電源スイッチ
【課題】スイッチ主体部を小型化すると共に、常に良好な通電性能を発揮させる。
【解決手段】板状の回転端子12とその周囲の絶縁樹脂部13で成り、一方向に回動する円板状の回転端子成形体2と、回転端子を挟む弾性接触部材22と、外部接続部18とを有する板状の一対の固定端子3,4とを備える電源スイッチ1を採用する。駆動用の軸部6を挿通させる孔部14の両側で各一対の弾性接触部材22に回転端子12を接触させる。一対の固定端子3,4の間隔をスペーサ5で規定した。弾性接触部材22に複数の傾斜状の接触片24を形成し、対向する接触片を同方向に傾斜させた。接触片24を回転端子12に斜めに接触するように傾斜させた。回転端子12と絶縁樹脂部13’の境を絶縁樹脂部一体のリブ40で覆った。回転端子12の両側で絶縁樹脂部13’を薄肉化した。
【解決手段】板状の回転端子12とその周囲の絶縁樹脂部13で成り、一方向に回動する円板状の回転端子成形体2と、回転端子を挟む弾性接触部材22と、外部接続部18とを有する板状の一対の固定端子3,4とを備える電源スイッチ1を採用する。駆動用の軸部6を挿通させる孔部14の両側で各一対の弾性接触部材22に回転端子12を接触させる。一対の固定端子3,4の間隔をスペーサ5で規定した。弾性接触部材22に複数の傾斜状の接触片24を形成し、対向する接触片を同方向に傾斜させた。接触片24を回転端子12に斜めに接触するように傾斜させた。回転端子12と絶縁樹脂部13’の境を絶縁樹脂部一体のリブ40で覆った。回転端子12の両側で絶縁樹脂部13’を薄肉化した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転端子と固定端子との接触の有無で通電遮断を行わせる電源スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の電源スイッチの一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この電源スイッチ71は、自動車のバッテリポスト72に接続される導電金属板である第一のバスバー73と、車両の負荷側に接続される第二のバスバー74と、両バスバー73,74の間に軸部78を支点に揺動自在に配置され、両バスバー73,74に対する接続用の導体部75を有する揺動板76とを備えるものである。
【0004】
両バスバー73,74には湾曲状の弾性接触板(図示せず)が設けられており、図9の状態からモータ77の駆動で揺動板76が回動して、両弾性接触板の間に揺動板76の導体部75が進入して、通電が行われ、モータ77の逆転で揺動板76が図9の位置に復帰して、電源が遮断される。
【0005】
図10(a)(b)は、従来の電源スイッチの他の形態を示すものである(特許文献2参照)。
【0006】
この電源スイッチ61は、一対の板状の固定端子62と、各固定端子62の基端に設けられた厚肉の導電接触部63と、両固定端子62の間に回動自在に配置された回転端子64と、回転端子64と固定端子62の基端側の導電接触部63を覆って保持する絶縁樹脂製のケース65とを備えたものである。
【0007】
回転端子64は両端の円弧面に複数の接触ばね片66(図11)を有し、固定端子62の基端の導電接触部63は接触ばね片66を摺接させる円弧面を有している。回転端子64の幅方向両側には絶縁部67が設けられている。図11に示す如く、回転端子64と絶縁部67は前後の樹脂キャップ69で挟まれ、これらで円柱状の回転端子組立体が構成されている。
【0008】
両固定端子62の先端部は例えば自動車のバッテリの電源線に接続される。回転端子64は軸部68をモータとギヤといった駆動手段(図示せず)で回動される。図10(a)の状態で両固定端子62が回転端子64を介して接続され、バッテリから自動車の各補機等に通電され、図10(a)の状態から回転端子を90゜回動させた図10(b)の状態で、両固定端子62と回転端子64との接触が断たれ、バッテリからの導通が遮断される。
【特許文献1】特開平11−219631号公報(図2)
【特許文献2】特開2002−367462号公報(図8,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記図9の従来の電源スイッチ71にあっては、スイッチオフ状態が長く続いた場合に、揺動板76の導体部75やバスバー73,74側の弾性接触板の表面が酸化して通電性が低下しやすいという問題があった。また、揺動板76と上下の弾性接触板との摺動抵抗が大きくなった場合に、電源回路の断続が不確実になり兼ねないという懸念があった。また、手動操作で電源回路を断続させるためには、揺動板76を異なる方向に移動(往復動)させなければならず、操作性が悪いという問題もあった。
【0010】
また、上記図10の従来の電源スイッチ61にあっては、回転端子(導体部)64の中央に軸部68を貫通させる孔部を設けたことで、回転端子64の断面積が減少して抵抗が増し(通電性が低下し)、それを補うために回転端子64の板厚を増加させなければならず、スイッチ主体部ひいては電源スイッチ自体が大型化するという問題があった。これはまた、接触ばね片66の高さ寸法が大きいことによっても生じることである。また、接触ばね片66と固定端子62との初期接触時に、スパークによるスパッタを生じた場合に、スパッタが固定端子62やケース65の内周面等に噛み込んで摩擦抵抗が増大し、回転端子64の動きが悪化したりするという懸念もあった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、スイッチ主体部の小型化を図ることができ、また、電源回路の断続を操作性良く確実に行うことができ、また、導体部の酸化や断面積の減少に起因する通電性の低下等を改善して、常に良好な通電性能を発揮することのできる電源スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電源スイッチは、板状の回転端子とその周囲の絶縁樹脂部とで成る円板状の回転端子成形体と、該回転端子を挟む弾性接触部材と、入出力用の外部接続部とを有する板状の一対の固定端子とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、円板状の回転端子成形体と、回転端子成形体の板厚方向両側に位置する板状の固定端子とで、薄型のスイッチ主体部が構成される。回転端子成形体は手動操作で一方向に回転されることが操作性向上の観点から好ましい。円板状の回転端子成形体は中央に回動中心を有する。
【0014】
請求項2に係る電源スイッチは、請求項1記載の電源スイッチにおいて、前記回転端子が、駆動用の軸部を挿通させる孔部の両側で各一対の前記弾性接触部材に接触することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、回転端子が孔部の片側で一対の弾性接触部材に接触する場合に較べて倍の接触面積が確保され、電気抵抗が低減され、通電性能が高まる。孔部が大きくても、回転端子が板厚方向に接触するから、孔部に無関係に通電性能が確保される。
【0016】
請求項3に係る電源スイッチは、請求項1又は2記載の電源スイッチにおいて、前記一対の固定端子の間隔がスペーサで規定されたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、一対の固定端子の間にスペーサが配置され、スペーサの厚みの範囲で回転端子成形体が回転自在に配置され、回転端子が各固定端子の弾性接触部材に最適な接圧で弾性接触する。
【0018】
請求項4に係る電源スイッチは、請求項1〜3の何れかに記載の電源スイッチにおいて、前記弾性接触部材が複数の傾斜状に立ち上げられた接触片を有し、対向する一対の該弾性接触片の接触片が同方向に傾斜したことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、回転端子の回転時に傾斜状の接触片で回転端子表面の酸化皮膜が掻き落とされて常に良好な通電性が確保されると共に、回転端子を挟んだ各接触片が低摩擦抵抗で回転端子に摺接し、回転端子の駆動力が低減される。
【0020】
請求項5に係る電源スイッチは、請求項4記載の電源スイッチにおいて、前記接触片が前記回転端子に対して斜めに接触するようにも傾斜していることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、例えば一枚の導電金属板から接触片を切り起こした際に、接触片の長さが長く確保されると共に、スイッチを接続する際に、先頭の接触片の先端のみが最初に回転端子に接触することで、スパークを生じた際の接触片のダメージが最小限に抑えられる。さらに、回転端子に対する摺動抵抗も低減される。
【0022】
請求項6に係る電源スイッチは、請求項1〜5の何れかに記載の電源スイッチにおいて、前記回転端子と前記絶縁樹脂部との境が該絶縁樹脂部と一体のリブで覆われていることを特徴とする。
【0023】
上記構成により、回転端子と絶縁樹脂部とを樹脂一体成形(回転端子を絶縁樹脂部にインサート成形)する際に、回転端子の端部で生じる樹脂のバリが樹脂のリブに吸収されて、バリの発生が防止される。回転端子の回転時のリブが弾性接触部材の接触片に摺接して接触片を塵や酸化皮膜等なく清掃する。
【0024】
請求項7に係る電源スイッチは、請求項1〜6の何れかに記載の電源スイッチにおいて、前記回転端子の両側で前記絶縁樹脂部が薄肉に形成されていることを特徴とする。
【0025】
上記構成により、回転端子の回転時やスイッチ遮断時にスパッタ等の異物が絶縁樹脂部の薄肉部分に付着しても、固定端子の弾性接触部材との間に隙間があるから、スパッタ等に起因するショート等が防止される。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明によれば、円板状の回転端子成形体と板状の固定端子とでスイッチ主体部が薄型に構成され、電源スイッチ自体の厚み方向のコンパクト化が達成される。また、固定端子が回転端子に対し、外部接続部から略コの字状に分流して接続されることで、大電流に対する通電発熱が低減され、且つ放熱効果が高まる。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、孔部が大きくても何ら通電性に悪影響を与えることなく、両側の各一対の弾性接触部材で良好な通電性能が発揮される。また、弾性接触部材を固定端子に対して別体で接続することで、通電電流値に応じて大きさ・数を変更することができる。
【0028】
請求項3記載の発明によれば、スペーサで各固定端子の弾性接触部材に対する回転端子の接触圧力が常に最適に保たれるから、弾性接触部材が座屈してしまうことがなく、通電性能が長期に渡って良好に維持される。
【0029】
請求項4記載の発明によれば、対向する傾斜状の各接触片で回転端子の酸化皮膜が掻き落とされて通電性能が常に良好に維持されると共に、回転端子の回転操作力が低くて済み、操作性が向上する。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、スイッチの接続に際して、先頭の接触片の先端のみが回転端子に接触してスパークを生じることで、接触片の傷みが防止されると共に、斜めの接触片によって回転端子との摺動抵抗が低減され、回転端子の回転操作性が一層向上する。
【0031】
請求項6記載の発明によれば、回転端子成形体の一体樹脂成形時に回転端子と絶縁樹脂部との境に生じる樹脂バリが防止され、バリに起因する接触隙間等の発生が防止されると共に、回転端子の回転時にリブが弾性接触部材の接触片をワイピングする(掻き取るように接触する)ことで、通電性能が常に良好に維持される。
【0032】
請求項7記載の発明によれば、絶縁樹脂部の薄肉部分にスパッタ等が付着しても、固定端子の弾性接触部材にスパッタ等が接触しないから、ショート等が防止され、スイッチの断続性能の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1〜図2は、本発明に係る電源スイッチの一実施形態を示すものである。
【0034】
図1の如く、この電源スイッチ1は、円板状の回転端子成形体2と、回転端子成形体2を板厚方向に挟むように配置される上下一対の板状の固定端子3,4と、両固定端子3,4の間に配置される絶縁樹脂製のスペーサ5と、回転端子成形体2を回転自在に支持する軸部6と、軸部6にコイルばね(弾性部材)7を介して回転端子成形体2から離間する方向(上方向)に付勢される円形のラチェット板8と、ラチェット板8に係合する円形の操作スイッチ9と、各部材2〜9を収容する上下分割式の絶縁ケース10,11とで構成されている。少なくとも回転端子成形体2と一対の固定端子3,4とでスイッチ主体部50(図2)が構成される。
【0035】
図1〜図2の如く、回転端子成形体2は、導電金属製のバスバーである回転端子12と、回転端子12の周囲と中心部とに一体樹脂成形された円形板状の合成樹脂製の絶縁樹脂部13とで構成されている。回転端子12は180゜方向に延長され、中央に孔部14を有し、孔部14の周縁を絶縁樹脂部13のボス部15で覆われ、長手方向の両端部の外周を絶縁樹脂部13の環状部16で覆われ、孔部14を境に前後及び上下(板厚方向両側)の接触面(符号12で代用する)を露出させている。本例の絶縁樹脂部13は中央のボス部15と外周の環状部16との間に放射状のリブ17を有している。
【0036】
各固定端子3,4は、先端側に外部接続部(一方が入力側、他方が出力側)18を有する一本の基板19と、基板19に直交した二本の平行な接触板20とで成るバスバーである固定端子本体21と、各接触板20に上下対向して配設されたマルチコンタクトである弾性接触部材22とで対称に(同一形状のものを180゜反転させて)構成されている。各固定端子3,4を固定端子組立体と呼称してもよい。明細書で上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、電源スイッチ1の配置方向と必ずしも一致するとは限らない。
【0037】
弾性接触部材22は、導電金属製の長方形の基板部23から基板部板厚方向に斜めに切り起こされた複数の接触片24と、基板部23の両側で略コの字状に折り曲げられた固定用の加締片25とを備えている。各接触片24は中央に接触用の突部24aを有し、各接触片24の両端は基板部23に交差して一体に続いている。各接触片24は板厚方向のみではなく基板部23の長手方向にも傾斜している(これについては後述する)。加締片25は接触板20を把持する。
【0038】
各固定端子3,4の二枚の接触板20における同一面の一対の弾性接触部材22の接触片24の傾斜方向は逆になっており、両固定端子3,4の対向する弾性接触部材22の接触片24の傾斜方向は同じになっている。これにより、操作スイッチ9を一方向に90゜づつ回動することで電源回路がオンオフされ、且つ操作スイッチ9が小さな力(摺動抵抗)でスムーズに回動される。
【0039】
回転端子成形体2の中央の孔部14を境に回転端子12であるバスバーを一方のみに配置した場合でも、操作スイッチ9の90゜づつの回動操作で電源回路をオンオフすることができるが、電気的接触面積が半減するので、電気抵抗は倍加する。この場合、一方のみの回転端子12に対応して各固定端子3,4の接触板20(弾性接触部材22)を一枚とすることは可能である。
【0040】
図2の例で、固定端子本体21の各基板19の側端方と各接触板20の先端方とには各二対の支持用の孔部26が設けられ、外部接続部18には一つの接続用の孔部27が設けられている。支持用の各孔部26に対して絶縁樹脂性の各スペーサ5の両端の環状部28が配置され、両環状部28は連結板29で連結されている。スペーサの厚みは回転端子成形体の厚みよりも厚く形成され、固定端子3,4の弾性接触部材22に回転端子12が弾性接触するようになっている。
【0041】
二枚の固定端子3,4はスペーサ5を挟んで平行に且つ対称に配置され、両固定端子3,4の弾性接触部材22が対向して位置し、両固定端子3,4の間で両スペーサ5の間に回転端子成形体2が位置し、回転端子12が各一対の弾性接触部材22に対応して接触可能に位置し、回転駆動用の軸部6が各基板19と各接触板20とで囲まれた矩形状の空間に挿通される。
【0042】
各固定端子3,4や回転端子成形体2が板状に形成されているから、スイッチ構造が厚み方向に薄型化されている。また、上下の両固定端子3,4の弾性接触部材22が回転端子12の板厚方向に接触して導通が行われるから、回転端子12の中央の孔部14が大きくても、何ら通電性能に影響が及ぶことがない。固定端子3,4の二本の接触板20にそれぞれ弾性接触部材22が設けられているから、たとえ孔部14を境に回転端子12が左右に分割(分離)されていても、何ら通電性能に影響が及ぶことがない。また、上下の弾性接触部材22が回転端子2の板厚方向に接触するから、回転端子2の板厚が薄くても何ら通電性能に影響が及ぶことがない(むしろ薄い方が抵抗が少ない)。
【0043】
図1の如く、下側の固定端子4の孔部26が下側のケース11の四隅のボス部(筒部)29に係合し、各ボス部29にスペーサ5の環状部28が係合し、次いで上側の固定端子3の孔部26がボス部29に係合する。軸部6の下端は下側のケース11の中央の筒部30に係合する。軸部6の上端はラチェット板8の中央の孔部31を貫通して操作スイッチ(ダイヤル)9に固定され、軸部6の中間キー部が回転端子12の孔部14に係合する。筒部30に回転端子成形体2の下面側のボス部(図示せず)が当接する。
【0044】
ラチェット板8は、コイルばね7の付勢に抗して上側の固定端子3に当接する突起32と、同じく回転端子成形体2の中央のボス部15に押接するボス部(図示せず)と、操作スイッチ9の外周の各突起33に押接する傾斜突起34とを有している。操作スイッチ9は上側のケース10の環状壁35の内側に収容される。
【0045】
操作スイッチ9を矢印36の方向に回すことで、突起33が傾斜突起34を押し下げ、回転端子成形体2が軸部6で駆動(回動)されつつ、ラチェット板8が固定端子3,4と回転端子12とを押接させて、電源回路が確実に通電される。この際、弾性接触部材22の傾斜状の接触片24(図2)が回転端子12の表面を擦ることで、回転端子12の表面の酸化皮膜が除去される。
【0046】
再度、操作スイッチ9を同方向に回すことで、回転端子12が各弾性接触部材22から90゜方向に反転離間して電源回路が遮断されつつ、ラチェット板8がばね7の付勢で回転端子成形体2から板厚方向に離間する。
【0047】
上記電源スイッチ1は、例えば自動車のバッテリのプラス電極とヒュージブルリンクボックス(図示せず)との間に接続され、自動車を船輸送等する際に、使用しない時計等の暗電流を遮断するために使用したり、自動車事故等の緊急時にショートを防ぐためにバッテリ電源を遮断するために使用する。
【0048】
図3〜図4は、回転端子成形体の他の実施形態を示すものである。図2と同様の構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
この回転端子成形体2’は、導電金属製の回転端子12の有るインサート成形部分37を厚肉に形成し、その厚肉部分37の両側の絶縁樹脂部38を薄肉に形成して、接続時のスパッタ39(図6)の付着によるリークを防止すると共に、厚肉部分37と薄肉部分38との境界部すなわち回転端子12と絶縁樹脂部13’との境界にリブ40を形成して、樹脂成形時の樹脂バリ(図示せず)を防止したことを特徴とするものである。その他の固定端子等の構成部品部分は前記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
図3の回転端子成形体2’においては、図2の回転端子成形体2の外周の環状部16や放射状のリブ17は形成されていない。中央のボス部15’は軸部6(図1)を回転不能に挿通させる孔部14を有し、ボス部15’の両側に接して一対のリブ40が平行に樹脂成形され、一対のリブ40の内側にバスバーである回転端子12が位置し、回転端子12の露出された表面(符号12で代用)よりもリブ40がボス部15’と同程度に高く突出している。
【0051】
回転端子成形体2’の裏面側にも一対のリブ40が同様に形成されている。上下一対のリブ40は、絶縁樹脂部13’の薄肉部38がない均一な厚さの回転端子成形体(例えば図1の回転端子成形体2)においても形成可能である。図4や以下の図5ではボス部15’や孔部14の図示を省略している(中央からずれた位置の断面を示している)。
【0052】
図3の回転端子成形体2’において、絶縁樹脂部13’の薄肉部38を形成せずにリブ40のみを形成したり、リブ40を形成せずに薄肉部38のみを形成することも有効である。図2の回転端子成形体2に同様のリブ40や薄肉部38を形成することも可能である。
【0053】
図5は、回転端子成形体2’を樹脂成形するための成形金型と成形方法の一形態を示すものである。
【0054】
この成形金型41は上下に分割され、各金型41は、回転端子であるバスバー12を押さえるためのエッジ状の凸部42と、凸部42の外側に隣接してリブ成形用の凹部43と、凸部42の内側に隣接する小凹部44とそれに続くバスバー押さえ面45と、凹部43の外側に続く樹脂部成形空間46とそれに続く樹脂注入ゲート47とを有している。
【0055】
上下のエッジ状の凸部42がバスバー12を挟むことで、凸部42の内側(小凹部44)への溶融樹脂材(図示せず)の浸入が阻止され、樹脂バリの発生が防止される。凸部42はバリ切りとして作用する。バスバー12の両端部12aは凹部43内に配置され、バスバー12の端部12aで生じる樹脂バリが確実に阻止される。中央のボス部15’(図3)はリブ40に続いて樹脂注入される。
【0056】
この回転端子成形体2’によれば、弾性接触部材22(図2)の各接触片24がリブ40に接触して乗り越えることで、接触片24に付着したスパッタ(スイッチの断続時のスパークで生じる異物)や塵等の異物がリブ40で掻き取られて清掃され、回転端子12と接触片24との良好な接続状態が維持されるという効果も奏する。
【0057】
図6(a)は、回転端子12と上下の固定端子3,4とを接続させたスイッチオン状態、図6(b)は、回転端子と上下の固定端子とを離間させたスイッチオフ状態をそれぞれ示している。
【0058】
図6(a)において、上下の弾性接触部材22の接触片24は同方向に傾斜して、回転端子12の一方向の回動を低摩擦で行わせる。また、各接触片24は回転端子12に斜めに接触して冷却フィンとしての機能や前記清掃機能を発揮する。冷却作用で回転端子表面の酸化皮膜の発生が抑止される。また、スペーサ5(図1)で固定端子3,4と回転端子12との間隔が規定され、各接触片24は弾性領域で安定した接圧で回転端子12に接触する。例えば接触片24の数を倍に(弾性接触部材22の長さを倍に)設定すれば、二倍の定格電流に容易に対応できる。
【0059】
図6(b)において、回転端子12よりも絶縁樹脂部13’の板厚が薄く形成されたことで(符号38の部分)、回転端子12と固定端子3,4が接触を開始する時に、スパーク(ショート)して絶縁樹脂部38にスパッタ39が付着しても、電源スイッチ1の遮断時に絶縁樹脂部38と弾性接触部材22の接触片24との絶縁距離L1が確保されるので、その状態におけるショートが確実に防止される。また、上下の対向する弾性接触部材22が絶縁樹脂部38の表裏面で仕切られるので、両弾性接触部材間のトラッキングも防止される。
【0060】
図7(a)(b)は、回転端子12と固定端子3,4との接触開始時の状態を示すものである。回転端子12としては図1や図3のものが適用される。固定端子3,4の接触片24は弾性接触部材22の基板部の長手方向のみに傾斜したものとして示している。
【0061】
図7(a)の如く、電源スイッチ1をオンする際に、固定端子3,4の弾性接触部材22の傾斜状に立ち上げられた複数の接触片24における先頭の接触片241のみが最初に回転端子12に触れるので、スパーク48による接触片24の損傷は先頭の接触片241だけで済み、スイッチの断続が頻繁に繰り返されても、先頭以降の接触片24は損傷を受けずに良好な電気的接触を確保することができる。
【0062】
図7(b)の如く、回転端子12の回動方向Aに対し、同一平面の左右の弾性接触部材22の取付位置をL2のようにずらすことで、スパーク48による接触片24の損傷は一箇所で済む。回転端子12は第一の弾性接触部材22に接触した後、第二の弾性接触部材22に接触する。
【0063】
図8(a)(b)は、固定端子の弾性接触部材の一形態及び回転端子との接触開始時の状態を示すものである。回転端子12としては図1や図3のものが適用される。
【0064】
弾性接触部材22の各接触片24を接触部材幅方向に対して斜めに切り起こすことにより、すなわち回転端子に対して斜めに接触するようにも傾斜させたことで、同じ母材(導電金属板)から切り起こしエッジの長い接触片24を得ることができ、回転端子12に対する接触面積が増加すると共に、回転端子12に対するショート48の発生位置を先頭の接触片241のブレードの一部に集約でき、且つ接触片24のブレードと回転端子12との接触をより滑らかに行わせることができる。図8(b)においても図7(b)のように各弾性接触部材22をL2のように位置ずれして配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る電源スイッチの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同じく電源スイッチの要部を示す分解斜視図である。
【図3】電源スイッチの回転端子の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】同じく回転端子を示す縦断面図である。
【図5】同じく回転端子の樹脂成形方法を示す縦断面図である。
【図6】(a)は回転端子と固定端子の接続状態、(b)は同じく遮断状態を示す縦断面図である。
【図7】(a)は回転端子と固定端子の初期接触状態を示す側面図、(b)は同じく平面図である。
【図8】(a)は固定端子の弾性接触部材の一形態を示す平面図、(b)は同じく固定端子と回転端子の初期接触状態を示す平面図である。
【図9】従来の電源スイッチの一形態を示す平面図である。
【図10】(a)は従来の電源スイッチの他の形態の接続状態、(b)は遮断状態をそれぞれ示す平面図である。
【図11】従来の電源スイッチの回転端子組立体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 電源スイッチ
2,2’ 回転端子成形体
3,4 固定端子
5 スペーサ
6 軸部
12 回転端子
13,13’絶縁樹脂部
14 孔部
18 外部接続部
22 弾性接触部材
24 接触片
38 薄肉部
40 リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転端子と固定端子との接触の有無で通電遮断を行わせる電源スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の電源スイッチの一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この電源スイッチ71は、自動車のバッテリポスト72に接続される導電金属板である第一のバスバー73と、車両の負荷側に接続される第二のバスバー74と、両バスバー73,74の間に軸部78を支点に揺動自在に配置され、両バスバー73,74に対する接続用の導体部75を有する揺動板76とを備えるものである。
【0004】
両バスバー73,74には湾曲状の弾性接触板(図示せず)が設けられており、図9の状態からモータ77の駆動で揺動板76が回動して、両弾性接触板の間に揺動板76の導体部75が進入して、通電が行われ、モータ77の逆転で揺動板76が図9の位置に復帰して、電源が遮断される。
【0005】
図10(a)(b)は、従来の電源スイッチの他の形態を示すものである(特許文献2参照)。
【0006】
この電源スイッチ61は、一対の板状の固定端子62と、各固定端子62の基端に設けられた厚肉の導電接触部63と、両固定端子62の間に回動自在に配置された回転端子64と、回転端子64と固定端子62の基端側の導電接触部63を覆って保持する絶縁樹脂製のケース65とを備えたものである。
【0007】
回転端子64は両端の円弧面に複数の接触ばね片66(図11)を有し、固定端子62の基端の導電接触部63は接触ばね片66を摺接させる円弧面を有している。回転端子64の幅方向両側には絶縁部67が設けられている。図11に示す如く、回転端子64と絶縁部67は前後の樹脂キャップ69で挟まれ、これらで円柱状の回転端子組立体が構成されている。
【0008】
両固定端子62の先端部は例えば自動車のバッテリの電源線に接続される。回転端子64は軸部68をモータとギヤといった駆動手段(図示せず)で回動される。図10(a)の状態で両固定端子62が回転端子64を介して接続され、バッテリから自動車の各補機等に通電され、図10(a)の状態から回転端子を90゜回動させた図10(b)の状態で、両固定端子62と回転端子64との接触が断たれ、バッテリからの導通が遮断される。
【特許文献1】特開平11−219631号公報(図2)
【特許文献2】特開2002−367462号公報(図8,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記図9の従来の電源スイッチ71にあっては、スイッチオフ状態が長く続いた場合に、揺動板76の導体部75やバスバー73,74側の弾性接触板の表面が酸化して通電性が低下しやすいという問題があった。また、揺動板76と上下の弾性接触板との摺動抵抗が大きくなった場合に、電源回路の断続が不確実になり兼ねないという懸念があった。また、手動操作で電源回路を断続させるためには、揺動板76を異なる方向に移動(往復動)させなければならず、操作性が悪いという問題もあった。
【0010】
また、上記図10の従来の電源スイッチ61にあっては、回転端子(導体部)64の中央に軸部68を貫通させる孔部を設けたことで、回転端子64の断面積が減少して抵抗が増し(通電性が低下し)、それを補うために回転端子64の板厚を増加させなければならず、スイッチ主体部ひいては電源スイッチ自体が大型化するという問題があった。これはまた、接触ばね片66の高さ寸法が大きいことによっても生じることである。また、接触ばね片66と固定端子62との初期接触時に、スパークによるスパッタを生じた場合に、スパッタが固定端子62やケース65の内周面等に噛み込んで摩擦抵抗が増大し、回転端子64の動きが悪化したりするという懸念もあった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、スイッチ主体部の小型化を図ることができ、また、電源回路の断続を操作性良く確実に行うことができ、また、導体部の酸化や断面積の減少に起因する通電性の低下等を改善して、常に良好な通電性能を発揮することのできる電源スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電源スイッチは、板状の回転端子とその周囲の絶縁樹脂部とで成る円板状の回転端子成形体と、該回転端子を挟む弾性接触部材と、入出力用の外部接続部とを有する板状の一対の固定端子とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、円板状の回転端子成形体と、回転端子成形体の板厚方向両側に位置する板状の固定端子とで、薄型のスイッチ主体部が構成される。回転端子成形体は手動操作で一方向に回転されることが操作性向上の観点から好ましい。円板状の回転端子成形体は中央に回動中心を有する。
【0014】
請求項2に係る電源スイッチは、請求項1記載の電源スイッチにおいて、前記回転端子が、駆動用の軸部を挿通させる孔部の両側で各一対の前記弾性接触部材に接触することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、回転端子が孔部の片側で一対の弾性接触部材に接触する場合に較べて倍の接触面積が確保され、電気抵抗が低減され、通電性能が高まる。孔部が大きくても、回転端子が板厚方向に接触するから、孔部に無関係に通電性能が確保される。
【0016】
請求項3に係る電源スイッチは、請求項1又は2記載の電源スイッチにおいて、前記一対の固定端子の間隔がスペーサで規定されたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、一対の固定端子の間にスペーサが配置され、スペーサの厚みの範囲で回転端子成形体が回転自在に配置され、回転端子が各固定端子の弾性接触部材に最適な接圧で弾性接触する。
【0018】
請求項4に係る電源スイッチは、請求項1〜3の何れかに記載の電源スイッチにおいて、前記弾性接触部材が複数の傾斜状に立ち上げられた接触片を有し、対向する一対の該弾性接触片の接触片が同方向に傾斜したことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、回転端子の回転時に傾斜状の接触片で回転端子表面の酸化皮膜が掻き落とされて常に良好な通電性が確保されると共に、回転端子を挟んだ各接触片が低摩擦抵抗で回転端子に摺接し、回転端子の駆動力が低減される。
【0020】
請求項5に係る電源スイッチは、請求項4記載の電源スイッチにおいて、前記接触片が前記回転端子に対して斜めに接触するようにも傾斜していることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、例えば一枚の導電金属板から接触片を切り起こした際に、接触片の長さが長く確保されると共に、スイッチを接続する際に、先頭の接触片の先端のみが最初に回転端子に接触することで、スパークを生じた際の接触片のダメージが最小限に抑えられる。さらに、回転端子に対する摺動抵抗も低減される。
【0022】
請求項6に係る電源スイッチは、請求項1〜5の何れかに記載の電源スイッチにおいて、前記回転端子と前記絶縁樹脂部との境が該絶縁樹脂部と一体のリブで覆われていることを特徴とする。
【0023】
上記構成により、回転端子と絶縁樹脂部とを樹脂一体成形(回転端子を絶縁樹脂部にインサート成形)する際に、回転端子の端部で生じる樹脂のバリが樹脂のリブに吸収されて、バリの発生が防止される。回転端子の回転時のリブが弾性接触部材の接触片に摺接して接触片を塵や酸化皮膜等なく清掃する。
【0024】
請求項7に係る電源スイッチは、請求項1〜6の何れかに記載の電源スイッチにおいて、前記回転端子の両側で前記絶縁樹脂部が薄肉に形成されていることを特徴とする。
【0025】
上記構成により、回転端子の回転時やスイッチ遮断時にスパッタ等の異物が絶縁樹脂部の薄肉部分に付着しても、固定端子の弾性接触部材との間に隙間があるから、スパッタ等に起因するショート等が防止される。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明によれば、円板状の回転端子成形体と板状の固定端子とでスイッチ主体部が薄型に構成され、電源スイッチ自体の厚み方向のコンパクト化が達成される。また、固定端子が回転端子に対し、外部接続部から略コの字状に分流して接続されることで、大電流に対する通電発熱が低減され、且つ放熱効果が高まる。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、孔部が大きくても何ら通電性に悪影響を与えることなく、両側の各一対の弾性接触部材で良好な通電性能が発揮される。また、弾性接触部材を固定端子に対して別体で接続することで、通電電流値に応じて大きさ・数を変更することができる。
【0028】
請求項3記載の発明によれば、スペーサで各固定端子の弾性接触部材に対する回転端子の接触圧力が常に最適に保たれるから、弾性接触部材が座屈してしまうことがなく、通電性能が長期に渡って良好に維持される。
【0029】
請求項4記載の発明によれば、対向する傾斜状の各接触片で回転端子の酸化皮膜が掻き落とされて通電性能が常に良好に維持されると共に、回転端子の回転操作力が低くて済み、操作性が向上する。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、スイッチの接続に際して、先頭の接触片の先端のみが回転端子に接触してスパークを生じることで、接触片の傷みが防止されると共に、斜めの接触片によって回転端子との摺動抵抗が低減され、回転端子の回転操作性が一層向上する。
【0031】
請求項6記載の発明によれば、回転端子成形体の一体樹脂成形時に回転端子と絶縁樹脂部との境に生じる樹脂バリが防止され、バリに起因する接触隙間等の発生が防止されると共に、回転端子の回転時にリブが弾性接触部材の接触片をワイピングする(掻き取るように接触する)ことで、通電性能が常に良好に維持される。
【0032】
請求項7記載の発明によれば、絶縁樹脂部の薄肉部分にスパッタ等が付着しても、固定端子の弾性接触部材にスパッタ等が接触しないから、ショート等が防止され、スイッチの断続性能の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1〜図2は、本発明に係る電源スイッチの一実施形態を示すものである。
【0034】
図1の如く、この電源スイッチ1は、円板状の回転端子成形体2と、回転端子成形体2を板厚方向に挟むように配置される上下一対の板状の固定端子3,4と、両固定端子3,4の間に配置される絶縁樹脂製のスペーサ5と、回転端子成形体2を回転自在に支持する軸部6と、軸部6にコイルばね(弾性部材)7を介して回転端子成形体2から離間する方向(上方向)に付勢される円形のラチェット板8と、ラチェット板8に係合する円形の操作スイッチ9と、各部材2〜9を収容する上下分割式の絶縁ケース10,11とで構成されている。少なくとも回転端子成形体2と一対の固定端子3,4とでスイッチ主体部50(図2)が構成される。
【0035】
図1〜図2の如く、回転端子成形体2は、導電金属製のバスバーである回転端子12と、回転端子12の周囲と中心部とに一体樹脂成形された円形板状の合成樹脂製の絶縁樹脂部13とで構成されている。回転端子12は180゜方向に延長され、中央に孔部14を有し、孔部14の周縁を絶縁樹脂部13のボス部15で覆われ、長手方向の両端部の外周を絶縁樹脂部13の環状部16で覆われ、孔部14を境に前後及び上下(板厚方向両側)の接触面(符号12で代用する)を露出させている。本例の絶縁樹脂部13は中央のボス部15と外周の環状部16との間に放射状のリブ17を有している。
【0036】
各固定端子3,4は、先端側に外部接続部(一方が入力側、他方が出力側)18を有する一本の基板19と、基板19に直交した二本の平行な接触板20とで成るバスバーである固定端子本体21と、各接触板20に上下対向して配設されたマルチコンタクトである弾性接触部材22とで対称に(同一形状のものを180゜反転させて)構成されている。各固定端子3,4を固定端子組立体と呼称してもよい。明細書で上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、電源スイッチ1の配置方向と必ずしも一致するとは限らない。
【0037】
弾性接触部材22は、導電金属製の長方形の基板部23から基板部板厚方向に斜めに切り起こされた複数の接触片24と、基板部23の両側で略コの字状に折り曲げられた固定用の加締片25とを備えている。各接触片24は中央に接触用の突部24aを有し、各接触片24の両端は基板部23に交差して一体に続いている。各接触片24は板厚方向のみではなく基板部23の長手方向にも傾斜している(これについては後述する)。加締片25は接触板20を把持する。
【0038】
各固定端子3,4の二枚の接触板20における同一面の一対の弾性接触部材22の接触片24の傾斜方向は逆になっており、両固定端子3,4の対向する弾性接触部材22の接触片24の傾斜方向は同じになっている。これにより、操作スイッチ9を一方向に90゜づつ回動することで電源回路がオンオフされ、且つ操作スイッチ9が小さな力(摺動抵抗)でスムーズに回動される。
【0039】
回転端子成形体2の中央の孔部14を境に回転端子12であるバスバーを一方のみに配置した場合でも、操作スイッチ9の90゜づつの回動操作で電源回路をオンオフすることができるが、電気的接触面積が半減するので、電気抵抗は倍加する。この場合、一方のみの回転端子12に対応して各固定端子3,4の接触板20(弾性接触部材22)を一枚とすることは可能である。
【0040】
図2の例で、固定端子本体21の各基板19の側端方と各接触板20の先端方とには各二対の支持用の孔部26が設けられ、外部接続部18には一つの接続用の孔部27が設けられている。支持用の各孔部26に対して絶縁樹脂性の各スペーサ5の両端の環状部28が配置され、両環状部28は連結板29で連結されている。スペーサの厚みは回転端子成形体の厚みよりも厚く形成され、固定端子3,4の弾性接触部材22に回転端子12が弾性接触するようになっている。
【0041】
二枚の固定端子3,4はスペーサ5を挟んで平行に且つ対称に配置され、両固定端子3,4の弾性接触部材22が対向して位置し、両固定端子3,4の間で両スペーサ5の間に回転端子成形体2が位置し、回転端子12が各一対の弾性接触部材22に対応して接触可能に位置し、回転駆動用の軸部6が各基板19と各接触板20とで囲まれた矩形状の空間に挿通される。
【0042】
各固定端子3,4や回転端子成形体2が板状に形成されているから、スイッチ構造が厚み方向に薄型化されている。また、上下の両固定端子3,4の弾性接触部材22が回転端子12の板厚方向に接触して導通が行われるから、回転端子12の中央の孔部14が大きくても、何ら通電性能に影響が及ぶことがない。固定端子3,4の二本の接触板20にそれぞれ弾性接触部材22が設けられているから、たとえ孔部14を境に回転端子12が左右に分割(分離)されていても、何ら通電性能に影響が及ぶことがない。また、上下の弾性接触部材22が回転端子2の板厚方向に接触するから、回転端子2の板厚が薄くても何ら通電性能に影響が及ぶことがない(むしろ薄い方が抵抗が少ない)。
【0043】
図1の如く、下側の固定端子4の孔部26が下側のケース11の四隅のボス部(筒部)29に係合し、各ボス部29にスペーサ5の環状部28が係合し、次いで上側の固定端子3の孔部26がボス部29に係合する。軸部6の下端は下側のケース11の中央の筒部30に係合する。軸部6の上端はラチェット板8の中央の孔部31を貫通して操作スイッチ(ダイヤル)9に固定され、軸部6の中間キー部が回転端子12の孔部14に係合する。筒部30に回転端子成形体2の下面側のボス部(図示せず)が当接する。
【0044】
ラチェット板8は、コイルばね7の付勢に抗して上側の固定端子3に当接する突起32と、同じく回転端子成形体2の中央のボス部15に押接するボス部(図示せず)と、操作スイッチ9の外周の各突起33に押接する傾斜突起34とを有している。操作スイッチ9は上側のケース10の環状壁35の内側に収容される。
【0045】
操作スイッチ9を矢印36の方向に回すことで、突起33が傾斜突起34を押し下げ、回転端子成形体2が軸部6で駆動(回動)されつつ、ラチェット板8が固定端子3,4と回転端子12とを押接させて、電源回路が確実に通電される。この際、弾性接触部材22の傾斜状の接触片24(図2)が回転端子12の表面を擦ることで、回転端子12の表面の酸化皮膜が除去される。
【0046】
再度、操作スイッチ9を同方向に回すことで、回転端子12が各弾性接触部材22から90゜方向に反転離間して電源回路が遮断されつつ、ラチェット板8がばね7の付勢で回転端子成形体2から板厚方向に離間する。
【0047】
上記電源スイッチ1は、例えば自動車のバッテリのプラス電極とヒュージブルリンクボックス(図示せず)との間に接続され、自動車を船輸送等する際に、使用しない時計等の暗電流を遮断するために使用したり、自動車事故等の緊急時にショートを防ぐためにバッテリ電源を遮断するために使用する。
【0048】
図3〜図4は、回転端子成形体の他の実施形態を示すものである。図2と同様の構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
この回転端子成形体2’は、導電金属製の回転端子12の有るインサート成形部分37を厚肉に形成し、その厚肉部分37の両側の絶縁樹脂部38を薄肉に形成して、接続時のスパッタ39(図6)の付着によるリークを防止すると共に、厚肉部分37と薄肉部分38との境界部すなわち回転端子12と絶縁樹脂部13’との境界にリブ40を形成して、樹脂成形時の樹脂バリ(図示せず)を防止したことを特徴とするものである。その他の固定端子等の構成部品部分は前記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
図3の回転端子成形体2’においては、図2の回転端子成形体2の外周の環状部16や放射状のリブ17は形成されていない。中央のボス部15’は軸部6(図1)を回転不能に挿通させる孔部14を有し、ボス部15’の両側に接して一対のリブ40が平行に樹脂成形され、一対のリブ40の内側にバスバーである回転端子12が位置し、回転端子12の露出された表面(符号12で代用)よりもリブ40がボス部15’と同程度に高く突出している。
【0051】
回転端子成形体2’の裏面側にも一対のリブ40が同様に形成されている。上下一対のリブ40は、絶縁樹脂部13’の薄肉部38がない均一な厚さの回転端子成形体(例えば図1の回転端子成形体2)においても形成可能である。図4や以下の図5ではボス部15’や孔部14の図示を省略している(中央からずれた位置の断面を示している)。
【0052】
図3の回転端子成形体2’において、絶縁樹脂部13’の薄肉部38を形成せずにリブ40のみを形成したり、リブ40を形成せずに薄肉部38のみを形成することも有効である。図2の回転端子成形体2に同様のリブ40や薄肉部38を形成することも可能である。
【0053】
図5は、回転端子成形体2’を樹脂成形するための成形金型と成形方法の一形態を示すものである。
【0054】
この成形金型41は上下に分割され、各金型41は、回転端子であるバスバー12を押さえるためのエッジ状の凸部42と、凸部42の外側に隣接してリブ成形用の凹部43と、凸部42の内側に隣接する小凹部44とそれに続くバスバー押さえ面45と、凹部43の外側に続く樹脂部成形空間46とそれに続く樹脂注入ゲート47とを有している。
【0055】
上下のエッジ状の凸部42がバスバー12を挟むことで、凸部42の内側(小凹部44)への溶融樹脂材(図示せず)の浸入が阻止され、樹脂バリの発生が防止される。凸部42はバリ切りとして作用する。バスバー12の両端部12aは凹部43内に配置され、バスバー12の端部12aで生じる樹脂バリが確実に阻止される。中央のボス部15’(図3)はリブ40に続いて樹脂注入される。
【0056】
この回転端子成形体2’によれば、弾性接触部材22(図2)の各接触片24がリブ40に接触して乗り越えることで、接触片24に付着したスパッタ(スイッチの断続時のスパークで生じる異物)や塵等の異物がリブ40で掻き取られて清掃され、回転端子12と接触片24との良好な接続状態が維持されるという効果も奏する。
【0057】
図6(a)は、回転端子12と上下の固定端子3,4とを接続させたスイッチオン状態、図6(b)は、回転端子と上下の固定端子とを離間させたスイッチオフ状態をそれぞれ示している。
【0058】
図6(a)において、上下の弾性接触部材22の接触片24は同方向に傾斜して、回転端子12の一方向の回動を低摩擦で行わせる。また、各接触片24は回転端子12に斜めに接触して冷却フィンとしての機能や前記清掃機能を発揮する。冷却作用で回転端子表面の酸化皮膜の発生が抑止される。また、スペーサ5(図1)で固定端子3,4と回転端子12との間隔が規定され、各接触片24は弾性領域で安定した接圧で回転端子12に接触する。例えば接触片24の数を倍に(弾性接触部材22の長さを倍に)設定すれば、二倍の定格電流に容易に対応できる。
【0059】
図6(b)において、回転端子12よりも絶縁樹脂部13’の板厚が薄く形成されたことで(符号38の部分)、回転端子12と固定端子3,4が接触を開始する時に、スパーク(ショート)して絶縁樹脂部38にスパッタ39が付着しても、電源スイッチ1の遮断時に絶縁樹脂部38と弾性接触部材22の接触片24との絶縁距離L1が確保されるので、その状態におけるショートが確実に防止される。また、上下の対向する弾性接触部材22が絶縁樹脂部38の表裏面で仕切られるので、両弾性接触部材間のトラッキングも防止される。
【0060】
図7(a)(b)は、回転端子12と固定端子3,4との接触開始時の状態を示すものである。回転端子12としては図1や図3のものが適用される。固定端子3,4の接触片24は弾性接触部材22の基板部の長手方向のみに傾斜したものとして示している。
【0061】
図7(a)の如く、電源スイッチ1をオンする際に、固定端子3,4の弾性接触部材22の傾斜状に立ち上げられた複数の接触片24における先頭の接触片241のみが最初に回転端子12に触れるので、スパーク48による接触片24の損傷は先頭の接触片241だけで済み、スイッチの断続が頻繁に繰り返されても、先頭以降の接触片24は損傷を受けずに良好な電気的接触を確保することができる。
【0062】
図7(b)の如く、回転端子12の回動方向Aに対し、同一平面の左右の弾性接触部材22の取付位置をL2のようにずらすことで、スパーク48による接触片24の損傷は一箇所で済む。回転端子12は第一の弾性接触部材22に接触した後、第二の弾性接触部材22に接触する。
【0063】
図8(a)(b)は、固定端子の弾性接触部材の一形態及び回転端子との接触開始時の状態を示すものである。回転端子12としては図1や図3のものが適用される。
【0064】
弾性接触部材22の各接触片24を接触部材幅方向に対して斜めに切り起こすことにより、すなわち回転端子に対して斜めに接触するようにも傾斜させたことで、同じ母材(導電金属板)から切り起こしエッジの長い接触片24を得ることができ、回転端子12に対する接触面積が増加すると共に、回転端子12に対するショート48の発生位置を先頭の接触片241のブレードの一部に集約でき、且つ接触片24のブレードと回転端子12との接触をより滑らかに行わせることができる。図8(b)においても図7(b)のように各弾性接触部材22をL2のように位置ずれして配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る電源スイッチの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同じく電源スイッチの要部を示す分解斜視図である。
【図3】電源スイッチの回転端子の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】同じく回転端子を示す縦断面図である。
【図5】同じく回転端子の樹脂成形方法を示す縦断面図である。
【図6】(a)は回転端子と固定端子の接続状態、(b)は同じく遮断状態を示す縦断面図である。
【図7】(a)は回転端子と固定端子の初期接触状態を示す側面図、(b)は同じく平面図である。
【図8】(a)は固定端子の弾性接触部材の一形態を示す平面図、(b)は同じく固定端子と回転端子の初期接触状態を示す平面図である。
【図9】従来の電源スイッチの一形態を示す平面図である。
【図10】(a)は従来の電源スイッチの他の形態の接続状態、(b)は遮断状態をそれぞれ示す平面図である。
【図11】従来の電源スイッチの回転端子組立体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 電源スイッチ
2,2’ 回転端子成形体
3,4 固定端子
5 スペーサ
6 軸部
12 回転端子
13,13’絶縁樹脂部
14 孔部
18 外部接続部
22 弾性接触部材
24 接触片
38 薄肉部
40 リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の回転端子とその周囲の絶縁樹脂部とで成り、一方向に回動する円板状の回転端子成形体と、
該回転端子を挟む弾性接触部材と、入出力用の外部接続部とを有する板状の一対の固定端子とを備えることを特徴とする電源スイッチ。
【請求項2】
前記回転端子が、駆動用の軸部を挿通させる孔部の両側で各一対の前記弾性接触部材に接触することを特徴とする請求項1記載の電源スイッチ。
【請求項3】
前記一対の固定端子の間隔がスペーサで規定されたことを特徴とする請求項1又は2記載の電源スイッチ。
【請求項4】
前記弾性接触部材が複数の傾斜状に立ち上げられた接触片を有し、対向する一対の該弾性接触片の接触片が同方向に傾斜したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電源スイッチ。
【請求項5】
前記接触片が前記回転端子に対して斜めに接触するようにも傾斜していることを特徴とする請求項4記載の電源スイッチ。
【請求項6】
前記回転端子と前記絶縁樹脂部との境が該絶縁樹脂部と一体のリブで覆われていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電源スイッチ。
【請求項7】
前記回転端子の両側で前記絶縁樹脂部が薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の電源スイッチ。
【請求項1】
板状の回転端子とその周囲の絶縁樹脂部とで成り、一方向に回動する円板状の回転端子成形体と、
該回転端子を挟む弾性接触部材と、入出力用の外部接続部とを有する板状の一対の固定端子とを備えることを特徴とする電源スイッチ。
【請求項2】
前記回転端子が、駆動用の軸部を挿通させる孔部の両側で各一対の前記弾性接触部材に接触することを特徴とする請求項1記載の電源スイッチ。
【請求項3】
前記一対の固定端子の間隔がスペーサで規定されたことを特徴とする請求項1又は2記載の電源スイッチ。
【請求項4】
前記弾性接触部材が複数の傾斜状に立ち上げられた接触片を有し、対向する一対の該弾性接触片の接触片が同方向に傾斜したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電源スイッチ。
【請求項5】
前記接触片が前記回転端子に対して斜めに接触するようにも傾斜していることを特徴とする請求項4記載の電源スイッチ。
【請求項6】
前記回転端子と前記絶縁樹脂部との境が該絶縁樹脂部と一体のリブで覆われていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電源スイッチ。
【請求項7】
前記回転端子の両側で前記絶縁樹脂部が薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の電源スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−257913(P2007−257913A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78301(P2006−78301)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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