説明

電波受信装置及び電波受信システム

【課題】受信波の到来方向計測時に誤差要因となる偏波による影響を軽減して良好な計測精度で受信波の到来方向を計測する電波受信装置及び電波受信システムを得る。
【解決手段】偏波に対応した計測特性を有する、到来方向計測のための複数の測角テーブルをあらかじめ設定しておき、まず、受信波の電波諸元を取得し、これを検索キーにして、電波諸元と偏波情報とが関連づけられた偏波情報データベースを検索し、その偏波情報を推定する。そして、複数の測角テーブルの中から、この推定結果に対応した測角テーブルを選択するとともに、選択した測角テーブルを適用して受信波の到来方向を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波受信装置及び電波受信システムに係り、特に受信波の偏波情報に基づき計測特性を切替えながらその到来方向を計測する電波受信装置及び電波受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、受信波の到来方向を計測する従来の電波受信装置の一例を示すブロック図である。この従来の電波受信装置9は、例えば、レドーム(図示せず)を通して受信した各種の電波の到来方向をモノパルス測角等の手法によって計測し、その結果を表示するものであり、空中線部91、受信部92、電波到来方向計測部93、及び操作表示部94から構成されている。空中線部91は、例えば、和ビーム及び差ビーム等の到来方向を計測するためのビームパターンを有し、レドーム(図示せず)を通してそれぞれのビームパターンで到来する各種の電波を受信する。受信部92は、空中線部91の各ビームパターンでの受信信号のそれぞれに対して低雑音増幅、周波数変換、フィルタリング及び検波等の受信処理を施す。電波到来方向計測部93は、この受信処理されたそれぞれの信号の振幅及び/または位相を用いたモノパルス測角処理等の手法により受信波の到来方向を計測する。操作表示部94は、その計測結果を表示する。
【0003】
次に、この図7の電波受信装置の動作を、到来波に対する信号処理の流れに沿って説明する。まず、到来波は、レドームを通して、到来方向計測用のビームパターンを持った空中部91で受信され、受信信号として各ビームパターン毎に受信部92に送られる。受信部92には、各ビームパターンに対応させて受信処理系が設けられており、空中線部91からの受信信号は、各ビームパターン毎に受信処理されて電波到来方向計測部93に送出される。電波到来方向計測部93では、これら受信処理されたビームパターン毎の受信信号の振幅及び位相、またはこれらのどちらか一方を用いたモノパルス測角等の手法により、その到来方向が計測される。そして、その結果は操作表示部94に送出され、表示される。
【0004】
このような、受信波の到来方向を計測する受信処理装置の事例が、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された事例では、送信局から輻射される直線偏波の電波を受信してその到来方向の計測に加え、偏波面角度を計測するとともに、これら計測結果に基づいてアンテナを指向させる手法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−130138号公報(第17ページ、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、受信波の到来方向を計測する際には、上述したように、例えばモノパルス測角等、受信波の振幅情報及び位相情報を用いた計測処理が行なわれる。これら振幅情報及び位相情報は、受信波の偏波の影響を受けやすいので、偏波に対応した計測特性が必要となる。加えて、特にレドームを用いた場合には、受信波の偏波によってレドームが異なる通過特性を示すため、計測特性に与える影響は大きい。
【0006】
しかしながら、上述したような従来の電波受信装置では、受信波の偏波情報を取得しておらず、到来方向の計測にあたっては、例えば、特定の偏波の計測特性や各種の偏波の平均的な計測特性等を用いて計測処理を行なっていた。このため、特定の偏波の計測特性を用いた場合には、受信波の偏波が一致しない場合に計測誤差が大きくなり、また各種の偏波の平均的な計測特性を用いた場合には、極端に大きくないもののいずれの偏波の場合でも計測誤差を含むことになるなど、受信波の到来方向計測時の誤差要因となっていた。
【0007】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、受信波の到来方向計測時に誤差要因となる偏波による影響を軽減して良好な計測精度で受信波の到来方向を計測する電波受信装置及び電波受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電波受信装置は、受信波の偏波情報に基づき計測特性を切替えながらその到来方向を計測する電波受信装置であって、偏波の異なった電波を受信する空中線部と、この空中線部で受信した電波を受信処理する受信部と、この受信部で受信処理後の信号から前記電波の電波諸元を取得する電波諸元検出部と、受信波の電波諸元と偏波情報とを関係づけてあらかじめ登録された偏波情報データベースを有し、前記電波諸元検出部で取得した電波諸元に基づきこの偏波情報データベースを検索して前記電波の偏波情報を推定する偏波推定部と、受信波の偏波に対応した到来方向計測特性を有する複数の測角テーブルと、前記偏波推定部からの推定結果に基づいて前記複数の測角テーブルのいずれか1つを選択し前記電波の到来方向を計測する電波到来方向計測部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、さらに前記電波の偏波を計測する偏波計測部を備え、この計測結果が前記電波の偏波情報の推定結果と合致しない場合には、前記偏波推定部は前記偏波計測部からの計測結果に基づき前記偏波情報データベースを更新するとともに、この計測結果を推定結果とすることを特徴とする。
【0010】
また、さらに有線または無線ネットワークと接続する通信部を備え、この有線または無線ネットワークから送られてくる前記電波の偏波情報を受けとるとともに、この受けとった前記電波の偏波情報と前記偏波推定部による推定結果とを照合し両者が合致しない場合には、前記電波到来方向計測部はこの有線または無線ネットワークからの前記電波の偏波情報に基づいて前記測角テーブルのいずれか1つを選択するとともに、前記偏波推定部はこの有線または無線ネットワークからの前記電波の偏波情報に基づいて前記偏波情報データベースを更新することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電波受信システムは、受信波の偏波情報を取得する第1の電波受信装置と、受信波の偏波情報に基づき計測特性を切替えながらその到来方向を計測する第2の電波受信装置とが有線または無線ネットワークにより相互に接続された電波受信システムであって、前記第1の電波受信装置は第1の空中線部で受信した電波の偏波情報を計測する計測受信部と、この計測結果を前記有線または無線ネットワークに送出する通信部とを備え、前記第2の電波受信装置は偏波の異なった電波を受信する第2の空中線部と、この第2の空中線部で受信した電波を受信処理する受信部と、この受信部で受信処理後の信号から前記電波の電波諸元を取得する電波諸元検出部と、受信波の電波諸元と偏波情報とを関係づけてあらかじめ登録された偏波情報データベースを有し、前記電波諸元検出部で取得した電波諸元に基づきこの偏波情報データベースを検索して前記電波の偏波情報を推定する偏波推定部と、前記第1の電波受信装置による前記電波の偏波情報の計測結果を前記有線または無線ネットワークから受けとる通信部と、受信波の偏波に対応した到来方向計測特性を有する複数の測角テーブルと、前記偏波推定部からの推定結果または前記第1の電波受信装置による前記電波の偏波情報の計測結果に基づいて前記複数の測角テーブルのいずれか1つを選択し前記電波の到来方向を計測する電波到来方向計測部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信波の到来方向計測時に誤差要因となる偏波による影響を軽減でき、計測誤差を低減して良好な計測精度で受信波の到来方向を計測可能な電波受信装置及び電波受信システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る電波受信装置及び電波受信システムを実施するための最良の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る電波受信装置の第1の実施例の構成を示すブロック図である。この図1に例示した電波受信装置1は、空中線部11、受信部12、電波諸元検出部13、偏波推定部14、複数の測角テーブル15、電波到来方向計測部16、及び操作表示部17から構成されている。空中線部11は、複数種の偏波に対応可能に構成され、到来波を受信して受信部12に送出する。後述する電波到来方向計測部16において、例えばモノパルス測角手法により電波到来方向を計測する場合には、空中線部11は、これに対応させて、和及び差のビームパターンを所定の方向に形成するように構成され、それぞれのビームパターンでの受信信号を受信部12に送出する。また、レドーム(図示せず)を通して到来波を受信するように構成することも可能である。
【0015】
受信部12は、空中線部11で受信した電波に対して低雑音増幅、周波数変換、フィルタリング及び検波等の受信処理を施す。空中線部11から複数のビームパターン毎に受信信号が送出される場合には、例えば複数の受信チャンネルを設けてそれぞれに受信処理するように構成される。電波諸元検出部13は、受信部12で受信処理後の信号からその電波諸元を取得し、偏波推定部14に送出する。取得する電波諸元は、例えば、受信波がレーダ信号等のパルス波であれば、その信号周波数(RF)、パルスくり返し間隔(PRI)、パルス持続時間(PD)等であり、また、連続波であれば、その信号周波数(RF)、変調形式(Mod)、占有帯域幅(BW)等である。これら電波諸元を取得するにあたっては、パルス波に対しては各種のパルス分析手法を、また連続波に対しては各種の変調形式分析手法を適用することができる。
【0016】
偏波推定部14は、内部にあらかじめ設定された偏波情報データベース141を有しており、電波諸元検出部13で取得した受信波の電波諸元に基づいてこの偏波情報データベース141を検索して受信波の偏波を推定し、その結果を電波到来方向計測部16に送出する。偏波情報データベース141は、電波諸元と、その電波諸元を有する到来波の偏波情報とが関係づけられて登録された信号リストのデータベースであり、電波諸元検出部13で取得した電波諸元を検索キーにして、対応する偏波情報を抽出する。なお、各電波諸元の値については、下限値及び上限値による範囲で表現し登録しておくこともできる。
【0017】
測角テーブル15は、到来波の偏波情報に対応した計測特性を有する複数の測角テーブルから構成されており、後述する電波到来方向計測部16において受信波の到来方向の計測処理の際に、その偏波情報に対応した測角テーブルが選択されて参照される。例えばモノパルス測角手法においては、誤差電圧と誤差角度との関係を表すS字型の曲線が、この測角テーブルに対応する。また、これら測角テーブルの値は、例えば、対応する偏波毎にあらかじめ既知の試験信号により実測等を行なって取得した計測特性に基づいて設定する。電波到来方向計測部16は、偏波推定部14から受信波の偏波情報の推定結果を受けとってこれに該当する測角テーブルを複数の測角テーブル15の中から選択するとともに、選択した測角テーブル15を用いて受信部12からの受信処理後の信号に対する到来方向の計測処理を実行し、その到来方向を取得する。到来方向の計測処理としては、例えばモノパルス測角手法等を適用することができる。操作表示部17は、取得した到来方向を表示するとともに、偏波情報データベース141や複数の測角テーブル15の設定操作を含む各種操作等を受けつけ、装置各部に転送する。
【0018】
次に、前出の図1、及び図2のフローチャートを参照して、上述のように構成された本実施例の電波受信装置の動作について説明する。図2は、図1に例示した本発明に係る電波受信装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0019】
まず、事前準備として複数の測角テーブル15、及び偏波情報データベース141を設定する。複数の測角テーブル15は、例えば、対応する偏波毎に実測等を行なって取得した計測特性に基づいて設定する。また偏波情報データベースは、例えば、既知の信号情報等に基づいて設定する。これらの設定作業は、例えば、操作員等により操作表示部17を通して行なわれる(ST201)。次に、到来波がレドーム等を通して空中線部11で受信されると、各ビームパターン毎に受信信号は受信部12に送出される(ST202)。受信部12では、各ビームパターンに対応して設けられた受信チャンネルでそれぞれに受信処理が施され、電波諸元検出部13に送出される。電波諸元検出部13は、これら受信処理後の信号から、例えば受信波がパルス信号であれば、各種のパルス信号分析手法を適用することによって、その信号周波数(RF)、パルスくり返し間隔(PRI)、パルス持続時間(PD)等の電波諸元を取得する。そして、その結果が偏波推定部14に通知される。あわせて、受信部12による受信処理後の信号は、電波到来方向計測部16にも送出される(ST203)。
【0020】
偏波推定部14は、電波諸元検出部13から受信波の電波諸元が通知されると、これら電波諸元を検索キーとして偏波情報データベース141を検索し、電波諸元の合致した信号に関係づけられた偏波情報を抽出する。なお、電波諸元の合致を判定する条件としては、検索キーに設定されたすべての電波諸元を照合し合致した場合の他に、例えば複数の諸元の中の特定の諸元またはその組合せが合致した場合とするなど、種々に設定することができる。そして、抽出された偏波情報は、受信波の偏波の推定結果として電波到来方向計測部16に送出される(ST204)。
【0021】
電波到来方向計測部16は、まず、受信波の偏波に対応して設けられた複数の測角テーブル15の中から、偏波推定部14からの推定結果に対応した測角テーブルを選択する。これにより、受信波の到来方向を計測するにあたって、受信波の偏波に対応した計測特性が適用される(ST205)。そして、この選択したテーブルを用い、受信部12からの受信処理後の信号に対してモノパルス測角手法等の計測処理を行なうことによって、受信波の到来方向を取得する。取得された到来方向は、操作表示部17に送られて表示される(ST206)。
【0022】
この後は、動作終了が指示されるまで、上述したST201〜ST206のステップを繰り返すが、動作を継続する中で、事前に登録設定された偏波情報データベース141に対する変更等が発生した場合には(ST207のY)、例えば操作員等が操作表示部17を通して所定の操作を行なうことにより、その内容が更新される(ST208、及びST209)。
【0023】
以上説明したように、本実施例においては、偏波に対応した計測特性を有する、到来方向計測のための複数の測角テーブルをあらかじめ設定しておき、まず、受信波の電波諸元を取得し、これを検索キーにして、電波諸元と偏波情報とが関連づけられた偏波情報データベースを検索し、その偏波情報を推定している。そして、複数の測角テーブルの中から、この推定結果に対応した測角テーブルを選択するとともに、選択した測角テーブルを適用して受信波の到来方向を計測している。
【0024】
これにより、受信波の到来方向を計測するにあたって、受信波の偏波に対応した計測特性が適用されるので、受信波の到来方向計測時に誤差要因となる偏波による影響を軽減でき、計測誤差を低減して良好な計測精度で受信波の到来方向を計測可能な電波受信装置を得ることができる。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明に係る電波受信装置の第2の実施例の構成を示すブロック図である。また、図4は、その動作を説明するためのフローチャートである。この第2の実施例について、図1及び図2に示した第1の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。この第2の実施例が第1の実施例と異なる点は、次の2点である。すなわち、第1点は、受信波の偏波情報を推定する際に、第1の実施例においては、取得した受信波の電波諸元を検索キーにして偏波情報データベース141を検索し偏波情報を推定していたが、第2の実施例においては第1の実施例の構成に加え、受信波の偏波を計測する偏波計測部を備えてその偏波情報を計測するように構成するとともに、計測した結果と推定結果とが合致しない場合は、この計測した結果を推定結果として採用するものとし、あわせてこの計測した結果を用いて偏波情報データベースを更新するようにした点である。
【0026】
また、第2点は、複数の測角テーブルの中から受信波の偏波情報に対応した測角テーブルを選択する際に、第1の実施例においては、偏波情報の推定結果に基づき選択したのに対し、第2の実施例においては上記した構成に加え、さらに無線ネットワークと接続する通信部を備えてこのネットワーク経由で外部からの偏波情報を受けとることができるように構成するとともに、上記第1点に述べた、計測した結果を含む偏波情報の推定結果と、外部からの偏波情報とが合致しない場合は、外部からの偏波情報に基づき選択するものとし、あわせてこの外部からの偏波情報を用いて偏波情報データベースを更新するようにした点である。以下、前出の図1及び図2、ならびに図3及び図4を参照して、その相違点のみを説明する。
【0027】
図3に例示したように、この電波受信装置3は、空中線部11、受信部12、電波諸元検出部13、偏波推定部33、測角テーブル15、電波到来方向計測部34、及び操作表示部17に加え、偏波計測部31、及び通信部32を備えている。偏波計測部31は、受信波の偏波情報を計測し、その結果を偏波推定部33に送出する。この偏波計測部31は、例えば特許文献1に開示された手法等を適用して構成することも可能である。通信部32は、本装置と無線ネットワーク(図示せず)とを接続するインターフェース部分であり、この無線ネットワーク経由で送られてくる受信波に対する外部からの偏波情報を含む各種データを授受し、これらを後述の偏波推定部33及び電波到来方向計測部34に送出する。
【0028】
偏波推定部33は、第1の実施例における偏波推定部14と同様の手法により受信波の偏波情報を推定するとともに、偏波計測部31から受信波の偏波を計測した結果を受けとってこれと推定結果とを照合し、合致しない場合は偏波計測部31により計測した結果を推定結果として採用する。あわせて、この偏波計測部31により計測した結果、及び通信部32から送られてくる外部からの偏波情報を用いて偏波情報データベース141の該当する内容を更新する。電波到来方向計測部34は、受信波の偏波情報に対する偏波推定部33からの推定結果と、通信部32を通して受けとった外部からの偏波情報とを照合した結果に基づいて、適用する測角テーブルを複数の測角テーブル15の中から選択するとともに、第1の実施例における電波到来方向計測部16と同様の手法により、選択した測角テーブル15を用いて受信部12からの受信処理後の信号に対する到来方向の計測処理を実行し、受信波の到来方向を取得する。
【0029】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施例の電波受信装置3の動作を説明する。まず、複数の測角テーブル15、及び偏波情報データベース141を設定し、到来波が受信されると、その電波諸元が取得され、さらに取得結果に基づいて偏波情報データベース141を検索することによって受信波の偏波情報が推定される(ST201〜ST204)。これと並行するように、偏波計測部31では受信波の偏波情報が計測されて、その結果は偏波推定部33に送出される(ST401)。
【0030】
偏波推定部33では、この偏波計測部31により計測した結果と、自身での推定結果とを照合し、両者が合致している場合には、受信波の偏波情報として、自身での推定結果がそのまま電波到来方向計測部34に送出される(ST402のY)。一方、合致してない場合には(ST402のN)、偏波計測部31により計測した結果が推定結果として採用されて電波到来方向計測部34に送出されるとともに、偏波計測部31により計測した結果を用いて、偏波情報データベース141の該当するレコードの偏波情報が更新される(ST403、及びST404)。
【0031】
これとは別に、無線ネットワークからは、外部で取得した受信波に対する偏波情報が適宜通信部32に送られてきており、この外部からの偏波情報は、通信部32から電波到来方向計測部34に転送される。電波到来方向計測部34では、これら偏波推定部33からの推定結果、及び通信部32を通して受けとった外部からの偏波情報とに基づいて複数の測角テーブル15の中から受信波の偏波情報に対応する測角テーブルを次のように選択する。すなわち、受信波に対する外部からの偏波情報がない場合(ST405のN)、及び外部からの偏波情報があり(ST405のY)、かつこれを偏波推定部33からの推定結果と照合して合致している場合は(ST406のY)、偏波推定部33からの推定結果に基づいて対応した測角テーブルを選択する(ST409)。
【0032】
一方、外部からの偏波情報があるものの、これを偏波推定部33からの推定結果と照合して合致していない場合は(ST406のN)、外部からの偏波情報に基づいて対応した測角テーブルを選択する(ST407)。加えて、この場合は、外部からの偏波情報を用いて、偏波情報データベース141の該当するレコードの偏波情報を更新する(ST408)。これにより、受信波の到来方向を計測するにあたって受信波の偏波に対応した計測特性が適用されることになり、測角テーブル選択後は、電波到来方向計測部34では、第1の実施例における電波到来方向計測部16と同様な手法により受信波の到来方向が取得され、その結果が操作表示部17に送られて表示される(ST206)。
【0033】
この後は、動作終了が指示されるまで、上述したST201〜ST206のステップを繰り返すが、動作を継続する中で、事前に登録設定された偏波情報データベース141に対する変更等が発生した場合には(ST207のY)、例えば操作員等が操作表示部17を通して所定の操作を行なうことにより、その内容が更新される(ST208、及びST209)。
【0034】
以上説明したように、本実施例においても、偏波に対応した計測特性を有する、到来方向計測のための複数の測角テーブルをあらかじめ設定しておき、まず、受信波の電波諸元を取得し、これを検索キーにして電波諸元と偏波情報とが関連づけられた偏波情報データベースを検索し、その偏波情報を推定している。また、受信波の偏波を計測するとともに、無線ネットワークを通して外部からも受信波の偏波情報を受けとっている。そして、推定結果とこれらとを相互に比較照合し、その結果に基づいて、これらの中からより確実な受信波の偏波情報を採用するとともに、あらかじめ設定された複数の測角テーブルの中から、より確実となった偏波情報に対応した測角テーブルを選択・適用して受信波の到来方向を計測している。加えて、偏波情報データベースも更新し、以降の偏波情報の推定結果を一層確実なものとしている。
【0035】
これにより、受信波の到来方向を計測するにあたって、受信波の偏波に対応した計測特性が適用されるので、受信波の到来方向計測時に誤差要因となる偏波による影響を軽減でき、計測誤差を低減して良好な計測精度で受信波の到来方向を計測可能な電波受信装置を得ることができる。
【実施例3】
【0036】
図5は、本発明に係る電波受信システムの一実施例の構成を示すブロック図である。また、図6は、その動作を説明するためのフローチャートである。これらの図について、図1乃至図4に示した本発明に係る電波受信装置の第1及び第2の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
この図5に例示した電波受信システムは、第1の電波受信装置としての偏波計測装置5、第2の電波受信装置としての電波受信装置6、及びこれらを接続する無線ネットワーク7から構成されている。偏波計測装置5は、受信波の偏波情報を計測することにより取得し、その結果を無線ネットワーク7に送出する。電波受信装置6は、受信波の偏波情報に基づいて計測特性を切替えながら、その到来方向を計測する。無線ネットワーク7は、ネットワーク接続された各装置間で受信波の偏波情報を含む各種情報を授受する。
【0038】
ここに、偏波計測装置5は、計測受信部としての空中線部51、受信部52、及び偏波計測部53、ならびに通信部54から構成されている。空中線部51は、例えば偏波特性の異なる複数の空中線を有し到来波を受信する。受信部52は、それぞれの空中線による受信波に対して増幅、周波数変換、検波等の受信処理を施す。偏波計測部53は、例えばこれら受信処理された信号の振幅等から受信波の偏波情報を計測する。通信部54は、本装置と無線ネットワーク7とを接続するインターフェース部分であり、計測した受信波の偏波情報を含む各種データを無線ネットワーク7との間で授受する。
【0039】
また、電波受信装置6は、空中線部11、受信部12、電波諸元検出部13、偏波推定部61、測角テーブル15、電波到来方向計測部34、操作表示部17、及び通信部32を備えている。偏波推定部61以外の構成は、前出の図1及び図3に示した本発明に係る電波受信装置の第1の実施例及び第2の実施例の各部と同一の構成としている。偏波推定部61は、内部に偏波情報データベース141を有し、前出の第1の実施例における偏波推定部14、または第2の実施例における偏波推定部33と同様の手法により受信波の偏波情報を推定するとともに、通信部32から送られてくる、偏波計測装置5からの受信波の偏波情報を含む外部からの各種の情報を用いて偏波情報データベース141の該当する内容を更新する。
【0040】
次に、前出の図1乃至図5、及び図6のフローチャートを参照して、上述のように構成された本実施例の電波受信システムの動作について説明する。なお、以下の説明では、電波受信装置6側の動作を中心に、この電波受信システム全体の動作を説明する。
【0041】
まず、電波受信装置6に、複数の測角テーブル15、及び偏波情報データベースを設定する。到来波が受信されるとその電波諸元が取得され、さらに偏波推定部61において、取得結果に基づき偏波情報データベース141を検索することによって受信波の偏波情報が推定される。そして、その推定結果は電波到来方向計測部34に送出される(ST201〜ST204)。これと並行して、到来波は偏波計測装置5の空中線部51でも受信され、受信部52で受信処理された後、偏波計測部53において偏波情報が計測される。その結果は、送信先を電波受信装置6として、通信部54から無線ネットワーク7に送出される(ST601)。
【0042】
電波受信装置6側では、偏波計測装置5から無線ネットワーク7経由で受信波の偏波に対する計測結果が送られてくると、これらは通信部32で受信され、電波到来方向計測部34に転送される。これに続けて電波到来方向計測部34では、ST204のステップにおける偏波推定部33からの偏波情報の推定結果、及び通信部32を通して受けとった偏波計測装置5からの計測結果とに基づいて複数の測角テーブル15の中から受信波の偏波情報に対応する測角テーブルを次のように選択する。すなわち、計測不能等により偏波計測装置5からの計測結果がない場合(ST602のN)、及び偏波計測装置5からの計測結果があり(ST602のY)、かつこれを偏波推定部33からの推定結果と照合して合致している場合は(ST603のY)、偏波推定部33からの推定結果に基づいて対応した測角テーブルを選択する(ST409)。一方、偏波計測装置5からの計測結果があるものの、これを偏波推定部33からの推定結果と照合して合致していない場合は(ST603のN)、偏波計測装置5からの計測結果に基づいて対応した測角テーブルを選択する(ST604)。加えて、この場合は、偏波計測装置5からの計測結果を用いて、偏波情報データベース141の該当するレコードの偏波情報を更新する。これらにより、受信波の到来方向を計測するにあたって受信波の偏波に対応した計測特性が適用されることになる(ST605)。以降、電波到来方向計測部34では、選択した測角テーブル15を用いて受信波の到来方向が取得され、その結果が操作表示部17に送られて表示される(ST206)。
【0043】
この後は、動作終了が指示されるまで、上述したST201〜ST206のステップを繰り返すが、動作を継続する中で、無線ネットワーク7を経由して電波受信装置6内の偏波情報データベース141に対する更新情報が送られてくると、これら更新情報は通信部32から偏波推定部61に転送され、その内容が更新される。また、操作表示部17からの所定の操作を行なうことによっても、その内容の更新を可能としている(ST207〜ST209)。
【0044】
以上説明したように、本実施例の電波受信システムにおいては、電波受信装置側に、偏波に対応した計測特性を有する、到来方向計測のための複数の測角テーブルをあらかじめ設定しておき、まず、受信波に対してその電波諸元を取得し、これを検索キーにして電波諸元と偏波情報とが関連づけられた偏波情報データベースを検索し、その偏波情報を推定している。また、偏波計測装置では受信波の偏波を計測するとともに、無線ネットワークを通してその計測結果を電波受信装置側に送出している。そして、電波受信装置側では、偏波情報の推定結果と計測結果とを相互に比較照合し、その結果に基づいて、より確実な受信波の偏波情報を採用するとともに、あらかじめ設定された複数の測角テーブルの中から、より確実となった偏波情報に対応した測角テーブルを選択・適用して受信波の到来方向を計測している。加えて、偏波情報データベースも更新するとともに、無線ネットワーク経由でもリアルタイムで更新可能にし、その内容を一層確実なものとしている。
【0045】
これにより、受信波の到来方向を計測するにあたって、受信波の偏波に対応した計測特性が適用されるので、受信波の到来方向計測時に誤差要因となる偏波による影響を軽減でき、計測誤差を低減して良好な計測精度で受信波の到来方向を計測可能な電波受信システムを得ることができる。
【0046】
また、偏波計測装置と電波受信装置との間を無線ネットワークで接続しているので、これらの装置をそれぞれに移動体に搭載するなど、機動性を有する電波受信システムを実現することができる。
【0047】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る電波受信装置の第1の実施例の構成を示すブロック図。
【図2】図1に例示した電波受信装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明に係る電波受信装置の第2の実施例の構成を示すブロック図。
【図4】図3に例示した電波受信装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】本発明に係る電波受信システムの一実施例の構成を示すブロック図。
【図6】図5に例示した電波受信システムの動作を説明するためのフローチャート。
【図7】従来の電波受信装置の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0049】
1、3、6 電波受信装置
5 偏波測定装置
7 無線ネットワーク
11、51 空中線部
12、52 受信部
13 電波諸元検出部
14、33、61 偏波推定部
15 測角テーブル
16、34 電波到来方向計測部
17 操作表示部
31、53 偏波計測部
32、54 通信部
141 偏波情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信波の偏波情報に基づき計測特性を切替えながらその到来方向を計測する電波受信装置であって、
偏波の異なった電波を受信する空中線部と、
この空中線部で受信した電波を受信処理する受信部と、
この受信部で受信処理後の信号から前記電波の電波諸元を取得する電波諸元検出部と、
受信波の電波諸元と偏波情報とを関係づけてあらかじめ登録された偏波情報データベースを有し、前記電波諸元検出部で取得した電波諸元に基づきこの偏波情報データベースを検索して前記電波の偏波情報を推定する偏波推定部と、
受信波の偏波に対応した到来方向計測特性を有する複数の測角テーブルと、
前記偏波推定部からの推定結果に基づいて前記複数の測角テーブルのいずれか1つを選択し前記電波の到来方向を計測する電波到来方向計測部と
を備えたことを特徴とする電波受信装置。
【請求項2】
さらに前記電波の偏波を計測する偏波計測部を備え、
この計測結果が前記電波の偏波情報の推定結果と合致しない場合には、前記偏波推定部は前記偏波計測部からの計測結果に基づき前記偏波情報データベースを更新するとともに、この計測結果を推定結果とすることを特徴とする請求項1に記載の電波受信装置。
【請求項3】
さらに有線または無線ネットワークと接続する通信部を備え、
この有線または無線ネットワークから送られてくる前記電波の偏波情報を受けとるとともに、
この受けとった前記電波の偏波情報と前記偏波推定部による推定結果とを照合し両者が合致しない場合には、
前記電波到来方向計測部はこの有線または無線ネットワークからの前記電波の偏波情報に基づいて前記測角テーブルのいずれか1つを選択するとともに、前記偏波推定部はこの有線または無線ネットワークからの前記電波の偏波情報に基づいて前記偏波情報データベースを更新する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電波受信装置。
【請求項4】
受信波の偏波情報を取得する第1の電波受信装置と、受信波の偏波情報に基づき計測特性を切替えながらその到来方向を計測する第2の電波受信装置とが有線または無線ネットワークにより相互に接続された電波受信システムであって、
前記第1の電波受信装置は
第1の空中線部で受信した電波の偏波情報を計測する計測受信部と、
この計測結果を前記有線または無線ネットワークに送出する通信部とを備え、
前記第2の電波受信装置は
偏波の異なった電波を受信する第2の空中線部と、
この第2の空中線部で受信した電波を受信処理する受信部と、
この受信部で受信処理後の信号から前記電波の電波諸元を取得する電波諸元検出部と、
受信波の電波諸元と偏波情報とを関係づけてあらかじめ登録された偏波情報データベースを有し、前記電波諸元検出部で取得した電波諸元に基づきこの偏波情報データベースを検索して前記電波の偏波情報を推定する偏波推定部と、
前記第1の電波受信装置による前記電波の偏波情報の計測結果を前記有線または無線ネットワークから受けとる通信部と、
受信波の偏波に対応した到来方向計測特性を有する複数の測角テーブルと、
前記偏波推定部からの推定結果または前記第1の電波受信装置による前記電波の偏波情報の計測結果に基づいて前記複数の測角テーブルのいずれか1つを選択し前記電波の到来方向を計測する電波到来方向計測部と
を備えたことを特徴とする電波受信システム。
【請求項5】
前記第2の電波受信装置の電波到来方向計測部が前記複数の測角テーブルのいずれか1つを選択する際は、
前記有線または無線ネットワークから前記第1の電波受信装置による偏波情報の計測結果を受けとっていない前記電波に対しては前記偏波推定部からの推定結果に基づいて選択し、
前記有線または無線ネットワークから前記第1の電波受信装置による偏波情報の計測結果を受けとった前記電波に対してはこれを前記偏波推定部による推定結果と照合して、
合致した場合にはこれらのいずれか一方に基づいて選択し、
合致しない場合には前記第1の電波受信装置による前記電波の偏波情報の計測結果に基づいて選択するとともに前記偏波情報推定部はこの有線または無線ネットワークからの前記電波の偏波情報に基づいて前記偏波情報データベースを更新する
ことを特徴とする請求項4に記載の電波受信システム。
【請求項6】
前記第2の電波受信装置の偏波情報データベースは前記有線または無線ネットワークから更新可能としたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電波受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−257893(P2009−257893A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106184(P2008−106184)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】