説明

電源制御装置、撮像装置および電源制御方法

【課題】モーターと電源を共用する信号処理回路がモーター起動時の突入電流で誤動作しないようにし、かつモーターのトルクを大きくすること。
【解決手段】本発明の撮像装置はモーターへの電流の供給を開始する際に、予め信号処理回路のクロック周波数を低下またはクロックを停止させることにより電圧降下に対する耐性を高めた上でモーターの駆動を行うので、より大きなトルクを発生させることが可能であり、かつ、回路を安定して動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は応答性と省電力性に優れたデジタルカメラ、または同様の撮像機能を備えた携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラの近年の進歩は目覚しく、従来のフイルムカメラを置き換える勢いであり、普及につれて小型軽量化が進んでいる。また、デジタルカメラの機能を取り込んだ携帯電話の普及により多くの人が常時携帯するようになったため、デジタルカメラまたはデジタルカメラの機能を備えたモジュールに対する小型軽量化の要求は一層、強くなっている。
【0003】
小型軽量化で大きな課題となるのが電池である。一定の重量と容積の電池に詰め込める電流容量は限られているので、デジタルカメラを出来る限り省電力化して、より小さな電池で十分な動作時間が得られるようにするのが合理的な解決策である。デジタルカメラは乾電池を4本使用するものが普通だったが、乾電池2本で動作するものが市場に出てきている。
【0004】
一方、デジタルカメラまたはデジタルカメラモジュールはシャッターやズームレンズを動かす為にモーターを備えており、モーターは起動時に大きな起動電流が流れる特性がある。モーターとLSIは一つの電池を共用しているので、モーターに大電流が流れると電池の内部抵抗力により電池の出力電圧が低下する。この時、LSIの電源電圧が動作保証電圧以下に落ちると、LSIが誤動作する恐れがある。
【0005】
デジタルカメラではないが、同様の携帯機器でモーターの起動時の起動電流に対応する技術提案がなされているので従来例として紹介する。
【0006】
以下に従来の装置の例として、特許文献1に記載の携帯電話を取り上げ、図6を用いて概要を説明する。図6は前記の特許文献1に記載の携帯電話の構成を簡略化して図示したブロック図である。図6において81は主制御部、82は無線通信部、83は磁気ディスク部、84は表示部、85はバックライト、86は電池、87は電力制御部である。主制御部81は携帯電話全体を制御し、特に電池86から取り出した電流の分配に於いては電力制御部87を介して制御する。電力制御部87は電流制限回路とスイッチを備えており、無線通信部82、磁気ディスク部83、表示部84、バックライト85に供給する電流をオン・オフする。
【0007】
この従来例の携帯電話は磁気ディスク部を備えるのが特徴であり、磁気ディスク装置は起動時に大電流を必要とするため、電力制御を工夫している。例えば携帯電話でインターネットにアクセスしてデータをダウンロードする場合には、主制御部81は電力制御部87を制御してバックライト85と無線通信部82への電流供給を停止させる。バックライトは表示部84の液晶ディスプレイを背面から照射して見やすくするものであり、消費電流が大きな回路である。無線通信部82も電波を発信するために大きな電流を消費する部分なので、バックライト85と無線通信部82への電流供給を停止すれば全体としての消費電流は大幅に低下する。このように主制御部81は他の回路の消費電流を減らした上で磁気ディスク部83に電流出力を開始するよう電力制御部87を制御する。
【0008】
図7は磁気ディスク装置に使われるDCモーターの起動特性を示したグラフである。図7において横軸は全て時間である。図中の(C)はモーターを起動する電流スイッチのオン・オフを示すグラフ、(D)はモーターを流れる電流量の時間変化を示すグラフ、(F)はモーターの発生するトルクの時間変化を示すグラフ、95はモーターの最大電流、96はモーターの最大トルク、97は最大静止摩擦抵抗力、98は動摩擦抵抗力である。
【0009】
以下、図7を用いてモーターの起動条件を説明する。図7はモーターが起動する場合の時間変化を示すグラフである。図7の(C)のようにモーターの電流スイッチをオンにすると電流が流れ始める。しかし、電池で動作する携帯機器で無制限にモーターに電流を出力すると電圧降下によってLSIをはじめとする回路が誤動作するので、出力電流を制限する必要がある。図7の95は出力電流の制限によって決められた最大電流である。DCモーターの静止時のトルクは入力電流に比例し、電流量が同じなら回転数の上昇につれてトルクは減小するので、最大電流が流れる静止時のトルクが最大トルクである。図の96は最大トルクを示しており、図7の(F)のように最大トルクが最大静止摩擦抵抗力97を上回るとモーターは回転を始める。モーターが一旦、回転を始めると抵抗力は動摩擦抵抗力98のレベルまで下がる。即ち、廻し始めが最も重く、少しでも回れば軽くなるのである。モーターが回転を始めると図7の(F)に示すのようにトルクは減少し、図7の(D)に示すように電流は流れにくくなる。やがてトルクが動摩擦抵抗力98と釣り合うと回転数の上昇が止まり、電流の減小も止まって定常状態になる。
【0010】
図8はモーターの起動特性と、電力制御の工夫の効果をまとめたグラフである。図7において横軸は全て時間である。図中の(C)はモーターを起動する電流スイッチのオン・オフを示すグラフ、(D)はモーターを流れる電流量の時間変化を示すグラフ、(G)はバックライト85と無線通信部82に供給する電流のオン・オフを示すグラフ、(H)は電池86の出力電流の時間変化を示すグラフ、(K)は電池86の出力電圧の時間変化を示すグラフ、95はモーターの最大電流、99は主制御部87ほかの回路の動作保証電圧である。
【0011】
以下、図8を用いて磁気ディスク部83起動時の動作を説明する。図9の(G)に示すように、磁気ディスク部83起動に先だってバックライト85と無線通信部82に供給する電流のスイッチをオフする。その結果、(H)に示すように電池86の出力電流は大幅に減少し、(K)に示すように電池86の出力電圧は上昇する。その後で(C)に示すようにモーターを起動する電流スイッチをオンすると(D)に示すようにモーターに電流が流れ始める。その結果、(H)に示すように電池86の出力電流は大幅に増加し、電池86の内部抵抗力によって(K)に示すように出力電圧は低下する。しかし先にバックライト85と無線通信部82に供給する電流のスイッチをオフしているので電池86の出力電流のピークは抑えられており、電池86の出力電圧の低下は回路の動作保証電圧99を下回らない範囲に収まっている。(D)に示すように磁気ディスクの回転数の上昇とともにモーターの消費電流は低下する。主制御部87はモーターの消費電流が下がった頃に(G)に示すように、バックライト85と無線通信部82に供給する電流のスイッチをオンする。その結果、(H)に示すように電池86の出力電流は増加するが(K)に示すように電池86の出力電圧は回路の動作保証電圧99までは下がらない。モーターの回転数が更に上がると全体の消費電流も更に減少し、電池86の出力電圧も上昇する。
【0012】
このように従来例の携帯電話では、磁気ディスク部の起動の際にバックライトと無線通信部の電流をオフすることにより消費電流のピークを低く抑え、それにより電池の内部抵抗力による電圧降下を抑えて、電池の出力電圧が回路の動作保証電圧を下回らないように制御している。
【特許文献1】特開2003−158770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上記の技術をデジタルスチルカメラに適用すると問題が多々ある。デジタルスチルカメラではモーターでレンズを動かすことによってオートフォーカスやズームや光学手ブレ補正を行っており、ズームやフォーカスや光学手ブレ補正の応答性がカメラとしての優劣を左右する。応答性を良くするにはモーターのトルクを上げればよいが、トルクは電流に比例するので、モーターへの出力電流を制限するとトルクが低下して応答性が悪くなる。これらのモーターはユーザーの操作に応じて随時動くので、その度にバックライトを消すこともできない。他の回路への電流供給を止めてモーターに振り向けることが出来なければモーターへの電流供給を抑えざるを得ず、その結果、モーターのトルクが不足するようになる。
【0014】
図9はモーターへの電流供給が不足した場合の時間変化を示すグラフである。図9において横軸は全て時間である。図中の(C)はモーターを起動する電流スイッチのオン・オフを示すグラフ、(D)はモーターを流れる電流量の時間変化を示すグラフ、(F)はモーターの発生するトルクの時間変化を示すグラフ、95はモーターの最大電流、96はモーターの最大トルク、97は最大静止摩擦抵抗力である。(D)に示すように最大電流95が小さければ最大トルク96も小さくなる。(F)に示すように最大トルク96が最大静止摩擦抵抗力97よりも小さければモーターは全く回転しない。モーターが回転しなければ最大電流が流れ続けることになり、電池は急速に消耗する。
【0015】
モーターの起動電流を優先すれば電池の内部抵抗力が大きい場合に回路が誤動作する恐れがある。電池の内部抵抗力が大きければ同じ出力電流に対してより大きな電圧降下が起きるので、モーターの起動時に回路の動作保証電圧以下まで出力電圧が低下し、回路が誤動作する事になるからである。また、電池の出力電圧が出力電流ゼロの状態でも低く、回路の動作保証電圧に対して十分な余裕がない場合にも同様に誤動作の恐れが生じる。
【0016】
電池の内部抵抗力を減らす為には電池を並列接続すればよいが、それはデジタルスチルカメラとして体積と重量が増加することを意味する。内部抵抗力が低い種類の電池を使用するよう指定することも出来るが、電池の入手性が悪くなるので好ましくない。出力電圧が高い種類の電池を使用するよう指定すれば電圧降下に対する余裕度が増えるが、出力電圧は電池の消耗に従って下がるものなので、まだ電池に電流容量があるのにデジタルスチルカメラは動かない、という事態が生じる。
【0017】
このようにモーターを随時駆動し、市販の乾電池を電源とするデジタルスチルカメラでは、高トルクモーターによる突発的な大電流と、内部抵抗力が大きく出力電圧が低い電池の組み合わせによって発生する不安定な電源電圧条件の下でも安定して動作する必要があるが、これらの条件を上記の従来の技術は満足しない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の電源制御装置は、負荷に電力を供給する電源と、前記電源からの電力供給を受けて、データを処理するデータ処理手段と、前記データ処理手段にクロックを供給し、供給する周波数を変えることができるクロック供給手段と、供給するクロックの周波数を下げるよう前記クロック供給手段を制御した後、負荷への電力の供給を開始するよう電源を制御する電源制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
デジタル回路は一時的にクロックを停止しておくと、その間に動作保証電圧以下まで電源電圧が下がっても、電源電圧を正常に戻した後でクロックを再開すれば誤動作無く動作を再開できる性質がある。また、最大動作周波数よりも低いクロック周波数で動作させれば、最大動作周波数での動作を保証する動作保証電圧より低い電源電圧でも安定して動作する性質がある。この性質を利用して、モーターに電流供給を開始する前に主制御手段や他のデジタル回路のクロックを低下または停止させておき、大電流が流れる期間が過ぎてからクロックを復旧させる事により、高トルクでモーターを駆動しつつ回路を安定して動作させることができる、という利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の電源制御装置は、負荷に電力を供給する電源と、電源からの電力供給を受けて、データを処理するデータ処理手段と、データ処理手段にクロックを供給し、供給する周波数を変えることができるクロック供給手段と、供給するクロックの周波数を下げるようクロック供給手段を制御した後、負荷への電力の供給を開始するよう電源を制御する電源制御手段と、を備える。
【0021】
以下、図1乃至5を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明によるデジタルスチルカメラの電気回路の構成を図示するブロック図である。図1において10は撮像回路、11はメインメモリ、12は表示用メモリ、13は主制御回路、14は表示回路、15は画像処理回路、16は圧縮変換回路、18は記録回路、19は操作回路、20は電池、21は電流制御回路、22は電圧監視回路、23はタイマー、24はクロック制御回路、25はモーター、26はLSIである。LSI26は撮像回路10と主制御回路13と表示回路14と表示用メモリ12と画像処理回路15と圧縮変換回路16と記録回路18と電流制御回路21と電圧監視回路22とタイマー23とクロック制御回路24を一個のチップ内に収めている。
【0023】
撮像回路10は入射光の像をRGB三原色に分解してデジタル化したRGB形式のRAWデータに変換する。撮像回路10はメインメモリ11にRAWデータを書き込む。画像処理回路15はメインメモリ11からRAWデータを読み出して画像処理を行い、表示用画像を生成して表示用メモリ12に書き込む。スチル撮影の場合は画像処理の際に記録用画像を表示用画像と同時に生成し、メインメモリ11に書き込む。圧縮変換回路16はメインメモリ11から記録用画像を読み出して圧縮変換を施し、生成した画像ファイルを記録回路18に出力する。記録回路は画像ファイルを不揮発性のメモリに記録する。
【0024】
主制御回路13はマイコンであり、撮像回路10、画像処理回路15、圧縮変換回路16、記録回路18を制御する。これらの回路と主制御回路13は電流制御回路21から電流の供給を受けており、またクロック制御回路24から動作クロックの供給も受けている。モーター25も電流制御回路21から電流の供給を受けて動作する回路の一つである。電圧監視回路22は電池20の出力電圧を監視しており、電流制御回路21に制御信号を帰還させて出力電流を制限する機能を持つ。タイマー23はクロック制御回路24が出力するクロックをカウントし、時刻情報を得る回路であり、表示回路が必要とする映像同期信号も出力する。操作回路19はシャッターやモードダイヤルなどスイッチ類を備えた回路であり、撮像装置全体に指示を与えるものである。主制御回路13は操作回路19と電圧監視回路22とタイマー23を監視し、それに応じて必要な制御を行う。
【0025】
メインメモリ11と主制御回路13と画像処理回路15と圧縮変換回路16の動作周波数はクロック制御回路24によって54MHzと27MHzと停止の3段階に切り換え可能であり、54MHz動作時はLSI25の入り口で3.3Vの電源電圧が必要であるが、27MHz動作時は2.7Vでよく、クロックを停止した時は2.1Vまで電源電圧が下がっても誤動作しない。表示用メモリ12と表示回路14の動作周波数は27MHzと停止の2段階に切り換え可能であり、27MHz時は2.1Vまで電源電圧が下がっても動作する。タイマー23は表示回路14が必要とする映像同期信号を出力する機能を兼ね備えており、クロック制御回路24がタイマー23に供給するクロックの周波数は常に27MHzである。クロック制御回路24はクロック周波数の切り換えやクロック停止の際にグリッジを発生しないよう特に注意して設計してある。クロックの切り換えと停止は主制御回路13の指示によって行われ、回路毎に切り換えと停止を指示できる。
【0026】
図2は本発明の実施例における電流制御回路21と電圧監視回路22の構成を示したブロック図である。図2において13は主制御回路、20は電池、21は電流制御回路、22は電圧監視回路、23はタイマー、25はモーター、27は電圧比較器、28は保証電圧選択レジスタ、29は電圧スイッチ、30は電流スイッチ、31は電流制限回路、32は電圧制限回路である。以下、図2を用いて電流制御の動作を説明する。
【0027】
電圧監視回路27が持つ3個の電圧比較器は各々電池20が出力する電圧と3段階の基準電圧、3.3V、2.7V、2.1Vとを比較し、その結果を電流制御回路21に出力する。電流制御回路21は電圧スイッチ29で電圧比較の三つの出力から一つの比較結果を選択し、電流制限回路31に入力する。電流制限回路31は電流スイッチ30がオンの時に電池20が出力する電流をモーター25に供給する。電流制限回路31は電圧スイッチ29で選択された比較器の基準電圧より電池20の出力電圧が小さくなった時には、モーター25に出力するで電流を制限するよう働く。電流スイッチ30は主制御回路13が直接オン・オフする。スイッチ29は保証電圧選択レジスタ28に書き込まれた値によって切り替わる。保証電圧選択レジスタ28の設定は主に主制御回路13が行うが、タイマー23は主制御回路13の指示を受けてから一定時間後に保証電圧選択レジスタ28の設定を2.7V選択に書き換える機能を持つ。電池が出力する電流は電圧制限回路32にも供給される。電圧制限回路32は電池20の出力電圧が3.3V以上の時は出力電圧を3.3Vに保ちつつ内部回路に電流を供給し、電池20の出力電圧が3.3V以下の時は、大きな電圧降下を起こさずに、そのままの電圧を内部回路に供給する。
【0028】
以下、図2を用いてモーターに電流を流す場合の動作を説明する。なお、初期状態では保証電圧選択レジスタ28の設定は2.1V選択、電池の出力電圧は3.5Vであったとする。初期状態から主制御回路13が電流スイッチ30をオンにすると電池20から電流スイッチ30、電流制限回路31を経由してモーター25に電流が流れる。電池から電流を取り出すと内部抵抗力による電圧降下が発生し、電池20の出力電圧は低下していく。保証電圧選択レジスタ28の設定は2.1V選択なので、三つの電圧比較27のうち2.1Vとの比較出力以外は回路の動作に影響を与えない。電池の出力電圧が2.1Vまで低下すると電圧スイッチ29の出力が反転し、電流制限回路31が出力電流を制限する。出力電流の増加が止まると電池の内部抵抗力による電圧降下も止まるので、電池の出力電圧は2.1Vで安定する。保証電圧選択レジスタ28の設定が2.7V選択であれば同様に電池の出力電圧は2.7Vで安定し、保証電圧選択レジスタ28の設定が3.3Vであれば電池の出力電圧は3.3Vで安定する。
【0029】
タイマー23の役割は主制御回路13をバックアップする事にある。保証電圧選択レジスタ28の設定が2.1V選択で、実際に電池20の出力電圧が2.7V以下に下がっている時に主制御回路13は動作できず、保証電圧選択レジスタ28の設定を変更することもできないが、予めタイマー23を設定しておくことにより一定時間後に保証電圧選択レジスタ28の設定を2.7V選択に書き換えさせ、電源電圧を主制御回路13が動作可能な2.7Vまで戻す事ができる。図は略すが、クロック制御回路にも保証電圧選択レジスタ28と同様に周波数選択レジスタがあり、タイマー23は保証電圧選択レジスタ28の設定を2.7V選択に書き換えてから短い一定時間を置いた後に周波数選択レジスタを27MHz選択に書き換える機能も持つ。保証電圧選択レジスタ28の書き換えから周波数選択レジスタの書き換えまで時間は、電池の電圧降下が減少して内部回路の電源電圧が2.7Vに戻るまでの時間に対応するものである。周波数選択レジスタを27MHz選択に書き換わると主制御回路のクロックが復旧するので、主制御回路は再び全ての回路を制御できるようになる。
【0030】
なお、モーター25は本発明の負荷の一例である。電池20は本発明の電源の一例である。画像処理回路15や圧縮伸張回路16、記録回路18は本発明のデータ処理手段の一例である。クロック制御回路24は本発明のクロック供給手段の一例である。主制御回路13、電流制御回路21および電圧監視回路22からなる構成は、本発明の電源制御手段の一例である。
【0031】
次に図3乃至5を用いて電流制御と周波数制御の関係を説明する。図3乃至5は電流、電圧やスイッチの状態の時間変化を表したグラフであり、横軸は全て時間である。図3乃至5において(A)は主制御回路13の動作周波数、(B)は保証電圧選択レジスタ28の設定、(C)は電流スイッチ30のオン・オフ、(D)はモーター25に供給される電流量、(E)は主制御回路13をはじめとする内部回路の電源電圧である。以下、初期状態においては初期状態では保証電圧選択レジスタ28の設定は3.3V選択、電池の出力電圧は3.5Vであるとする。
【0032】
図3はモーター起動時に主制御回路13をはじめとする回路の動作周波数を操作しない場合のグラフである。図3において、図中(イ)の時点で(C)のように電流スイッチ30をオンするとモーター25に電流が出力されるが、(E)に示すように出力電流は電池20の出力電圧が3.3V以下にならないよう制限されるので、(D)に示すようにモーター電流は少ししか流れない。ここではモーターが回転したと仮定しており、モーター電流の低減により(ニ)の時点で電流制限は外れているが、モーターが回転しなかった場合、モーター電流はそのままのレベルで推移する。
【0033】
図4はモーター起動時に主制御回路13をはじめとする回路の動作周波数を27MHzに下げる場合のグラフである。図4の(A)と(B)に示すように動作周波数を27MHzまで落とすと、回路は2.7Vでも動作するようになる。主制御回路13は図4の(イ)の時点でクロック制御回路の周波数選択レジスタを27MHzに設定して動作周波数を27MHzに切り換え、続いて電流制限回路31の保証電圧選択レジスタ28を2.7Vに切り換え、最後に(C)に示すようにモーターの電流スイッチ30をオンにする。すると(D)に示すようにモーター電流が流れ始めるが、電流制限回路21は電池20の出力電圧が2.7Vに下がるまで出力電流を制限しないので、図3の(D)のグラフと比較して分かるように、より大きな出力電流が得られる。モーターのトルクは電流に比例するので、モーターへの出力電流が大きければ、より確実にモーターは起動する。
【0034】
図4の(E)に示すように出力電流の増加によって内部電圧は下がるが、動作周波数が27MHzの時の動作保証電圧である2.7Vは下回らないよう電圧監視回路22と電流制御回路21とにより制御されているので誤動作の恐れはない。
【0035】
図4の(ホ)の時点で電池の出力電圧は2.7Vを上回り、電流制限は外れている。主制御回路13は(ハ)の時点で電圧監視回路22の3.3Vと比較する電圧比較器の出力が反転するのに応じて、先ず電流制限回路31の保証電圧選択レジスタ28を(B)に示すように3.3Vに切り換え、続いてクロック制御回路の周波数選択レジスタを54MHzに設定して(A)に示すように動作周波数を54MHzに切り換える。動作周波数の増加に伴う消費電流増の影響で電流制限が働き(D)に示すようにモーター電流は一時減少するが、引き続きモーターの回転数が上がるため(ニ)の時点で再び電流制限は働かなくなる。
【0036】
図5はモーター起動時に主制御回路13と画像処理回路15と圧縮伸張回路16と記録回路18の動作クロックを停止する場合のグラフである。図5の(A)と(B)に示すようにクロックを停止すると、回路は2.1Vでも誤動作しないようになる。撮像回路10と表示回路14とタイマー23は2.1Vの電源電圧でも27MHzのクロック周波数で動作するので、これらの回路のクロックは停止しない。
【0037】
図5の(イ)の時点で主制御回路13は先ずタイマー23に電流制御回路21とクロック制御回路24の復帰操作の指示を与え、続いて電流制限回路31の保証電圧選択レジスタ28を2.1Vに切り換え、(C)に示すようにモーターの電流スイッチ30をオンにし、同時にクロック制御回路の周波数選択レジスタを0Hzに設定して主制御回路13と画像処理回路15と圧縮伸張回路16と記録回路18のクロックを停止する。すると(D)に示すようにモーター電流が流れ始めるが、電流制限回路21は電池20の出力電圧が2.1Vに下がるまで出力電流を制限しないので、図4の(D)のグラフと比較して分かるように、更に大きな出力電流が得られる。モーターのトルクは電流に比例するので、モーターへの出力電流が大きければ、より速くモーターは加速する。
【0038】
図5の(E)に示すように出力電流の増加によって内部電圧は大きく下がるが、回路が誤動作しない保証電圧である2.1Vは下回らないよう電圧監視回路22と電流制御回路21とにより制御されているので誤動作の恐れはない。
【0039】
図5の(イ)から(ホ)の期間中、主制御回路13はクロックが止まっているのでクロック制御回路や電流制限回路31の操作は出来ないが、タイマー23が復帰を補助する。タイマー23にはクロック制御回路24から引き続き27MHzのクロックが供給されているので、正しく時間を測定できる。タイマー23は主制御回路13から指示を受けて一定時間後、図5では(ロ)の時点で先ず電流制御回路21の保証電圧選択レジスタ28を(B)に示すように2.7Vに切り換え、続いてクロック制御回路の周波数選択レジスタを27MHzに設定して(A)に示すように主制御回路13の動作周波数を27MHzに復旧する。主制御回路13はクロックが復旧すると必要があれば画像処理回路15と圧縮伸張回路16と記録回路18のクロックを27MHzに復旧する。主制御回路13ほかの回路の動作再開によりLSI26の消費電流が増えるので(D)に示すように電流制御回路21の働きによりモーター電流が一時減らされるが、(E)に示すように内部電圧はこの時の動作保証電圧である2.7Vを下回らないよう制御される。動作周波数を27MHzから54MHzに戻す際の動作については、図4の場合と同様に主制御回路13が制御するので詳細は割愛する。
【0040】
撮像回路10と表示回路14はクロックを停止しないので表示や撮像動作は影響を受けない。画像処理回路15と圧縮伸張回路16と記録回路18は一定期間内に画像を処理して圧縮し、記録することが出来ればよいので、その間に一時的に動作を停止しても途中で誤動作がなければ何ら問題はない。モーターに大電流が流れる期間はモーターの慣性と起動時のトルクによって決まるので、デジタルカメラに用いるような小型のモーターは高トルクで駆動すれば短時間のうちに定速回転に達する。
【0041】
モーターを用いる撮像装置の場合、撮像回路10と表示回路14のクロックを垂直ブランキング期間のあいだ停止して、その電力をモーターの起動に充てることもできる。垂直ブランキング期間中のクロック停止を前提にすれば、撮像回路10と表示回路14を著しい低電圧で動作する特殊な回路として設計する必要は無い。垂直ブランキング期間中は映像同期信号発生器を兼ねるタイマー23が映像同期信号を出力しており、撮像回路10と表示回路14は有効画素を扱っていないのでクロックを止めても問題はない。
【0042】
垂直ブランキング期間を利用してモーターを起動する動作を図5を用いて説明する。主制御回路13は映像同期信号発生器を兼ねるタイマー23を監視し、垂直ブランキング期間に入った時点でクロックを停止する手順を開始する。この時、撮像回路10と表示回路14のクロックも主制御回路13のクロックと同時に停止する。タイマー23は垂直ブランキング期間の終わりで主制御回路13のクロックを復旧する手順を実行し、主制御回路13は撮像回路10と表示回路14と、ほか必要な回路のクロックを復旧する。後の動作は前述の図5の説明と同じなので省略する。
【0043】
NTSC方式に対応する撮像装置の場合、約16ミリ秒のフィールド周期毎に約1.3ミリ秒の垂直ブランキング期間がある。1.3ミリ秒は短い時間のように聞こえるが、図7で説明したようにモーターが最大静止摩擦抵抗力を示すのは静止状態だけであり、一旦、最大静止摩擦抵抗力を超えるトルクによりモーターが回転し始めれば、ずっと小さい動摩擦抵抗力しか示さない性質があるので、最大トルクを与える期間は短時間で十分である。このように垂直ブランキング期間を待ち、ほとんどの回路を止めて、大電流でトルクを与えることにより短時間でモーターを廻し始めることができる。一旦、モーターが回転を始めたあとは動摩擦抵抗力を超えるトルクがあればモーターを加速できるので、垂直ブランキング期間以外は出力電流量を絞っていても問題ない。
【0044】
このように本発明のクロック制御方法および撮像装置は、負荷への電流の供給を開始する際に、クロック周波数を低下またはクロックを停止させた後に電流の供給を開始することを特徴としており、クロック周波数を低下またはクロックを停止させることにより電圧降下に対する耐性を高めた上でモーターの駆動を行うので、より大きなトルクを発生させることが可能であり、かつ、回路を安定して動作させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、負荷に十分な電力を供給しつつ、データ処理回路を安定して動作させることができるので、モータやストロボ等の負荷を有するとともに、データ処理を行う装置に適用でき、特に、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話端末等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるデジタルスチルカメラの電気回路の構成を図示するブロック図
【図2】本発明の実施例における電流制御回路と電圧監視回路の構成を示したブロック図
【図3】動作周波数を操作しない場合のグラフ
【図4】動作周波数を27MHzに下げる場合のグラフ
【図5】動作クロックを停止する場合のグラフ
【図6】従来の携帯電話の構成を簡略化して図示したブロック図
【図7】DCモーターの起動特性を示したグラフ
【図8】モーターの起動特性と、電力制御の工夫の効果をまとめたグラフ
【図9】モーターへの電流供給が不足した場合の時間変化を示すグラフ
【符号の説明】
【0047】
10 撮像回路
11 メインメモリ
12 表示用メモリ
13 主制御回路
14 表示回路
15 画像処理回路
16 圧縮変換回路
18 記録回路
19 操作回路
20 電池
21 電流制御回路
22 電圧監視回路
23 タイマー
24 クロック制御回路
25 モーター
26 LSI
27 電圧比較器
28 保証電圧選択レジスタ
29 電圧スイッチ
30 電流スイッチ
31 電流制限回路
32 電圧制限回路
81 主制御部
82 無線通信部
83 磁気ディスク部
84 表示部
85 バックライト
86 電池
87 電力制御部
95 モーターの最大電流
96 モーターの最大トルク
97 最大静止摩擦抵抗力
98 動摩擦抵抗力
99 動作保証電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流制御手段とクロック制御手段とデータ処理手段を備える電源制御装置の電源制御方法であって、前記電流制御手段は負荷に電流を出力するものであり、前記クロック制御手段はデータ処理手段にクロックを供給するものであり、負荷への電流出力を開始する際には、データ処理手段のクロック周波数を低下させた後に負荷への電流出力を開始することを特徴とする電源制御方法。
【請求項2】
撮像手段とモーターと電流制御手段とクロック制御手段とデータ処理手段を備え、前記電流制御手段は前記モーターに電流を出力するものであり、前記クロック制御手段は前記データ処理手段にクロックを供給するものであり、モーターへの電流出力を開始する際には、データ処理手段のクロック周波数を低下させた後にモーターへの電流出力を開始することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置であって、前記データ処理手段は少なくとも2段階の動作周波数を持ち、クロック周波数を低下させた時の動作保証電圧がV2であり、低下させない時の動作保証電圧がV1であるとき、クロック周波数を低下させた時に電源電圧がV1を下回り、V2は下回らないことを特徴とする撮像手段。
【請求項4】
請求項3記載の撮像装置であって、電圧監視手段を備え、前記電圧監視手段は電源電圧と前記動作保証電圧V2を比較するものであり、前記電流制御手段は前記電圧監視手段の指示に応じて出力電流を制限する機能を有し、前記電源電圧が前記動作保証電圧V2まで降下した時に出力電流を制限することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
電流制御手段とクロック制御手段とデータ処理手段とを備える電源制御装置の電源制御方法であって、前記電流制御手段は負荷に電流を出力するものであり、前記クロック制御手段はデータ処理手段にクロックを供給するものであり、負荷への電流出力を開始する際には、データ処理手段のクロックを停止させた後に負荷への電流出力を開始することを特徴とする電源制御方法。
【請求項6】
撮像手段とモーターと電流制御手段とクロック制御手段とデータ処理手段を備え、前記電流制御手段は前記モーターに電流を出力するものであり、前記クロック制御手段は前記データ処理手段にクロックを供給するものであり、モーターへの電流出力を開始する際には、データ処理手段のクロックを停止させた後にモーターへの電流出力を開始することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像装置であって、前記データ処理手段の動作保証電圧がV1であり、クロック停止中にデータを失わない保持電圧がV3であるとき、クロック停止中に電源電圧がV1を下回り、V3は下回らないことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置であって、電圧監視手段を備え、前記電圧監視手段は電源電圧と前記動作保証電圧V3を比較するものであり、前記電流制御手段は前記電圧監視手段の指示に応じて出力電流を制限する機能を有し、前記電源電圧が前記動作保証電圧V3まで降下した時に出力電流を制限することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
電流制御手段とクロック制御手段とデータ処理手段と時刻管理手段を備える電源制御装置の電源制御方法であって、前記電流制御手段は負荷に電流を出力するものであり、前記クロック制御手段は前記データ処理手段と前記時刻管理手段にクロックを供給するものであり、負荷への電流出力を開始する際には、前記データ処理手段のクロックを停止させた後に負荷への電流出力を開始し、前記データ処理手段のクロックは前記時刻管理手段が示す時点で供給を再開することを特徴とする電源制御方法。
【請求項10】
撮像手段とモーターと電流制御手段とクロック制御手段とデータ処理手段と映像同期信号発生器を備え、前記電流制御手段は前記モーターに電流を出力するものであり、前記クロック制御手段は前記データ処理手段にクロックを供給するものであり、前記映像同期信号発生器は映像同期信号を発生するものであり、モーターへの電流出力を開始する際には、データ処理手段のクロック周波数を低下または停止させるものであり、前記映像同期信号の垂直ブランキング期間内にクロック周波数を低下または停止させることを開始することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項10記載の撮像装置であって表示手段を備え、前記映像同期信号の垂直ブランキング期間内で前記表示手段のクロック周波数を低下または停止させることを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項1または5または9に記載の電源制御方法であって、前記データ処理手段は少なくともマイクロプロセッサまたはデジタルシグナルプロセッサまたは画像処理回路または画像圧縮伸張回路または解像度変換回路またはデータ記録再生回路のいずれかである事を特徴とする電源制御方法。
【請求項13】
請求項2乃至4または請求項6乃至8または請求項9乃至11に記載の撮像装置であって、前記データ処理手段は少なくともマイクロプロセッサまたはデジタルシグナルプロセッサまたは画像処理回路または画像圧縮伸張回路または解像度変換回路またはデータ記録再生回路のいずれかである事を特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項1または5または9または12に記載の電源制御方法であって、前記負荷は少なくとも光学的拡大手段または遮光手段または合焦手段または手ブレ補正手段または発光手段またはジャイロスタビライザまたはディスク装置またはテープドライブ装置のいずれかである事を特徴とする電源制御方法。
【請求項15】
負荷に電力を供給する電源と、
前記電源からの電力供給を受けて、データを処理するデータ処理手段と、
前記データ処理手段にクロックを供給し、供給する周波数を変えることができるクロック供給手段と、
供給するクロックの周波数を下げるよう前記クロック供給手段を制御した後、負荷への電力の供給を開始するよう電源を制御する電源制御手段と、
を備える電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−60745(P2006−60745A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243354(P2004−243354)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】