説明

電源ロックピン

【課題】複数の操作禁止札のうち一部の操作禁止札を取り外す場合に、電源スイッチの誤操作を防止することができる電源ロックピンを提供する。
【解決手段】 電源ロックピン3は、電源スイッチ2の回動操作レバー2aに進退移動可能に設けられた係合部材11を、電源オフ状態で進出移動させて回動操作レバー2aの回動を規制する電源ロック装置に用いられる。この電源ロックピン3は、進出させた係合部材11と回動操作レバー2aとの間で構成される係合孔12に差し込まれた状態で、係合部材11と回動操作レバー2aとの間で挟持されることにより、係合部材2bが後退するのを規制するロック部31を備える。ロック31の下部には、複数の操作禁止札4に個別に取り付けられた環状の紐部材5を取り外し可能に引っ掛けて操作禁止札4を複数個吊り下げる引掛部34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の操作禁止札が取り付けられる電源ロックピンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、設備機器の点検作業を行う場合は、安全性を考慮して作業前にコントロールセンターにおいて設備機器の電源スイッチを必ずオフにしている。その際、点検作業中に第三者等が誤って電源スイッチをオン操作することがないように、電源スイッチを電源ロック部材によりロックするとともに、この電源ロック部材のロックを解除して電源スイッチが操作されないように、電源ロック部材の近くに操作禁止札を取り付けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の操作禁止札は、ブレーカーの電源スイッチに、電源スイッチを電源オフ状態でロックする角筒状の電源ロック部材(札取付具)を介して取り付けられている。具体的には、操作禁止札に取り付けられた環状の紐部材を電源ロック部材に形成された上下一対の孔に挿通した状態で、当該電源ロック部材を電源スイッチに嵌め込むことにより、前記紐部材が電源スイッチと電源ロック部材との間に挟み込まれ、操作禁止札が電源ロック部材に取り付けられるようになっている。
【0004】
上記のような電源ロック部材には、例えば、電源スイッチに複数の設備機器が接続されている場合には、各設備機器の点検作業毎に操作禁止札が取り付けられることがある。この場合、複数の設備機器の点検作業が同じ時期に重複したときには、電源ロック部材に複数の操作禁止札が取り付けられる。そして、各設備機器の点検作業が終了したときは、その点検作業時に取り付けた操作禁止札のみを電源スイッチから取り外すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−116020号公報(図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の上記電源ロック部材は、操作禁止札とともに電源スイッチに取り付けられているため、複数の操作禁止札のうち点検作業が終了した設備機器についての操作禁止札を電源ロック部材から取り外す場合であっても、全ての操作禁止札とともに電源スイッチから電源ロック部材を取り外す必要がある。したがって、一部の操作禁止札を電源ロック部材から取り外すときに、他の操作禁止札によって電源スイッチの操作が禁止されているにも関わらず、電源スイッチの操作が可能な状態となるため、この状態で、点検作業が終了した設備機器の動作確認等のために、電源スイッチが誤ってオン操作される危険がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、複数の操作禁止札のうち一部の操作禁止札を取り外す場合に、電源スイッチの誤操作を防止することができる電源ロックピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明の電源ロックピンは、電源スイッチの回動操作レバーに進退移動可能に設けられた係合部材と、電源オフ状態で前記係合部材を前記回動操作レバーから進出させることにより当該回動操作レバーの回動を規制し、前記係合部材を後退させることにより前記回動操作レバーの回動を許容する回動ロック機構とを備える電源ロック装置に用いられ、前記進出させた係合部材と前記回動操作レバーとの間で構成される係合孔に差し込むことにより、前記係合部材が後退するのを規制する電源ロックピンであって、前記電源ロックピンは、前記係合孔に差し込まれた状態で前記係合部材と前記回動操作レバーとの間で挟持されるロック部と、複数の操作禁止札に個別に取り付けられた環状の紐部材を取り外し可能に引っ掛けて当該操作禁止札を複数個吊り下げる引掛部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の電源ロックピンによれば、ロック部により係合部材が後退するのを規制して電源スイッチの回動操作レバーを電源オフ状態から回動するのを規制しながら、複数個の操作禁止札を紐部材を介して引掛部に取り外し可能に複数個吊り下げることができる。これにより、複数の操作禁止札のうち一部の操作禁止札を引掛部から取り外す場合に、回動操作レバーから電源ロックピンを取り外す必要がない。その結果、一部の操作禁止札を引掛部から取り外す場合に、電源スイッチが誤操作されるのを防止することができる。
【0009】
また、前記引掛部は、開脚及び閉脚可能な一対の脚部の相互間に設けられていることが好ましい。この場合は、複数の操作禁止札を引掛部に引っ掛けた状態で、一対の脚部を閉脚することにより、操作禁止札が引掛部から脱落するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電源ロックピンによれば、複数の操作禁止札のうち一部の操作禁止札を取り外す場合に、電源スイッチが誤操作されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電源ロックピンが取り付けられたブレーカーを示す斜視図である。
【図2】(a)は電源スイッチの電源オフ状態における平面図であり、(b)は電源スイッチに電源ロックピンが取り付けられた状態を示す平面図である。
【図3】前記電源ロックピンを示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電源ロックピンの下部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電源ロックピンが取り付けられたブレーカーを示す斜視図である。ブレーカー1は、例えば発電所のコントロールセンターに設置されたNFB(ノーヒューズブレーカー)であり、その電源スイッチ2には、電源ロックピン3が着脱自在に取り付けられるようになっている。そして、電源スイッチ2に取り付けられた電源ロックピン3には、複数(本実施形態では2個)の操作禁止札4が着脱自在に取り付けられるようになっている。各操作禁止札4は、電源スイッチ2の操作を禁止する旨の表示(本実施形態では「操作禁止」)が記されたものであり、その上部には電源ロックピン3に引っ掛けるための環状の紐部材5が取り付けられている。
【0013】
電源スイッチ2は、回動操作レバー2aを回動させることにより、発電所内の複数の設備機器の電源をオン・オフ操作するためのものである。前記回動操作レバー2aは、ブレーカー1の筐体1aの側面に回転可能に取り付けられた円板状の基台1bに突設されている。電源スイッチ2は、図1の二点鎖線で示すように、回動操作レバー2aを起立位置に回動させると、前記設備機器の電源をオンにした状態(以下、電源オン状態という)になり、この状態から当該回動操作レバー2aを、図1の実線で示すように図1の反時計回り方向に90度回転させると、設備機器の電源をオフにした状態(以下、電源オフ状態という)となる。
【0014】
図2の(a)は、電源スイッチ2の電源オフ状態における平面図であり、(b)は電源スイッチ2に電源ロックピン3が取り付けられた状態を示す平面図である。回動操作レバー2aの図2における左側には、係合部材11が進退移動可能に設けられている。
【0015】
係合部材11は、回動操作レバー2aに対して図2(a)に示す退避位置と、図2(b)の二点鎖線で示す進出位置との間で移動可能に設けられている。係合部材11が進出位置にあるとき、当該係合部材11と回動操作レバー2aとの間で係合孔12が構成され、この係合孔12に電源ロックピン3を抜き差しすることができるようになっている。
【0016】
係合部材11の図2(a)における右側の端部には、回動操作レバー2aから常時突出した突出部13が一体形成されており、この突出部13を図2(a)の矢印a方向に移動させることにより、係合部材11が進出位置に移動するようになっている。突起部13は、付勢手段であるバネ(図示省略)によって常に前記矢印a方向と逆方向に付勢されている。これにより、係合部材11は、通常時はバネ力によって退避位置に保持されており、突起部13をバネ力を抗して前記矢印a方向に移動させることにより、進出位置に移動するようになっている。
【0017】
筐体1aには、回動操作レバー2aの回動を規制する回動ロック機構(図示省略)が内蔵されている。この回動ロック機構は、図示しないリンク機構を介して係合部材11に連結されており、係合部材11を退避位置よりも前記矢印a方向に進出させることにより、回動操作レバー2aの回動を規制し、係合部材11を退避位置に後退させることにより回動操作レバー2aの回動を許容する。本実施形態では、係合部材11と突出部13と前記回動ロック機構とによって電源ロック装置が構成されている。
【0018】
図3は、電源ロックピン3を示す斜視図である。電源ロックピン3は、回動操作レバー2aから進出した係合部材11が退避位置へ後退するのを規制するためのものである。電源ロックピン3は、前記係合孔12に差し込まれた状態で係合部材11と回動操作レバー2aとの間で挟持されるロック部31と、このロック部31の下端(先端)において開脚及び閉脚可能に形成された一対の脚部32,33と、これらの脚部32,33の相互間に設けられた引掛部34とを備えている。
【0019】
ロック部31は、略直方体状に形成されており、その側面には凹状の係合溝31aが形成されている。この係合溝31aには、電源ロックピン3を係合孔12に差し込んだときに、係合部材11が係合するようになっている。これにより、係合部材11は、図2(b)の実線で示す位置から後退しないように規制されるため、回動操作レバー2aは、回動ロック機構により回動が規制された状態に保持される。
【0020】
図3において、ロック部31には2つの孔部31bが形成されており、いずれかの孔部31bには紐部材(図示省略)の一端が挿通されてロック部31に結び付けられている。この紐部材の他端は、電源ロックピン3の紛失を防止するために、係合部材11又は回動操作レバー2aに結びつけられている。
【0021】
一方の脚部32は、ロック部31の下端後側から下方に延びるように一体形成されており、他方の脚部33は、ロック部31の下端前側から下方に延びるように一体形成されている。脚部33の上端部は、当該脚部33がロック部31に対して回動できるように、脚部32の上端部の厚みよりも薄肉に形成されている。両脚部32,33間の上方には空間Sが形成されており、脚部33を回動させて脚部32に対して開脚及び閉脚することによって、前記空間Sを開閉することができる。脚部33の下端部には、脚部32側に延びる係止部33aが形成されており、この係止部33aは、脚部33を閉脚したときに脚部32の下端に係止されるようになっている。
【0022】
引掛部34は、各操作禁止札4に個別に取り付けられた環状の紐部材5を取り外し可能なように引っ掛けて操作禁止札4を複数個吊り下げるものである。本実施形態の引掛部34は、脚部33の上部に上方に突出するように一体形成されている。この引掛部34は、ロック部31の係合溝31aよりも下方に位置しており、係合溝31aに係合部材11が係合した状態で、脚部33を回動させることができる。これにより、ロック部31により電源スイッチ2を電源オフ状態に保持しながら、引掛部34に複数の操作禁止札4を着脱自在に取り付けることができる。
【0023】
次に、電源ロックピン3及び操作禁止札4の取り付け方法について、図面を参照しながら説明する。まず、図1において、電源スイッチ2の回動操作レバー2aを電源オン状態から反時計回り方向に90度回動させて電源オフ状態とする。次いで、図2(a)に示す突出部13をバネ力を抗して矢印a方向にスライドさせ、図2(b)に示すように係合部材11を進出位置まで移動させる。これにより、進出させた係合部材11と回動操作レバー2aとの間に係合孔12が形成される。そして、突起部13を前記矢印a方向に押し付けたまま、この係合孔12に電源ロックピン3を上方から差し込む。
【0024】
電源ロックピン3の係合溝31aが係合部材11に対向する位置まで差し込まれると、突起部13の上記押し付けを解除し、係合部材11をバネ力によって後退させる。その際、係合部材11は、図2(b)の実線で示すように、電源ロックピン3の係合溝31aに係合して退避位置への後退が規制され、回動操作レバー2aは回動ロック機構により回動が規制された状態で保持される。これにより、電源スイッチ2は電源オフ状態に保持される。
【0025】
次いで、脚部33を図3の二点鎖線で示すように脚部32に対して開脚させ、空間Sを開放する。この状態で、操作禁止札4に取り付けられた紐部材5の一部を空間S内に入れて引掛部34に引っ掛ける。その後、脚部33を図3の実線で示すように脚部32に対して閉脚させて空間Sを閉鎖する。このように、脚部33を脚部32に対して開脚及び閉脚することにより、電源スイッチ2を電源オフ状態に保持しながら、複数個の操作禁止札4を電源ロックピン3に取り付けることができる。
【0026】
また、電源ロックピン3に複数個の操作禁止札4が取り付けられている状態から一部の操作禁止札4のみを取り外す場合には、脚部33を開脚させて空間Sを開放した状態で、一部の操作禁止札4に取り付けられた紐部材5を引掛部34から取り外す。そして、他の操作禁止札4に取り付けられた紐部材5を引掛部34に残した状態で、脚部33を閉脚させて空間Sを閉鎖する。これにより、電源スイッチ2を電源オフ状態に保持しながら、電源ロックピン3から一部の操作禁止札4を取り外すことができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態に係る電源ロックピン3によれば、ロック部31により係合部材11が退避位置へ後退するのを規制して電源スイッチ2の回動操作レバー2aを電源オフ状態から回動するのを規制しながら、操作禁止札4を紐部材5を介して引掛部34に取り外し可能に複数個吊り下げることができる。これにより、複数の操作禁止札4のうち一部の操作禁止札4を引掛部34から取り外す場合に、電源スイッチ2からロック部31を取り外す必要がない。その結果、一部の操作禁止札4を引掛部34から取り外す場合に、電源スイッチ2が誤操作されるのを防止することができる。
【0028】
また、引掛部34は、開脚及び閉脚可能な一対の脚部32,33の相互間に設けられているため、複数の操作禁止札4を引掛部34に引っ掛けた状態で、一対の脚部32,33を閉脚することにより、操作禁止札4が引掛部34から脱落するのを防止することができる。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る電源ロックピンの下部を示す側面図である。本実施形態の電源ロックピン3は、ロック部31に固定された脚部32の下端に、側面視L字状に形成された引掛部34が一体形成されている。この引掛部34と脚部32とによって空間Sが形成されており、引掛部34の先端34aとロック部31の下端に形成された傾斜面31cとの間に形成された隙間から、紐部材5を空間S内に出し入れすることができるようになっている。
【0030】
以上の構成の電源ロックピン3についても、複数の操作禁止札4のうち一部の操作禁止札4を引掛部34から取り外す場合に、電源スイッチ2から電源ロックピン3を取り外す必要がないため、一部の操作禁止札4を引掛部34から取り外す場合に、電源スイッチ2が誤操作されるのを防止することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1の実施形態において、電源ロックピン3の引掛部34は、脚部33に設けられているが、脚部32に設けられていてもよい。また、上記各実施形態において、電源ロックピン3は、操作禁止札4を2個取り付けるようになっているが、3個以上取り付けるようにしてもよい。
【0032】
さらに、操作禁止札4には、「操作禁止」の表示が記されているが、操作を禁止する旨の表示であれば、他の表示が記されていてもよい。
また、電源ロックピン3は、発電所に設置された設備機器の電源スイッチ2に取り付ける場合について例示したが、プラント等の他の設備機器の電源スイッチに取り付ける場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
2 電源スイッチ
2a 回動操作レバー
3 電源ロックピン
4 操作禁止札
5 紐部材
11 係合部材
12 係合孔
31 ロック部
32 脚部
33 脚部
34 引掛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源スイッチの回動操作レバーに進退移動可能に設けられた係合部材と、電源オフ状態で前記係合部材を前記回動操作レバーから進出させることにより当該回動操作レバーの回動を規制し、前記係合部材を後退させることにより前記回動操作レバーの回動を許容する回動ロック機構とを備える電源ロック装置に用いられ、前記進出させた係合部材と前記回動操作レバーとの間で構成される係合孔に差し込むことにより、前記係合部材が後退するのを規制する電源ロックピンであって、
前記電源ロックピンは、前記係合孔に差し込まれた状態で前記係合部材と前記回動操作レバーとの間で挟持されるロック部と、複数の操作禁止札に個別に取り付けられた環状の紐部材を取り外し可能に引っ掛けて当該操作禁止札を複数個吊り下げる引掛部とを備えることを特徴とする電源ロックピン。
【請求項2】
前記引掛部は、開脚及び閉脚可能な一対の脚部の相互間に設けられている請求項1に記載の電源ロックピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160362(P2012−160362A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19619(P2011−19619)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】