説明

電流測定装置

【課題】給電系統に設置された電流センサから送ってくるダイナミックに変動する電流センサ毎に精度良く電流を測定記録する。
【解決手段】センサーユニット11は、データセンタのIT機器の給電系統に複数設置され、その給電系統に設けられるAC電流センサ12と、そのセンサ12の出力を整流する整流部13と、その整流部13の出力をデジタル変換するAD変換部14と、そのAD変換部14の出力を上位装置に送るインタフェース部15とから構成される。センサ制御ユニット21は、複数設置されたセンサーユニット11からの信号を受け取るインタフェース部22a〜22nと、インタフェース部からの信号を選択する選択部23と、上位装置からの命令及びデータを受け、また上位装置に命令に対応したデータを送る上位インタフェース部24と、不揮発性メモリ25とクロックの為の発信器26を接続するマイクロプロセッサ27とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセンタや企業内のマシン室に設置される複数のIT機器(サーバ、ネットワーク機器、ハードディスク等)に流れる電流を個々に計測し記録する電流測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンタや企業内のマシン室には、複数のIT機器が設置されるようになってきた。例えば、データセンタのマシン室には、200〜1000筐体(ラック)が設置されている。1筐体あたり、種々のIT機器が搭載されている。そして、1筐体は、通常1/4筐体,1/2筐体または筐体単位で給電系統が分割されていて、給電系統に流れる電流を測定する必要が生じてきた。
【0003】
以前は、データセンタ全体の総消費電力を計測すればよかったけれども、省エネ法改正に伴い、延べ床面積が2000平米を越す建造物に対し規制が強くなってきたため、上述のように給電系統毎の電流を計測する必要が生じてきた。
【0004】
電流を計測するには、給電系統に電流センサを設置して、そのセンサからの信号を測定器により測定する手段が採られる。この際、1つのセンサだけでなく、給電系統が複数存在する場合、複数の電流センサが用いられるが、複数のセンサに対してゼロクロス点からの波形を認識して精度を上げるには、センサ毎の回路が必要になる(特許文献1参照)。
【0005】
また、交流電流波形をサンプリングして、電流信号を取り出す手段の測定もあるが、通常、交流電流波形の1周期に対して20回以上の高速サンプリングを行うため、サンプリング時間間隔が488μSなので、1秒間では2049回のサンプリングとなる(特許文献2参照)。
【0006】
上記の他にもサンプリングを行う際に、50HZ,60HZを認識するために、かなりのプログラム処理をするものもある(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−254999号公報
【特許文献2】特開2007−155616号公報
【特許文献3】特開平11−304852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにデータセンタなどのIT機器に流れる電流を計測するには、複数の電流センサを各給電系統に設置(例えば、30から50個)し、これら電流センサが検出するダイナミックに変動するAC電流を同時に処理して計測する必要がある。しかし、複数のセンサからの電流を同時に処理して計測するのは、非常に困難を伴うとともに、計測器があっても極めて高価になって、経済的に不利になる。
【0008】
なぜなら、DC電流と異なりAC電流自体が変動する電流であるため、そのAC電流の包絡線を、又は実効値を常にセンサ毎に把握しなければならないからである。AC電流の1サイクルに対して数十のサンプリングを行う方式は、上述したようにあるが、これを1つの処理部で同時に数十のセンサに対して処理することは、サンプリングタイミングにずれが生じ困難を伴う問題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、給電系統に数十以上設置された電流センサが検出して送ってくるダイナミックに変動する電流センサ毎に精度良く電流を測定、記録することができる電流測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を達成するために、複数の給電系統と、これら給電系統にそれぞれ設置されるAC電流センサ、このセンサで検出された出力を整流する整流部、この整流部の出力をデジタル変換するAD変換部、このAD変換部の出力を上位装置に送るインタフェース部を有する複数設置された電流センサーユニットと、これら複数設置された電流センサーユニットからの信号を受け取る複数のインタフェース部、これらインタフェース部からの信号を選択する選択部、上位装置からの命令及びデータを受け、また上位装置に前記命令に対応したデータを送ることが出来る上位インタフェース部、不揮発性メモリとクロックの為の発信器を接続し、選択部で選択した信号から電流値を演算計測するマイクロプロセッサを有する電流センサ制御ユニットとから構成されたことを特徴とする。
【0011】
また、前記電流センサ制御ユニットは、商用電源の周波数が安定していること及びサンプリング定理を活用した方式のプログラム処理、50HZ及び60HZに対し共約数を持たないこと及び測定対象の電流変動速度を周波数に換算に、その周波数の2倍以上という条件の1秒間のサンプリング回数で各センサからセンスデータを処理するプログラムによって、1秒間又はその倍数の時間を使用して、同時に複数設置されたAC電流センサから送られてくるダイナミックに変動する電流変化を把握してセンサ毎の電流を測定し記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、数十以上の多量に設置されたAC電流センサが検出して送ってくるダイナミックに変動するAC電流をセンサ毎に精度良く、電流を計測し、記録することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態を示す構成図で、11は電流センサーユニットであり、このセンサーユニット11は、データセンタ等のIT機器の給電系統に複数設置されている。これらセンサーユニット11は、給電系統に複数設置される市販のAC電流センサ12と、そのセンサ12の出力を整流する整流部13と、その整流部13の出力をデジタル変換するAD変換部14と、そのAD変換部14の出力を上位装置(図示省略)に送るインタフェース部15とから構成される。整流部13の後ろに、必要に応じて平滑部を付加する場合がある。
【0014】
21は電流センサ制御ユニットで、このセンサ制御ユニット21は、複数設置されたセンサーユニット11からの信号を受け取るインタフェース部22a〜22nと、インタフェース部22a〜22nからの信号を選択する選択部23と、図示しない上位装置からの命令及びデータを受け、また上位装置に前記命令に対応したデータを送ることが出来る上位インタフェース部24と、不揮発性メモリ25とクロックの為の発信器26を接続するマイクロプロセッサ27とから構成される。
【0015】
上記のように構成された実施の形態においては、商用電源の周波数が安定していること及びサンプリング定理を活用した方式のプログラム処理であって、50HZ及び60HZに対し共約数を持たないことである。
【0016】
そして、測定対象の電流変動速度を周波数に換算し、その周波数の2倍以上という条件の1秒間のサンプリング回数で各センサからセンスデータを処理するプログラムによって、1秒間又はその倍数の時間を使って、同時に複数のAC電流センサから送られてくるダイナミックに変動する電流変化を把握してセンサ毎の電流を測定し記録する。
【0017】
図2は、変化しない50HZの電流をAC電流センサ12で1秒間センスした出力波形図である。図3は、ダイオードブリッジで全波整流した波形図である。図4は、図3の6サイクル分(全波整流の為12のピークがある)の出力を拡大した波形図である。
【0018】
図4の1、2、3、4、5及び6は、1秒間の49回サンプリングするときの場所とサンプリング値を示したものである。図5は1秒間に49回サンプリングした波形図であり、これは図4の1サイクルの波形と同形になる。電流値を求めるには、49回のサンプル値を累積して49で割った平均値に定数を掛ければ良い。
【0019】
図4の1は、サンプル開始の位置が波形の最初にした例であるが、実際はどの位置から開始しても1秒間たてば、1サイクルの波形となる。例えば、4の場所から1秒間49回サンプリングすれば、次のサイクルの3の位置までとなり、やはり1サイクル分となる。このことは、複数の電流センサーユニット11に於いて、電流波形に対しサンプリングの関始場所にとらわれなくて良く、各センサに対し1秒間に49回のサンプリングを等時間間隔に行いさえすれば良いことを示す。
【0020】
この方式は、1電流センサーユニツト21当りマイクロプロセツサ27に高速処理を求めないので、その分、複数の電流センサーユニット21に対する処理が可能となる。この実施の形態は、商用電源の周波数が安定していることを活用した方式である。60HZに対してサンプリング回数を「59」にすれば50HZと同様な図になる。
【0021】
しかし、60HZに対し同じ49回のサンプリング回数を使えば、図4のように1サイクル毎、次第にシフトタイミングでサンプリングした形にならないが、1秒間経てば、60HZの波形に対しても等間隔にサンプリングすることになる。その為、電流値を求めるには、50HZと同様に49回のサンプリング値を累積して49で割った平均値に定数を掛ければ良い。
【0022】
しかし、サンプリングにした順にサンプリング値を並べた場合は、図5のように滑らかな波形にはらないが並べ替えると同じ滑らかな図を得ることが出来る。
図6は、1秒間に電流が1/2に変化したことを示す波形図である。図7は、図6の電流変化に対して1秒間に49回サンプリングした波形図である。これについても49回のサンプリング値を累積して「49」で割った平均値に定数を掛けて求めた電流値は実際の値と一致する。
【0023】
しかし、電流変化速度を周波数に換算して2倍以上のサンプリング周波数でなければ電流変化に十分追従できない。ここでは、測定対象を一般のIT機器の消費電流を想定し、電流変化の周波数を20HZ以下としてその2倍以上の「49」を選択した。もし、電流変化の周波数が高い場合は、サンプリング周波数の高いものを選択すればよい。
【0024】
サンプリング周波数の選択条件は、電流変化の周波数の2倍以上で、旦つ50HZ及び60HZに共約数を持たない数であればよい。例えば、素数などがその条件にかなうため容易に選択できる。
【0025】
次に上記実施の形態の動作を、図8、図9の処理フローチャートにより述べる。この場合、センサは32個、サンプリング回数を「49」とした。
図8、図9において、ステップS1でリサイクルカウンタを「0」にセットし、ステップS2で「0」から「31」の電流センサに対応するメモリの各書き込みエリアをクリアする。その後、1/49秒タイマをステップS3で呼び出し、1/49秒経過したかを、ステップS4により判断し、「YES」ならステップS5に進んでタイマをセットする。ステップS4で「NO」ならステップS3の処理に戻る。
【0026】
ステップS5でタイマセットしたなら、ステップS6の処理でカレントセンサーアドレスレジスタに「0」をセットし、ステップS7でそのレジスタの内容を読み出す処理を行う。その後、ステップS8で当該アドレスの電流センサに対応する補正値を不揮発性メモリから読み出し、当該アドレスの電流センサ信号をステップS9で選択する。
【0027】
選択された信号が示す数値と補正値を、ステップS10で加算し、この加算値とメモリの当該電流センサの書き込みエリアから読み出した値と加算してステップS11の処理で上書きする。そして、カレントセンサーアドレスレジスタの内容を、ステップS12で読み出す。その内容が、「31」か動かを、ステップS13で判断し、「NO」ならステップS14でカレントセンサーアドレスレジスタの内容に「+1」して書きこんだ後、ステップS7の処理に戻る。
【0028】
一方、ステップS13で「YES」ならリサイクルカウンタをステップS15で読み出し、ステップS16でその数値が「49」であるかを判断し、「NO」ならステップS17でリサイクルカウンタの内容に「+1」して書き込んだ後、ステップ3の処理に戻る。また、ステップS16で「YES」ならステップS18の処理を行う。その処理は、「0」〜「31」の電流センサに対して、メモリの各電流センサのエリアのデータを読み出し、その値を「49」で割り算して、メモリの電流センサ毎の測定結果エリアに書き込んで、処理を終了する。
【0029】
上記実施の形態では、電流センサーユニット11と電流センサ制御ユニット21間をケーブルで接続する場合、両ユニット11,21間にデジタルインタフェースを設けているために、ケーブル長が長く(例えば、100m)なっても誤差要因となる雑音等の混入を防止することができる。
【0030】
また、この実施の形態では、1つのマイクロプロセッサで32個のセンサに対して処理していますが、従来のような電流センサのように1サイクル内を高速にサンプリングする方法では、1桁以下のセンサ分しか処理ができない。しかし、この形態では、1サイクル分の波形を認識する方法により、複数のセンサを同一のプロセッサで処理することが可能になる。即ち、この形態では、1秒間に49回のサンプリングをする。
【0031】
なお、従来では、1秒間に2500回前後のサンプリングとなり、多数のセンサに対してそれぞれ2500回前後のサンプリングをするには、センサの切替えと通信処理で実現は極めて困難となる。
【0032】
上記では、1秒間に49回のサンプリングについて、述べてきたが、1秒間に「47」、「49」、「53」、「59」、「61」・・・回サンプリングすれば、各センサに対しサンプリングの開始時点の波形は異なっても、兎に角、1秒経過すればそれぞれセンサに対し1サイクル分の波形を認識出来ると言う事である。そして、波形が認識できることが、即ち、精度が良いことである。このように、この形態では、波形が認識できることを、前提にしてセンスデータを加算し、サンプリング回数で割っている。
【0033】
上記のような数で1秒間サンプリングすると、50HZ及び60HZに対して、そのサンプリングポイントのセンサの値が1周期分の波形の包絡線を描くことである。1周期分であるからサンプリングの開始点が問題にならないという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、データセンタや企業内のマシン室に設置される複数のIT機器(サーバ、ネットワーク機器、ハードディスク等)に流れる電流を個々に計測し記録する電流測定装置として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態を示す構成説明図。
【図2】変化しない50HZの電流をAC電流センサで1秒間センスした出力波形図。
【図3】ダイオードブリッジで全波整流した波形図。
【図4】図3の6サイクル分の出力を拡大した波形図。
【図5】1秒間に49回サンプリングした波形図。
【図6】1秒間に電流が1/2に変化したことを示す波形図。
【図7】図6の電流変化に対して1秒間に49回サンプリングした波形図。
【図8】処理フローチャート。
【図9】処理フローチャート。
【符号の説明】
【0036】
11…電流センサーユニット
12…AC電流センサ
13…整流部
14…AD変換部
15…インタフェース部
21…電流センサ制御ユニット
22a〜22n…インタフェース部
23…選択部
24…上位インタフェース部
25…不揮発性メモリ
26…発信器
27…マイクロプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給電系統と、
これら給電系統にそれぞれ設置されるAC電流センサ、このセンサで検出された出力を整流する整流部、この整流部の出力をデジタル変換するAD変換部、このAD変換部の出力を上位装置に送るインタフェース部を有する複数設置された電流センサーユニットと、
これら複数設置された電流センサーユニットからの信号を受け取る複数のインタフェース部、これらインタフェース部からの信号を選択する選択部、上位装置からの命令及びデータを受け、また上位装置に前記命令に対応したデータを送ることが出来る上位インタフェース部、不揮発性メモリとクロックの為の発信器を接続し、選択部で選択した信号から電流値を演算計測するマイクロプロセッサを有する電流センサ制御ユニットとから構成されたことを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
前記電流センサ制御ユニットは、商用電源の周波数が安定していること及びサンプリング定理を活用した方式のプログラム処理、50HZ及び60HZに対し共約数を持たないこと及び測定対象の電流変動速度を周波数に換算に、その周波数の2倍以上という条件の1秒間のサンプリング回数で各センサからセンスデータを処理するマイクロプロセッサによって、1秒間又はその倍数の時間を使用し、同時に複数設置されたAC電流センサから送られてくるダイナミックに変動する電流変化を把握してセンサ毎の電流を測定し記録することを特徴とする請求項1記載の電流測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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