説明

電波腕時計

【課題】GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、使用者の指示に基づいて電波の受信を行う際、受信環境が良いタイミングで電波を受信すること。
【解決手段】本発明に係る衛星からの送信波に含まれる現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて内部時刻を修正する電波腕時計100は、前記電波腕時計の置かれた受信環境に関する環境情報を取得する環境情報取得手段と、使用者の操作を受け付ける操作手段と、を有し、前記操作手段の操作に基づいて前記環境情報取得手段により環境情報を監視する環境情報監視状態となり、前記環境情報監視状態において、前記環境情報に基づいて、前記衛星からの送信波に含まれる情報の抽出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GPS(Global Positioning System)衛星からの衛星信号を受信し、かかる衛星信号に含まれるGPS時刻情報に基づいて時刻を修正するGPS付き腕時計が記載されている。同文献記載の発明では、ソーラパネルからの発電量や、加速度センサからの出力波形に基づいて屋内外を判断し、受信の可否を決定する。受信を行うタイミングは、特定の時間に行われる(段落0037)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−39565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPS衛星からの電波は1575.42MHzのUHF帯であり、直進性が高い。そのため、アンテナと衛星との間の電波経路が建造物等の障害物に遮られることや、あるいは反射波によるマルチパスによる影響を大きく受ける。そのため、GPS衛星からの電波を受信して時刻修正を行う電波腕時計にあっては、同じ位置に電波腕時計があっても、受信しようとする瞬間のGPS衛星の配置如何によっては受信の可否が異なる場合があり得る。また、電波腕時計の使用者が時刻修正すべく、電波の受信を指示する操作を行った場合、例えばボタンを押すなどするその操作自体によってアンテナが使用者の手に覆われ、受信環境が損なわれ得る。
【0005】
もしもこのように、電波腕時計が使用者の指示に基づいて電波の受信を行う際、受信環境が悪い場合に直ちに受信に失敗し、それにより受信動作そのものが終了するものであると、使用者にとり使い勝手が良くない。また、なかなか受信ができないため、使用者が何度も繰り返し電波の受信を指示する操作を行うと、その都度電力消費の大きい高周波回路及びデコード回路を動作させねばならず、電力消費が大きくなってしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、使用者の指示に基づいて電波の受信を行う際、受信環境が良いタイミングで電波を受信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る衛星からの送信波に含まれる現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて内部時刻を修正する電波腕時計は、前記電波腕時計の置かれた受信環境に関する環境情報を取得する環境情報取得手段と、使用者の操作を受け付ける操作手段と、を有し、前記操作手段の操作に基づいて前記環境情報取得手段により環境情報を監視する環境情報監視状態となり、前記環境情報監視状態において、前記環境情報に基づいて、前記衛星からの送信波に含まれる情報の抽出を行う。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明によれば、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、使用者の指示に基づいて電波の受信を行う際、受信環境が良いタイミングで電波を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図2】電波腕時計の内部に配置された部材の位置関係を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る電波腕時計の機能ブロック図である。
【図4】GPS衛星から送信される信号のサブフレームの構成を示す概略図である。
【図5】サブフレーム1の構成を示す図である。
【図6】サブフレーム4のページ18の構成を示す図である。
【図7】電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【図8】電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【図9】電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【図10】電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【図11】電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【図12】電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計100を示す平面図である。同図には、電波腕時計100の外装である胴1、胴1内に配置された文字板2と時刻を示す指針である時針3、分針4及び秒針5が同軸上に配置されて示されている。文字板2は、衛星から到達する電波が透過し、文字板2の背後に配置されたパッチアンテナで受信されるよう、非磁性かつ非導電性の材料、例えば、合成樹脂で形成される。また、時針3、分針4及び秒針5とは別の軸上に、電波腕時計100の状態を表示する指針である状態表示針6が配置されており、文字板2上には、電波腕時計100の種々の状態を示す目盛である状態表示目盛7が記されている。また、胴1の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うための竜頭8、ボタン9が配置されている。胴1の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部10が伸びている。
【0011】
なお、同図に示した電波腕時計100のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴1を丸型でなく角型にしてもよいし、竜頭8やボタン9の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針3、分針4、秒針5及び状態表示針6の4本としているが、これに限定されず、秒針5を省略したり別軸で設けたり、あるいは秒針5を状態表示針6を兼ねるものとしてもよい。さらに、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電池の残量等、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよく、状態表示針6がこれらの表示を兼ねるものとしても良い。
【0012】
なお、本明細書では、電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、外部からの電波を受信し、当該電波に含まれる時刻に関する情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。
【0013】
図2は、電波腕時計100の内部に配置された部材の位置関係を示す図である。同図では、参考のため、胴をはじめとする電波腕時計100の外装を二点鎖線で示した。
【0014】
符号11で示されているのは、GPS衛星からの電波を受信するパッチアンテナであり、その受信面が風防側を向くように配置される。パッチアンテナの横には、電池12が配置される。本実施形態では、電池12は充電可能な二次電池であり、ボタン型のリチウムイオン二次電池を用いている。そして、文字板に形成され、あるいは文字板の背後に設置された太陽電池により発電された電力が蓄積されるようになっている。
【0015】
ところで、一般に長波帯を用いて地上局から送信される標準電波を用いて時刻修正を行う電波時計では、フェライトあるいはアモルファス合金等の磁芯にコイルを巻いた形式のいわゆるバーアンテナが用いられることが多い。これに対し、本実施形態に係る電波腕時計100では、はるかに周波数の高いUHF帯を用いてGPS衛星から送信される信号を受信する。そのため、UHF帯の信号の受信に適した小型のアンテナとして、パッチアンテナ11を用いている。
【0016】
また、本実施形態では、電波腕時計100は太陽光発電による電力により駆動し、蓄電可能な二次電池を備えたものとして示したが、これに換え、一次電池を使用するものとしてもよい。その場合には、太陽電池は不要である。また、電池12の形状はボタン型に限定されず、任意である。さらに、二次電池としてリチウムイオン二次電池以外のもの、例えば、リチウムイオンキャパシタやニッケル水素畜電池を用いてもよい。
【0017】
符号13は、電波腕時計100全体の動作を制御するとともに、内部回路により時刻を計時するコントローラである。またパッチアンテナ11及び電池12を挟んだ反対側には、パッチアンテナ11により受信された信号をベースバンド信号へと変換する高周波回路14及び、ベースバンド信号より情報を抽出するデコード回路15の位置が示されている。
【0018】
なお、ここで示したコントローラ13、高周波回路14及びデコード回路15の配置は一例である。特に、本実施形態では高周波回路14とデコード回路15は、回路基板の両面の相対する位置に配置されており、両者をスルーホールで接続することにより、両者を結ぶ配線経路を短くし、寄生容量やインピーダンスを小さくしてノイズの影響を低減している。しかしながら、これに限定されず、高周波回路14とデコード回路15を回路基板の同一の面に配置してもよいし、高周波回路14とデコード回路15の機能を統合したワンチップの集積回路を用いてもよい。
【0019】
図3は、本実施形態に係る電波腕時計100の機能ブロック図である。パッチアンテナ11により受信されたGPS衛星からの電波は、高周波回路14によりベースバンド信号に変換され、デコード回路15により時刻に関する情報であるTOWや必要に応じてWNWeek Number)、あるいは現在の閏秒に関する情報である現在の閏秒ΔtLSが抽出され、コントローラ13へと受け渡される。コントローラ13は、電波腕時計100全体の動作を制御するマイクロコンピュータであると同時に、その内部に時計回路を有しており、かかる時計回路が保持する時刻である、内部時刻を計時する機能を有している。時計回路の精度は、用いる水晶振動子の精度や温度等の使用環境にも依存するが、月差±15秒程度である。もちろん、この精度は、必要に応じて任意に設定して良い。また、時計回路により保持される内部時刻は、受信された時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて適宜修正されることにより、正確に保たれる。
【0020】
コントローラ13には、ユーザ等による外部からの操作を受け付ける操作手段(竜頭8、ボタン9)からの信号が入力される。また、コントローラ13からは、内部時刻に基づいてモータ17を駆動する信号が出力され、指針(時針3、分針4及び秒針5)が駆動されることにより時刻が表示される。さらに、電波腕時計100の状態に応じた信号がモータ17に出力され、状態表示針6が駆動される。なお、指針を駆動するモータ16は1つに限定されず、独立して動作させたい指針の数に応じて複数のモータを設けてよい。
【0021】
また、太陽電池18はスイッチ21を介して電池12に接続されており、コントローラ13からの指示によりスイッチ21が太陽電池18と電池12とを導通させている状態では、太陽電池18により発電された電力は、電池12に蓄積される。そして、電池12からは、高周波回路14、デコード回路15及びコントローラ13に電力が供給される。また、太陽電池18はスイッチ21を介して発電量検出部20にも接続されており、コントローラ13からの指示によりスイッチ21が太陽電池18と発電量検出部20を導通させている状態では、太陽電池18により生じる電流は発電量検出部20に流れる。発電量検出部20はこの電流を電圧に変換するとともに、この電圧をさらにデジタル値に変換し、コントローラ13に供給する。スイッチ21は、高周波回路14及びデコード回路15への電力供給のオン/オフを切り替えるスイッチであり、コントローラ13により制御される。高周波数で動作する高周波回路14とデコード回路15はその消費電力が大きいため、コントローラ13は、衛星からの電波を受信する時のみスイッチ21をオンとして高周波回路14及びデコード回路15を動作させ、それ以外の時はスイッチ21をオフとして、消費電力を低減する。
【0022】
なお、太陽電池18の発電量をコントローラ13により検知するための構成(スイッチ19及び発電量検出部20)は、後述するように、太陽電池18の発電量を電波腕時計の周囲の環境を示す環境情報に関する情報として用いるためのものである。従って、環境情報に関する情報として太陽電池18の発電量を用いない場合には、かかる構成は必須のものではなく、必要無ければ省略してもよい。
【0023】
電波の受信は、電波腕時計の使用者が時刻修正すべく、竜頭8やボタン9等の操作手段の操作により電波の受信を指示する操作を行った場合のほか、あらかじめ定められた時刻となったとき、前回の時刻修正があった時刻からの経過時間、あるいは太陽電池18の発電量やその他の電波腕時計100の周囲の環境を示す情報等に基づいて行うようにして良い。
【0024】
続いて、本実施形態に係る電波腕時計が受信するGPS衛星からの信号について説明する。GPS衛星から送信される信号は、L帯と呼ばれる1575.42MHzをキャリア周波数としており、1.023MHzの周期でBPSK(二位相偏移変調)により変調された各GPS衛星固有のC/Aコードにより符号化され、いわゆるCDMA(Code Division Multiple Access;符号分割多元接続)の手法により多重化されている。C/Aコード自体は1023ビット長であり、信号に乗せられるメッセージ・データは20個のC/Aコード毎に変化する。すなわち、1ビットの情報は、20msの信号として送信される。
【0025】
GPS衛星から送信される信号は、1500ビット、すなわち30秒を単位とするフレームに区切られ、さらに、フレームは5つのサブフレームに分けられる。図4は、GPS衛星から送信される信号のサブフレームの構成を示す概略図である。各サブフレームは、300ビットの情報を含む6秒間の信号であり、順番に1から5のサブフレーム番号が付けられている。GPS衛星は、サブフレーム1から順次送信を行い、サブフレーム5の送信を終えると、再度サブフレーム1の送信に戻り、以降同様に繰り返す。
【0026】
各サブフレームの先頭では、TLMとして示すテレメトリワードが送信される。TLMは、各サブフレームの先頭を示すコードと、地上管制局の情報を含んでいる。続いて、HOWとして示すハンドオーバワードが送信させる。HOWには、Zカウントとも呼ばれる現在の時刻に関する情報であるTOW(Time Of Week)が含まれている。これは、GPS時刻の日曜日の午前0時からカウントした1.5秒単位の時間であり、次のサブフレームが開始される時刻を示し、各サブフレーム毎、すなわち、6秒毎に送信される。
【0027】
HOWに続く情報は、各サブフレーム毎に異なっており、サブフレーム1には、衛星時計の補正データが含まれている。図5は、サブフレーム1の構成を示す図である。サブフレーム1には、HOWに続いてWN(Week Number)として示す週番号が含まれている。すなわち、WNは30秒毎に送信される。WNは、1980年1月6日を0週としてカウントした現在の週を示す数値である。したがって、WN及びTOWを受信することにより、GPS時刻における正確な日時が得られる。なお、WNは一度受信に成功すれば、電波腕時計が内部時刻を何らかの理由、例えば、電池切れ等により失わない限り、内部時刻の計時により正しい値を知ることができるため、再度の受信は必要ない。なお、WNは10ビットであるため、1024週を経過すると再び0に戻る。また、GPS衛星からの信号には、この他にも種々の情報が含まれるが、本発明に直接関係の無い情報については、図に示すにとどめ、その説明は省略する。
【0028】
再び図4に戻ると、サブフレーム2及びサブフレーム3にはHOWに続いてエフェメリスと呼ばれる各衛星の軌道情報が含まれているが、その説明は本明細書では割愛する。
【0029】
さらに、サブフレーム4及び5には、HOWに続いてアルマナックと呼ばれる全GPS衛星の概略軌道情報が含まれる。サブフレーム4及び5に収容される情報は、その情報量が多いため、ページと呼ばれる単位に分割されて送信される。そして、サブフレーム4及び5により送信されるデータはそれぞれページ1〜25に分割されており、フレームごとに異なるページの内容が順番に送信される。したがって、全てのページの内容を送信するには25フレーム、すなわち、12.5分を要することになる。
【0030】
図6は、サブフレーム4のページ18の構成を示す図である。同図に示すように、サブフレーム4のページ18の241ビット目には、現在の閏秒に関する情報である現在の閏秒ΔtLSが含まれる。すなわち、ΔtLSは12.5分に一度送信されることになる。ΔtLSは、UTCとGPS時刻とのずれを秒数で示したものであり、GPS時刻にΔtLSを加算することによりUTCが求められる。
【0031】
以上の通り、任意のGPS衛星からの送信波に含まれるTOW及びWNを取得することにより現在の日付が得られ、さらにΔtLSを取得することにより現在の正確な時刻が得られる。
【0032】
なお、ここで閏秒について簡単に説明しておくと、閏秒は、地球の自転周期のずれ等を補正するためのものであり、天文学的な観測結果に基づき、必要に応じて毎月1日の午前0時に追加あるいは削除されうるものである。しかしながら、これまでのところ、不定期に1月1日午前0時又は7月1日午前0時のいずれか若しくはその両方における追加のみがなされている。GPS衛星からの信号に含まれるΔtLSは、かかる閏秒の追加により累積されたGPS時刻とUTCとのずれを示すものであり、UTCに閏秒の追加が行われた際に更新されるものと思われる。
【0033】
再び図1に戻ると、状態表示目盛7には、状態表示針6が指し示す種々の電波腕時計100の状態が記されており、本実施形態では、それらは、受信動作表示部22、受信環境表示部23及び、時刻精度表示部24に分けられる。
【0034】
受信動作表示部22は、電波腕時計100が現在受信に関するどのような動作中であるかを示す表示であり、「R」及び「W」の表示からなる。「R」は電波腕時計100が現在電波を受信中、すなわち、高周波回路及びデコーダ回路を動作させていることを示している。一方、「W」は、電波腕時計100が、GPS衛星からの電波を受信しようとしていることの予告である。すなわち、現時点ではまだ高周波回路及びデコーダ回路を動作させてはいないが、次に取得しようとしている情報が送信される時点で受信を行うことを使用者に伝える。次に取得しようとしている情報は、この場合、TOW、WN及びΔtLSの内のいずれか若しくは複数であり、例えば、次に取得しようとしている情報がΔtLSであれば、最大で12.5分先の時点まで、ΔtLSが送信されるのを待つことになる。本実施形態では、WN及びΔtLSについて、次の送信タイミングを待って受信するようになっている。
【0035】
受信環境表示部23は、電波腕時計100がおかれている環境が衛星からの電波の受信にどれほど適しているかを示す環境情報に関する情報の表示である。本実施形態では、電波腕時計100に入射する外光の強度を環境情報とし、その大きさを3段階に評価することにより、環境情報を「1」、「2」及び「3」の3つの表示で示す。これは、電波腕時計100に強い光があたっている状態は、日中の屋外や窓際など、直接衛星が見通せ、受信に適した環境にある可能性が高いことに基づいている。電波腕時計100に入射する外光の強度は種々の手段により得られるが、本実施形態では、太陽電池からの発電量を外光の強度を示すものとして用いる。なお、環境情報の表示は、ここで示した3段階には限られず、2段階や、4段階以上の複数段階、あるいは、連続的な表示としてもよい。もちろん、この他にも、光センサや紫外線センサなどの受光手段を設け、その出力を外光の強度を示すものとして用いても良い。なお、これは一例であり、この他にも種々の情報を環境情報として用いて良く、後述の他の実施形態において他の例を説明する。なお、「環境情報に関する情報」とは、環境情報そのもの(本実施形態では、太陽電池の発電量)だけでなく、かかる環境情報に基づく評価値をも含むものである。
【0036】
時刻精度表示部24は、電波腕時計100の内部時刻の精度に関する情報を示す表示である。かかる表示には、種々の形態が考えられるが、本実施形態では、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を直接示す表示を採用している。そして、現在の時刻に関する情報とは、パッチアンテナにより受信されたTOWであり、現在の閏秒に関する情報とは、同様に受信されたΔtLSを意味することになる。時刻精度表示部24において、「PFT」とあるのは、TOW及びΔtLSの双方に信頼性がある状態を示している。「TW」は、TOWの信頼性が無い状態を、「LS」は、ΔtLSの信頼性が無い状態を、そして、「TL」はTOW及びΔtLSの双方の信頼性が無い状態を意味している。なお、ここで示した具体的な表示の内容は一例であり、各状態をどのように表現するかは任意である。また、ここでは、「PFT」は”Perfect”を、「LS」は”Leap Second”をそれぞれ略して示したものである。
【0037】
ここで、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性について考察する。まず、現在の時刻に関する情報の信頼性、すなわち、TOWの信頼性については、最後にTOWを受信した時点からの経過時間に依存する。本実施形態の電波腕時計100の時計回路は、月差±15秒程度の精度であるから、最後にTOWを受信した時点からの経過時間が48時間(すなわち、2日)を超えると、現在の正確な時刻と内部時刻とのずれが1秒を超える可能性が生じる。そこで、一例として、最後にTOWを受信した時点からの経過時間が48時間以内であれば現在の時刻に関する情報の信頼性があると判定し、それを超えると現在の時刻に関する情報の信頼性がないと判定することが考えられる。もちろん、判定に用いる経過時間をどのようにするかは、時計回路の精度や正確な時刻とのずれをどの程度許容するかに依存するため、任意に設定して良い。あるいは、日付が変わると、すなわち、午前零時を過ぎると一律に、現在の時刻に関する情報の信頼性がないと判定するようにしてもよい。いずれにせよ、現在の時刻に関する情報の信頼性は、最後に現在の時刻に関する情報を受信した時点からの経過時間に基づくか、若しくは、現在の時刻に関する情報の受信後、あらかじめ定められた時刻を経過するか否かに基づいて定めてよい。
【0038】
また、現在の閏秒に関する情報の信頼性について、前述の通り、閏秒は毎月1日の午前0時に追加あるいは削除される可能性がある。従って、現在の閏秒に関する情報、すなわち、ΔtLSの信頼性は、ΔtLSを受信した時点より後の閏秒が追加あるいは削除されうる時点を経過しているか否かに基づいて定めるとよい。具体的には、ΔtLSを受信してから、翌月の1日午前0時を経過するまでは現在の閏秒に関する情報の信頼性があるとし、経過後は現在の閏秒に関する情報の信頼性がないとする。もしくは、これまでのところ、閏秒の追加が1月1日又は7月1日の午前0時にしかなされていないことを考慮すると、ΔtLSを受信してから、次の1月1日又は7月1日の午前0時を経過するまでは現在の閏秒に関する情報の信頼性があるとすることも考えられる。この場合には、ΔtLSを受信した時点より後の閏秒が追加あるいは削除されうる時点を1月1日又は7月1日の午前0時であるとみなしていることになる。
【0039】
なお、これまでのところ、概ね年に1回ほどの頻度で閏秒の追加が行われていることに鑑みて、現在の閏秒に関する情報の信頼性を、最後に現在の閏秒に関する情報を受信した時点から所定の時間、例えば、1年を経過するか否かによって定めることも考えられる。
【0040】
また、電波腕時計100が、長時間充電されることなく稼働するなどして、電源電圧が下がり、いわゆるパワーオフの状態となった場合や、何らかの原因により電波腕時計100の初期化が行われた場合から再び起動した場合には、TOW、ΔtLSに加え、WNについても正しい値ではないと考えられる。このような場合には、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性の双方が無いとすることはもちろん、現在の日付に関する情報についても信頼性が無いと考えられる。本実施形態に係る電波腕時計100では、現在の日付に関する情報についての信頼性の有無は特に表示を行っていないが、これを表示するようにしても良い。
【0041】
なお、状態表示針6は、以上の状態表示目盛7に含まれる各表示を指し示す指針であるため、受信動作表示部22を指し示している際には、電波腕時計100が現在受信に関するどのような動作中であるかを示す受信動作表示手段として、受信環境表示部23を指し示している際には、電波腕時計100がおかれている環境が衛星からの電波の受信にどれほど適しているかを示す受信環境表示手段として、また、時刻精度表示部24を指し示している際には、電波腕時計100の内部時刻の精度に関する情報を示す時刻精度表示手段として機能することになる。
【0042】
続いて、本実施形態に係る電波腕時計の受信の際の動作を説明する。なお、ここで説明する動作は、電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合に開始されるものであり、現在の時刻に関する情報の信頼性、現在の閏秒に関する情報の信頼性及び現在の日付に関する情報の信頼性が無い場合にそれぞれTOW、ΔtLS及びWNを1度の操作時に順に取得しようとするものである。しかしながら、どのような場合にどの情報を取得するかは仕様により任意に設定して良い。例えば、各情報に優先順位を設け、1度の操作手段でTOW、ΔtLS及びWNのいずれか1つのみを受信するようにしても良いし、これら情報の信頼性にかかわらず、必ず全ての情報を受信するようにしても良い。また、これら情報を受信する順番は、特に限定されず任意である。
【0043】
図7及び図8は、電波腕時計の使用者がボタン等の操作手段を操作して、GPS衛星からの電波の受信を指示した場合の動作を示すフローチャートである。
【0044】
コントローラは、まず、ステップS1において、TOWに信頼性があるか否かを判定する。信頼性があればステップS8(図8)へと進む。信頼性が無ければステップS2へと進み、環境情報取得手段を用いて、環境情報の取得を開始する。本実施形態では、太陽電池による発電量を環境情報として用いる。続くステップS3では、取得した環境情報に基づいて、発電量の大小を3段階で評価し、状態表示針6(図1参照)により表示し、使用者に示す。これにより、使用者は、現在の環境がGPS衛星からの送信波の受信に適しているか否かを判断する手掛かりを得られる。さらに、ステップS4では、環境情報があらかじめ定められた条件を満足しているか否かを判定する。本実施形態では、一例として、環境情報の評価段階が「2」以上であるか否かを判定する。環境が良好、すなわち、環境情報があらかじめ定められた条件を満足している場合には、ステップS5へと進み、状態表示針6(図1参照)により「R」を表示する。そして、続くステップS6にて、コントローラは、高周波回路及びデコード回路を動作させ、TOWの受信を試みる。なお、ステップS5における「R」の表示は、ステップS6における高周波回路及びデコード回路の動作のタイミングより若干速く、例えば、2秒早めに行い、使用者に受信を試みることを事前に伝えるようにしても良い。そして、ステップS7へと進み、TOWの受信に成功していれば、さらに図8のステップS9へと進む。
【0045】
一方、ステップS4において環境情報があらかじめ定められた条件を満足していないと判定された場合若しくは、ステップS7においてTOWの受信に失敗した場合には、ステップS8へと進む。ステップS8では、タイマーにより、ステップS2により環境情報の取得を開始してからの時間を計測し、あらかじめ定められた時間、例えば、30秒を経過したか否かを判定する。またあらかじめ定められた時間に達していなければ、ステップS2へと戻り環境情報の取得から繰り返す。達しているならば、TOWの受信を断念し、続く図8のステップS9へと進む。なお、このあらかじめ定められた時間をどのように設定するかは任意である。また、使用者が設定できるようにすることも好ましい。
【0046】
このように、本実施形態の電波腕時計は、使用者によるボタンの操作が行われると、ステップS2からステップS8を繰り返すことにより、環境情報を繰り返し取得する。換言すれば、使用者による操作手段の操作に基づいて、環境情報を監視する環境情報監視状態となるのである。そして、環境情報監視状態において、ステップS4に示すように、環境情報に基づいて、衛星からの送信波に含まれる情報の抽出を行う。なお、環境情報を監視するとは、断続的あるいは連続的に環境情報を継続して取得する状態を指す。また、同図でステップS8へと進むことは、同時に、環境情報監視状態を終了することを意味する。また、使用者の操作、例えば、ボタン操作等により、環境情報監視状態を終了するようにしてもよい。
【0047】
図8へと進み、続くステップS9以降では、WN及びΔtLSの取得を試みる。ステップS9では、WNの信頼性の有無を判定し、無いと判定されればステップS10で状態表示針6(図1参照)により「W」を表示する。そして、ステップS11では、30秒に一度のタイミングで送信されるWNが送信されるタイミングが到来するまで待ち、ステップS12で状態表示針6(図1参照)により「R」を表示した後、ステップS13で高周波回路及びデコード回路を動作させ、WNの受信を試みる。なお、ステップS12における「R」の表示もまた、ステップS13における高周波回路及びデコード回路の動作のタイミングより若干速く、例えば、2秒早めに行うようにしても良い。ステップS13以降は同様に、ステップS14でΔtLSの信頼性の有無を判定し、無いと判定されればステップS15で状態表示針6(図1参照)により「W」を表示する。そして、ステップS16では、12.5分に一度のタイミングで送信されるΔtLSが送信されるタイミングが到来するまで待ち、ステップS17で状態表示針6(図1参照)により「R」を表示した後、ステップS18で高周波回路及びデコード回路を動作させ、ΔtLSの受信を試みる。ステップS17における「R」の表示をステップS18における高周波回路及びデコード回路の動作のタイミングより若干速く、例えば、2秒早めに行うようにしても良い点についてはこれまでと同様である。
【0048】
以上の動作がすべて終了すると、ステップS19へと進み、通常表示、すなわち、通常の時刻を指し示す状態へと復帰させ、終了する。なお、本実施形態の場合、図1に示すように、時針3、分針4及び秒針5により内部時刻に基づく現在時刻を表示するとともに、状態表示針6は、TOWの信頼性及びΔtLSの信頼性に基づいて、時刻精度表示部24のいずれかの位置を表示する状態となる。なお、このとき、状態表示針6の中立位置がある場合には、かかる中立位置を示すようにしてもよい。あるいは、秒針5が状態表示針6の機能を兼ねている場合には、受信結果、すなわち、時刻精度表示部24のいずれかの位置を一定時間表示した後、現在時刻の秒を示すようにしてもよい。
【0049】
また、ステップS6、ステップS13及びステップS18の終了後、受信結果を使用者に通知するようにしても良い。かかる通知の方法は、一例として、状態表示針6を、得られたTOWの信頼性及びΔtLSの信頼性に基づいて、時刻精度表示部24のいずれかの位置を一定時間指し示すようにすることが挙げられる。あるいは、状態表示目盛7に、受信結果を示す「Y」及び「N」の表示を追加し、そのいずれかの位置を状態表示針6により一定時間指し示すようにする等しても良い。
【0050】
さらに、ステップS11及びステップS16においてWN又はΔtLSが送信されるタイミングを待つ間に、ステップS3と同様に環境情報を使用者に通知するようにしても良い。環境情報の取得は例えば一定時間ごとに繰り返し行い、常に現在の環境情報を示すようにしても良いし、あるいは使用者の操作、例えばボタンの押下等を検知して環境情報を取得し、一定時間示すようにしても良い。常に現在の環境情報を示す場合、状態表示針6が受信環境表示部23の「1」乃至「3」のいずれかの位置を指し示すことをもって「W」表示に換えるようにしてもよく、あるいは、状態表示針6が受信環境表示部23のいずれかの位置を指し示す状態と、受信動作表示部22の「W」の位置を指し示す状態とを交互に繰り返すようにしても良い。
【0051】
以上説明したフローチャートによる制御では、TOWの受信時のみ環境情報を参照して、受信を試みるか否か、すなわち、衛星からの送信波に含まれる情報の抽出を行うか否かを決定し、WN及びΔtLSの受信時には環境情報を参照することなく、単にそれぞれの情報の送信タイミングの到来を順番に待ち、受信を試みる。しかしながら、WN及びΔtLSのいずれかまたは両方の受信時にも環境情報を参照してよい。以下に、そのような例として、WNの受信時に環境情報を参照する制御を、図9乃至12に示すフローチャートを用いて説明する。
【0052】
図9乃至図12に示したフローチャートは、図8のフローチャートを代替するものである。すなわち、図9のステップS20は、既に説明した図7のステップS1,S7またはS8に続けて実行される。同ステップにおいては、WN及びΔtLSの信頼性の有無に基づき、処理を4つに分岐する。WN及びΔtLSの両者に信頼性がある場合には、WN及びΔtLSを受信する必要が無いため、ステップS21へと進み、各指針を通常表示、すなわち、時針3、分針4及び秒針5が内部時刻を表示するとともに、状態表示針6が時刻精度表示部24のいずれかの位置を指し示す状態にし(図1参照)、処理を終了する。
【0053】
ステップS20においてWNに信頼性が無いが、ΔtLSに信頼性がある場合には、WNのみ受信を試みればよく、図10のステップS22へとすすむ。図10に示すステップS22乃至ステップS30の処理は、環境情報が良好でかつWNが送信されるタイミングでWNの受信を試みる処理を、あらかじめ定められた時間が経過するか、WNの受信に成功するまで繰り返すというものである。まず、ステップS22では、状態表示針6(図1参照)により「W」を指し示す状態とし、続くステップS23でWNの受信を試みるタイミングであるか否かを判定する。このタイミングは、30秒に一度送信されるWNの送信のタイミングより所定の時間前、例えば、2秒から3秒前であることが好ましい。WNの受信を試みるタイミングが到来していれば、ステップS24へと進み、環境情報を取得し、ステップS25で取得された環境情報を表示し、使用者に通知する。そして、ステップS26において、環境情報があらかじめ定められた条件を満足しているか否かを判定する。本実施形態では、一例として、環境情報の評価段階が「2」以上であるか否かを判定する。環境が良好、すなわち、環境情報があらかじめ定められた条件を満足している場合には、ステップS27へと進み、状態表示針6(図1参照)により「R」を表示した後、ステップS28で高周波回路及びデコード回路を動作させ、WNの受信を試みる。続くステップS29では、WNの受信に成功したか否かを判定し、成功していれば、図9のステップS21へと進み、通常表示に戻し、処理を終える。WNの受信に失敗した場合、及び、ステップS23においてWNの受信タイミングでない場合並びにステップS26において受信環境が良好でない場合には、ステップS30で、WNの受信をするための環境情報の監視を開始してから、あらかじめ定められた時間、例えば、150秒が経過したか否かを判定する。まだあらかじめ定められた時間が経過していなければ、ステップS22へと戻り、再度「W」を表示し、WNの受信に成功するか、あらかじめ定められた時間が経過するまで繰り返す。ステップS30であらかじめ定められた時間が経過すると、タイムアウトとして、図9のステップS21へと進み、通常表示に戻し、処理を終える。
【0054】
再び図9に戻り、ステップS20でWNに信頼性が有り、ΔtLSに信頼性が無い場合には、ΔtLSのみ受信を試みればよく、図11のステップS31へと進む。ステップS31乃至S34の処理は、図8のステップS15乃至ステップS18の処理と同様であり、ΔtLSが送信されるタイミングを待ち、ΔtLSの受信を行うというものである。まず、ステップS31で状態表示針6(図1参照)により「W」を表示する。そして、ステップS32では、12.5分に一度のタイミングで送信されるΔtLSが送信されるタイミングが到来するまで待ち、ステップS33で状態表示針6(図1参照)により「R」を表示した後、ステップS34で高周波回路及びデコード回路を動作させ、ΔtLSの受信を試みる。ΔtLSの受信を試みた後は、受信の成否にかかわらず、図9のステップS21へと進み、通常表示に戻し、処理を終える。
【0055】
三度図9へ戻り、ステップS20でWN及びΔtLSの両者に共に信頼性が無い場合には、WN及びΔtLSの両者に対し受信を試みるべく図12のステップS35へと進む。図12に示すステップS35乃至ステップS46の処理は、ΔtLSの受信タイミングが到来するまでは、WNが送信されるタイミング毎に環境情報に基づいてWNの受信を試み、ΔtLSの受信タイミングの到来後は、あらかじめ定められた期間が経過するまでは、WNが送信されるタイミング毎に環境情報に基づいてWNの受信を試みるというものである。ΔtLSの受信タイミングの到来時点であらかじめ定められた期間を過ぎていた場合には直ちに処理を終了する。
【0056】
まず、ステップS35では、状態表示針6(図1参照)により「W」を指し示す状態とし、続くステップS36でWNの受信を試みるタイミングであるか否かを判定する。このタイミングは、30秒に一度送信されるWNの送信のタイミングより所定の時間前、例えば、2秒から3秒前であることが好ましい。WNの受信を試みるタイミングが到来していれば、ステップS37へと進み、環境情報を取得し、ステップS38で取得された環境情報を表示し、使用者に通知する。そして、ステップS39において、環境情報があらかじめ定められた条件を満足しているか否かを判定する。本実施形態では、一例として、環境情報の評価段階が「2」以上であるか否かを判定する。環境が良好、すなわち、環境情報があらかじめ定められた条件を満足している場合には、ステップS40へと進み、状態表示針6(図1参照)により「R」を表示した後、ステップS41で高周波回路及びデコード回路を動作させ、WNの受信を試みる。続くステップS42では、WNの受信に成功したか否かを判定し、成功していれば、図11のステップS32へと進む。これは、ΔtLSの受信を試みるより前にWNの受信に成功したことから、後はΔtLSの受信のみすれば良いからである。WNの受信に失敗した場合、及び、ステップS36においてWNの受信タイミングでない場合並びにステップS39において受信環境が良好でない場合には、ステップS43へと進み、12.5分に一度のタイミングで送信されるΔtLSを受信すべきタイミングであるか否か判定する。ΔtLSの受信のタイミングでなければ、ステップS35へと戻り以後同様に繰り返す。ΔtLSの受信のタイミングであれば、ステップS44で状態表示針6(図1参照)により「R」を表示した後、ステップS45で高周波回路及びデコード回路を動作させ、ΔtLSの受信を試みる。ΔtLSの受信を試みた後は、受信の成否にかかわらず、ステップS46へと進み、WNの受信をするための環境情報の監視を開始してから、あらかじめ定められた時間、例えば150秒を経過したか否かを判定する。あらかじめ定められた時間を経過していれば、タイムアウトとして、図9のステップS21へと進み、通常表示に戻し、処理を終える。未だあらかじめ定められた時間を経過していなければ、引き続きWNを受信するため処理を継続するので、図10のステップS23へと進み、WNの受信に成功するか、タイムアウトとなるまで処理を継続する。
【0057】
なお、ここで説明した制御では、少なくともΔtLSの受信を試みるまでは処理を継続するため、タイムアウトとなる時間とΔtLSが送信されるまでの時間の内いずれか長い方まで処理を継続するようになっているが、ΔtLSが送信されるまでの時間にかかわらず、あらかじめ定められた時間の経過をもって処理を終了するようにしても良い。また、ここではΔtLSの受信を試みるのは一度のみであるが、これを複数回試みるようにしても良く、その際に環境情報を参照するようにしても良い。
【0058】
以上説明した本実施形態に係る電波腕時計100では、環境情報として、電波腕時計100に入射する外光の強度を太陽電池の発電量により求めた。しかしながら、環境情報としては、これ以外にも種々の量を用いてよく、以下説明する実施形態では、電波腕時計100に入射する外光の強度以外の量を環境情報として用いる場合について説明する。
【0059】
[実施形態2]
図13は、本発明の第2の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。同図には、パッチアンテナ11と、高周波回路14の構成がブロック図で示されている。
【0060】
パッチアンテナ11により受信された信号は、LNA(Low Noise Amplifier;低雑音増幅器)25により初段の増幅がされた後、GCA(Gain Control Amplifier;利得制御増幅器)26により増幅される。BPF(Band Pass Filter)27を通過した信号は、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)28により発振された信号とミキサ29により混合され、周波数変換が行われる。BPF30により不要な周波数成分が除かれた信号は、ADC(Analog to Digital Converter;AD変換器)31によりデジタル信号に変換され、コントローラ32によりさらにデジタル信号処理が施され、後段のデコード回路へと出力される。なお、VCO28については、発振周波数が制御できる局部発振器であれば、どのような形式のものであってもかまわない。
【0061】
一方、GCA26における利得34は、BPF30を出た信号がADC31の分解能に応じた振幅となるよう、AGC(Automatic Gain Control)33により決定される。AGC33は、BPF30を出た信号の電力が小さければ利得34を大きく設定し、BPF30を出た信号の電力が大きければ利得34を小さく設定する働きを有する。すなわち、利得34は、パッチアンテナ11により受信された電波の強度が大きければ小さくなり、パッチアンテナ11により受信された電波の強度が小さければ大きくなることになる。
【0062】
そこで、本実施形態では、かかるAGC33により決定された利得34を環境情報として用いる。すなわち、利得34がある値より小さければ衛星からの送信波の受信強度が高く、受信に適していると判断するのである。なお、利得34を求めるためには、高周波回路14に電源を供給すればよく、デコード回路への電源の供給はしなくともよい。
【0063】
その他の点については、本実施形態は、第1の実施形態と特段の相違はないため、両者に共通する部分については、その詳細な説明を省略する。
【0064】
[実施形態3]
続いて、図14は、本発明の第3の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。同図もまた、パッチアンテナ11と、高周波回路14の構成をブロック図で示すものである。
【0065】
本実施形態の特徴は、GPS衛星からの送信波を受信するパッチアンテナ11から制御部32に至る受信系列に加え、GPS衛星からの送信波とは異なる電波を受信する受信系列を備えている。そして、本実施形態では、GPS衛星からの送信波とは異なる電波として、地上デジタルテレビジョン放送の放送波を用いる。
【0066】
アンテナ35は地上デジタルテレビジョン放送の放送波を受信するアンテナであり、パッチアンテナ11とは別個に設けられる。そして、アンテナ35により受信された信号は、GPS衛星からの送信波の受信の際と同様に、LNA36、GCA37、BPF38を通過し、VCO39から発振された信号とミキサ40により混合され、さらにBPF41を通過する。そして、AGC42はBPF41からの信号に基づいて、GCA37における利得43を決定する。本実施形態では、この地上デジタルテレビジョン放送の放送波について得られた利得43を環境情報として用いる。なお、利得43が小さいほど受信環境が良いと考えられる点については、第2の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態が、GPS衛星からの送信波についての利得34を用いないのは、次の理由による。GPS衛星からの送信波は、先に説明した通り、スペクトラム拡散変調の一種であるCDMA方式により多重化されており、疑似乱数雑音であるC/Aコードによる復号を行うまでは背景のノイズと信号との区別が難しい。加えて、GPS衛星からの送信波は極めて微弱であるため、制御部32により、受信信号とC/Aコードとの相関を求めるまでは、GPS衛星からの送信波の強度を得ることは難しいことが予想される。
【0068】
そこで、若干周波数は違うものの、GPS衛星からの送信波と同じUHF帯の信号である地上デジタルテレビジョン放送の放送波を用い、受信環境の推定を行う。地上デジタルテレビジョン放送の放送波は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)方式による多重化を行っており、その電波強度も高いため、その信号強度の測定は比較的容易となる。
【0069】
なお、GPS衛星からの送信波とは異なる電波として用い得る電波は、地上デジタルテレビジョン放送の放送波に限定されない。GPS衛星からの送信波と周波数帯が比較的近く、かつ、その電波強度が高いものであればどのようなものであっても良い。他には例えば、WiMAX(IEEE802.16)規格による電送波等が挙げられる。
【0070】
また、ここではパッチアンテナ11とアンテナ35を別個に設けるものとして説明したが、両者を共用できる場合には共用しても良い。
【0071】
その他の点については、本実施形態は、第1の実施形態と特段の相違はないため、両者に共通する部分については、その詳細な説明を省略する。
【0072】
[実施形態4]
図15は、本発明の第4の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。同図もまた、パッチアンテナ11と、高周波回路14の構成をブロック図で示すものである。また、図中、先の実施形態と同様の部分については同符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
本実施形態においても、第3の実施形態同様、GPS衛星からの送信波を受信するアンテナ11からの受信系列の他に、GPS衛星からの送信波とは異なる電波、ここでは、一例として、地上デジタルテレビジョン放送の放送波を受信するアンテナ35からの受信系列が備えられている。本実施形態では、AGC33からの利得34やAGC42からの利得43ではなく、アンテナ35により受信された地上デジタルテレビジョン放送の放送波の受信品質を環境情報として用いる。すなわち、アンテナ35により受信され、BPF41を通過した信号は、ADC44によりデジタル信号に変換された後、制御部32に入力される。制御部32は、ADC44の信号から、BER(Bit Error Ratio;符号誤り率)45を求め、得られたBER45を環境情報として出力する。この場合、BER45が小さいほど受信環境が良いと考えられる。
【0074】
なお、ADC44の信号から得られる環境情報としては、BER45のほかにも、SNR(Signal to Noise Ratio;信号対雑音比)や、SIR(Signal to Interference Ratio;信号対干渉比)を用いても良い。SNR、SIRを用いる場合には、これらの値が大きいほど受信環境が良いと考えられる。
【0075】
その他の点については、本実施形態は、第1の実施形態と特段の相違はないため、両者に共通する部分については、その詳細な説明を省略する。
【0076】
[実施形態5]
そして、図16は、本発明の第5の実施形態に係る電波腕時計の電波受信部の構成を示す図である。同図もまた、パッチアンテナ11と、高周波回路14の構成をブロック図で示すものである。また、図中、先の実施形態と同様の部分については同符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
本実施形態もまた、GPS衛星からの送信波と、GPS衛星からの送信波とは異なる電波を受信するものである。GPS衛星からの送信波とは異なる電波の例としては、先の実施形態同様に地上デジタルテレビジョン放送の放送波が挙げられる。一方、本実施形態では、LNA25から制御部32に至る受信回路はGPS衛星からの送信波と地上デジタルテレビジョン放送の放送波とで共通のものを使用している。そのため、アンテナ35からの信号と、パッチアンテナ11からの信号はスイッチ46により切り替えられる。スイッチ46の切り替えは、制御部32からの指令に基づき行われる。また、IMC(Impedance Matching Circuit;インピーダンス整合回路)47及び48は、LNA25から制御部32に至る高周波回路14とアンテナ35、パッチアンテナ11それぞれとのインピーダンスの整合を取るために挿入されている。
【0078】
まず、地上デジタルテレビジョン放送の放送波を受信する場合には、制御部32はスイッチ46をアンテナ35側に切り替え、アンテナ35により受信された信号をLNA25へと導く。同時に、VCO28に対し電圧指令を出し、地上デジタルテレビジョン放送の放送波をベースバンド周波数に変換するための周波数で発振する信号を出力させ、ミキサ29で両者を混合する。このとき、AGC33より出力されるGCA26の利得34を環境情報として用いる。かかる利得34は、第3の実施形態における利得43(図10参照)と同様のものであり、その値が小さいほど受信環境が良好であると考えられる。このとき、ADC31を動作させ、BPF30を通過した信号をデジタル信号に変換する必要はない。しかしながら、利得34に換え、第4の実施形態同様に、受信された地上デジタルテレビジョン放送の信号のBER、SNRまたはSIRを環境情報として用いてもよい。その場合には、BPF30を通過した信号をADC31によりデジタル信号に変換し、制御部32がかかる信号のBER、SNRまたはSIRを求め環境情報として出力するとよい。
【0079】
また、GPS衛星からの送信波を受信する場合には、制御部32はスイッチ46をパッチアンテナ11側に切り替えるとともに、VCO28に対し電圧指令を出し、GPS衛星からの送信波をベースバンド周波数に変換するための周波数で発振する信号を出力させる。両者はミキサ29で混合され、必要な周波数成分をBPF30により抽出したのち、ADC31によるデジタル信号への変換、制御部32による信号処理が行われ、後段のデコード回路へと出力される。
【0080】
本実施形態では、GPS衛星からの送信波を受信する場合と、GPS衛星からの送信波とは異なる電波を受信する場合とにおいて、高周波回路14を共用するため、高周波回路14の回路規模が小さく抑えられる。
【0081】
以上説明した各実施形態では、衛星からの電波として、GPS衛星からの送信波を用いるものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、衛星における時刻の情報が送信される間隔に比して、衛星における自国と協定世界時とのずれを示す情報が送信される間隔が長い信号を送信する衛星であればどのようなものであってもよい。その場合、本明細書中で用いたTOW、WNやΔtLSなどの呼び名やフォーマットは、適宜その衛星に合わせて読み換えて良い。
【符号の説明】
【0082】
1 胴、2 文字板、3 時針、4 分針、5 秒針、6 状態表示針、7 状態表示目盛、8 竜頭、9 ボタン、10 バンド固定部、11 パッチアンテナ、12 電池、13 コントローラ、14 高周波回路、15 デコード回路、16,17 モータ、18 太陽電池、19 スイッチ、20 発電量検出部、21 スイッチ、22 受信動作表示部、23 受信環境表示部、24 時刻精度表示部、25 LNA、26 GCA、27 BPF、28 VCO、29 ミキサ、30 BPF、31 ADC、32 制御部、33 AGC、34 利得、35 アンテナ、36 LNA、37 GCA、38 BPF、39 VCO、40 ミキサ、41 BPF、42 AGC、43 利得、44 ADC、45 BER、46 スイッチ、47,48 IMC、100 電波腕時計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの送信波に含まれる現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて内部時刻を修正する電波腕時計であって、
前記電波腕時計の置かれた受信環境に関する環境情報を取得する環境情報取得手段と、
使用者の操作を受け付ける操作手段と、を有し、
前記操作手段の操作に基づいて前記環境情報取得手段により環境情報を監視する環境情報監視状態となり、
前記環境情報監視状態において、前記環境情報に基づいて、前記衛星からの送信波に含まれる情報の抽出を行う電波腕時計。
【請求項2】
前記環境情報監視状態において、前記環境情報に関する情報を表示する環境情報表示手段を有する請求項1記載の電波腕時計。
【請求項3】
予め定められた時間の経過により、前記環境情報監視状態を終了する請求項1又は2に記載の電波腕時計。
【請求項4】
前記環境情報は、前記電波腕時計に入射する外光の強度に関する情報である請求項1乃至3のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項5】
前記環境情報は、アンテナにより受信された前記衛星からの送信波を増幅する際の利得に関する情報である請求項1乃至3のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項6】
前記環境情報は、前記衛星からの送信波とは異なる電波の強度に関する情報である請求項1乃至3のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項7】
前記衛星からの送信波とは異なる電波の強度に関する情報は、アンテナにより受信された前記衛星からの送信波とは異なる電波を増幅する際の利得に関する情報である請求項6に記載の電波腕時計。
【請求項8】
前記衛星からの送信波とは異なる電波の強度に関する情報は、アンテナにより受信された前記衛星からの送信波とは異なる電波のBER(Bit Error Ratio)、SNR(Signal to Noise Ratio)及びSIR(Signal to Interference Ratio)の少なくともいずれかである請求項6に記載の電波腕時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−208948(P2011−208948A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73852(P2010−73852)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】