説明

電池

【課題】曲率が大きい電極群であっても電極の跳ねの影響がない電極群を提供することを目的とするものである。
【解決手段】帯状の正極集電体に正極合剤を塗布してなる正極4と、帯状の負極集電体に負極合剤を塗布してなる負極2と、前記正極4及び負極2の間に存するセパレータ6と、を積層し捲回されてなる電極群を金属ケース8内部に収納した電池において、前記電極群の最外周の曲率半径が2.0mm以下であり、前記正極4の巻き終端部が、前記正極合剤が正極集電体に塗布されていない未塗工部を有することを特徴とする電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状やピン形状をした小型の捲回式電池に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信に代表されるようなコードレス化、ポータブル化された電子機器では、小型化、軽量化に伴い、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が広く使用されている。また、近年補聴器や電子メガネといった機器への搭載が見込まれ始め、さらなる小型化、軽量化が要望されている。
【0003】
しかしながら、現在主流の円筒形リチウムイオン二次電池は、最小でも直径14mm程度のサイズであり、補聴器や電子メガネなどの機器への搭載は難しい。また、コイン形リチウム二次電池では円筒形リチウム二次電池と比較して電池容量が小さい、負荷特性が劣るといった課題があり、上記の機器への搭載が難しい。このことから、円筒形リチウムイオン二次電池のような負荷特性を有し、コイン形リチウム二次電池のような小型で、かつ電池容量の大きいリチウムイオン二次電池が必要となっている。
【0004】
円筒形リチウムイオン二次電池において、上記のような機器へ搭載できるサイズのものとしては、特許文献1に小型の円筒形(ピン形)リチウムイオン二次電池が開示されている。この電池は、負極ピンにセパレータを挟んだ正極板および負極板を巻き付けて形成した捲回式電池であり、負極ピンの頭部がそのまま負極端子として使用される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−95499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるような、正極と負極とセパレータを捲回して得られる電極群の直径が小さくなると、正極の巻き終端部が図8に示すように最外周の負極を押し上げて跳ね上がってしまい、電極群の群径の安定性、電極の反応ムラといった従来の捲回式電池では起こらなかった課題が生じることがわかった。これは従来の捲回式電池と比較して曲率が非常に大きいため、柔軟性の低い正極を湾曲させて保持することが難しいためである。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電極群の群径が安定しており、それに伴い安定した反応性を備えた電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、帯状の正極集電体に正極合剤を塗布してなる正極と、帯状の負極集電体に負極合剤を塗布してなる負極と、前記正極及び負極の間に存するセパレータと、を積層し捲回されてなる電極群を金属ケース内部に収納した電池において、前記電極群の最外周の曲率半径が2.0mm以下であり、前記正極の巻き終端部が、前記正極合剤が正極集電体に塗布されていない未塗工部を有することを特徴とする電池である。
【0009】
この構成によると、正極の巻き終端部に正極合剤が無く、柔軟性の高い正極集電体のみ
となるため、正極の巻き終端部が湾曲しやすくなって、跳ね上がりがなくなり、電極群の群径を安定させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電池は、電極群の群径のバラつき、電極の反応ムラの抑制が可能となって高容量の電池を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池の模式的な断面図
【図2】本発明の一実施の形態に係る電池の捲回前の電極群を示す図
【図3】本発明の一実施の形態に係る電池の正極の断面図
【図4】従来の電池の正極の平面図
【図5】本発明の一実施の形態に係る電池の正極の平面図
【図6】本発明の他の実施の形態に係る電池の正極の平面図
【図7】本発明のさらに他の実施の形態に係る電池の正極の平面図
【図8】図4の正極を用いて作製した電極群における正極の巻き終端部の状態を示した図
【図9】図5の正極を用いて作製した電極群における正極の巻き終端部の状態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による第1の発明は、帯状の正極集電体に正極合剤を塗布してなる正極と、帯状の負極集電体に負極合剤を塗布してなる負極と、前記正極及び負極の間に存するセパレータと、を積層し捲回されてなる電極群を金属ケース内部に収納した電池において、前記電極群の最外周の曲率半径が2.0mm以下であり、前記正極の巻き終端部が、前記正極合剤が正極集電体に塗布されていない未塗工部を有することを特徴とする電池である。この構成によると、正極の巻き終端部に正極合剤がなく、柔軟性の高い正極集電体のみとなるため、正極の巻き終端部が湾曲しやすくなって、跳ね上がりがなくなり、電極群の群径を安定化させることができる。
【0013】
本発明による第2の発明は、上記未塗工部の幅が正極の最外周長の5%以上50%以下であることを特徴とする電池である。未塗工部の幅を上記範囲に設定することにより、電池容量を低下させることなく、正極に適度に柔軟性を持たせることができる。
【0014】
本発明による第3の発明は、上記正極の未塗工部がセパレータに固定されていることを特徴とする電池である。この構成によると、正極の巻き終端部がより確実に湾曲させられ正極の巻き終端部の跳ね上がりを防ぐことができる。
【0015】
本発明による第4の発明は、上記正極の未塗工部とセパレータとを固定する手段が粘着テープであることを特徴とする電池である。この構成によると、正極の巻き終端部がより確実に湾曲させられ正極の巻き終端部の跳ね上がりを防ぐことができる。
【0016】
本発明による第5の発明は、上記正極の未塗工部とセパレータとを固定している粘着テープが正極の未塗工部全面を覆っていることを特徴とする電池である。この構成によると、粘着テープが正極の幅方向の全体にわたって固定することができるので、電極群をケースに挿入する際、電極群の最外周部がケースに当たることなくよりスムーズな挿入が可能となる。また、未塗工部の正極集電体の片面を粘着テープが覆うことになるので、未塗工部の正極集電体と該正極集電体の外側に位置する負極とのショート防止に対しても効果がある。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る電池の模式的な断面を図1に示す。本実施の形態に係る電池は、略円柱形であり、有底円筒形の金属ケース8の中に、負極2と正極4とが、セパレータ6を介して重ねられ捲回されて収められている。すなわち、負極2と正極4とセパレータ6とを捲回して電極群が形成されている。図示はしていないが、金属ケース8の中には非水電解質も収められている。
【0019】
負極2と電気的に接続された負極集電リード22は、負極端子10を兼ねる金属ケース8の側壁内面に接合されて(溶接点26)電気的に接続されている。一方、正極4と電気的に接続された正極集電リード24は、正極端子14を兼ねる封口部材12に接合されて電気的に接続されている。封口部材12は金属ケース8の開口部分を密閉する部材であって、封口部材12と金属ケース8との間にシール部材16を介在させて金属ケース8の開口部分がかしめつけられている。また、捲回電極群と封口部材12との間には、絶縁性の部材からなるリング状の絶縁部材28が配置されて負極側と正極側との絶縁を確実にしている。また、電池外部に出ている封口部材12には絶縁素材からなる有孔円板30の孔部が嵌め込まれて、金属ケース8との絶縁を確実にしている。
【0020】
図2に示すように、負極2は金属箔からなる負極集電体20に負極活物質を載せてなっており、負極集電体20には負極集電リード22が接合されている。また正極4も同様に正極集電体58に正極活物質を載せてなっており、正極集電体58に正極集電リード24が接合されている。負極2と正極4との間にセパレータ6を介在させて、巻芯50を中心としてこれらを捲回して捲回電極群を形成する。捲回後には、巻き終わりの部分を固定テープ54でずれないように固定し、巻芯50は抜き取って金属ケース8の中に入れる。このとき、負極集電リード22、正極集電リード24ともに金属ケース8の開口部側に存するように入れる。
【0021】
図5は正極4の平面図を示したものである。正極4の上部の一部には正極合剤62が無く、正極集電体58に正極集電リード24が接合されている。また、巻き終端部(図の左端)にも正極合剤が塗布されていない未塗工部63を有している。図3は、図5に示す正極4の位置X−Yでの断面を示したものである。正極4は正極集電体58の両面に正極合剤が塗布されている。巻き終端部は正極合剤が塗布されていない未塗工部63を有している。このような未塗工部63を有していると、正極の巻き終端部に正極合剤が無く、柔軟性の高い正極集電体58のみとなるため、正極の巻き終端部が湾曲しやすくなって、跳ね上がりがなくなり、図9に示すように、巻き終端部の外側に位置するセパレータおよび負極を持ち上げることなく電極群の群径を安定させることができる。
【0022】
上記正極の未塗工部63の外周側に位置し、対向する負極については、負極合剤が塗布されていなくても良いが、負極合剤があるほうが、負極の剛性が高まり、正極の巻き終端部の跳ね上がりを押さえる力が増すので好ましい。
【0023】
この未塗工部63の幅は正極の最外周長の5%以上50%以下であることが好ましい。5%以下であると、正極に柔軟性をもたらす効果が小さい。また50%以上設けると正極合剤が少なすぎるため、電池容量が低下するので好ましくない。
【0024】
図6は、正極合剤が無い正極の巻き終端部の正極集電体58に粘着テープ56を設けた状態の平面図である。図6に示すように粘着テープ56によって正極4を、正極の巻き終端部の下部に位置するセパレータ6に固定することによって、より確実に正極の巻き終端部を湾曲させることができ、電極群の群径を安定化させることができる。粘着テープ56
の材質は、正極、負極、セパレータおよび非水電解質に対して安定であれば問題なく、プロピレン製の粘着テープ等が用いられる。固定手段としては粘着テープ以外に、粘着剤で正極集電体58とセパレータ6を固定することも可能である。粘着剤としては、正極合剤62に含まれる粘着剤を使用することが好ましい。
【0025】
また図7に示すように粘着テープ56は剥き出しになった正極集電体58の全面を覆う構成とすることが好ましい。粘着テープによって正極の幅方向の全体にわたって固定することができるので、電極群をケースに挿入する際、電極群の最外周部がケースに当たることなくよりスムーズな挿入が可能となる。また、未塗工部63の正極集電体58の片面を粘着テープが覆うことになるので、未塗工部63の正極集電体58と該正極集電体58の外側に位置する負極とのショート防止に対しても効果がある。
【0026】
以下に、本実施形態に係る電池を構成する正極4、負極2、セパレータ6、及び非水電解質のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0027】
まず、正極について詳細に説明する。
【0028】
−正極−
正極4を構成する正極集電体58及び正極合剤62のそれぞれについて順に説明する。
【0029】
正極集電体58には、多孔性構造又は無孔性構造の長尺の導電性基板が使用される。正極集電体58の材料は、主としてアルミニウムからなる金属箔が使用される。正極集電体58の厚さは、特に限定されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であればさらに好ましい。このように正極集電体58の厚さを上記範囲内とすることによって、正極4の強度を保持しながら正極4の重量を軽量化できる。
【0030】
以下に、正極合剤62に含まれる正極活物質、結着剤、及び導電剤のそれぞれについて順に説明する。
【0031】
<正極活物質>
正極活物質としてはリチウム含有複合酸化物が好ましく、例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−x、LiCo1−x、LiNi1−x、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMn、LiMnMO、LiMePO、LiMePOF(但し、M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBのうちの少なくとも1つ、xは0<x<1であり、Me=Fe、Mn、Co、Niから選択される少なくとも1種を含む金属元素)が挙げられる、又はこれら含リチウム化合物の一部元素が異種元素で置換されたものが挙げられる。また、正極活物質として、金属酸化物、リチウム酸化物又は導電剤等で表面処理された正極活物質を用いても良く、表面処理としては例えば疎水化処理が挙げられる。
【0032】
正極活物質の平均粒子径は、5μm以上20μm以下であることが好ましい。正極活物質の平均粒子径が5μm未満であると、活物質粒子の表面積が極めて大きくなって正極板を充分にハンドリング可能な程度の接着強度を満たす結着剤量が極端に多くなる。このため極板あたりの活物質量が減少することになり容量低下してしまう。一方、20μmを超えると、正極集電体58に正極合剤スラリーを塗工する際に、塗工スジが発生し易い。
【0033】
<結着剤>
結着剤としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ
プロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム又はカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。または、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸及びヘキサジエンから選択された2種以上の材料を共重合させた共重合体、又は選択された2種以上の材料を混合した混合物が挙げられる。
【0034】
上記に列挙した結着剤の中でも、特にPVDF及びその誘導体は、非水電解質二次電池内において化学的に安定であり、正極合剤層と正極集電体58とを充分に結着させると共に、正極合剤層を構成する正極活物質と、結着剤と、導電剤とを充分に結着させるため、良好な充放電サイクル特性及び放電性能が得られる。そのため、本実施形態の結着剤として、PVDF又はその誘導体を用いることが好ましい。加えて、PVDF及びその誘導体は、コスト的にも安価であるため好ましい。なお、結着剤としてPVDFを用いた正極を作製するには、正極の作製の際に、例えばPVDFをNメチルピロリドンに溶解させて用いる場合、又は粉末状のPVDFを正極合剤スラリー中に溶解させて用いる場合が挙げられる。
【0035】
<導電剤>
導電剤としては、例えば天然黒鉛若しくは人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック若しくはサーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維若しくは金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛若しくはチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、又はフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が挙げられる。
【0036】
次に、負極について詳細に説明する。
【0037】
−負極−
負極2を構成する負極集電体20及び負極合剤60のそれぞれについて順に説明する。
【0038】
負極集電体20には、多孔性構造又は無孔性構造の長尺の導電性基板が使用される。負極集電体20の材料としては、例えばステンレス鋼、ニッケル、又は銅等が挙げられる。負極集電体20の厚さは、特に限定されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であればさらに好ましい。このように負極集電体20の厚さを上記範囲内とすることによって、負極2の強度を保持しながら負極2の重量を軽量化できる。
【0039】
負極合剤60は、負極活物質以外に、結着剤を含んでいることが好ましい。
【0040】
負極集電リード22は、材質としてはニッケル、鉄、ステンレス鋼または銅などを好ましく挙げることができる。厚さは10μm以上120μm以下であることが好ましく、20μm以上80μm以下であればさらに好ましい。形状は特に限定されるものではなく、負極集電体20との溶接しろと外装ケースとの溶接しろとを備えた短冊状、またはその短冊形状に内接する楕円、多角形などを挙げることができ、小さな圧力で湾曲する特性を有する。
【0041】
以下に、負極合剤層に含まれる負極活物質について説明する。
【0042】
<負極活物質>
負極活物質としてはリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質が用いられ、例えば金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、珪素化合物、錫化合物又は各種合金材料等が挙げられる。これらのうち炭素材料の具体例としては、例えば各種天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛又は非晶質炭素等が挙げられる。
【0043】
ここで、珪素(Si)若しくは錫(Sn)等の単体、又は珪素化合物若しくは錫化合物は容量密度が大きいため、負極活物質として、例えば珪素、錫、珪素化合物、又は錫化合物を用いることが好ましい。これらのうち珪素化合物の具体例としては、例えばSiOx(但し0.05<x<1.95)、又はB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N及びSnからなる元素群から選択された少なくとも1種以上の元素でSiの一部を置換した珪素合金、若しくは珪素固溶体等が挙げられる。また錫化合物の具体例としては、例えばNiSn、MgSn、SnO(但し0<x<2)、SnO、又はSnSiO等が挙げられる。なお、負極活物質は、上記に列挙された負極活物質のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
さらには負極集電体20上に上記の珪素、錫、珪素化合物、又は錫化合物を薄膜状に堆積させた負極も挙げられる。
【0045】
次に、セパレータについて詳細に説明する。
【0046】
−セパレータ(多孔質絶縁体)−
正極4と負極2との間に介在されるセパレータ6としては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度と絶縁性とを兼ね備えた微多孔薄膜、織布又は不織布等が挙げられる。特に、セパレータ6として、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンを用いることが好ましい。ポリオレフィンは耐久性に優れ且つシャットダウン機能を有するため、リチウムイオン二次電池の安全性を向上させることができる。
【0047】
セパレータ6の厚さは、一般的に10μm以上300μm以下であるが、10μm以上40μm以下であることが好ましい。また、セパレータ6の厚さは、15μm以上30μm以下であることがより好ましく、10μm以上25μm以下であればさらに好ましい。また、セパレータ6として微多孔薄膜を用いる場合には、微多孔薄膜は、1種の材料からなる単層膜であってもよく、1種又は2種以上の材料からなる複合膜又は多層膜であってもよい。また、セパレータ6の空孔率は、30%以上70%以下であることが好ましく、35%以上60%以下であればさらに好ましい。ここで空孔率とは、セパレータの全体積に対する孔部の体積の比率を示す。
【0048】
次に、非水電解質について詳細に説明する。
【0049】
−非水電解質−
非水電解質としては、液状、ゲル状又は固体状の非水電解質を使用できる。
【0050】
液状非水電解質(非水電解液)は、電解質(例えばリチウム塩)と、この電解質を溶解させる非水溶媒とを含む。
【0051】
ゲル状非水電解質は、非水電解質と、この非水電解質を保持する高分子材料とを含む。
この高分子材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、又はポリビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
【0052】
固体状非水電解質は、高分子固体電解質を含む。
【0053】
ここで、非水電解液について、以下に詳細に説明する。
【0054】
電解質を溶解させる非水溶媒としては、公知の非水溶媒を使用できる。この非水溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、又は環状カルボン酸エステル等が用いられる。ここで環状炭酸エステルの具体的としては、例えばプロピレンカーボネート又はエチレンカーボネート等が挙げられる。また、鎖状炭酸エステルの具体的としては、例えばジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネート等が挙げられる。また、環状カルボン酸エステルの具体例としては、例えばγ−ブチロラクトン又はγ−バレロラクトン等が挙げられる。非水溶媒は、上記に列挙された非水溶媒のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
非水溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、又はイミド塩類等が用いられる。ここでホウ酸塩類の具体例としては、例えばビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、又はビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等が挙げられる。またイミド塩類の具体例としては、例えばビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CFSONLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CFSO)(CSO))、又はビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((CSONLi)等が挙げられる。電解質は、上記に列挙された電解質のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5mol/m以上2mol/m以下であることが好ましい。
【0057】
非水電解液は、電解質及び非水溶媒以外に、例えば負極上で分解してリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成し、電池の充放電効率を高める添加剤を含んでいてもよい。このような機能を持つ添加剤としては、例えばビニレンカーボネート(VC;vinylene
carbonate)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC;vinyl ethylene carbonate)、又はジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。添加剤は、上記に列挙された添加剤のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、上記に列挙された添加剤のうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。なお、添加剤としては、上記に列挙された添加剤の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたものであってもよい。
【0058】
さらに、非水電解液は、電解質及び非水溶媒以外に、例えば過充電時に分解して電極上に被膜を形成し、電池を不活性化させる公知のベンゼン誘導体を含んでいてもよい。このような機能を持つベンゼン誘導体としては、フェニル基及び該フェニル基に隣接する環状化合物基を有するものが好ましい。ここでベンゼン誘導体の具体例としては、例えばシクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、又はジフェニルエーテル等が挙げられる。また、ベンゼン誘導体に含まれる環状化合物基の具体例としては、例えばフェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、又はフェノキシ基等が挙げられる。ベンゼン誘導体は、上記に列挙されたベンゼン誘導体のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、ベンゼン誘導体の非水溶媒に対する含有量は、非水溶媒全体の10vol%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下にリチウムイオン二次電池を具体例に挙げ、本発明の実施例を説明する。
【0060】
(実施例1)
−正極の作製方法−
正極4の作製方法は次に示す通りである。まず正極活物質としてLiNiOを、結着剤としてPVDFを、導電剤としてアセチレンブラックをN−メチル−2ピロリドン(NMP)に混合させて正極合剤スラリーを調製した。ここで、正極活物質と結着剤と導電剤の配合比は体積比率で100:3:10である。次に、得られた正極合剤スラリーを、アルミニウム箔からなる正極集電体58の表面に塗布して乾燥させた。次に、表面に正極合剤スラリーが塗布乾燥された正極集電体58を圧延(圧縮)し、0.119mmの厚さを有する正極(正極板)を作製した。
【0061】
図5に示すように、長さ19mm、幅30mm、上端3mmを未塗工部とした正極の巻き終端部には、正極合剤の未塗工部63が幅1mmにわたって存在するように形成した。
【0062】
−負極の作製方法−
負極2の作製方法は次に示す通りである。まず負極活物質として天然黒鉛を、結着剤としてスチレンブタジエン系ゴムを純水に混合させて負極合剤スラリーを調製した。次に、得られた負極合剤スラリーを、負極集電体20の表面に塗布して乾燥させた。次に、表裏面に負極合剤スラリーが塗布乾燥された負極集電体20を圧延し、0.145mmの厚さを有する負極を作製した。
【0063】
−電池の製造方法−
電池の製造方法は次に示す通りである。まず、正極上部の正極集電体58にアルミニウム製の正極集電リード24を取り付け、負極集電体20にニッケル製の負極集電リード22を取り付けた。その後、正極4と負極2とを、それらの間にセパレータ6を介して巻芯50を中心として捲回し、電極群を作製した。正極の巻き終端部の巻き外側には最外周の負極が配置されている。そして負極の巻き終わりの部分は固定テープ54でずれないように固定した。
【0064】
次に、巻芯50を抜き取った捲回電極群を金属ケース8に収納した。この時、負極集電リード22および正極集電リード24が金属ケース8の開口部側に来るように収納した。その後、負極集電リード22を金属ケース8に溶接し、絶縁部材28を捲回電極群の上に配置した。そして、正極集電リード24を封口部材12に溶接した。その後、減圧方式により、金属ケース8内に非水電解液を注液した。最後に、金属ケース8の開口端部をシール部材16を介して封口部材12にかしめ、有孔円板30を封口部材12に嵌め込むことにより、リチウムイオン二次電池を製造した。この電池を実施例1の電池とする。
【0065】
(実施例2)
図6に示すように、巻き終端部の未塗工部63の中央部に粘着テープ56を接着し、セパレータ6に固定した以外は実施例1と同様の構成の電極群を作製し、この電極群を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。この電池を実施例2の電池とする。
【0066】
(実施例3)
図7に示すように、巻き終端部の未塗工部全面に粘着テープ56を接着し、セパレータ6に固定した以外は実施例1と同様の構成の電極群を作製し、この電極群を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。この電池を実施例3の電池とする。
【0067】
(比較例1)
図4に示すように、巻き終端部に未塗工部を設けなかった以外は実施例1と同様の構成の電極群を作製し、この電極群を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。この電池を比較例1の電池とする。
【0068】
上記の実施例1〜3および比較例1の電極群を各10個ずつ作製し、筒状電極群の上部、中央部、下部の3箇所の群径の最大値を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。またこれらの電極群を用いて作製したリチウムイオン二次電池の放電容量の平均値を、実施例1の電池を100として相対的に求め、表1に合わせて示した。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例1は比較例1より群径が小さくなっている。これは電極群の作製において正極の巻き終端部の跳ねが抑制されたことによる。しかしながら、接着テープを覆っていない部分に関しては跳ねが抑制できていない。
【0071】
実施例2は群径が電極群の全体が実施例1の接着テープ固定部分の群径と同じ寸法になっている。接着テープを正極未塗工部に全面覆うことでより効果を発揮できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にかかる電池は、電子メガネや補聴器などの小型の電子機器おいて特に有用である。
【符号の説明】
【0073】
2 負極
4 正極
6 セパレータ
8 金属ケース
10 負極端子
12 封口部材
14 正極端子
16 シール部材
20 負極集電体
22 負極集電リード
24 正極集電リード
26 溶接点
28 絶縁部材
30 有孔円板
50 巻芯
54 固定テープ
56 粘着テープ
58 正極集電体
60 負極合剤
62 正極合剤
63 未塗工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極集電体に正極合剤を塗布してなる正極と、帯状の負極集電体に負極合剤を塗布してなる負極と、前記正極及び負極の間に存するセパレータと、を積層し捲回されてなる電極群を金属ケース内部に収納した電池において、前記電極群の最外周の曲率半径が2.0mm以下であり、前記正極の巻き終端部が、前記正極合剤が正極集電体に塗布されていない未塗工部を有することを特徴とする電池。
【請求項2】
前記未塗工部の幅が正極の最外周長の5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記正極の未塗工部がセパレータに固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記正極の未塗工部とセパレータとを固定する手段が粘着テープであることを特徴とする請求項3記載の電池。
【請求項5】
前記正極の未塗工部とセパレータとを固定している粘着テープが前記正極の未塗工部の全面を覆う構成としたことを特徴とする請求項4記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−73796(P2013−73796A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212108(P2011−212108)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】