説明

電源プラグ

【課題】プラグ本体がコンセントと接触する先端面の面積を大きくしてもプラグ全体の大きさの増加を十分抑えることのできる可動型の電源プラグを得る。
【解決手段】栓刃203、204を植設した可動部205は、回転部206、207を回転中心として、プラグ本体201に対して回動自在に配置されている。可動部205の先端は、一段と幅広となったフランジ部208を形成している。プラグ本体201の可動部205に隣接する部位2011、2012は、可動部205の回動を可能にするためにフランジ部208の厚さだけ周囲よりも低くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源プラグに係わり、特にコンセントに差し込む一対の栓刃がプラグ本体に対して回転自在となった電源プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源の電圧は国際的に統一されておらず、日本は100ボルトと比較的低い電圧が使用されている。240ボルトのように比較的高い電圧を使用する諸外国では、電源プラグが不完全な状態でコンセントに取り付けられているときの、栓刃に対する指の接触事故を防止する必要から電源プラグが大型となっている。すなわち、電源プラグの栓刃が植設されている面を大きくとることで、この面の縁部から栓刃までの距離を長くして、指が栓刃に誤って接触しないようにしている。
【0003】
一方、わが国の電源プラグは、樹脂による一体成形により小型化が図られ、特に小型の電気製品の携帯の便宜が向上している。しかしながら、コンセントから電源プラグが抜け掛けた状態にあるとき、子供が興味を持って電源プラグに指を差し込んだりすると感電の危険性が生じることになる。そこで、電源プラグの安全性を高める観点から、栓刃を受けるコンセント側の刃受けの深さをコンセントの表面から深い位置にすることが第1の提案として提案されている。これにより、電源プラグが傾いてコンセントから抜けかけた状態となるとき、コンセントから露出する側の栓刃が現状の製品よりも早く、刃受けから離脱する。したがって、その離脱した側の外部に露出した栓刃に指が触れても感電は起きない。
【0004】
この第1の提案では電源プラグの栓刃の長さを現状の長さのままにしてコンセントの刃受けの深さをコンセントの表面から深い位置にするようにしている。したがって、コンセントの表面に電源プラグの先端の面を密着させる形で正常に取り付けたときに、栓刃がコンセントの刃受けと接触する長さが現状と比較して短くなる。このため、電源プラグをコンセントに取り付けても抜けやすくなるという問題や、電源プラグに何らかの衝撃が加わると電源の供給が断たれる場合が生じるという問題が発生する。
【0005】
そこで、第2の提案として、電源プラグの栓刃の長さもコンセントの刃受けの深さも現状のままにして、電源プラグの栓刃が植設された先端面を現状よりも広くとることが提案されている。これにより、電源プラグをコンセントに正常に取り付けたときの栓刃と刃受けの嵌合する長さは現状と同じであり、電源プラグがコンセントから抜けやすくなったり、電源の供給が不安定になるという問題は発生しない。
【0006】
しかしながら、この第2の提案では、電源プラグの先端面の矩形状の2辺が現状で14.2mmと24mm程度となっているものが、それぞれ19mmと25mm程度まで大きくなる必要が生じる。この場合、栓刃がプラグ本体に固定されている固定型の電源プラグでは、栓刃を受けるコンセント側の先端面の箇所のプラグ本体部分を大きくするだけで、プラグ本体の残りの部分の厚さを現状のままとすることができる。
【0007】
図7および図8は、この第2の提案による固定型の電源プラグの一例について正面と側面をそれぞれ表わしたものである。プラグ本体101の先端面102からは、一対の栓刃103(104)が突出している。ただし、図8では栓刃103が栓刃104の影になる位置に存在するので、図示されていない。
【0008】
プラグ本体101の先端は、フランジ部101Aを構成しており、その周囲よりも幅広となっている。これにより、このようなフランジ部101Aが存在しない従来の図示しない電源プラグよりも先端面102を広くすることができる。しかもプラグ本体101のフランジ部101A以外の部分は、従来と同様の断面サイズとすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、栓刃がプラグ本体に対して回動するプラグ(以下、可動プラグという。)の場合には、この第2の提案のようにプラグ本体の先端部のみをフランジ状に形成して、先端面での面積を大きくとることができない。これを次に説明する。
【0010】
図9および図10は、従来の可動プラグの正面と側面をそれぞれ表わしたものである。図9に示すように可動プラグ110の場合には、プラグ本体111の先端中央が矩形状に切り欠かれた凹形に形成されている。この切り欠かれた矩形部分に栓刃113、114を植設した可動部115が、回転部116、117を回転中心として回動自在に配置されている。
【0011】
そこで、このような可動プラグ110に対しても、一点鎖線で示すように可動部115の先端にフランジ部121を取り付けたとする。ただし、図9および図10では、図示を簡略にするために、可動部115の厚さの増加分だけ栓刃113、114の位置がシフトした状態は示していない。
【0012】
このように可動部115の先端にフランジ部121を取り付けると、たとえば図10で矢印122で示すように栓刃113、114の長手方向がプラグ本体111の長手方向と一致する方向となっている場合、すなわち可動部115が回転していない状態で、図7および図8に示した固定型の電源プラグと同様の改善効果を得ることができる。ところが、図9および図10に示した改善後の可動プラグの場合には、可動部115を回転させようとすると、90度よりも少ない角度でプラグ本体111にフランジ部121が接触することになる。この結果、栓刃113、114の長手方向を矢印122(図10)で示す方向に対して90度、あるいは−90度回転させて使用する本来の使用形態を採ることができないという問題を生じる。
【0013】
このようなことから、可動プラグ110の場合には、プラグ本体111を含めて栓刃113、114を除いた全体のサイズを大型化せざるを得ないと考えられていた。しかしながら、可動プラグの全体的なサイズを大型化することは、すでに説明したように種々の不具合を発生させる。
【0014】
そこで本発明の目的は、プラグ本体がコンセントと接触する先端面の面積を大きくしてもプラグ全体の大きさの増加を十分抑えることのできる可動型の電源プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、(イ)コンセントから電源の供給を受ける栓刃を、コンセントと接触する面としてのコンセント接触面から垂直に突出するように植設すると共に、栓刃の長さ方向に互いに平行な2つの面としてコンセント接触面と平行な所定の回転軸を中心として回動する回動面を備え、これら回動面の間隔よりもコンセント接触面における回転軸と同一方向の長さが長くなった可動部と、(ロ)2つの回動面を挟持するようにして回転軸を中心に所定の角度だけ可動部を回動自在に保持する凹部を備え、この凹部は、可動部が前記した所定の角度回転する際に接触する部位が予め切除された形状となっているプラグ本体とを電源プラグに具備させる。
【0016】
すなわち本発明では、プラグ本体に対して回転自在に配置した可動部におけるコンセントと接触するコンセント接触面が、従来の可動部のコンセント接触面よりも広くなっており、これは可動部が所定の角度回転する際にプラグ本体と接触する部位を予め切除された形状としたことにより可能になっている。一例としては、コンセント接触面として従来よりも増加した箇所が所定の厚さの板状の形状となっている場合には、この厚さだけプラグ本体の凹部における該当する領域を薄くすればよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、一対の栓刃がプラグ本体に対して回転自在となった電源プラグで、コンセント接触面を含む所定の部分のみを従来よりも厚くしたので、プラグ本体の厚さを増加させる必要がなく、可動プラグの製造に必要とする資源の有効活用を図ることができる。また、可動プラグはもともと電源プラグをコンセントに装着したときの無駄な空間の減少を狙ったものなので、プラグ本体の大型化を阻止あるいは最小限に抑制することによって、可動プラグの存在価値を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例における電源プラグとしての可動プラグを正面から見たものであり、図2はこれを側面から見たものである。本実施例の可動プラグ200は、そのプラグ本体201の先端中央が矩形状に切り欠かれた凹形に形成されている。この切り欠かれた矩形部分に、栓刃203、204を植設した可動部205がプラグ本体201に対して回動自在に配置されている。具体的には、この可動部205を構成する互いに平行な2つの面がプラグ本体201の凹部によって外側から挟まれるようにして、これらの面の所定位置を垂直に貫く回転軸を有する回転部206、207を回転中心として、可動部205がプラグ本体201に対して回動自在に配置されている。
【0020】
可動部205における栓刃203、204の突出した先端面を含む先端部は、図9および図10に示した可動部115の先端面よりもサイズの大きな板状のフランジ部208を構成している。このフランジ部208は、可動部205のその他の部分と樹脂で一体成型されている。
【0021】
図3は、本実施例の可動プラグを栓刃の先端からその長さ方向に見たものである。プラグ本体201の前面にこれから食み出す形でフランジ部208が配置されている。このため、栓刃203、204の周囲にはフランジ部208が従来よりも広い面積で存在する。本実施例でフランジ部208の矩形状の2辺はそれぞれ19mmと25mmとなっている。この結果、フランジ部208がプラグ本体201から食み出した長さΔaは、それぞれ約3.5mmとなっている。また、図9および図10に示した可動部115の先端面よりも長くなった長さΔbは、それぞれ約2.5mmとなっている。更に、フランジ部208の厚さΔc(図1、図2参照)は、本実施例で約2mmとなっている。
【0022】
図1に示す可動部205が回転部206、207を回転中心として90度回転するためには、この回転に伴いフランジ部208がプラグ本体201によって蹴られない必要がある。このため、プラグ本体201は、図1に示すように、可動部205と隣接する凹形の箇所における同図で縦方向の部位2011が長さΔbの幅で、また横方向の箇所2012が長さΔaの幅で周囲よりも1段と低くなっている。これらの部位2011、2012は、プラグ本体201の周囲からフランジ部208の厚さΔcだけ低く(薄く)なっている。もちろん、フランジ部208の円滑な回動を達成するために、これらの部位2011、2012における寸法には若干の余裕があってもよいことは当然である。
【0023】
図1では、プラグ本体201の一方の面を表わしているが、これと反対側の面でも可動部205と隣接する凹形の箇所も、同様に周囲よりも1段と低い帯状の部位(部位2011、2012)が形成されている。ただし、可動プラグ200の可動部205が一方向にのみ90度回動するものであれば、反対側の面に同様の部位(部位2011、2012)を形成する必要はない。
【0024】
図4は、本実施例の可動プラグの可動部を90度回転させた状態を表わしている。また、図5は従来の可動プラグの可動部を90度回転させた状態を比較のために示したものである。図4に示した可動プラグ200の場合には、可動部205の端部にフランジ部208が存在するにもかかわらず、可動部205の一部が削り取られたような形状をしているために、この図に示した方向に、あるいは逆方向に可動部205を90度回転させることができる。
【0025】
以上説明した本発明の実施例では、フランジ部208を均一な厚さの板状に形成したが、これに限るものではない。たとえばフランジ部208の端部の厚さを実施例と同様にし、可動部205の接続部分に近づくに連れてその厚さを順次増加させるようにしてもよい。この場合には、実施例で示した部位2011、2012の周囲よりも低く(薄く)なる量もこれに応じて増加することはもちろんである。
【0026】
図6は、本発明の他の変形例の可動プラグを表わしたものである。図6で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この変形例の可動プラグ100Aで、栓刃203、204を植設した可動部205Aは、図9および図10に示した可動部115の先端面よりも長くなった長さΔbAが、プラグ本体201Aの横幅Dから可動部205Aの横幅Eを差し引いた値の2分の1となっている。すなわち、フランジ部208Aのこれら横幅方向の長さは、横幅Dと等しくなっている。フランジ部208Aの厚さは、実施例と同一の厚さΔcとなっている。なお、この変形例では、フランジ部208Aがプラグ本体201Aから食み出した長さは、先の実施例と同様に長さΔaとなっている。
【0027】
このようなフランジ部208Aの形状に対応して、部位2011A、2012Aは、プラグ本体201Aの周囲よりも厚さΔcだけ低く(薄く)なっている。この結果、この変形例の可動プラグ200Aも実施例と同様に可動部205Aが回転部206、207を回転中心として−90度から90度の範囲で自在に回転することができる。
【0028】
以上の説明から了解されるように、フランジ部を図1に示した実施例あるいは図6に示した変形例よりも更に大きなサイズとすることができる。また、部位2011、2012(2011A、2012A)は、可動部205の存在する範囲で厚さΔcを厚くすることができる。特に可動部205の存在しない部位2012(2012A)は、開口部とすることも可能である。もちろん、部位2011(2011A)も、可動部205を残して残りの部分をくり抜くようにすることも可能である。
【0029】
なお、実施例および変形例では、フランジ部をその他の可動部と一体成形したが、フランジ部のみを別部品として作製し、これを可動部と一体となるように接合してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例における電源プラグとしての可動プラグの正面図である。
【図2】本実施例の可動プラグの側面図である。
【図3】本実施例の可動プラグを栓刃の先端からその長さ方向に見た平面図である。
【図4】本実施例の可動プラグの可動部を90度回転させた状態を表わした側面図である。
【図5】図9に示した従来の可動プラグの可動部を90度回転させた状態を表わした側面図である。
【図6】本発明の変形例の可動プラグを表わした正面図である。
【図7】従来の第2の提案による固定型の電源プラグの一例を表わした正面図である。
【図8】図7に示した固定型の電源プラグの側面図である。
【図9】従来の可動プラグの正面図である。
【図10】図9に示した可動プラグの側面図である。
【符号の説明】
【0031】
200、200A 可動プラグ
201、201A プラグ本体
2011、2012、2011A、2012A、 (凹形の)箇所
203、204 栓刃
205、205A 可動部
206、207 回転部
Δa、Δb、ΔaA、ΔbA 長さ
Δc 厚さ
D、E 横幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセントから電源の供給を受ける栓刃を、コンセントと接触する面としてのコンセント接触面から垂直に突出するように植設すると共に、前記栓刃の長さ方向に平行な2つの面として前記コンセント接触面と平行な所定の回転軸を中心として回動する回動面を備え、これら回動面の間隔よりも前記コンセント接触面における前記回転軸と同一方向の長さが長くなった可動部と、
2つの前記回動面を挟持するようにして前記回転軸を中心に所定の角度だけ前記可動部を回動自在に保持する凹部を備え、この凹部は、前記可動部が前記所定の角度回転する際に接触する部位が予め切除された形状となっているプラグ本体
とを具備することを特徴とする電源プラグ。
【請求項2】
前記コンセント接触面はほぼ矩形をしており、これから突出するように植設された栓刃は2本であり、前記回転軸はこれら2本の栓刃の配列方向と一致していることを特徴とする請求項1記載の電源プラグ。
【請求項3】
前記2つの栓刃の並ぶ方向と直交する方向における前記プラグ本体の幅よりも前記コンセント接触面の同一方向の長さが長くなっていることを特徴とする請求項2記載の電源プラグ。
【請求項4】
前記2つの栓刃の並ぶ方向における可動部の幅よりも前記コンセント接触面の同一方向の長さが長くなっていることを特徴とする請求項2記載の電源プラグ。
【請求項5】
前記コンセント接触面を構成する部材は、前記可動部のその他の部分を構成する部材と同一の樹脂であり、これらが一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電源プラグ。
【請求項6】
前記コンセント接触面を構成する部材は、前記可動部の残りの部分から所定の厚さの板状部材が突出したような形状をしており、前記予め切除された形状とは、前記所定の厚さ以上の厚さで前記凹部の周囲が削除された形状であることを特徴とする請求項5記載の電源プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−52986(P2007−52986A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236597(P2005−236597)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(591176340)杉本電器株式会社 (11)
【Fターム(参考)】