説明

電波腕時計

【課題】GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、電波腕時計を薄型でコンパクトなものとし、且つ、電波の受信性能のよい電波腕時計を提供すること。
【解決手段】本発明に係る電波腕時計100は、電池26と、衛星からの電波を受信するパッチアンテナ14と、受信された前記電波に基づいてベースバンド信号を発生する高周波回路46及び前記ベースバンド信号より情報を抽出するデコード回路53と、前記情報に含まれる時刻に関する情報に基づき、内部時刻を修正するコントローラ47と、を有し、平面視において、電池26及びパッチアンテナ14は、電波腕時計100の中心を通る軸54上に並べて配置され、高周波回路46及びデコード回路53は、軸54の一方の側に配置され、コントローラ47は、軸54の他方の側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GPS(Global Positioning System)衛星からの衛星信号を受信し、かかる衛星信号に含まれるGPS時刻情報に基づいて時刻を修正するGPS付き腕時計が記載されている。同文献では、かかる腕時計の構造として、GPSアンテナと電池を腕時計の厚み方向に重ね合わせるものが示されている(図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−236560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、電波腕時計を薄型でコンパクトなものとし、且つ、電波の受信性能のよい電波腕時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電波腕時計は、電池と、衛星からの電波を受信するパッチアンテナと、受信された前記電波に基づいてベースバンド信号を発生する高周波回路及び前記ベースバンド信号より情報を抽出するデコード回路と、前記情報に含まれる時刻に関する情報に基づき、内部時刻を修正するコントローラと、を有し、平面視において、前記電池及び前記パッチアンテナは、前記電波腕時計の中心を通る軸上に並べて配置され、前記高周波回路及びデコード回路は、前記軸の一方の側に配置され、前記コントローラは、前記軸の他方の側に配置される。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明によれば、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、電波腕時計を薄型でコンパクトなものとし、且つ、電波の受信性能のよい電波腕時計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図2】図1のA−A線による断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る電波腕時計の裏蓋側から見た分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る電波腕時計において、電池、パッチアンテナ、高周波回路及びデコード回路、並びにコントローラの位置関係を示す平面図である。
【図5】図1のB−B線による断面の要部を示す図である。
【図6】回路基板を裏蓋側から見た図である。
【図7】第1の実施形態に係る電波腕時計の機能ブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係る電波腕時計の電池、パッチアンテナ、高周波回路及びデコード回路、並びにコントローラの位置関係を示す平面図である。
【図9】本発明の変形例に係る電波腕時計の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計100を示す平面図である。同図には、電波腕時計の外装である胴1、胴1内に配置された文字板2と時刻を示す指針である時針3、分針4、秒針5が示されている。また、胴1の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うための竜頭6、ボタン7が配置されている。胴1の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部8が伸びている。
【0009】
なお、同図に示した電波腕時計100のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴1を丸型でなく角型にしてもよいし、竜頭6やボタン7の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針3、分針4、秒針5の3本としているが、これに限定されず、秒針5を省略しても、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。
【0010】
なお、本明細書では、電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、外部からの電波を受信し、当該電波に含まれる時刻に関する情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。
【0011】
図2は、図1のA−A線による断面図である。電波腕時計100の文字板2を覆うように風防9が胴1に取り付けられ、また、風防9の反対側では、裏蓋10が胴1に取り付けられる。風防9の材質は、ガラス等の透明な材料であり、非磁性かつ非導電性である。また、胴1及び裏蓋10の材質は、特に限定はされないが、本実施形態では金属である。
【0012】
本明細書では、以降、電波腕時計100の風防9が配置される方向(図2における上方向)を風防側、裏蓋10が配置される方向(図2における下方向)を裏蓋側と呼ぶ。
【0013】
文字板2の裏蓋側には、太陽電池11が配置され、風防側から入光した光により発電がなされる。そのため、文字板2はある程度光線を透過する材質で形成される。本実施形態では、文字板2は、太陽電池11を挟むようにして、地板12に固定枠13により固定される。本実施形態では、固定枠13はいわゆるスナップ止めの方法で地板12に固定されるが、これに限定されず、種々の方法によって固定してよい。また、文字板2の裏蓋側には、パッチアンテナ14が配置される。そのため、文字板2はパッチアンテナ14による電波の受信を妨げないよう、非磁性かつ非導電性の材質、例えば、合成樹脂等の非金属材料により作成される。
【0014】
地板12は、合成樹脂等の非磁性かつ非導電性の材質からなり、パッチアンテナ14や輪列15をはじめとする各種部材を支持する。パッチアンテナ14には、その厚み方向を貫くように給電ピン16が設けられ、風防側の面が衛星からの電波を受信する受信面17となっている。
【0015】
ところで、一般に長波帯を用いて地上局から送信される標準電波を用いて時刻修正を行う電波時計では、フェライトあるいはアモルファス合金等の磁芯にコイルを巻いた形式のいわゆるバーアンテナが用いられることが多い。これに対し、本実施形態に係る電波腕時計100では、はるかに周波数の高いUHF帯を用いて衛星から送信される信号を受信する。そのため、UHF帯の信号の受信に適した小型のアンテナとして、パッチアンテナ14を用いている。
【0016】
また、地板12の車が配置される裏蓋側の面であって、最も風防側に位置する面、すなわち、輪列15を構成する車が最初に取り付けられる面が、取り付け基準面18として図中に示されている。輪列15は、秒針5が取り付けられた秒針軸(四番車)19、分針4が取り付けられた分針軸(二番車)20及び、時針3が取り付けられた筒車21にモータからの回転動力を伝達する歯車機構である。符号22は筒車21を抑える板である筒車押さえである。また、図中には、輪列15を駆動するモータのうちの1つのコイル23の断面が示されている。
【0017】
地板12の裏蓋側には、回路基板24が配置され、さらにその裏蓋側には電池支持枠25が配置される。電池支持枠25もまた、好適には合成樹脂製であり、非導電性の材料からなる。電池支持枠25には電池26が支持される。本実施形態では、電池26は充電可能な二次電池であり、ボタン型のリチウムイオン二次電池を用いている。そして、太陽電池11により発電された電力が蓄積されるようになっている。電池26の両極となる両面には、それぞれ好ましくは金属製の電極板27、28が設けられており、回路基板24に設けられた配線パターンと導通するようになっている。本実施形態では、電極板27は電池26上に溶接されており、回路基板24に押しつけられることにより導通がとられる。また、電極板28は、その弾性復元力により電池26の面に押しつけられるようになっている。
【0018】
巻真29の一端には竜頭6が取り付けられ、他端には竜頭操作検知部30が組みつけられており、ユーザーが竜頭6を引き出したり、回転させたりといった操作をしたことを電気的に検知するようになっている。
【0019】
なお、本実施形態では、電波腕時計100は太陽光発電による電力により駆動し、蓄電可能な二次電池を備えたものとして示したが、これに換え、一次電池を使用するものとしてもよい。その場合には、太陽電池11は不要である。また、電池26の形状はボタン型に限定されず、任意である。さらに、二次電池としてリチウムイオン二次電池以外のもの、例えば、リチウムイオンキャパシタやニッケル水素畜電池を用いてもよい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る電波腕時計100の裏蓋側から見た分解斜視図である。同図には、電波腕時計100の大まかな構造を示すため、主要な部材、具体的には、文字板2、太陽電池11、地板12、回路基板24、パッチアンテナ14及び電池支持枠25をその配置順に示した。電波腕時計100の外装である胴、風防や裏蓋、竜頭やボタン、内部の機構である輪列やモータ、巻真や竜頭操作検知部、電池、指針その他の部材は同図では省略されている。
【0021】
固定枠13はおおむねリング状の形状をしており、その内側に文字板2を収容する。また、固定枠13の外周には適宜フック31が設けられ、地板12に固定されるようになっている。フック31の位置及び数は、必要に応じて任意に定めてよい。文字板2の中央には、軸穴32が設けられ、各指針軸及び筒車が貫通する。
【0022】
太陽電池11は、図示のように一方の側に切り欠き部33を有する形状となっている。切り欠き部33は、パッチアンテナ14に対応する位置に設けられる。これは、太陽電池11上には金属電極が形成されるため、かかる金属電極による電波受信への影響を低減するためである。なお、本実施形態のように、太陽電池11自体の形状をパッチアンテナ14に対応する位置を避けるような形状とする以外にも、太陽電池11上のパッチアンテナ14に対応する位置に、太陽電池素子を形成しないことにより、金属電極による電波受信への影響を低減するようにしてもよい。符号34は各指針軸及び筒車が貫通する軸穴である。
【0023】
地板12の裏蓋側の面には、パッチアンテナ14を収容するアンテナ収容部35、輪列を配置する輪列収容部36、竜頭操作検知部を収容する竜頭操作検知部収容部37が形成されている。アンテナ収容部35は、本実施形態では図示の通りの凹部となっており、パッチアンテナ14の受信面が風防に近い位置に配置されるようになっている。アンテナ収容部35の中央付近には、パッチアンテナ14の給電ピン16の端部を収容する逃がし穴38が設けられる。本実施形態でアンテナ収容部35を凹部としたのは、地板12の剛性を確保するためであるが、アンテナ収容部35は必ずしも凹部でなくともよく、パッチアンテナ14を収容する貫通穴であっても、あるいは太陽電池11に設けられた切り欠き部33のような切り欠きであってもよい。
【0024】
輪列収容部36は、モータの回転を減速し各指針軸あるいは筒車へと伝達する歯車機構である輪列を組み付け収容する。そして、輪列収容部36の内、車が配置される裏蓋側の面であって、最も風防側に位置する面が、輪列を取り付ける基準となる取り付け基準面18である。本実施形態では、秒針軸19及び分針軸20が貫通する軸穴39の周囲の面が取り付け基準面18となる。輪列を構成する各部材は、取り付け基準面18を起点として裏蓋側から順次組み付けられていくため、輪列を構成する部材の大部分は、取り付け基準面18より裏蓋側に位置することとなる。また、輪列収容部36には、モータのコイルを収容する窪みまたは穴であるコイル収容部40が形成されている。
【0025】
竜頭操作検知部収容部37は、巻真が貫通する巻真穴41を備え、竜頭の操作により引き出され回転される巻真の引き出し量と回転量を検知するためのスイッチ構造を収容する。かかるスイッチ構造、すなわち竜頭操作検知部の構造は、竜頭の操作を検出できるものであればどのようなものであってもよい。
【0026】
さらに、地板12の外周には、固定枠13のフック31とかみ合うフック受け42が設けられる。また、適宜ボス43あるいは位置決めピン44が設けられ、回路基板24、パッチアンテナ14、電池支持枠25を位置決めするとともに、ネジとネジパイプにより固定できるようになっている。もちろん、これら部材の固定は必ずしもネジを用いなければならないものではなく、他にも、例えば文字板2の固定のように、スナップ止め機構を用いたり、接着による固定をしたりしてもよい。
【0027】
回路基板24上には、パッチアンテナ14を収容する切り欠き部45が形成されている。なお、切り欠き部45は、必ずしも切り欠きでなくてもよく、貫通穴であってもよい。また、回路基板24の裏蓋側面には、高周波回路46及び、コントローラ47が実装されている。高周波回路46は、パッチアンテナ14により受信された信号をベースバンド信号へと変換する回路であり、コントローラ47は、電波腕時計100全体の動作を制御するとともに、内部回路により時刻を計時する。高周波回路46及びコントローラ47は、本実施形態では、ともに1チップに集積されているが、これに限定されるものではない。図3には図示されていないが、高周波回路46の裏側、すなわち、回路基板24の風防側には、ベースバンド信号より情報を抽出するデコード回路が実装される。また、回路基板24上には、モータを配置するための穴であるモータ穴48が形成されている。モータ穴48は、主として、モータのコイルを収容するために設けるものであって必須のものではなく、モータの厚みや配置によっては、モータ穴48を省略しても良い。そして、回路基板24の表面及び内部には回路パターンが形成され、パッチアンテナ14、モータ、高周波回路46、コントローラ47、デコード回路等を電気的に接続しており、必要に応じて、コンデンサや抵抗等の電子部品が回路パターン上に配置される。なお、本実施形態では、モータは2つであるから、独立して駆動可能な指針の数は2である。かかる構成を例示すれば、例えば、時針及び分針を歯車列を介して連動して動作させ、秒針は時針及び分針と独立して動作させることが挙げられる。あるいは、時針を独立して動作させ、分針及び秒針を連動させてもよい。モータの数を増やし、さらに独立して動作する指針を追加しても、あるいはモータの数を1として全ての指針が連動するようにしてもよい。
【0028】
パッチアンテナ14は、受信面17が風防側を向くように配置され、金属製の接地板49により、パッチアンテナ本体が回路基板24の切り欠き部45及び地板のアンテナ収容部35内に収容されるように固定される。同時に、接地板49及び給電ピン16は回路基板24に電気的に接続され、接地板49は接地電位に、給電ピン16は高周波回路46に接続される。このとき、回路基板24に対し、給電ピン16の端部及び高周波回路46はともに裏蓋側に位置しており、両者の接続が容易である。
【0029】
電池支持枠25には、電池収容部50と電池に溶接された電極板を逃がすための電極板逃がし部51が形成されている。電極板逃がし部51に配置された電極板は、接続穴52を介して回路基板24と接続されるようになっている。
【0030】
図4は、以上説明した本実施形態に係る電波腕時計100において、電池26、パッチアンテナ14、高周波回路46及びデコード回路53、並びにコントローラ47の位置関係を示す平面図である。同図は、図1と同様の視点から図示した図であり、電池26、パッチアンテナ14、高周波回路46及びデコード回路53、並びにコントローラ47の位置を実線で示し、参考のために示したそれら以外の部材は二点鎖線で示している。
【0031】
同図に示すように、電池26及びパッチアンテナ14は、電波腕時計100の中心を通る軸54上に並べて配置され、平面視においては重なり合わない。このようにすることにより、ある程度の厚みのある部材である電池26とパッチアンテナ14を平面視において重ね合わせることが無いので、電波腕時計100全体の厚さが薄いものとなる。また、電池26とパッチアンテナ14を電波腕時計100の中心を通る軸54上に並べることにより、電波腕時計100の外形が小さく、コンパクトなものとなる。なお、本実施形態では、電池26とパッチアンテナ14はいずれも、その中心が軸54を通るように配置されている。電波腕時計100をコンパクトに構成するためにはかかる配置が最も好ましい配置であるが、これに限定はされず、両者が軸54上に並べて配置されていればよく、必ずしもその中心が軸54を通らなくともよい。また、本実施形態では、軸54が電波腕時計100の3時及び9時の位置を通るが、これに限定はされない。かかる配置を取るのは、竜頭6が電波腕時計100の3時の位置に設けられているためであり、このようにすると、パッチアンテナ14、電池26及び竜頭6がこの順に軸54上に並べて配置されることとなる。竜頭6は、多くの場合金属製であり、ユーザの操作性等を考慮してその大きさが決定されるため、その材質や大きさ如何によっては、パッチアンテナ14における電波受信の妨げとなりうる。そのため、竜頭6を、パッチアンテナ14に対し電池26を挟んだ反対側に配置することにより、その受信への影響が低減される。それに加え、同配置では、パッチアンテナ14はボタン7からも電池26を挟んだ反対側に配置されることとなるため、ボタン7に用いられる金属製の板バネによる影響も低減される。なお、以上の説明から理解できるように、竜頭6はパッチアンテナ14に対し電池26側の位置であればよく、必ずしもパッチアンテナ14、電池26及び竜頭6が直線的に並んでいなくともよい。また、ボタン7もパッチアンテナ14に対し電池26側の位置であることが好ましい。本実施形態の電波腕時計100では、竜頭6は12時と6時を通る軸に対して3時側に配置されていればよい。また、電波腕時計100のデザインによっては竜頭6の配置は必ずしも3時の位置でなくともよく、例えば、12時の位置としたり、左利きのユーザ向けに9時の位置としたり、それ以外の配置としてもよい。軸54の向きは、竜頭6の位置に応じて変更することが好ましい。もちろん、電波腕時計100が竜頭6をもたないデザインである場合には、ボタン7の配置やその他の事情を考慮して軸54の向きを決めればよい。
【0032】
なお、図4に示したようにパッチアンテナ14、電池26及び竜頭6がこの順にほぼ直線的に配置される場合には、竜頭6に結合される金属製の巻真及び金属製の部材を多く含む竜頭操作検知部が電池26に対し、平面的に重なり合う位置に配置されることになり、平面視において金属製の部材が占める面積が減り、受信に有利となる。
【0033】
そして、高周波回路46及びデコード回路53は軸54に対し一方の側に、本実施形態では6時の側に配置され、コントローラ47は軸54に対し他方の側に、本実施形態では12時の側に配置される。これは、高周波回路46及びデコード回路53の動作周波数と、コントローラ47の動作周波数の違いに起因する。すなわち、本実施形態に係る電波腕時計100では、高周波回路46及びデコード回路53は、パッチアンテナ14により受信されたUHF帯の電波を検波し、デコードしなければならないため、両者は高周波数で動作されなければならない。これに対し、コントローラ47は電波腕時計100全体および時計回路を動作させるものであり、この動作周波数は、通常電子時計に用いられる水晶振動子の振動周波数である32768Hz程度の低周波数である。そのため、駆動周波数の著しく異なる両者からの電磁ノイズが互いの動作に悪影響を及ぼす可能性があるが、軸54に対しそれぞれ駆動周波数の異なる回路を分散して配置すると、軸54上に並べて配置されたパッチアンテナ14の接地板49及び電池26が、電磁ノイズを遮蔽する大きな金属部材となり、かかる電磁ノイズによる悪影響が低減される。このため、本実施形態に係る電波腕時計100はその電波の受信性能が優れたものとなる。
【0034】
また、同図には、各指針を駆動するモータのコイル23の位置が実線で示されている。図示のように、各コイル23は、平面視において、少なくともその一部が電池26と重なり合う位置に配置される。このようにすると、外部からの磁界が電池26を構成する金属部材により遮られるため、コイル23に外部磁界が作用することによる誤動作が低減される。これにより、コイル23の裏蓋側に耐磁板を必要としないため、コストダウンに繋がる。もちろん、電池26以外にさらに、外部磁界を遮蔽するための金属板を適宜設けることは任意である。
【0035】
図5は、図1のB−B線による断面の要部を示す図である。同図では、電波腕時計100の外装である胴や風防、裏蓋は省略して示している。同図に示されるように、回路基板24は、地板12及び電池支持枠25に挟まれるように配置されており、その表面に高周波回路46及びデコード回路53、コントローラ47が実装されている。地板12及び電池支持枠25の表面には、回路基板24上に配置された電子部品と干渉しないよう、適宜窪みが設けられる。
【0036】
そして、高周波回路46とデコード回路53は、回路基板24の両面に相対して、すなわち、ちょうど回路基板24の表裏となる位置に配置され、回路基板24に設けられたスルーホールを介して互いに接続される。このように配置すると、高周波回路46とデコード回路53を繋ぐ電気経路が短く、電気経路において発生する寄生容量やインピーダンスが小さくなり、ノイズの影響を受けにくく、信号歪も発生しにくくなる。また、高周波回路46が裏蓋側に配置されるのは、前述の通り、パッチアンテナとの接続が容易となるからである。また、コントローラ47も好ましくは裏蓋側に配置される。ノイズ源となりうる電気回路は、できる限りパッチアンテナの受信面から遠い位置に配置する方がよいと考えられるからである。
【0037】
しかしながら、高周波回路46及びデコード回路53、コントローラ47の配置はこれに限定はされない。高周波回路46とデコード回路53を回路基板24の同一の面に配置してもよいし、高周波回路46とデコード回路53の機能を統合したワンチップの集積回路を用いてもよい。高周波回路46及びコントローラ47は、回路基板24の風防側の面に配置してもよく、デコード回路53を回路基板24の裏蓋側の面に配置してもよい。
【0038】
ところで、パッチアンテナを用いた受信の際には、受信の障害となりうる金属部材を、できる限りパッチアンテナの受信面より上側(本実施形態では、風防側)に配置しないようにする方が好ましいと考えられる。そこで、本実施形態に係る電波腕時計100では、図2に示されるように、パッチアンテナ14の受信面17が、輪列15を取り付ける取り付け基準面18より風防側に位置するように配置する。このようにすると、車をはじめとする金属製の部材を多く含む輪列15の大部分が、取り付け基準面18よりも裏蓋側、すなわち、パッチアンテナ14の受信面17よりも裏蓋側に位置することとなり、輪列15による電波受信への悪影響は小さいものとなる。
【0039】
また、本実施形態に係る電波腕時計100では、パッチアンテナ14と電池26は平面視において重なり合わないように並べて配置されるため、図2に示されるように、断面視において、その厚み方向に少なくとも一部が重なり合うように配置することが好ましい。このような配置を取ることにより、電波腕時計100全体の厚さが薄いものとなる。
【0040】
図6は、回路基板24を裏蓋側から見た図である。同図には、高周波回路46とコントローラ47、その他の電子部品を接続する回路パターンが示されている。また、上述した切り欠き部45及び、モータ穴48の位置も示されている。図中二点鎖線で示した円は、回路基板24の裏蓋側に配置される電池26の位置を示している。そして、電池26が配置される領域内には、テストパターン55が形成されている。なお、図がわかりにくくなるのを避けるため、図6では、テストパターン55の一部に対し符号を付している。かかるテストパターン55は、電池26を組み付ける前にプローブを接触させることにより、回路基板24をはじめとする各部材の動作のテストに用いる。テストパターン55を電池26が配置される領域内に配置する理由は、電池26が配置される領域には、電波腕時計の厚さを薄くするためには電子部品を配置しないことが望ましいため、回路基板24の表面のスペースが空いているからである。
【0041】
なお、同図に示した回路パターンや各種電子部品等の配置は一例であり、これに限定されない。回路基板24の形状やパターンは、電子腕時計の仕様に合わせて適宜設計すべきものである。
【0042】
図7は、本実施形態に係る電波腕時計100の機能ブロック図である。パッチアンテナ14により受信された衛星からの電波は、高周波回路46によりベースバンド信号に変換され、デコード回路53により時刻に関する情報、特に、正確な現在時刻を示す情報が抽出され、コントローラ47へと受け渡される。コントローラ47は、受け取った正確な現在時刻を示す情報に基づいて、内部の時計回路が保持する時刻情報である内部時刻を修正し、内部時刻に基づいてモータ56を駆動する。モータ56により発生した回転動力は、輪列を経て指針(時針3、分針4及び秒針5)へと伝達され、時刻表示がなされる。
【0043】
また、太陽電池11による発電により得られた電力は、電池26に蓄積される。そして、電池26からは、高周波回路46、デコード回路53及びコントローラ47に電力が供給される。スイッチ57は、高周波回路46及びデコード回路53への電力供給のオン/オフを切り替えるスイッチであり、コントローラ47により制御される。高周波数で動作する高周波回路46とデコード回路53はその消費電力が大きいため、コントローラ47は、衛星からの電波を受信する時のみスイッチ57をオンとして高周波回路46及びデコード回路53を動作させ、それ以外の時はスイッチ57をオフとして、電力消費を低減する。
【0044】
電波の受信は、竜頭6やボタン7等の入力手段によるユーザからの要求がなされた時や、あらかじめ定められた時刻となったときに行ってよく、そのほかにも、前回の時刻修正があった時刻からの経過時間、あるいは太陽電池11の発電量やその他の電波腕時計100の周囲の環境を示す情報等に基づいて行うようにして良い。
【0045】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る電波腕時計200を図8を用いて説明する。本実施形態では、電波腕時計200を構成する部材の配置のみが第1の実施形態に係る電波腕時計と相違するため、第1の実施形態において説明した部材と同一の部材には同符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図8は、電波腕時計200において、電池26、パッチアンテナ14、高周波回路46及びデコード回路53、並びにコントローラ47の位置関係を示す平面図である。同図は、第1の実施形態における図4と同様の図であり、電池26、パッチアンテナ14、高周波回路46及びデコード回路53、並びにコントローラ47の位置を実線で示し、参考のために示したそれら以外の部材は二点鎖線で示している。
【0047】
同図に示すように、本実施形態においても、電池26及びパッチアンテナ14は、電波腕時計100の中心を通る軸54上に並べて配置され、平面視においては重なり合わない。
【0048】
また、軸54は、一対のバンド固定部8を結ぶ直線、すなわち、12時位置と6時位置を結ぶ直線とほぼ平行である。本実施形態では、軸54もまた12時位置と6時位置を結ぶ直線であるから、両者は並行でかつ一致している。腕時計では、通常、12時位置と6時位置にはバンドが取り付けられるため、腕時計に対し作用する衝撃力、例えば、腕時計を何かにぶつけるなどしたときに作用する力の向きは、図中Fで示したように、一対のバンド固定部8を結ぶ直線に対し垂直な方向、すなわち、3時方向または9時方向であることが多い。このような衝撃力が電波腕時計200に加わると、電波腕時計200を構成する部材の内、質量の大きな部材である電池26が内部で移動しようとする。この移動の向きは、衝撃力の方向と一致し、本実施形態では、一対のバンド固定部8を結ぶ直線に対し垂直な方向、すなわち、3時方向または9時方向である。このとき、軸54を一対のバンド固定部8を結ぶ直線とほぼ平行としておくと、電池26がパッチアンテナ14に向かって移動し、接触することがなく、外部からの衝撃に起因する電波腕時計200の故障が低減される。
【0049】
また、パッチアンテナ14と電池26のいずれを12時側に配置するかは特に限定はされないが、同図に示すようにパッチアンテナ14を6時側に、電池26を12時側に配置することが好ましい。これは、多くの腕時計では12時の位置に、ブランド名やマーク、時刻を示す文字等の大きな装飾が施されることが多く、それら装飾は金属製の場合もあるため、パッチアンテナ14を6時側に配置すると、かかる装飾による受信への悪影響が低減されるからである。
【0050】
そして、高周波回路46及びデコード回路53は軸54に対し一方の側に、本実施形態では9時の側に配置され、コントローラ47は軸54に対し他方の側に、本実施形態では3時の側に配置される。もちろん、これら配置を逆にしてもよい。また、電池26とパッチアンテナ14の配置を逆にすることも考えられる。
【0051】
本実施形態に係る電波腕時計200のその他の点については、第1の実施形態に係る電波腕時計と同様である。
【0052】
これまで説明したとおり、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態においては、例えば図5に示されているように、電池26及びパッチアンテナ(図示されず)が電波腕時計100の中心を通る軸上に並べて配置されると共に、コントローラ47がかかる軸の一方の側に、高周波回路46及びデコード回路53が、かかる軸の他方の側に配置されている。このとき、コントローラ47、高周波回路46及びデコード回路53が実装される回路基板が、その内部に配線パターンとして、ベタパターンの層を有している場合には、以下に説明するように、さらなる変形が可能である。
【0053】
図9は、本発明の変形例に係る電波腕時計300の断面を示す図である。なお、同図は、第1の実施形態における図5と同様の切断面による断面を示すものとなっている。また、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部材については同符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
本変形例においても、電池26とパッチアンテナ(図示されず)は電波腕時計300の中心を通る軸上に並べて配置されており、そのため、かかる軸にそって大きな金属部材である電池26とパッチアンテナの接地板49が存在するため、当該軸近辺を境に、電磁波等のノイズの図中左右方向への伝播が遮断される。さらに、回路基板24の内部には、ベタパターン58が形成されている。そのため、ベタパターン58を境にして、電磁波等のノイズは図中上下方向への伝播も遮断される。なお、本変形例では、図中の上下左右はそれぞれ、電波腕時計300の風防側、裏蓋側、12時方向、6時方向に対応している。また、電磁波等のベタパターン58は、本変形例では、接地電位とされている。
【0055】
以上のことは、同図において、当該軸及びベタパターン58によって、互いにノイズの影響を受けにくい4つの領域が区画されることを意味する。すなわち、12時方向かつ裏蓋側の区画A、12時方向かつ風防側の区画B、6時方向かつ裏蓋側の区画C及び、6時方向かつ風防側の区画Dである。従って、電波腕時計300においてノイズ源となり、かつ、ノイズの影響を受けやすい部材であるコントローラ、高周波回路及びデコード回路の3つを、上記A〜Dの4つの区画の内の任意の3つに重ならないように配置することにより、ノイズの影響の少ない電波腕時計300が得られる。
【0056】
コントローラ、高周波回路及びデコード回路の3つをどの位置に配置するかは任意である。その中でも特に、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、高周波回路とデコード回路を回路基板24の両面に相対するように配置、すなわち、図中区画Aと区画B、または、区画Cと区画Dに配置すると、高周波回路とデコード回路間の配線が短くなり寄生容量やインピーダンスを抑えられるとともに、高周波数で駆動される回路と低周波数で駆動される回路が分離される。あるいは、コントローラとデコード回路を回路基板24の両面に相対するように配置してもよい。この場合にも両者をつなぐ配線が短くなり、寄生容量やインピーダンスが抑えられ、ノイズに強い回路が得られる。
【0057】
なお、以上説明した本発明の各実施形態の一つの観点においては、高周波回路、デコード回路及びコントローラが実装される回路基板を有し、高周波回路及びデコード回路は、回路基板の両面に相対して配置される。
【0058】
このようにすると、高周波回路とデコード回路間に発生する寄生容量及びインピーダンスが小さくなり、ノイズの影響が低減される。
【0059】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、高周波回路は、回路基板の裏蓋側に実装される。
【0060】
このようにすると、パッチアンテナの接続部と高周波回路が回路基板に対し同じ側に位置し、両者の接続が容易である。
【0061】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、指針を駆動するモータのコイルは、平面視において電池と重なり合う位置に配置される。
【0062】
このようにすると、電池により外部磁界が遮断され、外部磁界によるモータの誤動作が低減される。
【0063】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、電波腕時計は竜頭を有し、平面視において、パッチアンテナ、電池及び竜頭はこの順に並ぶように配置される。
【0064】
このようにすると、容積の大きい金属部材である竜頭がパッチアンテナに対し遠方にかつ電池を隔てて配置され、パッチアンテナによる受信の際に竜頭に起因する影響が低減される。
【0065】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、電波腕時計はバンドを固定する一対のバンド固定部を有し、電波腕時計の中心を通り、電池及びパッチアンテナが並べて配置される軸は一対のバンド固定部を結ぶ直線にほぼ平行である。
【0066】
このようにすると、電波腕時計に外部より加わる衝撃の方向に対し、電池及びパッチアンテナが並べて配置される軸が略直交するため、外部より衝撃が加わった際に、電池がパッチアンテナに向かって移動することが少ない。
【0067】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、電波腕時計はパッチアンテナ及び輪列を支持するとともに、パッチアンテナを受け入れる凹部、開口部又は切り欠きと、輪列を取り付ける取り付け基準面を有する地板を有し、パッチアンテナの受信面は、取り付け基準面より風防側に位置する。
【0068】
このようにすると、輪列を構成する金属部材の大部分がパッチアンテナの受信面より裏蓋側に位置するため、パッチアンテナによる受信の際にかかる金属部材に起因する影響が低減される。
【0069】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、断面視において、電池及びパッチアンテナは重なり合う位置に配置される。
【0070】
このようにすると、電波腕時計が薄型となる。
【符号の説明】
【0071】
1 胴、2 文字板、3 時針、4 分針、5 秒針、6 竜頭、7 ボタン、8 バンド固定部、9 風防、10 裏蓋、11 太陽電池、12 地板、13 固定枠、14 パッチアンテナ、15 輪列、16 給電ピン、17 受信面、18 取り付け基準面、19 秒針軸、20 分針軸、21 筒車、22 筒車押さえ、23 コイル、24 回路基板、25 電池支持枠、26 電池、27,28 電極板、29 巻真、30 竜頭操作検知部、31 フック、32 軸穴、33 切り欠き部、34 軸穴、35 アンテナ収容部、36 輪列収容部、37 竜頭操作検知部収容部、38 逃がし穴、39 軸穴、40 コイル収容部、41 巻真穴、42フック受け、43 ボス、44 位置決めピン、45 切り欠き部、46 高周波回路、47 コントローラ、48 モータ穴、49 接地板、50 電池収容部、51 電極板逃がし部、52 接続穴、53 デコード回路、54 軸、55 テストパターン、56 モータ、57 スイッチ、58 ベタパターン、100,200,300 電波腕時計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波腕時計であって、
電池と、
衛星からの電波を受信するパッチアンテナと、
受信された前記電波に基づいてベースバンド信号を発生する高周波回路及び前記ベースバンド信号より情報を抽出するデコード回路と、
前記情報に含まれる時刻に関する情報に基づき、内部時刻を修正するコントローラと、を有し、平面視において、
前記電池及び前記パッチアンテナは、前記電波腕時計の中心を通る軸上に並べて配置され、
前記高周波回路及びデコード回路は、前記軸の一方の側に配置され、
前記コントローラは、前記軸の他方の側に配置される、電波腕時計。
【請求項2】
前記高周波回路、前記デコード回路及び前記コントローラが実装される回路基板を有し、
前記高周波回路及び前記デコード回路は、前記回路基板の両面に相対して配置される請求項1記載の電波腕時計。
【請求項3】
前記高周波回路は、前記回路基板の裏蓋側に実装される請求項2記載の電波腕時計。
【請求項4】
指針を駆動するモータのコイルは、平面視において前記電池と重なり合う位置に配置される請求項1乃至3のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項5】
さらに竜頭を有し、
平面視において、前記パッチアンテナ、前記電池及び前記竜頭はこの順に並ぶように配置される請求項1乃至4のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項6】
さらにバンドを固定する一対のバンド固定部を有し、
前記軸は前記一対のバンド固定部を結ぶ直線にほぼ平行である請求項1乃至4のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項7】
さらに前記パッチアンテナ及び輪列を支持するとともに、前記パッチアンテナを受け入れる凹部、開口部又は切り欠きと、前記輪列を取り付ける取り付け基準面を有する地板を有し、
前記パッチアンテナの受信面は、前記取り付け基準面より風防側に位置する請求項1乃至6のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項8】
断面視において、前記電池及び前記パッチアンテナは重なり合う位置に配置される請求項1乃至7のいずれかに記載の電波腕時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−208944(P2011−208944A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73848(P2010−73848)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】