表面ダスター22によって落下させることによって、全表面をカバーする工程、
7.粉末材料の活性ペーストの表面への付着力を高めるため、ペーストを塗布した支持体をローラー23の下に通すことにより、ペーストを塗布した支持体の表面に若干の圧力をかける工程であって、粉末材料が、物理的又は化学的作用によりペースト表面の水を吸収する工程、
8.ペーストを塗布した支持体を、取り出し、硬化工程用に制御された雰囲気環境に置く工程、及び
9.硬化の終わりに、ペーストを塗布した支持体は、電池セルに配置できる状態の電極になる工程。
【0016】
本発明の一つの応用においては、好ましくは吸湿性のいろいろな粉末材料、例えば、タルク、粉末にしたオーク、粉末にした紙、コルク又はシリカを、有効に用いることができる。
【0017】
粉末材料は、10μm〜1000μmの間の粒径を有するのが好都合である。
【0018】
使用する材料の量は、プレートの寸法、したがって、カバーする面積によって変化する。その範囲は、1〜10g/mの間である。
【0019】
ペーストを塗布した支持体の表面及び出来上がった電極の表面を補強するため、粉末材料は、ガラス繊維又は挽いて粉末にしたプラスチックと混合して用いることができる。
【0020】
ある応用として、粉末材料を活性ペースト表面に付着させた後に粉末材料を軽く押圧するのに用いるローラーを、有効に加熱してもよい。
【0021】
硬化前のペーストを塗布した支持体の乾燥を伴う過程は、すっかり不要となる。これは、エネルギーと、電極プラント及び生産のコストとの両方における大きな節約を意味する。この点で、オーブンでの乾燥過程は、約300,000キロカロリー/時間(kcal/hour)を消費するが、このコストは、活性ペースト表面に配置した粉末材料を用いることにより、すっかり不要となる。活性ペースト表面に存在する粉末は、ペーストを塗布した支持体が、硬化工程の間、隣り合わせに置かれた時に、互いに付着するのも防止する。
【0022】
本発明は、粉末材料を用いる上述の方法によって製造された電極7も包含する。これらの電極は、大量に生産する場合、通常のオーブン乾燥過程を用いる従来の方法によって製造された電極よりも、統計的に欠陥が少ない。粉末乾燥過程の後、これらの電極は、粉末が主に表面にあるという特徴を呈する。
【0023】
本発明は、粉末材料を含む電極7、及び少なくとも一つの前記電極を用いて製造された電池も包含している。
【0024】
この粉末は、電極をよりコンパクトにし、電極の寿命を延ばす。このコンパクトなことは、粉末とともにガラス繊維又は粉末にしたプラスチック材料を用いると、さらに向上する。
【0025】
本発明の他の応用では、粉末材料を、空気によってプレート表面に吹き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、支持体の正面図であり、支持体の右側には、活性ペーストが塗布されている。
【図2】図2は、本発明の方法を実施する装置機械の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性ペースト(9)が配置された支持体(8)を備えた少なくとも一つの鉛電池電極(1)の製造方法であって、ペースト表面が、機械的、化学的又は物理的作用によって表面の湿潤度を低下させる目的で、粉末物質と接触していることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
以下の工程:
(a)支持体(8)に活性ペースト(9)を配置してペーストを塗布した支持体を形成する工程と、
(b)粉末物質を、活性ペースト(9)と接触させて配置する工程と、
(c)ペーストを塗布した支持体を硬化過程に供する工程とを、
含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末物質が、吸水性粉末であってもよいことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水を吸収するため、前記粉末物質中に繊維が存在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末物質は、活性ペースト(9)の表面に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記粉末物質を、気流によって活性ペースト(9)の表面に対して吹き付けることができることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記粉末物質は、活性ペースト(9)の表面に押圧されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
活性ペーストが、押圧工程の間、加熱されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末物質の構成要素である粉末粒子の粒径が、10μmと1000μmの間であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
繊維又は粉末の形態のガラスが、前記粉末物質に添加されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
粉末にしたプラスチック材料が、前記粉末物質に添加されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
支持体(8)と、支持体(8)に配置された活性材料(9)とを備えた鉛電池電極(7)であって、その表面に粉末材料を備えたことを特徴とする鉛電池電極。
【請求項13】
複数の電極を備えた鉛電池であって、請求項12に記載の電極(7)を少なくとも1個備えていることを特徴とする鉛電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−529773(P2009−529773A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558667(P2008−558667)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001623
【国際公開番号】WO2007/104416
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508277069)
【Fターム(参考)】