説明

電源プラグ

【課題】電源プラグをコンセントに差し込んだまま長期間放置しておいた場合でも、端子刃にほこりや塵等が付着することを可及的に防止して、トラッキング火災を防止するようにした電源プラグを提供する。
【解決手段】端子刃5の根本部分表面は樹脂被覆層10で覆われている。端子刃5が突設されるプラグ面4全面に亘って毛状突起11が植設されており、端子刃5がコンセント表面に差し込まれた状態で毛状突起11の先端部がコンセント表面に当接している。プラグ面4の外周部には、プラグ面4からコンセント表面側に向けて突出し毛状突起11を覆う薄肉部13が設けられている。薄肉部13は折り畳み自在に構成され、端子刃5がコンセント表面に差し込まれない状態では薄肉部13は伸張された状態であって、端子刃5がコンセント表面に差し込まれた状態では、薄肉部13は折り畳まれた状態となり且つ薄肉部13の先端がコンセント表面に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭用あるいは産業用のコンセントに差し込まれる電源プラグであって、特にトラッキングによる火災を防止し得る電源プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭、事務所あるいは工場などで電気製品を使用する際には、電気の供給を受けるために壁などに設けられたコンセントに、電気製品に延設された電源プラグを差し込んでいる。そして、このように電気製品を使用する際、電源プラグをコンセントに差し込んだままの状態で使用することも多い。しかしながら、この差し込んだままの電源プラグの両端子刃にほこりが付着し空気中の水分を吸うことにより両端子刃間にわずかな微電流が流れ、電源プラグ表面に炭化導電路、いわゆるトラックが形成される。この炭化の進行により突然に電源プラグが発火する現象をトラッキングといい、火災の原因となっている。
【0003】
そこで、上記課題を解決するために、接続端子部材(端子刃に相当)の電源プラグ本体から突出した部分の根本部分に間隙充填部(樹脂被膜層に相当)を設けた電源プラグが提案されている(特開平9−199212号公報参照)。このような構成の電源プラグにより、電源プラグの接続端子部材の外周壁と電源コンセントの電源プラグ接続口の内周壁との間に間隙が形成されず、接続端子部材にほこりや塵等の付着が防止されてトラッキング火災の防止が図られている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−199212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、電源プラグをコンセントに差し込んだまま長期間の放置しておくと、電源プラグの接続端子部材及び電源コンセントの電源プラグ接続口に経年変化が生じ、これに起因して、電源プラグの接続端子部材の外周壁と電源コンセントの電源プラグ接続口の内周壁との間に間隙が生じて、接続端子部材にほこりや塵等が付着して、トラッキング火災の原因となっている。
換言すれば、従来例では、電源プラグをコンセントに差し込んだまま長期間放置しておくような場合では、トラッキング火災の防止の観点からは充分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、電源プラグをコンセントに差し込んだまま長期間放置しておいた場合でも、端子刃にほこりや塵等が付着することを可及的に防止して、トラッキング火災を防止するようにした電源プラグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、電力を供給するコンセント表面に差し込まれる端子刃を有する電源プラグにおいて、端子刃が突設されるプラグ面全面に亘って毛状突起が植設されており、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態で前記毛状突起の先端部がコンセント表面に当接していることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、毛状突起が塵等の進入を防止する。これにより、端子刃に塵等が付着することが防がれ、トラッキング火災の防止を図ることができる。特に、従来例と比べて、このような毛状突起による防塵機能の場合は、毛状突起の一部が経年変化して隙間が生じたとしても、それ以外の毛状突起により防塵機能が発揮されるので、電源プラグをコンセントに差し込んだまま長期間放置しておいた場合でも、端子刃にほこりや塵等が付着することを可及的に防止して、トラッキング火災を防止することが可能となる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の電源プラグであって、前記プラグ面の外周部には、プラグ面からコンセント表面側に向けて突出し前記毛状突起を覆う薄肉部が設けられており、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態で前記薄肉部の先端部がコンセント表面に当接していることいることを特徴とする。
【0010】
上記構成により、薄肉部と毛状突起の二重の防塵機能が発揮されるので、より塵等進入を防止することが可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の電源プラグであって、前記端子刃のプラグ面から突出している根本部分表面の少なくとも一部が、樹脂被覆層で覆われていることを特徴とする。
【0012】
上記の如く、端子刃を樹脂被覆層で覆う構成により、端子刃と刃受穴との間の間隙に樹脂被覆層が嵌まり込んで間隙が塞がれるので、端子刃と刃受穴との間に塵等が堆積することを防止できるとともに、端子刃がコンセント等に対して確実に固定されるので、電源プラグのガタつきも防止できる。さらに、薄肉部と樹脂被覆層の二重の防塵機能の発揮、又は薄肉部と毛状突起と樹脂被覆層の三重の防塵機能の発揮により、より塵等進入を防止することが可能となる。また、端子刃間の沿面距離を長くすることができるので、トラッキング性能が向上する。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の電源プラグであって、前記薄肉部が折り畳み自在に構成され、端子刃がコンセント表面に差し込まれない状態では前記薄肉部は伸張された状態であって、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態では、前記薄肉部は折り畳まれた状態となり且つ薄肉部の先端がコンセント表面に当接していることいることを特徴とする。
【0014】
上記の如く、薄肉部が折り畳み自在に構成することにより、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態で長期間放置された場合であっても、薄肉部の先端がコンセント表面に当接して状態を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電源プラグによれば、以下の効果を奏する。
(1)間隙充填部を設けた従来例の電源プラグと比べると、毛状突起による防塵機能を備えた電源プラグの場合は、毛状突起の一部が経年変化して、一部の毛状突起の先端部とコンセント表面とに隙間が生じたとしても、それ以外の毛状突起により防塵機能が発揮されるので、電源プラグをコンセントに差し込んだまま長期間放置しておいた場合でも、端子刃にほこりや塵等が付着することを可及的に防止して、トラッキング火災を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る電源プラグを実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る電源プラグの斜視図、図2は実施の形態1に係る電源プラグがコンセントに差し込まれた状態における断面図、図3は実施の形態1に係る電源プラグのプラグ表面を示す正面図、図4は図3の一部拡大図、図5は実施の形態1に係る電源プラグの使用状態を説明するための図である。
【0018】
電源プラグ1は、図1に示すようにプラグ本体2から電源コード3が延設されており、プラグ面4(図2及び図3参照)には一対の端子刃5が突設されている。端子刃5は、コンセント6の刃受穴7等に差し込まれる金属板で、図2に示すようにその各後端は接続部8に電源コード3の導体3Aがカシメ(圧着)によって接続されている。この端子刃5のプラグ面4から突出している根本部分表面は、全周に亘って樹脂被覆層10で覆われている。
【0019】
樹脂被覆層10の形成方法は特に限定しないが、例えば適当な溶媒に樹脂を溶解させた溶液を端子刃5の所要箇所に塗布した後に塗布部を加熱して溶媒を揮散させ、所要の皮膜厚さが得られるまで塗布と加熱を繰り返す、いわゆる焼付法により形成すれば、所要の皮膜厚を容易に得ることができる。
また、プラグ本体2の製造時に、同時に端子刃5表面に樹脂被覆層10を形成するようにしてもよい。例えば、先ず、一対の端子刃5を熱硬化性樹脂に挿入し、端子刃5の後端側を接続部8によって電源コード3とカシメ接続する。この状態において、プラグ本体2を形成するポリ塩化ビニル材料等の樹脂を金型に流し込むことによりプラグ本体2と同時に樹脂被覆層10が形成される。
【0020】
このように端子刃5の表面に樹脂被覆層10を形成することにより、端子刃5と刃受穴7との間の間隙に樹脂被覆層10が嵌まり込んで間隙が塞がれるので、端子刃5と刃受穴7との間に塵等が堆積することを防止できるとともに、端子刃5がコンセント等に対して確実に固定されるので、電源プラグ1のガタつきも防止できる。また、端子刃間の沿面距離が樹脂被覆層がない場合に比べ長くなるので、トラッキング性能が向上する。
【0021】
また、端子刃5が突設されるプラグ面4には、全面に亘って毛状突起11が植設されている。この毛状突起11は、端子刃4がコンセント6の刃受穴7に差し込まれた状態で毛状突起11の先端部がコンセント6表面にぴったりと当接し得る長さに設定されている。毛状突起11は、図3及び図4に示すように、軸直角断面が長円状とされており、プラグ面4に千鳥格子状に配列されている。なお、その配列は、図3に示すように、端子刃4の長辺に対向する領域では、長円の長軸が端子刃4の長辺と平行となるように配置され、端子刃4の短辺に対向する領域では、長円の長軸が端子刃4の短辺と平行となるように配置されている。このように千鳥格子配列とすることにより、碁盤目状に配列した場合に比べて、塵等の進入をより一層防止することができる。さらに、本実施の形態では、軸直角断面が長円状である毛状突起11を用いることにより、軸直角断面が円形状である毛状突起に比べて塵等の進入をより一層防止することができる。
なお、毛状突起は、上記の例に限定されず、軸直角断面が円形状であってもよく、また三角形等の多角形状であってもよい。また、配列に関しても千鳥格子状でなく、例えば碁盤目状であってもよく、またその他の配列であってもよい。
【0022】
また、プラグ面4の外周部には、プラグ面4からコンセント表面側に向けて突出し毛状突起11を覆う薄肉部13が設けられている。この薄肉部13は折り畳み自在に構成され、端子刃4がコンセント表面に差し込まれない図5(1)に示す状態では薄肉部13は伸張された状態であり、端子刃4がコンセント表面に差し込まれた図5(2)に示す状態では、薄肉部13は折り畳まれた状態となり且つ薄肉部13の先端部がコンセント6表面にぴったりと当接し得る長さに設定されている。これにより、塵等の進入を防止することができる。なお、端子刃4がコンセント表面に差し込まれた際に、薄肉部13が容易に折り畳まれた状態が得られるように、薄肉部13の折れ曲がりが生じる該当部位に予め溝を形成しておくようにしてもよい。このように薄肉部13に予め溝を形成した場合、電源プラグの差し込みと引き抜きとを何回も行なうと、薄肉部13の伸張状態と折り畳まれた状態とが頻繁に生じて、これに起因して当該溝から亀裂が生じる恐れがある。しかしながら、本実施の形態における電源プラグは差し込んだまま長期間放置しておくタイプの電源プラグであることから、そのような亀裂が発生することはない。
【0023】
このように、上記構成の電源プラグを使用すると、樹脂被覆層10、薄肉部13及び毛状突起11という3重の防塵機能が発揮されることにより、塵等が端子刃5に付着することを略完璧に近い状態にまで防止することが可能となる。この結果、電源プラグを差し込んだ状態で長期間放置した場合であっても、トラッキング火災を防止することができる。
【0024】
(実施の形態2)
図6は実施の形態2に係る電源プラグの側面図、図7は実施の形態2に係る電源プラグのプラグ表面を示す正面図である。上記実施の形態1では、薄肉部13は折り畳み自在に構成されていたけれども、本実施の形態2における薄肉部13Aは折り畳み自在に構成されていない。但し、薄肉部13Aの四隅には、切れ目20が形成されている。これにより、端子刃4がコンセント6の刃受穴7に差し込まれると、薄肉部13Aが弾性変形して、薄肉部13Aの先端部がコンセント表面にぴったりと当接する。この結果、塵等の進入を防止することが可能となる。
【0025】
なお、薄肉部13Aは、図8(1)に示すように先端に向かうに連れて先細状の三角形状の断面形状に形成されていてもよく、また、図8(2)に示すように基端部のみが大径部状に形成されていてもよく、また、図8(3)に示すように先端に向かうに連れて先細状の鋭角形状であってもよい。このような形状であれば、薄肉部13Aの弾性変形をより容易に達成し易いという効果がある。
【0026】
(その他の事項)
(1)毛状突起11は図9(1)に示すようにプラグ表面に垂直に設けるようにしもよく、又、図9(2)に示すように外側に若干傾斜して設けるようにしてもよい。ところで、毛状突起11は、上記したように、端子刃4がコンセント6の刃受穴7に差し込まれた状態で毛状突起11の先端部がコンセント6表面にぴったりと当接し得る長さに設定されている。但し、全ての毛状突起11を極めて高い精度で均一な長さに設定することは現実的には困難である。従って、毛状突起11を図9(1)に示すようにプラグ表面に垂直に設けた場合、毛状突起11の長さの精度が低いと、一部の毛状突起11において、その先端部がコンセント6表面にぴったりと当接しない場合が生じ、防塵機能が低下する恐れがある。そこで、毛状突起11の長さの加工精度が低い場合には、図9(2)に示すように外側に若干傾斜して設けるのが好ましい。なぜなら、このような構成すれば、端子刃4がコンセント6の刃受穴7に差し込まれた際に、毛状突起11が外側に傾斜して、毛状突起11の先端部のみならず先端部付近の側面部までコンセント表面と当接した状態が得られる。このことは、毛状突起11が高い精度で均一な長さに設定されていなくても、全ての毛状突起11の先端部がコンセント6表面にぴったりと当接した状態が得られることを意味することになり、毛状突起11の長さの加工精度が低いことに起因した防塵機能の低下を防止することが可能となるからである。
【0027】
(2)上記実施の形態では、樹脂被覆層10は端子刃5の根本部分表面の全周を覆うように構成されていたが、当該根本部分表面の一部を覆う構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、トラッキング火災防止用電源プラグに好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1に係る電源プラグの斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る電源プラグがコンセントに差し込まれた状態における断面図である。
【図3】実施の形態1に係る電源プラグのプラグ表面を示す正面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】実施の形態1に係る電源プラグの使用状態を説明するための図である。
【図6】実施の形態2に係る電源プラグの側面図である。
【図7】実施の形態2に係る電源プラグのプラグ表面を示す正面図である。
【図8】図7のA−A矢視断面図である。
【図9】毛状突起の立設状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:電源プラグ 2:プラグ本体
3:電源コード 4:プラグ面
5:端子刃 6:コンセント
7:コンセント6の刃受穴 10:樹脂被覆層
11:毛状突起 13,13A:薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給するコンセント表面に差し込まれる端子刃を有する電源プラグにおいて、
端子刃が突設されるプラグ面全面に亘って毛状突起が植設されており、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態で前記毛状突起の先端部がコンセント表面に当接していることを特徴とする電源プラグ。
【請求項2】
前記プラグ面の外周部には、プラグ面からコンセント表面側に向けて突出し前記毛状突起を覆う薄肉部が設けられており、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態で前記薄肉部の先端部がコンセント表面に当接していることいることを特徴とする請求項1記載の電源プラグ。
【請求項3】
前記端子刃のプラグ面から突出している根本部分表面の少なくとも一部が、樹脂被覆層で覆われていることを特徴とする請求項1又は2記載の電源プラグ。
【請求項4】
前記薄肉部が折り畳み自在に構成され、
端子刃がコンセント表面に差し込まれない状態では前記薄肉部は伸張された状態であって、端子刃がコンセント表面に差し込まれた状態では、前記薄肉部は折り畳まれた状態となり且つ薄肉部の先端がコンセント表面に当接していることいることを特徴とする請求項2又は3記載の電源プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−134115(P2007−134115A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324522(P2005−324522)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(505416474)有限会社アイウエル (1)
【Fターム(参考)】