説明

電池電源装置

【課題】温度センサ組み付けに関わる作業性の向上を図ることが出来る電池電源装置の提供。
【解決手段】電池電源装置1は、冷却風取り入れ口300を有する冷却風通路が形成された筐体3と、冷却風通路に配置された複数のセル2と、セル2の温度を検出する温度センサ4aとを備え、筐体部材3aは、筐体壁部に形成された貫通孔302aと、筐体壁部の外周面に形成された配線這い回し用の溝330とが形成され、温度センサ4aは、貫通孔302aに筐体外側から挿入されるように固定されて、先端部分がセル2の被計測部位に熱的に接触するセンサ部401〜403と、該センサ部の筐体外側に露出している部分から引き出され、筐体壁部の外周面に形成された溝330の内部に配設されるハーネス5と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを有する電池電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体内に複数の二次電池セルを収納した構成の電源装置では、温度センサを設けてセル温度を監視するようにしている(例えば、特許文献1参照)。例えば、車両用電源装置では、冷却風取り入れ口等から温度センサを筐体内に引き込み、センサ素子部をセル表面に接触させるようにしている。センサ素子部は、熱抵抗を下げてセル温度がより正確に測定できるように、熱伝導率の良いゲル等により、セルとセンサ素子部との隙間を埋めて、熱接触の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−25633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサ素子部にセンサ配線が付いた温度センサを複数筐体内に引き込み、各センサ素子部を複数のセルの表面に接着し、接着剤または良熱電導性材料を塗布する作業を行うため、作業効率が悪く、組み立てコスト増が問題となる。また、センサ配線のはい回しが通風の障害になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、冷却風取り入れ口を有する冷却風通路が形成された筐体と、冷却風通路に配置された複数のセルと、セルの温度を検出する温度センサとを備えた電池電源装置であって、筐体は、筐体壁部に形成されたセンサ固定用貫通孔と、筐体壁部の外周面に形成されたセンサ配線這い回し用の溝とが形成され、温度センサは、センサ固定用貫通孔に筐体外側から挿入されるように固定されて、先端部分が前記セルの被計測部位に熱的に接触するセンサ部と、該センサ部の筐体外側に露出している部分から引き出され、筐体壁部の外周面に形成された溝の内部に配設されるセンサ配線と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、センサ配線が通風の障害とならず、温度センサ組み付けに関わる作業性の向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態における電池電源装置1の外観斜視図である。
【図2】温度センサ4aの詳細を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)はA−A断面図である。
【図3】温度センサ4a,4bの取り付け構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)はB−B断面図である。
【図4】温度センサ取り付け構造に関する他の形態を示す図である。
【図5】温度センサの組み付け手順を説明する図である。
【図6】温度センサの組み付け手順を説明する図であり、図5に示す工程に続く工程を示す。
【図7】温度センサの組み付け手順を説明する図であり、図6に示す工程に続く工程を示す。
【図8】溝330の形状を示す図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示す。
【図9】本実施の形態の電池電源装置を搭載した車両駆動システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図9は本実施の形態の電池電源装置を搭載した車両駆動システムを示すブロック図である。図9に示す駆動システムは、電池モジュール100、電池モジュール100を監視する電池監視装置101、電池モジュール100からの直流電力を3相交流電力に変換するインバータ装置220、車両駆動用のモータ230を備えている。モータ230は、インバータ装置220からの3相交流電力により駆動される。インバータ装置220と電池監視装置101とはCAN通信で結ばれており、インバータ装置220は電池監視装置101に対して上位コントローラとして機能する。また、インバータ装置220は、さらに上位の車両側コントローラ(不図示)からの指令情報に基づいて動作する。
【0009】
インバータ装置220は、パワーモジュール226と、MCU222と、パワーモジュール226を駆動するためのドライバ回路224とを有している。パワーモジュール226は、電池モジュール100から供給される直流電力を、モータ230を駆動するための3相交流電力に変換する。なお、インバータ装置220は、車両制動時にはモータ230をジェネレータとして動作させる。すなわち回生制動制御を行い、ジェネレータ運転により発電された電力を電池モジュール100に回生して電池モジュール100を充電する。
【0010】
なお、図示していないが、パワーモジュール226に接続される強電ラインHV+,HV−間には、約700μF〜約2000μF程度の大容量の平滑キャパシタが設けられている。強電ラインHV+に設けられた電池ディスコネクトユニットBDUには、リレーRL、プリチャージリレーRLP、抵抗RPREおよび電流センサSiが設けられている。インバータ装置220の動作開始状態では平滑キャパシタの電荷は略ゼロであり、リレーRLを閉じると大きな初期電流が平滑キャパシタへ流れ込み、リレーRLが融着して破損するおそれがある。この問題を解決するために、モータ230の駆動開始時に、プリチャージリレーRLPを開状態から閉状態にして平滑キャパシタを充電し、その後にリレーRLを開状態から閉状態として、電池モジュール100からインバータ装置220への電力の供給を開始する。平滑キャパシタを充電する際には、抵抗RPREを介して最大電流を制限しながら充電を行う。
【0011】
一方、モータ230を力行運転する場合、MCU222は上位コントローラの命令に従い、モータ230の回転子の回転に対して進み方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は、電池モジュール100から直流電力がパワーモジュール226に供給される。
【0012】
電池モジュール100は、後述する電池電源装置1を2つ直列接続したものである。各電池電源装置1は、直列接続された複数のセルを備えている。2つの電池電源装置1は、スイッチとヒューズとが直列接続された保守・点検用のサービスディスコネクトSDを介して直列接続されている。電池監視装置101は、主に各セル電圧の測定、総電圧の測定、電流の測定、セル温度およびセルの容量調整等を行う。そのために、セルコントローラとしてのIC1〜IC6が設けられている。各電池電源装置1内に設けられた複数のセルは、それぞれ3つのセルグループに分けられ、各セルグループ毎に一つのICが設けられている。
【0013】
IC1〜IC6は、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)PHを介してデイジーチェーン方式でマイコン30と通信を行い、セル電圧値読み取りや各種コマンド送信のための通信系602と、セル過充電検知情報のみを送信する通信系604とを備えている。図9に示す例では、通信系602は、上位側の電池電源装置1のIC1〜IC3に対する上位の通信経路と、下位側の電池電源装置1のIC4〜IC6に対する下位の通信経路とに分けられている。電池ディスコネクトユニットBDU内の電流センサSiの出力はマイコン30に入力される。電池モジュール100の総電圧および温度に関する信号もマイコン30に入力され、マイコン30のAD変換器(ADC)によって測定される。温度センサは各電池電源装置1内の複数箇所に設けられている。
【0014】
図1は電池電源装置1の外観斜視図である。電池電源装置は、二次電池(例えば、リチウムイオン電池)のセル2を複数備えた組電池を構成している。図1に示す例では、円筒形状のセル2が使用されているが、本発明は、円筒形に限らず、例えば角形セルを使用する電源装置にも適用することができる。略直方体形状の筐体3は、5つの筐体部材3a〜3eから構成されている。本実施の形態では、筐体部材3a〜3eは樹脂モールドにより形成されている。なお、筐体部材3a,3d,3eについては、導電材料を用いることも可能である。
【0015】
セルが収容される箱形の筐体部材3aの長手方向一方の端面には、冷却風取り入れ口300が形成されており、他方の端面には冷却風排出口301が形成されている。すなわち、筐体部材3aの内部には、長手方向に沿って冷却風通路が形成されている。なお、図1に示すセル配列では、セル2は筐体長手方向に一列設けられているが、例えば、セル2を2つ直列に並べたものを長手方向に並設しても良いし、また、上下二段以上に配列しても良い。
【0016】
各セル2は、セルが収容される筐体部材3a内において、電極が形成されている両端面が筐体部材3aの側面(筐体部材3b,3cが固定される面)に対向するような姿勢で配置されている。複数のセル2は、筐体部材3a内の冷却風通路に沿って一列に並ぶように配置されている。このように、冷却風の流れの方向に整列させることにより、各セル2の放熱効率の向上を図っている。
【0017】
筐体部材3aの側面側には、バスバー(不図示)が取り付けられたサイドプレートとして機能する筐体部材3b,3cが取り付けられる。各セル2は、バスバーによって接続される。各筐体部材3b、3cの外側には、筐体部材3b、3cのバスバーが露出しないように覆うカバーとしての筐体部材3d,3eがそれぞれ取り付けられている。
【0018】
筐体部材3aの上面には、セル2の温度を検出するための温度センサ4aと、冷却通路内の冷却風の温度を検出するための温度センサ4bが固定されている。温度センサ4a,4bの詳細は後述するが、温度センサ4a,4bは、筐体部材3aの外側から筐体内部に挿入するように装着され、上面に固定される。挿入された温度センサ4a,4bの先端部分には温度検出部が設けられている。温度センサ4a,4bのハーネス5は、電池状態を監視する不図示の制御装置に接続される。
【0019】
筐体部材3aの上面には、温度センサ4a,4aのハーネス5を這い回すための溝330が形成されている。図1に示す例では、図8(a)のように筐体部材3aの外表面を窪ませて、溝330を形成した。しかし、図8(b)に示すように一対の凸部331a.331bを筐体部材3aの外表面上に立設させることで、溝330を形成するようにしても良い。なお、図1では溝330を筐体部材3aに形成しているが、溝330はハーネス5の這い回しの形態に応じて設けられるので、筐体部材3aに限らず、筐体部材3b〜3eにも適宜形成される。
【0020】
図2は温度センサ4a(4b)の詳細を示す図である。なお、温度センサ4bは温度センサ4aと全く同一構造を有している。図2において、(a)は温度センサ4aの正面図、(b)は温度センサ4aの平面図、(c)はA−A断面図である。図4(a)に示すように、温度センサ4aは棒状をしており、先端部401、胴部402、ヘッド部403に区分される。先端部401および胴部402の横断面形状は円形であるが、ヘッド部のそれは絡正方形を成している。先端部401の外径は、胴部402の外径よりも小さく設定されている。胴部402の上端側の外周面には、凸部404が複数形成されている。
【0021】
図2(c)のA−A断面に示すように、温度センサ4aは、穴405が形成されたケーシング400の内部にサーミスタ素子410を収納したものである。サーミスタ素子410は、ケーシング400の先端部401に収納されている。サーミスタ素子410のハーネス5は胴部402内を通って、ヘッド部403の側方に引き出されている。先端部401および胴部402においてはケーシング400の肉厚が薄くなっており、サーミスタ素子410が収められた穴405の内部には、充填材412が充填されている。ケーシング400は、良熱伝導性であることが望ましく電気的絶縁材(例えば、PBT(Polybutylene terephthalate))で形成される。また、充填材412も良熱伝導性の材料が望ましく、例えばエポキシ樹脂が用いられる。
【0022】
図3は、温度センサ4a,4bの取り付け構造を説明する図であり、(a)は平面図、(b)はB−B断面図である。なお、図3(a)においては、筐体部材3aの構造が分かりやすいように温度センサ4a,4bの図示を省略するとともに、筐体部材3aの一部を破断面とした。筐体部材3aの外周面には、図3(b)に示すように凹部302および凸部303が形成されている。凹部302には温度センサ4aを取り付けるための貫通孔302aが形成されており、凸部303には温度センサ4bを取り付けるための貫通孔303aが形成されている。貫通孔302a,303aの径寸法は同一であって、図2(a)に示す胴部402の径寸法d1よりも大きく、凸部404における径寸法d2よりも小さく設定されている。
【0023】
温度センサ4aを筐体部材3aに取り付ける際には、温度センサ4aの先端部401に、良熱伝導性の弾性材で形成されたキャップ6が予め被せられ、その後、筐体部材3aの外側から貫通孔302aに挿入される。このとき、温度センサ4aの凸部404における外径d2は貫通孔302aの内径よりも大きいので、ケーシング400のヘッド部403の下面が凹部302の底面に当接するまで、温度センサ4aを筐体内側に押し込むことで、凸部404および貫通孔302aの一方または両方が変形して嵌合する。その結果、温度センサ4aが筐体部材3aに固定されることになる。温度センサ4bの固定構造も同様である。
【0024】
温度センサ4aを押し込んで貫通孔302aに固定すると、先端部401がセル2に当接する。この場合、先端部401にキャップ6が装着されているので、キャップ6を介してセルのケース側面に当接することになる。なお、キャップ6は必ずしも必要ではないが、弾性材で形成されたキャップ6は容易に変形することができるので、セル2の組み付け誤差等によって先端部401とセル2との間に位置誤差が生じた場合でも、その誤差をキャップ6の変形で吸収することができる。また、電池電源装置1を車両に搭載した場合、車両振動に伴ってセル2と先端部401との相対位置が微妙に変化することがあるが、そのような変化もキャップ6の変形により吸収することができる。その結果、先端部401とセル2との熱的接触状態を良好に保つことができる。なお、キャップ6の材料には、例えば、シリコンゴム等が用いられる。
【0025】
また、図3(b)からも分かるように、温度センサ4aを取り付ける貫通孔302aの位置は、冷却風の流れに関して、円筒状セル2の中心軸よりも風下側に距離Lだけずれて設けられている。このように配置することで、図3(b)に示すように、温度センサ4aの先端部401は破線7よりも下側に位置するようになる。破線7はセル側面の最上部を通る水平線であり、この破線7よりも下側は冷却風に対してセル2の影(背面側)に入る。そのため、図3(b)のように、この領域に先端部401が配設されるように構成することで、温度計測に対する冷却風の影響を低減することができる。従来のように、セル表面にセンサ素子部を接着するような構成の場合、上述したような車両振動に伴う取り付け状態の変化によって測定精度が低下したりするが、本実施の形態ではそのような不都合を排除することができる。
【0026】
一方、冷却風通路304内の温度を検出する温度センサ4bは、凸部303に形成された貫通孔303aに取り付けられる。取り付け方法は上述した温度センサ4aの場合と同様である。温度センサ4bの場合、温度センサ4aのように先端部401がセル2の側面近傍に達するほど筐体内に挿入する必要がないので、凸部303を設けることで、冷却風通路内の適切な位置に先端部401が挿入されるようにしている。また、先端部401にキャップ6を被せる必要もない。
【0027】
図3に示した取り付け構造では、温度センサ4aの先端部401とセル2との間の位置誤差を、キャップ6の変形により吸収するような構成としたが、同様な機能を有する別の形態を図4に示す。図4の(a)は図3(a)の場合と同様の平面図であり、(b)はC−C断面図である。図3に示す構成と比較した場合、温度センサ4aにキャップ6に代えて良熱伝導材9が充填された断熱ケース8を設けた点が異なり、その他の構成は、図3に示す構成と同様である。
【0028】
断熱ケース8は、例えばEPDM(Ethylene Propylene Methylene Linkage)等のような断熱部材で形成されており、予め筐体部材3a〜3cのいずれかに固定されている。図4に示す例では、断熱ケース8は、筐体部材3cの内側(筐体内部側)にビス固定されている。断熱ケース8には、温度センサ4aの先端部401が挿入される孔800が形成されている。断熱ケース8は、筐体部材3aに固定された温度センサ4aの先端部401の位置に孔800の中央が位置するように、筐体部材3cに固定されている。また、断熱ケース8の、セル2の側面に対向する面801は、セル2の側面と同様の曲面を成している。
【0029】
先端部401が挿入された孔800内には、良熱伝導材9が充填されている。その結果、先端部401とセル2との隙間があった場合でも、その隙間に良熱伝導材9が充填されるため、先端部401とセル2との間の熱伝達性能の向上が図れる。さらに、良熱伝導材9は、先端部401の全体を覆うとともに、セル2の側面に接触しているので、セル2→良熱伝導材9→先端部401の経路での熱伝達量が増加し、より正確な温度計測を行うことができる。
【0030】
また、温度計測部である先端部401を断熱部材で形成された断熱ケース8で覆うことにより、先端部401から冷却風への熱放散(または、熱侵入)を低減することができ、温度計測精度の向上を図ることができる。図4(b)に示す構成では、断熱ケース8は、冷却風の流れに対してセル2の背後に配置されているので、冷却風の影響を低減できると共に、断熱ケース8が障害となって冷却風の流れを乱すのを低減することができる。なお、図3(b)に示すようなキャップ6が装着された先端部401の場合も、断熱ケース8を設けることで(ただし良熱伝導材9は充填されない)、同様に冷却風の影響を低減することができる。
【0031】
図5〜図7は、温度センサの組み付け手順を説明する図である。図5(a)に示す工程では、筐体部材3cに断熱ケース8を固定する。筐体部材3cには、セル2を収納する開口であるセル収納部が形成されている。次いで、筐体部材3b、3cを筐体部材3aに固定した後に、図5(b)に示すように、セル2が筐体部材3cのセル収納部320に収納されるように、セル2を筐体3内に設置する。図6(a)に示すように、次に、筐体部材3d,3eを取り付ける。その後、温度センサ4aを取り付けるための貫通孔302aを利用して、断熱ケース8の孔800内に良熱伝導材9を充填する。例えば、図6(b)に示すように、注入管810を貫通孔302aから筐体内に挿入して、良熱伝導材9を充填する。
【0032】
その後、図7に示すように、温度センサ4aを筐体3の外側から貫通孔302aに挿入し、貫通孔302aに固定する。その結果、先端部401は断熱ケース8の孔800内に収納され、先端部401とセル2との間に良熱伝導材9が隙間無く介在するようになる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態では、冷却風通路に配置された複数のセル2に対して、温度センサ4aを、筐体壁部に形成されたセンサ固定用貫通孔302aに筐体外側から挿入して固定し、センサ部(401〜403)の先端部分(先端部401)をセル2の被計測部位に熱的に接触させるようにした。そのため、従来のように筐体内部においてセンサ素子部をセル表面に固着させる作業を必要とせず、センサ取り付けを容易に行うことができる。さらに、センサ部の筐体外側に露出している部分(ヘッド部403)から引き出され、筐体3(筐体部3a)の壁部の外周面に形成された配線這い回し用溝330の内部に、センサ配線(ハーネス5)を配設するようにしたので、従来のように筐体内に配線を這い回す必要がなく、センサ取り付け作業の効率化を図ることができる。
【0034】
また、センサ部の先端部分(先端部401)とセル2の被計測部位との隙間を埋めるように良熱伝導性部材(良熱伝導材9やキャップ6)を設けたことにより、温度センサ4aと被計測部位との間の熱抵抗が小さくなり、精度良く温度計測を行うことができる。
【0035】
特に、良熱伝導性部材を、センサ部の先端部分(先端部401)を覆うように装着されるキャップ6とすることにより、良熱伝導性部材を先端部401とセル2の被計測部位との間に容易に配置することができる。また、キャップ6を、弾性を有する良熱伝導性材料で形成したことにより、組み立て誤差や振動等により隙間寸法が変化しても、その変化に容易に追従できることができ、良好な熱接触状態を維持することができる。
【0036】
また、センサ部の先端部分(先端部401)を冷却風から遮蔽するカバー(断熱ケース8)を、先端部分の周囲に隙間を介して設けることにより、温度計測に対する冷却風の影響を抑えることができ、温度計測精度の向上を図ることができる。
【0037】
さらにまた、センサ部の先端部(先端部401)およびセル2の被計測部位を冷却風から遮蔽する断熱性カバー(断熱ケース8)を設け、断熱性カバーと先端部および被計測部位との隙間に良熱伝導性の隙間充填材(良熱伝導材9)を充填したことにより、センサ4とセル2との間の熱抵抗を小さくできるとともに、冷却風の影響を抑えることができ、高精度な温度計測を行うことが出来る。
【0038】
さらに、筐体3における貫通孔302aの形成位置は、貫通孔302aに挿入された温度センサ4aの先端部分(先端部401)が、測定対象セル2によって冷却風が遮蔽される領域に挿入されるように設定されている。そのため、温度計測に対する冷却風の影響をさらに低減することができる。
【0039】
また、温度センサ4aを、サーミスタ(サーミスタ素子410)を良熱伝導性材料から成る有底筒状のケース(ケーシング400)の底部近傍に配置し、サーミスタ素子410とケーシング400との隙間に良熱伝導性のケース内充填材(充填材412)を充填した構成とすることにより、筐体4aの貫通孔302aへの取付が容易となる。
【0040】
さらに、ケース外周面に複数の凸部404を設け、それらの凸部404をセンサ固定用貫通孔302aと嵌合させることで、ケース(ケーシング400)を貫通孔302aにお呈するようにしたので、温度センサ4aの筐体3aへの固定を非常に簡単に行うことができ、組み立て作業性の向上を図ることが出来る。
【0041】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1:電池電源装置、2:セル、3:筐体、3a〜3e:筐体部材、4a,4b:温度センサ、5:ハーネス、6:キャップ、8:断熱ケース、9:良熱伝導材、300:冷却風取り入れ口、301:冷却風排出口、302a,303a:貫通孔、330:溝、400:ケーシング、401:先端部、402:胴部、403:ヘッド部、404:凸部、412:充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却風取り入れ口を有する冷却風通路が形成された筐体と、前記冷却風通路に配置された複数のセルと、前記セルの温度を検出する温度センサとを備えた電池電源装置であって、
前記筐体は、筐体壁部に形成されたセンサ固定用貫通孔と、前記筐体壁部の外周面に形成された配線這い回し用の溝とが形成され、
前記温度センサは、前記センサ固定用貫通孔に筐体外側から挿入されるように固定されて、先端部分が前記セルの被計測部位に熱的に接触するセンサ部と、該センサ部の筐体外側に露出している部分から引き出され、前記筐体壁部の外周面に形成された溝の内部に配設される配線と、を有することを特徴とする電池電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池電源装置において、
前記センサ部の先端部分と前記被計測部位との隙間を埋めるように良熱伝導性部材を設けたことを特徴とする電池電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池電源装置において、
前記良熱伝導性部材は、前記センサ部の先端部分を覆うように装着され、弾性を有する良熱伝導性材料で形成されたキャップ形状部材であることを特徴とする電池電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池電源装置において、
前記センサ部の先端部分を冷却風から遮蔽するカバーを、前記先端部分の周囲に隙間を介して設けたことを特徴とする電池電源装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電池電源装置において、
前記センサ部の先端部分および前記セルの被計測部位を冷却風から遮蔽する断熱性カバーと、
前記先端部および前記被計測部位と前記断熱性カバーとの隙間の前記良熱伝導性部材を、良熱伝導性充填材としたことを特徴とする電池電源装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池電源装置において、
前記筐体における前記センサ固定用貫通孔の形成位置は、該センサ固定用貫通孔に挿入された前記センサ部の先端部分が、測定対象セルによって冷却風が遮蔽される領域に挿入されるように設定されていることを特徴とする電池電源装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池電源装置において、
前記センサ部は、
良熱伝導性材料から成る有底筒状のケースと、
前記ケース内に底部近傍に配置されたサーミスタ素子と、
前記サーミスタ素子と前記ケースとの隙間に充填された良熱伝導性のケース内充填材と、を備え、
前記有底筒状のケースの開口部から前記サーミスタ素子の配線が引き出されていることを特徴とする電池電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電池電源装置において、
前記ケースは、前記筐体壁部に形成されたセンサ固定用貫通孔と嵌合して該ケースを前記センサ固定用貫通孔に固定する複数の凸部を、ケース外周面に有することを特徴とする電池電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−96507(P2011−96507A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249160(P2009−249160)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】